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2020-11-26 第203回国会 参議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和二年十一月二十六日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十一月二十五日     辞任         補欠選任      林  芳正君     加田 裕之君      小沼  巧君     宮沢 由佳君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         上月 良祐君     理 事                 堂故  茂君                 藤木 眞也君                 山田 修路君                 田名部匡代君                 紙  智子君     委 員                 加田 裕之君                 高橋 克法君                 野村 哲郎君                 舞立 昇治君                 宮崎 雅夫君                 山田 俊男君                 郡司  彰君                 宮沢 由佳君                 森 ゆうこ君                 河野 義博君                 熊野 正士君                 高橋 光男君                 石井 苗子君                 舟山 康江君                 須藤 元気君    国務大臣        農林水産大臣   野上浩太郎君    副大臣        農林水産大臣  宮内 秀樹君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       熊野 正士君    事務局側        常任委員会専門        員        笹口 裕二君    政府参考人        農林水産省食料        産業局長     太田 豊彦君        農林水産省政策        統括官      天羽  隆君        農林水産省農林        水産技術会議事        務局長      菱沼 義久君    参考人        有限会社矢祭園        芸代表取締役        全国新品種育成        者の会前会長   金澤 美浩君        公益社団法人全        国愛農会会長        家族農林漁業プ        ラットフォーム        ・ジャパン代表  村上 真平君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○種苗法の一部を改正する法律案(第二百一回国  会内閣提出、第二百三回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 上月良祐

    委員長上月良祐君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、小沼巧さん及び林芳正さんが委員を辞任され、その補欠として宮沢由佳さん及び加田裕之さんが選任されました。     ─────────────
  3. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  種苗法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、農林水産省食料産業局長太田豊彦さん外二名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございます。自由民主党の山田修路です。短い時間ですので、早速質問に入りたいと思います。  今回の種苗法改正は、我が国優良品種海外流出する、このことを防ごうとすることを主な内容としております。  政府では、十年後には農産物などの輸出を現在の五倍以上の五兆円とするという目標を作っております。このことは、我が国農業発展あるいは農家方々にとっても、この輸出の拡大ということですけれども、大変重要な点であります。  日本農産物などは品質の良さがセールスポイントになっています。その点で、品質の良さを発揮していくためには、国内で優良な種苗を育成していくことが不可欠だと思っております。  輸出促進観点から、あるいはそのことによって、農業発展という観点から、種苗法改正重要性について改めて野上大臣にお伺いしたいと思います。
  7. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) おはようございます。よろしくお願いいたします。  今お話ありましたとおり、優良な植物品種海外流出をしまして輸出機会が失われましたのは、現在の種苗法では、国内における権利保護、これを想定しておりまして、登録品種であっても海外への持ち出しは止めることができないこと、また、しっかり守るべき知的財産管理がこれまで緩過ぎたことによるものと考えております。  こうした反省に立ちまして、今回種苗法改正をしまして、登録品種については、出願時に国内利用限定利用条件を付せば海外持ち出しを制限できること、また登録品種自家増殖については、育成者権者許諾に基づき行うことといった措置を講ずるものであります。  この改正は、日本の強みである植物品種流出を防止するとともに、新品種保護を充実させることで、今先生から御指摘のありました品種開発のインセンティブを高めて、その優良な品種開発を促す、また日本輸出競争力を確保する観点からも大切な改正であると考えております。
  8. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございます。是非輸出促進については様々な対策が必要ですけれども、この種苗法改正も大きな力になると思っております。  さて、そこで、この種苗法改正については、主要農作物種子法改正と絡めていろんな議論がなされております。二〇一八年の四月をもって主要農作物種子法廃止されたわけですけれども、この法案審議に当たっても様々な議論がありました。  廃止後二年半が経過をしておりますけれども、生産現場での混乱といった事態が生じていないのかどうか。また、特に心配をされました都道府県における種子生産体制がどうなっているのか、宮内大臣にお伺いしたいと思います。
  9. 宮内秀樹

    ○副大臣宮内秀樹君) お答えをいたしたいと思います。  主要農産物種子法廃止は、戦後不足した食料の増産を図るために、稲、麦、大豆の原種及び原原種生産等に関する事務を全ての都道府県に一律に義務付けていたことを止めまして、官民の総力を挙げて多様なニーズに応じた種子供給体制を構築するために実施したものでございます。  一方、都道府県の中には、新たに地域独自性を反映した官民の連携や種子供給体制の整備、また条例制定の動きが出てきているところでありまして、地域農業に必要な対応を自ら判断して講じているというふうに考えております。  種子法廃止後も、各県が必要とする種子供給業務に要する財政需要につきましては引き続き地方交付税措置が講じられておりまして、農林水産省都道府県担当部局から聞き取ったところによりますと、各県とも種子法廃止後も混乱なく種子供給に係る事務を継続しており、令和二年度も種子法廃止前とおおむね同程度予算が計上されていると承知しておるところでございます。  このように、生産現場混乱が生じているという状況にはなくて、都道府県におきまして、地域農業の特徴を踏まえまして種子供給体制がしっかりと確保されているものと認識をいたしております。  農林水産省といたしまして、引き続き、良質な種子安定供給が図られますよう、都道府県における業務実施状況につきましてよく注視をしてまいりたいというふうに考えております。
  10. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございました。  主要農作物種子法改正の際に私も大変心配をしたのが、自治体が本当に今までどおりの業務をやってくれるのかどうかということであります。この点については、今後もしっかりまた農水省としてチェックをしていただきたいというふうに思います。  そして、次の質問に移りますけれども、これ最近新聞等でも報じられておりましたけれども、日本開発されたいろんな品種、私の地元の石川県でいえばブドウルビーロマンというのがありますし、ブドウのシャインマスカットですとか、あるいはイチゴの紅ほっぺなど、我が国優良品種海外でネットで販売されているという報道がありました。  このような我が国開発された種苗海外での流出、これは大変重要な問題だと思いますが、農水省としてしっかりこの実態把握すべきではないかというふうに思います。そしてまた、このような状況、今どんどん海外流出をしているということですが、現在の法制度においてどういった対応ができるのか、お伺いしたいと思います。熊野政務官お願いします。
  11. 熊野正士

    大臣政務官熊野正士君) お答えいたします。  当省の補助事業による調査によりまして、中国韓国でインターネット販売されている果樹などの種苗の中に、日本品種登録されている名称と同じものが三十六品種あることが分かりました。この調査結果からも、海外において我が国品種は人気が高く、流出リスクが高いことが明らかとなりました。  一方で、現行法では、正規に購入した登録品種海外への持ち出しは合法であること、自家増殖許諾が不要であるため増殖実態把握できないことから、海外流出実態把握することは相当困難であります。  このような登録品種海外流出に対し、現行法制度の下では、海外品種登録されれば、その国の制度に基づき、当該国での流通、販売の差止め等措置をとることができるほか、海外での品種登録の有無にかかわらず、海外増殖された種苗やその収穫物我が国に逆輸入される場合には、輸入の差止め措置をとることができますが、正規に購入した登録品種海外への持ち出しは合法であり、止めることはできません。  今般の改正法案では、国内利用限定利用条件を付せば海外への持ち出しを制限できることとしており、さきに述べたような我が国品種登録されている品種出願中の品種についても、国内利用限定利用条件を付すことができることとしていますので、更なる海外流出を防ぐことが可能となります。
  12. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございます。  海外流出現行法では十分対応できないという御説明でありました。改正法もありますし、それから、後ほど時間があったらお聞きしますが、外国での登録の問題もありますけれども、しっかり海外への流出状況というのを農水省としても今後しっかり把握をしていって、対応を検討していただきたいというふうに思います。  次に、今回の改正ですけれども、自家増殖について様々な議論があります。育成者権自家増殖に及ぼすこととした理由をお伺いしたいと思います。  また、特に心配をされている方々有機農業をやっておられる方々あるいは自然農法に取り組んでおられる方々、こういった方々種苗法登録品種でない在来品種とか固定種を自家採種していくということについては特に問題がないわけですけれども、仮に登録品種を自家採種してそれを使っていこうというような場合に、こういった方々も含めてどういう方法を行えばいいのか、これについてお伺いしたいと思います。
  13. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えいたします。  山形県の紅秀峰種苗国内農業者によって増殖をされまして、オーストラリアに流出し、同国で産地化され、逆に我が国輸出されてしまったという事例が起きておりまして、これまで管理が緩過ぎたと考えております。  現行法でも、自家増殖をされました登録品種種苗海外に持ち出すことは、育成者権侵害にはなりますけれども、登録品種増殖実態把握、あるいは疑わしい増殖差止め、それから刑事罰の適用や損害賠償に必要な故意や過失の証明、こういったことが困難でありますので、海外持ち出しの抑制が困難となっております。  また、法改正によりまして、育成者権者海外持ち出し不可条件を付した場合に、正規に販売された種苗持ち出しができなくなる結果、農業者個人増殖種苗が狙われるということが懸念をされます。このため、登録品種自家増殖につきましては育成者権者許諾を必要とするということとしたいと考えているところでございます。  また、有機農業自然農法に取り組む農業者でありましても、ほかの農業者許諾の受け方に違いはありません。自家増殖許諾を受けるためには、各育成者権者に申請をしていただくという必要がありますけれども、委員おっしゃったように、団体等がまとめて許諾を受けるということも可能ということになっておりますし、また、個人許諾を受ける場合でも簡単に手続ができるように、許諾契約ひな形を示してまいりたいと考えております。
  14. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございます。  有機農業をやっておられる方、自然農法に取り組んでおられる方、これは本当に熱意を持って取り組んでおられるわけですから、そういう方々がやはり困らないように対応していく必要があると思います。  今お話があったように、優良な種苗を守っていくということと、そういった熱心に取り組んでおられる方々が不便にならないように、これは今後もしっかりと普及なりあるいは説明なりをしていっていただきたいというふうに思います。  それから、もう一つの問題ですけれども、一般に、農業者方々負担種苗法改正によって増えていくのではないかという懸念が言われております。許諾料負担、これによって農業者負担はどの程度増えるのかということについてお伺いしたいと思います。  私自身はそんなに大きな負担ではないのではないかと思っておりますが、例えば平均的な農家あるいは規模の大きな農家、こういった方々が例えば年間でどのくらい、まあ一律には言えないかもしれませんが、平均的に見てこのくらいの負担になるのではないか、そういったことをお示しいただければと思います。
  15. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) まず、一般品種を栽培されている農業者、あるいは登録品種であっても種子を購入して栽培されている農業者につきましては、経営規模にかかわらず、許諾料負担法改正によって増えることはございません。  他方登録品種自家増殖せず種苗作付けごとに購入している農業者は、種苗代の一部の許諾料相当分負担をしているところでございますけれども、法改正後に登録品種自家増殖する農業者は、それと同等の許諾料負担するということになると想定をされております。  この許諾料水準につきましては育成者権者が決定するものでございまして、政府が見解を示すことはできませんけれども、農研機構都道府県につきましては普及を目的として品種開発しております。このため、営農支障となるような高額の許諾料農業者から徴収するということは通常はありません。民間種苗会社につきましても、農研機構都道府県許諾料水準を見ておりますので、著しく高額な許諾料となることは考えにくいというふうに考えております。  仮に、現在、公的機関種苗増殖業者やJAに課している許諾料と同額の自家増殖許諾料になるという、こういった前提を置きまして、面積当たり年間許諾料試算をいたしますと、水稲を十ヘクタール栽培する場合で年間二百六十円から千六百円程度露地ブドウを一ヘクタール栽培する場合で一年当たり三千円から三千九百円程度許諾料となります。
  16. 山田修路

    山田修路君 今、水稲十ヘクタールで高いところで千六百円、年間というお話がありました。これはあくまで試算ですけれども、それほど大きな負担ではないのではないか、この十ヘクタールの規模というのは相当大きな農家でありますので、そういったことが負担になりますけれども、一方で、我が国優良品種を守っていくということも大事なので、やはり多少の負担お願いをしていかなくちゃいけないんじゃないかと思っております。  それから、先ほど熊野政務官からお答えをいただきました、今回の改正によって海外流出をしていくということを防ぐという趣旨お話がありましたが、一方で、やはり網の目をくぐってというんでしょうか、持ち出されていくということが今後ともあるのではないかということもやはり懸念があるわけであります。  実際にその網の目をくぐって持ち出されるものについては、やはり海外のそれぞれの国の法律制度種苗登録を進めていく必要があるということでありますが、現在、日本種苗外国での種苗登録はどのくらいあるのか、私は余り多くないというふうに理解をしておりますけれども、仮に種苗登録をしようとした場合に障害がどんなものがあるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  17. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) 農林水産省におきましては、平成二十八年度の補正予算から海外における品種登録支援をしてきております。令和二年九月末現在で二百九十五品種支援をいたしまして、登録済み品種が八十五品種となっております。また、外国出願公表ということをされまして、仮保護を受けている品種がこのほかに百九十七品種ございます。  これまで、海外での品種登録が進んでいない原因といたしましては、我が国のほとんどの育成者権者国内や県内での普及を想定しておりまして、海外への展開を考えてこなかったということ、それから、育成者権者海外への流出実態あるいは流出リスクなどについての十分な認識がなく、知的財産として保護が必要であると、こういった認識が低い場合があるのではないかと考えられること、それから、外国への出願に係る手続などの情報が十分でなかったこと、こういった要因があってこのような現状になっていると認識をしております。
  18. 山田修路

    山田修路君 育成者権者の方が外国で使われるというのは想定していなかったケースもあるということですが、今のように、日本品種、世界でも評価をされることになってきますと、そういうことも十分念頭に置いて対応していく必要があると思います。  そういう意味で、農林水産省としても、この我が国優良品種を守るために、もっと積極的に海外での種苗登録を推進するということが大事じゃないかと思いますけれども、局長にお伺いします。
  19. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えいたします。  日本品種海外流出を防止するためには、種苗法改正をいたしまして、海外持ち出しを制限するとともに、これと併せて、意図しない流出が生じた場合には育成者権を行使できるように海外において品種登録をすることの両面から取り組むことが重要だと考えております。  令和二年の農水省補助事業調査により、先ほどの答弁にもありましたように、日本品種登録されている名称と同じものが三十六品種あるということが中国韓国で分かりましたので、日本品種流出リスクは大きいというふうに考えております。  他方、先ほども申しましたように、海外での登録品種が進んでいないという状況にありますので、農林水産省といたしましては、このような流出リスク情報国内育成者権者と共有をしながら、我が国の優良な品種を守るために、引き続き知的財産保護の意義の意識啓発を進めるとともに、海外での品種登録侵害対応などにつきまして支援をしてまいりたいというふうに考えております。
  20. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 時間が参っております。
  21. 山田修路

    山田修路君 はい。  ありがとうございます。時間が来ましたので、質問を終わりますけれども、不安を持っておられる方もまだたくさんおられますので、是非しっかり制度説明をしていただきたいというふうに思います。  以上です。
  22. 田名部匡代

    田名部匡代君 立憲民主党田名部匡代でございます。久しぶりに農林水産委員会質問させていただきます。  まずは、野上大臣、また副大臣政務官、御就任おめでとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  今日は四十分の質問時間をいただきました。この種苗法に関しては、たくさんの不安の声、また御懸念の声をいただいておりますので、その皆さんの声を代弁するつもりで質問させていただきたいと思っています。  まず、立憲民主党としては、今回のこの種苗法改正案については党として反対することを決定いたしました。  正直、立憲民主党の中にも様々な意見があったことは事実であります。特に、育成者である公的機関であるとか、民間企業もそうですし、特に、私は青森県ですから、果樹農家リンゴ農家たくさん、サクランボもありますけど、いるんですけれども、果樹なんかは個人育成者が多数おられます。まさにそうした知的財産、その知的財産権を守るということは、私自身も非常に重要だと思っていますし、またそのことが地域振興であったり、地域のブランドを守ることであったり、農家の所得につながっている、こういうことも是非国民皆さんにも理解をしていただかなければならないのではないかなと思っています。  加えて、海外流出を防ぐということも非常に大事だと思っていますが、しかしながら、ここに至って、先ほど申し上げたように、大変多くの不安の声があるということで、立憲民主党としては、その声を受けて衆議院農水委員会修正案提出させていただきました。国民民主党皆さんにも御賛同いただきましたけれども、残念ながら否決ということになりましたし、山田先生からもいろいろ御質問ありましたけれども、農家生産コストはどうなるのか、許諾料の問題はどうなるのか、また営農支障は出ないのかなど、いろんなその不安が残ったままとなっていて、まさにこのきちんとした理解を求める努力、また的確な説明、こういったことが十分尽くされたとは言えない状況にあるというふうに思っておりまして、そういう中で拙速な審議というものは関係者皆さんの不安が残ったままとなる、こういったことを含めて反対ということであります。  まず、大臣、こうした多くの反対の声を直接お聞きになったり、インターネットにも大分その声というのは出ているわけですけれども、こういった声をお聞きになったことというのはありますか。なぜ、これだけここに至っても多くの不安が残っているというふうにお感じになっていますでしょうか。
  23. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) やはり今御指摘のありました多くの不安の声ですとか、反対理由、様々あろうかと思いますが、この自家増殖に対する懸念等々も非常に大きいというふうに思います。一般品種も含めてこの自家増殖が一律で禁止されてしまうのではないかという話ですとか、あるいはその高額な許諾料を課されてしまうのではないかと、こういう様々な声があるということを承知をいたしております。  農林水産省としましても、昨年三月に検討会を立ち上げまして、全農、全中に加えまして、農業者二名に委員として御参加をいただきまして忌憚のない意見をいただいたほか、有機農業者や大規模農業者種苗増殖農家あるいは農業現場の事情についてヒアリングを行ってまいりまして、農業現場意見もしっかりと踏まえた上で提出をしたものであります。また、今年三月の閣議決定後にも法案説明資料ですとか、QアンドAなどの資料を公開する、あるいは、さき通常国会の閉会後も要請のあった自治体や農協、あるいは報道関係者に対しては、全ての要請に応じる形で各種説明会ですとか聞くことを行ってまいりました。  このような説明会等により、現場の不安の払拭に努めてきたところでありますが、まだそのような不安の声があるということは承知しておりますので、しっかりと今後とも運用、その趣旨等々について丁寧な説明を行ってまいりたいと考えております。
  24. 田名部匡代

    田名部匡代君 まずはそれが先だというふうに思うんですね。  本来、この種苗法は、前国会で審議入りすると言われたものがここまで先送りになってきたわけで、その意味では十分時間があった。ここに来て、私も地元の皆さんから種苗法についていろいろ御意見をお聞きしますけれども、一番多いのは分からないということなんですね。  実はこれ、アンケート調査も、平成二十七年のものですけれどもされていて、種苗法に関するアンケートでありますが、これ、四十五県の千五十五経営体の方々にアンケートを取って、回収率は六〇・五%なんですね。これ、平成二十七年のものですが、種苗法を知っているという農家さんの割合というのは五九%なんです。これ、花卉農家の方が多いんですけれど。種苗法に基づく品種登録制度を知っていたという農業者の割合は五六%、これも花卉農家が多いんですね。種苗法に基づく自家増殖制度を知っていた農業者の割合というのは四一%。  現場で実際に生産活動をされている方々でも、半分ぐらいの方しかこの法案やまた具体的な中身を御存じない。そういう中で、様々な情報がネット上も含めて飛び交い、大きな不安が起こったということなのかなと思っていて、確かに、賛成の意見も、地元でも農家さんから聞くとあるんです。  例えば、自家増殖について、リンゴ農家さんなんかは、例えば苗木が高くても、いいものができて、それで自分の収入につながるのであれば全く問題ないんですよとか、苗木から作る手間暇が掛かってしまうので、その労力があるのであれば栽培に力を入れたいという方もいらっしゃいました。また、自治体なんかの声であっても、やはり地域ブランドを守るために、今の種苗法のままでは守り切れないというような話も確かにありましたけれども、しかし、やはりこういう理解が進んでいないというのは、これだけ大事な法案だと言いながら、もっと努力をする必要があったのではないかなというふうに思っています。  衆議院でももう既に審議をされたけれども、連日私のところにも電話やファクスは届いておりまして、衆議院審議を通してもまだ理解は進まなかったということだと思います。  私としては、事実に基づかないことであるとか、現実的に考えにくい、臆測に基づいて反対をするつもりはありませんので、今日は、誤解に基づく不安というものはきちんと払拭をしていく必要があるというふうに思っていて、その中で知的財産重要性も御理解をいただき、そして理解が進むことで皆さんがおっしゃっている海外流出をみんなの力で止めていこうということにやっぱりなるわけですから。その理解が進まない中でやろうと言ったって、それはなかなか、本当のこの法案の持つ意味というのは伝わらないというふうに思っているので、その意味で、一つ一つ確認をさせていただいて、整理をし、そして、本当の問題というのは何なのか、何を改善しなきゃいけないのかということを丁寧にあぶり出していきたいなと思っています。  一番多いのは、やっぱり自家増殖原則禁止、自家増殖ができなくなるんだということに対しての反対の声というか、不安の声というのは圧倒的に多いんです。是非、ここについては、じゃ、家庭菜園はどうなのかとか、仕組みの問題も関係していると思うんですけど、是非、ちょっとここは時間掛けてもいいですので、丁寧に説明していただきたいというふうに思います。
  25. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 先生指摘のとおり、やはりこの改正案におきましては、この自家増殖が一律に禁止されてしまうのではないかと、こういった懸念の声が多いと承知しています。  しかしながら、一般品種を用いる場合には許諾は必要なく、登録品種につきましても、育成者権者許諾があれば自家増殖を行うことは可能であります。  また、育成者権種苗の趣味的な利用には及ばない。今先生の御指摘のあった家庭菜園ですとかには、自家増殖を行ったとしても、自家消費用であれば育成者権侵害にはなりません。  さらに、現在も登録品種種苗作付けごとに購入している多くの農業者は、種苗代として許諾料相当の負担をしておりますので、法改正によって新たに許諾手続ですとか許諾負担が発生するということはないということを申し上げたいと思います。
  26. 田名部匡代

    田名部匡代君 ありがとうございます。  農業をやられている専門の方ではなくて、広く国民の、消費者も含めて国民の皆さん理解をしていただきたいので、時間を掛けてもいいから丁寧な御説明お願いしますと申し上げておりまして、いつもと同じ答弁は大分国民の皆さんもネットなどを通じてお聞きになっていると思うんですね。  例えば、じゃ、家庭菜園をされている方からもファクス来るわけですよ。自分は節約するために家庭菜園でやっているんだけれども、自家増殖が禁止になったらこれは大変な家計の負担になるのではないか、こういう声もある。そういう、何というんですかね、本当にその国民の不安に寄り添った答弁をしていただきたい。もう一回お願いします。
  27. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 今先生から御指摘のあった、家庭菜園について自家増殖の対象になるんではないかと、こういう御指摘でありますが、この家庭菜園につきましては、これ趣味的な利用あるいは自家消費用であれば、これは自家増殖のこの対象にはならないということであります。
  28. 田名部匡代

