○鈴木
参考人 長崎大学の鈴木でございます。
今日は、お呼びいただきまして、ありがとうございます。
私からまず最初に、二点お伝えしたいことがあります。
最初に、まず既に
黒川先生の方から話がありましたが、十年
たちましたが、
事故は終わっていないということであります。第二点は、この
委員会の
先生方に
是非お願いしたいんですが、脱原発及び
原子力推進という立場を超えて
是非超党派で取り組んでいただきたい、それだけの問題がいっぱいあるということでございます。
では、スライドを
お願いいたします。
既に私も三回ぐらいこの
会議に呼んでいただいて、脱原発、推進にかかわらず、重要な課題として幾つか、使用済燃料、高レベル廃棄物処分の問題、核燃料サイクル、核テロリズム、規制の
在り方、
国民の信頼回復といった問題についてお話しさせていただきました。
今日は、特に廃止措置と復興の体制改革ということでお話しさせていただきたいと思います。
ポイントは
三つですね。
一つは、廃止措置を今東京電力が当然
責任を持ってやっていくんですが、やはり資金的にも
技術的にも東京電力では難しいということで、
是非、専門の廃止措置機関というのを検討していただきたい。
二番目は、かかる費用、復興と廃止措置にかかる費用についても、先ほど
橘川先生からもありましたが、今のままでは難しい、
国民負担が増えていくということで、これも新しい基金構想というのを
お願いしたいと思います。
最後に、この全体の
プロセスを統合して、廃止措置と復興は非常に密接に関連しているんですが、それらを統合して客観的に評価する
委員会というのをつくっていただきたいというのが今日の私のお話です。
次、
お願いいたします。
このスライドは、私が
原子力委員会にいたときに、
事故直後の廃止措置の中長期ロードマップを作る専門部会の
報告書の中で
原子力委員会が作った文書でございます。
ちょっと読ませていただきますと、この問題は政府が
責任を有するということをはっきり書いてあります。それから、国内外の知見を効果的に活用して行うこと。それから、
透明性の確保。三番目が大事ですね。これらを評価、監査し、適宜に改善すべき点などを政府に
提言する第三者機関、しかも海外の専門家を含む、を設置すべきであるという
提言をさせていただきました。最後に、これも大事なんですが、当時どのような体制にすれば一番いいのかという
議論がありましたが、一応、
責任があるのは東京電力であるということで、民間の東京電力を中心に行うことにしたんですが、やはり、将来、専任の廃止措置機関を設置することも含めて、絶えず新しい、最適な運営体制の確立を政府に
お願いしたいというのを
原子力委員会として
提言していただきましたが、この第三者
委員会も、体制の見直しについても
議論が進んでいないというのが現状だと思います。
次、
お願いいたします。
今、一体、現在の体制はどうなっているのかというのをいろいろ探したんですが、なかなかはっきりした図がなくて、これは私が作ったんですけれ
ども、一目で見ていただいて分かりますように、まず非常に複雑で、司令塔は誰なんだと。一応、東京電力のホールディングカンパニーと、その下にある
福島第一
廃炉推進カンパニーが中心になってはいるんですが、その隣に、政府が幾つもの
委員会をつくって
議論されている。こういう状態であります。
先ほどお話がありました
処理水については、右の方に特別の
委員会があるんですが、ここは政府が
意思決定を行うということになっています。これは安倍首相のオリンピック招致
委員会のところでの発言が効いておりますが。
いずれにしても、私が一番、まずこれを見て、司令塔がはっきりしない。
もう
一つ、
世界の英知を集める体制になっているかということなんですが、第一
廃炉推進カンパニーに国際エキスパートグループというのがあります。これは実は、元々、左にあります
技術研究組合の国際
廃炉研究開発機構に属していましたが、
廃炉カンパニーができてそっちに移ったんですが、ウェブ
サイトを見ましたが、メンバーが分かりません。どういうレポートを出しているのか見ましたが、出ていません。
透明性が、はっきり分かりません。
しかも、この国際
廃炉研究開発機構のメンバーを見ますと、国際という名前はついていますが、メンバー企業は全部
日本の企業です、十八社、ここに書かれていますけれ
ども。
したがって、私は、この
廃炉問題というのは、これまでにない、非常に歴史的にも前例のない難しい作業で、
世界の英知を集めることが大事だということで、それを
是非もっと実現していただきたいと思います。
次、
お願いいたします。
今、中心になっている東京電力については、先ほど
橘川先生からもありましたが、信頼が揺らいでいる。私が最も心配している核テロリズムについて起き
