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2021-04-09 第204回国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和三年四月九日(金曜日)     午後二時三十分開議  出席委員    委員長 永岡 桂子君    理事 穴見 陽一君 理事 伊藤 達也君    理事 勝俣 孝明君 理事 武村 展英君    理事 牧原 秀樹君 理事 尾辻かな子君    理事 柚木 道義君 理事 古屋 範子君       畦元 将吾君    安藤  裕君       伊藤信太郎君    小倉 將信君       門山 宏哲君    木村 弥生君       小泉 龍司君    佐藤 明男君       土屋 品子君    冨岡  勉君       中山 展宏君    西田 昭二君       百武 公親君    船田  元君       山下 貴司君    青山 大人君       稲富 修二君    大西 健介君       中島 克仁君    堀越 啓仁君       吉田 統彦君    伊佐 進一君       畑野 君枝君    串田 誠一君       井上 一徳君     …………………………………    参考人    (京都大学大学院経済学研究科研究科長)     依田 高典君    参考人    (公益社団法人日本消費生活アドバイザーコンサルタント相談員協会会長)    (東北大学東京大学名誉教授)    (青山学院大学客員教授) 河上 正二君    参考人    (弁護士)    (日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長) 板倉陽一郎君    参考人    (公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長)   増田 悦子君    衆議院調査局第一特別調査室長           藤田 和光君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  取引デジタルプラットフォームを利用する消費者利益保護に関する法律案内閣提出第五三号)      ――――◇―――――
  2. 永岡桂子

    永岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出取引デジタルプラットフォームを利用する消費者利益保護に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  本日は、本案審査のため、参考人として、京都大学大学院経済学研究科研究科長依田高典君、公益社団法人日本消費生活アドバイザーコンサルタント相談員協会会長東北大学東京大学名誉教授青山学院大学客員教授河上正二君、弁護士日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長板倉陽一郎君、公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長増田悦子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願い申し上げます。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、まず依田参考人お願いいたします。
  3. 依田高典

    依田参考人 初めまして。京都大学大学院経済学研究科研究科長をしております依田高典でございます。  本日は、意見陳述機会をいただき、どうもありがとうございます。  それでは、私から、デジタルプラットフォーム消費者利益保護法必要性について意見陳述をさせていただきたいと思います。  まず最初に、デジタル時代社会の変化について、三点お話をさせていただきます。  第一に、リアルからオンラインアナログからデジタル、そうした移行が進んでいる世界でございます。  そして、アメリカGAFAと呼ばれる巨大なプラットフォーマー、具体的には、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどが台頭しており、世界経済を支配している状況にございます。  そしてさらに、今般の一年以上続いている新型コロナウイルスの流行におけるデジタルトランスフォーメーション必要性、これはもはや無視できるものではございません。  次に、デジタル社会に必要な政策とは何かについて御説明いたします。  第一に、先ほど述べたアメリカGAFAと呼ばれるようなプラットフォーマー市場支配力を増して、その行使を抑制する競争政策が必要でございます。  第二に、プラットフォーム上の取引トラブルから国民消費者を守る消費者保護政策も必要でございます。  第三として、競争政策消費者保護政策プラットフォーマー政策両輪となることを認識する必要がございます。  では、まず、デジタル時代競争政策とは何か、これについても三点述べます。  内閣官房デジタル市場競争会議、具体的には、経済産業省等共同で設置している内閣官房の中の会議体でございますが、そちらが検討したデジタルプラットフォーマー市場支配力をコントロールする事前規制が求められております。予防する規制が求められております。  私は、そのワーキンググループ座長として、オンラインモール、アプリストアの出店者出品者、つまり中小企業いじめを監督する法律というものを検討して、まとめてまいりました。  幸いなことに、そのプラットフォーマー取引透明化法は、二〇二〇年五月に制定され、二〇二一年二月、この二月に施行されるに至っております。  他方で、車の両輪であるところのデジタル市場消費者保護政策についても、三点述べさせていただきます。  消費者庁デジタルプラットフォーム消費者取引検討会というものを消費者庁が立ち上げ、合計十二回開催してまいりました。私は、そちらの座長としましても、毎回おおよそ三時間にも及ぶ議論を積み重ねてまいりました。  第二に、日本のみならず、欧米、特にヨーロッパにおいて、EUデジタルサービス法というものを検討しており、日本同様、デジタル時代における消費者保護政策が現在進んでいるところでもあります。  そして第三に、そうした動きを受けて、デジタルプラットフォーマーの公的な責任法制上明確に定め、危険商品の流通や消費者の泣き寝入りを予防する、消費者利益保護を図る新法の制定を求める報告書をこの一月にまとめたところでございます。  ここで、消費者視点企業視点について若干述べさせていただきます。  第一に、学者や弁護士消費者団体は、概して言えば、デジタル消費者トラブルの急増あるいはその悪質化というものを懸念し、消費者保護法制化を強く求めてまいりました。  他方で、企業であるプラットフォーマーは、自社ビジネスの便宜を主張し、場所貸しであると自らの立場を述べ、公的責任の免除を主張してきたものでございます。  第三に、当初、両者意見の隔たりはなかなか埋まるものではありませんでしたが、興味深いことに、NHKのようなテレビあるいはほかの日刊紙のような新聞がこうした消費者トラブル実態を報道すること等を通じて、大変興味深いことに、市民、国民問題意識社会理解も進んでいく中で、先ほど述べた両者が歩み寄り、接点を見出すような努力も続けられてきたところでございます。  ここで、一つ、話題を変えまして、私の専門である行動経済学的な視点重要性について述べたいと思います。  認知限界という言葉があります。人間認知には限界があって、万能、完全な存在ではなくて、弱い生き物である。つまり、分かっていてもやめられない、理想と現実の乖離、それをバイアスと呼びますが、バイアスを回避できないのが生身の人間でございます。  第二に、二〇一七年に、そうした弱い、限定合理的な人間を優しく言葉情報提供を通じて誘導する、ナッジという英語がございますが、ナッジを解明してノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー・シカゴ大学教授がつとに有名でございます。  セイラー教授は、来日されたときに、東京駅の近くにございます相田みつを美術館を訪ねまして、なぜかというと、セイラー教授相田みつをさんのファンでございまして、だって人間だものという色紙を買って帰られた、そういう逸話もございます。  そうした中において、決してデジタル社会から、人間の弱みにつけ込む悪質業者というのは、悲しいことではありますが、なくなりません。  なぜかといいますと、デジタル社会の特徴は、誰でも低費用で気軽にデジタル取引に参入できることが魅力だからです。  デジタル魅力悪質業者の惹起をしてしまう、これは皮肉なことではありますが、残念ながら、全ての出店者出品者が善意の存在ではありません。  しかも、そうした企業日本企業だけとは限りません。外国からそうした悪質業者が入ってくることもなかなか避けられません。巨大なプラットフォーマーの公的な責任は、そうした意味において無視できないものではありますが、従前の消費者関連法の中でプラットフォーマー公的責任というのを明示的、明確に定めた規定というものも弱いところがございました。  プラットフォーマーのそうした自助努力に対する配慮も、一方で私は大変重要であると考えております。  第一に、プラットフォーマーGAFAは現代のイノベーションの牽引者であり、彼らの新しいビジネス消費者便益を大きく改善するところもございます。  そうした中において、お上である政府がしもべとしての民間事業者行為をあれこれ縛るのは、ある意味時代遅れであると言わざるを得ません。  企業創意工夫を尊重した官民共同規制と言われる新しい規制の在り方が求められるところでございます。  できるところから始めることが現実的な船出となります。  第一に、プラットフォーマー出店者出品者消費者紛争解決に取り組む努力義務、第二に、政府危険商品出品を停止させたり、消費者悪質業者情報開示を求めたりする権利、第三に、官民協議会を設置し、官民が不断にコミュニケーションをしながら、そして消費者が救済を申し出る制度の創設、そうしたものが新しい法案の中に盛り込められるべきであると考えております。  しかしながら、今後検討すべき幾つかの課題も残っております。  第一に、今回、BツーC取引に対する規律は定められることになろうかと思いますが、CツーC取引規律は今なお今後の検討課題でございます。  第二に、発展著しいデジタル広告ターゲティング広告や、あるいは一人一人に異なった値段をつけるパーソナルプライシングというものがありますが、今なおそちらに関してはもう少し静観することも必要かと考えております。  そして三番目、消費者保護政策というものは消費者教育政策というものがあってこそ機能するものでございます。  最後になりますが、日本デジタル社会を目指して大切なことは何か。  一番、日本デジタルトランスフォーメーションはもはや待ったなしでございます。デジタル社会に多大の危険、リスク存在するからといって、従来どおりのアナログにとどまることはもはや許されません。そうした中において、デジタルトランスフォーメーションは待ったなしで進めていかないといけない。  第二に、そのデジタルトランスフォーメーションの前提として、消費者の安全、安心があってこそ成立するものでございます。  第三に、そうしたデジタル市場上の取引環境を整備して、世界デジタル化の中でもっともっと日本企業のプレゼンスを高めていくような視点も重要でございます。  以上、まとめて結論となりますが、私は、デジタルプラットフォーム消費者利益保護法制定を求めるものでございます。  以上であります。ありがとうございました。(拍手
  4. 永岡桂子

    永岡委員長 ありがとうございます。  次に、河上参考人お願いをいたします。
  5. 河上正二

    河上参考人 河上と申します。  私の肩書のところがいろいろと入り乱れておりまして大変申し訳ございませんけれども、実は、参考人としてどういう立場お話をすればいいのかということについてさっきまで迷っておりまして、基本的には、私は大学で民法とそれから消費者法研究、教育してまいりましたものですから、やはり一研究者としてお話をさせていただくのがいいだろうということで、その意味で、意見メモの方の肩書とこれとがちょっとずれているということになりますけれども、ちょっとお許しいただければというふうに思います。  実は、それとは別に、消費者庁預託法等検討委員会委員長もさせていただいていたというようなこともあって、そこでもデジタル関係のものについて一定意見をまとめたという経験がございます。これまでのところ、見ました段階では、今回の取引デジタルプラットフォームを利用する消費者利益保護に関する法律案も非常によく考えられたものであるというのが認識でございますけれども、できれば、それに加えてこういうこともお願いできればということで、幾つお話をさせていただこうと思います。  お手元発言メモというのをお配りさせていただいているかと思いますが、初めのところ、それから二番目のインターネット通販と詐欺的な定期購入商法というのは、今、依田先生からお話があったところと繰り返しになる部分がございますので、ある程度省略をさせていただいていいかと思います。  ただ、今、プラットフォームビジネスというのは非常にグローバルに展開されているということでございまして、海外でも議論が大いに進んでおりますし、一部の国では立法的な手当ても設けられているということがございますので、こうしたグローバル化対応するには、それらのルールとイコールフッティングの状態というものを求めていく必要があるだろうというふうに思います。  三ページ目の五のオンラインプラットフォーム構造というところでございますけれども、その真ん中から下あたりに書いてありますけれども、プラットフォームを介して商品等販売をしようとする者及びプラットフォームを介してその売主から商品等を購入しようとする買主等、これは、それぞれ、実は、プラットフォーム事業者があらかじめ用意した利用規約、これは約款と呼んでいいだろうと思いますが、そういうものに同意することによって利用契約を締結するという構造を持っております。  しかも、プラットフォーマーは、その利用者が多ければ多くなるほど価値を高める、利益を上げる。そして、プラットフォーム事業者の定める利用規約によって、その全体ルールを事実上定めていくことになっているというわけであります。  プラットフォーマー売主等との利用契約買主側との利用契約というのは、これはばらばらの契約ではなくて相互依存関係にありまして、言ってみれば、多面市場が全体として一つシステムを構成しているというふうに考えられますために、一方の契約関係だけを切り離して単独で考察するのは、これはまずいということでして、全体を一つシステムとして観察する必要があるというのが基本的な認識でございます。  その六のところに、プラットフォーマー責務というものを書いております。  この責務に関しては、実は、有名なYというオークション、これについて名古屋高裁に判決が出ているのがありまして、その中で名古屋高裁は、利用者詐欺等の被害に遭わないように、犯罪的行為内容、手口あるいは件数などを踏まえて、利用者に対して、時宜に即して、相応の注意喚起措置を取るべき義務、これを負うんだと。  さらに、プラットフォーマー取引のきっかけを提供するにすぎず、単なる場の提供者にすぎないという抗弁は、今日では否定されるべきであるということになろうかと思います。つまり、プラットフォーム事業者というのは、システム構築者ないしプラットフォーム市場形成者としての役割を担っているからであります。  このシステムコントロール可能性ということを考えていくと、プラットフォーマー立場というのは、売主の詐欺的な行為など不適切な行為に関する情報が得られた場合には、売主との間での利用契約上も、利用停止等対応を取ることができる立場にあるというふうに考えられるわけであります。  最後の段落ですが、プラットフォーム事業者自身による不適切な表示に起因する損害についても、プラットフォーム事業者利用者に対して賠償責任を負わないといけないということになりますし、その延長上の問題として、商品売主に関する評価システムプラットフォーム事業者が導入しているような場合は、その評価の公正さと透明さを確保する、そういう責務があるんだということになります。  最後のページになりますが、こうした利用契約上の付随義務として、レビューの公正さ、あるいは透明性確保義務というものが求められるんじゃないかということであります。  今回の法律案、これは、どちらかというと行政規制関係のものというものに限られているように思われまして、民事義務に関する民事規定を今後充実させていく必要があるというのが私の意見でございます。  シェアリングエコノミーにおいては、これを仲介するプラットフォーマー情報が集中しておりますから、その意味では一定制度的対応も行われてはおりますが、これは、民事の解釈上も、買主リスクを軽減するためのより積極的な措置を取ることが要求されていいんじゃないかということになります。  最後の七のところに、システム構築責任という言葉を掲げておりますけれども、プラットフォーマーにおいては、このプラットフォーマーシステム構築者として位置づけて、複数の契約ないしそれを構成要素とするシステム全体を正面から捉えてルールを整備するということが不可欠であります。その一環として、民事的にも、プラットフォーム事業者のより積極的な義務を明文で基礎づける可能性があるというふうに思います。  コロナ禍のこの時代において、本法を制定するということは非常に大事なことでもございます。それだけに、これを是非改善しながら、是非よい法律にしていただければというふうにお願いしたいと思います。  以上でございます。(拍手
  6. 永岡桂子

