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2021-03-05 第204回国会 衆議院 財務金融委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和三年三月五日(金曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 越智 隆雄君    理事 井林 辰憲君 理事 うえの賢一郎君    理事 神田 憲次君 理事 鈴木 馨祐君    理事 藤丸  敏君 理事 末松 義規君    理事 日吉 雄太君 理事 太田 昌孝君       井野 俊郎君    井上 貴博君       今枝宗一郎君    加藤 鮎子君       勝俣 孝明君    門山 宏哲君       小泉 龍司君    田中 良生君       中山 展宏君    船橋 利実君       牧島かれん君    宮澤 博行君       八木 哲也君    山田 賢司君       海江田万里君    櫻井  周君       階   猛君    野田 佳彦君       長谷川嘉一君    古本伸一郎君       清水 忠史君    青山 雅幸君       前原 誠司君    田野瀬太道君     …………………………………    財務大臣    国務大臣    (金融担当)       麻生 太郎君    財務大臣        伊藤  渉君    財務大臣政務官      船橋 利実君    会計検査院事務総局第一局長            内野 正博君    政府参考人    (金融庁総合政策局長)  中島 淳一君    政府参考人    (金融庁監督局長)    栗田 照久君    政府参考人    (財務省大臣官房総括審議官)           新川 浩嗣君    参考人    (日本銀行総裁)     黒田 東彦君    参考人    (日本銀行理事)     吉岡 伸泰君    参考人    (日本銀行理事)     内田 眞一君    参考人    (日本銀行金融機構局長) 正木 一博君    財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君     ――――――――――――― 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   古川 禎久君     八木 哲也君 同日  辞任         補欠選任   八木 哲也君     古川 禎久君     ――――――――――――― 三月四日  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提出第一一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  会計検査院当局者出頭要求に関する件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)  金融に関する件(通貨及び金融調節に関する報告書)      ――――◇―――――
  2. 越智隆雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出関税定率法等の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。財務大臣麻生太郎君。     ―――――――――――――  関税定率法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 麻生太郎

    麻生国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における内外経済情勢等対応するため、関税率等について所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明を申し上げます。  第一に、令和三年三月末に適用期限が到来する暫定税率及び特恵関税制度等について、その適用期限延長等を行うことといたしております。  第二に、ポリ塩化ビニール製使い捨て手袋暫定税率を設定し、無税とする等、個別品目関税率の見直しを行うこととしております。  その他、関税率表品目分類に関する改正等所要規定の準備を行うこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  4. 越智隆雄

    越智委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  5. 越智隆雄

    越智委員長 次に、金融に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君理事吉岡伸泰君、理事内田眞一君、金融機構局長正木一博君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総合政策局長中島淳一君、監督局長栗田照久君、財務省大臣官房総括審議官新川浩嗣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 越智隆雄

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  7. 越智隆雄

    越智委員長 去る令和二年六月二十三日及び十二月十一日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました通貨及び金融調節に関する報告書につきまして、概要説明を求めます。日本銀行総裁黒田東彦君
  8. 黒田東彦

    黒田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融調節に関する報告書国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢日本銀行金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。  まず、最近の経済金融情勢について御説明いたします。  我が国経済は、新型コロナウイルス感染症影響から引き続き厳しい状態にありますが、基調としては持ち直しています。輸出生産は、海外経済の持ち直しなどを背景に増加を続けています。設備投資は、輸出生産増加により機械投資が持ち直す下で、全体としては下げ止まっています。一方、個人消費は、感染症影響により、飲食、宿泊等サービス消費において下押し圧力が強まっています。先行き我が国経済は、感染症影響が徐々に和らいでいく下で、外需の回復や緩和的な金融環境政府経済対策効果にも支えられて、改善基調をたどると見ています。もっとも、感染症への警戒感が続く中で、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられます。  物価面を見ると、消費者物価の前年比は、感染症や既往の原油価格下落影響などから、当面、マイナスで推移すると見られます。その後は、原油価格下落などの影響が剥落し、経済が改善する下で、消費者物価の前年比はプラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えています。  先行き経済物価見通しについては、下振れリスクが大きいと認識しています。ワクチン接種の開始は心強い動きですが、感染症の帰趨やそれが内外経済に与える影響不透明感は極めて強く、引き続き注意が必要です。また、成長期待は大きく低下せず、金融システム安定性が維持されると見ていますが、これらの点にも不確実性があります。さらに、より長期的な金融面リスクとしては、金融機関収益下押し長期化すると、金融仲介停滞方向に向かうおそれがあります。一方、利回り追求行動などに起因して、金融システム面脆弱性が高まる可能性もあり、引き続き動向を注視する必要があります。  次に、金融政策運営について御説明申し上げます。  日本銀行は、感染症への対応として、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、円貨及び外貨の潤沢かつ弾力的な供給、ETF等の積極的な買入れの三つの措置を講じています。こうした対応は、緩和的な資金調達環境を維持することなどを通じ、経済を支える効果を発揮しています。昨年末には、特別プログラムを本年九月末まで延長し、引き続き、資金繰りを支援していくことを決定しました。更なる延長も、必要に応じて検討します。今後も、感染症影響を注視し、必要があれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じていく方針です。  感染症影響は、経済物価への下押し圧力として、長期間継続すると予想されます。そうした下で、経済を支え、二%の物価安定の目標を実現する観点から、日本銀行では、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行うこととしました。その際、長短金利操作付量的・質的金融緩和枠組みは、現在まで適切に機能していますので、その変更は必要ないと考えています。この枠組みの下で、イールドカーブコントロール運営資産買入れなどの各種施策について点検します。点検の結果は、今月の金融政策決定会合を目途に公表します。日本銀行としては、点検の結果も踏まえ、引き続き、適切な金融政策運営に努めていく考えです。  ありがとうございました。
  9. 越智隆雄

    越智委員長 これにて概要説明は終わりました。     ―――――――――――――
  10. 越智隆雄

    越智委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。海江田万里君。
  11. 海江田万里

    海江田委員 おはようございます。立憲民主党、そして無所属の海江田万里でございます。  今日は黒田総裁に、お忙しいところ、とりわけ十八、十九日が、先ほどお話のありました政策点検の、恐らく十九日に公表することになろうかと思います。その直前国会ということでございますが、十八、十九に、特に十九日に公表するんだから余り国会では物を言えないなというような考えは、僕は、黒田総裁はお持ちじゃないと思いますけれども、うなずいておられるので。  もうこれは言うまでもありませんけれども、サプライズというのは、攻めてどんどんいくときはサプライズというのは大変効果がありますが、どちらかというと撤収といいますか、なかなか撤収という言葉はお使いにならないでしょうけれども、いろいろな意味政策を若干手直しをするというときは、やはりなるべく早い段階から小出しにしながら、市場の反応などを見ながら判断した方がいいと思いますので、今日はできるだけ、今の時点で分かっておることについてお話をいただきたいと思います。  そして、今ちょうど総裁からお話がございました、特に一番最後のところの、長短金利操作付量的・質的金融緩和枠組みは現在まで適切に機能していますのでその変更は必要ないと考えています、この枠組みの下でイールドカーブコントロール運営資産買入れなどの各種施策について点検しますと。  もちろん、私どもは、この全体的な枠組みが果たして適切に機能していたかどうかというところについては意見のあるところでありますが、ただ、今日はこのところでの余り議論はいたしませんが、イールドカーブコントロールあるいは資産買入れなどということで、イールドカーブコントロールということでいえば、やはりその発端というのは、ちょうど五年前、二月でございましたけれども、まずマイナス金利がスタートをしたということです。  総裁から、最初に、マイナス金利が五年たちましたので、ごく要点でいいですから、マイナス金利導入したことによって、これがよかった、いや、これはちょっとまずいんじゃないかということを、一言だけお話しいただきたいと思います。
  12. 黒田東彦

    黒田参考人 あの当時を思い出しますと、様々なことが起こっておりました。一つは、原油価格がずっと下落を続けておりまして、物価に対して下押し圧力がずっと続いておりました。他方で、後にチャイナ・ショックと言われたような中国経済に対する見方変更というのがあって、いろいろ難しい状況でしたので、従来の量的・質的金融緩和の量的な拡大に加えて、マイナス金利導入いたしました。  そのときの当面の市場対応というのは、なかなか今から見ても判断が難しいわけですけれども、これまでのことを振り返ってみますと、やはり、マイナス金利導入によってイールドカーブ全体を相当引き下げることができた、これによって、実質金利の引下げを通じて景気経済拡大需給ギャップ拡大に貢献したであろうというふうに考えております。
  13. 海江田万里

    海江田委員 導入の契機はそういうことだったと思います。中国金融危機もありましたし、それから、あのとき、参議院の財政金融委員会で、二月のマイナス金利直前に、マイナス金利をやるんじゃないですかと言ったとき、黒田総裁は、いや、そんなことは全く考えていないと。日銀総裁というのは、国会唯一うそ答弁うそと言ってはいけませんけれども、事実と違う答弁をしていいということに、ただ、これは公定歩合のときで、昔の時代ですけれども。  ただ、最近は、総裁が事実と違うことを言っているかどうかは分かりませんけれども、官僚がやたら事実と違うことを言っていますので、これは反省をしなければいけないと思っておりますが、まあ、それはどうでもいいんですが……(発言する者あり)どうでもいいというのは違いますよ、大変大事なことですが、今の話の中ではね。  ただ、マイナス金利導入して、これは先ほどお話しした、たしか二月の十六日かな、七か月後に、まさに九月に、このイールドカーブコントロール長短金利操作政策を入れたわけですよね。それは私はかなり早いな、早い段階だなと思いましたけれども、これは行き過ぎてやはり金利が下がっちゃいかぬというような思いもあったんだろうと思いますから、まずそこで第一弾をやった。それから、マイナス金利導入するときのマイナス金利適用の範囲、これも縮小を若干して、そして政策金利というところに持っていったということがありますけれども。  それからあと、もう一つ大事なところは、これは幾つかの流れがあるわけですけれども、長短金利操作というのは、短期金利はもちろんマイナスですよ、短期政策金利マイナスですよと。長期は、これは自由に決まりますけれども、それでも一応の目安を最終的にはゼロ%の前後〇・二%、今現在〇・二%という話になっているわけです。  今総裁お話のありましたイールドカーブコントロール運営ということでいいますと、私が今お話をした中でいう一番規模のちいちゃいというか一番大胆でないのは、〇・二%のところを、これは別に何か基準法律で決めているわけでもありませんし、大体ここが目安だなということは一般に行き渡っているんですが、この〇・二%を若干動かす、これは縮小するということはないでしょうから、〇・三にするのかというようなことが大方の見方なんですよ。  これは私だけではありませんで、今日の日経新聞にも、ちいちゃい記事ですけれども、QUICKの、市場調査すると、八割までの人が恐らく〇・二を〇・三にするんじゃないだろうかということを予想しているわけでありますが、それもあながち外れてはいないなということだと私は思いますけれども、総裁、いかがでしょうか。
  14. 黒田東彦

    黒田参考人 委員指摘のとおり、イールドカーブコントロール導入した後、イールドカーブ全体が低位に安定したことは事実なんですが、十年物国債金利をゼロ%程度というふうに申し上げて、それを操作目標にしていたわけですけれども、そのゼロ%程度というのが非常に狭い幅でしか動かなくなって、市場機能度が低下したんじゃないかという議論もありましたので、私は、おおむねプラスマイナスゼロ%程度の、ゼロ%の倍程度、だから委員指摘プラスマイナス〇・二%程度という幅を申し上げたわけであります。  もちろん、この幅についていろいろな議論があることは委員指摘のとおりですが、ただ、現時点で、これをどのようにするかというのはなかなか難しい判断だと思います。というのは、まだコロナ感染症影響経済下押し圧力が続いておりますので、国債市場機能度というものを確保する必要があると同時に、他方、当面イールドカーブ全体を低位に安定させるという必要も大きいわけでございます。  したがいまして、当然この変動幅について議論にはなると思いますけれども、現時点で、御指摘のようなプラスマイナス〇・三%程度拡大するというようなことを申し上げる段階には全然ない、まだまだ相当議論しないといけないという段階であります。
  15. 海江田万里

    海江田委員 相当議論しないといけないということですが、十八、十九というのは、もう来週、再来週ですか、迫っておりますから、そこまでには結論を出さなければいけないということだと思うんです。  それから、やはり、最近アメリカの金利かなり上がったりしております。長期金利が特に上がっていまして、昨日も株が下がって、今日、東京市場は、もう開いているけれども、また恐らく下がっているんじゃないだろうかということで、本当に株式市場というのは毎日上がったり下がったりするものですからどうこうということじゃありませんが、そういうような現実も受け入れていきませんと、やはり為替の方にも影響が出てきますので、そういうことも勘案して、間違いのないようなかじ取りをやっていただきたいということ。  それから、先ほどのお話にありました、資産買入れについても検討課題であるよ、点検しますとお述べになりましたね。資産買入れ、いろいろございます。一番大きいものだとやはり国債がありますが、今日は私、本当に時間も限られていますので、ETFのことでお尋ねをしたいと思います。  このETFも、大体買いの手口というのはもうはっきりしていて、買入れの基準というのは公表はしていませんけれども、買入れしましたよということはあれこれ発表しますから。そうすると、どういうところで買入れをしているかなということだと、これはもう最初から、株を上げるものではないよ、上げるための、リフティングのための操作じゃないよということはおっしゃっていたわけですが、下がったときのやはりある程度の下支えというのはやっておられたと思うわけですが、その下がる基準が、これまで、特に今年の二月に入って、株価も三十年来とかいう高値で、今日は恐らくまた下がっていると思いますけれども、そういうかなりの高い水準にあるということで、内々基準が変わってきたんじゃないだろうか。これはもう事実を見れば分かるわけですから。  これまでの下げ幅が、前場でもって、午前の取引でもって、大体、たしか前日と比べてマイナスの〇・五ぐらいで、午後、後場に入って買いを入れていたというのが、二月に入ると、〇・九幾つがあってもまだ買いに入らないで、大体一%ぐらいで買いに入っていたというような事実が明らかになっているわけであります。  やはりこの買入れの、そういう意味での内々基準というものを改める、そうすると、結果的に、今まで〇・五にしていたものを一%にしたら、当然買入れの量も減ってくることに、回数は少なくとも減りますね。回数が減るということは、結果的には買入れの量も減ってくる。ということになると、あの例の十二兆円というのは余り、全体の枠組みというのには余りこだわらずに柔軟にやっていくよ、そういうようなお考えでしょうか。どうでしょうか。
  16. 黒田東彦

    黒田参考人 このETF買入れ、御承知のとおり、大規模金融緩和策の一環として、株式市場リスクプレミアムに働きかけるということを通じて、市場の不安定な動きが企業や家計のコンフィデンスの悪化につながるのを防止するということを目的としておりまして、例えば、昨年の春など、コロナ感染症の関係で世界的に金融資本市場が不安定化した際には、十二兆円を上限として弾力的に買い入れるということで、かなりの量を買い入れまして、マーケットも安定したということがございます。そして、これも委員指摘のとおり、最近時点ではETFの買入れ額というのは非常に縮小しております。  そういう意味で、元々も非常に弾力的に買い入れる、マーケットが不安定化したりリスクプレミアムが上昇してしまったときにそれを抑えるようにやるということでありますので、これまでもそうでしたし、今後ともこういった弾力的な買入れということをしていく必要があるというふうに考えております。  具体的にどのようにめり張りをつけていくのかということは、これまた点検の中で相当議論になると思います。といいますのは、一方で、その効果コストというか、そういうものをよく見極めていく必要がございますので、弾力的に買い入れるという基本的なことが変わるとは思いませんけれども、その中で具体的にどのように弾力的にやっていくか、めり張りをつけていくかということは、委員指摘のとおり、十分議論になっていくというふうに思います。
  17. 海江田万里