    田名部匡代君 大臣大臣がとても優しくて誠実なお人柄だということは存じておりますが、是非力強く国民の皆さんに訴えてほしいんです。皆さん、大丈夫ですよと、家庭菜園されている皆さん、そこは大丈夫なんですよと、ちゃんと説明をしていただきたいんですね。是非熱い思いで答弁お願いしたいと思います。  これ、私、今回この議論をいろいろしていて、何というんですかね、強く感じるのは、やっぱり、さっき山田先生も取り上げておられましたけれども、種子法廃止にやっぱり絡んでいるんですよ。一連のこれまでの農林水産省さんの姿勢というか、規制改革推進会議、まさにそこ主導の農業政策になり、そして競争力強化、競争だ、効率だ、大規模だ、これ全て悪いとは言いませんけれども、やっぱりそっちの方に偏っていった。小規模や家族農家、大丈夫かな、自分たちは農業を続けていけるのかな、多くのそういう小さな農家皆さんも不安を感じたし、農林水産省は、民間の参入であるとか外資を入れるだとか、そっちにかじを切ったのかというような思いをされたというふうに私は思っているんですね。  やっぱりその種子法、これまではやっぱり地域の環境に適した優良品種、これを開発したものをきちんと育てて、そして普及をさせていくということを国が責任を持ってやってきたわけでありまして、ある意味、その競争力強化の下に私は責務を放棄したと、食料安全保障の観点からも大きな問題を残したというふうに思っています。  今回の知的財産を守るということとこの種子法というのは大分意味合いが違うわけなんですけれども、種苗法議論の中でも、多くはやっぱりこの種子法に関する不安がここに残っているんだなということを私たちは感じたわけでありまして、今日はこの委員会に舟山委員お見えですけれども、舟山委員と、そしてうちの徳永委員種子法復活に代わる法案を時間を掛けて準備をしていただきました。やっぱりそうした不安を払拭するためにも、今回その議員立法を一緒に議論していただきたいなと思ってきたわけですけれども、残念ながら提出はできませんでした。  種子法廃止以来、さっきも答弁にありましたけれども、全国の都道府県でそれに代わる条例をもう作られているわけですよ。それをさっき、今までと変わりませんというような答弁されたけど、国がその責務を放棄して自治体が必死で頑張っていると。  でも、やっぱりその食料安全保障、食の安定供給優良品種をやっぱり作っていって地域を守る、こういうことは国がしっかり責任を果たすべきことだと思っておりまして、せっかく準備した法案は今回出せませんでしたけれども、これはきっと与党の皆さんにも賛同をしていただけるものと思っていますので、是非、舟山委員とも連携をさせていただいて、次の国会に成立を目指していきたいなというふうに思っています。  大臣は、この種子法廃止、つまり公的機関による種子の生産や普及、こういうことを国が責任を持ってやるべきだというふうにお考えか、財政支援も法的根拠を持ってしっかりやるべきかとお考えか、種子法廃止になったことについて大臣はどのような御見解をお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
  29. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 種子法につきましては、昭和二十七年に、戦後の食料増産という目的のために、稲、麦、大豆の優良な品種の生産、普及を進めるために制定をされまして、食料増産に貢献するものでありました。  一方で、その後、米の供給不足の解消ですとか食生活の変化に伴う需要量減少等の状況の変化が起きた後も、法により都道府県に一律に種子供給を義務付けてきました結果、いわゆるブランド米の種子につきましては多くの都道府県によって力を入れて供給がされる一方で、需要が高まっている中食、外食用途に適した多収品種等の種子の供給には十分取り組めていない、あるいは民間品種が参入しにくい等の課題が発生をしておりました。  このため、種子法によりまして全ての都道府県に対し一律に義務付けるというやり方を廃止をしまして、都道府県の力に加えて民間事業者の力も生かした種子の供給体制を構築することといたしました。  そういう中で、平成三十年の廃止後も県で継続をしていただいています種子供給業務につきましては、これは農水省としても極めて重要であると認識をいたしております。  この認識につきまして申し上げさせていただきます。
  30. 田名部匡代

    田名部匡代君 私は、やっぱりこの種苗法知的財産を守るということと種子法が廃止になったというのは全然意味合いが違っていて、国が食料安全保障の観点からも責任を持って、公的機関、また都道府県、こういったところでの生産、普及というもので安定供給をする環境を守るべきだというふうに思っているんです。それが、種子法廃止になったことによって法的な国の義務もなくなったし、今も予算は同じように付いていますって言ったけれども、付いている間はいいですよ。でも、法的根拠はないわけですから、そんなものは確実、これからもずっと続けられるという約束はできないわけですよね。そういう中で、各自治体はそれぞれの努力で何とかその優良品種地域のものを守っているという状況なんです。それは問題ではないですかと。  大臣の口からなかなか種子法復活とまでは言えないにしても、やっぱりその重要性大臣認識していただいているのかなということをお聞かせをいただきたいんです。
  31. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 種子生産におけるその公的機関の役割の重要性については強く認識をいたしております。  公的品種開発等々につきましても、種子生産等々につきましても、先ほど申し上げたような認識の下でしっかりとその生産について支えてまいりたいというふうに考えております。
  32. 田名部匡代

    田名部匡代君 やっぱりこれが重要だと、守っていくべきだというんであれば、ここにおられる全ての皆さんとも協力をして、もう一回、種子法に代わるなのか種子法復活なのか、しっかりと体制を整えるべきだと思っています。  で、大臣、もう一つですね、衆議院委員会で次官通知の見直しについて触れられたようであります。  今回、私たち立憲民主党衆議院提出した修正の中にも、この事務次官通知というか競争力強化八条四号についての削除を求めることを書き込みました。まあ削除されないまでも、事務次官通知はしっかりと見直していく。まさにその知見の民間への提供ということですよね。ここに大きな不安を持っておられるわけでありまして、ここには多くの懸念がある。やはりこれは見直していくべきだと思っておりますし、実は、衆議院の附帯決議では、与党の皆さんにも御理解をいただき御賛同いただいた中で、ほぼそのことを意味する附帯決議が付されたというふうに聞いております。  これはしっかりと見直していくべきだと、ここでもう一度大臣から明言いただければと思います。
  33. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 現在御審議いただいている種苗法改正されれば、その施行に当たりまして、必要に応じて所要の改正を本通知についても検討してまいりたいと考えております。
  34. 田名部匡代

    田名部匡代君 今こちら側の席からどう変えるのかが問題だと、まあそのとおりなんですが、しっかりと、間違った方向に見直すのではなくて、みんなが希望する方向への見直しについては大臣にも御理解をいただき、皆さんと協力して進めていきたいと思っています。  ちょっと具体的な中身に入っていきます。  これも多くの不安の声からでありますけれども、現在でも侵害品を税関で止めることができるのではないでしょうか。あわせて、農水省がこれまで海外流出を止めるには海外での品種登録が唯一の方法であると言っていたように、海外での品種登録が効果の高い流出防止策なのではないかということについてお答えをください。
  35. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えいたします。  過去に農林水産省海外登録をするしか方法がないというような見解を述べたというような事実がございました。これは、現行種苗法では購入した種苗海外持ち出しを防止することができないということが前提になっておりまして、海外での無断栽培を防ぐためには外国品種登録をするしかないということを受けての発言でございました。  しかしながら、海外におきましては、特に侵害者が証拠の隠蔽あるいは侵害のターゲットとなる品種の切替えを図るといったこと、こういった対応が言わばイタチごっこになることが想定をされておりまして、また、侵害が発覚した段階では既に現地で産地化されて収穫物が出回っている、そして現に多額の損害が発生してしまっているということが多いというのが実情でございます。  海外品種登録をすることが重要でございます。あわせて、購入した種苗海外持ち出しを防止をできない現行種苗法の規定も改正をさせていただきまして、海外持ち出しを制限できるようにすることでそもそも持ち出されないようにするということも極めて重要であると考えております。
  36. 田名部匡代

    田名部匡代君 日弁連の皆さんからヒアリングをしたときに、ちょっとそのお話の中で、海外登録の方が、農水省がそう言っているんだから、それが海外流出防止策になるのではないかという我が党議員からの質問に対して、日弁連の方が、やっぱりそこは海外でもいろんな制度があったり、また、仮にその制度があったとしても裁判が一回も行われたことがないなど、育成者権侵害訴訟というのはほとんどないというのが各国の感じであって、つまりは、権利はある、制度はある、でも、現地で裁判することでどれだけの費用が掛かるかだとか、手間暇を掛けてどれだけのメリットがあるかといったら正直なところ難しい、怪しいと。予測可能性がなく膨大に費用が掛かるということがあって零細な育種家にはとても耐えられないところがあるという意味で、海外登録制度があるからというだけでは駄目だということもおっしゃっていました。  ですから、私はその言っていることを急に、前はこう言っていたのに違うじゃないのみたいな批判するつもりはないけれど、ちょっと、ただ、話ずれちゃうんですけど、前はこう言っていたのに今は違うだとか、今回も知的財産権を守るというところから入ればいいのに、これが海外流出防止なんだみたいなところから入ってきたことが何となく更に国民の不安を駆り立てた気がするし、しつこいようですけれども、規制改革推進会議から始まっている一連の農業政策が、農林水産省さん、一生懸命頑張っている農林水産省さんであっても不信感を招いているのではないかな、説明を素直には受け止められないみたいなことになっているんじゃないかなというふうに思っているんですよね。  じゃ、加えて聞きますけれども、やっぱりこの海外品種登録というのは、今申し上げたとおり、費用や時間も掛かって二の足を踏んでしまうことが多いわけでありますから、両方必要だというなら海外登録のこともしっかり進めていかなきゃならないと思うんですよね。今後も継続的に海外登録支援していくべきだというふうに考えますし、また、税関を始め植物防疫所など、関係機関ともしっかりと連携をする中で水際対策をしなければならないのではないかなというふうに思うんですが、いかがでしょう。
  37. 宮内秀樹

    ○副大臣宮内秀樹君) お答えをいたします。  海外への品種登録は、先生の御指摘のとおり、費用や時間の面のみならず、その手続も煩雑なことから、出願に係る育成者権者事務負担も非常に重いということを認識をいたしております。  法改正をいたしましても、万一海外に持ち出された場合には、その国での栽培や流通を差し止めなければならないということに変わりはありません。  農林水産省といたしましては、海外での品種登録を引き続き支援してまいりたいというふうに思っておりますし、税関や植物検疫所の水際の連携をしっかり進めてまいりたいというふうに思っております。
  38. 田名部匡代

    田名部匡代君 是非それはよろしくお願いします。  もう一つ、自家増殖許諾制にすることでは海外流出を完全に防げないにもかかわらず、自家増殖許諾制にすることについて、なぜその必要があるのか、農家が、まるで農家のせいで海外流出が起こっていると、犯人扱いではないかというような批判もあるようであります。このことについて御見解を。
  39. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  海外流出につきましては、具体的な流出ルートの実態把握が困難ではありますけれども、農林水産省によるヒアリングなどをいたしましたところ、海外のバイヤーが種苗業者や個人農業者に対して、我が国開発された果樹等の種苗の売渡しを求めてきているというような情報も寄せられております。こういったことから、優良品種流出をするリスクは高いというふうに考えております。  登録種苗海外流出への対応につきましては、育成者権者自身が行う必要がありますけれども、現行法では、自家増殖許諾が不要でありますので、増殖実態把握できず、有効な対策を講じるのが困難となっております。法改正をいただきましたら、自家増殖を含めまして登録品種種苗増殖する場合には許諾が必要となることで、実態把握をして有効な対策を講じるということが可能になります。  これによりまして、現在登録品種自家増殖している農業者には許諾を得る手間あるいは許諾料負担などお掛けをする場合は生じますけれども、その負担が過大になるとは考えていないところでございます。  また、我が国開発された優良な新品種流出防止のためには、流出懸念をされる流通の各段階、各段階で対策を講ずることができるようにすることが重要でございます。  品種開発者にありましては品種登録海外でも適切に行うこと。種苗の流通業者にありましては、これは義務付けを行いますけれども、販売条件の表示あるいはこれは伝達を適正に行っていただくこと。それから、生産者にありましては許諾に基づいて自家増殖を行っていただくこと。こうしたことを求めることとしておりまして、農業者だけということではなくて、関係者一体となって知的財産である種苗をしっかり守っていくという仕組みをつくっていきたいというふうに考えているところでございます。
  40. 田名部匡代

    田名部匡代君 立憲民主党種苗法反対なわけですけど、私、この点については、私というのは、その完全に海外流出を防げないからやらなくていいということにはやっぱりならないというふうに思っていて、和牛の遺伝資源二法もそうだし、これから審議される漁獲証明なんかもそうだと思いますけれども、法律作ったからって、そのことによって悪いことする人がいなくなるわけではない、交通ルール作っても交通違反する人がいるからルール要らないよねっていうことにはならないわけですから、やっぱりそれはしっかりと止めていく必要があるというふうに、ここは私はそういうふうに思っているんです。  ただ、やっぱりきちんとした伝え方をしないと、まるで農家皆さんが悪意を持って海外流出をさせているのではないかというふうな受け止め方をされるというのは、やっぱり農林水産省さんの説明の仕方が悪い、発信の仕方、伝え方が悪いというふうに思っていて、正しく理解を、冒頭申し上げたように、正しく理解をしていただかないと、抑止になるものも抑止にならない。何かみんなが勘違いをして、自家増殖もどうなるんだ、コストどうなるんだ。本来はそういう意味じゃないにもかかわらず、それが伝わらないことによって抑止にはなっていかないわけですから、こういうことも丁寧に是非説明をしていただきたいと思います。  ちょっと細かい話になりますが、関係者の方にとっては大事なことなのでお聞きします。  自家増殖許諾制になることで、農家が苗を増殖しているイチゴ農家の経営が困難になるのではないか、お答えください。
  41. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  イチゴでございます。自家増殖許諾制にすることにつきましては、在来種も含め品種登録されていない一般品種を利用している場合は、当然ですけれども、この法改正による影響は全くございません。また、現在、登録品種のイチゴの栽培を行っている農業者の方は、自家増殖を含めた増殖許諾が得られている種苗を購入していることが一般的でございます。このような場合は、農業者種苗代に含まれた許諾料相当分を現在も支払っているということになりますので、法改正後も状況が変わらないために、法改正理由許諾料が変更されるということは想定できないと考えております。このために、イチゴ農家の経営がこれから立ち行かなくなるというようなことは想定をしていないということでございます。  手続でございますけれども、イチゴにつきましては、県単位で許諾を得るなど、一括して許諾を得る場合が多くございます。農家増殖許諾を得る認識を持っていない場合もあると思っております。このため、委員がおっしゃったように、農林水産省としては、現場の御懸念を払拭するためにも、改正趣旨、運用について丁寧な説明を行ってまいります。
  42. 田名部匡代

    田名部匡代君 サトウキビについてはどうですか。
  43. 宮内秀樹

    ○副大臣宮内秀樹君) お答えをいたします。  サトウキビの多くが登録品種であるために、種苗法改正によりまして、自家増殖に当たっては、育成者権者許諾が必要になります。しかしながら、全てのサトウキビの登録品種農研機構や沖縄県が開発した品種でありまして、農研機構種苗管理センター、沖縄県及び鹿児島県、県内JAがそれらの品種種苗増殖し、廉価で農業者に供給をしております。  このように公的機関品種開発から種苗の供給体制に関与しているために、法改正によって許諾料が増えるということは想定されておりませんで、影響はないというふうに考えております。
  44. 田名部匡代

    田名部匡代君 ちょっと質問飛ばしますが、他国、欧州や米国には営農規模や品目に自家増殖の規定があるのに、我が国で例外を設けられない理由は何でしょうか。
  45. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  自家増殖ができる例外品目を設けることにつきましては、一つの品目の中でも、ブランド化のために品質管理を徹底して自家増殖を認めない品種、あるいは迅速かつ広範に普及させる必要があり農家による増殖に制約を設けていない品種など、多様な品種がある中で、ある品目に属する品種全て一律の取扱いをするということは適当ではないというふうに考えております。  また、現在海外流出を防止すべき優良な品種がない品目でありましても、将来的に優良な品種開発されないとは限りません。仮に例外品目を設けた場合には、この品種海外流出させてもよいというふうに受け止められかねないということを考えまして、適切ではないというふうに考えております。  なお、EUにつきましては、原則として全ての品種育成者権が及ぶこととしつつ、例外となる品目については自家増殖育成者権が及ばないということになっております。また、穀物やバレイショの作物の許諾料について、我が国に比べて数十倍から数百倍という高額である中で、少額、小規模農業者のための例外が設けられているところでございます。このような例外品目につきましても、種苗の利用料の支払あるいは増殖数量の報告の義務が別の法律で課されているというふうに承知をしております。
  46. 田名部匡代

    田名部匡代君 そもそも一般品種を使っていらっしゃる方は、今回法改正になっても全く何も変わらないわけですよね。登録品種を使って、さらに、自家増殖をしている人たちが不安の声が上がっているということだと思うんですけれども、私たちは、衆議院修正案提出していただいたときに、やはり有機農業については種子の確保に苦労もしますし、時間と労力を掛けて開発された登録品種だとしても、ここは例外規定を設けるべきではないかということを提案をさせていただいたわけです。  実際にどういう影響が出るのか丁寧に現場の声を聞いていただくことも大事ですし、そして、現場がきちんと理解をしていただくまで、私は、本来は、せめて、せめて有機農業をされている方々に関しては例外にすべきだというふうに思っているところであります。  時間がないので、ちょっと次、十七番目に行きますけど。  農水省の示した水稲登録品種の割合一七%には本来含まれるべき新潟県のコシヒカリBLのような登録品種が含まれていない、つまり一般品種にまとめられている、また、登録品種のあいちのかおりSBLが一般品種のあいちのかおりにまとめられている、事実と違うデータではないかというファクスをいただきました。確認します。
  47. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  農林水産省におきましては、公益社団法人米穀安定供給確保支援機構が公表しております品種ごとの水稲の作付面積割合の資料から、作付面積ベースの登録品種の割合を把握することとしております。  この資料におきましては、コシヒカリとして集計をされました作付面積割合にどの程度登録品種であるコシヒカリBLが含まれるか不明であったものの、割合としては一般品種のコシヒカリが大宗を占めるということが明らかでありますので、全量を一般品種として集計をしたところでございます。逆に、あいちのかおりとして集計される品種につきましては、一般品種であるあいちのかおりと登録品種でありますあいちのかおりSBLが含まれますけれども、大宗は登録品種であるあいちのかおりSBLであることが明らかでございますので、全量を登録品種として集計をしているところでございます。  農林水産省といたしましては、コシヒカリにつきましては一貫して他と同様に取り扱っているところでございます。  なお、コシヒカリBLは、病害の防除効果を高めるために自家増殖は行われてはおりません。したがって、コシヒカリの中に一部含まれるコシヒカリBLの生産者につきまして、今回の法改正により、自家増殖許諾制にしたとしても影響を受けることは考えていないところでございます。
  48. 田名部匡代

    田名部匡代君 今、たくさんの情報を国民の皆さんあらゆる形で得るわけですから、丁寧にそういうことも、何か疑われる、ごまかしているのかなと、何か裏があるのかなと思われないように丁寧にやっておけばいいんですよ。私はそういう努力はやっぱり足りないと思っていて、いっぱい準備した質問がまだ半分ぐらいしかできていないんですけど、まだまだここをやって、国民の皆さんからの不安の声は届いています、まだ半分以上残っています。  ただ、私は、地元青森県では、まっしぐら、青天の霹靂、最近では、大きなサクランボ、ハートの形をしたジュノハート、おいしいものはたくさんありますよ、そういうことが地域の所得の向上につながったりブランドを守ることになるなら、これは守るべきだというふうに思うんです。思う一方で、数々の不安や誤解や懸念、こういったことが残ったままこのことを強引に進めていくということには反対であるということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  49. 河野義博

    ○河野義博君 公明党の河野義博です。  私の事務所にも、連日、多くの御意見、御要望がお寄せいただいておりまして、個別にお話をさせていただいて御説明を申し上げれば、何だ、そういうことだったのかと御納得いただけることがほとんどなわけですけれども、じゃ、何がいけませんかと言うと、不安だという声が圧倒的に多うございまして、何で不安なんですかと言うと、よく分からないということが大多数であります。  ほぼほぼ理解が進んでいない、誤解が誤解が生んでいるという点だと思いますので、お寄せいただいた質問、疑問を解決していくという趣旨で、そういうトーンで質問させていただきたいと思いますので、しっかり議事録に残しておこうというふうに思います。  まず、優良品種を、海外を、防止していかなきゃいけない、これはもう言うまでもありません。そういった点、そして、どうやって実効性を持たせるのかという点に関して伺います。  種苗は、言うまでもございませんで、農業生産現場における基本的な基礎的な生産資材でありまして、多くの先人たちによる品種改良の長年の努力で各地域の風土に見合った多種多様な品種開発をされてきたという経緯でございます。新品種開発には長い時間と多くの苦労が伴います。  例えば、最近、近年人気ですが、シャインマスカット。皮まで食べれて甘くて種もない。親系統の育成から考えれば、品種登録まで実に三十三年を要したと伺っています。私、実際に農研機構にもお邪魔をさせていただいて、その開発現場も見させていただきました。これ、本当に長い年月を掛けて、たくさんのコストと労力を掛けてようやく完成した、そういう新品種が多くあるわけであります。  こうした開発努力に報いるために、種苗法は、新たな品種登録者に育成者権という新たな知的財産権を付与することで品種育成の振興を図るものであります。新品種は、地域日本のブランド農産物として農業者に高い収益をもたらすことになります。そして、権利期間であります二十五年、果樹などは三十年、これが経過をすれば誰でも自由に利用が可能となるものであります。  今後とも、各地の農業振興に貢献するような品種官民を問わず、あるいは官民で協力をして持続的に開発される環境をしっかりこれ整えることが大事です。長年開発してきた、こういう開発が持続的に行われるということは非常に大事だというふうに思います。  しかし、現状を申し上げますと、さきに申し上げましたシャインマスカット。苗木が中国韓国流出しまして栽培をされ、さらにはタイやマレーシア、ベトナムなどに輸出されまして、我が国のシャインマスカット、輸出農産物と競合しているという事態が起きているのはもう御案内のとおりでございます。こういった事態を放置することなく、厳正に対処していかなければなりません。  本改正案は、育成権者の意思に反して種苗海外国内の他の地域流出することを防ぐため、品種登録と同時に、輸出先国や国内栽培地域を指定することができる特例を創設をしようとするものであります。この特例は、植物品種という知的財産を適切に保護し、そして日本の農作物を海外輸出していく上で、また、国内の産地づくりを進めていく上で極めて重要な意義を有するものと考えます。  特例を創設することで優良品種海外流出を防止する効果がどのように高まるとお考えなのか、お伺いをします。また、故意に持ち出そうとするものには効果がないんじゃないか、こういった御意見も耳にいたしますけれども、そういった行為を水際で食い止め、流出防止効果に実効を持たせるため、法改正と併せてどういった対策を講じていかれる方針か、大臣の御所見をお願いします。
  50. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 現行種苗法では国内における権利保護を念頭に置いておりまして、正規に購入した登録品種海外への持ち出しは合法であります。しかしながら、先生指摘のとおり、中国韓国等に持ち出された登録品種が現地で増殖、産地化されまして、第三国へ輸出をされていることが問題となっております。  さらに、山形県の紅秀峰種苗が県内の農業者により増殖をされまして、オーストラリアに流出して同国で産地化され、逆に我が国へ輸入されてしまった事例も起きておりまして、管理が緩過ぎたと考えております。  このため、今般の法改正によりまして、登録品種について、出願時に国内利用限定利用条件を付せば海外への持ち出しを制限をできること、また、登録品種自家増殖につきましては育成者権者許諾に基づき行うことといった措置を講ずるものであります。  この改正によりまして、利用条件が付された登録品種育成者権者許諾がない限り海外持ち出しができなくなりますので、これは海外流出を止める効果が大きいと考えておりますが、この流出防止の御指摘のあった実効性についてでありますが、今般の法改正では、輸出先に制限がある登録品種を持ち出す場合には、これは例外なく育成者権侵害物件となります。このため、育成者権者による輸出差止め申立て制度の利用を通じまして、事前に持ち出しの動きを察知をして税関で差し止めることが可能になります。  また、利用条件に反した海外持ち出しを制限できるようにすることでそもそも海外持ち出しが抑止される上、種苗又はその包装には利用制限が付された登録品種である旨が表示されることとなりますので、税関において確認もしやすくなります。  さらに、外国人や外国商社が海外持ち出しが制限された登録品種を買い付けたような場合には、これは海外流出されるリスクが高いため、農林水産省にその旨の情報提供をしてもらい、農林水産省から税関にも速やかに情報共有をすること、また、あらかじめ海外持ち出しが制限されている品種情報を税関に伝えることなどによりまして、水際措置の実効性確保に向けてしっかりと連携を図ってまいりたいと考えております。
  51. 河野義博

