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阿部参考人 おはようございます。
東京都立大学人文社会学部、また
子ども・
若者貧困研究センターの
阿部彩と申します。
今日は、このような
機会をいただき、ありがとうございます。
私は、
貧困の
専門家ということですので、
子供の
貧困の
立場から、必ずしも今日の
法案の範疇にとどまることだけではないんですけれども、今の
子供の
貧困の現状からの
意見を述べさせていただきたいというふうに思います。お
手元に
資料を配っておりますので、そのグラフを見ながら聞いていただければ幸いです。
三
ページ目になります。
日本の
相対的貧困率、これは御承知のとおり、二〇一八年値で
子供の
貧困率は一三・五%となっております。
残念なことに、この
調査は三年ごとに行われておりまして、二〇一八年の
数値というのは、もちろん今の
コロナ禍の
子育て世帯の
状況に比べると、
大分状況がよかった頃のことです。ですけれども、そのような
時点でもどのような
子供が
貧困なのかということでお聞きいただければと思います。
ちなみに、もし
経済状況が二〇〇九年、一〇年ぐらいの
経済状況まで戻るんだとすれば、
子供の
貧困率がやはり一六、一七%過ぎになっていくというのは十分に考えられることかなというふうに思っております。
一
ページおめくりください。これは
厚労省の今の二〇一八年の
データを
年齢別に、性別に推計し直したものになります。
御覧になりますように、今、
日本の
貧困率は
二つの山があり、
一つが
若年期、
一つが
高齢期になります。
高齢期は
男女差が非常に大きいんですけれども、
子供の方に着目していただきますと、まず、
子供の方の
貧困率が
高齢者とほぼ同じぐらいになっている、特に
男性ではということがあります。それと、
一つやはり注目していただきたいのが、
子供の中でも
年齢によって非常に大きな差があるということです。これが、
年齢の低い層の方が
子供の
貧困率が高いと思っていらっしゃる方が多いんですが、実は
年齢の高い層の方が
子供の
貧困率は高くなっております。
一
ページおめくりください。これはちょっと長期的に、八五年から二〇一八年に何が起こってきたかという、これは
男性の方の
年齢別貧困率ですが、赤が二〇一八年、青が一九八五年ですので、約三十年前です。
見ますと、まず、
子供期の山が非常に顕著になってきたというのが非常に顕著に分かるかなと思います。それと同時に、先ほども申し上げましたように、やはりこの時期は山なんですね。一
ページめくっていただくと、
女性も同じように十五歳―十九歳又は二十―二十四歳をピークとする山が
子供期に起きています。
もう一
ページおめくりください。ここは二〇〇〇年代からの
状況ですけれども、見ていただきますと、赤で囲っていますように、ゼロ歳から二歳、三歳から五歳の
貧困率は二〇一二年から大きく下がっておりますけれども、
年齢の高い層ではそれほど下がっておりません。
では、なぜこのようなことが起こっているのかということですが、二
ページおめくりください。
次は、二〇一八年の再
分配前と再
分配後ですが、見ていただきますと、まず、再
分配前の
貧困率、
男性ですけれども、
年齢層によって大きく違うということです。
その次の
ページも
女性で同じようなことをしておりますけれども、再
分配がどれぐらい
貧困率を削減したかということを見ますと、確かに
年齢の小さい層というのはそれほど削減されてはいないんですけれども、ですけれども、元々の再
分配前の
所得の
貧困率が
子供の
年齢が高い層で高いんですね。
もう一
ページめくっていただきますと、二〇一八年の再
分配前と再
分配後を三歳刻みに出してみましたけれども、これで見ても分かりますように、やはり再
分配前の差が非常に大きいということで、それの差を縮めることは再
分配後に起きていません。
もう一
ページ、済みません、どんどん行きますが、めくっていただきますと、これが八五年から二〇一八年の違いを見せています。八五年が薄いブルーで、二〇一八年、一番直近のものが濃いピンクになりますけれども、やはり全体的にどの
年齢層も再
分配前の
所得の
貧困率が非常に大きく伸びているんですね。中でも、やはり、どこが伸びているかというと、
子供の
年齢層の中でいえば、
年齢層の高い層の方が伸びています。
その次の
ページは
女性で同じようなことを言っています。
ポイントですけれども、長期的に見ると、
子供のいる
世帯においては再
分配前の
貧困率が悪化した。つまり、
子育て世帯の
雇用状況が悪化しているということなんですね。それがまず第一の、一番の大きな
貧困の元凶です。
再
分配の逆
機能ということで、再
分配前の方が再
分配の後よりも
貧困率が低くなっている、
貧困率が悪化してしまうという逆
機能というのは、実は、二〇一五年まではずっと見られておりました、
子育て世帯の中では。ですが、それは解消されています、二〇一八年では。ですが、それでも、やはり、特に
中学生以上の
子供においての
貧困率の長期的な悪化と、その改善の恩恵が行き渡っていないという
状況があります。
次に申し上げたいことが、
平時における
生活困窮があるということ。
ポイントとしては、
生活困難というのは
コロナで初めて現れた問題ではないということで、一例だけ持ってきました。それが
債務の
滞納です。
公共料金と
債務の
滞納。
今回、
コロナの中で、家賃が払えない、
公共料金が払えないといったことで、様々な
措置がなされました。ですけれども、この
データは二〇一七年のものです、二〇一七年の
時点で、過去一年間で金銭的な
理由で
電気料金が払えなかった率、一人親では一割を超え、二人親でも二から四%となっておりますので、三十人に一人、各
学年に数名はいるといった
状況です。