    海江田委員 先ほどのマイナス金利のところの反省の中で、直接、総裁の口からはコメントがありませんでしたけれども、やはり、地域金融機関、あるいは地域だけじゃなくても、いわゆる金融機関の傷みというものがかなり深刻なものになっているということはあると思うんですね。  それと、資産の買入れのところで、国債の問題、今ETFETFが十二兆ですが、国債の言ってみると爆買いということで、やはり金融機関から、国債を売買して利ざやを稼ぐ、利ざやというよりはもうけを上げる、あるいは融資でもって利ざやを稼ぐ、そういう金融機関利益を上げる手段を奪ってしまったということがあるわけですよね。  それで結果的にどういうふうになったかというと、やはり国債もなかなか買えないね、それから、融資も思ったように伸びなかったわけですから、最近はちょっとコロナの問題がありますから、統計上正確に、伸びなかったじゃないですかということを言うのもなかなか難しいけれども、ただ、コロナの問題が起きる前のデータを見ても、やはり伸びていないんですよ。思ったほど伸びていないんですよね。  そうすると、金融機関は勢いどこで利益を稼ぐかというと、前のサブプライムローンじゃありませんけれども、ローンを担保にした証券、CLOですか、あそこにかなりお金が流れているということは事実でありますから、これはやはり本当に危ない。非常に価格自身も乱高下します。去年の三月ぐらいも、いっときかなり危ないときがありましたよね、たしか。  だから、ここに対する目くばせというのを、これは日銀だけじゃなく金融庁も一緒にやらなければいけないことだと思いますけれども、時折各金融機関に対して調査をしているようでありますが、ここはやはり、まさにイールドカーブコントロールと、それからあと資産買入れ一つの副作用として出てきた新たな問題、新たな問題というよりは、この五年ぐらいのスパンで取って新たな問題でありますので、ここは十分注意をしなければいけない、目くばせをしなければいけない。また、そういうことも金融機関に対して、あるいは市場全体に対して発信をしていかなければいけないと思うわけですが、いかがでしょうか。
  18. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、低金利環境というものが、特に地域金融機関の経営に様々な影響を与えたということはそのとおりであります。  もちろん、一方で、積極的な金融緩和の下で我が国経済が緩やかな景気拡大を続けてきたということで、ある程度前向きな資金需要の喚起、あるいは信用コスト減少などを通じて地域金融機関収益プラス影響を及ぼした面もありましたが、他方で、やはり低金利環境長期化、さらには地域人口減少などの構造的な要因もありまして、地域金融機関の基礎的な収益力低下傾向を続けてきたということは事実であります。  そうした中で、委員指摘のようなCLO等投資というものが、これはメガバンクとか農中その他、それから地域金融機関といろいろなんですけれども、地域金融機関も御承知のようにたくさんありまして、CLOに積極的に投資したところもありますし、ほとんど投資していないところもあって、なかなか一概には言えないんですけれども、御指摘のように、CLOというもののリスクというものはやはり十分考えていかなければならない、もちろん、金融庁や当方の検査でも、あるいは考査でも、邦銀の保有分CLOはほとんど信用格付の最も高いトリプルA格であるとか、さらに、裏づけ資産の精査とかストレステストを通じたリスク管理も一応実施はされていたわけですね。ですから、そうした下でリスクは抑制はされていたんですけれども、一時かなり急速に増えて懸念されたことも事実であります。  今の時点では、もう増加ペース一服感が見られておりまして、大きなリスクになっているとは言えませんけれども、御指摘のように、全体の金融環境の中で、さらに、構造的な要因も含めて、特に地域金融機関の経営にいろいろな影響が出ていることは十分承知しておりますので、その動向につきましては、金融庁ともよく連絡を取りながら、しっかりと見てまいりたいというふうに思っております。
  19. 海江田万里

    海江田委員 格付がちゃんとしたものを買っているよと言いますけれども、これは麻生金融大臣の率直なこの委員会での答弁ですが、格付なんて当てにならないよということをかなりおっしゃっておりましたし、サブプライムローンの反省を踏まえてと言うけれども、やはりあの格付がかなりいいかげんだったということがあって、しかも、時価が安くなれば格付を下げざるを得ないし、あの中に組んでおる証券の中には、コロナ経済的な落ち込みによってかなり立ち行かなくなったところもあるわけですから、これは本当に非常に注意をしないと。  あと、ゆうちょ銀行ですよね、実は。地域金融機関というよりも、むしろ私はゆうちょ銀行だと思っていますが、このゆうちょ銀行の問題なんかも含めて、やはりそこは日銀がしっかり目を光らすということを是非お願いしたいと思います。  それから、私は、これからやはりだんだんだんだん出口のことを、これから出口へ向かって歩くよというようなことは言わなくたっていいですけれども、一つ一つ、そういう方向へ向かっているんだということが分かるような施策を、慎重に、しかも着実に一歩ずつ取っていただきたいと思っております。私からの要望であります。  以上です。
  20. 越智隆雄

    越智委員長 次に、櫻井周君。
  21. 櫻井周

    ○櫻井委員 立憲民主党・無所属の櫻井周です。  本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。  それでは、早速、日本銀行黒田総裁に御質問させていただきます。  余り目先の金融政策についてお尋ねをしても、二週間後の決定会合でしっかり議論しますということのお答えのようでございますので、少し違った視点で質問をさせていただきます。  まず、今お配りしております資料でございますが、これは日経平均株価、それから不動産の価格の変動の状況を示したものです。  一九九〇年を出発にしておりまして、ちょうどバブル経済が一番頂点に達したときからでございますが、日経平均株価は三万八千円を超えていた頃からずっと下がって、また今、それ以来三十年ぶりに三万円に到達したというところでございます。それから不動産の価格についても、特に都心の商業地等でございますが、例えば、よくテレビなんかでも報道されます銀座五丁目の交差点のところの不動産価格、これがバブルの頃の値段よりも超えたとか、そういったこともニュースになっております。こうした状況を見ますと、バブルの水準に近づいてきておるわけでございます。  一方で、今、コロナ禍で、GDP、この一月―三月はマイナス成長になりそうな状況でございます。経済水準は全般的に厳しいはずでございます。日銀の短観を見ても、厳しい状況が続いております。  一方で、黒田総裁は、それでもワクチンで出口が見えてきたから、先に希望が見えてきたからということでちょっと株価も上がってきているのではないのか、そのような分析もされておりますが、ただ、その理屈でもって考えてみても、以前も私、申し上げましたが、株価について言えば、コロナ禍以前の水準をもうはるかに凌駕しているわけでございまして、それを正当化する理由にはならないんじゃないのか。コロナ禍の水準に近づいてきているというレベルであればそうかなというふうにも思うわけですが、もうそれをはるかに超えていますので。  そういったことからしますと、実体経済との乖離という観点ではバブルを感じざるを得ませんし、街角の意見でも、そうした声がよく報道もされております。  そこで、まずちょっと端的にお尋ねをいたしますが、今、この現状、バブルなんでしょうか。
  22. 黒田東彦

    黒田参考人 御案内のとおり、株価は、もちろん基本的には市場参加者の将来の経済や企業収益の見通しを反映するものでありまして、内外、特に日本だけでなくて欧米もそうですが、株価がこのところ大きく上昇したわけでございます。  そうした意味で、現在の株価は、恐らく、市場参加者の多くが今後も世界経済の持ち直しが続いて企業収益が回復していくと予想していることを反映しているのではないかと考えられます。  ちなみに、IMFも累次にわたって経済成長見通しを、二〇二一年、二二年については引き上げてきております。もちろん、ワクチン接種の広がりなどもこうした見方を後押ししているのかもしれません。  それから、御指摘の我が国の地価の動向を見ますと、近年上昇傾向を示していたわけですけれども、足下では、コロナ禍の下でちょっと反転する動きもこのように見られているというところであります。  いずれにいたしましても、引き続き、感染症の状況を含めて様々な不確実性がありますので、市場については、今のレベルが適切だとか正しいとか、低過ぎるとか高過ぎるとか、そういったことを中央銀行として言う立場にはございませんが、やはり不確実性がまだ経済に残っているということは十分認識しておりますので、今後とも、内外金融市場あるいは不動産市場の動向は注視してまいりたいというふうに思っております。
  23. 櫻井周

    ○櫻井委員 今、黒田総裁、もちろん日本銀行総裁としては、株価水準が適切だとかうんとかかんとかと言う立場にない、全くそのとおりではございますが、他方で、この後議論させていただきますが、もしこれがバブルであったならば、やはり早めに早めに対応していかなければいけないということも、これはまた三十年前の失敗の反省だったというふうに思います。  あともう一つ黒田総裁、重要なことをおっしゃっていまして、市場関係者、マーケットに参加している人たちが適正な水準だと思って皆さんそれぞれ売買をして、その結果としての今の株価水準だからというふうにおっしゃるわけですが、ただ、日本株の最大の保有者、これは日本銀行、二番手がGPIFと、政府系のところでいっぱい持っているわけですよね。二つ合わせて一五%以上も持っているような状況でございますから、果たして、こういう市場関係者、市場参加者がいる中で、本当に適切な株価形成ができているのかということをやはり我々は心配をしているわけでございます。  一方で、日本銀行物価安定目標二%ということを掲げておられます。ただ、物価安定目標消費者物価指数に基づいて判断をされているというふうに理解をしております。そうしますと、株価が上がるとか地価が上がるとかいうようなことで資産価格が上昇しても、これは直接的には関係ないというか、判断材料にならない、こういう理解でよろしいんでしょうか。  すなわち、不動産価格等が上がりますと、そうするとテナント料が上がって、そうするとコストが上がるからということで商品とかサービス価格に転嫁されるというような、そうした間接的な影響消費者物価が上がるということは、それは考慮を十分されるでしょうけれども、資産価格が上がった、そのことをもってしてこの二%云々という判断材料にはならない、こういう理解でよろしいんでしょうか。
  24. 黒田東彦

    黒田参考人 もとより、資産価格は、将来の経済見通し、あるいはその下での当該資産の将来のキャッシュフローの見通しなどによって形成されますし、一方、物価は、基本的には需給ギャップや予想物価上昇率によって中長期的には定まってくるということでありますので、資産価格と消費者物価の形成メカニズムはかなり異なっているということは確かであります。  その上で、日本銀行としては、消費者物価上昇率二%を目標金融政策運営しておりまして、政策運営に当たっては、経済物価の中心的な見通しに加えまして、様々なリスク点検するという枠組みを採用しております。その際には、当然のことながら、資産価格の動向を含めて、より長期的な視点からの金融面の不均衡のリスクについても毎回点検することにしております。  そういう意味では、資産価格と消費者物価がダイレクトに結びつくということはありませんけれども、他方で、金融政策資産価格に影響することも事実ですので、金融面リスクというものを十分勘案しながら金融政策運営していくということになろうと思います。
  25. 櫻井周

    ○櫻井委員 今の状況について、バブルなのかどうなのか。これはバブルですかと以前もお伺いしたところ、バブルかどうかというのは崩壊してみないと、破裂してみないと分からないという話もございました。ですが、破裂してしまってからではもうどうしようもなくて、経済も、そして国民生活も大変な苦しい思いをするわけでございます。ですので、やはりバブルというのは未然に防いでいかなければいけない、芽は早いうちに、小さいうちに摘んでおかなければいけない、このようにも考えるわけでございます。  そこで、ちょっと三十年前のこと、それから海外、特にアメリカ、ヨーロッパで十年前に起きた金融危機のことについてお尋ねをするんですが、バブルが崩壊すると、経済に対して大変な悪影響を与える。企業の債務や設備、人員が過剰になってしまう、それで資産価格も下落、それから不稼働資産の調整に伴うバランスシート調整ということもございます。債務返済がそれで困難になるという事業者がいますと、それが金融機関にも影響して不良債権問題というふうになって、そうしますと、今度は金融仲介機能が低下する。金融仲介機能が低下すると、更に企業の経営に悪影響を及ぼすというような悪循環ということになって、三十年前の日本のバブル経済は、崩壊した後、大変なことになったわけです。  ちょうど私の世代は、この委員会でも以前も申し上げましたが、就職氷河期とか言われた時代でございまして、私は運よく金融機関に就職はすることができたわけですが、そうでない同級生の友人もたくさんいまして、そういった人たちは、その後、職に恵まれない、その後も大変な人生を送るということで、ロスジェネというふうにも言われたりします。それが今の日本社会のある種の停滞の原因の一つになっているのではないのかというふうにも思います。  ですから、こうした不幸な世代を生まないというためにも、やはりこうしたバブル崩壊というようなことは避けなければいけないと私は考えるんですが、日本銀行としては、バブル崩壊が経済に与える影響をどのように分析、認識をされていますでしょうか。
  26. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、バブル崩壊というものが様々な影響を及ぼすことは事実でありまして、我が国の経験、あるいは欧米の経験などを見ますと、幾つかのメカニズムが指摘できると思います。  まず、非常に強気化した期待が修正されるということで、経済活動の低下がよく指摘されるわけです。いわゆる資産効果の逆回転、あるいは過剰投資に伴うストック調整といったものがこれに該当すると思います。  また、御指摘のとおり、資産価格の下落によって借り手、貸し手双方の資産内容が悪化して、金融仲介が円滑になされなくなるということで経済活動が低下するという、俗に言うバランスシート調整といったメカニズムが働くことも指摘されております。  確かに、我が国も、それから欧米もそうですが、資産バブル崩壊後、そういった経験をしたことも事実でありまして、その点では、御指摘のとおり、金融の行き過ぎ、強気の行き過ぎ、バブルというものは十分警戒して対応していかなければならないというふうに考えております。
  27. 櫻井周

    ○櫻井委員 そうなんです。今総裁がおっしゃられたとおり、やはり今、バブル、これを十分注意していかなければいけないということだと思います。  三十年前のバブル崩壊の後、その後十年ぐらいにわたっていろいろな経済学者が研究をして、「平成バブルの研究」とかいうような本も出て、上下巻でたくさんの経済学者がああだこうだと分析をしている。その議論の中の主な内容は、どうしてもっと早く手を打てなかったのか、どこで道を間違えたのか、あのときこうしておけばよかった、こうしておけばよかったということがるる書かれているわけでございます。  翻って、過去のことについては、バブルが破裂したからこれはバブルだった、だからああしておけばよかったということも分析できるわけですが、肝腎なのは、未来に向かってどうなのか、今現在どうなのかということでございます。  こうした平成バブルの反省、それから教訓、これを今まさに生かすべきではないかというふうに考えるんですが、この点について、日本銀行のお考えをお聞かせください。
  28. 黒田東彦

    黒田参考人 八〇年代後半のいわゆるバブルの発生につきましては、様々な原因、要因が複雑に絡んでいたと思いますけれども、日本銀行による金融緩和一つ要因になったのではないかというふうに認識をしております。  こうした経験を踏まえまして、日本銀行では、金融面の不均衡を含めて、経済物価金融が抱える潜在的なリスク十分注意を払いながら政策運営していくということが重要であるというふうに考えておりまして、こうした教訓も踏まえまして、先ほど申し上げたとおり、日本銀行では、金融政策運営に当たって、経済物価の中心的な見通しに加えて、様々なリスク点検しております。  そのほか、御承知のように、金融システムレポートなどでヒートマップというものを作って、金融の行き過ぎがないかどうかというものの一つの、あれで機械的に判断できるというわけではないんですけれども、指標として活用しております。  そうしたことも踏まえまして、今申し上げたように、様々なリスク、特に金融面リスクというものを十分点検しながら金融政策運営していかなければならないというふうに考えております。  なお、現状を申し上げますと、感染症影響によって経済物価への下押し圧力が続くということで、物価安定の目標の実現にはなお時間がかかるというふうに見込まれますので、また、その上、感染症影響を中心に下振れリスクが大きいという状況ですので、現状としては、現在の強力な金融緩和を続けていくことが適当と考えていますが、もとより、今後とも、金融面の不均衡のリスクを含めて、様々なリスクに十分な注意を払いながら政策運営をしてまいりたい、その点、日本銀行としても、バブル、バブル崩壊、その後の金融危機ということの反省に立って、金融面リスクについては十分な配慮をしていきたいというふうに考えております。
  29. 櫻井周

    ○櫻井委員 もう大分時間がなくなってまいりましたので、ちょっと最後、いろいろ、日本銀行財務リスクも含めて質問させていただこうと思ったんですが、まとめさせていただきます。  国債、今、先ほどの海江田議員からの質問の中にもありましたとおり、大量に保有している状況でございまして、バランスシートの左側、資産として国債を五百兆円以上持っている。右側に、それのバランスする負債側にこれまた五百兆円弱の当座預金があるということで、当座預金の金利をどうするかによって日本銀行財務は大きく変わってくる、収益が大きく変わってくるということになります。  ですから、これだけ資産そして負債が大きくなると、バランスシートが大きくなると、そうしたリスクを大きく抱えることになるのではないのか、特に、国債金利が非常に低い状況ですから、逆ざやのリスクというのもあるのではなかろうかというふうにも心配をいたします。  それから、ETF、J―REIT、こうしたハイリスク資産を大量に抱えている状況です。  ETFについては、今、時価でどうでしょうか、大体四十七、八兆円ぐらい、もうちょっとありますか、それぐらい。簿価では三十五、六兆ぐらいでしょうか。含み益が十兆円以上あるような状況なので、直ちに含み損に転じるということはなさそうにも思いますが、ただ、市場というのはどういうふうになるか分からない。一年前は、まさにもう含み損に入ってしまうんじゃないのか、その一歩手前じゃないのか、そういうところまで行ったかと思います。ですので、これはどうなるか分からない。  特に、株価について言えば、中長期的には、日本銀行に次ぐ第二の日本株の株主であるところのGPIF、これは団塊の世代が今年金生活にどんどん入っていっているわけですから、そうすると、その年金給付のためにこれから資産を取り崩していかなきゃいけない、積立金を取り崩していかなきゃいけないわけでございまして、それは株価の押し下げ要因になるはずでございます。  そうしたことを考えると、やはりこうしたハイリスク資産を持っていることも、大変、これは非常に危ない状況ではなかろうかというふうにも思うわけです。日本銀行の債務超過リスク、これをどのように分析されていますか。
  30. 黒田東彦