    永岡委員長 河上参考人、ありがとうございました。  次に、板倉参考人お願いを申し上げます。
  7. 板倉陽一郎

    板倉参考人 弁護士で、日弁連消費者問題対策委員会委員長、こちらは電子商取引通信ネットワーク部会部会長というものを兼ねておりますが、板倉でございます。  本日は、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。  お手元に私の意見陳述用資料をお配りしておりますので、こちらを参照しつつ、私の意見陳述をさせていただきたいと思います。  主として、条文案を既にいただいておりますので、条文案に順番にコメントするという形を取っておりますが、八ページを見ていただきますと、最初に附則を載せております。  これは何かと申しますと、いろいろな法案、最近は、何年見直しとか、個人情報保護法などは三年ごと見直し条項などがありますが、本法案においても、三年を目途として見直すという条項が入っております。  ただ、非常にデジタルプラットフォーム関係動きが速い。それから、先ほどの依田先生座長検討会、私も同じ日弁連肩書委員をさせていただいておりましたが、残念ながら積み残しの論点がいろいろございます。こちらの論点議論や、今回設立されると思われるデジタルプラットフォーム協議会等状況を見て、三年では遅いということであれば、これは積極的に早めに見直し検討に着手していただきたいと思います。  本当に毎日のようにデジタルプラットフォームないしインターネットをめぐる事件というのは報道される状況ですので、せっかく今回ベースになる法律ができるということであれば、一から作るのに比べれば非常に議論はしやすいと思いますので、ちゅうちょなく、これは前倒しで検討していただきたいなと思います。  もう一つは、先ほどの検討会報告書でも、消費者庁において必要な人材の確保その他の組織体制の充実を図るべきであると記載されたとおりですが、こちらは、アメリカGAFA規制といえば、それはもう連邦取引委員会、FTCにおいて相当のパワーを持ってなされているわけでございます。ヨーロッパにおいても、いろいろな機関が相当の力を割いて監視、監督を行っているものでありますので、日本においても相応の人員及び予算が必要になると思います。  消費者庁等関係省庁に十分な予算、それから機構定員予算だけあっても駄目ですし、人だけ割り当てられても、ポジションを横から動かしてくださいでは、やはりこれも困ってしまいますので、予算機構定員、是非、全て確保していただいて、十分な体制で施行していただきたいなと思います。  九ページに参ります。  こちらは三条の条文を書かせていただいております。これは取引デジタルプラットフォーム提供者努力義務条文ですが、検討会で、様々な関係事業者ないし関係事業者団体に来ていただきましてお話を伺いましたが、残念ながら、最もたちが悪い部類の事業者というのは、そういう検討会では、当然来ていただけるわけではありません。  ここで例に挙げておりますような、情報商材取引デジタルプラットフォームのような、どう考えても、その存在自体が極めて害悪である、この極悪層というのは、私がつけたネーミングではなくて、検討会座長代理をされていた神戸大学中川先生ネーミングですが、もう最初から悪いことをして、いざとなったら逃げるというようなのを極悪層というふうに消費者法の分野で呼んでおります。  こういう取引デジタルプラットフォームについては、やはり、残念ながら検討会でも実態把握検討が十分ではなかったので、これらの検討をした上で、今の努力義務では、彼らは基本的には効果はないわけです。守る気もないでしょうし、協議会にも参加しないでしょうから。効果がないということが分かれば、これは、ちゃんとやっていただけるデジタルプラットフォームに対して勧告命令が出されるということはなくとも、極悪層デジタルプラットフォームに対する勧告命令、さらに、違反した場合の罰則というのは検討されるべきものだろうと思います。  それから、その下に記載しておりますのは、日弁連の方で並行して、オンライン紛争解決手続についての意見書を出させていただいております。こちらも資料の三として配付させていただいております。  内容は多岐にわたりますが、デジタルプラットフォーム関係についても意見を述べさせていただいておりまして、こちらの我々日弁連の提案としては、適切な身分確認等が定期的に行われない等の場合には、たな子ですね、販売業者等々、法案では販売業者等と言っておりますが、販売業者等との契約をやめるといったようなことをしてほしいというような意見の趣旨を述べております。  なので、この努力義務全てについて勧告命令罰則に変えるべきという意見にはなっておりませんが、オンライン紛争解決をきちんと整備していただく、そのためには、当然、相手方の身元確認等犯罪収益移転防止法のレベルで必要であろうと。こういうことを確認をして、ちゃんとやっていないというようなたな子については取引をしないでほしい、その取引をしないということについて、守っていただけないのであれば、勧告命令罰則という仕組みも必要ではないかという意見を、これは日弁連として述べております。  十ページに参ります。  十ページは利用停止要請部分ですが、これは割とテクニカルな部分になってしまうんですが、こちらの定め方が、安全についての表示が不適切な場合でたな子に連絡がつかないような場合には利用停止要請ができる、こういうことになっております。全てこれは表示に係っておりますが、一々、安全ですと書いて出品する人はいませんので、安全じゃない場合に、その書いてないということを表示として捉えないと、この条項は機能しないことになります。  なので、是非ここは、非表示表示に含める、ないしは、非表示であることを全体として勘案して表示であるというような解釈ですよというのが確認できるといいだろうというふうに思っています。  もう一つ、安全性の判断に資する事項以外は消費者庁において内閣府令で定めていただくことになっておりますが、これはやはり、消費者の権利利益保護に必要なものというのが目まぐるしく変わると思いますので、十分な内容で、かつ相当の頻度で適切に改正して定めていただきたいなと思います。  それから、十二ページに飛びまして、販売業者等の開示請求についてですが、こちらの開示請求は、損害があるというふうに主張される場合にたな子に連絡がつかないときに用いる請求になりますが、内閣府令で定める額を超える被害が要るということになりますので、こちらが余りにも高い、例えば何十万円ですとなると、ほとんど行使できないことになりますので、十分に低廉な額で内閣府令は定めてほしいなと思います。  もう一つ、開示していただく販売業者等情報、こちらが、これも内閣府令に係っているわけですが、同じような制度として発信者情報開示というのがあります。これは、関連してプロバイダー責任制限法の改正が今国会にもかかっておりますが、その発信者情報開示の対象情報が限定列挙であったがために、非常に実務家は苦労してきたという事実があります。  なので、今回は、定め方によると思いますので、限定列挙ではなくて例示列挙、包括条項を入れるような形で是非定めてほしいなと。これは府令レベルでできると思いますので、そのようにしていただきたいなというふうに思います。  それから、十六ページに飛びます。  こちらは、先ほどの検討会報告書の、今後の検討課題のところを抜いて記載させていただいておりますが、依田先生からもありましたように、CツーC取引実態把握及び検討、これはやはり、検討会としては積み残しだと思っておりますので、速やかに着手してほしいなと思います。  今回、結局、隠れBについては適用するというような形になっております。そうすると、CツーCのデジタルプラットフォームにおいても事実上従わざるを得ないということになります。いるかもしれないので、結局、この法律に従う。他方で、この法律に従ったとしても、この法律に従った場合の免責というのはCツーCプラットフォームのCの部分はかからないということになって、事業者としても宙ぶらりんだろうと思います。  議論としては、CツーCのCについては、消費者法が適用されない、行政規制等がないのでデジタルプラットフォームにかけるのも変なんだというような考え方も一つあろうかと思いますが、他方で、間接侵害のようなものはそれ自身の責任であるといって定めることは決して法制上は不可能ではないと思いますので、これは、CツーCの実態把握検討を速やかに行うべきだろうと思います。  それから、積み残しの論点では、私はやはり、不正、悪質レビューというのを残したのが非常に心残りです。こちらの検討も速やかに行い、場合によっては、そのレビューを主導するようなコンサルタントであるとか、書いてしまうような人に対する直接の罰則も含めて検討すべきだろうと思います。  十七ページに参ります。  こちらも今回は法案には入っていない話なのですが、外国事業者の話です。  ここで発言を引かせていただいているのは、規制改革会議の第十四回の貿易・投資等ワーキング・グループという平成二十六年五月二十七日の会議の議事録で、これは法務省の民事局参事官が直接コメントされていることでありますが、外国会社について、やはり登記がされていないということについては、いろいろ大変な問題が起きるんじゃないか、特にBツーCは大変な問題が起きるのではないかと平成二十六年の段階で御担当者が言っていますが、大変な問題が起きているわけでございます。  外国会社は、日本において取引を継続してするような場合には登記しないといけないことになっていますが、これが全く守られていません。取引デジタルプラットフォーム提供者にせよ、たな子である販売業者等にせよ、外国会社の登記の義務があるのに履行していないのは、これは単なる違法です。日本国がなめられているというようなことにもなりますので、是非、これは積極的に代表者登記義務の履行を徹底させる運用をお願いしたいと思います。これは、日弁連でもプロバイダー責任制限法に関する意見書の中で述べておりますが、デジタルプラットフォーム、本法との関係でも同じことが言えます。  さらに、同民事局の参事官は、場合によっては取引継続禁止命令というのもできる、外国会社が不法な目的に基づいて日本で事業を行う場合にはそういうのもできるんだというようなことを自認されていることであります。なので、極悪層である販売業者等というのがデジタルプラットフォームにはたまに紛れ込むわけですが、そういう者に対しては、法務省自身が御確認されているとおり、取引継続禁止命令、これは、外国会社の事業が不法な目的に基づいて行われたときということですのでハードルは高いのかもしれませんが、例えば、被害者等の利害関係人と法務大臣が協力して申し立てることによって取引継続禁止命令を行うということも積極的に是非やっていただきたいなと思っております。  それから、十八ページは、まだ審議入りされておりませんが、特商法等の改正のポンチ絵を貼らせていただいております。  なぜこれを貼っているのかと申しますと、そちらの法案で、左下に赤く囲みましたが、外国執行当局に対する情報提供制度を入れるという案が示されております、預託法も含めてですね。  これは当然、デジタルプラットフォームないしたな子、販売業者等に対しての執行等を検討される場合には、アメリカのFTCであるとかヨーロッパ消費者当局と情報を交換するんだということも含めて、こちらの法案でも提案されているというふうに認識しております。このようなことができるという体制も含めて、是非、関係当局には、人員、予算機構定員等、十分な体制を構築していただきたいなと思います。  私からは以上です。ありがとうございます。(拍手
  8. 永岡桂子

