○
枝野幸男君
新型感染症、COVID―19によって、四千五百人を超える方が命を失いました。その中には、同僚である
羽田雄一郎参議院議員も含まれます。
今も、陽性と判定されながら、
自宅療養を余儀なくされている方、入院できない方、
重症者病棟に転院できない方がいます。適切な治療を受けられないまま亡くなった方も少なくありません。
亡くなられた方に心から哀悼の意を表し、御遺族の
皆さんに
お悔やみを申し上げます。患者、
感染者の
皆さんにお
見舞いを、そして、
医療体制に不安を抱いている全ての
皆さんに、
国会に議席を持つ一人として
おわびを申し上げます。
医療は、逼迫というより、もはや崩壊です。現場からは、このままでは壊滅するとの声まで聞こえています。
医療従事者の
皆さんは、昼夜を問わず、必死で治療に当たっています。
感染症に
対応している
皆さんはもちろんのこと、それ以外の
診療科や
高齢者施設などでも多くの
皆さんに長期間にわたって御苦労いただいています。全ての
エッセンシャルワーカーの
皆さんに、厚く御礼を申し上げます。
本来、網羅的、総括的にお尋ねしたいところですが、命と
暮らしが
危機的な、深刻な
状況にあることを踏まえ、私は、
立憲民主党・無所属を代表して、
感染症対策を中心に、テーマを絞って質問いたします。(拍手)
今回の
感染拡大は、昨年の十一月には明らかな兆候が表れていました。十一月下旬には、
政府自ら、勝負の三週間と言ったくらいです。ところが、
総理は、私
たちを始め多くの声を無視して
GoToキャンペーンを続け、必要な
対策を先送りしてきました。その結果が、
感染爆発と呼ばざるを得ない現状です。
緊急事態宣言についても、私
たちは、昨年十二月十八日には、決断すべきと提案していました。しかし、
総理が
宣言に至ったのは一月七日。その際にも、一都三県だけでよいのかと指摘しましたが、結局、一週間もたたない十三日に、七府県を慌てて追加せざるを得なくなっています。そして、今も、
宣言の出されていない
地域の中に、複数の指標が
ステージ4に達しているところも少なくありません。
なぜ、こんなに後手に回っているんですか。今後の適切な
対応のためにも、判断の遅れを認め、反省することから始めるべきではないですか。
総理にお尋ねします。
私
たちが
新型インフルエンザ特別措置法などの
改正案を
国会提出したのは、昨年の十二月二日です。
政府・与党もようやく重い腰を上げ、今
国会に
政府案が提出されることとなりました。
緊急事態を
宣言してからその根拠となる
特措法の
改正を進めるというのは、順序が逆で、
泥縄そのものです。
野党の求めを無視して昨年十二月五日に早々と
国会を閉じ、約一か月半にわたって
国会を開かなかったのはなぜですか。この間に、
政府からも対案を出し、
野党案とともに審議を進めれば、
特措法などの
改正はとっくに実現できていました。
総理には、
国会を閉じ、
法改正が遅れたことへの反省があるのか、お聞かせください。
危機において、正常な
日常生活の延長線上の出来事として捉えてしまい、自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりしてしまうこと、これを
正常性バイアスと呼びます。
危機において
リーダーが最も注意すべきことであり、最悪を想定して
対応することが
危機管理の
基本です。
私は、
東日本大震災での経験と教訓を踏まえ、このことを昨年も
国会質疑の場で指摘をしてきました。残念ながら、
総理は根拠なき
楽観論に立ち、それによって
対応が遅れてきたと言わざるを得ません。まさに
正常性バイアスそのものです。
正常性バイアスに陥ってきたことを認め、最悪を想定した
対応へと根本的に転換すべきと考えますが、いかがでしょうか。
昨年の
緊急事態宣言は、多くの
皆さんに大きな負担をおかけし、一旦は