    黒田参考人 まず、国債の償還損というものにつきましては、評価方法として償却原価法を採用する下で発生を想定していないわけですが、利ざやの逆転という点につきましては、出口の局面において日本銀行当座預金に対する付利の引上げ等が行われますと、支払い金利が上昇することに伴って、利ざやの逆転が生ずる可能性があることは認識しております。  また、ETF、J―REITにつきましては、評価方法として原価法を採用した上で、期末時点で時価総額が帳簿価額の総額を下回る場合には、その差額に対して引当金を計上しなければならないことになっております。  ただ、日本銀行の損益は、こうした当座預金に対する支払い利息あるいは引当金計上といった費用がある一方で、国債の利息収入あるいはETFの分配金等の収益がありまして、様々な要因によって決まってくるわけであります。また、準備金の積立てなどによって、自己資本の充実にも努めております。このため、債務超過に陥る危険について、予断を持ってお答えすることは適当でないのではないかというふうに考えております。
  31. 櫻井周

    ○櫻井委員 時間になりましたので。  この後、円安に振れたときの対処方針として、普通は、為替がぎゅっと下がれば金利を上げるとかいうことで、為替防衛というようなことを、通貨の防衛ということをするのが一般的ではあるんですが、今の日本、金利を上げるということは、日本銀行財務体質を見ても、それは上げにくい。上げたら債務超過に陥るかも、大変な赤字になっちゃうかもしれない。また、日本国債も、金利を上げるとたちまち利払いに苦労してしまうというようなことで、なかなか、為替が円安の方に振れたときにブレーキを踏む手段がもはやなくなってしまっているんです。  今は上り坂だからいいかもしれないけれども、これが下り坂に転じたときに大変なことになるのではないのかという懸念も持っているわけですが、それは次の階議員が多分質問されますので、私の質問はこれで終わりにいたします。  ありがとうございました。     ―――――――――――――
  32. 越智隆雄

    越智委員長 この際、お諮りいたします。  本件調査のため、会計検査院事務総局第一局長内野正博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 越智隆雄

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  34. 越智隆雄

    越智委員長 次に、階猛君。
  35. 階猛

    ○階委員 立憲民主党の階猛です。  今日は、日銀総裁に、日銀の株価についてお尋ねしたいと思います。  ちなみに、日銀株式ではなくて出資証券を上場しているので、正確には株価ではなくて出資証券の時価ですけれども、報道等では株価と呼んでいますので、それに倣いたいと思っています。  それで、日銀の株価、昨日まで四日連続ストップ高というふうな報道も出ております。昨日の終わり値は五万四千円で、さっきちょっと見たところ、今日もそれぐらいで推移しているようです。  ただし、先週末、つまり二月末の時点では二万八千円で、実は、今年の一月の五日には、日銀株がバブル後最安値の二万四千六百十円をつけていたということだそうです。逆に、皆さん御承知のとおり、株式市場全体の推移を示す日経平均は、先日、バブル後最高値を記録していました。現状は二万九千円ぐらいで、二月末とほぼ同じ水準なんです。  このように、足下では、日銀株と日経平均、対照的な動きですけれども、長期的に見てみようということで、今日はこのようなグラフを用意しております。バブルのピークの一九九一年三月末から今年の二月末まで、ほぼ三十年間の両者の動きをグラフにしたものです。委員のお手元にも、一ページ目につけています。  見てお分かりのとおり、黒田総裁の就任前と就任後で両者の関係が全く変わっているということですね。つまり、黒田総裁前は両者の動きはほぼ連動していたわけですが、黒田総裁後に両者は乖離、すなわちデカップリングしていまして、日本の財政ではないですが、ワニの口のような状況になっています。この理由をどのように分析しているのか、黒田総裁、お答えください。
  36. 黒田東彦

    黒田参考人 出資証券の市場における取引価格について、具体的なコメントをするのは差し控えさせていただきたいと思いますが、その上で申し上げますと、日本銀行の出資証券は、一般の株式と異なりまして、配当率や残余財産分配について制限が設けられているなど、収益やバランスシートの状況を反映し難い特徴を有しておりまして、日経平均の動きと乖離しているというのは、そういった、基本的に出資証券というのが一般の株式と異なるということによるのではないかと思いますが、取引価格の具体的なコメントというのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  37. 階猛

    ○階委員 足下の動きだけ聞いているわけじゃないんですね。これは長期的に見て、黒田総裁が就任する前と後で明らかに傾向が変わっているじゃないですか。パラレルに動いていたのが、ワニの口になっています。K字形になっていますよ、これ。黒田のKじゃないですか。このK字形の動き、なぜこうなったのかというのを聞いているんです。  そして、加えて、昨日日銀からデータも出してもらって、二ページ目につけましたけれども、これは、異次元の金融緩和で、先ほど来お話があるとおり、いろいろな金融資産を買って、そして含み益もあるので、日銀の自己資本とか純資産、これは簿価ベースでも時価ベースでも大幅に増えています。  例えば、自己資本というのは、ちなみに、日銀の場合は自己資本と純資産というのは全く違う概念で、純資産に引当金などを加えると自己資本になるということで、大体純資産よりも自己資本が二倍ぐらいになっているわけですね。その両者、時価も反映させて見てみますと、一番下に二〇一三年三月末時点との比較、黒田総裁が就任直後の数字との比較を掲げていますけれども、二〇一三年三月末を一〇〇とすると、含み益を勘案した純資産は三二二%、そして時価を勘案した自己資本は二八六%ということで、三倍ぐらいに増えているわけですよ。にもかかわらず、株価の方は、この二月末で見ますと四三%、一〇〇が四三になっているんですね。  普通、株というものは、純資産が増えれば上がるわけですよ。純資産とも全く逆行しているわけですね。ちなみに、この間、株の増資とかはしていませんので、一株当たりの数字も、このとおり増加しているということであります。なぜこんなことが起きるんでしょうね。不思議でしようがないんですけれども。  私は、これは黒田総裁に対する市場の評価を示しているんだと思うんですね。客観的な数字はむしろこれだけいい方に上がっているのに、株価は大きく下がっている。足下は確かにストップ高になっていますけれども、何かこれも思惑があるような気がしていて、やはり、先週までの動き長期的に見ると妥当するんじゃないかと思っていますけれども。  この辺りについて、市場の評価はどう総裁を見ているというふうに捉えていますか。お答えください。
  38. 黒田東彦

    黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、日本銀行の出資証券というのは、一般の株式と異なりまして、配当率や残余財産分配について制限が設けられております。したがいまして、収益やバランスシートの状況を反映し難いという特徴を有しているということであるというふうに申し上げられると思います。  したがいまして、御指摘日本銀行の様々な財務指標の動きと出資証券の価格の動きが乖離しているということは、基本的には、配当率、残余財産分配について制限が設けられていて、普通の株式と全く異なっているということで、収益やバランスシートの状況を反映し難いということだというふうに考えております。
  39. 階猛

    ○階委員 やはり、黒田総裁日銀の経営、あるいは、日銀リスクをどんどん高めていて、将来、先ほども出ました債務超過のリスクがあるんじゃないかということを株価が織り込んでいるというふうにしか見えないわけですけれども。  これは、黒田総裁、普通、経営者であれば株価の動向を気にしますよ。私、実は、昔破綻した日本長期信用銀行の総合企画部というところで自社株の株価を見る担当をしていたんですね。経営者から毎日うちの株価はどうだって連絡が来るんですよ。特に、日経平均が上がっているのに下がっているときなんかは、経営者からは、どうしてこうなっているんだ、レポートを出せ、こういう話ですよ。  総裁の話を聞いていると、人ごとのようで、とてもこれは上場企業の経営者とは思えないんですね。普通、こういう、株価が市場に比べてアンダーパフォーム、これだけアンダーパフォームして、しかも、財務指標がよくなっているにもかかわらずどんどん株価が下がっているということであれば、これは経営責任ですよ、責任問題ですよ。  なぜそんな平気でいられるんですかね。私はその感覚が理解できない。普通は責任を感じると思うんですけれども、責任は感じないですか。
  40. 黒田東彦

    黒田参考人 先ほど来申し上げていますとおり、民間企業の株式とは全く違うわけです。  したがいまして、日本銀行としては、二%の物価安定の目標に向けて必要な金融緩和を続けていく、もちろんそうした下で、財務に対する影響にも十分配慮しながら、できる限りの金融緩和を続けて、物価安定の目標を達成する。物価安定というのが日本銀行の使命でありますので、そういった観点から金融政策運営を行ってきているわけであります。  したがいまして、委員指摘のことは全く当たらないというふうに考えております。
  41. 階猛

    ○階委員 責任を感じていないということでいいですか。端的にお答えください。責任を感じていないかどうか。
  42. 黒田東彦

    黒田参考人 出資証券の価格が日本銀行の責任であるというふうには考えておりません。
  43. 階猛

    ○階委員 その感覚が、世の中の経営者とはやはりずれているなというふうに思います。  そこで、先般もお尋ねしましたけれども、国債を大量に保有しているんですが、利息収入がどんどん減ってきているわけですね。  三ページ目、御覧になってください。  これは、平成二十四年度ですから、まさに黒田総裁が異次元の金融緩和を始められた当初からのこの棒グラフ、網かけになっている方が国債の保有残高ですね、これが四六五・五%増えている。そして一〇〇が五六五とかになっているわけですね。そしてもう一つ、低下しているのが利回りですね、折れ線グラフの方。〇・七利回りがあったのが、今や〇・二五七。これは令和元年度末の数字で、先日お聞きしたとおり、令和元年の九月期だと〇・二一というような数字でございました。  更にその後どうなっているかということでお尋ねしますけれども、本年一月、二月の国債買入れ額と、その平均額面利回り及び平均運用利回り、数字だけ端的にお答えください。
  44. 黒田東彦

    黒田参考人 本年一月、二月の長期国債の買入れ額は、それぞれ六・三兆円、七・六兆円でありました。  次に、平均額面利回り及び平均運用利回りにつきましては、各決算期における国債利息収入等を当該期間の国債の平均残高で割ることによって算出することとしておりますので、この一、二月分だけ切り出すということはそもそもできないわけであります。  ただ、その上で、一、二月に買い入れた長期国債について、償還までの期間を通じた本行収益への影響について、オーバーパーでの購入分も含めて粗い計算をいたしますと、全体としては若干のプラスになるのではないかというふうに認識しております。
  45. 階猛

    ○階委員 若干のプラスというのは、この〇・二一よりどの程度下がるのか。お答えください。
  46. 黒田東彦

    黒田参考人 さっき申し上げたような前提つきで、しかもラフな計算で、〇・二一の半分ぐらいだと思いますが、これは全く、今後の国債金利の動向等に左右されますので、一概に言うことはできないというふうに思います。
  47. 階猛

    ○階委員 つまり、足下では〇・一しか利ざやがないんですよ。これ、櫻井さんも言ったように、逆ざやリスクというのは非常に大きくなっている。  そこで、櫻井さんが最後に言ったことに関連してお聞きしますけれども、さっき最初に言ったとおり、株価で見る限り黒田総裁への信認は市場では高いとは言えないことに加えまして、海外との金利差が拡大することによって、国際的な投資マネーは金利の低い国から金利の高い国に流れる可能性があるわけです。こうした要因で自国通貨安が進んだ場合、通常の中央銀行は、政策金利を引き上げて、投資マネーの流出を食い止めて、通貨安を阻止しようとしますが、日銀の場合は、これほど利ざやが縮小していると、政策金利をこの局面で引き上げれば逆ざやとなるリスクもあるわけです。  そこで伺いますが、今後、仮に円売りが加速して円安が進行するような場合には、日銀は当座預金の金利を引き上げる用意はありますか。
  48. 黒田東彦

    黒田参考人 為替相場につきましては、世界経済あるいは国際金融資本市場における様々な動きの中で形成されるものでありますけれども、やや長い目で見ますと、為替相場は総じて安定的に推移しているというふうに考えております。  この背景の一つとして、日本銀行を含めて主要な中央銀行が二%という共通の物価上昇率を目指して政策運営を行っているということがあると思います。その上で、管理通貨制度の下では、通貨の信認というものは、適切な金融政策運営によって物価の安定を図ることを通じて確保されるものであるというふうに考えております。  日本銀行としては、今後の経済物価情勢、あるいは内外金融市場の動向を注意深く点検しつつ、財務の健全性にも留意しながら、引き続き適切な政策運営に努めていく方針でございます。
  49. 階猛

    ○階委員 財務の健全性を保ちつつ、適切な金融政策、つまり、通貨安を防ぐために政策金利を引き上げたりということはなかなか至難の業だと思うんですが、どちらを優先するんですか。お答えください。
  50. 黒田東彦

    黒田参考人 御案内のとおり、為替の動向というものは経済物価影響を与えるわけでございますが、為替相場自体に対する政策、これは日本でも米国でもそうですけれども、財務省が所管をしておりまして、私から今のような御質問にお答えすることはできませんが、先ほど来申し上げているとおり、十分日銀財務状況に配慮しつつ、二%の物価安定目標を達成すべく、適切な金融政策運営を行ってまいりたいというふうに思っております。
  51. 階猛

    ○階委員 適切な財務運営、あるいは金融政策を実行する意味でも、逆ざやのリスクに備えて債券取引損失引当金、これをちゃんと積み立てていくのが重要だと前にも御指摘しました。ところが、引き当て率が九五から五〇に令和元年度は下がっているわけですね。  この下がった原因について前回お尋ねしたところ、麻生大臣は、自分が働きかけて納付金を増やすためにそうしたわけではないということをきっぱり言われていました。だとすれば、日銀の責任で、リスクが高まる中で債券取引損失引当金の積立額を大幅に減らした。  この状況については、四ページ目の資料を御覧ください。  こういうふうに、八千百五十四億円を三千八百三十七億円に減らしているわけです。これはちょっと理解に苦しむところです。  そこで、会計検査院にも今日お越しいただいています。  会計検査院は、毎年、日銀財務内容をチェックしていますね。これは、積立率を九五に上げた年、平成三十年度の決算検査報告から抜粋した部分なんですが、一番下の五行ぐらいですね。日本銀行においては、債券取引損失引当金等々が将来の備えとして必要十分かについて不断の検証を行い、適切に債券取引損失引当金等を積み立て、また、特に必要があると認めるときは、当期剰余金の五%に相当する額を超える金額を法定準備金に積み立てるなど財務の健全性の確保に努めるとともに、日本銀行財務の状況について国民に分かりやすく説明していくことが重要である、こういう所見を述べているわけです。  ところで、会計検査院にお尋ねしますけれども、そうした観点からして、次の年度、九五から五〇に引き下げた、これは日銀財務の健全性にとってどういう影響を及ぼすと考えていますか。お答えください。
  52. 内野正博

    ○内野会計検査院当局者 お答えいたします。  会計検査院は、会計検査院法に基づき、日本銀行の会計経理について多角的な観点から検査を実施して、その結果を検査報告に掲記するなどしているところでございます……(階委員「ちょっと聞き取りづらい。もうちょっと大きく」と呼ぶ)
  53. 越智隆雄

    越智委員長 委員長から申し上げます。もう少しはっきりしゃべってください。
  54. 内野正博

    ○内野会計検査院当局者 はい。失礼しました。  日本銀行財務の状況につきましては、同行の資産及び負債の規模拡大している状況下においては、将来の市場金利株式市場、為替レート等の動向、日本銀行自身が決定する金融政策内容等によっては大きく変動する可能性もあるところでございます。  そして、御指摘の債券取引損失引当金については、平成三十年度決算検査報告において、日本銀行においては、債券取引損失引当金等及び法定準備金の積立額が将来の備えとして必要十分かについて不断の検証を行い、適切に債券取引損失引当金等を積み立てるなど、財務の健全性の確保に努めるとともに、日本銀行財務の状況について国民に分かりやすく説明していくことが重要である旨所見を述べているところでございます。  そして、令和元年度末における日本銀行資産及び負債の規模は前年度末から更に拡大するなどしているところであり、会計検査院といたしましては、日本銀行の会計経理について、国会での御議論等も踏まえながら、引き続き適切に検査を実施してまいりたいと考えてございます。
  55. 階猛

    ○階委員 ちょっと最後のところが重要なんだけれども、どう考えるか、財務の健全性にどういう影響を与えるかということを聞いているんです。お答えください。
  56. 越智隆雄

    越智委員長 申合せの時間が過ぎていますので、簡潔に、端的に答えてください。
  57. 内野正博

    ○内野会計検査院当局者 お答えいたします。  令和元年度においても、量的・質的金融緩和等が方向性としては変わらずに継続していることを踏まえまして、令和元年度決算検査報告においては、日本銀行財務の状況について要点を絞って掲記し、いわば定点観測的に引き続き注視していくとしたものでございます。  なお、令和元年度決算検査報告においては、このように要点を絞って掲記しているため、検査の所見は記述してございませんが、平成三十年度までの検査報告の中で記述している特定検査対象に係る検査状況における所見については、諸条件が変わらない限り、現時点においても妥当するものと考えてございます。
  58. 階猛