    永岡委員長 ありがとうございました。  次に、増田参考人お願いいたします。
  9. 増田悦子

    増田参考人 公益社団法人全国消費生活相談員協会の理事長をしています増田悦子と申します。  本協会は、消費生活相談員を主な構成員とする公益社団法人です。本日は、消費生活相談員としての意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。  多くの消費者は、個々の販売店の情報がなく、価格の妥当性、商品の安全性、事業者が信用できるかなどの心配から、デジタルプラットフォームを利用しています。  デジタルプラットフォームの利便性や有益性については言うまでもありません。また、デジタルプラットフォーム販売店の信用性を調査した上で販売することを許可しているはずだ、トラブルがあったら救済してくれるだろうという期待を持っています。今やなくてはならないデジタルプラットフォームについて、消費者利益保護のための新法が制定されることは、消費者としても、消費生活相談員としても、大変感謝申し上げたいと思います。  その上で、消費者からの基本的な期待に応えていただきたく、意見を述べたいと思います。  まず初めに、本法案の対象についてですが、BツーCを対象とし、加えて、消費者を装った販売業者も含めるとしています。  しかし、今は、副業も容認されたり、インターネットの利用によって、費用をかけずに誰でも事業をスタートできるようになりました。特商法のインターネットオークションのガイドラインで販売業者かどうかの判断基準が示されていますが、販売業者として認められるにはハードルが高く、これまで、私の消費生活相談の現場で活用した経験がありません。今後、消費者庁検討される場合に是非留意していただきたいと思います。  また、CツーC取引の場合、当事者同士での解決は困難で、場合によってはエスカレーションします。多くは少額の取引ですので、すぐに裁判に移行することもできません。デジタルプラットフォーム提供者によるODR機能としての一定の解決を目指すことも含めて、今後の課題にしていただきたいと思っております。  二番目に、デジタルプラットフォーム提供者が講じる措置についてです。  本法案では、消費者販売業者との円滑な連絡を可能とする措置や、苦情があった場合の調査を行うこと、必要に応じて所在確認をすることなどを努力義務としています。  しかし、デジタルプラットフォームへの出店を募り、消費者との取引を取り持つ業務であるなら、デジタルプラットフォームにおける販売店管理責任は、クレジットカード会社の加盟店管理責任と大きな差がないのではないかと考えています。よって、努力義務で足りるのか、大変懸念があります。  販売店がどのような商品やサービスを幾らで販売するのか、その商品はどこから仕入れるのか、どのような方法で誰がサービスを提供するのかなど、一般的に消費者が知りたい最低限の事項については事前に確認を取っていただく必要があるのではないかと思います。  インターネット取引の場合、価格の比較が大変しやすいので、消費者は価格に大変敏感です。その販売店の商品が他の事業者の同種の商品と比較して余りに低価格であったり、あるいは高価格であった場合には、その理由を確認していただきたいと思います。余りに低価格のブランド品は模倣品であったり、通常より余りに高価格な商品やサービスである場合、効能、効果についての広告に問題があることが多くあります。  また、消費者から苦情があった場合には、調査を行い、同種の苦情の発生状況確認していただきたいと思います。販売店への苦情は様々ありますが、同種の苦情が複数寄せられる場合は必ず理由があります。それが改善されないのであれば、プラットフォームから退場してもらう必要があるのではないかと思います。  そして、特商法で定められている連絡先等の記載事項が虚偽であったり、修正していなかったりは特商法違反です。デジタルプラットフォーム提供者として、常に正確な連絡先の届出義務表示義務、違反する場合の措置などの内部規定を策定すべきではないかと思います。こうした事前調査、途上調査を既に実施しているデジタルプラットフォームがありますし、小規模なデジタルプラットフォームは許されるということではないのではないかと思います。  今後、措置内容を指針で定めるに当たっては、こうした事前調査、途上調査のほか、エスクローサービス、苦情の申出窓口、補償制度、レビューの監視など、デジタルプラットフォームとして消費者から当然に期待される機能について提案していただきたいと思います。  また、消費者に対し、デジタルプラットフォーム提供者が講じた措置の概要及び実施の状況について開示するとされていますが、これは、消費者が安全に利用できるプラットフォームかどうか適切に判断するために大変重要なことだと思います。  そのためには、消費者がすぐ分かる場所に分かりやすく表示していただきたいと思います。消費者の適切な選択を可能とし、同時に、消費者利益のために費用をかけて制度を導入しているデジタルプラットフォーム提供者のインセンティブにもなると思います。そして、それは結果的に消費者教育にもつながるものと思います。  三番目に、デジタルプラットフォームの利用の停止に係る要請についてです。  事故のおそれがあると分かった場合や、消費者を誤認させる虚偽、誇大な広告表示がされている場合、利用の停止等をデジタルプラットフォーム提供者に行政から要請できることは、消費者の安全、安心のために非常に重要な制度だと思います。  しかし、要請であることと、販売業者を特定できない場合という要件があることから、速やかな情報伝達となるか懸念があります。消費者情報が届くまでには時間がかかりますし、販売業者が特定できたとしても、デジタルプラットフォーム提供者の積極的な協力がなければ、小規模な販売業者の場合、情報入手が遅れる可能性があります。  特商法や景表法に基づき行政機関が執行するまでには時間がかかり、その間に、消費者被害が継続して発生することにもなります。危険な商品については取引停止措置商品回収することを即座に販売店に伝え、偽ブランドや詐欺的な情報商材など、事実と相違するものについてはデジタルプラットフォームでの販売をすぐに排除していただきたいと思います。デジタルプラットフォーム提供者情報を把握したら速やかにプラットフォーム内に通知することを義務づけしていただくことで、消費者被害が拡大防止、未然防止されて、同時に、販売業者が被害を拡大させないためのサポートにもなると考えます。  四番目に、販売業者等情報の開示請求についてです。  本法案では、消費者から販売業者情報の開示請求ができることになっています。その際、一定金額以上という条件が入るようですが、通信販売取引額は少額であり、その少額の被害について消費生活センターにたくさんの相談が寄せられていることを配慮していただきたいと思います。  また、さきにお伝えしたとおり、特商法で定められている連絡先等の記載事項が虚偽であったり、修正していなかったりは特商法違反です。この条文の中で、なぜ違反している販売業者意見を聞かなければならないのか、開示を拒否した場合にはどうするのかなどの疑問が湧きました。せっかくの開示請求の実効性に不安が残ります。  五番目に、紛争解決対応についてです。  消費者販売店との話合いが進まなかったり、苦情を申し出た場合には、デジタルプラットフォームとして解決のために尽力していただきたいと思います。また、消費生活センターから連絡した場合、大手デジタルプラットフォームにおいても、担当者によって対応が異なったり、プラットフォームによって対応のレベルが異なる場合があります。補償制度も、実質的で利用しやすいものでなければ、制度を導入しているとは言えません。制度をつくるだけでなく、現場での運用を適切に行っていただかないと、努力義務を果たしていることにはならないのではないかと思います。  また、デジタルプラットフォーム提供者の中には電話番号の記載がないところもあります。電話番号を明記すること、消費生活センターから紛争解決のための連絡が入った場合は、積極的に連携協力して、一緒に解決を目指していただきたいと思います。デジタルプラットフォームは、消費者事業者をつなぐ場の提供者であり、同時に当事者であるという意識を持っていただきたいと思います。  この度の法案消費者利益のための大きな前進だと考えていますし、消費者の安全、安心の機能を既に導入しているデジタルプラットフォームがあることも承知しています。しかし、小規模のプラットフォーム情報商材ばかりを集めて販売しているプラットフォームなどについては、やはり努力義務を果たすことを期待できるか疑問です。努力義務の取組の程度が低い場合や、消費者とのトラブルが多数発生しているのに、その販売業者を放置しているような場合、そのデジタルプラットフォーム自体に指導等が必要ではないかと考えます。  全国の消費生活相談員がこの法律に期待しています。消費生活センターとの連携により、消費者利益確保ができるよう、心から望んでいます。  そして、最後になりますが、本法案ではSNSは対象とされていませんが、消費生活センターに寄せられる悪質な定期購入や詐欺的な情報商材等のトラブルの多くは、SNSの広告に誘引されて、販売業者のサイトへ誘導されています。広告の審査基準の厳格な運用や表示されている広告の監視、苦情が入ったときの調査など、SNSもデジタルプラットフォームとしての役割を果たす必要があると考えます。SNS広告規制について、特商法で行うのか、この法律で行うのかも含め、今後検討していただきたいと思っております。  以上でございます。(拍手
  10. 永岡桂子

    永岡委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 永岡桂子

    永岡委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申出がありますので、順次これを許します。武村展英君。
  12. 武村展英

    ○武村委員 本日、参考人の皆様におかれましては、御多忙な中、また、急なお願いにもかかわりませず、こうして貴重な御意見をお聞かせいただけますことを、まずもって心から感謝を申し上げます。自由民主党の武村展英と申します。どうぞよろしくお願いをいたします。  まず、デジタルプラットフォーム企業の今後の規制の在り方について、依田参考人にお伺いをいたします。  本法案が対象としているデジタルプラットフォーム、これを一言で言っても、GAFAと呼ばれるような大変大きいものもありますし、小さな規模のものもございます。こうした規模もそうですし、取引の種類も異なります。取引の場の提供といいましても、関与の程度は様々です。こうした多種多様なデジタルプラットフォーム企業がありますし、こうした企業消費者トラブルに対して果たしていく役割についての考え方もまだばらばらだというふうに思っております。  本法案を策定する前段階の消費者庁の有識者による検討会である、デジタルプラットフォーム企業を介した消費者取引における環境整備等に関する検討会報告書座長としておまとめになりました。こうした立場からお伺いをしたいと存じます。  本報告書の前文では、多種多様な考え方が収れんするのを待つのではなくて、橋頭堡、つまり、不利な状況の中で前進をしていくための拠点として、まずコアとなる考え方を確立すべきとの方針であるというふうに承知をしています。  このコアとなる考え方をお聞かせいただきたいと存じます。
  13. 依田高典

    依田参考人 武村先生、どうもありがとうございます。  デジタル市場というのは、大変新しい社会的な取引慣行ではございますが、今、この現代において、津々浦々まで至っているところでございます。そうした中で、武村先生が述べましたGAFAあるいは日本における楽天等の大きなプラットフォーマー、巨大IT企業が及ぶ範囲というものは、かなり大きいものであるのは確かでございます。  経済学、統計学の世界に、八対二の冪法則というものがございます。先ほど河上先生も述べました、一人の影響が多数の者に及んでいくというネットワーク効果存在する世界においては、そうした巨大企業の及ぶ範囲はおおよそ八、及ばない範囲は二という経験則がございます。  したがいまして、この法律制定されましたら、恐らく巨大IT企業は、こうした法律制定をもって身を正すことによって、自己的な、自発的な規律を取るものと考えています。しかし、そうしたところが及ぶのはおおよそ八割でございまして、残りの二割に対してこの法律がどこまで及ぶものかに関しましては、まだ不透明なところもございます。  しかしながら、完全十割の一〇〇%、津々浦々まで法の目をかけるのにはなお相当の時間がかかるものでございますから、国民の生活に必須、不可欠なものとなっているデジタルに関して、しかも、取りあえず、差し当たりにおきましてはBツーCから始めることとして、まずは国民の八割方のところの生活をデジタル悪質業者から守る、そして、巨大IT事業者に関しては、自発努力をもって身を正していただくところから始めます。  しかし、及ばざる二割に関しては、先ほど板倉先生が申し上げたように、これだけでは不十分でありますので、何らかの早期の対応、手当てが必要であるとも考えております。  私からは以上です。
  14. 武村展英

    ○武村委員 ありがとうございました。  次の質問に移ります。  CツーC取引を対象にすべきかという議論に関連しまして、河上参考人にお伺いをいたします。  先ほども少し触れていただきましたけれども、まず第一点目は、我が国の現在の法体系についてです。  現行の我が国の民法や商法の法体系では、事業者ではない個人が不特定多数の者に対して単発的に商品、サービスの売主となるようなケースについて、そもそも想定をされていないというふうに思います。現在の法体系では、通信販売業者と同等の消費者保護規制は課されていないと理解をしています。  そこで、今後、そのような個人について、どのような責任、役割、義務が考えられ、どのような検討が必要かをお聞かせいただきたいと存じます。  もう一点、河上先生にお伺いをいたします。  EUについての事例です。EUにおける現行のプラットフォーム規制についても、本法案と同様に、消費者事業者である出品者取引を行う場を提供するプラットフォームを対象としていて、CツーC取引は対象とされていないというふうに聞いています。  諸外国でも模索中ではないかというふうに思いますが、こうした理解でよいのか。また、そうした現状にある背景をお伺いいたします。
  15. 河上正二