感染を大幅に抑え込むことができました。一人一人の痛みと犠牲が積み重なって
宣言解除に至ったことを、私
たちは肝に銘じるべきです。
文字どおりの
緊急事態であった昨年と異なり、今回の
感染拡大は、
政治によって引き起こされた人災と言っても過言ではありません。
冬場に
感染が広がる
危険性は繰り返し指摘されてきました。しかし、
保健所など
検査体制の拡充や
重症病棟の
確保、
医療機関とそこで働く方々への
支援などは十分なものではありませんでした。
他方で、
政府は、
経済の再開に大きくかじを切りました。
総理がこだわった
GoToキャンペーンは、税金を使って、旅行に行ってください、会食してくださいと勧めるものです。
感染が収まらない中で強行すれば火に油を注ぐことになることは、初めから心配されていたことです。結果として、年末年始の書き入れどきに営業時間の短縮や自粛が呼びかけられることとなり、
緊急事態宣言が出され、
経済にもかえって大きな打撃を与えました。
こうした
政府の動きを止めることができなかったことに、私はじくじたる思いです。
国民の
皆さんに、深く
おわびを申し上げます。
同じ過ちを繰り返さないためには、その
場しのぎの
対応ではなく、先を見通した明確な
戦略方針と、
優先順位をつけた具体的な
プランが必要です。多くの
皆さんも、先行きが見えないことに不安を募らせています。
その際、
事業や
雇用を守り、
経済を下支えして、できるだけ早く回復させることは、重要な課題の一つです。できれば、
経済を回しながら
感染拡大防止と両立させたい、私もそう思います。
しかし、
感染が収まらない中で、
経済を活性化させようと人の移動や会食など接触の機会を増やせば、
感染が再度
拡大し、結果的に
経済により大きな悪影響を与えます。残念ながら、この間の
状況は、この厳しい現実を私
たちに明確に突きつけました。
同じ失敗を繰り返すことは許されません。
総理の認識を伺います。
国内での
感染封じ込めにおおむね成功し、
経済も順調に回復しているニュージーランドや台湾では、
感染防止と
経済の両立を目指すのではなく、まずは徹底的な
感染の
封じ込めに取り組みました。市中にウイルスが蔓延する中で
経済を回していく
ウィズコロナではなく、市中から
感染をなくしてしまう、いわばゼロ
コロナを目指し、成果を上げているのです。
一時的には強力な
ロックダウン措置を取った多くの
欧米諸国でも、そして
日本でも、
感染拡大の繰り返しに苦しんでいるのは、十分に
感染者が減らないうちに
対応を緩めたからです。
幸い
日本は、両国と同様の島国で、
水際対策を取りやすい環境にあります。人口や
経済規模には違いがありますが、これらの
成功例を参考に、
ウィズコロナではなく、ゼロ
コロナを目指す方向へと転換することを提案します。
まずは徹底した
感染の
封じ込めに取り組み、その間は十分な補償と
給付で支える。できるだけ早く
感染を
封じ込めた後に、いつでも
封じ込めができる体制を維持しつつ、旅行でも会食でもイベントでも、制約なく、安心して再開する。このことで、結果的に
経済を最も早く立ち直らせることにつながります。
これこそが取るべき
基本戦略だと思いますが、いかがでしょうか。
あわせて、
政府は、
緊急事態宣言について、
ステージ3、
新規感染者数五百人にまで下がれば解除すると言っています。これでは、また
感染が
拡大に向かい、
経済にもより深刻な打撃を与えかねず、見直すべきと考えます。
答弁を求めます。
こうした
基本戦略の下、
立憲民主党は、具体的な施策の三本柱として、以下の点を可及的速やかに進めるべきと考えます。
第一に、命を守るとりでである
医療の崩壊、壊滅を食い止め、充実させることに最優先で取り組みます。
医療機関や
従事者に対する
支援を万全にし、
病床の
確保を急ぎます。
第二に、
感染の広がりを防ぎ、
封じ込めることを徹底します。無症状の方を含めた