    ○階委員 時間が来たので終わりますけれども、これは大問題なんですね。  黒田総裁が就任してから毎年、会計検査院は日銀財務内容についてチェックをして、所見というものを出してきたんです。ところが、令和元年度から、今答弁にあったとおり、所見を出さなくなった。そして、チェックも甘くなっているんですよ。  そういう中で、引当金の積立率は下がっても誰もそれをとがめない、そういう体制になっている。この点については、また会計検査院にも厳しく問いただしていきたいと思います。  以上です。終わります。
  59. 越智隆雄

    越智委員長 次に、長谷川嘉一君。
  60. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 立憲民主党・無所属の長谷川嘉一でございます。  通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。  前回、二月十六日に質問した内容につながる質問というふうな形で組み立てさせていただきましたので、よろしくお願いをいたします。  最初に、我が国においてはなぜGDPが二十年以上もほとんど伸びなかったかということについては、資料二のところにまた再掲させていただいております。賃金、GDP、日本だけがドル換算ではマイナスというような形で、これは国家運営上の責任問題と言ってもいいのではないかと思いますので、与野党、政府それから日銀も含めてこれについてはしっかりとした分析をして、我々に説明をしていただく責任があろうかと思います。  この問題について、経団連の会長がこう述べているということも御紹介しました。日本の賃金水準が経済協力開発機構で相当下位になっている。まさにこのとおり。なぜ国民の賃金水準が低下したか、この国家運営上の責任は極めて重いものがあるはずであります。  また、少子高齢化の進捗に伴う生産労働人口が減少したという御答弁もいただきましたけれども、これだけでは説明がつかないばかりではなく、このまず労働生産性、人口減少に拍車をかけていると言ってもよいのではないかと思います。  この二十年以上にわたってGDPがほとんど伸びず、国民の賃金水準が大きく低下したまず原因、そして理由を端的にお答えください。
  61. 伊藤渉

    ○伊藤副大臣 お答えいたします。  まず、このGDPの国際比較、先生のお示しいただいたようなドルベースでありますけれども、当然、ドルベースでございますので、その時々の為替の動向等によって大きく変わる点は留意が必要だと考えております。  また、もちろん国際比較の指標としては一つの役割を果たしておりますけれども、一方で、国民の生活は円で行われておりますので、自国通貨建てのGDPを増やすということも大変重要だというふうにまず考えております。  その上で、日本経済はバブル崩壊以降、長引くデフレにより低迷が続きまして、他国と比べて経済成長率が低くとどまってまいりました。この間、投資、賃金を抑制をし、消費者も将来への不安などから消費を減らさざるを得ず、その結果、需要が低迷し、デフレが加速をするという悪循環から抜け出せずにいたというふうに理解をしております。また、少子高齢化が進む中で、生産年齢人口の減少という人口動態や生産性の伸びの鈍化といった要因もあったというふうに理解をしております。  こうした中で、二〇一二年十二月政権交代以降、金融政策、財政政策、成長戦略の取組を一体として進めていく中で、GDPは名目、実質共に過去最高水準となり、高水準の企業収益、雇用・所得環境の改善を背景に、経済の好循環は着実に進んできたと考えております。  目下、このコロナ禍においてまたここの仕切り直しが必要ですけれども、引き続き、成長戦略を加速をさせ、成長力を高めていくことは重要な課題であり、新型コロナへの対応に万全を尽くした上で、ポストコロナに向けて、経済社会や産業構造を見直し、民需主導の経済成長を実現していくことが必要であるというふうに考えております。
  62. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 御答弁いただいた内容は一部理解ができる部分でありますが、大本のこの分析が抜けているのかなと思います。  この三十年間のスパンで考えますと、三十年前は初めて消費税がかかった。また、その時期には、非正規雇用が認められた。その後には、生産現場の人たちに対しても非正規雇用を認めていくという大きな問題があって低賃金がここまで来て、毎回外国から研修生を受け入れているということもその一つかもしれませんが、こういう、お金がない、物が買えない、あるいは結婚できない、こういったことを政策としてし続けた結果、労働人口はますます、少子化に歯止めがかからない。国家存亡の大変な問題に対してやるべきことを逆にしてしまっているという側面があるのではないかと私は思います。  そういった中で、この中の消費税でありますけれども、これは、消費縮小圧力が消費増税によって大きく加わって、これによって我が国の経済の負の連鎖を起こしているように私は思えます。このことについてどのようにお考えになっているか、お聞かせください。
  63. 伊藤渉

    ○伊藤副大臣 お答えいたします。  消費に対して消費税の引上げの影響ということでございます。  GDPは、政権交代以降、名目、実質共に、先ほども申し上げたとおりですが、過去最高水準となるなど、経済の好循環は着実に進んできたと考えております。こうした中で、二度にわたって消費税率を引き上げるなど、経済成長と財政健全化の両立に努めてまいりました。  その上で、消費税と経済成長の関係について申し上げますと、消費税は社会保障給付という形で家計に還元をされており、負担の面だけに着目した議論は適切ではないと考えております。  また、例えば、消費税の増収分は保育の受皿拡充、幼児教育、保育の無償化など、全世代型社会保障の実現に活用されていること、また、消費税は働く世代など特定の層に負担が集中することなく経済活動に中立的であるといった特徴を有していることなどから、過去の消費税率引上げが長期にわたる低成長を招いたとまでは考えておりません。
  64. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 今のお答えはなかなか難しい理解になると思います。  その一つ最初、消費税を導入するとき、我々国民は、福祉目的税であると。一〇〇%福祉に使われるのかな、今まで福祉に使われた財源プラスこれから増加していくだろう超高齢化社会に足らない部分を消費税で賄えるのかなと思ったらば、税の代替になってしまって、そのうちの福祉に使われたのが二割程度であるという時期が長かったのではないですか。  こういった中で、国を支える中心になっている中間所得層、あの頃は一億総中流階級、老後の不安はなかった時代から、今は、その人たちの八割、七割が、この中間所得層が厳しくなってしまった。貯蓄がゼロ、結婚ができない、子供も産めない。負の連鎖を今断ち切らないといけないのではないか、そういう部分で、この消費税の見直しについてはやはり国家を挙げて取り組み、検討すべき時期に私は来ていると思います。このことを申し添えまして、時間の関係で次の質問に移らせていただきます。  財務省の一般会計税収の推移を見ますと、各税目の、個人所得課税、法人所得課税、消費課税、資産課税等に分類した上での、令和二年度の予算額での、これは国税です、国税の総収入に占める消費課税の割合は、四二・九%となっています。個人所得課税は二八・七%、法人課税は何と二三・四%、資産課税は五・〇%。  この国税の総収入における各課税項目の占める割合、バランスについてどのようにお考えになるか。御所見をお伺いいたします。
  65. 船橋利実

    船橋大臣政務官 お答えいたします。  平成以降の税体系全体の大きな流れを振り返らせていただきますと、平成元年には、税体系全体として税負担の公平につなげるため、中低所得者層を始めとする個人所得課税の負担を軽減し、消費に広くリスク負担を求め、資産に対する負担を適正化する税制改革の一環として消費税が導入をされてまいりました。  また、平成九年には、活力ある福祉社会の実現を目指す視点に立ちまして、個人所得課税の負担軽減と消費税率三%から五%への引上げが行われました。さらに、社会保障と税の一体改革の下、国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、消費税を社会保障の財源と位置づけをいたしまして、平成二十六年に税率を五%から八%へ引き上げ、令和元年に八%から一〇%へ引上げをさせていただいております。こうした経緯によりまして、消費税を始めとした各税目のバランスは現在のようになっているということでございます。  少子高齢化における国の財源調達におきましては、いわゆる基幹三税、所得税、法人税、消費税の中でも、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定している、働く世代など特定の層に負担が集中することなく経済活動に中立的であるなどの特徴を有する消費税の役割が一層重要となってきてございます。  いずれにいたしましても、所得税、法人税、消費税を適切に組み合わせながら必要な税収を確保していくことが重要と考えてございまして、今後の税制の在り方について、経済社会情勢の変化等を踏まえつつ検討する必要があると考えてございます。
  66. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 GDPに占める約六割弱が個人消費という部分である。国税に占める消費課税が、国税ですよ、四二・九%となっているということは、その人たちに極めて重い、逆進的な、税の基本と逆な課税がされていると言っても私は過言ではないと思います。そういった面で、非常にバランス的にこの徴税割合は悪いと言っても過言ではないと私個人としては思います。  そして、二月十六日に質問させていただいたときにこの指摘をさせていただきました。この厳しい経済状況の中で、一昨年十月に八%から一〇%に消費税を上げました。その十月、十一月、十二月は極めて厳しい状況になったのは御承知のとおりではないだろうか。  現在のような新型コロナパンデミックの影響を受けるまで消費税が伸びていた諸外国においても、二十か国以上で消費税減税を行うということになっているわけであります。我が国において消費税減税を行わない理由をお聞かせください。
  67. 船橋利実

    船橋大臣政務官 お答えいたします。  消費税につきましては、急速な高齢化等を背景に社会保障給付費が大きく増加をする中で、国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点におきまして、社会保障の財源として位置づけられております。  令和元年の消費税率の引上げは、全ての世代が安心できる全世代型社会保障制度へと大きく転換をしていくためにはどうしても必要なものでございまして、消費税率を引き下げるということは考えてございません。  政府といたしましては、令和三年度予算を早期に成立させていただきまして、着実に実行していくことによりまして、新型コロナ対策に万全を期してまいりますとともに、内需主導の経済成長を実現するなど引き続き経済財政運営に万全を期してまいりたいと考えてございます。
  68. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 残念でありますけれども、そういう御見解ということでお答えをいただきました。  今、この現在の状況で一番苦しんでいる層、一般の中間層、特にシングルマザーや非正規雇用の方やアルバイト、もう一つは学生さんがいらっしゃる。そういった統計資料や調査機関の資料も時々上がっていると思います。  そういった資料を基に、NHK、昨日ですね、朝の番組で、専門学校生の取材がされておりました、十九歳。生きることを考えたらば、もう食費を切り崩しているのは当然。そうした中で、今は生理用のナプキンも買わずトイレットペーパーで過ごしていると。テレビの取材でやっていましたね。あれは一断面ではないですよ。あれは一つの特徴的な現象として、多くの学生さんや一生懸命将来に向けて頑張っている人たちが苦しんでいる、学校を辞めざるを得ないかもしれない。そこに今支援をして投資をしないでいつやるんですか。  消費税を仮に時限つきで一〇%を軽減する、税収は三十兆円減るかもしれないけれども、三十兆円はすべからくそういった人たちに行き渡る。こういう発想になぜなれないのかなと極めて残念な思いがします。  そういう弱者のために我々は政治をしているのではないですか。国家の運営、外交、もちろんそうでありますけれども、そういった面にも目を向けてほしいんです。改めて御要望いたします。  もう一つの断面としては、一生懸命事業をやった方々、例えば食堂。この間、しばらく前にあったのは、歌舞伎座の周辺で代々ののれんを誇る仕出屋さん、もう店をやめました。この間では、浅草の百五十年の川魚料理店、これがのれんを下ろします。いろいろな文学作品にも出てきているお店です。真面目にこつこつこつこつやってきたところですよ。では、国会内部はどうですか。国会内でもそういった現象はあるんじゃないですか。国会周辺ですばらしいオムレツを食べさせてくれる方、六十年ののれんをあそこで下ろすんです。  身近なところまでそういった現象は来ている、そういう感覚を我々国会議員は、政府は持たなければいけないのではないですか。もう一度、この辺についての御感想で結構です。お聞かせください。
  69. 船橋利実

    船橋大臣政務官 政府といたしましては、新型コロナ影響によりまして生活に困窮をされておられる方々につきましては、効果的な支援が図られるよう、雇用、収入、住まいの確保など様々な課題に対応し、きめ細かな施策を講じさせていただいているところでございます。
  70. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 御無理な御感想を求めてしまいましたかもしれませんが、そういう共通した気持ちで我々は政治をやっているという認識だと受け止めさせていただきます。  また、御周知のとおり、新型コロナパンデミックの経済に対する影響は、緊急事態宣言により自粛を余儀なくされている飲食業、観光業、旅館業にとどまらず、地方の、今言ったようなお店も含めてでありますけれども、主要な産業である農業や水産業、林業などにも広がっているという御認識はお持ちだとは思いますけれども、特定の産業にとどまらない支援策として消費税減税は極めて有効であると思います。再度この辺を申し添えさせていただきますが、期限付でもこの辺についてはお考えなかったということで御答弁いただきましたので、これについては私の所見として、次の質問に移らせていただきます。  三番目、二〇二〇年度の第三次補正後の国債依存度、これが六四・一%となり、過去最高となりました。発行額は百十二兆五千五百三十九億円で、特例公債は八十九兆九千五百七十九億円でした。一方で、二〇二一年一月に、経済局国際経済課の主要経済指標で見ますと、消費者物価上昇率が、十月、昨年ですね、マイナス〇・四%、十一月マイナス一%、十二月マイナス一・二%、消費税後の部分です。新型コロナパンデミックにおける死亡者数が我が国よりも非常に多いヨーロッパ圏の同じ十、十一月、十二月のマイナスと比較しても非常に低い状況にあります。長期金利も同様に上がってはおりません。  このことから、国債発行額は、物価指数の消費者物価上昇率長期金利には直接的には関係ないと考えますが、御所見をお伺いいたします。
  71. 内田眞一

    内田参考人 お答え申し上げます。  財政運営につきましては、政府国会において決定、実施していくものということですので、具体的にコメントすることは適当でないと思いますので差し控えさせていただきますが、その上で申しますと、まず、国債金利につきましては、国債市場において円滑かつ安定的に金利形成がされている、この基礎には、財政について市場の信認が維持されているということがあるというふうに思っております。  また、日本銀行によります大規模金融緩和国債買入れを含めまして、これが長期金利低位で安定していることの背景の一つとしてあるということも事実でございますが、この金融緩和は、先ほど総裁から御説明いたしましたとおり、二%の物価安定目標を実現する観点から行っているものでございます。そういう意味で、今後の金融政策物価安定の目標との関係で決まってくるということでございまして、政府の財政資金の調達を支援するということのためにやっているわけではないということでございます。  そういう意味で、今の政策が二%との関係で続くということでございまして、これが永遠に続くということではないというふうに御理解いただければと思います。
  72. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 お答えいただいたかどうか聞き漏らしたと思いますが、国債発行額は消費者物価上昇や長期金利には直接的には関係ないんですね。あるんですか。
  73. 内田眞一

    内田参考人 お答え申し上げます。  先ほど先生御指摘ありましたとおり、今、日本の物価は若干のマイナスというふうになっております。この点は、もちろん、感染症の下での経済の状況、それから原油価格を含めた一時的な要因によって起きているものということだろうと思います。  もちろん、国債、財政が極めて大きく悪化していく中で、ハイパーインフレーションその他のことが起こるということは、これはあるわけでございます、可能性としてはもちろんあるわけでございますけれども、そういう形で、物価とは関係するということでございます。  もちろん、物価を決める基本的な要因は、これも先ほど総裁から申し上げましたけれども、需給ギャップとそれから予想物価上昇率で決まってくるということだろうと思っております。
  74. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 麻生大臣にもこの辺はお聞きして、市場と対話をしながらというふうなお答えをいただきました。まさにそれは大所高所から、そういったデリケートな部分ではありますけれども。  それでは、これはお聞きしませんけれども、今現在、日銀総裁でもいいんですけれども、ハイパーインフレが起こるリスクはどの程度、どのレベルあるんでしょうか。もしお答えいただければ、お願いします。
  75. 内田眞一

    内田参考人 お答え申し上げます。  これは何%ということで申し上げることはできませんけれども、何といいますか、我々、よくノンリニアという言葉を使いますけれども、どこかで急に起こる現象として捉えられるものでございますので、今の段階で何%という形で申し上げることはできない性質の事象だというふうに御理解いただければと思います。
  76. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 確率、パーセンテージでお答えいただかなくても、リスクが高いか低いか、そんなにないかということでよかったんですが、この辺についてはもうこれで結構です。  日吉さんの御質問でも何回か出ておりましたけれども、関連しますが、我が国のような変動相場制の国で、自国通貨建てで国債を出している。国の潜在的供給能力を超えない限り、国債を発行しても、長期金利の高騰も、ましてやハイパーインフレなどは起こってこなかったではないか、異次元の超金利政策導入しても。異次元であっても起きてこないんですよ。そういうことが今証明されたのではないですか。このことを申し上げたい。  今現在、我が国がどういった状況になっているか。このコロナ禍以外にも、防災があるではないですか。それから今回の新型コロナウイルスのような防疫、それから科学研究、将来への投資、そして社会保障の問題、また外交、安全保障上の問題等、大きな支出、これについて、国債を発行してでも行うべきではないかと私は思います。  予算を国会議論して決定していくことは当然であります。現在とそして未来のために、国民にとって必要な投資をするのが機能的財政政策である、これが政治の基本の一つではないかと思います。これについての御所見をお伺いいたします。
  77. 伊藤渉