    河上参考人 どうもありがとうございます。  CツーC取引について、プラットフォーマーが果たすべき役割というものをどう考えていくべきかという御質問だと承りました。  実は、現段階では、消費者保護政策がどこまで及ぶべきかという点については、学会においても余り整理されていない状況にあります。  ただ、例えば消費者契約法の適用に関しても、最近では、いろんな消費者法研究者の間で、今までは、消費者事業者という壁を作っておいてその壁を守るという形で議論をしていたけれども、これからはやはり、壁を越えて、にじみ出しが必要になるだろうと。つまり、相手がBに似たCとか、そういう曖昧なものがどんどん出てきているということになりますので、今後そのBとCの切り分けも課題となるということは明らかであります。  ただ、プラットフォーマーの介在する取引の形態、それから利用形態の中身も多様でありますし、その三者の関係についてもなかなかいろいろなものがあるので、今後、シェアリングエコノミーなんかも対象になりますけれども、果たしてどこまでの義務をどの主体に対してかけていけるかということをやはり考えていく必要があろうかと思います。  ただ、消費者にとってみると、相手が一体何者か分からないという状態で置かれてしまうというのは大変まずいわけでありまして、消費者の選択に当たって、やはり、相手方との間で一定の橋渡しをするということは必要になるんだと思うんですね。  ちょっと気にしないといけないのは、Cが販売業者であったときに、そのCを明らかにすることで、逆にそのCを狙い撃ちにしたマイナスの誹謗中傷が起きるというような逆の効果もありますから、そこら辺の切り分け、これをしっかりとやっていかないといけないということであります。  将来的には、一対一の関係を超えた、一体としてのシステム責任を考えて、プラットフォーマーについても一定の役割というか責務を分担していただくというのが好ましいというのが私の考えでございます。  他方、EUとの関係をどうかという御質問がございましたけれども、実は、EUなど、加盟国のレベルで法整備は進められておりますが、二〇〇〇年代の半ば頃から、ここの平準化ということが進められています。日本も最終的にはイコールフッティングに立って、いろいろな平準化に合わせていかないといけないということなのでありますけれども。  ただ、ちょっとこれは私の認識が正しいかどうか分かりませんけれども、EUでは、そもそも、見ず知らずの人間を相手にネットで物を購入するということについては物すごく慎重であります、お客さん自身がですね。ですから、CツーCの場に規制を強化しているとしても、各国は域内市場の確立の方に関心がありますから、必ずしも消費者保護の問題とはされていないという現実がございます。ですから、EU内でのルールの統一というのは、今、形成途上にあるということになります。モデル準則というのがありますけれども、これは、今、指令のための討議草案という段階でございます。  私の方で編集しました「消費者法研究」という雑誌がございますが、この中で比較的なことについても資料を出しておりますので、御参照いただければと思います。  EUによって正式に採択された立法ではないので、その段階ではまだ加盟各国を拘束するものではないということになっておりますが、今後大いに参考にされてよいものであります。  BツーCについては、EUは電子商取引法の下で悪質な事業者を排除するということになっているんですが、これもまた、あくまでノーティスはあった、つまり、その認識があった、あるいは通知を受けたというときを前提として行動を取る、そういう前提のものでございますので、今、通信販売業者とそれからプラットフォーマーとを同じレベルで義務づけをするというところまでは進みにくいというのはよく理解できます。  今回の法案というのはそこまで踏み込めなかったということなんでしょうけれども、ただ、やはりそこの切り分けを何とかやりながら、にじみ出しを認めていって、そして、消費者が相手が誰か分からないという状況でどうしても責任を取ってくれる人がいないというときに、プラットフォーマーにその義務の一部を負担していただくという方向を考えていかないと、民事ルールとしては不完全だろうというふうに思います。
  16. 武村展英

    ○武村委員 ありがとうございました。  次の質問に移らせていただきます。  トラブルの解決についてプラットフォーム企業が果たす役割について、板倉参考人にお伺いをいたします。  プラットフォーム取引によって生じた損害を直接補填すべきという議論があります。先ほど河上先生の方からも、本来的には債務不履行責任、損害賠償責任を負うべきものであるというふうにお話ございましたが、私も、将来的にはそういったことが必要になってこようかと思いますが、しかしながら、現段階におきましては、それ以前にプラットフォーム企業が果たすべき役割があるというふうに思います。  日弁連意見書によりますと、プラットフォームにおけるトラブルの解決に当たって、ADRやODRの活用が示唆をされています。  取引デジタルプラットフォーム企業提供者には、トラブルの解決についてどのような役割を果たすべきと考えになられるか、お伺いをいたします。
  17. 板倉陽一郎

    板倉参考人 御質問ありがとうございます。  配付させていただいた意見書日弁連の機関決定としての意見でありますが、やはりこのコロナ禍ですので、紛争解決オンラインでできるように、適切な認定を経て、オンラインADR、ODRと言っておりますが、これを使った紛争解決を、最初からそれに乗りますよというようなことを是非やってほしいなと思っております。  政府においてもODRの議論はいろいろしていただいておりましたが、なかなか消費者被害についてまで議論が及んでいなかったと思いますので、そちらの議論も含めて、是非、こちらの意見書に書いたようなODRを設置し、それについてあらかじめ、取引デジタルプラットフォーム提供者においては、それを使って紛争解決をしますというようなことをやっていただく、紛争解決についてですね。意見書ではそれ以外に、消費者の方に負担をしないでほしいとかいろいろ入れておりますが、基本的にはそういう枠組みで紛争解決していただくというのが入っていると、その取引デジタルプラットフォーム提供者は信用されるのではないか、こんなような意見を持っております。
  18. 武村展英

    ○武村委員 ありがとうございました。  続きまして、プラットフォーム企業の加盟店管理につきまして、増田参考人にお伺いをいたします。  全国消費相談員協会の意見書では、プラットフォーム企業出品する加盟店に対して、クレジット会社による加盟店調査義務と同程度の調査をすることを義務づけるべきだという御意見を出されています。  この点につきまして、現段階では多種多様なプラットフォームがあり、その役割について様々な考え方がある、そうした現状において、最初の一歩としてのこの法律で、一律に全てのプラットフォーム企業に対してこうした規制をかけるというのは、やはりちょっと厳し過ぎるんじゃないかなという感想を持ったんですが、この点につきましてどのようにお考えになられるのか、お伺いをいたします。
  19. 増田悦子

    増田参考人 ありがとうございます。  確かに、私も、現段階では厳しいというふうに認識しております。  ただ、明らかに詐欺的な情報であるとか、明らかに高価格過ぎるとか、危ないものとか、誰が見ても分かるようなものを販売しているとかいうこともございますので、そうしたものは事前調査が全くされていないというふうに理解できると思います。  ですので、やはり最低限の調査というものを義務づけしていただくと、そういう中小のところであってもできるのではないかなというふうに思いますので、割販法においてもすぐさま今の状況にたどり着いたわけではありませんので、少しずつでも調査義務、途上調査を含めて進めていただきたいというふうに希望しております。
  20. 永岡桂子

    永岡委員長 武村展英君、時間でございますので、手短にどうぞ。
  21. 武村展英

    ○武村委員 ありがとうございました。  プラットフォーム規制につきましては、この法案はあくまで取組の第一歩であります。今後も、よりよい制度をつくっていくために、官民挙げての取組をしなければなりません。参考人の皆様におかれましては、今後とも御指導、御助言を賜りますことをお願い申し上げますとともに、今後ますますの御活躍を御祈念申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  本日は誠にありがとうございました。
  22. 永岡桂子

    永岡委員長 次に、柚木道義君。
  23. 柚木道義

    ○柚木委員 立憲民主党・無所属の柚木道義でございます。  冒頭、四人の先生、参考人の皆様、御多用中にもかかわりませず、本当に大変示唆に富んだ御指導、御指摘をいただき、ありがとうございます。  時間の関係で、全員の参考人にお伺いできるかどうか分かりませんが、順次質問させていただければと思います。  まず、河上参考人にお伺いをしたいんですが、大きな方向性ということで、消費者庁ができて以降の流れの中で、ちょっと整理をして伺いたいと思います。  二〇〇八年一月、当時、福田元首相が通常国会の施政方針演説で、生活者や消費者が主役となる社会に向け、消費者行政を統一的、一元的に推進するための強い権限を持つ新組織を発足するという発言の中での、二〇〇九年、消費者庁が設置されました。  そして、設置されて十年以上がたち、消費者の権利に関する理解は一定程度進んだものの、今日御指摘、御示唆いただきました、特にデジタル化が進む中で、新しい取引の場が生まれ、新しい消費者被害も生まれているという状況だと思います。  確かに、消費者基本法には、消費者事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差があることを前提とした消費者保護施策を進めることが書き込まれています。  今日、河上参考人意見陳述資料の中のまさに六番のPF事業者責務の中に、こうあります。PF事業者取引のきっかけを提供するにすぎず、単なる場の提供者にすぎないという抗弁は、今日では否定されるべきであると。  また、そのまとめに、PF事業者がPF利用者間の取引については一切責任を負わない旨などの免責条項を設けていることが少なくないが、PF事業者は、自身が売主でない場合でも、システムの安全性に関して一定義務を負い、これを怠った場合は、本来、債務不履行又は不法行為による損害賠償責任を負う、少なくとも、PF利用者消費者である場合は、PF事業者とPF利用者との間のPF利用契約消費者契約であり、一切責任を負わないと定めた免責条項は、消費者契約法八条により無効と解されようと。  大変私もそのとおりだなと思って拝聴しておりましたが、実際に目の前に消費者の被害が起こったときに、その取引の相手が事業者であるか消費者であるかで、消費者庁の役割というのは変わるんでしょうか。多種多様な消費者被害に対応するために設置された消費者庁だからこそ、消費者被害があったときには、その権利回復に向けて、消費者庁としては全力で対応すべきだと考えますが、河上参考人、先生の御所見をいただければと思います。
  24. 河上正二

    河上参考人 ありがとうございました。  柚木先生の言われたのはもう本当にそのとおりだなと思いながら今伺いました。  消費者庁というものが設置された段階で考えられていたのは、消費者基本法もそうですけれども、事業者消費者情報力、交渉力の格差というものを前提として、その底上げを図るというこれまでのコンセプトがあったわけで、それをある意味では乗り越えていかないといけない段階に来ているという感じが私もしております。  そうなりますと、この大きな方向性としては、私は、柚木先生のおっしゃったような方向性が今後必要になるということになるわけですので、その辺は、消費者庁にも頑張れというふうにエールを送りたいというふうに思います。  今の段階では、少なくとも、消費者問題としての枠の中で一定のにじみ出しを認めていって、消費者的な顔をしているけれども実はこれは事業者だというものをできるだけつかまえていくというやり方で一歩一歩進めていくということが現時点では実際的なのかなという感じはしておりますけれども、おっしゃるお考えについては賛成でございます。
  25. 柚木道義

    ○柚木委員 ありがとうございます。  続きまして、板倉参考人に二点まとめて伺えればと思います。  デジタルプラットフォーム上では、ありとあらゆる人、事業者が混在をしているわけでございます。そうした中、今回の新法では、CツーC取引について、検討会では今後の検討課題となっているわけですが、現段階でも入れるべき項目というのがあるように思われるわけですが、それはどういったことであるとお考えかというのが一点。  そしてもう一点は、今回の閣法では、DPF提供者による販売事業者の定期的な本人確認などは努力義務となっているわけでございますが、このDPF提供者取引の場を提供し、また、その提供によって利益を得ているわけでありますので、努力義務ではなくて義務にして、そして、その取引の場の安全確保を行う必要性があると考えますが、いかがでしょうか。  以上、二点伺います。
  26. 板倉陽一郎

    板倉参考人 御質問ありがとうございます。  CツーCにつきましては、先ほど述べたように、直ちに検討して宙ぶらりんの状態は解消すべきだと思いますが、今でも入れるべき項目があるとすれば、例えば、三条三項の、指針を定めることになっておりますが、指針では、法律に定められている事項以外を定めてもいけないということはないと思いますので、CツーCのプラットフォームについての項目を設けて定めるというのはあり得るのではないかと思います。  それから、官民協議会につきまして、ここにCツーCのプラットフォームが入ってこないとCツーCの状況が分かりませんので、現時点では、デジタルプラットフォーム提供者は、これが構成する団体が構成員になるということになっておりますので、そこに入っていただくということは十分あると思いますが、それ以外にも必要な方は加えられるようになっておりますので、そこでもきちんとCツーCについて状況が把握できるように参加していただくというのがあると思います。  それから、消費者からの申出制度が十条にあります。これについて、CツーCについてもいろいろな申出があると思います。これは法的には申出としては受け取れないのかもしれませんが、消費者庁として、任意の情報提供として是非参考にしていただく。この辺りは直ちにCツーCについて本法が活躍できる範囲かなというふうに思います。  もう一つ御質問いただいたのが、連絡先の定期的な確認というところですね。これについては、ODRについての日弁連意見書で、詳細に書いてあるので書き方はややこしくなっておりますが、やはりモニタリングを含めてきちんとやっていただく。  これは、たまに、デジタルプラットフォーム事業者さんたちが、自分たちをデパート等に例えて、中のたな子が何を売っているかとかは全部把握できないんだとおっしゃる。それはそうだと思いますが、知らない人がデパートに出品することはないわけで、やはり連絡がつかないであるとかいう事業者については出ていってもらう、契約を切ってもらうというようなことについて、これは努力義務の中でも一段階厳しくするというのはあり得ると思います。実際、その方がデジタルプラットフォームも信用が置けると思いますし、自動的にある程度確認できるという技術も、皆さん技術力をお持ちですので、自動的に電話をかけるとか、工夫していただきたいなと思います。  以上です。
  27. 柚木道義