感染者の
早期把握と確実な隔離を進め、間違っても第四波を招くことがないよう、抑え込みます。
第三に、
感染を徹底して
封じ込めるまでの間、倒産や廃業を防ぐ補償と、誰一人取り残すことがない
生活支援で、
暮らしと
経済を守ります。
第一の、
医療崩壊を食い止めるためにも、本来は
新規感染者を減らすことが一番です。しかし、既に崩壊している
状況では、
医療を急ぎ大幅に
拡大しなければなりません。
感染症法を
改正し、
病床確保への
協力を勧告できるようにすることは、やむを得ないと考えます。しかし、
政府には、
協力を求める前になすべきことがあります。
感染症患者の
受入れには、
院内感染の
防止措置など多大な
コストを要します。その上、他の
診療科を縮小することなどを余儀なくされ、
診療報酬が増額されたとはいえ、
病院経営を著しく悪化させます。今、示されている
助成措置では不十分です。
医療機関といえども、資金がショートすれば倒産しかねず、
医療従事者も、かすみを食べて生きているわけではありません。
使命感と法的な
強制力だけに頼ることは不可能です。
受入れのための
コストと
受入れに伴う減収を全額補填することを明確にし、事前に包括払いすることが
協力を求める前提だと考えますが、いかがでしょうか。
医療従事者の疲労は限界に達しています。
使命感で頑張ってきた
皆さんも、
長期化の中で、肉体的にも精神的にも限界を超え、離職が相次いでいます。
政府の進めている
緊急支援事業では、
医療従事者の
処遇改善につながる担保がありません。また、
補助の
対象が限定され、第一波から長期にわたって最前線で頑張り、最も疲弊している
皆さんへの
支援が抜け落ちています。
病床を
確保しても、そこで働いてくれる
医療従事者がいなければ成り立ちません。
私
たちは、第一波から継続している方を含め、第二波、第三波に
対応している
医療従事者にもう一度二十万円の
慰労金を支給する、その法案を提出しました。感謝を口にするだけでなく、個々の
皆さんに確実にお金を届け、慰労の気持ちを具体化することで、少しでも離職を防ぎ、採用が進むよう努力すべきです。この法案に賛同いただきたく、
答弁を求めます。
第二に必要な、
感染拡大を防ぐためには、
検査の
拡大が不可欠です。私
たちは、昨年春の第一波から、繰り返しこれを訴えてきました。
しかし、
政府は、一貫して
PCR検査の
拡大に消極的です。その結果、
政府の把握できていない私費による
民間での
検査を除けば、
人口当たりの
検査件数が
先進国で
最低水準になっています。
この間、
政府が取ってきた
戦略は、
保健所が
感染者の
濃厚接触者を把握し、
感染ルートをたどって
クラスターを防ぐというものでした。しかし、
感染ルートの分からない方が増え、
保健所の
人員不足などもあり、この
戦略は既に完全に破綻しています。
感染ルート不明者が
一定規模を超えればこの
戦略が成り立たないことは、素人でも分かります。
感染症対策の
基本は、
感染者をできるだけ早く見つけ出し、確実に隔離することではないですか。
無症状の
感染者による
感染拡大を防ぐには、大規模に
検査を実施し、無
症状感染者を見つけ出して、確実に隔離するしかありません。既に、世田谷区や埼玉県などでは独自の
対策に踏み切りました。
政府として明確に
戦略変更することを提案します。
総理の
見解を伺います。
こうした方向への第一歩として、
立憲民主党は、
医療、介護、福祉、保育に従事する方や教員など、
エッセンシャルワーカーで希望する方を
対象に月二回の
定期検査を公費で行うよう提案してきました。なぜこれを進めないのか、理由を伺います。
PCR検査については、
政府の把握している能力ですらフルに稼働していないことに加え、
政府の把握していない
民間での私費による
検査が急激に増加しています。短時間で大量の
