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舘田参考人 おはようございます。御紹介いただきました
東邦大学の
舘田と申しますけれども、本日はこのような発表の
機会をいただきまして、ありがとうございます。
新型コロナウイルス感染症ですけれども、なかなか収束が見えない
状況の中で私
たち一年を過ごしてきたわけですけれども、その間いろいろなことを
経験し、学び、そして反省しながらここまで来ました。今まさに、
緊急事態宣言をどのように
解除していくのか、そしてその後どのように対応していくのかということが大きな問題となっているところです。
今日は、私の
立場からして、
感染症に関しまして、一年を振り返りながら、そしてこれからの
対策の
在り方等に関してお話しして、そして
皆様方からの御質問をいただければというふうに感じています。
お
手元に
資料を配らせていただきました。それに従いましてお話を進めていければというふうに思います。
一
ページ目の下の
スライド、
感染症マップということで、今、既に一億人以上の
感染者が出て、二百四十万人を超える方がお亡くなりになっている、そういった
状況で、毎日毎日、新しい
感染者、残念ながら多くの方がお亡くなりになっているという
状況が続いています。
次の
ページの上の
スライドになりますけれども、そんな中で、やはり毎日毎日、世界の中でも、その
感染症の
状態が
変化してきています。
左は一日
当たりの
感染者数、右が一日
当たりの
死亡者数ですけれども、今でも一日五十万人以上が
感染し、そして、今でも一日一万人以上の方がお亡くなりになっている、そういった
状況ですが、
最後のところをちょっと見ていただくと、赤い
矢印のところになりますけれども、ここ一、二週間、世界的に見ても
感染者数そして
死亡者数の
減少が見られているということが大事になるかと思います。今、
変異株の
出現が大きな問題となっている、そういった
状況の中で、全体で見ると
感染者数は
減少化傾向に向かいつつあるということは大事な事実になろうかと思います。
下の
スライド、
日本、第一波、第二波、第三波を何とか乗り越えようとしている、そういった
状況です。下の図が
死亡者数になるわけですけれども、やはり冬の
コロナは厳しかった、残念ながら多くの方がお亡くなりになった、そういう
状況ですけれども、
日本で今、四十一万人以上の
感染症患者さんが出て、残念ながら七千人を超えてしまいましたけれども、そういう多くの方がお亡くなりになっている、そういった
状況であります。
次の
ページ、上の
スライド、
東京、一日
当たりの
感染者数の
推移ということでまとめさせていただきました。去年の四月から今年の二月までの全体像を把握していただくという形で示させていただきましたけれども、非常に大きな大事な
経験、そして反省がこの中に見えているというふうに思います。
去年の四月の第一波、
緊急事態宣言が四月の七日に出されたあの山、あのときの
ピークは、四月の十七日で二百六人でした。今考えると少ないというふうに思うんですけれども、あのときは、もう
医療現場は大変でした。本当にもう、逼迫というか、崩壊がもう本当に目の前にあるような、そういった
状況があったことが思い出されます。
緊急事態宣言の
解除が五月の二十五日、そして、その
解除されたときは、
東京で一日の
感染者数は二十人前後まで抑えられていた、そういう
状況での
解除だったわけですけれども、残念ながら、その
時点で既に次の火が燃え出していた、
歓楽街の
飲食店を
中心とする
クラスターが少しずつ少しずつ進んでいた、そういったことを後から気づいていったことが思い出されます。
そして、それが原因となって、
中心となって、第二波、八月に見られた第二波です。そのときの
ピークは八月の二日の四百七十二人でした。このときは
緊急事態宣言を出すことなく、何とかこの山を乗り切ることができた。これは
一つの大きな我々にとっての自信にもなりましたが、ただ、下げ切らない、そういった
状況が、九月、十月、
感染者数二百人前後、そして十月、十一月になってくると五百人前後という形でだんだんだんだん増えてくる中で、残念ながら、今回の第三波、第二回目の
緊急事態宣言ということになってしまったわけです。
ここで青の
矢印のところがありますけれども、これは、個人的に私は、今振り返ってみると、たらればの話になりますけれども、こういったところで何か次の
対策が取れなかったのだろうかということ。初めての
経験ですから、なかなか難しいです。しかし、今こういった
経験が蓄積される中で、次はもう少し
効果的な
対策を取る、そういったことを考えていかなければいけないということを強く感じているところです。
下の
スライド、
緊急事態宣言の
解除のときということで、幾つかの
ポイントを示させていただきました。
再
増加を絶対に阻止していかなければいけない。
蔓延防止等重点措置、これが動き出しました。これによって段階的な
解除、ある
意味、伝家の宝刀としての
緊急事態宣言の前に、あるいは後に、これが使えるようになったということは非常に大きい。それをいかに
効果的に使っていくのかということが大事になります。