    ○伊藤副大臣 お答えいたします。  政府としては、今、日銀の方から答弁のあったとおり、この金融緩和という政策を前提に国債を増発し、財政規律を緩めるようなことはあってはならないとまず考えております。  足下、令和二年度においては、国民の雇用と生活を守るため、新型コロナ対応として国債を大量に発行することとなりました。現在のところ、市場において低金利かつ安定的に消化をされておりますが、先ほどこれも日銀の方から答弁があったとおり、ノンリニアという言葉に象徴されるように、市場がこれまで大丈夫だからといって、明日も大丈夫という保証は全くありません。  政府としては、よって、財政運営に対する市場の信認が将来にわたって失われないようにすることが重要であり、社会保障の持続可能性を高めるための改革など、経済再生と財政健全化の両立に取り組んでいく必要があると考えております。
  78. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 国家百年の計は教育だと思いますけれども、あとは、かつて昭和三十九年に東京オリンピックが行われ、また今年もそういった時代を経験しておりますが、あのとき何をやったか。  たしか、世界銀行から大幅な、大口の借入れを起こして新幹線を敷いたのはあの時代ではなかったですか。首都高速道路、あれも、日本では国債発行できなかったんですかね、世界銀行から借りてずっと返し続けてきたわけで、あれで経済成長がぐっと行われた、全国各地に経済波及効果が広がったということではないんですか。  そのことがここ三十年間行われてこなかった結果、GDPが日本だけがマイナス、ドル建てですよ、ということになった結果ではないかというふうに御指摘をして、次の質問に移らせていただきます。  前回の質問の機会に、アメリカのバイデン政権におけるイエレン財務長官の、インフレを恐れて新型コロナパンデミックによる縮小経済から力強い脱却をしない方がダメージが大きいということはお伝えしました。  アメリカのバイデン政権では、国家安全保障問題担当大統領補佐官という、安全保障の部分で、国防省勤務経験のあるジェイク・サリバン氏が、以前に外交誌フォーリン・ポリシーで、中国などの全体主義国家の経済的、軍事的伸長などに対抗するためにも、アメリカは新しい経済哲学が必要であると述べている、この方を補佐官に任用している、この旨を論じているんです。  先日、アメリカの下院においても、この間申し上げましたけれども、二百兆円規模の追加的財政政策が可決をされました、御承知のとおり。我が国におきましても、財政均衡主義を乗り越えなければいけないタイミングが、アメリカのみならず日本にも来ているのではないかと思いますが、御所見をお伺いいたします。
  79. 伊藤渉

    ○伊藤副大臣 御答弁いたします。  米国を含め、世界の国々で新型コロナへの対応を行っていることは承知をしております。一方で、各国で感染状況等に違いがあることにまず留意が必要だと考えております。  その上で、日本では、財政が厳しい状況にある中でも、他の先進国と比べても十分な規模の新型コロナ対応を行い、必要な財政出動を行ってきていると考えております。  結果として財政状況が大幅に悪化しておりますけれども、財政運営に対する市場の信認が失われないように、これは繰り返しになりますが、財政健全化に対する真摯な姿勢を保ち、財政の持続性を確保していかなければならないと一方で考えております。  また、日本の財政は、新型コロナ以前から少子高齢化という構造的な課題を抱えておりまして、そして間もなく団塊の世代が後期高齢者に移行を始めます。次の世代に未来をつないでいくためにも、二〇二五年のプライマリーバランスの黒字化目標の達成に向けて、社会保障の持続可能性を高める改革など、歳出歳入両面の改革を継続をしていきたいと考えております。
  80. 長谷川嘉一

    ○長谷川委員 時間が少なくなってまいりましたので。  三月二日に、組替え動議を野党の他党と共同で提出をさせていただきました。極めて重要な論点がここに示されております。超党派でコロナパンデミックに立ち向かおうという中でこれが否決されたということは極めて残念であるということを、所見は述べさせていただきます。これはもう一度しっかりと検討していただきたい。この中にも、歳入増として特例公債を発行してでもこれをやるべきだということで、三十六兆円の歳出増を求めている内容であります。是非御検討いただきたいと思っております。  そして、現在の話に戻りますけれども、世界の民主主義、資本主義の国々は、経済政策の大きな転換期にあるように思います。この二十年以上にもわたり我が国の成長を止め、国民の所得を減少させ続けた現実から目をそらさないで、現在、未来に向けての投資のできる財政運営を心から願って、私の質問を終わらせていただきます。
  81. 越智隆雄

    越智委員長 次に、山田賢司君。
  82. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 私は、自由民主党の山田賢司でございます。  本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。  本日は、黒田総裁にもお越しをいただきまして、日本銀行通貨及び金融調節に関する報告書の御説明をいただきました。これらを踏まえまして、金融一般について御質問させていただきたいと思います。  まず、物価について。  これは、ほかの各委員からも様々な御質問があろうかと思いますが、世の中の疑問は、なぜ物価は上がらないのかということでございます。当然、足下は、今日の御報告にもありましたように、感染症、あるいは原油価格下落影響などからといったこともございます。ただ、感染症が始まる前から物価は上がっていなかった。さらに、原油価格影響というふうに言うんですけれども、消費者物価指数を見ても、総合はもちろんなんですが、除く生鮮食品、エネルギーなどを除いても、やはり物価は上がってこなかったということでございます。  景気コロナ影響で大変厳しい状況にはあるんですけれども、株価は上昇をしております。実は、世の中、金余りの状況が発生しているのではないかというふうにも考えます。他方、そういった中でも物価が上昇しないのは、これはなぜなんだろうというふうに考えます。  日銀におかれましては、質的・量的緩和ということで二%の物価上昇を目標とされてこられましたが、いまだに実現には至っておりません。これは何を間違えたのか。そもそも、金融政策ではこういった物価目標というのは実現できないのではないかという疑問がございます。  もちろん、物価が高騰しているときに、高騰を抑えるという効果はあるんでしょうけれども、需要がなく低迷している、こういった状況の中でお金を幾ら出しても物価は上がらないのではないか。例えて言うならば、車が走っていないのにガソリンだけをたくさん供給しても、車はスピードもアップしない、こういったふうにも思うんですが、ここら辺について黒田総裁の御所見をお聞かせください。
  83. 黒田東彦

    黒田参考人 まず、物価の安定を実現するということは、日本銀行の使命でありまして、日本銀行法にも明確に定められております。日本銀行としては、今後とも、物価安定の目標の実現を目指して最大限の取組を行っていく方針でございます。  そうした中で、二%の物価安定の目標が達成されていないという背景には様々な要因があると思いますが、まず、我が国においては、予想物価上昇率の形成におきまして、過去の物価動向の実績に引きずられる傾向がある、経済学的に、いわゆる適合的な期待形成というもののウェートが高いということがありまして、その下で、例えば、二〇一四年以降の原油価格の大幅な下落、これは、百ドル・バレル以上であったものなんですが、一時三十ドルを割るぐらいまで下がったわけですが、そういったことがありますと、足下の物価が下がる、あるいは上昇率が下がる、そうしますと、予想物価上昇率も、それまで一時は一・五%ぐらいまで上昇していたんですけれども、それがまたどんどん落ち込んでいくというようなことがありまして、また、足下では、感染症影響物価下押し圧力が加わっているという状況だと思います。  さらに、より根本的な要因といたしましては、やはり長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金、物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が家計あるいは企業に根強く残っているということで、企業が慎重な賃金、価格設定スタンスを明確には転換していないということが指摘できると思います。  また、弾力的な労働供給とか企業の労働生産性向上の余地の大きさなども、物価上昇に時間がかかる要因となっているというふうに思っております。  もっとも、日本銀行が大幅な金融緩和を続ける下で、経済は大きく改善して、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況になったわけであります。確かに、足下では物価マイナスで推移しておりますけれども、先行き日本銀行が粘り強く金融緩和を続けて、経済が回復、改善して、いわゆる需給ギャッププラスの状況が続くという下で、時間はかかると思いますが、物価が二%の目標に向けて徐々に上昇率を高めていくのではないかというふうに考えております。
  84. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 ありがとうございます。  物価が上がっていない分析というのはそのとおりなんですけれども、日本銀行金融政策によって、物価の安定というのは、物価を高騰することは抑えられても、上がらない物価を引き上げるということは、幾らお金を出してもこれは効果がないのではないかという疑問があるので、もう一度、済みません、その点についてお聞かせください。
  85. 黒田東彦

    黒田参考人 この点は、特に米国において長く議論された論点でありまして、経済学者も参加して相当議論して、確かに、インフレになってきた、物価上昇率が高くなってきたというときに、金利を引き上げる、あるいは量的にぎゅっと締めるということによって相当物価上昇率が収まるということは経験的に分かっているわけですけれども、他方で、金融を緩和しましても、先ほど申し上げたように、それによってすぐに物価が上がるということではなくて、まず、経済が改善して需給ギャッププラスになり、その需給ギャッププラスが続いて、そして賃金や物価が上がり始める、そういう状況を見て予想物価上昇率も上がっていく、その両者、需給ギャッププラスが続くということと予想物価上昇率が上がっていくという両方を併せて物価上昇率が上がっていくということで、確かに、米国の例を見ましても、金融緩和をしたからといってすぐに物価上昇率が二%に達するということはないわけでして、米国でも、二〇〇八年のリーマン・ショック以来、基本的には二%に達していないわけです。  ただ、その中でも、金融緩和によって経済が改善し、米国の場合は、予想物価上昇率が比較的二%にアンカーされていたということもあって、かなりいい線まで来ていたわけですね。そこで、一時、量的緩和を少し縮めたりしたんですけれども、また、コロナの中でそういうことはやめているということであります。  我が国の場合は、先ほど申し上げたように、予想物価上昇率が現実の物価上昇率かなり引きずられるという強い傾向があるために、より時間がかかってしまうということだと思いますが、基本的なメカニズムは、需給ギャッププラスにしてそれを長く続ける、そして、実際の物価上昇率を少しずつ引き上げていく、そして予想物価上昇率もそれに合わせて上がっていくというメカニズム自体は、基本的には機能していると思います。  その意味で、時間がかかっているということは誠に申し訳ないと思っておりますが、今後も粘り強く金融緩和を続けて、物価安定目標を達成していかなければならないというふうに思っております。
  86. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 ありがとうございます。これはもう政府政策と相まって金融面でも支えていただくということで、引き続き金融緩和の方をお願いをしたいと思っております。  続きまして、財政収支と金利の関係で、先ほどの委員からも質問がありましたように、財政収支がこれだけ悪化しているのに、ハイパーインフレということはとんでもないですけれども、金利そのものが上がっていない。国債の利回り、十年物でも〇・一三%ぐらいで推移しているかと思います。  これは、なぜ上がらないのかと聞いたら、多分、金利が上がらないような金融政策を取っているからだというお答えになるんだろうと思うんですけれども、財政の信認というものに対する御認識をちょっとお伺いしたいなと思っておりまして、財政破綻の懸念があったりすると、やはりこれは、幾ら金融政策をやろうとも金利はどんどん上がっていくんだろうと思いますが、当面、日本の財政というのは信認されている。これは財政収支の話ではなくて、国家の存続、将来性、あるいは日本経済というのがしっかりと続いていくという、これが信認されているのではないかというふうに考えますが、黒田総裁の御所見をお聞かせください。
  87. 黒田東彦

    黒田参考人 財政運営そのものはもちろん政府国会の責任で行われるので、具体的にコメントするということは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げると、やはり中長期的な財政健全化について、市場の信認をしっかりと確保するということはやはり重要ではないか、現在、国債市場で円滑かつ安定的に金利形成が行われているということは、財政について市場の信認が維持されているということが背景にあると思いますし、そういう下でこそ、日本銀行が量的・質的金融緩和イールドカーブコントロール金利を下げるということも可能になっているわけでして、財政について市場の信認が失われてしまうと、どうしても金利が高騰してしまうということになって、日本銀行金利政策効果も低下してしまうというおそれがありますので。  もちろん、現在、アメリカでも実は財政赤字が増えて、政府債務残高がGDPの一〇〇%を超えたということで、かなり経済学者の間で警戒論が出ているわけですけれども、我が国の場合は二五〇%近くなって、しかし、金利も安定しているし、国債も順調に市場消化されているということはそのとおりでありまして、その背景には、私は、基本的に市場の信認が確保されているという下で、我が国の国債は基本的に国内で消化されている、それから残存期間も比較的長い、それに対して、米国の場合は、国債の残存期間が短いもので、しかも、相当というか大半が海外で消化されているというようなことで、違いはあるとは思うんですけれども、やはり基本的には、市場の信認を確保するということが国債市場で円滑かつ安定的に金利形成が行われるということの基礎になっているというふうに考えております。
  88. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 ありがとうございます。  続きまして、今、日銀さんが、地銀の統合を後押しするという形で、地域金融機関のための特別当座預金制度というのを設けられて、日銀当座金利を〇・一%付加するという政策を取られております。  これは、日銀金利を優遇してまで政策誘導する話なのかなという疑問があります。もちろん、地銀の統合、経営合理化というのは重要なんですけれども、これは地銀自身が生き残りを懸けて経営基盤の強化を図るべきだと考えますけれども、日本銀行がインセンティブを与えてまで統合させる意義はどこにあるのでしょうか。お聞かせください。
  89. 黒田東彦

    黒田参考人 もちろん、委員指摘のとおり、収益力向上あるいは経費削減などの経営基盤の強化は地域金融機関自身の重要な経営課題であるということは、そのとおりであります。実際、既に多くの地域金融機関において様々な取組が進められております。  ただし、地域経済は、人口減少あるいは企業数の減少といった構造要因に加えて、感染症影響を受けて一層厳しさを増しております。また、地域企業は、デジタル化あるいはSDGsへの対応などを含めて、ポストコロナを見据えて、事業承継、再編など、経営改革に取り組む必要性も高まっております。  こうした下で、地域経済を将来にわたって適切に支えていく上で、地域金融機関の経営基盤の強化を一層図っていくということが重要になっております。  こうした点を踏まえて、日本銀行としても、地域金融機関の取組を後押しするために、こういった地域金融強化のための特別当座預金制度を導入することが適当というふうに考えたわけであります。これはあくまでもプルーデンス政策として行っているもので、通常の金融政策とは別の次元で行っているわけですが、やはり、地域金融機関が十分地域経済を支えて機能して金融仲介機能を果たしていくということは、間接的に金融政策効果も十分発揮されることになるという意味で、日本銀行としても一定の利害関係にあるということで、こういう制度を設けたんです。  これは別に、統合、合併しなければならないというものではなくて、あくまでも収益力の向上あるいは経費の削減といった取組を間接的にサポートしようというものでございます。     〔委員長退席、藤丸委員長代理着席〕
  90. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 金融システム全体の安定、それから地域金融を支えるということの重要性というのは理解をしておるんですけれども、手段の妥当性といいますか、〇・一%金利がつくからといって金融機関が統合するかというところは、なかなか余り、統合しようと思っていた人が、これを使うともうかるなというぐらいのプラスにはなるんでしょうけれども、動機そのものにはなり得ないんじゃないかなと思います。  加えまして、今お手元にちょっと資料を配らせていただいております。  資料一で、二〇一六年一月から日本銀行ではマイナス金利付量的・質的金融緩和ということをされて、どちらかというと、上乗せ、上振れた部分、日銀当座預金に対してはマイナス金利を付与するという三層構造を採用してこられました。これによって、日銀当座にお金をだぶつかせるのではなくて市場に、どんどん貸出しに回してくれという効果があったと思うんですが、〇・一マイナスにするんだけれども、他方で、地方銀行が統合したらプラス〇・一つけるよというと、これはお金を外へ、市中に出したいのか、それとも集めたいのかという、この辺の整合性についてお考えをお聞かせください。
  91. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、委員の御指摘のとおり、日銀の当座預金残高につきましては、基礎残高、マイナス金利導入する前に既にあった残高については、従来から〇・一%の金利をつけておりましたので、それはそのまま、いわばグランドファーザーのような形で残し、他方で、量的緩和を続けていきますので、当座預金はどんどん増えていきますというところで、その部分は、基本的には、マクロ加算残高という形、ゼロ%にして、マイナス金利がつく部分は、政策金利残高として、四百兆を超える当座預金の中でもごく一部、一割弱ぐらいだと思いますが、そういうものを対象にマイナス〇・一%をつけているわけです。  ただ、それによって、そのマージナルなところが〇・一%のマイナス金利がついていますので、市場短期金利もやはりマイナス〇・一%程度で動いておりまして、安定しております。  したがいまして、基礎残高のプラス〇・一%とかマクロ加算残高の零%ということが市場短期金利に大きな影響を与えることなく、マイナス〇・一%の政策金利残高で十分短期金利操作されております。  したがいまして、この特別当座預金制度自体は、元々、金融システムの安定確保を目的とするプルーデンス政策として実施するものでありまして、本制度の対象先につきましても、地域金融機関のうち一定の要件を満たした先に限られております。また、本制度の運用面でも、付利の対象となる当座預金残高に上限を設けるなどしておりまして、市場金利影響しないような仕組みにしております。  したがいまして、従来からもこういう形でやっておりますし、今後とも、これを導入した場合でも、あくまでも政策金利残高に対するこのマイナス〇・一%、現状マイナス〇・一%ですが、これによって市場短期金利マイナス〇・一%程度で安定させて、十年物国債金利をゼロ%程度で安定させるということによって適切なイールドカーブが形成される。それに対する、この特別当座預金制度によってそれが乱されるということはないというふうに考えております。
  92. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 ありがとうございます。  金利の面、マクロ金融政策としてはそうなんだろうと思うんですが、世の中が期待するのは、やはり、日銀当座にお金をだぶつかせるのではなくて市場に、どんどん貸出しに回してくれということなので、地域金融機関も、経営合理化をして、統廃合をして経営体力をつけても、積極的に地域経済にお金を流していっていただけるような、そんな政策を取っていただきたいと思っております。  続きまして、コロナ禍における資金繰り支援について、これは金融庁の方にお伺いしたいと思います。  お手元の資料二を御覧いただきたいと思いますけれども、コロナ融資の据置期間についてです。  日本政策金融公庫などの公的融資やあるいは信用保証協会の保証協会融資を使って、制度上、五年間の据置期間を設けたんですが、実態としては、ほとんどの企業が据置き一年で借りておられます。間もなく据置期間が終了するんですが、企業においては、引き続き、長引くコロナ影響によって資金繰りが厳しい状況が続いております。  この際、金融機関に対して、返済猶予とか、あるいはリスケをするということも金融庁の方で指導はしていただいているんですが、どちらかというと、借りた条件を変更するだとか、そういったリスケをするとか返済を待ってくれというぐらいであれば、改めて新たに借り換えて、取組新規みたいな形にした方が健全なのではないか、その上で、改めて据置期間を五年なら五年取るという形を取った方がいいのではないかと思いますが、金融庁に、この辺のお考えをお聞かせください。
  93. 栗田照久