検査が可能な
自動化機械も、相次いで伝えられています。
政府も、
民間検査との連携を図り、
陽性者の報告を求めるようですが、更に進めて、
民間などの持つ能力の情報を一括して募り、全体像を把握して、計画的に
協力を求め、
検査の
拡大を進めるべきではないですか。
答弁を求めます。
感染者を隔離することも、
感染拡大防止に不可欠です。このために
強制力を持たせようとする
政府の
考え方を全面的に否定するものではありません。
しかし、第一に、入院したくてもできない方、
ホテル療養すらできずに、やむなく自宅にとどまっている方などが少なからず生じています。
第二に、
感染者の中には、乳幼児を抱えている方、寝たきりの家族の介護をしている方など、様々な事情の方がいます。自分が入院したら育児や介護の代わりがいないという方など、誰でも安心して入院できる
支援体制が必要です。
国民に
強制力を持って迫る前に、
国民が
協力できるよう、
病床や
療養用ホテルの
確保、そして
感染者の
生活支援体制の充実など、
政府としての責任を果たすべきではないですか。
また、
懲役刑まで設けようというのは到底容認できません。行き過ぎではないですか。
それぞれ
総理の
答弁を求めます。
感染拡大防止のためには、
国民の
皆さんに様々な御
協力をいただかなければなりません。そのためには、
リーダーによる
説得力と真剣さの備わった呼びかけが必要です。
残念ながら、つい先日まで
GoToイートで外食を奨励していた
政府が、反省や
おわびもなく、手のひらを返すように会食しないよう呼びかけても、
説得力はありません。
また、
総理自身に、
国民の
皆さんに積極的に呼びかけよう、理解を得ようという意思が感じられません。
これで
国民の
協力を得られると思っているのでしょうか。
幅広い業種で、多くの方が、倒産や廃業の瀬戸際に追い込まれています。
感染症危機による倒産や廃業が生じないよう最善を尽くすのが
政治の責任です。
持続化給付金と
家賃支援給付金について、その申請は、
野党などの強い求めに押され、一定期間延長されました。しかし、従来の
給付金についての手続の延長であり、再度の
緊急事態宣言など
事態の
長期化に対する
追加措置ではありません。
政府は、
事業再
構築補助金、これは新分野への展開や業種、業態の転換などを図る中堅・
中小事業者に対して
設備資金を
補助する制度ですが、こうした新たな
投資などを前提に
補助をするという通常時と同じような
支援策を提起しています。
しかし、
総理自身がもう一度
皆さんに制約のある
生活をお願いせざるを得ないと述べたように、
事業者も
消費者も厳しい制約の下にあります。
感染が収束しない限り、
業種転換や新
事業など、新たな
投資ができる
事業者は少ないのではないですか。また、これらによって
経営状態を好転できる余地も著しく小さいのではないですか。お答えください。
多くの
事業者が求めているのは、
感染が収束し、制約ある
生活から抜け出すことができるまでの間、何とか今日明日の苦しい
状況を乗り切りたい、まずはこのことです。
倒産や廃業を食い止めるために、
持続化給付金と
家賃支援給付金を継続し、必要に応じて改善や
拡大をした上で、再度支給すべきと考えますが、いかがでしょうか。
雇用の
危機も深刻です。
雇用調整助成金の
特例措置や
休業手当を受け取ることができなかった
労働者に支給される
休業支援金・
給付金の期限は、中途半端な細切れの延長ではなく、少なくとも六月末まで延長すべきです。
総理の
見解を伺います。
休業支援金・
給付金の
対象は
中小企業に限定され、大
企業については、
雇用調整助成金を活用し、
企業が
休業手当を支払うよう想定されています。
しかし、観光や飲食などで、大
企業なのに手当を受け取ることができず、
生活に困窮する
労働者から悲鳴の声が上がっています。大
企業への