急所に対する持続的、
積極的対策の実施。
急所が分かってきた。この一年間の
経験の蓄積の中で
急所が分かってきた。それは
飲食の場であり
歓楽街でありということで、そこをどうやって
効果的にたたいていくのかということが大事になるということです。
四番、
攻めの
検査による
クラスターの
早期発見。どうしても今までは追われる形での
検査が行われていたわけですけれども、それをこの
緊急事態宣言の
解除のときに、
攻めに転じていかなければいけないというふうに私は思います。
五番目、文化としての
感染対策の徹底と定着。少しずつですけれども、確実にその
方向性が見られているんじゃないかなというふうに思います。
次の
ページの上、
解除後の
攻めの
感染対策ということになります。
濃厚接触者や
有症状者に対しての
検査はどうしても守りだった。それを、
ハイリスクあるいは無症状の
人たちに対しても積極的に
検査を行う
攻めの
検査、これが今求められている
変化だというふうに思います。
急所の中の
急所が今見えてきているわけですよね。そこを
地域限定の形で徹底的にたたく。
時短要請の継続、そして、それに見合った
補償ですね。一日六万円という
時短営業に対する
補償だけではなくて、
急所の
急所ですから、そこに対しては更に徹底したサポートの下に
協力をお願いするような、そういった
方向性を考えていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。
二番、
攻めの
検査として、定期的に、かつ無料で、これは既にもう進もうとしていますけれども、
歓楽街や
飲食店を
中心とした、まさにあぶり出されてきたその
急所、そこに対してどういうふうに
検査、そしてまた、弱い、
高齢者あるいはその職員を守るかということが非常に大事になりますし、それ以外にも
合宿所や
集団生活の場所などが、これが
急所ということになろうかと思います。
三番目は、今話題となっている
変異ウイルス対策ですけれども、
変異ウイルス検出体制の更なる充実、そして
遺伝子多
型解析等を用いた
伝播ルートの追跡、解明というものが、これが非常に大事になっていく
方向性です。
下の
スライド、
新型コロナウイルス変異ウイルスの
出現と
広がりということで、まだ今の段階は面的な
広がりは見えてはいない、そういうふうなことがよく言われますけれども、ただ、残念ながら、
市中感染、
伝播を疑うような、そういった
事例がぽつぽつと出てきている。
そして、二月十日の
時点では計百八例、
国内事例という形で、こういう形で報告されているわけですけれども、
イギリス株がメインであるということ。一月二十九日の
時点で、
東京iCDCが千七百十例の
遺伝子解析、
陽性例に対して
変異株の
検査を行ったところ、二例が
変異株、〇・一%ということで、まだそんなに多くない。しかし、
皆様方がお感じになっているとおり、残念ながら、これは
水面下の
広がりを覚悟しておかなければいけないし、それに備えた
対策というものを考えていかなければいけないというふうに私は思います。
次の
ページの上、
新型コロナウイルスの、シェーマで示したものですけれども、一番表層のところの赤字で示しているSたんぱくですね、スパイク糖たんぱく、ここの部分で人の細胞に吸着して
感染が広がっていく、そこの
変異がこの
ウイルスの
伝播性の
変化につながってくるということが明らかになっているところです。
下の
スライド、
ウイルスの
変異と
進化の
方向性です。
変異というのは、生き物、
ウイルス、細菌も含めて常に起きているものですよね。この
ウイルスは、二週間に一回の頻度で
変異が起きています。
日本に広がっている
ウイルスの中でも、二週間に一回は
変異が起きている。
どこに
変異が入るかはランダムであり、それが、Sの
受容体結合部位に
変異が入ると
感染性の
変化の
リスクが生じてくるということが大事。偶然です、たまたまです、そこに
変異が入ってしまうと、それが
リスクが高まるということになります。
ただ、その
変異が、
感染性、
病原性、その
変化に必ずしも一致しないということも大事です。
変異は起きているけれども、
感染性は高まるけれども、
病原性に関してというのはまた別の問題で考えていかなければいけないということが大事になります。
一般的には、
ウイルスの
変異というのは
広がりやすくなる
方向に
変異がします。一方で、弱い
ウイルスになる
方向に
変化していくのが生物の
進化の
方向性になります。すなわち、風邪の
コロナウイルスになる
方向に
広がりやすく、
遺伝子を残す
方向に
変化していくというのが一般的な考え方になりますけれども、今回のこの
ウイルス、
変異がどういう
方向に進んでいくのかということは非常に注意して見ていかなければいけない。
次の
ページの上、
変異ウイルスの
出現と問題となる
ポイントについて簡単にまとめました。
感染性が残念ながら高まっているということが報告されています。しかし、診断が難しくなるか、あるいは治療に
反応しなくなるか、
死亡率が高くなるか、
ワクチンの
効果が低下するかに関しましては、まだよく分かっていないというのが
現状だというふうに思います。そういう