    ○柚木委員 再び河上参考人にお伺いしたいんですが、参考人は、冒頭御紹介なされましたように、特商法、預託法の検討会委員長でもいらっしゃるわけですが、その報告書を私も拝見して、その中で、デジタルプラットフォームを経由した取引等への対応という箇所があります。  ここにはこう書いてあります。デジタルプラットフォームを経由した取引等については、デジタルプラットフォーム企業と連携を図りつつ、オンラインショッピングモール等における販売業者等の特定商取引法の表示義務の履行確保及び法執行時の販売業者等に対する追跡可能性確保のために特商法の見直しを含めた所要の方策を検討すべきと。  これはこのとおりだと思うんですが、実は、このデジプラ法案と、今後、特商法、預託法の改正案の審議がこの国会で想定されるわけですが、もうまさに密接不可分であると考えます。  そこで、ちょっと先出し的な議論にもなって、このデジプラ法とも関連するという観点から伺いたいんですが、ちょうど板倉参考人からの資料の十八ページ目ですかね、消費者利益の擁護増進のための規定の整備の二項目めに、契約書面等の電子化、デジタル化についての言及があるんですね。  これは、報告書に述べられている、まさに法執行時の販売業者等に対する追跡可能性確保という観点から考えた場合に、私はやはり、まず紙ベースのものがしっかりと消費者の方の手元にあることが前提で、プラス、希望する方にはデジタルで交付する等あってもいいと思うんですが、それがなければ、かえって詐欺被害等に遭われる方の拡大につながりかねないという懸念を持っておりまして。  この点については、実は菅首相も余りこの問題点を認識されていなくて、ああ、そういうことが起こり得るのか、そうした場合には非常に、やはり検討していくことが必要だなと、国会答弁もされております。  こういった視点から、契約書等の電子化、デジタル化について、デジプラ法も絡むわけですが、私は特商法、預託法の観点からも非常に重大な論点だと考えるわけですが、河上参考人の御所見をいただければと思います。
  28. 河上正二

    河上参考人 ありがとうございます。  契約書面に関してデジタル化をするかどうかということについて、消費者庁の方ではデジタル化を認める方向での対応を考えておられるようですけれども、ただ、原則は契約書面はペーパーベースであるというところは変えておられません。  この辺は若干世間に誤解があるようでして、むしろデジタル書面で欲しいということを消費者が積極的に依頼したときにまでそれを否定するかという問題になったときには、これはよいだろうと。ただ、その意思決定が非常に不十分な場合もございますし、実は、クーリングオフを考えるときの開始期間であるとか、それから契約全体を一覧するときの一覧性といったようなことを考えた場合には、やはり契約書面というのはそれなりに効能を持っておりますので、基本的に、消費者に対して十分な説明があって、なおかつ消費者が、自分はデジタルで欲しいんだ、整理するときには自分のパソコンのボックスの中に入れておいた方が後々見やすいからそうしてほしいというふうに言ったのに、それは駄目だという理屈は、これはなかなか通らないという感じがしております。  他方で、クーリングオフを消費者がするときには、これはデジタルでクーリングオフができるというふうにしておかないと、この今の時代においてはやはりまずいだろうというようなこともございまして、消費者委員会からもその点についての意見が出ているのは、私は賛成でございます。
  29. 柚木道義

    ○柚木委員 ありがとうございます。  この契約書面等の電子化については、原則と例外が私は逆転しかねないと。悪いことを考える人は幾らでも考えますから、まさに詐欺被害拡大法案みたいなことに運用上されないための歯止めが明確に必要だと思います。  最後に、依田参考人増田参考人、それぞれ御答弁をいただければと思いますが、まさに今、ちょっと特商法との絡みも申し上げたわけですが、絡みという意味で、もう一つは解約権についても非常に私は関連性が高いと思っておりまして、今まさに消費者庁内の検討会、いわゆるつけ込み型勧誘の包括規定、取消権、これはもちろんデジタルであればオンライン上が主ですが、そこを介在して対面とつながる可能性もあるわけですよね。  そういった中で、非常に、いわゆる類型の整理とか、論点はあるわけですが、私は、やはり取消権、解約権について整理をしてしっかりやっていくことによって、いわゆる消費弱者というか、若年成人も、来年の四月一日から十八、十九も入ってくる、あるいは高齢者の方、コロナ禍で詐欺被害がいろいろ起こっている。そういうことも含めた解約権、取消権について、デジプラ法並びに特商法、預託法、それぞれ、私、関連する論点から、依田参考人増田参考人、それぞれ御所見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
  30. 依田高典

    依田参考人 柚木先生、どうもありがとうございます。大変重要な質問の論点であると考えます。ごく手短に、行動経済学的な観点から、一言回答申し上げます。  先ほど述べましたように、人間は間違ってしまう存在、弱き存在でございますから、しばしばエラーを犯します。エラーを犯さないように完全合理的な人間を求めることは、人間の本性に反します。したがいまして、誤った選択を犯した後に対して、それをやり直しを認める、つまり、一度間違ってオプトインしてしまった後にオプトアウトを認めるとか、あるいは一度入ってしまったものからほかのものに移るようなポータビリティーを認めるということは、大変理にかなったことと考えております。  以上でございます。
  31. 増田悦子

    増田参考人 現在、消費者契約法の方でも包括的な解約権、取消権を検討しているところだと思いますので、是非それは早急に検討していただきたいということと、それから、特商法におけるクーリングオフの通知をオンラインでもできるようにするというような案が出されていることについては、非常に、発信主義が変わってしまうケースも想定され、消費者の方に理解をしていただくということが難しいことも発生するのではないかというふうにも思いまして、これから現場で難しくなってくるなという印象は持っております。  以上です。
  32. 柚木道義

    ○柚木委員 終わりにいたしますが、まさにこの後の質疑も含めて、今、デジプラ法については、修正協議がそれぞれ担当の先生方となされております。この先の特商法、預託法への議論も見据えつつ、やはりしっかりと、デジタル化による利便性、便利さの追求と、そしてやはり被害拡大の素地を広げない、防止、この観点の両立をしっかりと修正協議の中でもお願いを申し上げて、四名の参考人の先生方にも御礼を申し上げて、質疑を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  33. 永岡桂子

    永岡委員長 次に、伊佐進一君。
  34. 伊佐進一

    ○伊佐委員 公明党の伊佐進一です。  参考人の皆様には、お忙しい中、国会まで足を運んでいただきまして、貴重な御意見をありがとうございます。  意見を伺っておりますと、デジタルプラットフォーマーは当事者なんだという御意見、あるいは、個別の契約じゃなくて、このプラットフォーマーというのはある意味一つの大きなシステム、その構築者であって、ルール形成をやっている者なんだと。そういう中で、名古屋高裁の判決も示していただいて、単なる場の提供者じゃないんだという話であるとか、あるいは、八、二の理論というのもおっしゃっていただきました。  つまり、どの参考人の皆さんの意見を取ってみましても、一定の役割、義務というのをデジタルプラットフォーマーというのはより果たしていくべきだというところの意見は、皆さん方向性は一致しているのかなと思って伺っておりました。その上で、ではどこまでかというところでは、皆さんそれぞれ濃淡があるといいますか、多少の違いがあるなというふうに伺っていたので、その辺のところを伺いたいなというふうに思っております。  まず一点目は、依田参考人に伺います。  今回は、義務ではなくて努力義務になっています、この法案。そのときに実効性がどうかという観点であります。  さっき、依田参考人の話の中で、二〇一七年のナッジ理論、セイラー教授の例を引いていただきながらお話がありましたが、今回、努力義務座長でもあられますので、努力義務に何でなったのかという点と、恐らくナッジ理論を出されたのはここを言いたかったんじゃないかなと思うんですが、危険商品の流通を減らして紛争解決につなげていくために背中をそっと押すというのは、この法案でどういう位置づけなのかというところを、少し解説をしていただきたいというふうに思います。
  35. 依田高典

    依田参考人 伊佐先生、私にその説明の機会を与えていただき、どうもありがとうございました。  少し率直なことを申し上げますと、私は、この検討会において座長を務めた中で、大変、非常に苦労しました。正直言うと、予定調和的な検討会ではなかったものですから、ガチの検討会で、しかも、かなりの程度を非公開で行ったこともございまして、内部においてはかなり激しい、大変な意見衝突、対立もございました。  そうした中において、経済団体を代表して参加されていたプラットフォーマー企業にも所属する委員等からは、かなりの程度、最初において、始まりの第一歩において、公的責任一定を負うことはやむを得ないけれども、かなりの部分は、我々は自分たちの自発的な協会を立ち上げるので、そこのところにおける自発的な努力をまずは見てほしいという意見、見解も正直大変強うございました。そして、我々はイノベーションの担い手であって、消費者保護重要性はよく分かって、様々なことをやってきてはいるのだけれども、決してイノベーションの担い手である我々に過剰規制をかけてくれるなという意見も大変強うございました。  他方で、学識あるいは消費者団体の皆様からは、そうはいうものの、消費者救済の必要性実態に鑑みて、努力義務だけでは弱い、是非、義務を課して、かつ罰則を設けて、厳しく規制するべきだという意見もございました。  一年の相当程度において、そうした意見対立は長く続いたものと理解しております。  一つ大変矛盾がございまして、そういうことを言う巨大IT企業プラットフォーマーは、確かに彼らが言うとおり、相当な程度において自助努力を進めておられて、かなりの、彼ら自身の消費者救済の仕組み、例えば人工知能を使った、違法、不法を出店、出品する事業者を自動的に見つけるような仕組みももう設けてきております。彼らのそうしたベストプラクティスは決して無視すべきものではないと私は感じておりました。したがって、彼らの言い分を一定認め、民間、自発的なその団体の取組というのを熟視するべきであると考えております。  他方で、委員会検討会でも問題になりましたが、しかし、本当の自覚的な悪い連中というのは、そうしたプラットフォーマーの言うことも聞きませんし、そもそも日本本国においてこうした法律ができることを知らないような方々である可能性もございますので、この努力義務的な法ができることによってカバーされるのは、先ほど言ったように八割、九割であって、なお及ばざる一割、二割が残るであろうことはやむを得ないところと思っておりまして、その最初の第一歩で、まずは八割、九割のベストプラクティスを認めた上で、しかも、この法が届かないような残余の部分については別の手当てが必要になるということは最初から自覚しております。  以上でございます。
  36. 伊佐進一

    ○伊佐委員 座長として、本当にいろいろなプレーヤーが関わる法案であると思います。その多様な意見というのを、この対立をおっしゃるようにガチでまとめていただいて、調整してこの結論に至ったということだというふうに私は理解をいたしました。  その上で、二点目、CツーCの議論がございます。今回はBツーCは対象になっていますが、CツーC、コンシューマー、コンシューマーでやるものは対象になっていない。  私の妻もよくCツーCで物のやり取りをしておりまして、私は慣れていないんですが、さっき、参考人、ちょっと河上参考人に伺いたいと思いますが、EUではそれほど盛んじゃないというお話です。だからこそ、世界の流れを待っていても、これじゃなかなかルール形成は進まないんじゃないかと私も思っておりまして、日本が先進的に議論していくべきだというふうにも思っております。  ただ、大事なことは、今やるべきことというのは、隠れBといいますか、BなのにCのふりをしている人たちはしっかりとやはりBとしての責任を持ってもらわなきゃいけないというふうに思っておりまして、ここの定義は大事だと。ただ、CツーCをどうするかという議論になると、恐らく、消費者問題なのか、あるいは民事世界なのかという議論も、多少、様々あるかと思っております。  そういう意味で、伺いたいのは、この隠れB、何が事業者かという定義について、事業者という範囲をどう考えるべきかという点について伺いたいと思います。
  37. 河上正二

    河上参考人 ありがとうございます。  非常に難しい問題であることはもう御指摘のとおりでございまして、CツーCに関して、実は中国の消費者権益保護法などでは、正面から責任を認めていく方向での立法があります。ただ、そこで本当に消費者の、相手方消費者のプライバシーが守られているかというような懸念もございます。  今現在の状況だと、やはり隠れCという、そのようなBをあぶり出すような運用というものが現実的ではないかというのを先ほども申し上げたところでございます。  実際問題として、こうした実効性をどこまで保っていくかということを考えたときに、大きなプラットフォーマーが自分たちである程度やらせてくれということでここまで乗ってきているというか、問題に対して対応するという努力をしてくれているんだとすると、それを第一歩として次の段階を考えるというのは一つの手だろうと思います。依田先生がもう随分苦労されたということは私も承知しておりますので、それはそれとして尊重したいというふうに思います。
  38. 伊佐進一