    ○河野義博君 よく考えられた制度だと私思います。しっかり実効性を持って進めていくということが大事だと思います。  次に、自家増殖許諾制にする理由、また自家増殖行っている農業者への影響、これもよくお寄せいただく御意見でありますが、本件に関して伺いますと、この法律改正案では、登録品種自家増殖によって許諾制を導入しようとするものであります。  これに対しまして、農業者の中には、農家の種取りの営みが全て禁止されるのではないかと、また種子を毎年購入せざるを得なくなる、こういった不安を持たれている方もおられます。しかしながら、自家増殖しているものが一般品種と分かったり、たとえ登録品種であっても、実は従来から種苗の購入時に許諾を得ている形になっているものだと、こういうことが分かれば不安も解消されるのではないかと思います。  こういう御説明をしっかり申し上げることが大事だと思いますが、登録品種自家増殖許諾制にする理由を改めて明確に御説明をいただきたいと思います。また、現在、自家増殖をされている農業者に対する法改正の影響、これどのように見込んでおられるでしょうか。
  52. 宮内秀樹

    ○副大臣宮内秀樹君) お答えをいたします。  先ほどからも出ていますように、紅秀峰我が国への逆輸入の例がありますように、やはりこれまでの管理が緩過ぎたというふうに考えております。  現行法でも、自家増殖された登録品種種苗海外に持ち出すことは育成者権侵害にはなりますけれども、登録品種増殖実態把握や疑わしい増殖差止め、それから刑事罰の適用や賠償請求に必要な故意や過失の証明が困難なことから、実態上、海外持ち出しの抑止が困難となっているというのが現状だというふうに認識をいたしております。  また、法改正によりまして、育成者権者海外持ち出し不可条件を付した場合に、正規に販売された種苗持ち出しができなくなる結果、農業者個人増殖種苗が狙われることが懸念されるわけであります。  このため、登録品種自家増殖につきましては育成者権者許諾を必要とするということとしたいというふうに考えているのがこの法改正の大きな趣旨でございます。  その上で、自家増殖許諾制にすることにつきましては、在来種を含め、品種登録されていない一般品種を利用している場合はこの法改正による影響は全くないというふうに考えます。また、登録品種を利用している場合であっても、ブランド化等を図る産地で種苗を購入して栽培している農業者への影響はないと考えます。特に米などのブランド化を目指す新品種は、品質管理観点から、既に種苗を購入する方が求められる自家増殖が行われていない実態があるということからでございます。  なお、一部の果樹等では登録品種自家増殖されている方もいらっしゃいますが、海外流出することによる産地の損失も大きくなることが懸念されることから、法改正後は許諾に基づいて自家増殖していただく必要がございます。このようなことにつきまして周知をしっかり進めて、産地の力を高める優良な品種を守る取組がしっかり進めていくことを期待しております。
  53. 河野義博

    ○河野義博君 今、自家増殖しているものは一般品種だから関係ないんですよと言うと、それで解決する相談も結構ありまして、しっかり明確に御答弁をいただきましたので、ありがとうございます。  次に、許諾料の見込み、手続事務懸念されるお声もありますので、その点に関して確認をしておきます。  自家増殖許諾料が高額になって生産コストが増えるのではないか、また、許諾を得るために事務負担がもう本当に大変で、農業、本業に支障が出るんじゃないか、こういった不安もあるわけであります。自家増殖許諾料水準、どのように見込んでおられますでしょうか、御説明お願いします。  また、農業者許諾手続事務負担を軽減するためにどういった方策を講じられるおつもりでしょうか。農業者が権利者から直接許諾を得る場合や、また農協などの団体を通じて許諾を得る場合、そして県を通じて他県から許諾を得る場合など様々なケースがあると考えられますけれども、幾つか具体的な例を挙げて御説明をいただけたらと思います。
  54. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  育成者権知的財産権でありますので、自家増殖許諾料をどのように設定するかにつきましては各育成者権者の判断により行われるということになります。  しかしながら、農研機構都道府県普及することを目的といたしまして品種開発をしております。したがいまして、農業者から営農支障となるような高額の許諾料を徴収するということは通常はありません。民間種苗会社につきましても、農研機構都道府県許諾料水準を見ておりますので、著しく高額な許諾料となることは考えにくい状況でございます。  また、農林水産省といたしましては、育成者権者から直接許諾を得る場合であっても簡便に許諾契約を結べるよう、許諾契約ひな形を示すなど工夫をしてまいりたいと考えております。  その上で、例えば、県が開発した品種を使って産地づくりに取り組むような場合であれば農協等の団体を通じまして許諾を得るということができますし、実際にイチゴの例にありますように、他県が開発した品種を県を通じて許諾を得るというような場合であれば、県単位で許諾を受けるなどの方法によりましてより簡便に許諾契約が結べるようになるというふうに考えているところでございます。
  55. 河野義博

    ○河野義博君 高額にならないというのは御答弁をいただきましたし、そもそもとっても高くなるんだったら買わないという話だと思うんですよ。ですので、そういう値段設定にするかというと、現実的にはしないんですよ。  ですので、大丈夫です。大丈夫だと思います。しっかり大丈夫なようにしてください。よろしくお願いします。これもよくあるのは、いや、本当にあれですよ、苗代が高くてこの品物は売ってももうからないって、そんな苗買わないですよね。だから、大丈夫です。  次に、多国籍企業が不安だという声もありまして、これもおかしな論点だなと私は思っているんですけれども、登録品種自家増殖許諾制導入については、種子法の廃止農業競争力強化支援法、これと相まって将来的に日本公的機関開発品種という選択肢が消えて、日本農家種子メジャーと呼ばれる多国籍企業に支配されて、その結果として遺伝子組換え作物と農薬をセットで購入せざるを得なくなるのではないかという声を、本当に言っている方が結構いらっしゃいまして、そういう御意見もいただきます。こういったシナリオを聞いて、分からない人はそうかもしれないと思っちゃうわけですね。ですので、漠然とした不安を抱く農家さんが、消費者の方々がいるようです。  我が国種苗市場の特性を踏まえた上で、このようなシナリオが現実的にあり得るでしょうか。政府の見解を聞かせてください。
  56. 熊野正士

    大臣政務官熊野正士君) お答えいたします。  我が国におきましては、食用作物、果樹、野菜の品種については国内開発された品種登録のほとんどを占めておりまして、海外種苗会社等が開発した品種はほとんどございません。これは、我が国品種は北から南まで気象条件や土壌も全く違う日本の国土の多様な気候や風土に合うものであるため、少品目から大ロットに種苗を販売する目的で品種開発する大企業の開発方針に合致しないことが原因と考えられます。  他方我が国農業者は、国内開発品種の多くの選択肢がある中で、自ら経営上の判断のメリットを検討の上で導入の是非を判断しておりまして、種苗法改正でこの状況は何ら変わりません。  今般の種苗法改正は、新品種保護を強化し、海外への流出を防止することで、我が国農業を支えている国内品種開発を後押しすることとしているものでありまして、種苗法改正により、外資系企業の品種により日本の市場が支配されるということはありません。
  57. 河野義博

    ○河野義博君 明快な御答弁をいただきましてありがとうございます。皆さんも安心していただけたんじゃないかなと思います。  次に、これも本当にこんなことがあるのかなと思いますが、まああるんだと思いますが、自家増殖、在来種を自家増殖する農業者が、近隣の登録品種と交雑して種を取った場合においてどうなるんだと、これもお寄せいただいた御意見の一つですが。  在来種は、種苗法保護対象である登録品種ではありません。そのため、自家増殖現行法の下でも改正後も自由であります。先ほど御答弁いただいたとおりでございます。在来種を自家増殖する農家の中には、風に乗って飛んできた花粉により近隣の登録品種と交雑した種を取って自家増殖した場合、改正後は登録品種の権利者から訴えられるのではないか、そういう心配をされている方がおられます。  これまでにこういう事例があるのか、あるいはこういう心配は杞憂ですよと、心配しなくていいですよと言い切れるものなのか、政府の答弁を求めます。
  58. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  少なくとも、我が国におきましては、在来種を利用している農業者が、近隣で利用されている登録品種との交雑によりまして、育成者権者から訴えられたという事例はございません。  一般に、交雑をすると、必ず植物種類ごとにそれぞれ五十から百項目程度あります大きさ、あるいは色といった特性が変化をいたしますので、登録品種と交雑して得られた品種の特性が登録品種の特性と一致するということはないことになりますので、在来種を利用している農業者育成者権者から訴えられるということはありません。
  59. 河野義博

    ○河野義博君 ありがとうございます。  ちょっと時間が参りましたので、またの機会に残りは譲りたいと思いますけれども、やはり丁寧に説明をしていくということ、そういう不安は当たらないんですよということをしっかり明確にこれからもしていく必要があると思いますので、どうぞよろしくお願いします。  ありがとうございました。
  60. 石井苗子

    ○石井苗子君 日本維新の会の石井苗子です。よろしくお願いいたします。  これまでの皆様の質疑と答弁を聞いておりますと、私も農業に関しまして非常に素人なので、とにかく難しい言葉遣いですよね。その難しい言葉遣いで説明を何回もされても、きっと農業をされている方々は、分かったような分からないようなという気持ちと、何かごまかされているんじゃないかというような政府情報に対する不信感、これがあると思うんです。SDGsというのは、まず、今後はリスクコミュニケーションの時代の到来だと思わなければならない、説明をして分からなければ説明した側が悪いと。政府はその説明責任、SDGsという英語を使うんだったら、アカウンタビリティーという説明能力を政府は要求されているということをしっかりと心得ていっていただきたいと思います。  私、素人と申し上げましたので、この分厚いのを読みまして、それぞれのページで、私のところに来ました質問も兼ねましてやらせていただきます。  種苗法のその知的財産権保護の必要性や重要性については大方理解できたと、だけれども、どうも反対したいことがあるんで聞いてくださいと。百七十二ページ。主要農作物種子法廃止する法律案審議の際の附帯決議がありました。都道府県が主要農作物の種子の生産及び普及に取り組めるよう地方交付税措置を確保するとなっています。都道府県種子開発に関する財政措置、現在どのようなものがありますか。教えてください。
  61. 宮内秀樹

    ○副大臣宮内秀樹君) お答えをいたします。  種子開発につきましては、都道府県公的機関は、生産現場のニーズを的確に把握し、高品質なブランド品種地域温暖化に適応した品種などの開発に取り組んでおりまして、農業の成長産業化を進めていく上で極めて重要な役割を担っているというふうに認識をいたしております。来年度の予算概算要求におきましても、農研機構が中核となりまして、公的機関が連携をいたしまして、気候変動等に対応した新品種開発とか育種の効率化、栽培地に適応した生産技術の開発、あるいは国内在来品種の収集、保全の促進に取り組む予算を用意しておるところでございます。  主要農産物種子法廃止後も、稲、麦類及び大豆の種子供給に関わる事務につきましては、圃場審査などに関する事務種苗法原種圃の設置などに関する事務農業競争力強化支援法に基づきまして都道府県が従前と同様に実施することが見込まれておりますことから、引き続き地方交付税措置が講じられているということとされております。  今後とも、この地方交付税措置がしっかり講じられますように、総務省と連携をして対応してまいりたいというふうに考えております。
  62. 石井苗子

    ○石井苗子君 先ほど田名部議員からも御発言があったように、種子法に関しましては、私のところにも種子法と種苗法との関連に関する質問がたくさん来ておりました。今のお話ですと、財政需要に算入して措置を講じていくという理解でよろしいですね。(発言する者あり)あっ、結構でございます。  次に行きます。  百九十一ページです。質問が、これ、クエスチョン、QアンドAという一番農家の方が分かりやすいところなんだそうでございますが、種子法改正のQアンドAによりますと、自家増殖許諾が必要となると、そうですね、農家生産コスト事務負担が増えて営農支障が出ないかという問いに対する回答です。先ほどからいろいろありましたが、新品種農業者に利用してもらわなければ意味がないので、農業者の利用が進まない許諾料となることは考えられないと。これだけではよく分からないんです。この回答では納得できない農家の方がたくさんいらっしゃいます。  これがSDGsに必要だと先ほどから申し上げております。利用する価値がある品種であれば、需要が大きく企業が収益の最大化を目標とするのであれば、目指すのであればですね、許諾料が高くなっていく可能性があります、ありますね。農家方々が納得できる合理性のある説明をしていただきたいんですけれども、もう一回お願いできますか。
  63. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  一般的に考えまして、公的機関であります農研機構都道府県は、普及することを目的として品種開発しておりますので、農業者から営農支障となるような高額な許諾料を徴収することは通常ありません。このため、民間種苗会社農研機構都道府県許諾料水準を見ておりますので、著しく高額な許諾料となることは考えにくいというふうに考えているところでございます。  加えて、一般に、農業者登録品種を選択することにより得られる収益の増分を上回る水準許諾料が設定されれば、登録品種以外の品種が相当多くある中で、農業者は当該登録品種を選択しないということも考えられますので、このような水準許諾料が設定されるということにはならないというふうに考えております。
  64. 石井苗子

    ○石井苗子君 さっき河野議員が御質問したのと同じことですね。  整理して分かりやすく言いますと、公的機関許諾料は高くならないので民間企業も高くできないようになりますと、このように説明するとそうかと分かるんですけど、それでよろしいですか。はい、分かりました。  次、百二十五ページ。  大臣にお聞きします。許諾料の見込みについてですけれども、これも御質問がございました。  育成者権者公的機関国内種苗会社外国の会社である場合、それぞれについて自家増殖許諾料はどのくらいになると予想しているのか。許諾料の相場がどうなるか分からないことが農家の不安につながっております。  許諾料について、どのくらいになるのか、全く見込みはないのか、答えられるものだけでもいいからお願いしますということで、大臣お願いいたします。
  65. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) まず、一般品種を栽培している農業者、あるいは登録品種であっても種子を購入して栽培している農業者につきましては、これは経営規模にかかわらず、許諾料負担法改正によって増えるということはありません。  また、登録品種自家増殖せず種苗作付けごとに購入している農業者は、種苗代の一部の許諾料相当分負担しているわけでありますが、法改正後に登録品種自家増殖する農業者は、それと同等の許諾料負担することになると考えております。  農研機構ですとか都道府県につきましては、今話があったように、普及を目的として品種開発されておりますので、営農支障になるような高額の許諾料農業者から徴収することは通常あり得ませんし、民間種苗会社もその水準を見ており、著しく高額なものになるとは考えておりません。  そういう中で、仮に、現在の公的機関種苗増殖業者ですとかJAに課している許諾料と同額の自家増殖許諾料になるということを前提の下で面積当たり年間許諾料試算いたしますと、これ先ほども答弁ありましたが、水稲を十ヘクタール当たり栽培する場合で年間二百六十円から千六百円程度露地ブドウを一ヘクタール栽培する場合で一年当たり三千円から三千九百円程度許諾料になると考えられます。
  66. 石井苗子

    ○石井苗子君 こういうふうに具体的にお金で言っていただけると、ある程度答えられているんだなと思うわけなんです。  そのQアンドAの百九十三ページも同じなんですが、海外の多国籍企業による種子の支配が進むのではないかという問いに対するお答えですね。この回答も、我が国では公的機関国内種苗会社が、海外の多国籍企業が開発できない日本の風土に適合した優良な品種開発していて、競争力が圧倒的に高いため、種苗法改正されたとしても海外企業による種子の支配を心配する必要はない。よく分かりません。ということがお答えなんですが、この回答も、分かりにくいというのと同時に、国民の皆さんが安心できる説明になっていないと私は思います。  現時点で心配する状況にはないというだけで、将来的には全く分からないことに対して心配ないですと言われても、安心できるはずがないんであります。  ほかに国民が納得できる説明はできないものでございましょうか。ちょっとこの場で、皆さんの言葉でやっていただきたいと思います。
  67. 熊野正士

    大臣政務官熊野正士君) お答えいたします。  我が国品種は、北から南まで気象条件や土壌も全く違う日本の国土の多様な気候や風土に合うものであるため、少品目かつ大ロットに種苗を販売する目的で品種開発する外国企業の開発方針に合致しないということが原因と考えられております。  他方我が国農業者は、国内開発品種の多くの選択肢がある中で、自ら経営上の判断のメリットを検討の上で導入の是非を判断しておりまして、種苗法改正でこの状況は何ら変わりません。  今般の種苗法改正は、新品種保護を強化し海外への流出を防止することで我が国農業を支えている国内品種開発を後押しすることとしているものでありまして、種苗法改正により外資系企業の品種により日本の市場が支配されるということはありません。
  68. 石井苗子

    ○石井苗子君 細かい御説明ありがとうございます。  でも、私が質問いらっしゃった方にお答えしたのは、皆さん国内品種開発を国はこれから支援していきますから、支援していくという法の改正なので、海外の企業による種子の支配なんというのは起こらないようにしていきますということを政府は約束しているんですと、だから、できなかったらばしばしできてないじゃないかと言ってください、反省しますからと、こちらで私も質疑させていただきますというふうに説明すると、分かりました、じゃ、そうならなかったらまた来ますということになります。  次ですけれども、先ほど田名部議員が分からないことが多いということなので、大臣にコミュニケーションについて質問させていただきます。  私は、政府の国家的方針がSDGsにかじ取りをしていくんだったら、もうこれはもうコミュニケーションの新しい時代を切り開いていかなきゃならないと思うんですね。我が国優良品種海外への流出が相次ぐ中で、日本農業は大きな打撃を受けていますと、そうですという現状の説明をしました。登録品種育成者権者の意思に反する海外への流出に歯止めを掛けなきゃならないんだと。そのためには種苗法改正が必要なんです。なぜ今反対運動が起きているのかという、その反対理由把握しないと誤解も解けません。それがコミュニケーションなので、教えてください。  大臣は、この反対理由ですね、何が反対されていて、誤解されているということじゃなくて反対理由というのが何だとお心の中で把握されているのか。どこを打破すればいいと感じていられるのか。  種苗法審議を今国会でやることになっていますが、反対派の誤解が解けないのは農水省の努力不足ではないかと私は思うんですね。誤解を解くキャンペーンというのは、ホームページで、ツールで読んでくださいと、これでは駄目で、向こうはSNSとかいろんなものを使ってきて心理的な操作をしているわけですね。それに対してどのようなキャンペーンをしているのか、SNSなどで効果的な情報発信をされているのか、この辺が新しい時代なので、どうかお答えください。
  69. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 先ほども御質問あったんですが、この種苗法改正に対するやはり大きな反対意見は、この自家増殖に対する懸念があるというふうに考えております。一般品種も含めて自家増殖、一律に禁止されるのではないかとか、あるいは高額の許諾料が課せられるのではないかとか、こういうことがあるんだろうというふうに思います。  政府としても、これは検討段階、あるいはその閣議決定後、その後も様々な説明を行ってまいりましたが、検討段階では検討会を立ち上げまして、幅広い分野の有識者を招きまして六回にわたりまして検討を重ねました。また、この検討会では、全農、全中、また農業者方々にも御参加をいただいて忌憚なく御意見をいただきましたほか、有機農業者、また大規模農業者種苗増殖農家、あるいは農業現場の実情についてもヒアリングを行ってきたわけであります。  閣議決定後には、先ほどQアンドAという話もありましたが、QアンドAもそうですし、法案説明資料ですとか、こういうものを公開するとともに、さき通常国会の閉会後も様々な説明の御要請がありました。自治体や農協や報道関係者に対しましても、その要請に応じる形で各種説明会、十回以上になりますが、行ってきたところであります。雑誌等への寄稿も行ってまいりましたが、引き続き、これは改正趣旨ですとか運用につきまして丁寧に説明を続けていかなければならないと考えております。
  70. 石井苗子

    ○石井苗子君 いろいろ説明をしているんだけどなかなか分かってくれていないんですよ、一生懸命やっているんですというふうにしか聞こえてこないので。私は、こんな質問があったのは意外だった、こんなふうに説明しなければいけなかったんだ、このように説明したら分かってもらえたと、このぐらいの三段階方式ぐらいで今後はリスクコミュニケーションをやっていっていただきたいと思います。ありがとうございます。  七十二ページに行きます。  今後、国内種苗開発の競争力を上げることが必要となります、このように書いてあります。国内種苗会社農業試験場の種苗開発への支援には具体的にどのようなメニューがあるんでしょうか。特に、ここ見ますと、重要な食用作物では公的機関が八一%、果樹では四八%、野菜では四四%と七十二ページに書いてあります。  民間種苗開発開発とはこのパーセンテージでは言い難いと私は思うんですけれども、民間開発に対する支援、具体的にどのようなものをやっていらっしゃいますか。教えてください。
  71. 菱沼義久

    政府参考人(菱沼義久君) お答えいたします。  品種に勝る技術なしという言葉がございますので、品種開発が極めて重要だと考えています。このためには二点の考え方がございまして、一点目は、生産現場に近くニーズを的確に把握している公的機関開発能力の強化をすることですね、さらに、二点目は、民間開発能力を活用した産学官連携によるイノベーションの創出を図ること、この二つの考え方をバランスよく研究開発の施策に組み込むことが大事だと考えております。  このため、農林水産省では、農林漁業者のニーズなどに対応し、国主導で実施するプロジェクト研究であります農林水産研究推進事業や、ベンチャーを含む民間企業などの様々な分野の知識、技術等を結集し、産学官連携を進めていくといったイノベーション創出強化研究推進事業、さらに、産学官がコンソーシアムを形成して共同研究を行うといったような「知」の集積による産学連携推進事業を展開しておりまして、今後とも、このような支援を通じまして、官民を挙げて我が国品種開発力の強化に取り組んでまいります。
  72. 石井苗子

    ○石井苗子君 ありがとうございます。  そのように予算を獲得して支援を具体的にやっていかないと、将来に対する持続性というのは確保できないと思っております。頑張っていただきたいと思います。  あと一分でございますので、四つの中から一つを選ぶということになりますと、最後、私のちょっと素人考えの、申し訳ないですけれども、疑問に思った点なんですが、これ条文読んでいて思ったんですけれども、出願者が該当出願品種保護が図れないおそれがない国とは、まず育成者権者品種登録した国が考えられると思う。これ、もう一回読みますが、出願者が当該出願品種保護が図れないおそれがない国とは、まず育成者権者品種登録した国が考えられると、これ、済みません、どのような国を想定していらっしゃるのか教えてください。
  73. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 時間が参りましたので、答弁は簡潔にお願いいたします。
  74. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  具体的に、この国でございますけれども、個々の育成者権者による活用戦略にもよりますけれども、例えば、品種保護制度が適正に運用されていて、過去にも品種の不正な利用がない国でありまして、今後、その当該国でその国での品種登録を進め、あるいはもう既に品種登録を持っている、それから、その国で信頼できるパートナーがいて、そのパートナーとの間で許諾契約を結んでその国で生産、流通させるという、そういったことを意図しているといいますか、そういったことを企画している場合にその国への種苗輸出を制限しないことができると、そういったことを意味する条文でございます。
  75. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 時間が参っております。
  76. 石井苗子

    ○石井苗子君 時間が来たので終わりますけれども、今みたいな返事が、何となくライセンス契約を結んでいる国ですとか、信用がちょっとおけないなという不安があるんですよね。例えば、品種登録されている表示を剥がして海外に持ち出すことは違法になるんですかというような質問もあったんですけれども、具体的な細かいことに分かりやすく答えていっていただき、リスクコミュニケーションの成果を図っていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  77. 舟山康江

    ○舟山康江君 国民民主党の舟山康江です。  今回の種苗法改正案ですけれども、もう既に何人かの委員の方からも御指摘がありましたけれども、今回の法改正で何がどうなるのか、目的とか影響がよく分からないというところがやはり大きいのかなと私も思っています。  元々、今回の改正自家増殖が全て禁止になると、そういった報道が広がりました。その後、いや、一切禁止ではなくて許諾制なんだというところは大体広がっているような気がするんですけれども、それによって種代が上がる、農業経営に負担が大きくのしかかると、こんな声もありました。更に言えば、育成者権者保護というところで、多国籍企業に種子を牛耳られるんではないか、こんな懸念もあったんではないのかなと思っています。そういう中で、今回の法改正、多国籍企業のための改正なんだという声もございます。  そこで、もちろん育成者権者、やっぱりこれは内外問わず努力をして、公的機関また民間、いろんな方が育成していますけれども、その権利の保護というのは誰も否定しないと思いますし、それは大事だと思います。ただ一方で、本来、種子や苗などの種苗農林水産業の基礎的な生産資材であり、産地の取組を後押しするためのものでなければならないと考えています。  改めて、今回の種苗法改正は誰のためのものなのか、一部で言われているように企業、とりわけ多国籍企業のためのものなのか、その辺をまず、大きなその対象ですね、誰のためなのか、お答えいただきたいと思います。
  78. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 今御指摘がありましたとおり、海外に優良な植物品種流出をして輸出の機会が失われていると、こういう事態は何としても食い止めなきゃならないということで、この育成者権者保護をしなければならない。  そのために、例えば、登録品種につきましては国内利用限定利用条件を付せば海外持ち出しを制限できる、あるいは自家増殖については許諾に基づき行うということを措置をしているわけでございますが、これは、やはり日本の強みでありますこの植物品種、この知的財産を守ることによって、これは産地形成を後押しをすることになりますし、さらにはこれは地域農業の活性化にもつながるわけでありますので、私は、それはまさに農業者のための改正だと考えております。
  79. 舟山康江

