○本田
参考人 NPO法人医療制度研究会の本田と申します。
今日は、大変貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
実は、私、二十年近く
日本の
医師不足と
医療崩壊の問題を訴えてまいりまして、やはり
国民の方に
日本の
医療の現実を知ってもらわなくちゃいけないと思って、もう千五百回以上講演しているんですよ、全国で。
ところが、変わらない。今回も、世界一、欧米より比べて少ない患者数なのに、
日本の
医療が崩壊した、瓦解した。何でなんでしょうか。私は、正しい診断がついていないと思います、医者的に言えば。
なぜ
日本の
医療が崩壊したのか。そのことを今日お話ししたいと思います。
実は、私は忘れられない一日があります。二〇〇八年四月十二日。
医療現場の危機打開と再建を目指す国会
議員、超党派の国会
議員、その場面にいらした方もここにいらっしゃいますね。二〇〇八年四月十二日、私は、これで
日本の
医療崩壊がよくなるに違いない、再建されるんじゃないかと思っていました。ところが、残念ながら、今回は
医療崩壊です。
二〇一五年には「本当の
医療崩壊はこれからやってくる!」、あと、今年の二月には「
日本の
医療崩壊をくい止める
日本を安心して生きられる国にするために」と、実は
医療崩壊と書いた本を四冊出しているんですね。だけれども、止まらなかった。
今日は、なぜ止まらなかったのかということをここでお話ししたいと思います。
今日は、十六枚の図を持っていますので、私、ページと図の番号、間違えて言うかもしれません。私が言う
数字はこの図の番号でございますので、これを御覧ください。
まず、そういうふうなことで、
日本の、今回の
働き方改革含めて、
医師数その他がどうなのかということで、二番目の方で、
医師数と、あとはタスクシフトについて主にお話をしたいと思います。
それでは、まず三番目の図でございます、二ページ目ですね。
まず、
医師も余り知らないんですけれども、世界で医学部定員を決めている国というのは少ないんですよ。先生方、御存じでしょうか。
日本、カナダ、イギリス及びニュージーランドです。ということは、逆に言えば、
医師不足を引き起こしちゃいけないということですね。国が決めているんですから。
ところが、何でこんな
医師不足なのかということです。
その下の図、四番目を御覧ください。
国会
議員の先生方の中にも、
日本は医学部定員を二〇〇八年に増やしたはずだから、OECD並みに
医師が増えているはずだと思っていらっしゃる方も多いと思います。この四番目の図を御覧ください。二〇一八年で、今、世界の、OECD平均と比べて、
日本は何と十三万人不足しているんですよ。十三万人。これが
医師不足の原因なんですね。
この詳細は、またちょっと図を御覧いただきたいんですけれども、十三万人不足している
日本で二〇二三年度から医学部定員削減するということになったんですよ。
私がなぜこのようにハイテンションで話しているかということは御
理解いただけると思います。
五番目の図を御覧ください。
これは、私が十年前に毎日新聞に書いた、「私の社会保障論」という連載をしていたときに書いた記事です。十年前に既に、
日本の感染症学会は、
日本には本来は感染症専門医が三千人から四千人必要だと。ところが、千人ぐらいしかいなかったんですね、十年前。
去年の一月は千五百人ですよ、皆さん。三千人から四千人必要なのが、千五百人なんですよ。ですから、感染症指定
医療機関でも感染症専門医がいないという、びっくりするような
状況が
日本では起きているんですね。だけれども、このことがほとんどメディアで報道されていないんですよ。ベッドが足りないだけじゃないんです、専門医がいないんです。
その下、御覧ください、六番目。
これは集中
治療医。新型
コロナで重症患者さんにはECMO、人工肺の
治療をされている、皆さん御存じだと思います。そういう重症者を診る人も、
日本では集中
治療医学会によれば二千六百五十人足りないんですね。それはそうです、十三万人足りないんですから。
ところが、ここで特筆すべきは、ドイツは集中
治療医が八千人いるんですよ、皆さん。
日本は千八百五十人しかいないんです。ドイツ並みに必要だとすると、一万人足りないんですよ、
日本は。それはそうです、十三万人足りないんですから。
これは、感染症だけじゃない、集中
治療医だけじゃない、救急その他全て足りないんですね。だから、
医師の
働き方改革で守れないんですよ。守れるわけありません、十三万人足りないんですから。
ちょっとしつこいですけれども、今日はせっかくの機会ですから、ちゃんとお話ししたいと思います。
次、七番目、御覧ください。
その私の懸念が、ここに当たっています。
日本の
働き方改革に出たデータ、
日本の二十万人の
勤務医の
調査で、何と四割、八万人が過労死ライン以上なんですよ、皆さん。そのうちの一割、二万人が過労死ラインの倍超えているんです、二倍超えているんですよ。
これが
日本の現実で、二三年度から医学部定員削減するんですよ、大丈夫なんですかと私は聞きたい、誰も答えてくれないけれども。今日は、そういう
意味ではやりがいがあるんですね。やはり国会
議員の先生がこれを知らないんじゃどうしようもないわけですから、まあ、御存じだとは思いますけれども。
その下、八番目の図を御覧ください。
これはよく言う全国各地域当たりの人口当たり
医師数です。
日本は、先ほど言いましたけれども、しつこいですけれども、十三万人足りないんですが、
日本で一番多い徳島も、京都も高知もOECDの平均に達していないんです、皆さん御存じですか。一番多い県でもOECDの平均、
日本は世界一の高齢社会ですよね。OECDより多くて罰は当たらないんですよ。それより十三万人足りないんですよ。