雇用調整助成金の
補助率を一〇〇%に引き上げても、全ての大
企業が適切な
対応を取ることは担保されていません。大
企業の
労働者も
休業支援金・
給付金の
支給対象とすべきではないですか。
また、
求職活動の更なる
長期化に備え、
失業手当の
給付日数を延長するとともに、
給付割合を引き上げるべきです。
求職者について、
職業訓練受講給付金と
同額程度の
臨時職業訓練受講給付金を支給することも提案します。
総理の
見解をお尋ねします。
私
たちが提案した、
ひとり親世帯給付金年内支給法案を受け、
臨時特別給付金が再度
給付されたことは一定の前進です。しかし、これから四月に向けて、進学や進級を控え、多くの費用が必要となります。進路の変更や断念、中退などを余儀なくされる
子供たちが相次ぐおそれがあります。一人親以外の
子育て世帯でも、少なくない家庭が厳しい
経済状況にあります。しかし、
臨時特別給付金の
対象からは外されてきました。
一人
親家庭や
生活に困窮する
子育て家庭を
対象に、
臨時特別給付金を二回にわたって支給することを提案します。御
見解を伺います。
約十九兆円に及ぶ第三次
補正予算のうち、
新型感染症の
拡大防止対策は僅か四兆円ほど、半分以上は
感染症の収束後を見据えたものです。年度末の三月三十一日までに
感染症が収束することは、残念ながら期待できません。特に、
GoToキャンペーンに年度内の
追加予算を計上しているのは、
ピント外れの極みであります。
補正予算は、
感染症対策に集中したものへと編成し直し、少なくとも
GoToキャンペーンの
追加予算は削除して、
感染症対策に振り替えるべきです。
答弁を求めます。
限られた
財政状況の中で最優先すべき
感染症対応の
予算に思い切った
重点配分をするには、
不要不急の
事業や
効率性の低い
予算について大胆にカットせざるを得ません。しかし、令和三年度
予算は、そのようなめり張りの利いたものになっておらず、何よりも
感染症対策の
予算が大幅に不足しています。
来年度
予算も大幅な組替えが必要だと考えますが、いかがでしょうか。
東京オリンピック・パラリンピックについて、アスリートなど
関係者の努力と期待を思えば、私も何とか開催したいと思います。しかし、ここまで目前に迫りながら、世界的な
感染拡大が収まらない以上、
希望的観測だけで走るのはかえって無責任です。
本当に実施や参加が可能であるのかを各国の
オリンピック委員会や
競技団体と協議するなど、万一の
事態に備えた
プランBは、どのように検討し、準備しているのでしょうか。
総理の
答弁を求めます。
今年三月十一日で、
東日本大震災と
原発事故から十年が経過します。
亡くなられた方々に改めて哀悼の意を表し、御遺族に
お悔やみを申し上げます。
いまだ
避難生活を送っている四万人を超える
皆さんを始め、
被災者の
皆さんのこの十年の御苦労に心からお
見舞いを申し上げ、
政治が
皆さんの期待に十分に応え切れていないことについて改めて
おわびを申し上げます。
津波被災地域を中心に、
ハード面での
復興はある程度進んでいます。しかし、
地域や家族、壊れてしまった
コミュニティーは、到底回復されたとは言えません。
高齢化の中で、
孤独死が相次いでいます。
原発事故の
被災地復興に至っては、むしろこれからが本番です。
私は、
コミュニティーを再生させるために、そして福島の
復興を更に本格化させるために、引き続き全力を挙げて取り組む決意です。間違っても、十年の節目を風化に向かう区切りにするわけにはいきません。
有識者検討会による提言の
概要案に、
復興再生は国の責務との文言が盛り込まれていないと伝えられています。昨年九月に閣議決定された
基本方針に
復興に関する記述がなかったことに加え、
政府の中で風化が始まっているように見えてなりません。
総理に、改めてその御決意を御自身の言葉で示されるよう求めます。