    ○舟山康江君 今大臣から御答弁ありましたけれども、農業者のための改正なんだということをやはりしっかりと、先ほど石井議員からありましたけれども、やっぱりそのリスクコミュニケーション等でしっかり伝えていかないと、企業のため、農家が困る、農家は非常にこれで窮地に追い込まれるというような声が広がってしまうことになりかねませんので、是非しっかりとこれからもそのことを伝えていただきたいと思っています。  そして、これ田名部委員からも質問がありましたけれども、海外への品種持ち出し種苗などの持ち出しを防いでいかなければいけないという中において、三年前、二〇一七年の十一月には、食料産業局知的財産課が、種苗などの国外への持ち出しを物理的に防止することが困難である以上、海外において品種登録を行うことが唯一の対策と見解を示していたんですね。それで、三年たった今、この品種登録ではなくて法改正をしなければいけなくなった、その背景は一体何なのか、なぜこのたった三年で見解を変えたのかというところを御説明いただきたいと思います。
  80. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 過去に農林水産省が、海外において品種登録を行うことが唯一の対策と見解を述べております。これは、現行種苗法では購入した種苗海外持ち出しを防止できないために、海外での無断栽培を防ぐためには海外品種登録をするしかないということで申し上げたものであります。  しかしながら、海外におきましては、特に侵害者が証拠の隠滅ですとか侵害のターゲットとなる品種の切替えを図ることによる、こういうイタチごっこになることが想定されてまいりました。また、侵害が発覚した段階では、既に現地で産地化され、収穫が出回ってしまいまして、現に多額の損害が発生してしまっていることが多いということも実情であります。  当然、海外品種登録することは重要でありますが、あわせて、購入した種苗海外持ち出しを防止できない現行種苗法の規定を改正をして、そもそも持ち出されないようにすることも極めて重要であると考えております。
  81. 舟山康江

    ○舟山康江君 今回の改正で、そもそも持ち出されないようにすることは果たして本当にできるのか、実効性あるのかというところを御説明いただきたいと思います。
  82. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  今回の法改正によりまして、利用条件を設定をいたしますので、この利用条件に反した海外持ち出しを制限できるようになります。それによりまして、そもそも海外への持ち出しが抑制される上に、種苗又はその包装には流通段階において利用制限が付されている登録品種である旨が表示をされます。このため、関係者が確認をしやすくなります。特に、外国人あるいは外国商社が海外持ち出しが制限された登録品種を買い付けたような場合、こういった場合には海外持ち出しがなされるリスクが高いものですから、農林水産省にその旨の情報提供をしてもらいまして、農林水産省から税関にも速やかに情報共有をすることで水際措置の実効性確保に向けてしっかり連携を図っていきたいというふうに考えております。  加えまして、農林水産省としては、流通業者に対しまして、登録品種及び利用制限の対象であるということを、この表示をするという法制度上の措置を適切に行うことに加えまして、販売時に利用目的を確認してもらう、こういったことを依頼をいたしまして、官民で協力して流出防止対策を行ってまいりたいというふうに考えております。
  83. 舟山康江

    ○舟山康江君 ありがとうございました。  恐らく、この法改正で一〇〇%止める、法の網をくぐって出ていくものはあるにしても、やはり抑制的に、その条件を付すことによってかなり抑制できるということだと思いますけれども、衆議院参考人質疑で、これ、印鑰参考人からインドの例を挙げて指摘がございました。外資系企業から高い種を買わざるを得ない状況にインドは陥ってしまったと。モンサントに種子企業が買収されてしまった、そこからしか種が買えなくなってしまった、そういった指摘がありました。  日本ではそういう状況に陥る可能性がないのか。外資系企業が日本の種を買収するなんてことの話は今回のいろんな反対の声の中にもありますけれども、そういう可能性は本当にないのか、ないとすれば、インドと日本が置かれている何か違いがあるのか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
  84. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  我が国におきましては、食用作物、果樹、野菜の品種につきましては、国内開発をされました品種登録のほとんどを占めておりまして、海外種苗会社などが開発した品種というのはほとんどございません。  これは、我が国品種が北から南まで気象条件や土壌も全く違うこの日本の国土の多様な気候あるいは風土に合うものである、に合わせるために、少品目かつ大ロットに種苗を販売する目的で品種開発する外国企業の開発方針に合致しないと、こういったことが原因であるというふうに考えております。  今般の種苗法改正は、新品種保護を強化をいたしまして海外への流出を防止するということで我が国農業を支えている国内品種開発を後押しするものでございまして、種苗法改正によりまして外資系企業の品種により日本の市場が支配され、農業者が高い種子を買わざるを得ないということはないと考えております。  その上で、御指摘のインドについてでございますけれども、インドにつきましてはUPOV条約の非加盟国でございまして、十分な品種保護制度を持ってはおりません。そのために国内で優良な品種開発が進んでおらず、単一品種で市場を席巻する外資系企業の参入を招きやすいんだというふうに考えております。こういったことは、公的機関によって開発された多様な品種農業者が選択することができる我が国とは状況が異なるものではないかというふうに考えております。
  85. 舟山康江

    ○舟山康江君 確かに日本では、穀類、米、麦、大豆にしても、野菜類、果樹類にしても、地域によって多様な品種があって、基本的にはその地域の試験場又は農研機構等が開発していますし、一つの県内でもいろんな多種多様なものを作っているわけで、それをいきなり外資が来て、多分ロットが小さいからそんなに外資が来て牛耳ってもうかるということは考えにくいのかなという気はしております。そこはインドとの違いということはなるほどという気がいたしました。  さらにもう一点、同じく印鑰参考人から、衆議院質疑の中では、登録品種は一割程度という説明、また許諾料水準や見通しに対する農水省認識に懐疑的な声があると、そんな話もありました。やはり農水省説明なんか信用できないということなのかなと思うんですけど、それはともかく、登録品種とか許諾料水準に対してのこの今の実態、やはり不安に応えるためにも現場実態を十分かつ的確に把握すべきだと思いますし、今後、やはりそういった実態把握するシステムをしっかりつくっていくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  86. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  御指摘のような現場実態につきましては、様々な調査データ、それから現場からのヒアリングなどから把握をしてきているところでございます。  まず、現場登録品種がどれくらい使われているかにつきましては、米につきましては、作付面積の八割を把握可能な公益社団法人米穀安定供給確保支援機構が公表する水稲の作付け品種資料から、登録品種の割合を作付面積ベースで把握をしております。ミカン、リンゴ、ブドウにつきましては、農水省の統計の統計資料によりまして、品種別の作付面積ベースで把握をしております。バレイショにつきましては、都道府県報告の品種別作付面積を基に作付面積ベースで把握をしております。野菜につきましては、業界団体の資料によりまして把握可能な品種数ベースで把握をして、データをお示ししているところでございます。  また、都道府県の協力の下で、各県における主な作目につきまして使われている品種を調べまして、登録品種一般品種を整理をいたしまして表にして、農林水産省のウエブサイトにおきまして県別のデータを公表しているところでございます。  現場実態といたしましては、稲は、ブランド化の観点から、品質の向上を図るために現場自家増殖を行わないように指導されていることがあります。麦類、大豆につきましては、市場で農家が販売する品目とは異なりまして、実需の要請に応じて生産をされておりますので、実需が求める品種品質を満たすために自家増殖は行われていないという実態がございます。バレイショ、サトウキビなどは、病害虫防止の観点から、公的な管理の下で種苗増殖や配付が行われております。野菜につきましては、イチゴを除きまして、市販の種苗のほとんどが自家増殖が技術的に不可能なF1品種となっており、また、我が国の気候、環境の下では良質な種子の確保が困難でありますので、農家による自家増殖というのはほとんど行われておりません。  イチゴ、それからカンショなどの芋類は、農家が自分で必要な種苗増殖するということを前提にしております。このために現在も、都道府県増殖許諾契約を結び、許諾料も支払われた上で種苗を販売しているという実態がございます。このために、これらの今申しました作目につきましては、法改正によって新たに許諾手続が増えるということは想定をされず、影響はないというふうに見込んでおります。  一方、果樹につきましては、登録品種数の割合では公的機関が五割程度となっておりますけれども、栽培面積では一般品種公的機関開発品種が大宗を占めておりまして、民間開発した登録品種はほとんど栽培されていないという状況でございます。  このような中で、果樹につきましては一部で農業者による自家増殖が行われておりますので、新たに許諾が必要となる農業者が発生することが見込まれております。農家許諾契約を結ぶことにつきましては、果樹海外への流出対応が必要な品目でありますので、契約の必要に応じまして、現場での理解を得られるように丁寧に説明していく必要があると考えております。  今後、農業者負担を最小限にしつつ、新品種海外流出の防止を実効性あるものにしていくために、こういった作目ごとの実態に即して取組を推進してまいりたいと考えております。
  87. 舟山康江

    ○舟山康江君 ありがとうございました。  いろいろ各品目別に御説明をいただきましたけれども、多分、今回の法改正懸念をされるのが、登録品種の中で自家増殖が行われているものに限るわけですよね。  その中で、登録品種自家増殖が行われて、さらに、先ほど来の答弁の中でも、公的な機関が開発した品種に関しては普及増殖を目的としているのでなかなかそこは高くなるというのは考えにくいということですから、一番懸念が考えられるのが登録品種自家増殖が行われている民間育成品種だということなのかなと思うんですけれども、それは大体どのぐらいあるのか。  そしてまた、その部分がやはり許諾料が一番心配されるわけですよね。先ほども、公的品種がちゃんと育成されていれば、民間だけがばかみたいに高ければそっち使わなくなると思うんですけれども、その辺がやっぱり大きな懸念かと思うんですけれども、そこはどのように把握されていますでしょうか。
  88. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  種苗法に基づきまして我が国登録されている有効な登録品種数は、八千百三十五品種であります。このうち、公的試験研究機関が開発した品種の割合は二四%、民間企業開発した品種の割合は二九%となっております。作物別に申しますと、稲、麦類、大豆などの食用作物につきましては公的八一%、民間八%、果樹につきましては公的試験研究機関四八%、民間企業一二%、野菜につきましては公的試験研究機関四四%、民間企業三九%となっております。  今申しましたように、稲、麦類、大豆等の食用作物、果樹、それからイチゴなどは公的機関開発品種が大宗を占めておりまして、民間開発民間開発登録品種というのはほとんど栽培をしておりません。また、イチゴを除く野菜につきましては、市販の種苗のほとんどがF1であるとか、それから我が国の気候、環境の下では良質の種子確保が困難であるといったことから、農家による自家増殖というのは、民間企業開発した割合は多いんですけれども、自家増殖というのはほとんど行われていないという実態でございます。
  89. 舟山康江

    ○舟山康江君 ちょっと何かよく分からなかったんですけど、要は、民間開発登録品種自家増殖をしているものというのがどれだけあるのかなというところがやっぱり気になるところなんですよね。それは私がいろいろ聞いているところでは余りない気がするんですよ。ただ、まあそこは思い付きで言ってもいけないので、やっぱりそういったところも情報をちゃんと出していただきたいと思いますし、もう一つ、公的機関開発したものに関しては許諾料はそんなに上がりませんと言っていますけれども、やっぱりそこは非常に重要なところだと思うんですよ。  一つはやっぱり、これまた提案させていただきたいと思いますけれども、まず、国が農研機構なり都道府県の試験研究機関に対してしっかりと支援をしていくんだということをやっぱり公的な根拠を持って行っていかなきゃいけないと思いますし、もう一つは、いろんな公的な資金が入っている以上はやはりその公的機関許諾料が高騰しないように、多分しないであろうということですけれども、別にこれ強制力ないわけですから、やっぱりさせないように何らかの指導なりを国がしていくべきではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  90. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 国から農研機構に対しましては、種苗の販売時に徴収している許諾料につきましては法改正理由として高くしないこと、また、自家増殖許諾制とした場合の許諾料につきましては、許諾手続に必要な事務経費等について負担していただくことはあり得るものの、農業者にとって過度の負担にはならないこと、このように指導してまいりたいと思います。  また、都道府県等の試験研究機関が育成した登録品種につきましては、衆議院農林水産委員会で決議をいただいた附帯決議にもありますように、その手続等が農業者負担になることがないようにガイドラインを提示するなど、その周知徹底を図ってまいりたいと思います。
  91. 舟山康江

    ○舟山康江君 ありがとうございました。  まだ質問がありますけれども、次回にその続きについては聞かせていただきたいと思いますが、改めて、やはり国、公的機関の役割は非常に大きいと思うんです。そしてまた、様々な不安を払拭できるように、しっかりと引き続き疑問に答える丁寧な説明をいただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  92. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  種苗法は、農作物の新しい品種開発した人や企業に種苗の生産や販売する権利、育成者権を認めるとともに、農業者収穫物の一部を種苗として使う自家増殖を認めています。これはUPOV九一年条約に沿った対応だと思うんです。  一九九八年に種苗法改正したときに、当時、高木賢農産園芸局長は、種苗の育成する側と使う農業者の側の一種の調和点だというふうに答弁されています。  二〇〇九年に農林水産省の生産局知財課が編集をしている逐条解説というのがあるんですね、種苗法。これは、九一年UPOV条約は育成者農業者の利益の調和を図り、育種活動の自由、自家増殖の例外を容認するなど農業実態に即したものである、普遍的な制度となっているというふうに説明しているわけです。  政府はこれ、育成者農業者の利益のバランスを取ってきたんだと思うんですよ。ところが、今回、第二十一条の自家採種の規定を削除をしてバランスを変える必要があるんでしょうか。
  93. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 今ほど来議論がありましたとおり、例えば山形県の紅秀峰種苗等が流出をした、こういう事例が出てきたわけでありますが、現行法でもこの自家増殖されました登録品種種苗海外に持ち出すことは育成者権侵害になりますが、登録品種増殖実態把握ですとか疑わしい増殖差止め、あるいは刑事罰の適用ですとか損害賠償に必要な故意や過失の証明が困難となることから、海外持ち出しの抑止が困難となっております。  また、この法改正によりまして育成者権者海外持ち出し不可条件を付した場合には、正規に販売された種苗持ち出しはできなくなる結果、農業者個人種苗が狙われることが懸念をされますので、育成者権者許諾を必要とすることとしたわけであります。  他方一般品種については、農業者許諾後、許諾料も必要なく自由な栽培が可能であること、また登録品種についても、これはいつまでも権利を認めるものではなくて、育成者権者の存続期間が満了すれば一般品種となり、誰でも自由に利用ができるようにしております。  このように、種苗法の枠組みの下では、農業者による自由な種苗の利用と農業の活性化につながる品種開発の促進のための新品種保護の双方について配慮がなされていると考えております。
  94. 紙智子

    ○紙智子君 海外流出を防ぐ手だてというのは、農水省自身が、これ何度も出ていますけれども、海外において品種登録を行うことが唯一の対策だと言ってきたわけですよね。それから、衆議院質疑では、流出を完全に止めることは難しいという答弁をされているわけですよ。ですから、海外流出を防止するためというふうに言うんだけれども、これ本当に説得力はないなと思います。  種苗法の一九九八年改正以降、種苗海外に不当、不法に持ち出されて海外で生産されて逆輸入してくるので日本農業に大きな打撃を与えるんだという議論は、これ当時から何度もされてきたと思うんですね。それで、二〇〇五年の改正の前には、農水省植物品種保護の強化及び活用の促進に関する検討会がやられて、そこで自家増殖を見直そうという話が出ましたけれども、反対の声も多く寄せられて、これ見送られたと。それから、二〇〇七年の改正のときも議論になったんだけれども、このときも見送りになりました。  当時、農水省の生産局長は、さっき質問されましたけど、山田修路さんが答弁席に立っていたわけで、山田さんは、当時、農林水産省としては、これまで自家増殖を原則として自由にしてきたという理由があるというふうに言って、その一方で、検討会の報告もございますから関係者意見聴取も行っていきたいという答弁を当時されていたわけなんですね。  海外流出論というのは以前からある議論です。その中で、政府は冷静に育成者農業者の利益のバランスを取ってきたんだと思うんですよ。近年でいえば、この新品種育成者の権利を適正に保護するというのはこれ当然だと私も思います。これは余り反対はないんだと思うんですよ。  その保護の仕方というのはいろいろ世界では議論されてきていて、近年でいうと、アメリカのように新品種を特許として保護する国がある一方で、欧州諸国のように、植物の特性には美的感覚や味覚や人間の嗜好によって評価を異にすること、それから、植物の新品種の育成には枝変わりとか、それから突然変異とか、こういう発見によるものもあることから特許になじまないとする国もあるわけです。各国でこの植物の新品種保護するルール化を進める動きが進んできて、それで九一年のUPOV条約になっているんだと思うんですよ。  今回の改正というのは、これは育成者権のみを強化する改正じゃないかと。農家が種を使いたければ許諾料を払うように求めると、違反する者は裁判で争うと、まさにこれアメリカ的な仕組みを目指すものになるんじゃありませんか。
  95. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) まず、この優良な品種海外流出を防止するためには、各段階で、生産、流通等々で対策を講じることが重要であります。品種開発者にあっては品種登録海外でも適切に行うことや、あるいは種苗の流通業者にあっては販売条件の表示や伝達を適切に行うこと、また、生産者にあっては許諾に基づいて自家増殖を行っていただくことを求めることとしておりまして、それぞれの段階で取り組んでいただくものであります。  その上で、この今回の種苗法改正といいますのは、育成者権者保護をしっかりと適切にやっていくことによりまして育成者品種開発を後押しするものでありますが、このことによりまして農業者の求める高付加価値な品種が生産をされていく、さらに生産性の高い品種なども開発をされていく、その産地が形成をされて地域農業が活性化をしていく、これはまさに農業者のための改正だというふうに思っております。
  96. 紙智子

    ○紙智子君 まあ、そういうふうに答えるかなと思っていましたよ。育成者をちゃんと保護すれば回り回って農民のためになるんだというような議論だと思うんだけど、私は、やっぱり育成者権と生産者との間に、アメリカのように何でも裁判で争って、ある意味、対立と憎しみを持ち込むようなことというのはやっぱりいいのかと思うんですよね。  それで、元種苗課長の松延洋平さん、この方は新聞や雑誌でいろいろ発言していますけれども、種苗の生みの親は試験場だが、育ての親は農家なんだと、自家増殖を原則禁止にすれば農家育種は廃れてしまって、結果的には日本の育種力は低下につながると言われているんですよね。  育種の、種苗発展というのは育成者と生産者の共助なんだと思うんですよ。農家の育種の発展には試験場や農業改良普及所が大きな役割を発揮してきたと思うんですね。だけど、その予算と人員はどんどん近年削られてきていて、育種力の低下を招いているんだと思うんですよ。そういうところを見なきゃいけないと思うんですね。  政府は、本来、育成者とこの農業者の利益のバランスを取る役割を取ってきたんだと思うんですね。ところが、これ、一方の権利のみを強調するということはバランスを欠くことになって、これ政府の役割放棄になるんじゃないかと思うんです。  育成者の権利のみを強化したらどういうことになるのかということで、ちょっと配らせていただいた資料を見てほしいんですけれども、これは作物別の経営コストに占める種苗費の割合です。  単位は十アール当たりということで、米、大豆、麦、いわゆる主要農作物ですが、これは公的品種だと思います。十年間で見ると、米は三・九%から四・四%、大豆は六・二%から七・八%、小麦は五・四%から六・四%と、経営費に占める種苗費の割合が増えています。まあ、この数字自体がそんなに高くないのかなというふうに思う人もいると思うんですけど、徐々に徐々にこれ上がってきていると、増えてきているということが分かると思うんですね。  それから、野菜の方を見てください。統計上はたくさんありましたので、これ絞りました。露地の大玉トマトは六・九%から一四・九%で二倍強。施設大玉トマトは、平成二十一年七・二%から八・二%。それから、露地のキュウリは平成二十四年の六・四%から一三・一%に倍加しています。  なぜこれだけ増加しているのか、どう分析されているのかをお聞きしたいと思います。
  97. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  米、それから大豆、小麦というのが左の方にございまして、そこにつきましては、経営費、経営コストに占める種苗費の割合というのが増加をしているという御指摘でございます。ただ、一方で、種苗費自体を見ますと、ほぼ変わらないというようなことが見て取れるのではないかというふうに思っております。これは、経営費がいろんなコスト削減努力を続ける中で全体的に下がる中で、種苗費につきましては変わらないことから、ウエートが少し上がったというふうになるのではないかというふうに見ております。  野菜につきましては、今、米、大豆、小麦につきましては種苗費自体がそんなに変わらないというふうに申しましたけれども、確かにこの表で見ますと、種苗費自体が徐々に上がっているということが見て取れます。これは我が省の統計部が統計を取っておりますので、統計部に確認をしたところ、これは統計的な調査客体、調査をする対象が変わったことなどによってこの統計上の数字というのが変わってきているというふうに聞いたところでございます。
  98. 紙智子

    ○紙智子君 だから、野菜は生産費の調整やめているんですよね。だから、ばらつきが出てくると思うんですよ。それから、野菜は経営に占める種苗費の割合をこれ系統的には把握できなくなっているんです、今。ただ、それでも米、麦、大豆に比べると種苗のコストの比率が野菜は高くなっていますよね。  それで、農研機構は、民間と耐病性品種、つまり病気に強い品種などの共同研究を進めています。民間と共同研究しても、これ種苗代を安く抑えることというのはできるんだろうかと思うんですね。  二〇一八年、種子法が廃止をされて、事務次官通知や農業競争力強化支援法で公的機関の知見を民間事業者に提供するように求めているわけですよ。言わば野菜の共同研究は米や麦、大豆の先取りになるんじゃないかと。米でも、今、業務用米の種というのは公的機関民間の共同研究が進んでいるといいます。  民間への知見の開放、規制緩和が進みますと、これ、主要農作物の分野でも公的品種が後退をして民間品種が主流になるんじゃないかと。そうすると、野菜の種と同じように経営費に占める種苗コストが増加することになるということがあるんじゃありませんか。
  99. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  今回の種苗法改正につきましては、開発の主体を公的機関から民間企業に移行させるというものではございません。そうした中で、公的機関につきましては、生産現場のニーズなどを的確に把握をいたしまして、高品質なブランド品種あるいは地球温暖化に適応した品種などの開発に取り組んでおります。こういったところで極めて重要な役割を担っているというふうに認識をしております。  このため、農林水産省といたしましては、品質開発期間の短縮を可能とする育種基盤技術の開発、気候変動への対応などといったニーズに応じた品種開発地域ブランド品種開発するための育種素材の提供、こういったことに活用できる試験研究費の確保に努めているところでございます。  一方で、民間企業が供給する種子の中には都道府県が供給する種子と比べて高いものもありますけれども、これらの種子につきましては、収量が多く生産物の販売収入が多くなる、こういったような理由によりまして農業者自身の経営判断で選ばれているところでございます。  既に、この野菜、ありましたけれども、多くの民間開発品種が利用されている野菜におきましても、種苗代により農業者の経営が困難になっているという、こういった実態はないと承知をしておりまして、むしろ多くの優良な品種開発が進められることによりまして農業者の選択できる品種が増えているというふうに考えているところでございます。
  100. 紙智子