    ○伊佐委員 ありがとうございます。  次、板倉参考人に伺いたいと思います。  極悪層という名前を、名づけを紹介していただきました。恐らくさっきの八、二でいえばこの二、取り残される部分の話かなと思っておりますが、ただ、極悪層といったときに、誰が極悪層なのか、誰が極悪なのかというのはなかなかぱっと見分からない中で、極悪を排除するために、より厳しい規制をかけていくということになると、当然、良民の、いい行いをしている人たちも自由な活動が制限されて、結果として排除されるというようなことになっちゃいけないなというふうに思っております。この辺は非常にバランスが難しいなと思っておりますが、御所見をいただければというふうに思います。
  39. 板倉陽一郎

    板倉参考人 御質問ありがとうございます。  非常にシンプルに答えてしまえば、やはり、先進的に取組をするデジタルプラットフォーム提供者団体等にも全く入る気がないとか、連絡がつかないといったような人たちが極悪層ということになるんだろうと思います。  その際は、私が先ほど申し上げたとおり、勧告命令罰則というのを入れざるを得ないんだろうとは思いますが、それは入れたからといって、きちんとやっているところがすぐ勧告命令罰則を食らうわけではないというのは当然そうですし、行政処分等を定める場合はガイドラインも定めていくということになりますので、定めたから直ちに心配するということはないと思います。  官民協議会は、まさに名前が官民協議会ですので、そこに入っていただいたら事前の調整等も当然行われるということになりますので、やはり、官民協議会にも全く来ない、参加する気もないといったような人たちによる被害が増える。若しくは、全くの外国から、サービスの日本語化だけしてサービスを提供しているという外国の事業者もいるわけですが、インターネット世界ですので、突如はやってしまうと、みんながそこにばあっと流れ込むということもありますので、そういう状態で消費者被害が起きて手も足も出ないということであれば、残念ながら、それは厳しい方の措置を講ずるということにはなりますが。  ガイドライン等ないし官民協議会が適正に機能する限りにおいては、きちんとやっているところはきちんとやっているところとして評価されるべきだと思いますし、より一層信頼が得られるということであれば、市場の中においても、消費者はそちらを使うのではないかというふうに思います。
  40. 伊佐進一

    ○伊佐委員 ありがとうございます。  次に、増田参考人に伺いたいというふうに思いますが、消費者の啓発、教育というのが大事だというのは、ほかの参考人の方もおっしゃっていたというふうに思っております。  確かに、デジタル社会の中で、誰もが脆弱性を今はもう有するような時代になったという認識だと思っております。これはたしか、G7、G9ですかね、の消費者政策国際会議でも、そのような共通認識世界で共有されているということでありますが、デジタルとかインターネットに慣れていない方々はいわばより脆弱性が高いんじゃないかなというふうに思っております。  デジタル化を進めていく中で、やはり誰一人取り残さないデジタル化というのが我々大事だというふうに思っておりまして、その中で、啓発、教育というものをどのように進めていくのか、国からあるいは行政からどういう支援が必要なのかという点を伺いたいと思います。
  41. 増田悦子

    増田参考人 ありがとうございます。  今後、このデジタルの教育については、幼児から全ての年代にわたって必要なことと理解しております。  その中で、学校で行われるという場合、文科省と消費者庁等の連携と、それから、先生に対するまずは教育が必要だということがあると思います。  それと、学校以外の、既に社会に出てしまった方、それから高齢者、高齢者の場合はデジタルは本当に便利、使いこなせば便利ですので、やはりそこに対する教育というのは非常に重要ですので、各地方自治体に対する支援も含めて、国としてしっかりサポートしていただきたいと思います。
  42. 伊佐進一

    ○伊佐委員 次が最後の質問になると思いますが、河上参考人最後伺いたいというふうに思っております。  悪質なレビューについてというのは、これは消費者を誘導するような、いわゆる今ステルスマーケティングというふうにも言われておりますが、それだけじゃなくて、それを請け負う代行業者とかコンサルタントまでいるというような状況の中で、評価の公正性とか透明性をどう確保するかという義務、ここはもちろん、デジタルプラットフォーマー一定の役割を担ってもらうだけじゃなくて、そもそも、レビューアーの責任というか、評価する側の責任、こういうところの明確化というのも必要なんじゃないか。これは板倉参考人も述べていらっしゃったんじゃないかと思いますが、この辺りについてお考えをいただければというふうに思っております。
  43. 河上正二

    河上参考人 恐らく、行政上の問題としてやっていくというのはかなり難しいのかもしれませんけれども、少なくとも民事上は、利用契約上の付随義務として、レビューの公正性、それから透明性についての確保義務というものをプラットフォーマーというのは負っているというふうに思います。  ただ、何もかもが公正で正しいレビューなのかどうかということが調査して確認できるかどうかということについては、やはり実効的ではないと思いますので、もしも知った場合、それが著しく奇妙なレビューになっているとか、同じところから幾つ幾つも「いいね」が出てくるというような話になっているというのが分かったその段階でそれに対処するということは、義務として考えていいんじゃないかというふうには考えております。
  44. 伊佐進一

    ○伊佐委員 ありがとうございました。  今日いただいた貴重な御意見、しっかりとまたこの委員会での議論に役立たせていきたいというふうに思っております。  今日はありがとうございました。
  45. 永岡桂子

    永岡委員長 次に、畑野君枝君。
  46. 畑野君枝

    ○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。  本日は、依田高典参考人河上正二参考人板倉陽一郎参考人増田悦子参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございます。  取引デジタルプラットフォームを利用する消費者利益保護に関する法律案ということで伺います。  まず、増田参考人に伺います。  取引デジタルプラットフォーム提供者による措置の実施を努力義務でなく義務とするようにとおっしゃっていただいておりますが、日々、消費生活相談を受けている現場の御認識についてお聞かせいただきたいと思います。努力義務で果たして実効的な運用ができるのか、問題点があればお示しください。
  47. 増田悦子

    増田参考人 既に大手のプラットフォームはそういう機能を装備しているところが多くありますので、努力義務じゃなく義務化しても何ら問題はないのではないかと私としては理解しております。  そうではないところに対してどれだけの、プラットフォーム協議会がつくられましたけれども、そこからの効果がどういうふうに及ぶのかということも非常に考えにくいところがありまして、やはり、義務化していただかないと実効性というのは果たされないでしょう。  私たちが交渉するときに、これは義務ではないですねというようなことは、当然反論されるということが予測されますので、そうした場面を想定しますと義務化が望ましいなというふうに思います。
  48. 畑野君枝

    ○畑野委員 また、併せて伺いたいんですけれども、取引デジタルプラットフォーム上の取引のうち、CツーCの話が先ほどから出ておりますが、増田参考人は、CツーC取引も対象にすべきでしょうか、どのようにお考えか伺いたいのと、現在、既に起きている消費者被害の事例として御紹介いただければ、お願いしたいと思います。
  49. 増田悦子

    増田参考人 CツーCを消費生活センターで取り扱うというのは、現段階では非常に難しいというふうに思います。  ただ、CツーCの取引であっても、苦情が寄せられた場合、プラットフォームに伝え、そこで調整をしていただくということは、プラットフォームだからこそできるのだというふうに思いますので、両方の場所を知っていたり、調整ができる立場だと思いますので、やはりそういう、ある意味ODRの機能というものを持っていただくというのが非常に望ましいなというふうに思っております。
  50. 畑野君枝

    ○畑野委員 ありがとうございます。  河上参考人に伺います。  DPF上の様々な消費者被害の話もございますが、とりわけ、高齢者や若年者の被害は深刻だと思います。来年四月から成年年齢の十八歳への引下げが施行されるんですが、このデジタルプラットフォームに絡んでどのような被害が想定され、どのような対策が必要になるとお考えか、伺えますでしょうか。
  51. 河上正二

    河上参考人 ありがとうございます。  私も前期高齢者でありまして、どちらかというとリテラシーに弱い方であります。だから、非常に頼りない人間ではあるんですけれども、やはり、高齢者がこの方法についてきちんと理解できるようにサポートしてくれるような人を育てないといけないだろうという気がします。ただでさえ、だまされやすくて依存心が強いものですから、全体としていろいろな方が高齢者を見守っていくということが必要で、消費者教育はこれまで高齢者に対してはかなり手厚くやるようになってきていたんですが、もう少し、このリーガルリテラシーに関しては考えないといけない。  それからもう一つ、若者の方ですけれども、若者は意外に慣れているんですね。その意味では、むしろこういう問題に対しては敏感に反応できる態勢にあります。  ただ、逆に、それだけに、若者が安易に、例えばお金がもうかりそうだとかそういうものに飛びついてしまう、場合によっては自分が加害者になってしまうというような可能性もございます。  そういうことを考えていくと、若年者に対する消費者啓発というもの、特に、今度、年齢層を下げて、成年年齢が引き下がっていきますと、自分でも銀行口座を開けるわけですね。ですから、いろいろな被害が出てくる可能性がありますので、これは中学生あたりから少しずつ、消費者教育の中に、こういうインターネット取引における危険性、そういったものについて教えていくということが必要になるだろうとは思います。
  52. 畑野君枝

    ○畑野委員 ありがとうございます。  板倉参考人に伺います。  販売事業者はもちろん、デジタルプラットフォーム事業者義務についても強調されていると思います。取引の場を提供しているだけだから何らの義務を負わないということには当然ならないというふうにおっしゃられているんですが、この点についてもう少し詳しくお話を聞かせていただけますでしょうか。
  53. 板倉陽一郎

    板倉参考人 ありがとうございます。  一般論になりますが、デジタルプラットフォームができたことによって、同じインターフェースで消費者はいろいろなところにアプローチして買物ができて、しかも比較もできて、これは便利だというのはそのとおりです。  他方で、たな子の方、販売業者等の方も、三つに分けると、これはまた中川先生の分類をおかりしますが、従順層と中間層と極悪層といるわけで、従順層はちゃんとやってくれるからいいわけですが、中間層は被害を生じさせてしまうかもしれないですね。過失で被害を生じさせてしまうかもしれない。それが自分でオンラインストアを立ち上げてアプローチしてということですと、範囲が限られますから、そんなにたくさんの被害は出ないわけですが、デジタルプラットフォームを使うことによって、思わぬ被害が非常に及ぶ場合がある。それから、極悪層はひどいもので、デジタルプラットフォームを悪用して、最初から悪いことをするわけであります。  しかしながら、デジタルプラットフォームは、それはどういう人かにかかわらず、恐らく、その上がりをいただいて利益を上げているわけですから、それは知らないよというわけにはなかなかいかない。過失や故意で悪いことをしてしまう人についてはやはり排除してもらうというようなことをやっていただきたいなということで、責任がないということにはならないでしょうと。  これを、基本的には今回の法律は、責任を負う販売業者等の補助的な責任として位置づけているわけですが、それは絶対ではないだろうと思うんです。  私の意見陳述のときにも、一言、間接侵害という話をしましたが、立法によって、関与する方の侵害を、単なる補助的な責任ではなくて法的な責任だとしている例というのはいろいろ、知的財産の分野とかでありまして、民事の分野では、河上先生からあったように、放置した場合にはいろいろ責任が生じる場合があるというようなこともされているわけですから、議論を経て、立法等によって、必ずしも補助的な責任ではないというようなものを加えるというのは不可能ではないと思いますので、そこは、今申し上げたような、非常によくない人がどれぐらい今後もばっこするのかというのを丁寧に見ていただいて、必要があれば直接的な責任に、多少、法律の考え方を変えるんだというのはそんなに難しくないのではないかと思っています。
  54. 畑野君枝

    ○畑野委員 ありがとうございます。  依田参考人に伺います。  極悪層の話を先ほどもされておられましたが、デジタルプラットフォーム事業者責務という話が先ほどから出されております。今後の課題としてどのようなことが考えられるか、その点について少し詳しく伺えますでしょうか。
  55. 依田高典