たこの事件は、大変深刻な事件であります。これは国際的に見ても、核セキュリティーの原点ともいうべき対策が取られていない。当然、
規制委員会が厳しい措置を発しましたが、同じ東京電力が廃止措置をやっているということについて、私は非常に懸念を持っております。このような防護措置義務違反を起こすような東京電力に任せておいていいのかというのが、私の懸念であります。
次、
お願いいたします。
これは最近行われました世論
調査をちょっとまとめてみたんですが、先ほどお話がありましたが、
処理水の海洋放出あるいは
廃炉の進み方、政府の
事故対応、それから原発再稼働、このいろいろな問題について、ほとんど、政府の動向に対する反対
意見の方が多い。これが現状でありまして、こういう状況で、
福島の廃止措置及び復興をそのままでいいのかというのが私のポイントであります。
次、
お願いいたします。
それで、
技術的な問題で申しますと、いろいろあるんですが、私、今日申し上げたいのは、実は、
事故直後のロードマップを
議論しているときに、一体、最終の状態、エンドステートと言われていますが、更地にするのか、それはできるのか、正直全く分からないということで、今、政府のロードマップを見ましても、曖昧になっています。確かに、デブリが取り出せるかどうか分からないということなんですが、とにかく、一応、原則としては、全部取り出して最終的には更地にしようという努力目標はありますが、よく分からない。
最近、去年の暮れですが、
原子力学会が中間報告で出したレポートがあります。これはすばらしいレポートですので
是非読んでいただきたいんですが、初めて専門家が公式に、最終状態についてどのような
選択肢があるかということを
議論いたしました。
大事なことは、更地にできなかった場合、やりたいと思ってもできなかった場合どうするかというときに、
一つの
選択肢として、チェルノブイリのような石棺にする、あるいは、TMIがそうですけれ
ども、しばらく放置して、TMIは、スリーマイル島はもう使用済燃料を取り出していますけれ
ども、
廃炉をするのをしばらくおいておいて、安全に保管してからやるという、この
選択肢によって廃棄物の量が大きく変わってきます。
この放射性廃棄物の量は、この
原子力学会の
資料によりますと、通常の原発
廃炉の十倍以上になると。これでは大変なコストにもなりますし、作業も大変だということで、この最終状態についての
議論を始める必要がある。そのためには、地元の
方々との
意見交換、ステークホルダーによる討議
機会の整備というのを
原子力学会が
提言されていますので、
是非読んでいただきたいと思います。
次、
お願いいたします。
このようなことを考えまして、私としては、
事故を起こした東京電力から独立させて、新しい信頼される廃止措置機関というのをつくることを検討していただきたい。
現場の作業員の
方々に対して、私は、非常に高い敬意と感謝の気持ちでいっぱいであります。非常にリスクを冒して作業をされております。そういった
方々のモラルを向上させる意味でも、東京電力の帽子ではなくて、新しい廃止措置機関の帽子で頑張っていただきたい。それから、新しい
技術者を雇う意味でも、東京電力ではなくて新しい廃止措置機関ということで、新しい
技術者をどんどん集めていくということが大事ではないか。
それから、
透明性、信頼性を高める意味でも、今の
組織ではなかなか難しい。
一つモデルとしては、イギリスの
原子力廃止措置機関という、これは国の機関でありますが、当時もこの
議論が少し行われました。
でも、なかなか、国の方が廃止措置の
責任を持つということに対して抵抗がありました。私としては、
是非この廃止措置機関を国が
責任を持って行えるような形にしていただきたい。
それから、信頼関係の確保という意味でも、こういう機関にすることが大事ではないかと思います。
次、
お願いいたします。
次に、資金の問題なんですが、これは現在の資金確保の絵なんですけれ
ども、この原賠・
廃炉機構が、東京電力、右の赤いところですね、
原子力事業者にお金を、資金を交付して、これは、借金ではなくて、資金を出して、負担金という形で返しているということなんですが、この仕組みで本当にうまくいくのかどうか。これもひとつ複雑で、一般の方になかなか説明が難しいんですが。
次、
お願いいたします。
これは、二〇一五年の十二月に東電の一F問題
委員会というところが出した
報告書の中にある図なんですが、二十二兆円という数値を、そのとき、それまでの十一兆円から二倍に増えたわけですけれ
ども、この中身を見ていただきますと、東京電力が十六兆円、それから、ほかの電力が四兆円、
国民負担が二兆円になっています。その
前提は、東京電力が毎回年間〇・五兆円の収益を上げる、五千億円ですね、これが本当に可能なのか。これは
