○藤野
委員 この虞犯、適用しないというのは、先日
指摘をした、やはり刑事処分的な発想といいますか、保護の発想ではなくて、これはもう行為責任、刑事責任だという、その論理的な
一つの結果だというふうに思います。この点もやはり私は問題だと思うんですね。
配付資料をお配りさせていただいているのは、これは全司法労働組合が十八歳、十九歳の
事件簿という形で様々な
ケースをまとめていただいているものです。これは大変参考になるんですが、ちょっと時間の
関係で全部は
紹介できないんですけれども。
例えば、今、虞犯でいえば、一番初めの
ケースは、性風俗産業に従事した十八歳少女、これは虞犯なんです。元々行き場がないということが
一つの特徴なんですね。元々行き場がないから、虞犯になってしまった。これが虞犯として対象にならないとなると、取調べ後、大体釈放されますから、そうなると、また行き場に困ってしまう。
本人に女性相談所とかシェルターに行く行動力があればいいんですけれども、それがない場合、再び
犯罪に手を染める可能性が高い。
二つ目は、万引きで捕まった十九歳の
少年の
事件もありますけれども、今、
少年非行の五、六割が窃盗とか遺失物横領。万引きというのは、示談すると、不起訴、執行猶予が多いですから、これもやはり、
自分のやったことについて振り返る機会がなくなってしまえば、累犯というか、再犯、繰り返してしまう可能性があるわけです。
過失運転致傷の
ケースもあります。十八歳男子ですけれども、この過失運転致傷というのは、大体十八歳、十九歳あるいは大学生というのが多いそうであります。最近は、危険運転に対する処罰が厳罰化されましたけれども、そうでない場合は執行猶予とか略式起訴が多いんですね。この点でもやはり立ち直りの機会が失われてしまう。
要保護性というと甘いように聞こえるんですが、実際は全く違いまして、先日、須藤参考人も、要保護性には三つの要素がある、再犯可能性と矯正可能性とそして保護相当性、三つだとおっしゃいました。
ここで重要なのは再犯可能性だと思うんですね。いかに
犯罪事案が軽微であっても、環境とか資質上の課題がある、再犯可能性があると認められれば、教育指導の処遇が課されるわけです。ですから、保護処分というのは甘やかしではなくて、刑罰以上に厳しい側面があるというふうに思います。
そして、
少年非行総数、全体の数は減っているんですけれども、特殊詐欺とかあるいは性
関係の非行とかあるいは薬物、これは増加しているんですね。これらの特殊詐欺とか性非行とか薬物非行というのは、再犯率が高いことが問題になっております。この白書でも
指摘されております。
私、この間、長野県の安曇野市の有明高原寮、そして新潟県の長岡市の
少年院、視察させていただきました。
例えば、有明高原寮というのは、
日本の
少年院の中で最も開放的処遇が進んでいるところなんですね。行ってみますと、フェンスも壁もなくて隣の民家が見えるという状況で、
少年たちは、まず、鑑別所は覆われていますから、鑑別所との違いに驚くというんですね。信頼されていると感じるそうです。
地元住民の方も、私たちの視察のところに来ていただいて、
お話を伺ったんですが、盆踊りとか運動会、どんど焼きとか、季節の行事を住民の
皆さんと一緒にやるそうです。運動会には地域住民が百人以上参加すると、コロナ前ですけれども、お聞きをしました。掃除とかいろいろやると、住民から感謝されると。多くの
少年は、ありがとうと言われたことがないので、感謝された経験自体が自信になるともお聞きしました。
院外の施設に実習にも行くそうなんですが、私も驚いたんですけれども、初日は職員が同行する、それ以降は
少年だけで通勤するというか実習先に行くそうなんですね。老健施設で実習した
少年は、特殊詐欺の受け子をしていたんですけれども、
自分たちはこういう
人たちをだましていたのかと、それが
一つの内省のきっかけになったともお聞きしました。
新潟県の長岡市の
少年院は、特殊詐欺についての特別の教育プログラム、これを開発されて、実践されて成果を上げられている。その様子も視察して、プログラムも見せていただいたんですけれども、先生からの一方通行じゃなくて、先生からの問いかけに一人の
少年が答える、また別の角度で聞いたら別の
少年が答えると。考えながら答える
少年の姿が、私、大変印象的でありました。同じ特殊詐欺を行った
少年たちとグループでやるんですね。ですから、それによって
自分を客観視して、
犯罪に至った原因などもお互い考えるというふうにもお聞きをしました。
ここでも、今は高校進学率が一〇〇%近いですから、高卒資格がないと
職業に就けないというので、教科指導コースというのを長岡
少年院は作っているんですね。地元の元先生とかが教えに来てくれるそうで、その元先生にも
お話を聞いたんですが、やればできるという経験が自己肯定感につながり、前向きになれると。生徒たちも、理解できるまで
説明してもらえた、分かる部分がぽつっと点だったけれども、どんどんつながって線になっていったと。おまえは駄目だ、駄目だとずっと言われてきたけれども、人より劣っているわけじゃないと思えたという声もお聞きをしました。
法務省にお聞きしますけれども、こうした
少年院ごとの特色、それが、やはり非行の度合いとか
少年の特性に合った処遇を可能にしてきたと思うんですね。各
少年院が作ってきた、努力してきた独自のプログラムが、
少年の立ち直りや再犯防止にとってかけがえのない役割を果たしていると思うんですが、それはいかがでしょうか。