    ○紙智子君 公的なものから民間にだんだんこう流れが変わっていったら、やっぱり経費に占める種苗のコストというのは増加するんじゃないかというふうに聞いたわけですよね。ちょっと今の回答では、そこのところが釈然としないわけですよ。  種苗コストが増えていったら影響を受けるのは農家なんですよね、生産者なんですよ。それを、通常は考えられないとか考えにくいというようなことは、これ主観的なことであって、絶対そんなことないっていうんだったら、それにふさわしい資料をちゃんと出してほしいと思うんですね。  私、登録品種の種代や許諾料について各地で聞いてきました。秋まき小麦の登録品種の価格は、種子一袋当たり都道府県の試験場が開発したものは十五円、農研機構開発したのは七十円から七十五円と五倍前後なんですね。バレイショでは、試験場が三円から四円、農研機構の価格は十倍から二十倍だと、民間だと百倍にもなっているわけです。  どの種を使うかというのは農協や農家の選択なんだ判断なんだというんだけれども、それでも、都道府県の試験場が開発した種苗よりも農研機構民間ははるかに高いというのが実態なんですよ。許諾料は利率が決まっていて、この売買金額に率を掛けるというふうに聞きました。消費税の計算のようなやり方なんだと思うんですけれども。  農研機構が高くなっていったのは、これ独立行政法人になってからだと聞きましたけれども、そうなんじゃないですか。
  101. 菱沼義久

    政府参考人(菱沼義久君) お答えいたします。  農研機構は、いろいろと知恵を集積をしまして様々な品種を今作成しております。例えばシャインマスカットというのが非常に有名になりまして、非常ないい値段で売れているということでありますので、そういった高付加価値のものがあるような農作物についてはやはりそれなりの値段で売られているといったことだと思っております。  以上です。
  102. 紙智子

    ○紙智子君 答弁になっていないなというふうに思うんですよ。  それで、利用許諾書を交わしていて、なかなか、農研機構のを聞いても、夏からずっと聞いているんだけど出してこないわけですよね。それで、相手先と契約しているからだというんだけど、契約書を出してもらったらただし書があって、その中には出せるものもあるんですよね。  農研機構のこの種苗代というのは通常国会のときから求めてきたわけですけれども、依然として提出を拒んでいると。許諾制にしても高くなることは通常ないとか考えにくいとかという期待感を言うんじゃなくて、やっぱり農家負担は増えないんだというんだったら、ちゃんと分かる資料を出してほしいと、改めてこれを申し上げておきたいと思います。  種苗代は、農研機構よりも民間はもっと高くなっています。この種苗の知見を外資を含む民間事業者に提供することになれば、公的品種から民間品種が主流になる可能性があると。これまでの質疑海外流出を防止するための改正だというふうに言っても、これ、どれだけ効果があるのかということもよく分かりません。農家負担は増えないといっても、客観的な資料もちゃんと出てないと。これでは納得できないと思うんですね。  最初に言いましたように、二〇〇五年、二〇〇七年の改正前は生産者や関係者意見を聞いて立ち止まったということがありました。種苗法の論点の原点というのは、育成者農業者の利益のバランスなんだと思います。  私のいる北海道の北海道新聞が社説書いているんですけど、農家負担懸念も消えず、継続審議を検討すべきだという社説出しました。意見書や請願もたくさん今出ています。毎日のように電話も来ます。農水省は誤解があるんだと言っていますけれども、誤解はまだ解けてないと思うんですね。徹底審議をするように強く求めて、質問を終わります。
  103. 須藤元気

    ○須藤元気君 こんにちは。無所属の須藤元気です。ほかの先生方と質問が重複するところはあるかもしれませんが、私が素朴に思ったことを質問させていただきます。  時間や手間暇を掛けて開発を行うのでその分の知的財産権を守ってほしいという開発者側の要望から制定されたのが種苗法だと理解しております。知的財産権として適切に守られることで、開発者は次の品質開発へのインセンティブを持つことができます。よりおいしく、より強く、時代のニーズに合った品種が生み出されることは、農家さんの手取りの向上、そして私たちの消費者の生活に豊かさをもたらせてくれます。  しかし、今回の種苗法改正案には、登録品種自家増殖許諾制とするという内容が含まれています。政府許諾をもらえば禁止ではないと説明していますが、もし開発者から許諾を得られなければ、若しくは許諾料が高額で支払うことができなければ、本改正案は農家の種の再利用を一律禁止とするという意味を受け取られるかもしれません。ここに農家さんは不安を覚えているのではないかなと思います。  昔から、農家さんの種取りが地域の気候風土に合った品種を育て、地域農業を支えてきました。このため、UPOV条約においても、農家さんの種取りについては一定の条件の下で各国に任せています。日本種苗法でも、これまで開発者と農家さんの権利のバランスが図られてきました。しかし、本改正案によって開発者側へ一方的な有利な法律になり、日本の伝統農業が失われていくのではないかと懸念しているところが正直あります。  本改正案の目的について、農水省は主に種子海外流出を防ぐためと説明されています。この海外流出といえば、何か中国日本のアニメのアミューズメントパークができたみたいなニュース見たことはありますが、実は私自身海外流出というものを経験したことがあります。  中国の広東省発の生活雑貨店、メイソウというお店があります。今あるか分からないんですが。このお店は、ちゅうちょなく日本のお店のいろいろな要素をコピーしまして、日本のメディアでも取り上げられました。このお店の名前やビジネスモデルが百円ショップのダイソーでして、ロゴや店舗のデザインがユニクロにそっくり、そして取り扱う商品が無印良品のようなものと、なかなかタフなことをされております。  実は私、WORLD ORDERというダンスパフォーマンスグループをやっていまして、スーツを着てロボットダンスをするグループなんですが、このメイソウのお店のプロモーションビデオに勝手に我々の、私たちのグループの映像と楽曲を無断で使用されていました。アーティストにとってこの広告料というのは収入的に物すごく大きなものがありまして、私たちのグループも広告で飯食っていました。それをお金を払わず無断で使用すると、まず日本ではあり得ないことです。実際に困ったんですが、中国ですし、どうすることもできませんでした。ただ、日本のメディアが取り上げてくれたので、逆にいいプロモーションになったと無理やりポジティブに解釈したのを覚えています。  さらに、ちょうど今月の話なんですが、私のやっているグループ、WORLD ORDERの楽曲を配信しようとしたら、配信会社から連絡がありまして、この曲は配信できませんと来たんです。なぜかと問合せをすると、この楽曲は既に配信されていますと連絡が来たんです。多分、多分というか、それで確認したところ、外国人の方が、ユーチューブで上げている動画を勝手にダウンロードしてその楽曲を、タイトルは一緒なんですけれども、アーティスト名を変えて勝手に世界配信をしていたんです。ですから、こういった経験がありまして、この著作権問題という難しさというのを本当に体感しております。  ですから、今回のこの種苗法改正案である、この大義名分である種子海外流出を防ぐためという気持ちは十分に分かりますし、本当に大賛成であります。しかし、もし海外流出を本当に防ぎたいのであれば、海外品種登録するしかないと、農水省は過去に明言されています。私もそういった経験があるので、やはり海外登録するしかないなと思うわけです。  そこで、質問なんですが、この種苗法改正案海外流出は避けられないと私は思うんですけれども、その辺どうお考えでしょうか。
  104. 野上浩太郎

    国務大臣野上浩太郎君) 今先生からも中国においての御経験をお話をいただいたわけでありますが、海外においては特に、この侵害者が証拠の隠滅を図りましたり、あるいは侵害のターゲットとなる品種を切り替えるということもありまして、まさにその対応がイタチごっことなることが想定をされますし、また、侵害が発覚した段階では既に現地で産地化された収穫物が出回っておりますので、現に多額の損害が発生をしてしまうということになります。  御指摘のとおり、当然海外でこの品種登録をするということは極めて重要だというふうに思いますが、併せて、やはり購入した種苗海外持ち出しを防止できないこの現行法の規定を改正をして、そもそも持ち出しができないようにすることも極めて重要であると考えております。
  105. 須藤元気

    ○須藤元気君 ありがとうございます。  そのために、なぜ原則オーケーだった農家さんの種取りを原則禁止へ転換するのか、正直余り腑に落ちないところがあります。そちらの説明お願いいたします。
  106. 宮内秀樹

    ○副大臣宮内秀樹君) お答えをいたします。  先ほどからも出ておりますように、紅秀峰我が国への逆輸入というような事例が起きたということで、まさにこれまでの管理が緩過ぎたというふうに考えておるわけでありまして、現行法でも、自家増殖された登録品種種苗海外に持ち出すことは育成者権侵害になるわけでありますけれども、登録品種増殖実態把握や疑わしい増殖差止め、あるいは、刑事罰の適用や賠償請求に必要な故意や過失の証明が困難なことから、実態上、海外持ち出しの抑止が困難となっているというふうに現状認識をしております。  また、法改正によりまして、育成者権者海外持ち出し不可条件を付した場合に正規に販売された種苗持ち出しができなくなる結果、農業者個人増殖種苗が狙われるということが懸念されるわけでありますので、このために、登録品種自家増殖については育成者権者許諾を必要とすることとしたいというふうに考えているわけであります。  なお、この今般の改正法案は、自家増殖について育成者権者許諾に基づき行われることとするものでありまして、禁止するというものではありません。
  107. 須藤元気

    ○須藤元気君 素朴な疑問ですけど、こっそり持ち出そうとするのをどうやって水際で取り締まるんでしょうか。
  108. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えいたします。  種苗法に規定します育成者権侵害する物品につきましては、関税法に基づきまして税関において取締りが行われるということになっておりますけれども、現在の種苗法では、登録品種種苗を購入して海外に持ち出すことにつきましては育成者権侵害にはなりませんので、事実上、税関で取り締まるということは困難な状況となっております。  今般の法改正におきましては、輸出先に制限がある登録品種を持ち出す場合につきましては、育成者権侵害物品ということになります。このため、育成者権者による輸出差止め申立て制度、こういった制度の利用を通じまして、事前に持ち出しの動きを察知をいたしまして税関で差止めをすると、こういったことが可能になります。  また、利用条件に反しました海外持ち出しを制限できるようにするということでそもそも海外持ち出しが抑制される上に、種苗又はその包装に利用制限が付された登録品種であるという、そういった旨の表示がされるようになりますので、税関においても確認ができる、確認がしやすくなるというふうに考えております。  さらに、外国人、外国商社が海外持ち出しが制限された登録品種を買い付けたような場合、こういった場合には海外に持ち出されるリスクが高いというふうに考えられますので、農林水産省にその旨の情報提供をしてもらい、税関に速やかに情報共有することで、あらかじめ海外への持ち出しが、情報共有をして、海外への持ち出しが制限されている品種情報を税関に伝えるということを通じまして、水際措置の実効性確保に向けて税関ともしっかりと連携を図ってまいりたいと考えております。
  109. 須藤元気

    ○須藤元気君 ちょっと正直、ちょっと余り分からなかった部分もあるんですが。  あともう一つ、ちょっと素朴な疑問なんですが、この試験研究目的であれば開発者の許諾は不要であり、輸出も自由となりますが、そのような目的の確認をどのように行うんでしょうか。輸出後、実際に試験研究目的で利用されたかどうかを確認するのってどうやってやるのかなと思うんですけれども、御説明お願いいたします。
  110. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  委員指摘のとおり、育成者権の効力は、試験又は研究目的での利用には及びません。このため、持ち出しをする者自らが試験又は研究目的で種苗海外持ち出しする場合、これは育成者権侵害にはなりません。  しかしながら、目的を偽って持ち出した後に、持ち出し種苗種苗から得られた収穫物、こういったものを第三者に譲渡あるいは販売していることが判明した場合には、これは当然育成者権侵害になりますので、このような譲渡、販売をした持ち出し者が日本に再入国をした場合には刑事罰あるいは損害賠償請求の対象になると、こういった仕組みになっております。  また、流通段階におきましても、法律改正後は、海外への持ち出しが制限されている登録品種につきまして、外国人が試験研究目的と称して購入しようとする場合には、その具体的な用途を確認をして、試験研究目的であることが確認できなかった場合には販売しないといった、こういった意識を醸成していただきまして、官民で協力をして流出防止策を行ってまいりたいというふうに考えております。  また、現地において品種登録がされている場合では、当該国において栽培や流通の差止めを受けるということができますので、持ち出された後においても不正な種苗の利用に対応できるように、予算支援ではありますけれども、他国での品種登録というのを今後とも進めてまいります。
  111. 須藤元気

    ○須藤元気君 説明ありがとうございます。  先日、知り合いの有機農家さんたちから種苗法について意見を伺ってきました。ほとんどの方が種苗法改正案反対でした。多くの有機農家さんが在来種の種取りをしているので、将来にわたって不安なく種を取り続けることができるか心配だそうです。もちろん、種苗法は新たな特性を有する品種登録して守る法律ですから、長い年月の間栽培されてきている在来種は種苗法の対象ではありません。しかし、本改正案によって権利者の保護が進むことにより、不安を覚えていらっしゃいます。  有機農家さんたちが特に心配されていたのが、在来種の一部が改良されたものが登録され、自らが栽培する在来種と類似しているとして訴えられることはないのか。海外では実際あります。そして、もう一つが、風に乗ってきた登録品種の花粉が自らが栽培する在来種と交雑することで、その在来種の種取りを禁止されてしまうことはないのかということなんですが、この二点の御説明お願いいたします。
  112. 太田豊彦

    政府参考人太田豊彦君) お答えをいたします。  品種登録制度では、出願された品種と類似する既存の品種の比較栽培を行った上で、植物品種ごとにそれぞれ五十から百項目程度の、大きさあるいは色といった外形的な性質や病害特性あるいは耐暑性、こういった生理的な性質を記録した特性表というのを作りまして、これらの性質のいずれかが既存品種と明確に区別される場合に品種登録が可能となっております。  在来種の一部を改良いたしまして、その在来種と明確に区別されるに至った品種につきましては、品種登録は可能でございますけれども、その登録をした育成者権が改良の基になった在来種に及ぶということはありませんので、基の在来種を利用している農家が訴えられるということはありません。  また、一般に、交雑すると必ず植物ごとに、今申しました五十から百項目程度ある、こういった特性が変化をいたしますので、登録品種と交雑して得られた品種の特性が登録品種の特性と一致するということはありませんので、在来種の利用が制限されるということもありません。  以上であります。
  113. 須藤元気

    ○須藤元気君 今の日本には在来種を守るための法律がありません。開発者の権利ばかりが重視される法改正がなされていく一方で、在来種をきちんと守ることを明言する法律がないことが有機農家さんたちの不安の根源にあるのではないかなと思います。在来種には育成者権の効力が及ばないことを明言し、在来種を保護する法律有機農業を守るためにも必要です。  世界では自家採種を含めた農家の権利を守る流れが活発になってきています。国連は、小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言において自家採種を含めた農家の権利を守り、EUでは今年の二〇二〇年より有機栽培農家の自家採種が自由になったとお聞きしました。これらの動きは、種というのは人類が共有する社会的共通資本ということを主張していると私は思います。  世界は、グローバリズムや新自由主義からの脱却を図り、自国を守る方向にかじを切っているように思います。しかし、日本は、まあ農業だけではないと思うんですけれども、このグローバル企業の権利を優遇して、世界の流れに逆行してはいないでしょうか。その点について農水省としてはどのように認識しているか、お伺いいたします。
  114. 熊野正士

    大臣政務官熊野正士君) お答えいたします。  我が国の国際競争力を強化するためには、産学官が連携をし、それぞれが持つ知見を生かしていくことが重要であり、これは農業分野においても同様です。このため、産学官を挙げた種子種苗開発、供給体制を構築し、品種開発を進めるため農業競争力強化支援法を制定し、多様な需要に応えられるよう、都道府県の力に加えて民間の力も生かし、官民の総力を挙げた種子供給体制を整備するため主要農作物種子法廃止することとしたものです。  その上で、種苗法改正は、我が国開発された新品種海外流出しないよう、登録品種について、出願時に国内利用限定利用条件を付せば海外持ち出しを制限できること、登録品種自家増殖については育成者権者許諾に基づき行うことといった措置を講じるものであります。  このように、政府がグローバル企業の権利を優遇しているとの御指摘は当たらず、むしろ、今般の種苗法改正は、日本の強みである植物品種知的財産を守って、日本公的機関日本の企業の種苗開発を促進することを通じ、産地形成を後押しし、地域農業の活性化に資するものであり、農業者のための法改正であると考えております。
  115. 須藤元気

    ○須藤元気君 農業というのは、やはりどうやってお金をもうけるかというスキームで論じるべきではないように思います。やはり、国民が飢えないように、どんなことがあっても安定的に供給されるような仕組みの中に置かれるべきではないでしょうか。その意味で、農業は社会的共通資本です。私的な営利事業ではありますが、公共的な営み、社会的な責任を担った事業として捉えられるべきだと私は思います。  農業競争力強化支援法八条四号には、これまで国や自治体農業試験場などが開発してきた種苗の生産に関する知見を民間事業に提供することを促進せよと書かれています。種子法廃止と今回の種苗法改正がそろうと、日本で綿々と受け継がれてきた農業の基盤としての公共的な財産である種子が失われてしまうんではないかと心配しております。  国や地方自治体が行ってきた公的種苗事業を民営化に委ねることは食の安全保障を放棄するに等しいと思いますが、どうお考えでしょうか。
  116. 天羽隆

    政府参考人(天羽隆君) お答え申し上げます。  現在、国や地方公共団体は稲、麦、大豆に限らず、先ほどから答弁をいたしておりますとおり、果樹なり芋、サトウキビといった地域農業に即して、品種開発種子種苗の生産などを行っているところでございます。  委員指摘農業競争力強化支援法、それから種子法が廃止をされたといったようなことが民営化なり食の安全保障を放棄するに等しいということでございますけれども、種子法の廃止及び競争力強化法など含めまして、都道府県、これまで全国一律全ての都道府県に対して一律に義務付けていたというやり方を廃止いたしまして、都道府県の力に加えて民間事業者の力も導入をして、総力を、官民の総力を結集して、種苗開発、供給体制を維持して進めていこうということで、今回の種苗法改正にもつながっているということであろうと考えております。
  117. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 時間が参っております。
  118. 須藤元気

    ○須藤元気君 どうもありがとうございました。
  119. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  120. 上月良祐

    委員長上月良祐君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、二名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、有限会社矢祭園芸代表取締役・全国新品種育成者の会前会長金澤美浩さん及び公益社団法人国愛農会会長家族農林漁業プラットフォームジャパン代表村上真平さんでございます。  この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、金澤参考人、村上参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑お答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず金澤参考人からお願いいたします。金澤参考人、どうぞ。
  121. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 本日はこういう場にお招きいただきまして、本当にありがとうございます。全国の育種を手掛けている生産農家の代表として、今回の発言をさせていただきます。  まず私の自己紹介で、私は、福島県の矢祭町というところで、東北の一番最南端で、さらに二十数年前、合併しない宣言をしたあの町だと思えば思い出していただけるかと思います。そこで、私は花の鉢植えの生産をしております。  高校を卒業後、どうしても花が作りたくて、実際のいわき地区にある花生産農家に一年ほど研修に行き、そして昭和四十九年から鉢花の栽培を始めました。  周りには、コンニャク、それから水稲、そういう畑作のメーンの町ですので、花など作っているのは誰もおりません。そのために、自分からいろんな市場さん、花屋さんに出向いていっては、情報を集めながら販売をしていたわけでございますが、平成のちょっと前ですけれども、ガーデニングブームと称した花の需要がすごく伸びてきて、それで、花を、やはり注目される作物として、みんなから注目を集めるようになってきました。その中で、今後、やはりこの田舎の米麦、それにコンニャクとかシイタケよりも、4Hクラブの仲間に、この花作りというものを皆さんにお教えしながら、平成元年に矢祭鉢物研究会という鉢物専門の団体をつくりました。  その中で、自分たちの花作りを地域産業の一つの核にしようということで、八人のメンバーでいろいろと勉強していきながら、さらに私が育種という部分のところを、育種開発、新しい、地元に根付くような新品種を作りながら、その会員のみんなに配りながら、その中での、広いフィールドの中で更に優良な品種を選びまして、更に改良を進めていって、矢祭町の独自のオリジナル商品を多数作出してまいりました。そういう流れもありまして、育種はその時代から少しずつ本格的なものになってきました。  その後に、そういったものの市場での評価、それから花屋さんからの評価を聞いて種苗メーカーさんもある程度見に来るようになりまして、そういう研究室の人たちとの交流がすごく多くなってきて、そういう中で、余剰の、余った分の種を何とか、種苗会社のカタログに載せて全国販売しないかということも始まりまして、そこから本格的に販売のための育種開発ということ、それに併せて種苗登録と、そういったものもそういう人たちのお力を得て少しずつ登録をしてまいりました。現在、登録数も七十以上の登録数、それ以上に登録を申請していましたけれども、現在五十数種類くらいが今農林省の品種登録としてまた生き続けております。  そういうことで、その間に自分も、いろいろ研さんも含めまして、当時の全国の生産協会の品評会と称したものも含めて農林大臣賞を三度ほど受賞しております。  そういったこともありまして、さらに、種苗メーカーさんとの協力も得ていろんなものを手掛けるようになりました。特に育種をしていて、ごく最近ですけれども、ジャパンフラワーセレクションって、自分も委員にはなっていたんですけれども、この度委員を退職しましたけれども、何とかそのジャパンフラワーセレクションの中に何か金澤さんのものを出展してくれないかと言われて、先日出したところ、自分の作ったシクラメンのフルダブルのものが今年のジャパンフラワーセレクションの第一席のフラワー・オブ・イヤーという賞を昨日いただいたということで報告を受けました。  そういった形でそういったものも含めてメーカーさんと育種をしていきながら、新しい品種を作出しながら、今度はメリクロンという、もうこれ以上種では増やせない部分のところをクローンで何とかできないかということで、再三、昔からメーカーさんとも自分の商品を提供しながらやり取りしまして、今回の賞をいただくことになりました。病気のない心配の苗を安定的に供給できるので、我々にとってみれば大きなメリットがありました。  この頃からカーネーションも育種を手掛けまして、現在、商品名で国内ではマジカルチュチュと言っていますけれども、近年、許諾先を通してこの品種系統群の一部をアメリカの方でも発売が始まっております。また、アネモネ属の品種の中のシュウメイギクというものも、私がこういう形にできればいいなと思っていろいろと交配した中で、それがヨーロッパの種苗メーカーに見初められまして、それで今アメリカとヨーロッパで向こうのパテントを取りながら、許諾を進めながら今販売しております。どれも結構な数量を海外で売ってもらっております。  それにつけて、また、自分の所属している会の中でいろいろ海外との研究若しくは視察ということで本格的に行っていて、今海外のミニトマトや、そして米、それからその他の野菜も含めてサンプリングしてまいりまして、日本の風土に合う生産性の高いものをどうやって作ろうかと今改良しております。なかなか、海外から来るものの品種においては日本の風土に合わないものが非常に多くて、非常に生産性が低い、そういったものもございます。やはり農家さんの、日本のこの気候に、風土に合う、そういうものを改良していきながら、今開発しております。  十五年掛けてやっと国産のラズベリーのめどが立ちました。というのは、ある国内の大手の果物の輸入会社から十五年前に打診がありまして、今、その当時、一千トン、アメリカ、メキシコからラズベリーの冷凍物を輸入していると、そういう中で、国産を何度か、いろんなJAにお願いして苗を配って、生産してくれとお願いしたんですけれども、なかなか商品が上がってこない、みんなやりたがらないということで、そういった部分を、何とか国産のそういう品種を作って、生産性を高めるための品種を作ってくれないかと、そういう依頼を受けましたので、何となく、私は本業が花なので、だけれども、まあ、私の会のメンバーの中にはたくさん果樹やそういったいろんな育種をされている方がいまして、そういう人たちにお話を聞くことができたので、私も面白そうなのでそれを引き受けました。  それで、十五年の年月でいろいろと、国内に売られている、販売されているラズベリーの苗木集めまして、実際に栽培をして、何が悪いのかということでいろいろ検索をしてきて、種をまいて、交配をしていって、そういったものを恐らく何万本というほど捨てたでしょう。その中の何個体かは優良なものを残していきながら、実際の畑で作って生き残って、非常に丈夫でなおかつ収量が非常に多い品種が、一群が何品種か見付かりました。それを合わせて、海外のものと比べても全然収量が違う。そういったものを今、地域興しとして作り始めているところです。  今は二千五百トンの輸入で、国産が何と五トン未満なんだそうです。そういう中で、四十億ぐらいの輸入量だと聞き及んでおります。  何とかこういった部分の、ラズベリー、そのほかの野菜類も、欧米ではポピュラーですけれども日本では全くなじみのないものがたくさんございます。こういった、オリンピックを契機に、こういう地方の在の中に欧米のいそしんだ野菜、果物とかそういったものをできていたら、本当のそれがおもてなしになるのかなという気はします。  また、こういったものも地域興しの、耕作放棄地を開墾したりして、また、総務省である地域づくり協力隊の隊員が今二人うちに来ております。そういうことで、こういう地方の過疎の地区で、そういう人たちの部分の定住、それに地域の産業として雇用を創出していく、そういったものも含めて、今、町でも一生懸命応援していただいておるところです。  それから、全国新品種育成者の会についてちょっとお話ししたいと思いますが、我々個人の生産者、育種者は本当に、農業品種開発に取り組んではいるんですけれども、国の研究所や県の試験場のような組織もない中ではなかなか情報も集まりません。そこで、全国の個人育種家が集まって、全国新品種育成者の会という情報交換を行う組織をつくって、もう三十年以上たっております。私は二十数年前に皆さんから勧誘を受けて組織に参加しております。  私は花がメーンですけれども、果樹や野菜の育種家さんたちもたくさんいらっしゃいます。例えば、シャインマスカットよりも十年も前に、シャインマスカットと同じ手法で、実は、瀬戸ジャイアンツという、そういう、作られている花澤ぶどう研究所の花澤さんもおられますし、また、その影響力を受けて、同じ地区でいろいろと育種の方法、開発の方法を教わった、今、あの山田元農林大臣さんと対談をウエブサイトでしました岡山の林ぶどう研究所の林君も今副会長をしております。今、林さんはマスカットジパングという品種開発しまして、農家との直接契約でブランディングに取り組まれております。  会員を始め我が国個人の育種家は、公共機関や種苗会社開発に負けず、いい品種開発しています。新品種開発した場合、それぞれお互いに応じて展開を図っていますので、必ずしも権利化せずにオープンに利用してもらう場合もありますが、いいものを持続的に供給できるような権利化をして、きちんと供給を行うという方もいらっしゃいます。
  122. 上月良祐