    栗田政府参考人 お答え申し上げます。  金融庁といたしましては、新型コロナウイルスの影響によりまして事業者の資金繰りが大変厳しい状況であることを踏まえまして、金融機関に対しまして、据置期間、返済期間の延長など最大限柔軟な対応を行って、事業者の資金繰り支援に万全を期すように累次にわたり要請をしてきたところでございます。  この点、実質無利子無担保融資につきましても、制度上、借換え、それから条件変更等による据置期間の延長、再設定が可能となっておりまして、金融機関に対しましては、必要に応じて据置期間等の長期延長提案するなど、親身かつ丁寧な対応を行うよう要請しております。  なお、返済猶予等を行った場合の債権区分につきましては、感染拡大以前に正常先と認識した事業者について、同一の評価を維持することも含めまして、引き続き金融機関判断を尊重するということは明らかにしておりますので、借換え、条件変更等、これはお客様のニーズ次第でございますけれども、それを適当に使って、しっかりと資金繰り支援をしていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  94. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 ありがとうございます。  借りたけれども、なかなか返済が厳しくなっている企業なども多く出てきているというふうにお聞きします。これは、例えば生活困窮者に対する小口貸付けなんかですと、返済の厳しい方に対しては返済を免除するような制度の貸付けなんかもあるやに聞いております。  他方で、民間金融機関が貸し出したものに対して、債権放棄、債務免除みたいな形を求めるような声も一部にあるんですが、これは逆効果で、業績が厳しくても頑張って貸せよといって貸させておいて、貸した後で債権カットしろということになると、後ろからはしごを外されるような形になって、恐ろしくて民間の資金としては貸し出せないということも出てくる。誰も政府の言うことを信用しなくなってしまいます。  民間金融機関に対して債権放棄を求めるようなことはないか、この辺をちょっと確認させていただきたいと思います。
  95. 栗田照久

    栗田政府参考人 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、事業者の資金繰り支援については、金融機関に最大限の対応をお願いしているところでございますけれども、債務免除を含めまして、個別の与信対応につきましては、これは民間金融機関が自らの経営判断の下で債務者の実情等を踏まえて判断されるべきものであるというふうに考えている次第でございます。  ただ、一方で、このコロナ禍において増大した債務が、収益などと比べまして過大になって、事業者の将来的な事業運営の足かせになるのではないかといった御指摘があるということを承知しております。  こういうことも踏まえまして、資金繰りにとどまらない、様々な課題に直面する事業者に対しまして、本業支援などの取組を進めていく、そういう観点から、政策公庫さんの資本性劣後ローンですとか中小企業基盤整備機構によるファンドなどを活用して、あらゆる手段を用いて事業者支援を行っていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  96. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 ありがとうございます。  そうですね、今大事なことは、借入れももちろんなんですけれども、資本を厚くしていくという観点も必要だというふうには考えます。  そこで、今お話が出ました資本性ローンについてお伺いをしたいと思います。  これは実は、本委員会、十一月二十四日のときにもお聞きしたんですが、六・三兆円ほど、官民合わせた、鳴り物入りで予算を用意したはずなんですが、当時、十一月の時点では千五百十億円の利用しかなかった。千五百十億円でも利用されているからいいじゃないかと見るのか、六・三兆円に対しては全然少ないではないかという御指摘をさせていただきました。  当時は、システムの準備に時間がかかっているとか、あるいは、事業計画の策定、審査等に時間がかかっているから今後増えてくるだろうというふうに聞いたんですが、今の時点でもまだ利用実績としては三千億程度だというふうに聞いております。これは、活用が進まないのはなぜなのか。実は、これはニーズが合っていないのではないかなというふうに私は考えます。  大企業や上場企業などにとっては、資本を厚くして格付を改善させることによって市場での調達力を上げるという効果はあるんでしょうけれども、中小企業、非公開企業においては、格付よりもまず資金繰りが優先であって、既に手当てしていただいておる様々な資金繰り支援策を充実する方がニーズに合っているのではないかと考えますが、お聞かせいただけますでしょうか。
  97. 新川浩嗣

    新川政府参考人 お答え申し上げます。  まず、政府金融機関で申しますと、現在の各資金の実績をまず申し上げます。  本年一月末時点でございますが、実質無利子無担保の融資の方ですが、こちらは二百二十九万件、約四十三兆円の貸付実績となってございますが、他方、中小企業向けの資本性劣後ローンは一千八百四十一件、三千二百八十五億円となっております。  それで、先に申し上げました実質無利子無担保の方の融資でございますが、これは最長五年間の据置きを設けておるということもありまして、足下、それから比較的長期の幅広い資金ニーズに対応できる、こういった商品性になってございます。  一方で、資本性劣後ローンというのは、これも、ニーズといたしましては財務基盤の強化、こういったことが目的になっているという制度でございまして、今後、年度末を迎えます、資金需要が高まってまいりますこと等も配慮いたしまして、政府金融機関におきましては、こうした様々な資金の特徴を踏まえて、事業者のニーズに寄り添った活用を促してまいりたいと考えております。     〔藤丸委員長代理退席、委員長着席〕
  98. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 ありがとうございます。  資本性ローンによって資本を増強するということで資金調達力が増すという効果は期待できるので、中小企業でもそういう効果はあるという気もしますが、むしろ、煩雑で要件が厳しい資本性ローンというものを無理やり使うのではなくて、既に御用意いただいている、先ほど来紹介のあった据置期間が五年あって金利もゼロだというようなもの、これを資本というふうにみなすということはできないんだろうかなと考えます。  資本性ローンもローンですから返さないといけない。そういう意味では、株式なんかとは違うんでしょうけれども、倒産したときの返済順位が劣後するということであれば、今ある据置期間五年、金利ゼロに加えて、返済の優先度合いを劣後させる、こういったものを制度設計をすることによって実質的な資本性ローンというふうにみなすことができるのではないかと思いますが、こういった運用指針を出すようなことは可能でしょうか。
  99. 栗田照久

    栗田政府参考人 お答え申し上げます。  御指摘の資本性ローンにつきましては、金融機関による債務者の評価におきまして、十分な資本的性格が認められる借入金として、資本とみなして取り扱うことが可能なものでありまして、これまでも、急激な経営環境の変化によりまして資本の充実が必要となった企業に対する支援において活用されて、新規融資の供給につながってきたと承知しております。  この資本性の判断につきましては、一般的に、長期の償還期間、配当可能利益に応じた金利設定、法的破綻時の劣後性といった条件を確保しているローンであれば、資本性があるというふうに考えられております。  これらの条件は、金融機関が実態に即して判断すべきものではございますが、資本性の判断に関する金融業界における実務として定着してきたものでございまして、当局がこれを政策的に変更するというのはちょっとなじまないのではないかというふうに考えております。  他方で、委員指摘のように、資本性劣後ローンについてはちょっと使い勝手が悪いのではないかという御指摘もあることは承知しておりまして、この点、日本政策金融公庫さんにおきましても、新型コロナ対策資本性劣後ローンの申込みについては、必要書類を簡素化するなどの取組を進めていただいているものと承知しております。
  100. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 ありがとうございます。  今重要なことは、とにかく資金繰りをつけるということ、利益が黒字であっても支払いができなければ黒字倒産ということになるので、資金繰り支援をしっかりとやることなんですが、資本を増強する必要があるんだという指摘も出始めております。  ところが、振り返って、これまで、我々政治家も含めて反省しないといけないんですが、何を言ってきたかというと、企業が内部留保をため込んでいるのが悪いとか、内部留保を吐き出させる必要があるという議論をしてきたのではないかというふうに考えます。  資料三を御覧いただきたいと思います。  これは、内部留保をため込むんじゃなくて投資に回せということでございますけれども、BSを見ていただくと、内部留保をため込んでいるから投資に回っていないのではなくて、内部留保というのは利益の蓄積、これが現預金にたまっていただけであって、現預金を固定資産投資に回したり、あるいは投融資という形で長期投資、研究開発費なんかに回しても、内部留保は減らないんですね。  内部留保を減らせ、吐き出せというのはどういうことかというと、赤字決算するか、あるいは配当をするかなので、配当をもっと出せということは、一部の株主がもうかるだけで、これは決して従業員の給料が上がるわけではない。もちろん、損益のところで人件費だとか投資に回った減価償却がちょっと変わるというぐらいですが、赤字にならない限りは内部留保というのは変わってこないと思います。  こういったことで、内部留保は重要なんですけれども、これに対して、今まで、内部留保を吐き出せとか内部留保をためるなといった批判に対して、これも政府の方で、船橋政務官、お考えを聞かせていただければと思います。
  101. 越智隆雄

    越智委員長 船橋財務大臣政務官、申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
  102. 船橋利実

    船橋大臣政務官 お答えいたします。  近年、企業の収益が改善をしてくる中で、内部留保や現預金が増加する傾向が続いておりまして、令和元年度におきましては、内部留保は四百七十五兆円、現預金は二百三十七兆円となっております。  内部留保は、様々な経済的ショックに対して企業としての備えが厚くなってまいりますが、今後の日本経済の成長に向けましては、企業による投資の活性化、持続的な賃金上昇による消費拡大を実現することがより重要な課題となってまいります。  今回の危機によりまして、企業が過度にリスク回避的となりまして、より多くの現預金を積み上げる一方で、投資や賃金に対して慎重な姿勢を取れば、経済の回復が遅れるという側面もございます。ポストコロナに向けましては、民間投資を大胆に呼び込みながら生産性を向上させるとともに、それを持続的な賃金上昇につなげることで、経済の好循環を実現してまいりたいと考えております。
  103. 山田賢司

    ○山田(賢)委員 終わります。ありがとうございました。
  104. 越智隆雄

    越智委員長 次に、清水忠史君。
  105. 清水忠史

    ○清水委員 日本共産党の清水忠史です。  ちょうど一年前にこの委員会で、去年の二月二十五日でしたけれども、日本銀行黒田総裁に、私は、気候変動問題が金融機関リスクに大きく影響すること、また、既に世界の投資行動が気候変動リスクを織り込んで動いていることについて質問をさせていただきました。今日もそのテーマで質問をさせていただきます。  その後、日本銀行も、SDGs・ESG金融に関するワークショップを開催するなど、その取組を始めております。黒田総裁は、現時点で中央銀行の使命として気候変動問題をどのように捉えておられるか、初めにその認識についてお伺いします。
  106. 黒田東彦

    黒田参考人 この気候変動、これは非常に長期的、しかも巨大な動きですけれども、これが実体経済あるいは金融システムにも影響を与える重要な要素の一つであるということで、中央銀行としての使命にも関係するというふうに考えております。  したがいまして、一昨年、NGFS、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワークというものにも参加をいたしまして、引き続き、物価の安定と金融システムの安定という使命に即して、調査研究それから金融面リスク把握など、必要な対応を行ってまいりたいというふうに考えております。
  107. 清水忠史

    ○清水委員 配付資料の一枚目を御覧ください。  これは、海外の中央銀行の幹部らが気候変動とプルーデンス政策についての発言をしたものを日本銀行にまとめていただいたものです。御覧のように、海外では様々な意見が発信されているわけです。  欧州中央銀行、ECBは、今年一月二十五日に、自己資本の一部を、国際決済銀行、BISといいますが、グリーンボンド、環境債と呼ばれるものですね、これに投資するということを発表しているんです。自己資本とはいえ、物価の安定を目標とするECBがグリーンボンドに投資をするということは、これはもう気候変動に対する取組の並々ならぬ決意というものがうかがえるのではないかというふうに見受けます。そもそも、BISがグリーンボンドを発行すること自体が、従来の国際的な金融政策枠組みを超えたものではないかというふうにも考えられます。  そこで、海外の動向について、現在、金融政策と気候変動の問題についてどのような意見が交わされているのか。また、金融政策との関係で、意見によってもばらつきがあるわけですよね、いろいろな差があるわけです、海外によっては。そのことについて、黒田総裁の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  108. 黒田東彦

    黒田参考人 まず、金融システムの分野では、気候変動が金融システムあるいは金融機関経営に与える影響について関心が一層高まっておりまして、この表にもありますとおり、欧州の中央銀行を中心に、気候変動リスクに関するストレステストを実施しようというふうにしております。  先ほど来申し上げているとおり、金融政策分野では、気候変動は中長期的に経済物価影響を及ぼす重要な要素の一つでありまして、調査研究を進めていく必要があるというふうに考えております。  なお、この表でもちょっと見受けられますとおり、もちろん、それぞれの中央銀行によって、経済あるいは金融等の背景の違いもありますので、必ずしも完全に中央銀行間で一致しているということではなく、若干の温度差があるんだと思いますが、金融システムの安定という面では比較的意見が一致しているわけですけれども、金融政策面でどう対応するかということになると、御指摘のグリーンボンドの発行とか、あるいは中央銀行による購入とか投資とかそういうものについては、ミクロの資源配分の側面についてどう考えるかという、いろいろ考慮すべき要素も多いわけでして、現在のところは様々な議論が行われておりまして、日本銀行としても、引き続き、国際会議や各国との意見交換なども通じて議論を深めてまいりたいと思っております。御指摘のBISの動きあるいはECBの動きというのは、注目に値すると思います。  他方で、グリーンボンドにつきましては、御承知のように、欧州と中国かなり出されているわけですね。  私が以前、アジア開発銀行の総裁をしておりましたときに、アジア開発銀行もグリーンボンドを出しました。これは非常にマーケットで評価も高く、アジア開発銀行としては通常のボンドよりも低い金利で調達できたので大変結構なんですけれども、それはあくまでも発行者の立場で、しかも、アジア開発銀行は融資あるいは支援の八割ぐらいがインフラ支援で、それも気候変動対応の電力とか交通とかその他の支援が大半ですので、まさに、お金を借りて融資するものが大半グリーンだということでグリーンボンドが簡単に出せて、しかも、アジア開銀としても非常にメリットがあったということだと思いますが、中央銀行としてグリーンボンドを積極的に買っていくかどうかというのは、これは中央銀行の政策がミクロの資源配分に影響を与えるということをどう考えるかということも関係しますので、まだ議論が続いているというのが現状であります。
  109. 清水忠史

    ○清水委員 ありがとうございます。  いずれにしましても、気候変動は金融システム安定性にとって重要なリスクになるという点については共通はしているということだと思うんですね。  先ほども紹介しましたが、日本銀行も、SDGs、ESG金融が重要だという認識はお持ちだということです。  そこで、紹介したいんですけれども、元日本銀行審議委員であった白井さゆり慶応大学教授がこう言っているんですね。ESGの観点からも、日本銀行が大量に株式を保有するのはよくないことだと指摘している。つまり、日銀ETF買入れを批判しているんですね。それはなぜかというと、日銀が上場投資信託を購入することによって流通株が減る、企業に環境や社会の観点で行動を促そうとしても、なかなかこれは株価に反映されにくくなる、企業の行動変容が難しくなるという理由からなんですよね。  このような批判に対して、黒田総裁はどのようにお答えになられますか。
  110. 黒田東彦

