○舩後靖彦君 代読いたします。
ありがとうございます。
大臣も、聾者にとっての手話の大切さについて御
理解のある
答弁をいただき、感謝申し上げます。
聾者にとって手話で会話をすることが権利であることを確認した上で、ある事例を紹介したく存じます。
ある聾の
学生が
教育実習に起きた際に起きた実例です。その
学生、Aさんとします。Aさんは生まれつき耳が聞こえませんでした。両親も弟も同様でした。手話で会話をするのが当たり前という
環境で育ちました。中学部までは聾
学校に通いました。声を出す発話訓練を受けたこともありましたが、常に手話で会話をするのが一番ということでした。高校は、聾
学校ではなく、いわゆる普通高校に進学しました。そこでも声を出すことは強要されず、筆談などを活用しながら、声を出さないことを尊重した
授業や
指導が行われました。
大学では、手話通訳などの合理的配慮を得て講義を受けることができました。
大学四年生のとき、教員免許を取るため、ある聾
学校に
教育実習に行くことが決まりました。実習前、Aさんは、もちろん手話で
授業をしたい意思を伝えていました。その初日、職員室での自己紹介の場面です。Aさんはまずマイクを渡されましたが、それを断り、手話で挨拶をしました。すると、挨拶後、実習の
指導を
担当していた教員に呼び出され、声を出さずに手話だけで話をしたことをとがめられたそうです。Aさんは驚きましたが、声を出さずに手話で話し、
授業をしたいと伝えました。すると、声なしの手話は教える立場ではおかしいというようなことを言われたそうです。
もしかしたら、教師の意図は、聞こえない人に口の動きを読み取らせる口話を
子供たちに学ばせたかったからかもしれません。あるいは、この教師が手話が不得意なため、実習
指導ができないことを不安に感じたのかもしれません。しかし、そうだとしても、Aさんが望んでいない以上、声を出すことを強いるべきではないと考えます。
Aさんは、それまでの人生で手話を否定され、声を出すことを強く求められる経験がありませんでした。
自分を否定される思いだった、悔しくがっかりしたと振り返ります。そのときは、
大学の先生と相談しますと返すのが精いっぱいだったそうです。Aさんは、
大学の先生にも相談した上で、実習先の聾
学校に改めて手話で
授業をしたいと申し入れました。Aさんいわく、
担当の教員はとても嫌そうな表情をしたそうです。しかし、Aさんは
大学の先生の後押しもあり、手話での実習を進めました。
実習でAさんは、手話以外にも、生徒の関心を向けるため、
自分の手をたたいて音を出したり、生徒の肩に触れたり、ビデオを使うなどの
工夫をして
授業を行いました。Aさんが声を出さなくても生徒たちは良い反応をしてくれたそうです。最初は目も合わせてくれなかった生徒も、終盤にはコミュニケーションを図れたと実感することもできたそうです。
最後まで
理解をしてくれなかったのは一部の教員でした。実習終盤にも、声がねというようなことを言われたそうです。Aさんは、
理解のない教員の態度に、実習中、涙を流すこともあったそうです。
こうしたケースはAさんだけではありません。私どもの事務所には、少なくとも数件、同様の相談が寄せられました。一部の内容を資料二にまとめています。
もちろん、
聴覚障害のある方の中には、声を出してコミュニケーションを取る方もおられますし、それを否定するわけでは決してありません。しかし、Aさんのように、声を出さず、手話をコミュニケーション手段にしている人に対し、声を出すことを強制するのは人権侵害だと考えます。
大臣も、気管切開をしている私に対し、声を出せとはおっしゃらないと存じます。手話を母語にしている聾者に対して声を出すことを強く求めるのは人権侵害だと感じませんでしょうか。この事例を踏まえ、
大臣の御
見解を
お願いします。