    委員長上月良祐君) お時間ですので、御意見をおまとめください。
  123. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) はい。  私たち個人育種家等の立場としましては、長年いろいろと時間と経費を掛けてきたものを、どうやって自分たちの開発したものの中で、今の現行の中ではその部分の権利をリターンすることができないものもたくさんございます。この辺を何とか、花や野菜のような形で果樹の部分を何とか是正していってもらうことが私たちの長年の果樹育種農家の夢ですので、これを何とかお願いしたいと思っています。  済みません。ありがとうございました。
  124. 上月良祐

    委員長上月良祐君) ありがとうございました。  次に、村上参考人お願いいたします。村上参考人
  125. 村上真平

    参考人(村上真平君) 済みません、ちょっと椅子が座りづらくて、皆さん質問には座って答えますが、十五分間は立ってしゃべらせていただきます。  今紹介にありました村上真平と申します。  公社全国愛農会という小さな農業団体ですが、戦後、七十五年前にできた農業団体であります。この農業団体は、初めにその創始者が、第二次世界大戦、あの太平洋戦争の自分たちの侵略戦争に入ってしまったということを受けて、まず世界平和、自分たちが、農業団体であるけど、まず世界平和を求める、そして、愛と協同の理想農村の建設をする、そういう祈りの下に発足した団体であります。私は現在その団体の会長を務めさせてもらっています。  また、もう一つありますが、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンというところの団体の今代表もしております。  この家族農林漁業というものは、国連が去年より家族農業の十年ということで、SDGs、これを二〇三〇年に達成するためには貧困と飢え、これを解決する以外にはないと。そのためには、この家族農林漁業、まあ家族農業という言葉で言っていますが、簡単に言えば第一次産業ですね。自然の中で自然の恵みとそれを利用して、食べ物、住むところ、そして着るものも含めて作る、こういうものが本当にこの世界平和を、持続可能な社会をつくるのであるのならば、この人々が生きれる世界にならなければならない。そして、この人たちこそが世界の環境と、それから地域の文明を守っていると。そういう意味で、この家族農林漁業の十年を是非多くの方々に知っていただいて、小さい農業であるということが本当に自然を守り、その地域を守るということ、そのことを皆さんにお伝えしたいということで始まった団体であります。  今回、この種苗法のことに関して話してくれということを数日前に受けまして、最初はいろいろと考えました。というのは、なぜ農業者が種を取っていけない、苗を取っていけない、それを使っていけないのか。農業というものは、現在でこそいろいろな種が、F1とかあって種ができないのもありますが、つい五十年ほど前まで、農業は一万年前に始まりました、九千九百五十年間は、全てのものは農民が種を取り、自分たちで育種し、そしてそれをずっと続けてきたわけです。今使っている様々な種類の、大きな会社が、小さな会社でも、種の基にしているものは全て農民が営々としてつないできたものです。つい五十年ほど前までです。F1というものができたのが、日本ですと五十数年前ですね。そのF1にしても、それまであった様々な種類を使って育種しているわけです。  農民はなぜ育種するのか、なぜそれを育てるのか、それは自分の生活であり、農民は、この愛農会の第一、急に変えて済みません、愛農会の僕らのミッションステートメント、綱領ですが、その第一はこういうものです。古いですけど、ちょっと言います。一つ、我々は、農こそ人間生活の根底たることを確信し、天地の化育に賛して、衣食住の生産に精進せん。古い言葉ですが、簡単に言えば、私たちは農こそが人間を支えている基盤だということを確信する。これはどういうことか。私たちは、そういうことに関わっているということに誇りを持っているということです。そして、天地の化育、つまり天と地、自然の育てる力、今で言えば生態系、これに賛し、私たちが育てる。それに賛同して、手伝いながら衣食住の生産に精進する。これを私たちの第一の綱領と思っておりますが、自分たちが種を取るということ、そして種を育て、どんどんどんどん作っていく。  実際に作っていけばいろいろな種類が出てきて、そこからまた変わったものを選んでいってという形で、ずっと今まで育種というのはされてきましたし、F1ということで、交配させてそこから選んで、十年ぐらいかけて固定するということも、今、日本農業研究所はやっていますよね。  そういうわけで、種というものは常に、私たちはいろいろなものから種を作りますが、それをまず自分たちが育てて、そして本当にいいものを続けていく。作った人は、自分の種がいろんな人に使われることに喜びを感じる。農民は、同時に種を作る人たちでありました。  それが今、農民は種作っちゃいけないということを堂々とこの国会の場で話をする。すごいことだと思っています。この背景に何があるのか。それは、僕は、言葉が悪い、ずっと昔からモンサント法案というのがありました。遺伝子組換えの種を作ったときに、遺伝子組換えの種は、これはF1と違って次にまた植えられるんですね。それで、彼らは遺伝子組換えのやつを農家と協議して、自分たちの使うなと言ってもなかなか、みんな使ってしまうということで、彼らはその作った人たちをみんなスー、告訴していって物すごい莫大なお金を取ったということがあります。  ただ、それは世界的に皆さんに非難されたものですから、その後やったことは、遺伝子組換えで自殺する種を作ったことです。自殺してしまえば、一回目はいいけど、二回目は自殺してしまえば使えない。でも、それは倫理的に問題だということで止められました。  そうすると、彼らが自分たちが守るためには、種を農民が取らなければいいということです。その力がここへ及んでいるのかどうか分かりませんが、私は今この場で、農民が当たり前のように種を取って、そしてそれを育て、そしていいものをみんなに分け与えながら、そしてそれによって人々を養ってきた、その者、農民に対して、種を作るな。もちろん、種苗されている方、まあ今日は同じ福島県ということであれですが、非常にすばらしいものを作っておられると思います。そして、作った方々が一番うれしいのは、それをいろんな人が使ってくださることですよね。本来は喜びを分かち合えるもので、これによって私だけがもうかるという考えではやっていないと思うんです。  そういうことを考えたとき、もう一つ、余りそのことを話すと長くなりますので、もう一つは、やはり二〇一八年に国連が小農宣言、小農の権利宣言、これは小農と農村に住む人々の権利に関する宣言です。人権憲章みたいなものですね。これで、国連、大多数で、まあ日本は賛成しませんでしたが、様々なディベートがあった中で、農民たちが守ってきたもの、名も知らない人たちが守ってきたものを、種を取る権利を取るということはあり得ないということで、国連では、農民は種を取る、種苗、それを取り続けることを権利として認めるということが決定されております。これも、つまりSDGsを二〇三〇年に達成させるための一つのステップでもあります。私たちは、ここで皆さんがこれからいろんな法案を作っていただくんですが、世界のこの流れの中で日本も持続可能な社会をつくるための一役を担う、そういうことで皆さんは国会議員になってここにおられると思います。そういう全体の中で私たちが今やろうとしていることが何なのか、そういうことを是非考えてほしいと思います。  最後に、僕はバングラデシュに六年間海外協力で行っていたことがあるんですが、そこで出会ったある団体が一九九一年からある農業運動を始めました。今では三十万の農家が種を取り、そして種を分け合い、有機農業、自然農業でやるという農業運動になっております。そして、そこの中心的なことをやった女性のグループのメンバーでベグンさんという方が、二〇一五年にFAO、世界農林機構に表彰されました。その理由は、SDGというのは二〇一五年ですね、SDGs、つまり農村の貧困や様々な苦しみ、そういうものを救い、立て直すために、農民として頑張った人に与えた賞です。それは、ノヤクリシーアンドロン、新しい農業運動ということで、そこでやったメンバーであり、僕もよく知っている方でした。  彼らが言っていることはこういうことです。必ず種は自分たちで取ります。家に行くとすばらしい種の倉庫があります。そして、必ず地域に種の、シードストアがあるんですね。そこからはみんな種はただでもらうんです。欲しい人、ない人は、手で一つ、これだけもらったら返すときに二つ返す。じゃ、その返したものをきれいに掃除してきちっとやるというのは誰かというと、種の委員会が二十人ぐらいおりまして、そこは八百ぐらいの世帯ですが、そういう人たちの種を世話していました。今年一月、そこへ行って彼らとその種のところで話してきたときに、彼らに、なぜ、大変です、きれいにして次に使えるようにする、あなたたちは全然お金ももらわないで、これやっているのはなぜですかと。それは、自分たちにとって誇りなんだと。この種を守ることが自分たちの将来の人たちを守ることなんだと。そういうことに選ばれて、その委員会としてやっていることに誇りを持っていると。  僕は今、この中で種苗を作っている方が問題だとは言っていないんです。なぜ、いろいろな形で今回、外国へ出るとき、いろんなことを言っていて、今回の法律でそれを阻止できないことが分かっているにもかかわらず、まず段階的に農民の種や種苗を使うということ、この当たり前の行為を止める、それがどういう意味なのかをよく考えて皆さん審議していただきたいと思っています。  以上です。
  126. 上月良祐

    委員長上月良祐君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、質疑及び答弁は着席のままでお願いいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  127. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございます。では、着席のままで質問をさせていただきたいと思います。  金澤さん、村上さん、本日はお忙しいところをこうして委員会の方に出席をいただきまして、ありがとうございます。感謝を申し上げたいと思います。  お二人のプレゼンをお聞きをいたしました。重複する部分があろうかとも思いますけれども、また敷衍をしてお話をしていただけたらというふうに思います。  まず、金澤さん、村上さん両方にお伺いをいたしますけれども、今回の種苗法改正ですけれども、これは、日本農産物をできるだけ外国輸出をしていくということ、これを進めるためには、日本品質の良さ、農産物品質の良さあるいはおいしさや美しさというのを守っていかなくちゃいけない、その観点からもこの種苗法改正をして、しっかりとその権利として守っていこうということが主眼になっているというふうに思います。  こうした日本農産物輸出をしていく。金澤さんのお話では、開発された種苗がアメリカやヨーロッパでもう販売されているというお話もありましたけれども、輸出なりあるいは作成した種苗がこうして外国で使われていく、そのことがまた日本農業発展にどういうふうにつながっていくのか、その辺についてお考えがあれば、それぞれ金澤さん、村上さんのお話をお伺いしたいと思います。
  128. 上月良祐

    委員長上月良祐君) まず、金澤参考人お願いいたします。
  129. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 今、山田先生お話なんですけれども、まず一つは、元々の、官といいますか、国とか県が作られた息の長いものの育種というのは、ほとんどそういうところでやられていたかと思います、果樹研とか、そういった独立行政法人の中で。そうすると、今まで戦後、やはり産めや増やせやの増産という形で、それにまつわるようなところでどんどんと農家の生産性を上げるための品種開発をされて、国のそういう食べるものの部分の満足度を押し上げてきたと思うんですけれども、今、こういう飽食時代、なおかつ個人の育種家さん、我々、花の場合は、メーカーさんが主導的にそういった形での、平成元年くらいから酒関係のメーカーだとかそういったところが参入してきて、非常にそういう流れの中でのきちっとした法律的な解釈をされてきているので、私たちはそういった部分に対して、非常にそれにのっとって今花業界は来ていると思います。  ただ、果樹的な部分の場合は、やっぱり開発から生産までの期間が非常に長くて、その中でやられている部分が非常にあって、個人育種家の場合は、それに対しての、一本売って、あとは自己増殖、現在のように高接ぎ高接ぎでどんどん増えて、増やせてしまう。こういう現状においては、開発していた今までの開発時間だとか、そういうコストの部分もどこでもペイできないというところが非常に強いわけでありまして、そういった現況を今改善してもらいたいというのはあるんですけれども。あとは海外との部分というのは、絶えず海外のパートナーをつくりながら、今度は逆に、海外もこちらの部分を、信用度合いがある程度持たれて、お互いやはりキャッチボール、いつも受け側じゃなくて、そういう形の情報、それからそういった共有の仕方、そういったものも非常によく学べるということですね。海外での取引の部分の役割分担というのも、お互いに、私から行けば向こうからも入ってきます。そういう流れの中での新しい品種の交流、交換というものもありながら、発展的に、こういったグローバルな今の世の中になってしまったので、内需というばかりではなくて、そういう流れも含みながら全体的な一つの流れがそういう形に今なってきて、非常に良好な花の場合は状態になっております。
  130. 村上真平

    参考人(村上真平君) 今言われましたように、今回の改正海外に出さないためだということを随分言われております。そして、シャインマスカットとかいろんな、幾つか代表して、ほかの国に行ってすごい広がっているという。そのことは国益の損失だという話も聞いております。ですが、今、金澤さんが言われた、さっきも言われましたね、自分の作った品種海外でもきちっと登録をすると。そういう形で、もう今の現行法の中できちっと守っておられる。  実際、衆議院の話の中のやつも全部読ませていただきましたけど、皆さんも、今回の種苗法海外輸出、出ていくのを止めるということはできないということはよく分かっていると思うんですね。そうすると、まるで農民がそれを出した責任者であるかのように、具体的な例がないのに農民のそれを止めるという言い方に今回の僕は問題を感じるんです。  本気で、海外にシャインマスカット、いろんなものが、作ったいいものが出ていかない、まあ、出ていってもきちっとそれに対するロイヤリティーが払われることを考えるならば、きちっと政府がそういうものに対して、海外登録するものをサポートする、そういうことをきちっとするべきでしょう。それなしにこんなことを、それを止めることはできないし、どこから出ていくか分からないけど農民のやつから出るかもしれないから止めようみたいな話は、全くもって裏に何があるんだと言いたくなってしまうのが僕の正直な気持ちです。
  131. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございました。  お二人の話よく分かりましたけれども、今日の午前中の議論でも農家の方に責任を押し付けるなという議論もありますというお話があって、私もそのとおりだと思うんですけれども、農水省がヒアリングをしたりすると、中国のバイヤーがやってきて売ってくれと言ったんで断ったとか、それから外国人から県の育種してきた品種を売ってくれと言われて断ったという、そういう事例が何件も聞かれるんですね。それでお断りをしている人たちがこんな話あったよということだと思うんですけれども。  現場皆さんで、現場、金澤さんも村上さんも、多分いろんな会のメンバーの方もおられると思うんですけれども、そういうアプローチが今まであったのかなかったのか、あるいは何かこんな話聞いたよというようなことがあれば、もちろんその農家の方が悪いというわけじゃなくて、断っておられる方々だと思うんですけれども、そういうことがあるのかどうか、ちょっと現場の話をお伺いできたらと思います。
  132. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) やはり、その契約以外の違法増殖という部分が一番問題で、許諾をせずに増殖されてしまうというところが一番我々育種家とすればやっぱり大変なところだと思っております。意外と自分たちも過去においてそういうところが、育種法だとかそういったものをかいま見て、研修だとかそういった部分で、研修に行ってそういう部分のノウハウだとかをやはり頭に入れてくるということはありますけれども、現物を持ち去られたというのは結構、往々にしてあります。  それと、苗作りと、非常にその育種家と分業化されているものですから、そういう流れの中での、例えば増殖をする、プロパゲートをしていただくところから出ていったりすることも結構あります。だから、そういう流れの中でやっぱりこういった部分の認識をもう全体的にやはり考えていかなければちょっと難しい問題かなとは思っています。
  133. 村上真平

    参考人(村上真平君) 御質問の、そういうものを分けてくれないかとか言われた人が僕らの友人とか一緒にやっている人の中にいるかということに関しては、今のところはありません。まあそんなにお金になるようなものを作っていないからだからかもしれませんけど、それについてはありません。
  134. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございます。  現場の話として、やはりそういったアプローチが結構あって、そこから流出しているということもあるのかなということもありましたので、ちょっと実情、何かそういう話があるのかお聞きをしたんですが。  特に、村上さんからは、さっき自家増殖の話が相当ありました。今度の種苗法では、自家増殖、今までは対象になっていなかった、許諾が必要になるという制度になっていくわけですけれども、金澤さん、育種をされておられますけれども、この自家増殖について許諾を得るようにしていくということに関してはどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  135. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 自家増殖、ここで一つ誤解があると困るんですけれども、今まで既存の在来種や、今まで登録が落ちたものとか、そういったものは一切制約がないんですね。新しい品種ということの登録されたものについての部分でのお話でよろしいですか。そういったものについての部分なんですけれども、もう一度、済みません、今の御質問、短くお願いします。
  136. 山田修路

    山田修路君 じゃ、もう一回。  金澤さん、自分でいろいろ開発されておられますけれども、一方で、今度の制度改正法律改正は、今まで自家増殖種苗法の対象にしていなかったものを許諾をしていただいて、今おっしゃったように在来種とかそういった、あるいは一般のものは別にもう今でも今後も大丈夫なんですけれども、種苗登録されたものについて許諾が必要になるという制度ですけれども、育種家の立場から見て、その自家増殖が今までは許諾が必要でなかったものが許諾が必要になるということについて、育種家の立場から見てどういうふうに評価されているかということをお伺いしたいと思います。
  137. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) やはり、許諾しなくても済んでいた部分が今後許諾するとなると、やはり農家さんから見れば少し違和感はあると思いますけれども、実際、今後一つそういう流れの中できちっとした形でやっていただくということがやっぱり自分たちにとってみれば非常に、その全国のネットの中で自分たちのものが違法増殖されているのかされていないのか、そういった被害を受けているのか受けていないのか、そういったこともいろんな形での情報源として得ることができるので、これからはやはりそういう形で許諾を推進していきながらやっていくことが次の新しい品種を作る一つのエネルギーになっていくかなと思っています。
  138. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございました。  村上さんは今の自家増殖についてのお立場は先ほど述べられたのでよく理解をしており、もう余り時間がなくなったので、一つだけ簡単に。  自家増殖の話と、もう一つはやっぱり農家負担の話がちょっと出ていて、やはり苗代が高くなるんじゃないかとか、そういった話もあります。午前中の農水省説明では、それはごく僅かで、大規模な十ヘクタールぐらいの農家でも、稲の農家なら千数百円だという話があったんですけれども、この自家増殖ということと併せて、その農家負担ということについて何かお考えがあればお願いします。
  139. 村上真平

    参考人(村上真平君) 十ヘクタールくらいで様々なもの、特に、苗を自分で作ってやるものでも、例えばジャガイモやサツマイモみたいなもの、また登録されている関係の、普通の栄養成長できるものですよね、そういうものというのは登録されたものだから、それをもう一回使うのが駄目だという形が、まあ許諾が要るという話になると思うんですが、僕はやはりその辺は非常に同じ考えです。  というのは、当然負担は上がります。農家というのは、今本当に農家やる人が少なくて、どんどんどんどん農家人口が減っていく。一番その理由は、働けど働けどお金にならないからですよね。そういうところに加えて、そのような形で負担が増える。特に栄養成長させるものは非常に増えますね。それというのはやっぱり農家の多大な負担になると僕は見ています。
  140. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございます。  時間が参りましたので、終わります。
  141. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 立憲民主党、社民の森ゆうこでございます。  今日は、お二人の参考人、大変貴重なお話ありがとうございます。  私も、趣味がないんですけど、唯一の趣味といえばガーデニングでございまして、金澤参考人の作られた苗を植えているかどうかはちょっとよく分からないんですが、今年のフラワー・オブ・イヤーというすばらしい賞を受賞されたと、これまでの御努力のたまものだと思いますので、改めてお祝いを申し上げたいと思います。  私どもは、今回の種苗法改正案には反対の立場なんですけれども、でも、育種家の権利をきちっと守っていくと、その努力に報いていく、そのことについては全く異論はありませんし、むしろしっかりと守っていくべきであるという立場なんですね。  しかし、やはり一方で、先ほど来村上参考人がおっしゃっているような、農民の権利、農業の多様性を守っていくための、そういったものにきちっと思いを致して、やはり農業者とそして育種家の権利のバランスを図っていくことが重要であると。今回の法律に関しては、そういう意味で、これまで認められてきた農業者の権利を著しく制約をして、育種家の権利を守ることは本当に重要なんですけれども、その辺のバランスを欠くのではないか、その辺の疑念がなかなか払拭できないと、現場皆さんからも様々な声が寄せられている。そういう立場から、今回の法案改正には残念ながら賛成ができないという立場でございます。  金澤参考人にまず伺いたいんですけれども、先ほど来のお話をお聞きしますと、今回の法改正に期待するものは、海外への持ち出しというよりは、国内における御自身の持たれているその育種権、そしてそこからもたらされるロイヤリティー、これを守られることが不十分なのであると。だから、農水省が今回の法改正の目的、海外への不正な流出の防止のためというふうに言っているんですけれども、それよりは、今回の改正案に対しては、むしろ国内での育種、そしてそれを販売していくということについての権利をもっと守ってほしいと、そうじゃないとロイヤリティーも得られないし経営にとっても良くないのだというような、そういうお話なのかなというふうにちょっとお聞きしたんですけれども、その辺についてはどうなんでしょうか。
  142. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 一応私も農民なんです。農民の中から、やっぱり先ほど言われているように、自家採種をしてきて、その中の変異の部分を地域の仲間に分け与えて産地をつくってきました。その中にどんどん今度は優良なものができてきて、それを全国の方に販売されたらどうかということで、こういう権利が発生しましたと。そういったことで、じゃ、やりましょうかという流れの下に普及を始めましたね。  それと、その権利の部分の商品、登録品種で、一つはその管理をしていくというのは、一番は、無断増殖ではないんですけれども、どんどんこの品種がいいといって偏ってしまうと、全体的な、農家そのものの一つの価格の下落だとか、そういったことに非常につながってしまうんですね。その中で、やはりある一定の、マックスの限度だとか、そういう管理をしていきながらやっとでき上がった品種を末永く消費者の皆さんに食べてもらう、あとは、権利を受けた方はじっくりとして、篤農的な、元々潜在能力で持っているおいしさだとかきれいさを追求してもらって、さらにそれを消費の場で支持者を集めていく、そういう流れの中にあるものだと私はやっています。  それと、海外流出して、いざ日本でできた成果物を、許諾を受けたものが海外へ行ったときに、もうそこにできていましたみたいな、品質の悪い、そういった部分で、やっと国も農作物を一つの輸出項目に挙げてきましたけれども、今までほとんど内需で済んでいた部分の中での現行法だったので、今後やはり、EUにしても、欧米にしても、全部もう先進国は農業立国なんですよね。そういう流れの一つの大事な輸出部門という部分を、また国内で作られた、許諾を受けてしっかり作っていた人が海外でもやはり脚光を浴びるような現行法になってくると私は確信しております。
  143. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 村上参考人にお聞きしたいんですけれども、政府の、農水省説明は、今後も変わらず、許諾権さえ得れば増殖もできるし、何も変わらないんだというふうに説明、いろんな心配はむしろ誤解であるというような説明をされるんですけれども、私はちょっとここは違うんじゃないかなと。  やはり原則が変わるわけですから、何も影響がないということではないと思いますし、本当にそういうことがあるかどうかはちょっとよく、もう少し現場の方の声を聞かないと分からないんですが、今まで許諾がなければ増殖ができない、そうすると、許諾を受けられないという場合がありはしないかと、そのような御心配というのはあるんでしょうか。
  144. 村上真平