    黒田参考人 日本銀行は、二%の物価安定の目標を実現するということのために大規模金融緩和を実施しておりまして、ETFの買入れもその一環でございます。株式市場リスクプレミアムに働きかけることを通じて、市場の不安定な動きが企業や家計のコンフィデンス悪化につながるのを防止するということで、経済物価プラス影響を及ぼしていくことを目的としております。  ETFの買入れに当たりましては、個別銘柄の株価に偏った影響ができるだけ生じないように、幅広い銘柄から構成されるTOPIXに連動するETFのウェートを高めております。また、ETFを構成する株式の議決権は、スチュワードシップ・コードの受入れを表明した投資信託委託会社によって適切に行使される仕組みとなっております。  そういう意味で、日本銀行ETF買入れが企業のESGの取組を弱めているとは考えておりません。
  111. 清水忠史

    ○清水委員 それならお伺いするんですけれども、資料の二枚目を御覧いただきたいと思うんです。  これは、今年一月二十七日のワークショップで日本銀行自身が作成した資料なんですね。  ここにありますように、「SDGsとESG金融 持続可能な社会の実現」とタイトルがありまして、年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFがどおんとこの資料の真ん中に座っておりまして、機関投資家としての重要な役割を果たしているということを示唆する資料になっているわけです。  しかしながら、現在の国内の株式市場で最大の機関投資家は日本銀行なはずなんですね。何でこの中心に日本銀行がいないのかと非常に違和感を覚えまして、これは理事でも事務方でも結構なんですけれども、現在の日本銀行ETF残高と株式市場に占める割合、これを教えていただけるでしょうか。
  112. 内田眞一

    内田参考人 お答え申し上げます。  日本銀行ETF保有残高でございますが、決算期、昨年の九月末時点でございますが、時価ベースで四十兆四千億円程度、同時点での保有割合は株式市場全体の七%程度でございます。
  113. 清水忠史

    ○清水委員 GPIFはESG投資に非常に積極的で、一方、国内最大の株主である日本銀行は、大量のETF買いで、ESG投資の目的である企業の行動変革を逆に難しくしているのではないか。市場から見れば、ESG投資に何となく後ろ向きのメッセージを送っているようにも見えるわけでございます。  昨年秋に就任された菅総理大臣は、気候変動問題を成長戦略として位置づけ、民間企業に眠る二百四十兆円の現預金、さらには三千兆円とも言われる海外の環境投資を呼び込むと意気込んでおられます。  このことにより、市場関係者から、日本銀行は将来的にグリーンボンドなど環境関連金融資産買い入れるのではないかという見方も実は出ているんですよね。それはなぜかといいますと、二〇一五年に日本銀行が、政府の成長戦略を支援するために、設備、人材投資に積極的に取り組んでいる企業を対象とするETFを買入れ対象に追加することを決めたという過去があるからなんですね。  みずほ証券のストラテジスト、投資戦略家はこう言っているんですね。菅政権の環境に対する取組を支援するために、日銀は二〇二一年に環境関連のETF投資対象に加える可能性がある、こう指摘し、先行するGPIFを後追いする形で、S&P・JPXカーボンエフィシェント指数を買入れの対象にすると予測をしております。  このような環境関連のETFの買入れは、実際、そうすると、これは中央銀行の使命からも逸脱しているというような形にもなると考えられているわけですが、この点についてはどのようにお答えになられますか。
  114. 黒田東彦

    黒田参考人 まず、日銀がグリーンボンドあるいは環境関連ETFなど環境関連金融機関買い入れるということについてでありますが、もちろん、日本銀行の社債買入れ自体は、信用性とか市場性といった適格基準を満たした銘柄を対象に買い入れておりますので、この適格基準を満たしておればグリーンボンドなども同様に買入れの対象にはなるわけです。  ETFについては、先ほど来申し上げているように、なるべく個別の株式影響をさせないように、市場全体を平均的に代表しているTOPIX連動のETFの買入れを増やしているということであります。  したがって、ETFについてそういったことをしてはどうかという御意見かもしれませんが、これは、日本銀行の使命に反するとは言いませんが、ETFについてそういったことが適当か、可能か、これはミクロの資源配分の側面についてどう考えるかということとも関連するので、やはり考慮すべき要素が大きいと思いますので、日本銀行としても、引き続き、国際会議あるいは各国の中央銀行当局と十分に意見交換もしながら議論を深めてまいりたいというふうに考えております。
  115. 清水忠史

    ○清水委員 ありがとうございます。  続いて、総裁、配付資料の三番を御覧いただきたいと思うんですね。  既に、地域ごとにカーボンニュートラルに向けた取組が実は進んでおります。やはり日本では、都市部以上に、地方で環境投資を進める意味が非常に重要だと思うんですね。なぜなら、地産地消の再生可能エネルギー循環への投資、また、住宅の省エネルギー化や自動車が電気自動車に替わることなどによる生活スタイルの変更は、地域経済への投資拡大して、そして地域の雇用拡大につながる可能性があるからです。  日銀が現在実施している成長基盤強化を支援するための資金供給は、既に環境関連事業への投資を促しておりまして、これは配付資料の四番目に添付しておりますけれども、見ていただいたら分かりますように、詳しい内容はよく分かりませんから全てが再生可能エネルギーかどうか分かりませんけれども、環境、エネルギー事業が約三〇%を占めているわけです。  ここは、総裁、ちょっと通告していないんですけれども、もしお考えがありましたら御意見を伺いたいんですが、日本銀行としても、環境関連のETFの買入れではなくて、このような仕組みを利用して、例えば、地方における環境関連企業や個人への投資促進を支援するというようなことは考えられないでしょうか。
  116. 黒田東彦

    黒田参考人 急な御質問なので十分な検討をしてではありませんが、先ほど来申し上げているように、ETFは、株式市場の個別の株価に影響ができるだけ出ないように、ニュートラルになるようにということで、TOPIXを中心にETF買い入れているわけですね。それに対して、こちらの方はそういう要素はありませんので、より前向きに考えやすいというふうには思いますが、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。
  117. 清水忠史

    ○清水委員 是非検討していただきたいと思います。  最後に質問いたします。  この間、政府は、独占禁止法の特例を設けまして、地域金融機関の統合を進めようという法整備を行ってまいりました。ここでは、地域金融機関の独占による利用者への問題は置き去りにされた形だと思っております。今日は詳しくこの問題はやりませんが。  日本銀行は、昨年の十一月に地域金融強化のための特別当座預金制度を新設して、先ほども議論になりましたが、銀行の統合を促進させる政府の方針を支援する姿勢を明らかにしております。これこそ日本銀行の使命を超えた取組ではないかと言わざるを得ません。  そうでないと総裁がお考えであるならば、その目的と意義について、日本銀行の使命との関係を踏まえて御説明いただければと思います。
  118. 黒田東彦

    黒田参考人 御指摘地域金融強化のための特別当座預金制度、これは、地域金融機関が将来にわたって地域経済を適切に支え、金融仲介機能を円滑に発揮していくための経営基盤の強化、これに資する観点から実施するものであります。  本制度の主な狙いは、OHR、いわゆるオーバーヘッドレシオに表れるような収益力あるいは経営効率の改善でありまして、そうした取組の必要性は従来から金融システムレポートなどで指摘してきたところでございます。  経営統合や合併というのはそのための一つの選択肢ではありますが、単独で行うのか、あるいは他業態とのアライアンスなどを活用して行うのか、それぞれ各金融機関の経営判断だと思います。それもまた、各地域経済金融の状況にもよると思います。  日本銀行としては、この新しい制度が多くの地域金融機関に活用されて、地域経済を支える取組を後押しするものになるということを期待しております。
  119. 清水忠史

    ○清水委員 今言いました地域金融強化のための特別当座預金制度、これで銀行の統合を進めても、今、地方はどういう課題があるかといいますと、一つは高齢化社会、それから人口減少ですよね。地域が抱える地域経済の問題を結局先送りしているだけではないかと思います。  日本銀行地域金融機関を本当に支援して地域経済を支えていくということが金融システムの安定と考えるのであれば、これは、合併促進ではなく、地域経済の発展を促すための投資として、カーボンニュートラルに対応した社会変革を促す投資金融機関を通じて進めることは重要な政策一つだというふうにも思うんですが、一年前と比べて、やはり日本銀行も、SDGsやESG金融に関するワークショップを開くなど積極的に取り組んできたわけですので、最後に、いわゆる気候変動の問題と、そして地域金融機関を支援していくということとの関連で御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  120. 黒田東彦

    黒田参考人 この気候変動問題というのは非常に大きな問題でありまして、気候変動そのものに対応する政策というのはもちろん政府の担当するところでありますが、中央銀行といたしましても、気候変動がやはり地域経済あるいは金融に様々な影響を与えるということは事実でありますし、その影響程度というのをよく見計らっていく必要もあります。  そうした下で、今回の特別当座預金制度というのは、あくまでも地域金融機関収益を改善するという意味で、収益性と経営効率性を向上させていく、それによって地域経済を支えていくということを側面から支援しようということでありまして、そういう中で、もちろん、御指摘のような気候変動対応の様々な地域における取組、それから、実は、日本の大きな金融機関とか機関投資家、証券会社等も既にかなり気候変動対応というのを進めておられますので、そういうところとも十分連携しながら、中央銀行としてできることを最大限発揮して、一方で、地域金融機関収益性と経営効率性を向上させる、地域に貢献する地域金融機関をサポートするということとともに、御指摘の気候変動に対応する動きを側面から支援していきたいと思っております。
  121. 清水忠史

    ○清水委員 今日は議論できてよかったです。またお願いいたします。  ありがとうございました。
  122. 越智隆雄

    越智委員長 次に、青山雅幸君。
  123. 青山雅幸

    ○青山(雅)委員 日本維新の会・無所属の会、青山雅幸でございます。  早速でございますけれども、黒田日銀総裁に質疑をさせていただきます。  黒田総裁日銀総裁に就任され、二〇一三年四月にいわゆる異次元緩和を打ち出されて、ずっとその政策をされてきたと承知しております。当初は、量的・質的緩和と銘打った緩和策によって、日銀は、市場調節目標を従来の金利からマネタリーベースに変更した上で、その規模を二年間で二倍にまで拡大させること、そして、それによって二%の物価安定目標を二年で達成する、そして、国債の保有年限、平均残存年限も二倍にするというようなことを打ち出されておりました。  その目的としては、今日も質疑されておられましたけれども、しみついたデフレマインドを払拭し、マネーの供給量を増加させることによりインフレ期待に働きかけて、それによって適度なインフレを呼んでGDPの成長を促すというようなことだったというふうに思っております。  しかしながら、異次元緩和、黒田バズーカと呼ばれて当初かなり衝撃を呼びました金融政策も、御承知のとおり、期待された物価上昇を呼び込むことはなく、ここのところ見て、数年にわたって記者会見でのお言葉などを聞いておりますと、一九九八年から二〇一三年まで続いたデフレマインドが残っている、それが影響を与えていると。今日も質疑において、年度については言及されませんでしたけれども、同じように、しみついたデフレマインドというのが日本においては特徴的に残っているというようなことをおっしゃっていたかと思います。  まず、このデフレマインドということについてお聞きしたいと思います。  そもそも、こう言うと大変失礼なんですけれども、経済学というのは学説の真偽について自然科学のように厳格な証明が困難、これはもう絶対的な事実だと思っております。ノーベル賞に経済学賞がございますけれども、経済学賞をノーベル賞として置いておくことが妥当かどうかという議論もずっとされているようなところでございます。  いろいろな経済学の歴史をひもといてみますと、その時々にこういうふうに流行したりこういったものが主流になっているというのがありますけれども、一貫して、何が本当に経済を動かしているかということについて、いまだに確たるものはない状況かというふうに存じます。  そこで、大本に立ち返ってお伺いするんですけれども、まず、デフレマインドというものが本当に存在したのか、それから、本当に存在したとして、それが物価上昇率影響を与えるというエビデンスが今現在得られているのかどうか、それについてお伺いしたいと思います。
  124. 黒田東彦

    黒田参考人 従来から申し上げておりますとおり、二%の物価安定の目標を実現するというためには、一方で、経済活動が活発化して需給ギャッププラスになって、それが続く。他方で、物価がどの程度上昇すると人々が予想するかという予想物価上昇率、これが二%にアンカーされるということが重要になってまいります。  この点、各種の指標から予想物価上昇率の動向を見ますと、デフレの下で低位で推移していた予想物価上昇率は、量的・質的金融緩和導入以降、一旦上昇したわけですけれども、それでも最大一・五%程度まで上昇したわけで、その後は、石油価格の下落、それを受けた実際の物価上昇率下落などを受けて、予想物価上昇率も弱めの動きが続いているということであります。  この背景にはいろいろな要因があると思いますけれども、やはり長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金、物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が家計や企業に根強く残っていたということが指摘できるのではないかというふうに思っております。
  125. 青山雅幸

    ○青山(雅)委員 今のお話をお伺いしていると、デフレマインドというのはやはりあるんだ、そして、インフレ期待といいますか、予想物価上昇率によってそれが左右され得るんだというようなお立場に今立たれているんだと思います。  しかしながら、この点を少し突っ込ませていただくと、現実には、それに働きかける、デフレマインドが仮にあるとしても、今、日銀がお取りになっている政策がそれに有効でないことはもう見えてきているんだと思うんですね。  と申しますのは、例えば今回の十二月の報告にも、マネタリーベースは、前年比プラス幅が大幅に拡大し、九月には一四%台前半のプラスとなった、マネーストック、M2の動向を見ると、前年比プラス幅が大幅に拡大し、九月には九%のプラスになった、こういうことが報告書に書かれているわけですけれども、物価は別にそれに呼応して上がっているわけではない。  そして、配付資料を御覧いただきたいんですけれども、日銀のバランスシート、マネタリーベースを大幅に拡大しているわけですね。これは、日銀の異次元緩和以前の二〇一二年度末にはマネタリーベースは百四十六兆円だったものが、二〇年度においては六百十五兆円と四・二倍に拡大している。四倍、当初二倍とおっしゃっていたのが更に拡大を続けて、四倍を超えているわけですね。  四倍もマネタリーベースが拡大しても、これが、仮にデフレマインドがあるとして、それが払拭されないとすれば、普通はその政策が残念ながら功を奏さないというふうに考えるべきであり、また、そうであるならば別のことを考えるべきだと思うんですね。  そういうふうな疑問が大変湧くわけですけれども、それについて黒田総裁はいかがお考えか、お聞かせください。
  126. 黒田東彦

    黒田参考人 これは日本のみならず、世界的に、基本的な物価動きというものが、経済全体の需給バランスであるマクロ的な需給ギャップと人々の中長期的な予想物価上昇率によって決まるというのが標準的な経済学の考え方でありまして、現在日本銀行が取っている金融緩和策というのも、こうした考え方に沿ったものであります。  したがいまして、イールドカーブコントロールの下で金利低位に安定させると同時に、物価上昇率が安定的に二%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するというオーバーシュート型コミットメントによって、二%の物価安定目標の実現にコミットして、人々の予想物価上昇率を引き上げることを意図しているわけであります。  これらを通じて、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利を引き下げるということが金融緩和の起点となって、需給ギャップの改善、さらには物価上昇につながっていくというふうに考えておりまして、このようにして、現実の物価上昇が続くことを通じて、予想物価上昇率が更に押し上げられるということを想定しているわけであります。  そういう意味で、日本銀行が行っていることは、諸外国の中央銀行が行っていることと基本的に同じ考えに基づいてやっております。  ただ、その下で、もちろん欧米の中央銀行も、リーマン・ショック後、二%の物価安定目標をなかなか達成できていないわけですが、我が国の場合は、九八年から二〇一三年まで、持続的物価下落という意味でデフレが続いていた。量的・質的金融緩和の下で、持続的な物価下落という意味でのデフレではない状況にはなったんですが、二%の物価安定の目標には達していないということはそのとおりでありまして、その意味では、今後とも粘り強く金融緩和を続けて、需給ギャッププラス、これをできるだけ長く続けて、実際の物価上昇率が上がってくる下で、予想物価上昇率の上昇も意図して、その両者の相互作用によって物価安定目標を達成する。  それで、その時間は、足下、御指摘のように、コロナ禍によりまして、物価上昇率マイナスになっています。他方で、資金繰り支援ということで金融機関も積極的に貸出ししておりますので、貸出しやマネタリーベースは大きく増加しているんですが、このコロナ禍の需要減、特にサービス消費の減によって、物価上昇率マイナスになっていることは事実であります。  しかし、その中身を見ますと、どうしても一時的な要因であるとか、例えば原油価格下落影響がまだ続いているとか、あるいはGoToトラベルの影響とか、その他もろもろの一時的な影響を除きますと、少しインフレ率はプラスでまだ残っておりまして、我々としては、この二%の目標に向けて、粘り強く、効果的な金融緩和を続けていきたい。  そういうことのために、現在、イールドカーブコントロールの下での運営の仕方、資産買入れのやり方等について点検を行っているというところでございます。
  127. 青山雅幸