そして、この首都三県を御覧ください、首都三県。東京はまだいいですけれども、
医師が少ないでしょう。だから首都三県が、緊急事態宣言、解除できないんですね。ちなみに、今日はスライドを用意していませんけれども、首都三県は、
医師だけじゃない、ベッド数も看護師も少ないです。一極集中でそうなっちゃったんです。だから緊急事態条項、解除できなくて、経済がどうするんだと。ベッドだけ用意しても、皆さん、ベッドは自動的に
治療してくれないんですよ。
医師か看護師がいなければ無理なんです。そうですよね。
ちょっと妙なテンションになって申し訳ありません。せっかくの国会審議が、申し訳ありません。
九番目、御覧ください。
ところが、
日本は、済みません、前の八番目で、
日本の
医師数がOECD並みに要るとすると、四十六万人ぐらい必要なんですね。よろしいですか。
ところが、次の図を御覧ください。
厚労省の
医療従事者の需給
検討会ですと、OECD並みに今要るとすると四十六万人なのに、不思議なことに、三十六万から三十七万人で需給が満たすということになっているんですよ。これはおかしいでしょう。四十六万人なのに、三十六から三十七万人。
何でか。それは十番目、御覧ください。
済みません。ちょっと今日は真面目にやる予定だったんですけれども、いつも一般の方を相手に話しているものですから、本当はもっと駄じゃれを入れたりして楽しくやっているんですけれども、ちょっと今日はかなり真面目にやっています。
十番目、御覧ください。
十番目、これは私、びっくりしたんですけれども、これは世界の
医師数のデータです。一番下の赤い線、
日本の人口当たり
医師数。上の赤い線、加重平均、世界の国々の。その上に一つ星がありますね、横に赤い線は入っていませんけれども、これは単純平均です。OECDはずっと単純平均を使ってきたんです。
単純平均というのは、その脇にちょっと解説が書いてありますけれども、各国の人口当たり
医師数を足して、その国の数で割るのが単純ね。加重平均というのは、世界の国の人口と世界の国の
医師数で出すんですよ。
医療体制が違うところでそんな出し方をして
意味があると思いますか、皆さん。加重平均。
だから、私はこんなのはおかしいと、講演会ではオレンジジュース平均と言っているんですけれども。いいですね、済みません。やはり駄目でした。言わない方がよかった。加重平均。
十一番目、御覧ください。
十一番目、これが今日の肝です、スライド。十一番目のスライドの上、これは世界の人口当たり
医師数。よろしいですか。OECD、
日本は低いです、びりの方ですね。その人口当たり
医師数の伸びを見てください。これもびりでしょう、
日本。その下、この十一番目の下の図が今日私が一番強調したいところですよ。これは世界の人口当たり医学部卒業生数、世界最低。そして、右を見てください、伸びていないでしょう。
一年、ある年のOECDの数だけ見て、十年後にそこに追いつくかといっても
意味ないでしょう、世界は増やしているんだから。
医療が進歩すれば医者は必要なんですよ、皆さん。だから、世界でも医学部卒業生数が増えていない
日本で二三年度から医学部定員削減するんですよ。それで
医師の
働き方なんか、できるわけないでしょう。
そして、十二番目。
「
医師不足を放置すると?」、これが私、長年訴えたいことです。まず、1感染症や大災害時の
医療崩壊、そして経済崩壊。皆さん、今回、
医療が崩壊すると経済が崩壊するということはもう分かったわけですね。
医療は命の安全保障だけじゃなくて、経済の安全保障でもあるんです。ここをちゃんとしておかないと、国の安全保障を考えるんだったら
医療もちゃんとしないと、駄目よ、駄目駄目というやつなんです。
済みません。だんだん普通の調子が出てまいりました。申し訳ありません、ちょっと真面目にやります。
十三番目。
じゃ、どうしたらいいのだ。タスクシフトをしっかりする。これはちょっと時間が、もうそろそろ時間があれですからあれですけれども、フィジシャンアシスタントとか、この上の十三番目は、アメリカではいろいろな職種がいるということです、
日本と違って。
十四番目を御覧ください。
私はフィジシャンアシスタント導入を訴えているんですけれども、この十四番目の下のグラフを御覧ください。アメリカでは、
日本にいないような、
医師と一緒に働くようなフィジシャンアシスタントがいて、何とこの十年で八万人から十二万人になっています。今、
日本はタスクシフトをいろいろな多職種とか特定看護師さんでお願いしようとしているけれども、皆さん、
日本は看護師さんも少ないんですから、その少ない看護師さんにこの多職種連携をやるのは、無理よ、無理です。
十五番目、御覧ください。
これは、そのタスクシフトでどんなことをやっているか。
最後です。
この最後のスライドが、是非御覧いただきたい。これはOECDの
医師数ですね。ここに星印で、今言ったフィジシャンアシスタントを導入している国を並べておきました。ドイツ、オーストラリア、オランダ、ニュージーランド、イスラエル、アイルランド、イギリス、カナダ、アメリカ。
ドイツは、OECDの中で、G7で一番
医師数が多い国が、十年前にフィジシャンアシスタントを導入しています。
日本はまだ導入していません。これで、医学部定員削減して実効性あるタスクシフトの人数を増やさなかったら駄目でしょう。
本当に皆さん、なぜ加重平均を使って、
医師数を、
医師不足を矮小化しているのか、何の目的なのか、是非皆さん検証してほしい。
日本の一番の問題は、問題が起きたときにしっかり検証しないからですよ。もう一回、何回でも同じ過ちを繰り返すんですね。
ということで、今日も私も講演の駄じゃれの過ちを繰り返してしまいましたけれども、取りあえずこれで終わります。どうもありがとうございました。(拍手)