○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一です。
私は、会派を代表して、
防衛省設置法の一部改正法案に反対の
立場から討論します。
現在の
米国の軍事戦略では、
日本は
中国の攻撃にさらされ、それに耐えることが求められています。
米国では、二〇一〇年にはエアシーバトル構想が提起され、これに対し、二〇一二年にはオフショアコントロール戦略が提起され、両者の間で論争が繰り広げられましたが、その後、二〇一九年に海洋圧力戦略が提起され、現在の
米国インド太平洋軍戦略はおおむねこの海洋圧力戦略に基づいています。
これらの戦略では、
中国の
台湾侵攻の第一段階で、米軍は、南西諸島、
台湾、フィリピンなど第一列島線から、小笠原、グアム、サイパン、パプアニューギニアなどの第二列島線に撤退して退避し、
中国のミサイル射程内にある
自衛隊など第一列島線の
同盟国部隊は
中国からのミサイル攻撃にひたすら耐えることが求められています。戦闘の第二段階で、徐々に米軍が第二列島線から反撃に転じていくというシナリオは、以上の戦略に共通したものです。
米国の西太平洋における覇権を維持するためのこのような軍事戦略は、
自衛隊員の命を犠牲にして、
日本国民、特に南西諸島住民の生命、財産を危険にさらすという点で
日本の
安全保障政策としては妥当性を欠くものです。
こうした米軍のアジア太平洋戦略に応じる形で安倍政権が提唱したのが自由で開かれた
インド太平洋構想であり、これに沿って今回の
自衛隊強化、日印ACSAが提起されています。
先日の菅・バイデン会談を受けた
日米共同声明で、日
中国交正常化以前の一九六九年の佐藤・ニクソン会談以来、初めて
台湾への言及がなされました。
一九七二年の日
中国交正常化、日中
共同声明では、第三項で、
日本政府は
中華人民共和国の
立場を十分
理解し、尊重することを明記し、以降累次の日中
首脳会談で繰り返しこのことを
確認しています。さらに、一九七八年の日中平和友好条約を締結して、日中両国の恒久的な平和友好
関係を発展させることを
約束して今日に至っています。
日本の対
中国外交の基本
方針を根本的に転換することには慎重であるべきです。尖閣問題は尖閣の範囲で
解決すべきであり、
日中関係の基礎を壊してはなりません。
今回のような
方針転換は、
日本と
中国の間の南西諸島における軍事的緊張
関係を高め、南西諸島の住民や
自衛隊の生命を危険にさらします。ただでさえ在
日米軍基地の七割が集中する沖縄県民に、
台湾有事を想定した米軍機の超低空飛行訓練など、更なる基地負担を押し付けるものです。
法案は、憲法違反の
安保法制の一環として、
中国を軍事的に抑止するために
自衛隊を増強し、日印ACSAを名目に、インドとの間の事実上の軍事
同盟関係を通じて、
米国の軍事戦略に沿ったアジア版NATOを目指す
日米豪印のQUAD、四か国軍事
同盟に法的な
位置付けを与えるものです。
しかし、このまま
米国を中心とする対
中国抑止に傾倒していくことが、
日本の国民の生命、財産の保障につながるか、慎重な検討が必要です。困難ではあっても、軍事偏重の対中抑止政策を改め、外交的努力を最優先して東アジアの平和と安定をつくり出すことこそ、
日本政府に求められています。
このことを訴えて、反対の討論といたします。