    依田参考人 畑野先生、どうもありがとうございます。  正直申し上げまして、課題というのはたくさんございます。そういう中において、プラットフォーマー公的責任をどう考えるかという点について、課題について私見を述べさせていただきます。  先ほど河上先生ほか諸先生が申し上げましたように、当初の私が座長を務めた検討会においても、名立たる大大プラットフォーマーが、我々は所詮、場所を貸しているにすぎずに、悪いことをしているのはたな子なので我々には責任はありませんということを、とうとうと政府委員会でも述べてきたところでございます。  やはり、今日、それは絶対に許されない見解であると私は感じております。  なぜかと申しますと、一つ消費者庁等が実施した利用者アンケート調査に基づくと、消費者は、例えば、名立たる、ここでは実名は申し上げませんけれども、世界に冠たる巨大プラットフォーマーが運営するオンラインモール等を利用した場合において、あなたは誰から買物をしていますか、誰がそこの責任を負いますかというアンケート調査を実際に行っております。それについて詳しい数字は消費者庁報告書を見ていただければとは思いますが、多くの消費者が、具体的なたな子ではなくて、その巨大プラットフォーマーを信用して、そこを信じて買物をしていますので、具体的な責任プラットフォーマーに負ってほしいという意見が多くございました。更に言えば、たな子が具体的に誰かも分からないようなケースも、消費者の方の意識としては多々あります。  そうした消費者の現状を踏まえまして、やはり、従前どおりの、プラットフォーマー公的責任場所貸しであるからないという一部のプラットフォーマー意見は、もはやあり得ないだろうと私は感じております。  しかしながら、特商法を始め、従前どおりの法律は、十分にそのプラットフォーマー公的責任法制、明示化するところにまだ至っていないところもございまして、また、事業者のみを扱っているところもございまして、CツーCの、消費者が売手側に回るときの責任をどう考えるかにはまだ及んでおりません。そうしたところにおいては、公的責任をより明確にする上で今後の課題であると受け止めております。  以上です。
  56. 畑野君枝

    ○畑野委員 ありがとうございました。  先ほども質疑の中で出ておりましたけれども、今、コロナ禍で経済状況が逼迫する中で、デジタルプラットフォーム上の勧誘や広告を受けて、投資話やマルチ商法、私、この間の委員会でFXの話をしたんですが、情報商材によるもうけ話などについすがってしまうという消費者もおられます。こうした中で、現在、特商法の改正案に盛り込まれた契約書面の電子化に多くの団体から懸念や反対の声が上がっているんですが、先ほど議論でありましたが、この電子化、電子書面化に対する御意見があれば伺いたいので、先ほどお話しされていなかった皆さんに一言ずつ伺います。増田参考人板倉参考人依田参考人、一言ずつ、何か御意見があれば伺いたいと思います。
  57. 永岡桂子

    永岡委員長 では、増田参考人から。  申し訳ございません、時間が迫っておりますので、手短によろしくお願いいたします。
  58. 増田悦子

    増田参考人 対面で勧誘をする訪問販売であるとか、それから成年年齢引下げを目前にした若者に対する連鎖販売取引については、このオンラインでの書面交付というのは一番懸念されるところだと思います。相談現場で非常に混乱が起きるというふうに思っております。
  59. 板倉陽一郎

    板倉参考人 御質問ありがとうございます。  これは日弁連も反対の意見書を出しておりますし、各地の弁護士会も、さらには市議会等も出していただいておりますが、元々の規制改革会議議論は、要するにオンラインで全部完結する英会話のようなものについて御意見があったということですが、なぜか法案が出てきたら全部になっている。今、増田参考人からもあったように、情報商材のマルチみたいな、悪魔合体みたいなものがデジタルで全部できますと。それに、成人年齢の引下げですよ。ひどくなるのはもう誰が見たって明らかなわけであります。  なので、是非、こちらは特商法等の審議もされると思いますが、慎重な議論をよろしくお願いいたします。
  60. 依田高典

    依田参考人 取引デジタル化オンライン化が進むことは、取引の参入障壁が下がることを意味しております。  参入、取引が容易化することのメリット、デメリットは、消費者側にもそれぞれ一長一短ございまして、よりデジタルを使いこなしたい方々が、ペーパーレス化することによって便宜性が高まることは、一方でメリットでございます。しかし、それによって、デジタルに対しての素養が弱い方々に関しては、確かにだまされやすくなるというデメリットの側面もございます。  そうしたものに対しては、今後、デジタル化オンライン化が、日本デジタルトランスフォーメーションが進んでいく中において利益と費用を慎重に比較考量することが求められていて、よいところは伸ばし、悪いところは潰すという今後の方針で、より慎重に臨んでいきたいと思います。  以上です。
  61. 畑野君枝

    ○畑野委員 どうもありがとうございました。  今後の審議の参考にさせていただきます。よろしくお願いします。
  62. 永岡桂子

    永岡委員長 次に、串田誠一君。
  63. 串田誠一

    ○串田委員 日本維新の会の串田誠一です。  最初依田参考人に質問させていただきたいと思うんですが、ちょっとほかの質問を考えていたんですけれども、先ほど、ナッジ理論のセイラー教授相田みつをさんのファンであるということを聞きまして、何か頭がそれでいっぱいになってしまいました。先ほど依田参考人は、人間は誤りを犯すものだということもありますし、限定合理性というのもあって、後悔をするものだということなんですけれども、相田みつをさんは、つまずいたっていいじゃないか、人間だものという。何か、ナッジ理論で悩んでいるセイラー教授の、悩む必要はないんだというようなことが相田みつをさんのそういう言葉にあって、それに引かれたのかななんというふうに思ったんですけれども。  この資料の中で、行動経済学のプラットフォーム政策の在り方という中に、ナッジ理論も入ってきているわけなんですけれども、そこにヒントということがあります。このヒントというタイトルをつけられた趣旨というのをお聞かせいただけますでしょうか。
  64. 依田高典

    依田参考人 まず、行動経済学的な考え方というものの中において、人間というのは確かに、今、串田先生がおっしゃったように弱い存在でございます。したがって、全ての情報を入手し、それを正しく合理的に情報計算して選択を、AかBか選ぶことはできません。  そこで、二つ考え方がございます。これは、セイラー教授共同で本を書かれたハーバード大学のサンスティーン教授の考え方にも大きく依存していますが、リバタリアン・パターナリズムという考え方です。  リバタリアンというのは、難しい言葉ではありますが、責任を持って自分で判断できる合理的な人間、選択の自由、自己責任の考え方でございます。パターナリズムは、行動経済学的な考え方を極端に進め、人間は限定合理的、もっと言えば非合理的、弱き存在であるから決して自分で自己判断できない存在であると考え、誰か強い人が、しばしばそれは政府に置き換えられますが、あるべき姿、道しるべをしないといけないという温情主義でございます。  行動経済学のセイラー並びにサンスティーン教授の考え方はその中間を取ったリバタリアン・パターナリズムと呼ばれるものであって、一つは、なるべくあるべき方向性の情報を与え、特にその取るべき選択肢をあらかじめ取りやすいように与えるという考え方をして、でも最後最後の選択は各人に任せる、それがリバタリアン・パターナリズムの考え方であって、リバタリアンの考え方は行動経済学からは是認できません。しかし、パターナリズムがいいかどうか。政府だって失敗し得る。マーケット、市場でも失敗し得る。そういう中において、パターナリズムがよかったとは歴史上、私は思えません。そういう中において、リバタリアン・パターナリズムで選択しやすい環境を整えておいて、よりよい、後悔しない選択を取ってもらうということがよい。リバタリアン・パターナリズムの世界観におけるこの消費者政策の考え方でもございます。  以上です。
  65. 串田誠一

    ○串田委員 そこで、先ほど参考人が、巨大ITが自助努力をするので任せてほしいという発言もあったということなんですが、巨大ITは、メガデータを使ったり人工知能を使ったりして非常に合理性のあるものをつくり上げていく。それに対して対峙する消費者は、逆に、ナッジ理論等も含めまして、限定合理性があり、後悔をする相手方になる。そういう状況の、全く対等性がない中で、巨大ITの自助努力で果たして消費者保護にまで回ることになるだろうかというのは、今の中で帰結として、私は出てきてしまうのではないかと思うんですが、参考人としても同じような考え方はお持ちでしょうか。依田参考人河上参考人にもお聞かせいただきたいと思います。
  66. 依田高典

    依田参考人 串田先生、大変難しい質問をありがとうございます。  率直に申し上げますと、今まさに私個人もGAFAと対決する立場政府から任命いただいて、競争政策消費者政策、どちらにおいても責任ある立場に置かれている私としても日々悩むところであって、結論はまだありません。  なぜかと申し上げますと、やはりGAFA存在は無視できないものであって、消費者をだます立場も彼らかもしれないけれども、消費者を救う立場も彼らかもしれない。神様と悪魔の両方の両面性を兼ね備えた存在であって、彼らを一方的に規制をすることによって、その結果得られる世界が今よりもよいものになるかどうかの確信はまだ持てません。  もっと言いますと、ヨーロッパ、EU諸国並びにアメリカも、近年、大統領の交代もありましたが、GAFA諸国に対してより対決の姿勢を強めております。かつてのローマ帝国並びにモンゴル帝国以上の版図を持ち、影響力を持っている、歴史上、空前絶後の存在ともなりつつありますが、GAFAの中における対立、競争も激しいものであって、そういった対立構造をうまく、上手に使いながら、先生がおっしゃったような、あぶくのような消費者利益をどうやって守るか、いまだ世界中の法学者、経済学者、答えがない中で、流されながら考えているのが現状でございます。  今後も、先生方の御支援、御助力を賜りながら、皆で一緒に考えていきたいと思います。  以上です。
  67. 河上正二

    河上参考人 串田先生、どうもありがとうございます。  私も流されておりますが、ただ、リバタリアンの考え方とパターナリズムの考え方というものを双方持ち合わせないと、やはり安定した状況にはならないだろうと思います。  私、この問題を考えるときに、医療の契約のときのインフォームド・コンセントという話をよく考えるんですけれども、お医者さんの前に立ったときの患者さんというのは、選ぶ自由なんかほとんどないです。どういう症状で今どういう措置を取ったらベストなのかというようなことは、患者さんにとってみると、自分で考えて選びなさいと言っても、それは無理なんですね。  当時、医事法の世界でインフォームド・コンセントということが話題になったときに、有名な唄先生という医事法の大家の方がいらして、言葉を、インフォームド・コンセントというふうに言うんじゃなくて、インフォームド・チョイスにすべきだと。つまり、専門家として責任のある選択肢を出して、そして、そのどちらもが意味があるという前提の下で患者さんにどちらかをチョイスさせる、これがインフォームド・コンセントのこれからの在り方だというようなことをおっしゃったのを記憶しております。  消費者問題の場合も、実は、こういう問題の中で、間に立ってインフォームド・チョイスを消費者にさせるような専門家が間にかまないと駄目なんだろうという気がするわけです。  ですから、ITリテラシーについて持っていないおじいさんあるいは子供というのがいたときに、その問題について専門家が、何が好ましいチョイスになるのかということについて助言するような仕組みをそこに組んでいくということが必要なんじゃないかという気がします。  ですから、余りぐずぐずと申し上げてもあれですけれども、両方の間に立つような媒介者というのがどうしても必要になるということでございます。
  68. 串田誠一

    ○串田委員 事前にチョイスできるというのも大事だと思いますし、誤って選択をしたときにそれを修正できるということも大事なんだろうなというふうに思っておりまして、板倉参考人にお聞きをしたいんですが、先ほど、そういう修正をするという発言があったときにうなずかれていたのを私もちょっと見ておりました。  その中で、板倉参考人の記述の中には、トラブルが発生したとしても、金額からすると民事訴訟を提起するというのは現実的ではないということで、裁判外の紛争解決、ADRということなんですけれども、ここに、ADRを締結することが望ましいという記載がありました。  今後、このADRをある程度前提とするような法体系といいますか、そういったようなものということに関して、参考人としての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  69. 板倉陽一郎

    板倉参考人 御質問ありがとうございます。  政府のADR、ODRの検討でも、割とそれは専門家がついても大丈夫そうな類型、大丈夫というのは金額的にあり得る類型が選択されていたように思われますが、消費者被害というのは、少ないと数千円ぐらいから解決しないといけないわけで、弁護士が介在するというのも難しいわけであります。  他方で、この意見書は割とちゃんとしたODRを想定はするので、プラットフォーム自身が解決するというのは厳密にはなかなかADR、ODRの定義に入ってはこないんですが、他方で、彼らは、いろいろ苦情処理については、まだ自動応答ができるほど完璧ではないというようなことはおっしゃっていましたが、いろいろ彼らも、なるべく早く解決できるようなデータベースとかを備えてはおりますし、彼らにしても、やはり早く解決した方がいいわけであります。現実的なコストを考えても、彼らは非常に大きいコンタクトセンターというか、問合せセンターをつくっておりますが、数千円だと、そこの方が半日張りついちゃったら、もうそれだけで赤字なわけですね。  なので、みんなにとっても合理的なのであれば、まあ弁護士として、ある程度のもので解決したらいいよというのはなかなか言い難いわけではありますが、結構、何らかの案を示されると、それでいいかなと考える人も現実的にはかなりおりますので、ADR、ODRを通じて相当のものは解決されるというのが三方よしなんじゃないかというような前提で、このような意見書も作っております。  もちろん、最初は結構コストがかかって大変じゃないかというふうにみんな思うかもしれませんが、しかしながら、大体のものは大体で解決するということで、みんながある程度納得できるのであれば、前提とする法体系というか、取引の体系というのは受け入れられていくのかなというふうに思います。
  70. 串田誠一

