○松尾明弘君
立憲民主党の松尾明弘です。
会派を代表して、ただいま
議題に上がっている
地方公共団体情報システム標準化法につき質問をします。(
拍手)
まず、昨日、四月五日、株式会社フジ・メディア・ホールディングスが二〇一二年から一四年にかけて放送法で定める外資規制に違反していた可能性があることが発表されました。
午前中の
委員会で同僚議員が本事案について質問しましたが、
総務省においては事実関係の把握が十分になされておりません。これだけ放送
事業者の外資規制が話題になっており、
国民の
生活にも大きな影響が生じかねない中で、十分に実態把握がなされていないこと自体が、一連の
総務省の不祥事と相まって、放送
行政に対する
国民の疑惑を招くものです。
放送法上の外資規制は、有限の
国民共有財産である電波を自
国民が優先的に
利用するためであるとともに、放送が
日本国内の言論に与える影響が大きいことに鑑み、外国人が言論に与える影響を過度に生じさせないために設けられている、非常に重要なものです。
放送
行政がゆがめられていないか、事実関係を徹底的に究明し、速やかに
国民の疑念を払拭されるよう、強く申し入れます。
さて、本
法案を審議するに当たって最も大切な視点は、憲法第九十二条で定められている
地方自治の本旨を尊重することです。
地方自治の本旨は、
地方自治が
住民の
意思に基づいて行われるという
住民自治と、
地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの
意思と責任の下でなされるという団体自治の二つの要素を含んでいるとされています。つまり、
住民や
地方自治体が、自分たちのことは自分たちで決められるということです。
日本の
社会が
デジタル化によって大きく変わろうとしている今だからこそ、この
地方自治の本旨をきちんと念頭に置いて、国と
地方の在り方を考えなければなりません。
そもそも、明治憲法と異なり、
日本国憲法において
地方自治制が定められたのは、
地方の歴史的、伝統的
制度を保障し、多様性のある
社会を目指すべきという考えからです。
地方の多様性が保障されることで、
地方自治体による創意工夫と自立が促進され、真の
地方自治を
実現することができます。
しかし、過去、
日本国憲法制定以降、機関委任事務が増大していったことで、
現場職員の裁量が徐々になくなっていき、
地方自治が形骸化してしまったことがありました。そこで、一九九九年の
地方自治法改正において、機関委任事務が廃止され、その多くが自治事務に組み替えられたことによって、
地方自治が取り戻されたのです。私たちは、過去に学ばなければなりません。同じ轍を踏んではならないのです。
地方公共団体の
デジタル化を進める
目的は、業務の
効率化、コスト削減です。
デジタル化を進めることで、職員の負担を減らし、より
地方を元気にするようなことに時間を使えるようになることです。一方で、
デジタル化によって
地方自治業務の画一化が進められ、
地方自治の本旨が損なわれることは、厳に慎まなければならないのです。
そこで、総務大臣に質問です。
デジタル社会へと大きくかじを切っている現
政府においても、憲法第九十二条に定められている
地方自治の本旨は尊重され、損なうことはないということでよろしいでしょうか。
憲法上定められている
地方自治の本旨に基づくと、おのずから国と
地方公共団体の関係性も決まってきます。すなわち、国と
地方公共団体とは、上下関係にあるのではなく、対等で、協力し合う関係です。どのような
地方行政を行うかについては、国が一方的に決めるのではなく、
地方公共団体が主体的に決定することができなければなりません。
そうだとすると、自ら行う
地方行政の遂行に際してどのような
情報システムを導入して活用するかについても、
地方公共団体が自己の判断に基づいて行わなければなりません。
国と
地方公共団体の関係が対等であるということは、
地方公共団体の大小にかかわらず、当然に認められるものです。これは、人口が約百七十人の青ケ島村であっても、人口が約三百七十六万人の横浜市であっても変わるものではありません。そして、人口が二万倍も違うこの両
地方公共団体では、
行政ニーズ、
予算、
システム担当者のスキル、あらゆることが異なることは容易に想像できます。
国は、
地方公共団体が多様であるということを認識した上で様々な
制度設計をし、
地方公共団体の判断を最大限尊重しなければならないのです。
地方公共団体の
情報システムを
標準化する場面においても、
特定の
システムを導入することを国が義務づけるべきではありません。国は、あくまでも
標準化のための仕様策定をするにとどまり、各
地方公共団体が、それぞれの
行政ニーズや財政事情に応じて、必要なときに必要十分な
システムを構築できる
制度とするべきです。
そこで、総務大臣に質問です。
本
法律案によって、国が
地方公共団体に対して、
地方の
行政ニーズや財政事情を考慮することなく、
標準化された
システムの導入を強制することは想定されるのでしょうか。お答えください。
各
地方公共団体では、きめ細やかな
行政サービスを提供し、
住民の
利便性を
向上させるために日々創意工夫を凝らしています。その結果、本
法案で
標準化の対象になるとされている十七業務についても、各
地方公共団体独自で、子ども手当の追加
給付などを行っている事例が見られます。
このような独自の
政策を
実現しているのが、独自の
システムです。ですから、
システムを独自に開発できないなどということがあると、
地方自治が害される結果になりかねません。
標準化の
目的を害さない限り、各
地方公共団体が
標準化システム以外の