意味では、こういった項目に関しましては、
日本の中でしっかりと
データを出して、そして
解析を続けていくということが大事になります。
下の
スライド。例えば、
変異ウイルスで
死亡率に大きな
変化はないけれども、ただし
死亡患者数が増えるというような、そういった報告が、これは今年になって発表されました。これはちょっとごちゃごちゃしていますけれども、上の
スライドでは、赤でくくったところが六十代、七十代、八十代の人の、この赤が
死亡ですね。そして、
変異の「変」と書いてあるところが
変異ウイルスによるものですけれども、これを見ていただくと、コントロールと
変異株で
死亡の率に関しては差がないんですけれども、下の赤でくくってあるところは、これは実際の数で見てみると、
感染者数が増えるから
変異株による
感染では
死亡者数が増えてくるような、そういったことが報告されています。これは
一つの例、
変異ウイルスによる例ですけれども、こういった
データを
ウイルスごとに、
感染性そして
病原性に関して
解析していくことが重要になろうかと思います。
次の
ページの上の
スライドですけれども、そんな中で、世界中で進行する
ワクチン接種ですね。
日本もようやく
接種ができるようになるような
状況の中で、私どもは、これは
感染症学会としても慎重に、冷静にそれを見ていかなければいけないという
立場でいました。
そんな中で、非常にうれしいことに、アメリカで二千六百万人を超える
接種者が得られている。イスラエルでは人口の四〇%を超える人が打って、そしてその
有効性、副
反応に関しましても、受け入れられる
程度の副
反応であるということが明らかになってきているということは非常に大事な事実であり、下の
スライド、たくさんの
ワクチンの開発が進んでいる。それは、
日本で
最初に使われるようになる
ファイザーのものだけではなくて、モデルナやアストラゼネカ、それぞれいろんな特徴、ターゲットを変えて、そして
変異ウイルスにも効くような、そういった違いがある
ワクチンということが言えるかと思います。
次の
ページの上。そんな中で、例えば、
ワクチン接種後の
血清中に存在する
中和抗体の比較ということで、
ファイザーが作った
ワクチン、そして
変異ウイルスはこれは
イギリス株です、に対して、その
ワクチンを打った人の
血液の中にどれだけ中和する
抗体があるかということを見た、そういった成績ですけれども、ちょっと分かりにくいかもしれませんけれども、
縦軸はその
患者さんの
血液を希釈していって、何倍希釈まで
ウイルスを中和することができるかということを見てみると、これはざっくり見ていただくと、
変異の前の
ウイルスに対して
変異した
イギリスの
ウイルス、同じぐらいこの
患者さんの
血清は中和することができる。すなわち、同等の
効果が得られるということが明らかになってきているところです。これは一例ですけれども、
変異ウイルスごとに、そして
ワクチンごとに、こういった
データを蓄積していくということが重要になろうかと思います。
その
ページの下の
スライドです。今回、
新型コロナウイルスの
出現を見たわけですけれども、その
予兆というものが既に見られていた。二〇〇二年には
SARSが、二〇一二年には
MERSが同じ
コロナウイルスとして、
新型として出てきた、いずれもコウモリから。例えば
SARSはハクビシンを、そして
MERSはヒトコブラクダを介して人に広がってきた。
予兆が見られていたわけですね。そんな中での今回の
新型コロナです。
ということは、次の
新型病原体の
出現は、これは必然であるというふうに考えておかなければいけない。それに対する備えを我々はしっかりと整えていかなければいけないということになります。
次の
ページの上。今回私も、アドバイザリーボードあるいは
分科会等々に入らせていただいて、いろいろと
経験をさせていただきました。その中で非常に感じたのは、こういった
危機管理体制下における
ワンボイスの
重要性です。いろいろなところがいろいろなことを言い出してしまうと、なかなか
市民の
人たち、国民に対して伝わらない。何に従っていいのかが分からないという、そういったことを
経験してきました。
これは、いろいろな
ステークホルダーの方がいらっしゃるわけですけれども、命を守る、
生活を守るというこの一点において、
危機管理の
体制で
協力していくといった仕組み、そういった考えが重要になるのではないかなというふうに思います。
下の
スライド。
この
ウイルスは、人、社会、国に
分断を引き起こしやすい
ウイルスで、その
分断が差別や偏見を引き起こしてしまう。非常に大きな問題で、これに関して、我々が何とかしていかなければいけないというのももちろんですし、政治も含めてみんなで
協力してこれを防いでいかなければいけない問題だというふうに思います。
市民と行政、
専門家の
温度差。
情報発信の
重要性、
リスクコミュニケーションです。これに関しても、なかなか難しい問題があるということを改めて感じています。
ただ、
日本では、
市民一人一人の
協力をいただけたことによって何とかここまでこういうふうに来れているということは、大きな力だというふうに思います。