これは
全国調査のものなんですけれども、各
自治体が行っている
子供の
貧困調査を見てみますと、もっと赤裸々な
状況が見て取れます。ここは、済みません、愛知県、
沖縄県、北海道、香川だけを持ってきましたけれども、どこの
自治体でも、ほとんどの都道府県がこの
実態調査をやっておりますけれども、見ても同じような
数値になります。ですので、
沖縄であれば、一割以上の
子供たちの
世帯においてこれらの
料金を
滞納したことが一年間であるといった
状況です。
一
ページめくっていただきますと、
大阪と
沖縄では、実際に
電気や
ガス、
水道が止められたことがありますかということも聞いておりますけれども、
大阪では、半年の間で一%以上の
子供において
電気、
ガス、
水道が止められています。一%というのは百人に一人ですので、一
学年に一人の
子供が
電気が止められている家に住んでいるということになります。実際を申し上げますと、
子供のある
世帯の
生活保護率は約一%ぐらいですので、それと同じぐらいの
割合の
子供でそういった
状況が起こっているということです。
一
ページめくっていただくと、これが私の
意見となります。
まず、今回、
コロナによって様々な
政策が施されており、それはすばらしいことなんですけれども、
所得補填、つまり、
所得が下がったという
人たちに対する
所得補填と、それと、
憲法が
保障する最低限の
生活ができていないという
人たちに対する
所得保障、この
二つは違うのではないかということです。特に、やはり、私は、赤の
所得保障の方を今強く強化するべきだというふうに思っております。それは、
憲法で、二十五条で定めるもの、また、
子供の
貧困、
推進に関わる法に定めてある
子供の
機会の
保障といったことになります。
このような
生活困難はふだんでも起こっているんですね。
コロナで初めて起こったわけではないです。
コロナに対して、緊急時として、
特別措置として対処することには、もちろんやらなければいけないのでやっているんですけれども、弊害もございます。
一つが、リアクショナリーな
対応、つまり、声を上げたところに対しての
給付はすぐなされるけれども、声を上げられないところには出せない。一時的なものにとどまる。
貸付事業というのがまたありますし、一回だけの
給付金といったようなことになります。
切れ味が悪く、非効率な
対応になるというのは、必ずしも必要でない人にも全て配ってしまうというような方法を取るしかないということです。確かに、
所得が下がっている
子育て世帯は多いですけれども、全然
所得が下がっていない
子育て世帯もたくさんあるし、その方が大部分だというふうに私は思います。
それから、
平時の
生活困難に対しては何らかの便益がなく、逆に
財政圧迫により悪化する
可能性がこの数年間はあるというふうに思っております。
ですので、
子育て世帯への
生活保障を考えたときには、まず
コロナ禍の目前の
生活困難に対処するというのを優先すべきで、特に今の
時点では優先すべきでないかというふうに思っています。
これから、次の
貧困率が、物すごく、一八%となってもおかしくないといったような
状況のときには、やはりここが一番今手を打っていくべきところかなというふうに思っております。これは、今回の
法案の中では対処されるところではないと思いますし、
児童手当か
保育か、どちらに配給するのかといった二項選択ではないと私は思います。
そういった中では、やはり、
生活保護というのは、一番これが
最後の
セーフティーネットであり、これを受けやすくし、そして恥でないというような
状況をつくっていかなければいけない。ですので、私は、首相が
生活保護があるというふうにおっしゃってくださったことは、非常にうれしいというふうに思いました。ですけれども、お言葉に合うように、
生活保護を必要な人は全部受けられるようにしていただきたいということで、そこの条件の緩和というのは是非御
検討いただきたい。
今、
生活保護の
保護率、二〇一七年のものしかなかったんですけれども、これを見ますと、やはりゼロから十九歳のところは一%といった
程度になっております。ですので、
高齢者に比べて大分少なくなっているといったようなことがあります。
そこで、
最後に、
政府の信頼の回復といったところで、まず今の国民に必要なのは、どんなに困っても、どんなに
仕事がなくても、ここまでの
生活は絶対に
政府が守ってくれるという
安心感を持てないということだと思うんです。それはやはり、
ボトムラインが何なのか、どんなに困っても、
日本にいたら、
医療が受けられないことはないんだよ、
子供が食に困ることがないんだよ、そういった
状況、お母さんやお父さんが失職しても心中しなくてもいいんだよ、
生活保護があるんだよ、そういう
安心感がないというのが一番の問題かなというふうに思っていますので、私はそこを強化するというのを一番に考えていただきたいなというふうに思います。
そのほかに、
子供に関しては、食の
支援、これは
子供食堂などのNPOに対する
支援が今なされていますけれども、公立の中学校であっても給食というのが一〇〇%
給付されておりません。ですので、そういった食の
支援。また、
定時制高校や
高校生年代、
子供の施策というのが全て
中学生以下の
子供に対するものに今収まっているというようなことがあります。
医療の
保障もそうです。これも
自治体が行っていますけれども、ほとんどが
中学生までです。それと、住まいの
保障。この三つをまず考えていただきたいなというふうに思います。
済みません、今回の
法案に直接
関係、それを超えてしまうところもございますけれども、
是非子供の
貧困という
観点から御
検討の材料にしていただければなというふうに思いました。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)