システムを追加で開発することは最大限保障されるべきです。
今後想定される
地方公共団体独自の施策には、例えば、
個人情報保護のための施策があります。
個人情報保護法制は、当初、各
地方公共団体において
個人情報保護条例が制定され、後追いの形で
個人情報保護法が制定されたという経緯があります。特に、本
法案で
システムが
標準化される業務は、
住民基本台帳、
住民税、
障害者福祉、子ども・子育て支援など、機微に触れる
個人情報に直結するものです。
今回の
デジタル改革関連法案によって
個人情報保護が後退し、条例で特に
保護する必要があると考える
地方公共団体があることは容易に想定されます。その場合は、
標準化システムに加え、
個人情報が
保護されるための更なる追加開発がなされることになります。
そこで、総務大臣に質問です。
地方公共団体が、
標準化システム以外の
システムを開発し、
住民に対する
行政サービスの
向上や権利の保持に努めることは、
地方自治の本旨、
地方活性化の
観点から最大限認められるべきと考えていますが、いかがでしょうか。それとも、
政府としては、効率性のために、独自
システムの開発はなるべく抑制的とし、
地方公共団体の独自性、独創性、多様性を制約することもいとわないという考えなのでしょうか。お答えください。
地方公共団体による
行政サービスの提供に用いる
システムを
設計する際には、
現場の声を最大限取り入れることが必須であることは言うまでもありません。
デジタルトランスフォーメーションを
実現するために、
自治体業務の徹底的な見直しを行った上で、業務の
標準化を行い、その標準業務に合わせた
システムへと移行することになりますが、いずれも簡単な作業ではなく、非常に難易度が高いものであると考えなければなりません。
特に、五年以内という年限に縛られて拙速に業務プロセス標準を策定し、それが
現場の実情と乖離していれば、
現場の業務は大混乱に陥ってしまいます。
そうだとすると、
標準化システムの仕様を検討するに際しては、国や
地方公共団体の首長だけでなく、実際に
現場で
システム標準化対象事務に従事している職員の意見を最大限反映させるべきであり、首長の
意向を忖度することなくフラットな意見を集約する
制度が必要であると考えますが、総務大臣の見解をお聞かせください。
今後、
日本の
デジタル化を進めていくためには、国や
地方公共団体が
委託して構築する
システムについては、オープンソース化を原則とするべきです。
地方公共団体が用いる
システムは、その導入のための原資は税金であって、いわば公共財産であります。
行政システムがオープンソース化されていれば、どのような
システムが用いられているのか、費用対効果を十分に有しているのかどうか、誰でも検証することができます。
また、
システムがオープンソース化してブラックボックス化が回避されていることによって、
特定の
システム開発
企業に対してのみ業務
委託が集中し、開発
企業を変更することができない、いわゆるベンダーロックに陥ることを防ぐことができます。
開発
企業の変更が可能となれば、開発
企業間で競争が促進され、結果的に
システム開発費を縮減することが可能になります。また、
日本のIT
企業の裾野を広げることにもつながります。
オープンソース化には
セキュリティーリスクを指摘する声もありますが、むしろ、ブラックボックスであるよりもオープンとした方が
セキュリティーを脅かす不具合を見つけやすいのです。アメリカでは、フェデラルソースコードポリシーを定めており、ソースコードの一部についてはオープンソース化しなければならないことになっています。
セキュリティーの問題は、オープンにするコードを選択することで回避することは十分に可能です。
先ほども述べたとおり、今回の
地方公共団体システム標準化は、
標準化と多様性保持を両立させるという非常に難易度が高いものです。そう考えると、標準
システムをオープン化することで、実際に業務を
利用している
地方公共団体の
システム担当者や外部のエンジニアがチェックし
提案することを可能にすることで、より多様で効率的な
システムを開発することができるはずです。
最近では、東京都の
新型コロナウイルス対策サイトのソースが公開されていて、これに対して
台湾のIT大臣であるオードリー・タン氏がコメントを寄せたことも話題となりました。このように、オープンソース化することで、
日本だけでなく
世界中から知恵を集約することができるようになります。
この
行政システムのオープンソース化は、今後の
日本の
デジタル化を進めるに当たって非常に重要な方針であり、
システム標準化を検討するこのタイミングでこそ行うべきと考えますが、
デジタル改革担当大臣の見解を聞かせてください。
本
法案が目指している、
地方公共団体の
システムを共通化し、
住民サービスの安定
向上と
地方公共団体の業務の円滑、
効率化を図るという
目的自体は
賛成できるものです。
しかし、
地方公共団体の
システムに限らず、今後
日本が
デジタル化を確実に進めるに当たっては、公正性、透明性、多様性といった
観点が非常に重要となります。また、
個人情報保護を始めとする
個人の権利が十分に守られていることを担保することが、
国民の理解を得られ、
デジタル化が
推進されるためには不可欠です。
地方自治の本旨を始めとする公正性や多様性を保障するための
理念に十分留意し、民主的でオープンな議論による透明なプロセスを通じた
デジタル化を進めていくことを改めて申し入れ、私からの質問を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔国務大臣武田良太君
登壇〕