原発事故で発生した
処理水を海洋放出することが検討されています。しかし、地元では、
風評被害の心配から、
漁業関係者を中心に強い反対の声があります。
トリチウム以外の
放射性核種についても、
処理水の七三%で基準を満たしていないことが明らかになっています。
トリチウムについては、分離ができないから大気か海に放出するしかないと言われてきました。しかし、タスクフォースの
報告書を踏まえると、キュリオンの
分離装置を使って除去できる
可能性もあるのではないでしょうか。
漁業関係者など地元の
皆さんの御苦労と思いに寄り添うなら、かつて凍土遮水壁に膨大な資金を投じたように、最高の技術を用いて
トリチウムを含む
放射性核種の分離に挑戦すべきと考えますが、いかがでしょうか。
二〇五〇年の脱炭素を
宣言したことは、率直に評価します。しかし、それを、
原子力発電への依存を継続、
拡大することの大義名分にしてはなりません。
施政方針では、その点が不明確です。
原子力発電所の新増設を進める予定があるのかどうかも併せて、
考え方を明確に御説明ください。
再生可能エネルギーの拡充と
送電線の増強という方針は歓迎します。しかし、既存の
電力会社に
送電網の増強を迫っても、
民間企業である以上、自社の利益につながらない
投資はできません。
再生可能エネルギーによる発電に
新規参入を促すには、
公共投資として、国の責任で
送電網を増強することが必要ではないですか。
総理の認識を伺います。
脱炭素のためには、建物の
断熱性能を高め、
エネルギー消費量そのものを削減することも重要です。しかし、住宅は、
断熱義務化の
対象から外れています。
日本は、
断熱性能に乏しく
冷暖房効率の悪い建物が多かった分、大きな効果が期待されます。
断熱工事などは、地場の小さな
工務店の仕事をつくり、
地域活性化にも効果的です。
再生可能エネルギーなどとともに、住宅の
断熱化を脱炭素に向けた柱に据えるべきではないでしょうか。
日本では、地震や津波、
火山噴火などに加え、昨年七月の豪雨や昨今の豪雪など、
気候変動の影響と思われる災害が大規模化し、かつ頻発しています。
自然災害は、特別の
事態ではなく、常に
日本のどこかで
対応を迫られる
状況です。
命と
暮らしを守るために、内閣府の
防災部局を格上げして増強し、
災害対策のための独立の省庁を設けるべきではないでしょうか。
総理の
見解を伺います。
米国で
バイデン政権が発足しますが、
政権移行に当たって大きな混乱が生じました。フェイクに基づいて
国民を分断してきた
政治がもたらした、
民主主義の
危機とも呼べる
事態です。
こうした
状況を
総理はどう受け止めていますか。他山の石とすべき点があるとは思いませんか。
昨年十一月、来日中の
王毅中国外相は、
茂木外務大臣との
共同記者会見の場で、尖閣諸島の
領有権を主張しました。
中国公船による
領海侵入などと併せて、失礼千万です。
茂木大臣が、その場で
日本の立場を明確にし、主張を打ち消さなかったのは甚だ残念です。
こうした中国の姿勢に対し、抗議以外にどういった
外交努力をされるつもりか、お答えください。
拉致問題について、安倍前
総理は、この内閣で解決すると断言し、
菅総理も、自ら先頭に立って、あらゆるチャンスを逃すことなく活路を開いていきたいと述べられました。
しかし、さきの
臨時国会でも、
衆参共に、
担当大臣から一度だけ
説明聴取をしたのみで、
野党が求めた
特別委員会での実質的な
質疑は一度もありませんでした。
政府・与党から、
拉致問題解決に向けての熱意や必死さが感じられません。
総理は、拉致問題の解決に向けてどんな行動を取るおつもりですか。
現状打開に向けた
具体策をお尋ねします。
安倍前政権は、新しいアプローチと称して、ロシアとの
共同経済活動を進めつつ、一九五六年の日
ソ共同宣言をベースに、