    ○串田委員 増田参考人の中に、クレジットカードの問題があるんですけれども、ワールドカップのスポーツなどで、転売できないようなチケットを購入してしまって、それが公式に購入できるものと思っていたら、それが使えないというようなことが話題になりました。  ここで大きく問題となっているのは、プラットフォーマーにクレジット会社が介在してしまうものですから、プラットフォーマーとの間で話がついても、クレジットカードの引き落としがどんどん進んでいってしまうという問題があるわけでございまして、それがかなり社会的に問題となっていると思うんですけれども、今回、そのクレジット会社との関係がどういうような形でこの法案と絡んでくるのか、こないのか、この点について、最後増田参考人板倉参考人にお聞きをしたいと思います。
  71. 増田悦子

    増田参考人 デジタルプラットフォームの中にはクレジットカードの会社がしっかりと入って決済サービスを提供しておりますので、やはり非常に強い関係があると思います。  そこで、デジタルプラットフォームの方で、様々な苦情が入ったときに、クレジットカード会社の方にその連携をするとか、あるいは反対の情報を得るとか、そういうような関係は非常に重要なのではないかなというふうに思っております。
  72. 板倉陽一郎

    板倉参考人 ありがとうございます。  古典的な論点ではありますが、要するに、一括払いでマンスリークリアの場合はクレジットカードに対して抗弁権の接続が起こらないというような問題がありますので、伝統的に、日弁連は、それはそのような場合でも、抗弁ですね、要するに、売主自身に対する抗弁をクレジットカード会社にも言えるようにしてほしいというのは言っておりますし、さらに、いろいろな支払い方法が出てきて、すごい便利で、ポイントもいっぱいついて、個人的にはいいのかもしれませんが、やはり同じような問題を常に抱えておりますので、少額ですと、さっきのコストの問題もあるので、さっとデジタルプラットフォーム等の方がかぶって、返しちゃったりもするんですが、これはやはり健全ではありませんので、適切な抗弁権の接続は、それはそれで法定していくということを進めていただければと思います。
  73. 永岡桂子

    永岡委員長 時間でございますので、手短に。
  74. 串田誠一

    ○串田委員 参考になりました。どうもありがとうございました。
  75. 永岡桂子

    永岡委員長 次に、井上一徳君。
  76. 井上一徳

    ○井上(一)委員 国民民主党・無所属クラブの井上一徳です。  本日は、依田参考人、そして河上参考人板倉参考人増田参考人の皆様には、本当にお忙しい中、来ていただいて、貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございました。  最初に、まず、依田先生が本当に有識者検討会、苦労して取りまとめられたということをお伺いして、改めて本当に敬意を表したいというふうに思います。  その中で、記者会見の中で、デジタルプラットフォーマー社会責任が位置づけられたのは大きな一歩ということで、私も、まずは努力義務からスタートするということは理解できるんですが、ただ、一点、やはり被害に遭った消費者の方が出品業者を特定できるように、少なくとも、身元確認のための情報提供、これについては義務化してもよかったんではないかというふうに思っているんですが、この点については、それぞれ、依田参考人河上参考人板倉参考人増田参考人にちょっとそのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  77. 依田高典

    依田参考人 井上先生、どうもありがとうございます。  私としましても、これでよかったという思いが半分ある一方で、これでよかったのだろうかという思いも他方で残り、じくじたるところもございます。  そして、その検討会において、当然のことだと思います、彼らが悪いとは思いませんが、規制がかかるかもしれない状況において、プラットフォーマー事業者が、規制はかけてくれるな、共同規制の枠組みの中で自助努力、自発的な努力義務にとどめてほしいというような、近いことを述べるところもなかったとは言えません、あったと思います。そういう中において、本当にそのところで、努力義務だけで済むのかどうかということについて、様々、委員で考えてきたところでもございます。  恐らく、そうしたものに非常に慎重な意見を吐いたであろう巨大IT事業者プラットフォーマーは既に十分な努力を、自助努力を進めてきているところでありますので、彼らは、正直申し上げまして、義務がかかったところで、そのバーは楽々とクリアしてしまうであろう。  実際に、彼らがネガティブな消極的な態度を取ったとしても、彼らに実際、それが降りかかってくるとは私は思いません。むしろ、こういうところで取り逃してしまう、存在すら我々が知らないような人たちが本当の悪さを申し上げるところで、消極的な態度を取った事業者と、実際に、彼らが言い分の半分を認めて、まずはやれるところでやってみようといったときに取り逃してしまう層が異なっているということが、先ほど板倉委員も何度かそのことを申し上げておりましたが、一番私が、先ほど述べた、じくじたる部分であったと思っているところでございます。  したがいまして、何度も申し上げたように、この法で十割完全なものにはなりません。ただ、逆に言うと、どこが我々の手の届かないところであって、どういうところを本当に我々は次のターゲットにしなくてはいけないかというのを慎重に追跡する必要がございまして、そういう意識を持って、この法律を成立させ、施行させ、なお、その次の手をずっと、随時、不断の観察を続けながら考えていかないといけないかなと思っております。  今の心境は以上です。ありがとうございます。
  78. 河上正二

    河上参考人 井上先生の御指摘は、やはり依田さんが大分苦労されているのは、私も同じだなというふうに思いました。  私は三つぐらい問題のレベルが違う問題が含まれているような気がしていて、一つは、元々、こうした極悪層と、それからそうでない従順層とその中間層、本当にうまく切り分けるということができるのかという技術的な問題が一つあります。それから、もう一つは、CツーCがそこに入ってくるようなことがあったときに、一部のプライバシーの問題というのが一方で残っているという二つ目の問題があります。それから、三つ目の問題は、もう少し根本的なところなんですけれども、責任の根拠づけというのがどこに求められるだろうという話であります。  私、今日、どうしても申し上げたかったことが一つあって、システム責任論の話を途中までして終わりにしたんですが、御承知かと思いますが、大川小学校事件というのが津波の被害でありました。あのときに、県とか市の教育委員会、それから校長先生、職員、つまり教育に携わっている人々のシステムの中に、十分なマニュアル作りだとか日頃の訓練とか、そういうものがなかった。だから、そのときの校長先生の過失の問題よりも、むしろ、組織として全体にちゃんと対応ができていなかったということが大川小学校事件の根本の問題だった。これが最高裁まで行って認められたわけであります。  つまり、ある組織をつくって、そのシステムの中でちゃんと問題を処理していく、そういう仕組みをつくるというのが、実は、プラットフォーマーを中心とした、取引のネットというかシステムを構築して、それをある程度支配し、影響力を行使しているような人たちは自らの責任を分担すべき義務があるんだというところから出発しないと、なかなかそこの部分が、ほかの技術的な問題のために足かせになって問題が前に進まないというところがあるんじゃないかということを考えていたものでございます。  ちょっと長くなってしまいまして、失礼しました。
  79. 板倉陽一郎

    板倉参考人 御質問ありがとうございます。  検討会委員としては報告書は了としましたので、努力義務でもやむを得ないと。それは、来られていた大手プラットフォーマーはとにかくやるとおっしゃっているというのがありましたが、他方で、並行して日弁連検討していたODRの意見書では、紛争解決という観点からは、やはり確認してほしい、身元確認についてちゃんとできていない人とは契約を結ばないということについては、勧告命令罰則というものを入れてはどうかという意見を組織としては出しているところであります。  それから、現行の権限として、とにかく、日本に対して、日本消費者に対して継続して取引をするんだったら、登記義務があるわけです。登記してくれると、ほとんどのことは解決するんですね。民事訴訟も起こせる、行政処分も出せるということで、これは頑張ってやってほしいと思います。  法務局の管轄なので、登記のお世話をしている方々ですから、そんな簡単に中国の販売業者等とか巨大な米国のプラットフォームと戦えないというのは、多分そうだろうと思いますが、我々弁護士と同じように司法試験に受かって留学もしている検事が、法務省にはたくさん優秀な方がおられますから、是非出向していただいて、頑張って戦っていただきたいなと思っています。  それから、特商法の越境執行協力、外国の当局とのやり取りの条項が今度の特商法の改正では入る予定になっておりますので、それは是非使いこなしていただいて、米国のFTCや中国の消費者当局と、中国の消費者当局とどれぐらい協力できるのか分かりませんが、しかしながら、中国だって迷惑な業者は迷惑なはずですから、きちんと情報交換して、それはつかんでいただくというのもやってほしいなと、そういう三段階で考えています。  ありがとうございます。
  80. 増田悦子

    増田参考人 特商法で定められている事業者の所在確認、所在を常に明らかにしておいて連絡がつくようにということは最低限やるべきことですので、その所在が分からないということは、それ自体はあってはならないというふうに思います。  プラス、代表者の個人の住所などについては、やはり、請求の根拠などを確認した上で教えるかどうかというのはもう既にここに書かれていますので、そういうことであれば、それは義務になったとしても余り問題にならないのではないかというふうに思っております。
  81. 井上一徳

    ○井上(一)委員 時間もないので、まとめて二つ依田参考人にお伺いしたいんですけれども、これから、まさにこの法律制定した後の取組が非常に重要になってくるとすると、まず一つは、検討会報告書において言われているのは、消費者庁においては、必要な人材の確保その他、組織体制の充実を図るべきであるということで、組織をしっかりすべきだと。もう一つ、私は、官民協議会、これの役割が非常に重要になってくると思うんですが、この二点、消費者庁の組織論と官民協議会にかける期待、この二つについてお聞きしたいと思います。
  82. 依田高典

    依田参考人 ありがとうございます。  組織論にも関わる大変難しい問題でございますし、組織内部の問題に関して、私自身が、消費者庁が現在徳島県に設置した国際研究センターの非常勤ではありますがセンター長の立場ではありますが、内部のガバナンス、マネジメントにそれほど暁通しているわけではございませんので正確なことは述べられませんが、ただ、一つ言えることに関しては、専門人材の不足、それだけは確かだと思っております。  そして、それについては、消費者庁が発足して十年以上たちますが、リアル、オフラインからデジタルオンライン世界に移行はますます進んでいきまして、この消費者問題はますます増えていくであろうことは疑いを持ちません。  そういう中において、特にこの人工知能、デジタルというような社会において、より専門性、技術性を持った人材がこの急増していく消費者庁の管轄の中のトラブルにおいてより必要とされることも確かでございますので、そういう意味においては、制度の整備の体制に対する御支援というのは政府お願いしたいところでございます。  もう一つの質問を、大変恐縮ながら、教えてください。(井上(一)委員官民協議会」と呼ぶ)官民協議会、分かりました。  これもまだ解けない問題でございまして、先ほど述べたデジタルプラットフォーマー取引透明化法内閣官房並びに経済産業省、そしてこの消費者庁におけるデジタルプラットフォーム消費者保護法、簡略化しておりますが、両方とも、共同規制という形で、政府が一方的に事業者を縛るものではないやり方を取っております。これは二つ理由がございます。  一つは、まずは出発点として、事業者プラットフォーマー自助努力、彼らのイノベーションの力を信じ、彼らがやると言っている以上はきちんとやってもらって、それを毎年、監督、モニタリングをするという仕組みになっております。まずは、そこのところで、彼らの力と意欲を信じてみるところからいって、毎年毎年コミュニケーションを持っていく。  なぜかといいますと、一方的にお上がしもべを縛るやり方でうまくいっていないという一方の事実もありますので、この共同規制に、今、ヨーロッパ並びに日本が乗り出しているところでございます。  そして、この官民協議会を取ったもう一つの理由は、一方的な規制を強めて、お上が例えばプラットフォーマーや出店、出品者規制していくことが望ましくないという理由が一つございます。  それは何かというと、消費者認知度あるいはリテラシーの問題でございまして、我々がよかれと思った、先ほど述べたパターナリズム、どんどんとプラットフォーマーに対して北風政策を取ること自体が、ある意味において、消費者認知限界あるいは限定合理性をより強め、より消費者、市民、国民自身が無責任な選択をどんどんと増長させて、大変言葉は悪いのですが、よりばかになっていってしまう可能性もあるからです。  そういった意味において、この共同規制と、国民自らが責任あるような形で選択をできるような支援と教育をどう進めていくのかも今後の官民協議会の中の一つ責務になると考え、今はまだ、可能性を信じ、そこのオープンドアで考えております。しかし、うまくいくかどうか分かりませんので、毎年毎年、不断にそこはモニタリング、チェックをしていく必要がありまして、まさに、国会の諸先生方においても、ここは注視していただきたいというところでございます。  以上です。
  83. 井上一徳

    ○井上(一)委員 どうもありがとうございました。
  84. 永岡桂子

    永岡委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきましたこと、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る十三日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十二分散会