    参考人(村上真平君) あると思います。  もちろん、説明は今までいろいろな方から聞いていますので分かりますが、例えば、都道府県レベル、それから国レベルでも農業研究所はいろんな種苗を作っている。そして、そういう形で登録されたものは、衆議院の中でしょうかね、これは農民のために作ったものだから、いわゆるお金を払うにしても、そんな高いお金になることは絶対あり得ないということを言っていました。ところが、今、種子法の中で、都道府県のものは、日本のいわゆる普通に使うものの種類のものはもう今廃止になろうとしていますよね。そして、それの知見、様々な今までの研究データは民間に移譲するということを種子法で言っておりますね。  じゃ、民間海外とかいろんなところがないんでしょうか。日本の会社が作ったって、海外が入ってくることは幾らだってできますよね。そういうものを、税金を使って農民及び国民のために作ったそのいわゆる知的財産を含めた様々なものを全て払下げするという考え方は、これは今回の外国流出するというものと全く反対のことをやっているものになっていますよね。そういう意味で、僕は、何かそこに統一性のない、種苗法種子法の廃止というものの中にそれを見ます。  それからもう一つは、許諾がない。例えば、いろんな人がやっていていろんなものがあって、どれを選ぼうかみたいなところであるならば、そういうところの許諾権ってそんなに高くならないと思います。ところが、ある会社がそれを全部自分のものにしてしまった、この場合は物すごい高くなります。これはもうインドで起こっていて、インドの綿花のところは、昔は全部自家採種するものがあったのに、それが全部なくなって、F1及びいわゆる遺伝子組換えしかないと。遺伝子組換えの場合はそれに使う肥料から何から全部決まっていて、それ、やらなきゃ駄目だし、できなくたってお金は払わなきゃならないということで、今、三十分に一人の割合でインドでは農民が自殺しているんですね。これ、もう二十年続いています。  この問題の中に、つまり、許諾権を与える側が少数になって、これがいわゆるモノ企業、モノカルチャーというようなパワーになってしまったのならば、これはとんでもないことになります。そこではコットンの種の値段は千倍以上になったと言っています。  ですから、今、これからこの世界の流れは、いろんなものが合併していって一つのスーパーパワーになろうとしている今形がありまして、小さなそういう種苗をやっているところがどんどんどんどん合併されていくということはあると思います。そのときに、一体、農民はこの法律によってどのように守られるんでしょうか。そういう将来のことも考えたものをちゃんと見ていただきたいと思っています。
  145. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございます。  そこは一つの大きな争点といいますか、要するに、この改正を早く、改正案を成立させるべきだというふうに主張する皆さんは、いろいろな育種権者、開発する人たちがいろいろいらっしゃって、その中で、先ほど金澤参考人お話にもありましたように、余り一つのものに集中してしまうと、それはそれで良くないので、いろんな形で、それぞれいろんな人たちが関わって、多様になっていって、そして、それを選択するのは農家の人だという、生産者は選択ができるのである、だから生産者の最終的には利益になるというふうな御主張ですし、一方、やはり、反対と強く主張されている皆さんは、今、村上参考人がおっしゃったように、そうはいっても、やっぱり一番売れる市場で、人気の出るそういう商品にどんどん偏っていって、そしてそれを作るところも合併をしたりして、独占的に種を、あるいは苗を持ってしまった場合には、むしろ選択権を狭めてしまう、支配されるようになる。  ここがなかなか議論がかみ合わないところだと思うんですけれども、金澤参考人は、先ほどの村上さんの、これを認めてしまって農民の権利を著しく制限すると、結果的にはそのような独占的な市場を形成する一因になってしまうんだという懸念に対しては、何かお考えありますか。
  146. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) まず、消費者を考えた場合、新しく開発、育成した品種も当然寿命があるわけですよね。だから、いつも戦後のものの、我々生まれた頃の戦後の本当に麦飯、米を国に供出して麦半々で食べていたちっちゃい頃を思い出します。しかし、そこでいっそ飯と言われている米だけの御飯を食べられるようになって、そうしたら今度は、その米もだんだんと少しずつ、農林二十一号からササニシキ、コシヒカリと、だんだんおいしいものになってくると、だんだん消費、自分たちの食べるものも少しずつ変わってきて、よりおいしいもの、よりあでやかなものと、花で言えば。そういう形の部分がどんどん改良されてきて、今まで既存にあった部分の生産性、病気に弱さ、そういった部分でF1とか、そういう種間雑種が作られて、非常に農業の生産性を高めるための種苗というのをどんどん開発されてきたわけですね。  そういった中で、一番農家さんが支配されると思うのであれば、やはりそういった部分の、先ほどインドの話が出てきましたけれども、あれはちょっとやっぱり悲惨だなと私自体も思っています。  そういう流れで、日本の場合はたくさんの在来種と、そういった部分もあって、その方々が今度逆にオリジナリティーを出していく時代じゃないかと。みんなF1を作られてきていて、そういった同じようなものばかりじゃなくて、それと違うものも消費者は望んだはずです。だから、そういった食文化というのはたくさんあるものですから、そういった中でのやはり活路を見出せたらどうかなと私は思っています。
  147. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございます。  貴重な御意見ありがとうございました。主要農作物種子法廃止、そして農業競争力強化支援法、そして今回の種苗法改正ということで、金澤参考人の御意見も、もっともな部分、私も共感できる部分たくさんあるんですが、一方で、この間の流れの中で、何というか、多様性、それから農業主権といったものが脅かされているのではないかという疑念がなかなか拭えない部分もありまして、こんなにドラスチックにバランスを変えてしまうような改正をするのはいかがなものかというふうに私は思っているということも申し上げて、感謝を申し上げ、質問を終わります。  ありがとうございました。
  148. 高橋光男

    高橋光男君 公明党の高橋光男と申します。  本日は、お二人の参考人の皆様には、お忙しい中、国会までお運びいただきましてありがとうございます。  私、この国会、臨時会から農水委員会の方に所属をさせていただくことになりました。私の地元は兵庫です。兵庫も、まさに五国といいまして、日本の縮図という、多様な本当に農林水産業が営まれているところでございまして、私もこの委員会に所属させていただく中で、様々な生産の現場も、限られた期間の中ではございますけれども、お声を伺ってまいりました。  その中で、私、大変印象深かったのが、先日、兵庫の西に赤穂、あの赤穂浪士で有名なところございますね、そこに行ったときに、二十代の若手の新規就農者の方と懇談をしました。その二人は、県の農業大学校を卒業して、一旦民間企業に就職したんですけれども、赤穂のミカン農家のところに弟子入りをしまして、ブドウなど新しい品種の栽培にも取り組もうとされている。そのお二人にこの種苗法改正について意見をお聞きしました。すると、意外にもですが、本当にもう憤りにも近いトーンで、なぜ前回の通常国会で通さなかったんだと、育成者の方はもう一万分の一の確率に懸けて新品種開発しているのに、海外に勝手に持ち出されてもうおかしいと、その権利が守れるように早くこの種苗法を通してほしいというようなお声をいただきました。一方で、私の事務所にも、本当に連日のように改正反対の御意見も様々いただいているところでございます。  この改正めぐりましては、本当に賛成、反対のいろいろな御意見が対立しているところでございますけれども、私は、何より大事なのは、やはり農業者現場の皆様にとっての影響というものを十分に踏まえた、そうした精緻な議論だというふうに思っております。その意味で、本当に、本日はこの生産現場に携わるお二人が参考人としてお越しいただいたことは本当に貴重な機会であり、感謝申し上げたいと思います。  私、お伺いしたいのは主に二点でございまして、一点目は、やはりもうずっと今日も議論しているところではございますが、この度の法改正によって生じる農業者への負担というところについてでございます。経済的な負担につきましては先ほどございましたので、そちらはちょっと省かせていただくんですけれども、一方で、手続負担と申しますか、やはり事務負担も大きくなるんではないかというようなところも今日議論されたところでございます。  この点、政府は、なるべく簡素化するために、その許諾をJAなどの団体がまとめて行うことや、農水省がその許諾契約ひな形を示すというようなことを言われています。一方で、実際、そのような手続をそういうような形にすることによって本当にその事務負担現場において生じないのかというところはあるかと思います。  そこで、金澤参考人にまずお伺いしたいと思いますが、まさにそういう現場で今なされている中で、今回この登録品種許諾制になるという中で、実際そういった事務手続負担というのはどのようになるものか、その御意見をいただければと思います。
  149. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 自己増殖許諾制になると農家負担が増えると言われていますけれども、実際、これで許諾を受けなかったという農家さんは一軒もございません。基本的に、そういう許諾をするための海外含めての一つの誓約書的な部分のフォーマットとかそういったものは随分前から構築されておりますので、そういう流れの中でのいろんな条文を書いた部分の中で確約書を交わすという流れです。  それと、先ほど来、農業者の経済的負担の部分もありますけれども、実際、花業界の場合ですと、苗代と、苗代とラベルに付いているロイヤリティーと、必ず添付して出荷するときには使ってくださいねと言われている部分と、一緒にやはり混同されている方が結構多いんですよね。だから、実際とすれば苗代と僅かなロイヤリティーの部分を合わせた部分が許諾された金額だというように誤解されている農家さんが結構多いんで、そこのところがしっかり分かれている。苗代、そしてラベル込みのロイヤリティーという流れに分けてはあるんです。  だから、実際、そういう流れの中できちっとしたそういう商業契約みたいな部分の中での、お互い間違いありませんねということで覚書を交わして許諾をしていくというような真摯なやり方が今非常にトレンドというか普通にやられています。だから、それに違反したらば大変みんなに迷惑掛かりますよと、お互いに、そういう形で向き合ってやっております。だから、支障はそれほど、今までやられてきていて、ないと思います、私の方は、花の方はね。
  150. 高橋光男

    高橋光男君 ありがとうございます。  せっかくなので、村上参考人にもその辺りですね、先ほど経済的負担の話ございましたが、手続的な負担といいますか、事務負担についてどのようにお考えになられるか、お答えいただければと思います。
  151. 村上真平

    参考人(村上真平君) 現行種苗法でも今、金澤さんがされているように、かなりきちっとやっておられるわけですよね。この現行でいってなぜ問題なんでしょうか。現行をそのままやったらいいでしょう。  そして、先ほど海外に出るという問題に関しては、そのことに関してきちっと周知して、それをやった場合には非常に問題になりますということも含めてそういうことを周知するということと、海外できちっとした、取られそうなというか、本当に一つのすばらしいものが、海外にも出したいのであればきちっと海外でパテントを取る、そういうことをすればいいのであって、この許諾に関して一律に今、国のものでさえも取るという形にするということは、これは負担がないということは全然ないし、金銭的な、それから、今までないペーパーワークですよね。多分、金澤さんと一緒にやっているような方々というのはもう慣れているから問題ないですけど、普通の人たちはそんなに、農家の方はそんなにペーパーワークが得意ではないですから、その辺に関してはどんなに簡素化するといってもまた新たな手間になるわけですね。  まあそういうことですが、そういうことよりは、僕はもっと本質的にはそういうものに対してそれは必要ないと、現行のところでやっていることで十分だろうというのが僕の意見です。
  152. 高橋光男

    高橋光男君 率直な御意見、ありがとうございます。  確かに、新しく許諾制が導入されるということになれば、この対象となるのがまさに登録品種に限ってというところでございまして、そこの正確な理解というのが非常に大事だということは今朝も様々議論があったところです。実際、今、その対象とならないような、一般品種でいえば、米でいいますと八四%、野菜九一%、果樹も、リンゴであれば九六%、ミカンは九八%が一般品種でありまして、そういう意味では、それら以外のところのこの僅かな部分で今回そうした許諾制になるんだというところのこの理解というのはしっかり私は政府に対しても、現場に正確な情報と申しますか、その制度の周知については取り組まなければならないというふうに思います。  続きまして、許諾制についてですが、これも様々議論があったところでございますが、それによって本当に海外流出が防止できるのかといったような点について続いてお伺いしてまいりたいと思います。  これ、国際法では農業者による自家増殖というのは登録品種であっても原則として育成権者が及ぶんです。で、例外的に制限ができるようになっています。一方で、我が国はこれまた逆でして、登録品種も含めて原則として育成者権が制限されている。つまり自家増殖が可能だというふうになっていて、例外として一部の植物、栄養繁殖性植物など一部の省令で定められているものについては育成者権が及ぶというふうになっております。したがいまして、今回の法改正案というのは、国際的な法慣行と我が国のこの制度を整合的にするものであるということで、その許諾制を導入することによって登録品種海外流出を防止していくことが目的となっているわけです。  一方で、今日様々御意見ございましたように、自家増殖をそういう形で禁止したとしても、海外への流出を防止できるわけではないとか、逆に、禁止せずとも現行法の範囲内で対応できるというような主張もあります。一方で、こういうのに対しては、自家増殖許諾制にすることによって、増殖を行う者や場所の把握が可能になることによって違法増殖から海外流出対応が可能になるというような御意見があります。  そういう中で、果たしてこの許諾制というものが実効的なのかどうかというところについて、改めて、海外との取引もされていらっしゃる金澤参考人にお伺いできればと思います。
  153. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 海外での種苗許諾制ですけれども、これはやはり、海外許諾を受けた側が、実際その部分について許諾を受けたので特権的に販売をできるということなんで、受けた側も非常に海外の国でも一生懸命売るわけですよね。自分の商品と同じような権利を持つことによって、相手を違法増殖があればそこの中である程度、まあ取り締まるというわけじゃないですけれども、その中で独占権を得るということなんで、非常に利益といいますか、そういった部分も非常に力が入るわけです。  一般的にあるものであれば、日本のようなスキル性の高い農家さんが篤農家的な部分で、同じブドウを作っても作る方によって相当の開きが出てきて、その篤農的な部分での経済的な差というのはありますけれども、海外については、そういった部分も含めて、それは独占できるかできないか、そういったところでの販売ですので、しっかりその権利を海外でも守ってくれるんで、それが自分の利益につながると。  そういうことなんで、やっぱり許諾制やることによってお互いにきちっとした形での守り方ができるということが非常にここ何年か感じていることです。
  154. 高橋光男

    高橋光男君 ありがとうございます。  まさに、これ相手の国もある話でございますから、しっかり、その相手国政府においてもそうした品種登録されたものについてはそれがしっかり権利が守られるような仕組みというものが本当に必要であり、そうしたところにも日本としても協力をしていくべきであるというようなことなのかなというふうにも思いました。  その意味で、村上参考人にもお伺いしたいんですけれども、バングラデシュやタイ等で農業、農村開発従事されていて、まさに途上国のそうした政府の体制等についても詳しいというふうに思います。  確かに、この許諾制にすることによっても、そういうのは擦り抜けて勝手に持っていかれる品種についてはその権利なんか守れないという御主張をお持ちなのかもしれませんが、これに対して政府が、例えば、日本側の育成権者に対する支援については、その登録を円滑にするためには、例えば知的財産の専門家である弁理士の皆様に協力をしていただいたり、また様々、税関体制を強化しますというようなお話も今朝ございました。  そうしたことを日本としてもやるわけですが、特に相手国政府に対してそうした品種登録をしっかりと進めていくために必要な、日本としてできる、なすべき国際協力の在り方について御意見いただければと思います。
  155. 村上真平

    参考人(村上真平君) これは国際協力というよりは、どちらかというと国内の中で、それに育種された方々で、海外も考えているし、海外にはコピーされたくないという人たちに対して、きちっとそういうサポートをして海外登録するという、そういうことを、これは、国際協力というよりはこの国の農業予算の中できちっと考えたらいいんじゃないでしょうか。それは協力ではなくて、もうどっちかというとロイヤーといいますか、その法律的な問題ですが。
  156. 高橋光男

    高橋光男君 分かりました。
  157. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 時間が参っております。
  158. 高橋光男

    高橋光男君 はい。  確かにそういった、何というんでしょう、契約面における特許制度と申しますか、そういったものをしっかりと確保しなければ権利も守られないわけでございますので、確かに、先ほども私申しましたように、弁理士の方始めとする専門家のそうした支援というのもなかなかまだ認知されていないわけでございますので、こういった農業品種に対してのその権利を守るという体制を日本として、政府としてしっかりそういったところも支援すべきだというふうに私は思います。  本日は貴重な機会、ありがとうございました。以上で終わります。
  159. 石井苗子

    ○石井苗子君 日本維新の会の石井苗子と申します。  本日は、両参考人の方、大変いいお話をありがとうございました。私は農業に関しましては大変素人でございまして、改めまして、人が生きていくために食べ物を作るという、この職業といいますか産業が、古い歴史と、それから物の考え方、あるいは哲学までも及んでいるのだということをお二人の参考人の方のお話で学ぶことができました。感謝申し上げます。  私たちは午前中、ずっとこの種苗法の様々な問題点、あるいは課題について話をしてきたんですけれども、日本の今の政府の考え方の主軸は、将来どの産業であっても、SDGs、これから先このまま変わらずにいて将来の発展はあるのかないのかということを考えております。そして、もしないと思うなら、何を今から新しく考えていけばいいのかという点でいろいろと議論をして法律を変えていこうとしているわけなんです。  その中で、我が国品種海外流出して、その農産物が第三国に輸出され、日本の農産品を諸外国輸出する際の障害となるという事例が出てきている。代表的なのが、先ほどからお話にありますシャインマスカットなどがそうなんですけれども、この点に関しまして、それじゃ、持続可能性を見ていく上において、先ほど村上参考人の方からお話がありましたインドの例は、十六年で二十五万人が自殺をしていて、それがほとんど借金苦であるというようなことがもし起こっている事実があるとしたら、それは決して持続可能性、要するにSDGsに沿った国策ではなかったということになります。  この点につきましてお二人の参考人の方にお聞きしたいんですけれども、金澤参考人にお聞きいたします。  この改正に対する、海外の多国籍企業による種子の支配が進むのではないかという反対意見が出てきております。これに対してどう思われるか、順番に、金澤参考人、村上参考人に御意見をお伺いします。
  160. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) まず、我々花の業界においても非常に合併合併で、会社がアメリカ、それからEUにおいても、もう今、世界を取り巻く大きな会社がたくさんできまして、その中での今の国内のカタログを見ても、大体七割から八割はほとんど海外のメーカーの優秀な品種のものです。我々のような地場でやっている在来種的な部分のものが今まで主流だったんですけれども、やはり性能的な部分で負けてしまう。そういったものよりも、より経済的な部分でというのは、今もそういう流れに変わりはございません。まだまだこれから進んでいくとは思います。  ただ、戦後の、先ほど言ったような米のない時代に米を食べる、麦と米の差の部分から進んできて、やはり飽食時代、何かもっとおいしいものとか、そういった部分でのところでのすみ分けはこれからまだまだ進むのではないか。多様性時代におけて、また育種も進めていくことが、一つは、何といいますか、従来の真っ更に染まってしまうんではない、みんないろんな方向を向きながら、自分の生活、ライフだとか食生活、いろんなものが更に多様性を増してきているので、そういう人たちの支持を集めるための一つの商品作りというのもこれからあるのではないか、すみ分けに。だから、そういうふうな一つの支配をされてしまうのを逆手に取れば、一つ、これチャンスじゃないかと思うんです。真っ白に染まったところに一つの赤い点を置いたら、その赤い点は相当周りから見たら目立つと思うんですよね。  だから、そういった部分で、もう、日本は社会主義国家じゃありませんので、自由主義なので、いろんなことをやりながら、いろんなことを発想していって、どんどん発展的に行きながらいろんなものをつくり出していく、そういう潜在能力のある日本人だと私は確信しております。  そのために、一つの枠をつくってもらえば、その中でのパフォーマンスというのはほかに類を見ないぐらいの開発力は、私は日本人は持っていると思います。こういったものを国の今後の政策としていって、海外に逆に、一つの輸出武器といいますか、戦略武器として今後立ち上げていくことが、逆に言ったら、今までそういうグローバルな流れの中での染め上げてきたところの一つの風穴になるんじゃないかと思っています。  今後、やはり日本のこの育種力については、官民一体になってもう少ししっかり遠くを見据えていければ、みんな、田舎のそういう耕作放棄地もなく、そういった形で権利を持ちながら海外に打って出ることが日本のその農業をもっと発展的にできるものと私は確信しております。
  161. 村上真平

    参考人(村上真平君) 済みません、ちょっと質問の意図がもう少し聞きたかったんですが、SDGs。
  162. 上月良祐

    委員長上月良祐君) もう一度お願いします。
  163. 石井苗子

    ○石井苗子君 先ほど、インドの例をちょっとお話をしていただけたと思うんですけれども、趣旨としては、農家方々食料主権というものの保障についてお話をされたんだと思うんですね。特定の品種を栽培しなければならないという契約農家が、決まった品種の作品といいますか、作物のみを特定の売り先に販売続けているというような状態の農家は、その経営方法を選んだら、一度選んだならそこからなかなか抜け出せないのではないかという考え方があったとしたらですね、したらですね、その食料主権というのを自由に行使できなくなるのではないかという、まあ一つのセオリーですけれども、勝手な言い方かもしれないんですが。  そうなると、先ほど、午前中にインドの話が出たんですよ、海外の多国籍企業による種子の支配でという話が出たときに、たしか政府の回答は、いや、インドはUPOV条約に入っていなかったからいけなかったんだという御説明でした。議事録に残っていると思いますけれども、本当にそういう意味でいきますと、海外の多国籍企業による種子の支配が進むのではないかという反対意見日本にもあるんですが、全く心配ないと村上参考人はお考えになりますか。
  164. 村上真平