二島先行返還を実現するという姿勢を示してきました。
ところが、領土問題には全く進展がなく、それどころか、
プーチン大統領は、昨年七月、領土の割譲を禁止する
憲法改正を行うなど、
領土交渉に否定的な姿勢をあからさまに示しています。
はしごを外されたのではないですか。
施政方針で述べられた、これまでの両国間の諸合意とは何を意味するのでしょうか。
二島先行返還を軸に交渉を行っていくということでしょうか。このような
状況の下でも北方領土における
共同経済活動を進めていくのでしょうか。それぞれお答えください。
選択的夫婦別姓の導入について、
総理自身を含め、一部の閣僚などから前向きとも取れる発言があり、前進が期待されました。しかし、強い揺り戻しに遭い、第五次男女共同参画
基本計画の記述はむしろ後退したと言わざるを得ません。
私自身、二十年以上にわたって、繰り返し法案を提出してきました。選択的夫婦別姓を導入する法案を成立させ、結婚における選択肢を増やしませんか。せめて法案の審議を進め、自民党の中はばらばらのようですから、党議拘束を外して採決しませんか。
総理の決意を伺います。
安倍政権では、官僚の
皆さんが官邸の意向を忖度せざるを得ない傾向が強まり、官邸の指示によって、現場の職員が改ざんや廃棄などに加担させられるという事案まで生じました。加えて、
菅総理は、反対する幹部は異動してもらうとまで公言しています。
これでは、官僚の
皆さんのモチベーションを高め、積極的な政策提言を引き出すことなど期待できないのではないですか。
私は、内閣人事局制度が濫用、悪用されてしまったと反省しています。見直しが必要だと考えますが、いかがでしょうか。
新型感染症の
危機で、これまでの
日本政治が根本から問い直されています。
これまで何とか自活できていた方が次々と困窮し、
民間の
支援現場では、まるで野戦病院のような状態が続いている、そんな声が聞こえます。ある
支援団体の方は、パンドラの箱が開いたと表現していました。これまで
政治が見ようとしてこなかった社会の貧困が
感染症によってあぶり出されているということです。
こうした指摘を
総理はどう受け止めますか。
政治は、三十年近く、自助と競争ばかりを強調し、目先の採算性で現場を切り捨て、命と
暮らしを守るための基盤を掘り崩してしまいました。
自助と自己責任が強調され過ぎた余り、困窮の極みにあっても
国民の権利であるはずの
生活保護を申請しないなど、救いを求める声を上げることにためらう方が少なくありません。
この未曽有の
危機にあって必要なのは、時代が決定的に変化したことを認め、
政治そのものを本質的に変えていくことです。
立憲民主党は、自己責任や自助努力ではどうにもならない、そんな
状況が
暮らしの現場で広がっていることを正面から受け止めます。その上で、
政治が先頭に立ち、困ったときに支え合い、互いの命を守り、共に生きる社会へ、そして、それを支える、機能する
政府への転換を進めます。
感染症による国家の
危機を乗り越えるには、
政治と
国民が一つの方向を向いて共に歩む必要があります。
多くの
国民は、既に十分過ぎるほど自助努力をしています。この局面においても、自助を強調し、
政府による公助を怠りながら、罰則をちらつかせることで
対策を進めるような姿勢では、
国民の信頼と
協力が得られるはずがないと思いますが、いかがですか。
何としても
国民の命と
暮らしを守る。
立憲民主党は、そのために、苦しい
状況にある一人一人と向き合う
政治、あなたのための
政治を実現します。自己責任から支え合いへ。あなたとともに力を合わせ、
感染症と戦い、命と
暮らしを守る
政治へ。
あらゆる手段を講じてこの難局を乗り切り、あなたのための
政治を実現するために全力を尽くすことをお誓いして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣
総理大臣菅義偉君登壇〕