橘川先生の方がお詳しいと思うんですが、東京電力が毎年五千億はなかなか難しい。多分、今三千億ぐらいだと思うんですけれ
ども、これを実現するのは大変難しい。しかもこれは、
前提、賠償は四兆円となっていますが、もう賠償は八兆円か九兆円になっています。だから、二十二兆円で終わるかどうかも分からない。
次、
お願いいたします。
これは、私が一緒になって
報告書を出させていただいた
日本経済研究
センターの
廃炉措置のコストの推定値なんですけれ
ども、汚染水、
処理水を海洋放出しないで
トリチウムを分離した場合が一番高い、これは分離コストが非常に高い。
これは、
日本で「ふげん」という研究炉がありましたが、そこで、重水炉なので、
トリチウムの分離
技術の試験をやっておりました。そのときのコストを基につくった数値なので、現実にここまでかかるかどうかは分かりませんが、
トリチウムの分離
技術が非常に高いということで、これだけ高い金額になっております。
それから、政府の二十二兆円との違いは、政府の二十二兆円の中には、放射性廃棄物の最終処分のコストが入っておりません。それを加えますと、何もしないでも、汚染水を海洋放出した場合でも、四十兆ぐらいかかる。
それから、先ほどのエンドステートの話ですが、すぐに
廃炉をしないで、四十年、五十年おいておいてからやった場合、こうすると三十五兆円に下がる、こういうことですね。
次、
お願いいたします。
スリーマイル島のときの費用をどう調達したか。
これは、金額的にまだ非常に少ない、一千億ぐらいなので少ないんですが、当時の
議論を見ますと、電力会社が基本的には負担する。廃止措置基金というのは、これは
日本でもありますけれ
ども、電気料金で回収する仕組みになっているんですが、
事故を起こしたということで、足りない分を資金調達しているわけですね。
右手の図にありますように、電力会社以外に、保険金とか、それから海外からもお金を集めているんですね。
日本も、このGENDという仕組みの中に、電力十社、重電三社、原研などが、金額的には少ないんですけれ
ども、資金を出しているということであります。
今も、実はその推定費用、不足しているということです。いまだに
議論が続いています。それから、
アメリカの場合は、電力会社の販売ということで、電力会社がTMIを、発電所を売るということもやっておりますので、なかなか難しい状況にありますが、今のところ、二〇三七年までかかるということになっております。
次、
お願いいたします。
それから、チェルノブイリの
事故の場合は、旧ソ連、ウクライナ共に資金が足りないということで、欧州復興開発銀行が中心になって、
責任を持って資金調達及び
廃炉の仕組みを考えるということで、二つ基金ができております。
一つは、
原子力安全基金。ここに、これはG7がつくったんですけれ
ども、どういう国が協力しているか、書かれております。次に、最近シェルターを造ったわけですが、このシェルターを造るときにも、シェルター基金というのをつくって、これは全部、いろいろな国がやはり参画しております。
これらを見て分かりますように、廃止措置というのは大変お金がかかりますので、国際協力でやるという仕組みを考えてはどうでしょうかというのが私の提案です。
では次、
お願いいたします。
したがって、廃止措置、今、東京電力の会計の中に組み込まれていますが、これを切り離して、
透明性を高めた廃止措置・復興基金をつくっていただきたい。これも、管理も東電から離す、それで
透明性を高めて、資金調達も海外からの寄附も含めてやってみる、こうやって
国民の負担を最小化していきたいというふうに考えております。
次、
お願いいたします。
最後になりますが、
事故は終わっていないということなんですけれ
ども、復興については、このすばらしい法律、
皆さんが作られた、
国会で、超党派で作られた子
ども・被災者支援法、これを
是非思い出していただいて、被災者がどのような選択をしても適切に支援する。今、帰還しないという決定をした被災者には支援が打ち切られるという実態が続いています。これは、やはりあってはならないことだと思います。
それから、国の責務も書かれています。こういうことで、この子
ども・被災者支援法にのっとって、廃止措置、復興に取り組んでいただきたい。
最後のスライドを
お願いいたします。
全体の
プロセスを誰が評価するのか、これはまさに、私は
国会の役割が大きいと思います。
是非、独立した第三者機関、廃止措置の復興評価
委員会というのを
国会が検討していただいて、この信頼のある
プロセスにしていただきたいというのが私の
お願いであります。
以上でございます。ありがとうございました。(
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