    ○青山(雅)委員 私が心配するのは、今の日銀の続けている政策が、これが日本の経済であるとか、世界の、おっしゃった財政政策にとって協調的なものであったり、あるいは、日本の財政あるいは未来にとって必要なものである可能性はもちろんあると思っておりますし、有効性もあるだろうなとは思っているんです。ただし、達成されない目標、あるいはそういったものに固執することによって、日銀政策自体の信頼性が失われ、ひいてはそんな政策を取るのはもうやめたらどうかというような話になろうかということもあろうかと思うんですね。  そうしますと、やはり利かなかったものは利かなかった、だけれども、こういうことに対しては効果があるし、依然としてその存続的な価値はあるんだというような、見直しはやはり必要だと思いますので、その点は是非、大変恐縮ですが、頭に入れていただいて今後検討していただければと思っております。  それで、今、状況的に見ると、基本的には物価はなかなか動かない、今総裁が言われたとおりで、マネタリーベースの拡大実質金利の引下げにもつながっております。これがどこに行っているかというと、皆さん御承知株式市場の活性化には確実につながっているわけですね。要は、お金が流れ込む先が決まってしまっているんじゃないかなという気はしております。  これは大変恐縮なんですけれども、マインドよりも、やはり日本のように輸出入の多い国では、通貨の交換価値とか石油などのエネルギー価格、今日もおっしゃっておりました。あとは賃金水準ですね、日本の賃金水準は上がっておりませんので。それから、金利などの諸条件によって物価は動くんじゃないのかなと。  やはり、マインドが全然関係ないということは申しませんけれども、マインドの部分は少ないんじゃないかなと思うんですけれども、ちょっと短く、その点について。
  128. 黒田東彦

    黒田参考人 マインドというのはやや文学的な表現ですけれども、基本的には、十数年続いた低成長、デフレの下で、賃金、物価が上がりにくいという前提で企業や家計が行動する、そういうマインドセットというかそういう対応ぶりというか、それがかなり続いていたために、企業が、例えば賃金について、需給ギャップはもうプラスになっていても、賃金は、もちろん七年連続でベースアップが行われたというようなことは十五年ほど続いたデフレ期にはなかったことではあるんですけれども、それでも賃金の上がり方が低かったということも事実でありまして、そういう意味では、賃金、物価が上がりにくいということを前提にした企業行動、家計行動というものがかなり根強く残っていたということは確かではないかというふうに思っております。これを克服していく必要があるというふうに思っております。
  129. 青山雅幸

    ○青山(雅)委員 最後に一つだけ。  私、度々申し上げております、私が心配しているのは、マネタリーベースの拡大にこだわっていって、通貨安という最悪の副作用をある日突然呼び込むことになるのではないか。  また、足下は最近円安になっております。資料の二を御覧いただきたいんですけれども、ドル・円、ユーロ・ドル、ユーロ・円を見ると、明らかに財政的に一番きちんとしているユーロが、このところユーロ高になっている。これについて、この心配、懸念について、総裁の御意見を伺いたいと思います。
  130. 越智隆雄

    越智委員長 黒田総裁、申合せの時間が過ぎていますので、簡潔にお願いします。
  131. 黒田東彦

    黒田参考人 日本銀行は二%の安定目標の実現を目指しておりまして、海外の主要な中央銀行も、同様に二%を目標として金融政策運営を行っております。このように、主要国が同じ物価上昇率を目指すということは、長い目で見て為替レートの安定に資するものではないかというふうに考えております。  もちろん、その時々の為替の動向につきましては、景気格差、金利格差、その他諸々の要因があるということは事実であります。
  132. 青山雅幸

    ○青山(雅)委員 時間が参りました。残りの質問については、また別の機会でお伺いしたいと思います。  ありがとうございました。
  133. 越智隆雄

    越智委員長 次に、前原誠司君。
  134. 前原誠司

    ○前原委員 国民民主党の前原でございます。  まず、アメリカの長期金利について、黒田総裁にお伺いをいたします。  現在、アメリカの金利が上昇しております。アメリカのみならず世界中がコロナ影響経済が落ち込んでおりましたけれども、アメリカも財政出動、去年が一年間で総額四兆ドルという規模でありますし、また、FEDによる超金融緩和、例えば、ゼロ金利の復活、無制限の量的緩和、一部格付の低いジャンク債も対象とした社債の買入れなど、こういうことも行ってきましたし、そして何よりも、ワクチン接種が始まりまして、その期待感から経済が急回復しているということであります。  数字を見てみますと、アメリカでは、二〇二〇年の四―六ではGDPが前年比で年率マイナス三一%でありましたけれども、七―九が三三%増に転じて、十月から十二月も四%増ということでありまして、二〇二〇年の成長率はマイナス三・五%と、主要国、先進国では最も下げ幅が小さいものとなりました。そして、今年に入ってもアメリカの長期金利は上昇しているということであります。  資料を皆様方にお配りをしておりますので、一ページを御覧いただきたいと思います。  この青の方がアメリカであります。申し上げるまでもなく、名目金利から期待インフレ率を引いたものが実質金利ということでございまして、実線、点線、細い線という形で、青がアメリカ、そして、後で触れますけれども、赤が日本という状況でございまして、アメリカの名目金利がここに来てかなり伸びている。もちろん、期待インフレ率も上がっているわけであります。そして、若干実質金利も上がり始めている。これが今のアメリカの状況かと思います。  さて、まず幾つ黒田総裁に伺いたいと思いますけれども、インフレにはいいインフレとか悪いインフレとかいろいろあると思うんですけれども、アメリカの足下の金利上昇をどのように分析されているか、お答えいただけますでしょうか。
  135. 黒田東彦

    黒田参考人 御案内のとおり、この長期金利というものは日々様々な要因で変動いたしますが、このところ米国の長期金利が上昇している背景として、市場では、マーケットでは、追加経済対策への期待、そしてワクチン接種の広がりなどを受けまして、経済物価の持ち直しへの期待が高まっているという点などを指摘する声が多いようであります。  ただ、米国の長期金利先行きにつきましては、米国の経済物価金融の動向によって変わってまいりますので、私から具体的に先行きについてコメントすることは差し控えたいと思います。
  136. 前原誠司

    ○前原委員 今おっしゃったように、追加経済対策を、今トリプルブルーといいまして、大統領も上院も下院も民主党ということで、法案とか予算が通りやすくなっているという部分もございます。二月二十七日には、米下院では一・七兆ドル、約二百兆円の追加経済対策が可決された。上院では拮抗していますので若干減額があるかもしれませんけれども、三月中旬には恐らく成立するだろうと言われております。先ほど総裁がおっしゃったように、追加経済対策というものがある。  あとは、貯蓄率が上がっているんですね。二〇二〇年九月まで、ちょっと前ですけれども、一年間でどれだけアメリカの預金等が増加したかというと、二・八兆ドル、つまりは二百九十兆円増加しているということであります。  そしてまた、さらには、向こう四年間でありますけれども、二兆ドルの環境インフラ対策というものをやると言っていて、今年中にもそれが一部動き出すということであります。  この追加経済対策ワクチン接種というのはあるんですけれども、これは一部では、やり過ぎじゃないか、経済の過熱を生むのではないか、こういう懸念がありますし、私も、G20で、総裁もオンラインで参加されて、各国でちゃんと下支えをしていきましょう、こういう確認があったと思いますけれども。  これは、しかし、この長期金利の上昇を見ていると、やはりこれは過熱させるようなメニューがそろい過ぎているんじゃないか、こういう見方もあると思うんですけれども、その点、総裁はどうお考えでしょうか。
  137. 黒田東彦

    黒田参考人 これはなかなか難しい御質問でして、現在、米国で非常に大きな議論を呼んでいますのは、サマーズ元米財務長官、そしてオバマ政権のときの合衆国経済会議の議長だった方が、この一兆九千億ドルの追加的な景気対策というのは行き過ぎではないか、景気の過熱を招くおそれがあるのではないかということを言われたわけですね。  ただ、IMFのチーフエコノミストも米国のこの大規模な追加景気対策を支持していまして、それはやはり、今、非常に不確実、不透明な状況で、この状況では、やはり大規模な追加対策を講じて企業や家計に安心してもらうということが必要じゃないかということだと思うんですね。  御指摘のように、貯蓄が増えていますので、それをこれから使ってくると消費が結構増えるんじゃないか。そういうことに加えて、この一兆九千億ドルとも言われる追加景気対策が加わると、GDPギャップがプラスになり、過熱するおそれがあるのではないかという議論のようですが、先ほど申し上げたように、IMFのチーフエコノミストも、それからG20での議論も、イエレン長官が公表していたようなことについて基本的に皆さん同意していまして、やはり、この際は各国とも必要な財政支援を思い切ってやって、具体的に、コロナ感染症が収束して経済活動が正常化していったら、その先において財政拡大を少しずつ撤回していくのはいいけれども、プリマチュアに撤回するのはよくないというのが、今の国際的ないわばコンセンサスじゃないかというふうに思っております。  だから、長期金利がなぜ上がっているかというのは、やはり、景気持ち直し、あるいはその成長への期待から市場で上がっていることは事実ですけれども、それが何か今後とも、すごく行き過ぎになって、景気過熱を呼んでいろいろな問題が生ずるというふうに、今、人の国のことですけれども、決めつけるのは、少なくとも国際的なコンセンサスではないというふうに思っております。
  138. 前原誠司

    ○前原委員 先ほど総裁は、他国のこれからの金利の動向、こういったものについて言及することについては差し控えたい、こういうことをおっしゃいました。それはそのとおりなんだろうと思います。  他方で、これはリーマン・ショックの後、経済が落ち込んで、そして、アメリカのみならず世界中が様々な財政出動とか金融政策を行って支えた。あのときは中国かなり財政出動をして支えたということが言われていたわけでありますけれども。難しいと思うんですね。そこから実体経済が持ち直してきて、そして成長基調になってくるときに、あのときはテーパリングということをアメリカがある時期行い始めるわけでありますけれども、二〇一三年でした、バーナンキ・ショックという、バーナンキさんの発言が市場に混乱をもたらすということがありました。そういうことも多分意識してなんでしょうけれども、パウエル議長は、今のところインフレ率が上昇しても一時的な反動だ、利上げ再開は二〇二四年以降で、テーパリングも時期尚早、こういうことをおっしゃっておられます。  その意味では、私も、同じ中央銀行の総裁として、このスイッチの仕方ということと市場との対話というのはかなり難しいものであって、それをどうやり上げて、そしてうまくシフトしていくのかということは、大事なことなのではないかというふうに思っております。  そこで、次、日本への影響について質問をさせていただきたいと思います。  アメリカの金利上昇が、これから行われる日本の政策点検も含めて、日本の金融政策にどういう影響を及ぼすのかということを伺っていきたいと思うわけでありますけれども、アメリカの経済がよくなるということは日本にとっていいことですね。世界第一位の経済大国の経済がよくなるということは、悪いことではない。  お配りをしている資料の三枚目を御覧いただきますと、原油価格コロナ前にほぼ戻ってきているという状況であります。したがいまして、黒田総裁にとっても、将来的な物価上昇というものについての期待が持てるような状況が生まれてきているということであります。  まず伺いたいのは、今、日銀長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和を、イールドカーブコントロールをやられていますけれども、現在は、プラスマイナス〇・二%の範囲に収まるように国債を買っておられます。これは、アメリカの金利上昇、また資料一ページを見ていただきたいんですが、アメリカほどではないんですけれども、日本も、足下、名目金利も、期待インフレ率も、それから実質金利も上がり始めていますね。  そういう状況の中で、このいわゆる〇・二%に収めるということ、先ほど総裁議論させていただいたように、アメリカは、ある人から見ればトゥーマッチな、過熱ぎみな政策をこれから更にやっていくということで、更なるインフレ期待あるいは金利上昇の可能性というのがある中で、本当にこの〇・二%に収まるのか、そういうような金融政策ができるのかといったところが一つの大きなポイントになってくると思うんですけれども、このアメリカの今の金利上昇を含めて、この変動幅拡大などを含めて、政策点検で見直される考えというのがおありかどうか、まずその点をお伺いします。
  139. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、御指摘のとおり、足下、我が国の長期金利が、米国の長期金利がやや大きめに上昇していることなどを反映いたしまして、幾分上昇しております。  ただ、日本銀行イールドカーブコントロールにおきましては、長期金利の水準は、経済物価情勢等に応じて、操作目標であるゼロ%程度から上下にある程度変動し得るということで、その変動幅については、おおむねプラスマイナス〇・一%の倍程度ということを念頭に置いて運営しております。この点についても当然点検の中で議論になると思いますが、私自身は、何かこの変動幅を大きく拡大するとかそういうことが必要とも適当とも思っておりません。  と申しますのは、現在はまだ感染症影響経済に打撃を与えているわけでして、米国の長期金利が上昇するとしても、やはり我が国では債券市場の安定を維持してイールドカーブ全体を低位で安定させることが重要な状況であるということにはまだ変わりないと思いますので、そういった状況も踏まえつつ、しっかりとした金融緩和が持続できるように点検してまいりたいと思っております。
  140. 前原誠司

    ○前原委員 今の御答弁は、今後、アメリカの金利上昇があって、日本もそれの影響を受けるということがあったとしても、その変動幅の見直しは必要がないということをおっしゃったということでよろしいですか。
  141. 黒田東彦

    黒田参考人 変動幅拡大する必要があるとは考えておりません。
  142. 前原誠司

    ○前原委員 もう一点伺いたいと思うんですけれども、これは毎回総裁には申し上げていること、ETFです。  日経平均株価が三万円を超えたと思ったら一日で千二百円下落をする。また、今日は、午前中は五百七十一円ほどまた下がっております。ボラティリティーが極めて高くなっております。  私は、やはり株というのは、もちろん大きな世界の動きの中で変動していくものでありますけれども、それぞれの企業の言ってみれば体温計でありますよね。だから、幾らリスクプレミアムに働きかけるといっても、できる限りこういったものに、関与するということは官製相場だとみなされますから、幾ら株主の権利を行使しないといっても大きな存在であることは間違いないわけですから。  この点は、このボラティリティーを考えても、やはりしっかりと、ETFについては、分かりました、減らしますなんということはすぐ言えないのは分かっていますけれども、うまい形でこのETFについてはフェードアウトしていく。よく、これも何度も申し上げていますけれども、二〇一六年の量的緩和からイールドカーブコントロールにシフトされたというのは、本当に私はこれはなかなかうまくやられたなと思っているわけですね。  こういったことも含めて、やはりしっかりと、日銀株式市場に大きな割合を占めるということは是非見直していただきたいということをもう一度申し上げたいと思いますが、いかがですか。
  143. 黒田東彦

    黒田参考人 従来から申し上げておりますとおり、このETF買入れというのは、確かに各国の中央銀行もやっておりませんし、異例のことではありますけれども、日本のコンテクストの中では、大規模金融緩和策の一環として、やはり株式市場リスクプレミアムに働きかけることを通じて、市場の不安定な動きが企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止するということを目的としておるわけであります。  昨年春の、コロナ感染症拡大して緊急事態宣言になるというところで、我が国のみならず世界各国で株式市場が非常に大きく不安定化しました。その際、日本銀行かなり規模な買入れを行いまして、比較的短期間に株式市場の不安定な動きを収束させることができた。そういう意味では効果があった、特に、そういう不安定化したときに、リスクプレミアム拡大しているときに思い切った買入れを行うことによって不安定な動きを収束させることができたという意味では、効果があったというふうに思います。  他方で、その後は実際上のETFの買入れ額というのは非常に小さくなっておりまして、これは、やはりめり張りをつけて、マーケットの状況に応じて、リスクプレミアム拡大させないように働きかける必要があるというときに柔軟に弾力的にやるということであり、そういう考え方自体は引き続き正しいと思いますが、いずれにせよ、このETFの買入れ、あるいは国債の買入れその他、イールドカーブコントロールの下での運営の仕方、資産買入れについては、十分政策委員会議論して、点検の結果を公表したいというふうに思っております。
  144. 前原誠司

    ○前原委員 この点については、私、三度も四度も同じ観点から申し上げておりますし、ボラティリティーの高い市場を安定化させるというのが本当に日銀の役割なのかなと私は思いますよ。今おっしゃいましたけれども、それは本当に日銀の、中央銀行の役割ですか。だってほかの中央銀行はやっていないわけでしょう、今御答弁されたように。それをもってETFを買っていることの正当化ということにはならない、私はそのことは申し上げておきたいというふうに思います。  デジタル通貨も伺いたかったのですが、またの機会にさせていただいて、これで私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  145. 越智隆雄

    越智委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十七分散会