    参考人(村上真平君) いえ、問題はあると思いますね。  日本には、日本にいろいろな種苗、大きな種苗会社もありますし、今、日本農家方々は多くのそのF1を使っています。じゃ、日本の農民はなぜ種を買ってしまうかというと、自分が作るよりはそっちの方が楽だし、あれがいいからだということで多分選んでいるんだろうと思いますね。  まあ、それはいいんですが、今の選択がなくなってしまうというのは、条約に入っているとか入っていないの問題ではないと思います。それは、やはりその国の政策の中で、それまで持っていたローカルなバラエティーのそういうものをきちっと守る。日本であれば、都道府県において、種子法においては主要作物をきちっと守っていましたね。そういうものがインドにはないからなんですね。それは、そういうことをきちっと出せるようなところがなくて、海外から勝手に入ってくるものの、そこでのいわゆる競争に任せてしまって、元々あったローカルバラエティーなものを失ってしまったことが問題なんです。つまり、ローカルバラエティーであり、それを、自分たちで種子がもう一回使えるという別な道があったならば、そういうところに入らなくてもいいものがなくなったということです。そういう意味で、僕は種を取ることを、どんな形でも反対する。種を取る。  苗を、次々に、ジャガイモであれば毎年毎年使えるわけですし、サトウキビでもいいところに置いておけばどんどんどんどんできるわけですよね。そして、それだって全く同じものにならないんです。毎年毎年使っていると、県が違えば、国が、場所が違えばどんどん変わっていくんですよ。そういうものなんです。自然のものというのはね。それは、ですから、例えば、あるものから育種されたものを買ったとしても、それを使っている人は、その人のものになるんですよ。  そういう自然が作ってくれる遺伝子がどんどんどんどん増えて、変わっていって、様々な形でその地域に合ってくるというもの、こういう、それが、自分たちがするから初めてなるんであって、それを、全部毎年毎年買って同じところでやるということになると、そこで一つ病気が出た場合には全部病気になります。  それが一回あったのは、アイルランドの十八世紀にあったジャガイモ。ジャガイモは寒いところでよくできるということで、そのジャガイモ持ってきてアイルランドの主食になったけど、それが、一つの種類でやって、すごく大きくなり、いいものだったために、それが病気、べと病になったときに百万人の人間が死んだんですよね。つまり、生物多様性がないということはどういうことなのか。  どんな種苗で作られたものでも、それを農家が使っていったら、変わり苗が出たりいろんなものが出て、その地域に合った、そういうものになっていく。だから、自家増殖や種を取るということは多様性を作ることなんですよ。やっぱりそういうことが見えていなくて、何かどこかでいいもの作ってぼんと出せばいいだろうと。で、それが一つ駄目になったときに、じゃ、どうするんだというふうな話もあるんですよね。  ですから、もう少し包括的に、やっぱりこの今の社会というものは、この生物多様性というのはみんな大切だと聞いていると思いますが、本当に生物多様性がなぜ大切かって多分分かっている方、非常に少ないと思います。生命は安定性をつくるために生物多様性になるしかないんですよ。  やっぱり僕ら人間は自分たちの好きなもの、これだけがいいやといって、実は農業というのは物すごくいろんないい種を作っていくと生物多様性をなくしていくんです。そして、なくして、そういうアイルランドみたいな問題が起こると、ちょっとまずいなということになって考えたりもするんですけど、やっぱり育種家に全てのことを任せて自家増殖止めるということは、ある意味では、それを何年、何年も使っているとまた別な種子になって、別なものを加えて様々なその問題が起こったときに、生物多様性において安定させるということがなくなります。  やはり、もう少し種苗というものはどういうものかということを考えていただきたいと思います。
  165. 石井苗子

    ○石井苗子君 ありがとうございます。  最後の質問になります。  午前中に、種苗法改正につきまして反対運動が巻き起こっているのは農水の説明の仕方が悪いんじゃないかという、コミュニケーションが取れていない、国民とというような意見がありました。  お二人の方、農水の説明会に何か接点がおありになったことがあるかどうか、納得できなかったことがあれば一つ二つ紹介していただきたいのと、政府に対しての、支援は今後どのようなものを御希望かというような、簡単で結構ですので、それを最後にいたします。
  166. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 私も、知財審議委員としてもう長く、八年も過去においてやらさせてもらっていました。  一つは、ほかの経産省や総務省、いろんな国の機関があると思うんですけれども、省庁が、その中で、やはり農業というのは一つ特別な、言われているとおり、食料だとかそういったものも含めた、一つの、我々からすると農業はちょっとそういうところと別のような意味合いもすごくあって、農業の中でJAさんだとかいろんな組織がございまして、その中で絶えずこういう農水の、農林省さんの部分での啓発的な部分もあるんでしょうけれども、一般的な庶民の、消費者に向けてのそういう発信というのが、我々からすると、同じ世界に住む者とすれば、ちょっと少なかったかなというふうな部分ではございます。  だから、決して一般の人たちにも、これだから、こういうふうだからということも元々持っていらっしゃるので、こういったものも含めて、啓蒙というと誤解を受けるので、啓発をしていきながら進めていくということも必要かなと思っています。済みません。
  167. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 申合せの時間が来ておりますので、恐縮ですが、できるだけ簡潔にお願いします。申し訳ありません。
  168. 村上真平

    参考人(村上真平君) はい、済みません。  農水省説明が下手だったからという話ですか。もし下手だったら、農水省は本気でやっていないんですかね。というよりは、農水省が本当に考えてやったことなんですかね。もっと別な形で、それをやれという形でさせられたならば、そんなにうまく説明はできないと思います。それは内部を知っている方はもっと知っているんじゃないでしょうか。  以上です。
  169. 上月良祐

    委員長上月良祐君) ありがとうございます。  石井苗子さん、よろしいですね、お時間でございますので。
  170. 石井苗子

    ○石井苗子君 政府支援にどのようなものが必要ですかと聞いたんですけど、まあいいです。もう時間がないので。
  171. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 時間でございますので、おまとめください。(発言する者あり)  じゃ、以上で終わらせていただきます。
  172. 舟山康江

    ○舟山康江君 国民民主党の舟山康江と申します。  今日は、金澤参考人、村上参考人、ありがとうございました。お二人とも、農業が大好きだと、ずっと農業に携わってきたということ、よく分かりましたし、村上参考人が、農こそ人間の基盤であると、そんな話もされました。私も全く同感であります。  その上で、陳述の冒頭で村上参考人が、なぜ農民が種を取ってはいけないのかと、こんな論点提起をされました。今回の法律は、私の理解では、一律に種を取ってはいけないということではなくて、多くある一般品種、恐らく、自家採種で伝統的な様々な農業をやっている多くの方は多分一般品種を使われていることが多いと思いますけれども、それに関しては引き続き、特に制約掛かっているわけでもありませんし、多分これ愛農会の機関誌だと思いますけれども、配付いただいた参考資料の中に愛農十月号の村上参考人の文章があるんですけれども、この中にも、地域に伝わる伝統種や在来種といった固定種を育て、その種を自家採種して使い続けることが最も効果的な方法になりますと、こんな御発言がありますし、ここの文脈でいえば、地域に伝わる伝統種、在来種に関しては今回特にいじることもありませんし、午前中の質疑の中でも、例えばそこから派生して仮に新たな新品種ができて登録されても、元々の在来種、登録されなければそのままですし、元々の在来種、固定種というのは使い続けることができるということでありますので、種を取ってはいけないということではないと私は理解しておりますけれども。  そこで、村上参考人にお聞きしたいのは、今、登録品種についても御自身自家増殖をしておられ、そして例えばこの法改正によって相当打撃を受けるというものがあるのかどうなのか、教えていただきたいと思います。
  173. 村上真平

    参考人(村上真平君) 僕個人ですか。僕個人の方ではそういうものはありません。
  174. 舟山康江

    ○舟山康江君 周りの仲間の皆様とかで、こういった登録品種について、今回の法改正自家増殖が制限を受けて非常に困るというようなお話は聞いていらっしゃるでしょうか。
  175. 村上真平

    参考人(村上真平君) はい、聞いております。
  176. 舟山康江

    ○舟山康江君 例えばどういうものが影響を受け得るのか。
  177. 村上真平

    参考人(村上真平君) 一番影響を受けるのは、先ほどジャガイモとサトウキビの話をしましたが、つまり栄養成長するものですね。それが登録商品であるならば、それに対するロイヤリティーを毎年毎年、自分たちが買わなくても、使い続けることができないということになった場合には、それは、今までは使い続けられたわけですね。それがなくなるわけですから、その苗代は大変なことになっちゃいます。  あと、あれもそうですよね、イチゴもそうですよね。イチゴ農家はロイヤリティーを、自分たちで増やしたものに対して増やせなく、次からは駄目ということになっていけば、それはまたそういう苗の負担負担になるということは聞いています。
  178. 舟山康江

    ○舟山康江君 ありがとうございました。  今例に出たサトウキビなどは、これまた午前中の質疑でもありましたけれども、これ、サトウキビに関しては全て国若しくは県の育成品種ということで、現在もかなり苗代というのは極めて低価格で提供されていて、多くは、多分、自分で増殖するより買っている人が多い。ただ、買っている、中には増殖している方もいらっしゃるかもしれませんけれども、極めて、数円程度と安いということも聞いておりますので、果たしてどこまで影響があるのかなというちょっと疑問があるのと、イチゴに関しても、これ現在、登録品種に関して、基本的にはランナーで増やすことも含めた条件付の多分販売になっていますので、今回の改正でちょっと変わるということは、私自身の今知っている知識の範囲内では余り影響がないのかなということをちょっと感じましたけれども、また何かあれば後で御答弁いただきたいと思っております。  金澤参考人にお聞きしたいんですけれども、要は私、今回の法律、確かに、海外流出を防止するということだけが強調される余りに、何か若干、いろいろ誤解というか分かりにくいところがあったような気がするんですよ。要は、海外流出何でしてしまったかというと、要は育成したものが知らないところで増殖されて知らないところに出ていると。つまりは、育種家、育成者権者の権利がうまく保護されていなかったということであって、やっぱりそこをきちんと見る必要があるのではないのかなと思っているんですね。多分そのことを金澤参考人もおっしゃっていたんだと思うんです。  その上で、やっぱり一部海外から支配されちゃうんじゃないか。インドなんかそうですよね。もうその種しかなくなってしまって、高いお金で買わなきゃいけなくなって、それで農業が続けられなくなって自殺してしまったということのような話でありましたけれども、やっぱり、海外資本に支配されないためにも国内でいいものを作り続ける。そのためには、もちろん在来品種もちゃんと残ってもらわなきゃいけないし、それを基にした新しい品種も作る、で、いいものを売っていく。国内でも海外でもそうですけれども。  やっぱりそういった意味では、まさに私はやっぱり育成者権者の権利を保護することってすごく大事なんだろうなという気がするんですよ。それが農家にとって非常に使い勝手が悪いとか、何か農家の利用に非常に制約が掛かるということでは困りますけれども、そこのバランスを取りながら、やっぱりその権利は保護して、きちっといいものを作り続ける。さっき、時間とお金を掛けていいものを作ってきたと御発言がありましたけれども、やっぱりそこを後押しするのは非常に大事だと思っています。  そういった意味で、今までの現行法の中で金澤参考人が、今の法律の中で非常に、せっかく作ってきたものが、何かいいように利用されてしまったとか、非常に困ってしまったというような事態に直面したことはあったのかどうか、教えていただけますでしょうか。
  179. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 私どもの花の場合は、そういった部分、種苗メーカーだとか、そういった法律に詳しい法律部と称するようなところが弁護士さんも持っていますので、そういうところで販売している分には、いろんな形での侵害というものもある程度調べ上げたりやって、無断増殖しないようにという勧告を出したりして、ある程度国内では収まっているというか、それほど見受けられません。  ただ、私たちの仲間の果樹関係ですね、一番のネックは。どうしても長い期間開発掛けて、二十年。それで、一本買って、梨のように、高接ぎとして、何本も接いても構わないと。一瞬にして、一本のロイヤリティーでたくさんの、そういった果樹の、ブドウもそうですけれども、高接ぎ高接ぎでいかれた場合に、育成者権の権利が実際どこまで及ぶというか、そのロイヤリティーは、百本も二百本も増殖されたときには、その一本のロイヤリティーしか入っていないわけですよね。そうすると、一反歩で十本か五本ぐらいしか植えないやつで、本当に僅かなロイヤリティーで、それが実際今までの開発をしてきた時間と暇と、もう本当に、観察力と経済力と。それで、ロイヤリティーで、農家のパテントで財を成した人はまだ世の中に一人もいないんです、日本の中に。  そのくらい、もう非常に、生産者育種の中においては、逆に育種をするなと、農業は。なぜだ、貧乏するからと。余りにも捨てるものが多いんです。その中で、残ったものの中でさらにそれを、一本やっとできたということで増殖して販売したところがどんどん増殖されて、何のために自分は今まで生活も顧みずこういったものを研究し続けて、みんなのためと思ってやったけれども、その見返りが何もない。その満足度合いだけなのかもしれないですね。だから、非常にこういう理不尽な話がこの中にあっていいものかと、かねがね私たちはこの部分についていろいろと掛け合っていたんですね。  だから、実際、一番理不尽な果樹関係の、国が作ったものであって海外に持っていかれちゃって、シャインマスカットなっていますけれども、実際、農家皆さん、もっと育種家の皆さん持っているんです、おいしいものも。でも、出せないでいるんです。  というのは、自分でこれだけ苦労したのにもかかわらず、こういう現行法では、自分の権利が半減どころかすごくなくなってしまう。だから、一番損をしているのは、そういったものを心待ちに待っている消費者なんですよ。そういう消費者のために、おいしいと言われて、なおかつその品種が名を残して、銀座、どこどこの千疋屋さんのてっぺんに並ぶようなものをいつも夢見ながら育種をしているわけですよ、貧乏しながら。  だから、そういう人たちのためにこういう現行法を持っていかなければ、日本の本当のおいしいものを作るというその意識をする人たちがもういなくなっちゃいます。そうすると、開発なき産業はもう滅亡です。この部分を皆さんに今回の改正でそうしてもらうことによって、そういう人たちがどんどん育種を目指してくる、これが国の力だと思っています。  以上です。
  180. 舟山康江

    ○舟山康江君 ありがとうございました。  本当に、時間とお金と手間と、様々な苦労をそこに入れて開発してきて、やっぱりそれを売るときには、巨額の富を手に入れようという思いがなくてもやっぱり何がしかのしっかりとした見返りがないと、次の開発に誰も手を出さなくなると、私は本当にそのお気持ちはよく分かると思っています。  そういった今のお話を踏まえて、ですから、やっぱり私はそういった、いわゆるそれを登録して、いいものを普及して、やっぱりその何がしかのこの許諾料等の中でまた次につぎ込むというその繰り返しが必要だというふうに思うんですけれども、村上参考人、今のお話、ですから、それは一般品種までも全部お金を取るとかということじゃないんですけど、やっぱりそういった特別な何か付加価値を付けたものに関して一定の利用条件を付けるということもやはり、何というんでしょう、やめるべきだというふうにお思いでしょうか。
  181. 村上真平

    参考人(村上真平君) 今の話は、別に新しい種苗法だからそうなるということではなくて、現状においてもその許諾料というのはあるわけですよね。ないんですか。一回苗を買ったならば幾ら出してもいいという、先ほどの果樹の。いろんなもの、ケース、ケースによって違うと思います。  そこで、僕はやっぱりここで一つ問題にしたいことは、一律に許諾料ということを言わない方がいいと思うんですよ。やっぱり今みたいに果樹の問題、それは、じゃ、どこまでやったならば生産者との間でその辺のところは折り合いができるのかとか、そういうことはやっぱりケース・バイ・ケースで調べる問題じゃないですか。それを、許諾料をするしないだけで決めない方がいいと思います。  そういうものがないから、すごく大きく、じゃ、シャインマスカットだ、何だかんだといって、それによって何かほかのものまで全部一律に同じようなルールを決めるということが問題だと思います。  やっぱりそれはケース・バイ・ケースで、今、彼の場合は非常に、果樹のことについて非常に強く言われましたから、僕は余り内情が分からないのでそれに対して答えられないんですが、でも、はっきり言えることは、全ての作物に対して同じような形の許諾料というのはあり得ないんだと思います。
  182. 舟山康江

    ○舟山康江君 私の理解では、全ての作物について同じ許諾料という仕組みではなくて、許諾の内容によっては、例えば無償で利用をするというものも今後もあり得るというふうに聞いていますし、やっぱりその開発に掛かった労力というんでしょうか、お金とか、いろんなその状況、公的な機関なのか、また民間なのか、その辺の中で、物によってそこは変わり得るし、私が聞いている説明では、中には無料のものもあるということですので、そこは臨機応変に変えているんだろうなと思っています。  いずれにしても、繰り返しになりますけれども、今回、登録品種について一定の条件、例えば、届出であとは利用していいよというものもありますし、何がしかのお金を払ってということもあると思いますけれども、やっぱりそこは私は必要な措置かなと。その代わり、一般品種については、やはりできるだけ多くの皆さんに種を守ってもらう、さらに、その在来品種等を守る仕組みなんかもこれからやっぱり公的に考えていかなきゃいけないと思いますし、そこは与野党を超えてしっかりこの後考えていきたいと思いますので、よろしくお願いします。  今日は本当にありがとうございました。
  183. 紙智子

    ○紙智子君 お二人の参考人お話、本当にありがとうございます。大変、お二人とも大変な御苦労をされながら一生懸命努力して、それでやっぱり実績つくり出してきているというふうに思って、改めて感銘を受けながら聞いていたところです。  それで、ちょっと皆さんずっと聞かれてきているので、本当に原点的なことになるんですけど、最初に村上参考人にお聞きします。  昔から、種子を制する者は世界を制するという言葉があるんですよね。これって、いや、それぐらい大事なものだよということだとは思うんだけど、よくよく考えるとちょっと怖くなってくるというか、種子を制する者は世界を制するということは、種子を支配するということになるとこれはどうなんだろうかというふうにも思ったりもするわけです。  それで、種もいろいろ、花卉の栽培だったりするんだけど、食料の種ということになると、これ本当にみんなの命の基になるものだというふうに思うんですね。種がなかったらどうなるんだろうというふうに、本当に大変なことだと思うんです。  それで、二〇一八年に種子法の廃止法律が出されたときに、多くの人が知らないまま短時間で通ってしまって、後から知ってびっくりしたと、何でこんな大事な法律廃止したんだということで、その後あちこち回ったときに、もうどこへいってもこういう声がぶつけられたんですよね。それで、本当に慎重にちゃんといろんな角度から深めることが大事だということを私も心して、今回、種苗法ということなんですけれども。  それで、村上参考人は、この資料の中に書いてありましたけど、やっぱり種子は農民にとっては命なんだと。農家にとって育種ということがやっぱりどういうことなのかというのを、やっぱりやられてきた人でないと実感としてはないと思うんですけど、その辺のところをちょっとまず一言お聞きしたいと思います。
  184. 村上真平

    参考人(村上真平君) 僕の場合には、種子というものは、なるべく種が、もし植えるとしたら、種を取れるものにしています。F1は使わないことにしています。そして、自分で取れるもの、まあ物によっては非常に難しいものもありますから、なるべく種子を取ろうということをしていますが。  なぜそれをするかというと、やはり種というものは、ずっと長い年月、農民によって守られてきて続いてきて、そして、そういうものが、今はF1とかいろんなもので、きらびやかなものになったり、いろいろしているんですが、やはり具体的に僕ら有機農業とか様々なことをしていくと、自分たちで種を作った場合には成長の仕方が全然違うんですよ。  これは簡単なことで、基本的にいろんな種というのは農薬や肥料を使っているところで作っていますから、そこのところにどんどんどんどん慣れてくるんですね。そうすると、僕らはリハビリテーションと呼ぶんですけど、そういう種でも、一回、自分たちが一年とか二年作ると、だんだん性質が変わってくる。これは多分遺伝子のあれが変わっているんだと思いますね。変わってくることによって自分たちのところに合ってくる。そういう意味で、種を取るということを非常に大切にしています。  何といいますか、先ほど、種を制する者は世界を制すというものは、どちらかというとアメリカ的な発想だというふうに思っています。一つのスーパーの種を使って、これで全部の人が使えばいいという考え方ですが、この考え方は、いずれにしても、これから百年、二百年の間にはそういう考え方では駄目になることははっきりしています。それは生態系というのをきちっと見れば分かることなんです。一つのものでスーパーというのはあり得ないんです。物事が滅びていくのは、それがすごく、その種がすごく少なくなるか、そればっかりになるからなんです。つまり単一性、及び、それが完全に続けるだけの個体数はなくなる。  そういうことを考えると、僕は、種は世界を制すという言い方は、どちらかというと多国籍企業的な、種によって、今、例えば多国籍企業が、世界の幾つか、六つぐらいの会社で世界の六〇か七〇%ぐらいの種の生産、いわゆる販売をしているわけなんですよね。日本の会社はどこまでそれに入っているかどうか分かりませんが、種というものが農民の手を離れて種子会社のものになり、そして種子会社がそれを自分たちの権利だと言い出す。  先ほど僕ちょっと話しましたけど、僕はすごく不思議だと思うんです。種子会社は、俺たちが作った、苦労して作ったから、これからこれぐらいあなたたちはロイヤリティーを払え、払えと。じゃ、その元の苗、どこから、種、どこから来た。どこかの農家から買った、どこかの人から買った、だからいい。じゃ、なぜ、ここでロイヤリティーを払えと言ったら、これになぜロイヤリティーは払わないの。  まるで空気や水のように、種子当たり前のように五十年前まではあったんですよ。ですから、それはある意味ではコモンズ、共有財産みたいなものです。そこから取ってきたもので、育種したもので、自分のもので、ずっと延々これを使う人間はロイヤリティーを払えということは、これは別な意味での倫理に僕は反することだと思っています。  それは今の社会では受け入れられるかもしれないけど、これからの環境の問題、いろいろなことを考えていったときに、今の方向性は非常に少数の遺伝子で精鋭化したものに、そして、それで全てのものをコントロールする方向に来ているんです。ですから、種子は世界を制すという言葉使うんです。でも、実際は制せられないんです。そうなった場合には、先ほど言ったハザードが起こります、必ず。  そういう意味で、僕らはなぜ自分たちはその種を取りたいかというと、自分たちの、気候変動の中でいろんなものを植えていれば、一つのものが駄目になってもほかのものが大丈夫ということがありますので、そういう一つの安定性ということも考えています。  そして同時に、農業というものはどうしても単一化になっていって、農地が今、一万年の中で森林の三分の一がなくなって農地になっているわけですが、これが温暖化や様々な問題をつくってきている、地球環境の問題もつくっているんですね。農業の一番の問題点は単一化なんです。生態系が非常に単一であって、非常に危ういんです。それを増やすためには、自分たちが食べ物を作る、いろんなものを作る中で多様性を増やさなきゃならない。そうしなければ安定しないという思いがあるので、その方向でやっています。
  185. 紙智子

    ○紙智子君 ありがとうございます。  多様性ということが大事だという話されていて、私も多様性というのは大事だと思うんですよね、いろんな形でやっていく必要があるんだと思っていて、今、種を作る人と、それから買う人という、そういうちょっと分業化もしている面があって、種苗を買う中に、買ってみたんだけど当たり外れもあるということで、農家の人で、なので自分で確かな種を作るという人もいるわけですよね。  それで、現行種苗法の二十一条というのは、これまででいうと、生産者の自家採種を認めていたと、原則自由だったわけなんですけど、その規定がある意味農家のその多様性を保障する部分でもあったんじゃないのかなというふうに思っていて、そういう意味では、今度の改正でこの自家採種を、これ禁止ではないんだと農水省は一生懸命言っていて、許諾制にするんだと、許諾料を払うことで登録品種であっても作ってもいいという話になるんですけれども、結局、やっぱり狭めることにならないかなというふうに思うんですよね。  その辺は、ちょっと一言で言うと、どんな感じを受けていますか、村上さん。
  186. 村上真平

    参考人(村上真平君) 先ほどお話ししたように、育種においても、種にしても果樹にしても、全てのものを品種改良や新しいものを作っていくときは元々になるものがあるんです。そして、元々のものは別に許諾もなしに使っているわけです。これから、じゃ、ローカルバラエティー、今までのものは許諾要らないからやっていっていいんだよといって、そこからどんどんどんどん新しく作っていったら、どんどんどんどん、じゃ、許諾が要るものを作りますよというようにやる。僕、それはやはりエシカルじゃないと思います、倫理的じゃないと思うんです。  変な話なんですけど、自然の今まで一万年の歴史の中で、様々なもろもろあるものから取って、それに対しては払わない。これ、今よく言われているのは、モンサントなんかは、Btコーンといったような、何か虫が食ったら死んじゃうようなコーンを作って、いっぱいロイヤリティー付けて売っていますけど、これ、元々コーンはメキシコが産地ですが、メキシコにロイヤリティーは全然払っていません。  つまり、今までコモンズと言われるいわゆるみんなの共有財産であったものから選んで自分が使って、それでもうけたもので、そこはロイヤリティーは取るけれども、こちらに返さないですよね。そうすると、ここに一つやっぱり問題が、じゃ、育成者の権利はいつまでなんだと、何年までなのだ、育成者はその前にあったものに対してどういうそれがあるんだと、そういうことがなければ、これはアンフェアですよね。  やっぱりそういうことをきちんと考えないと、育成者の権利権利ばっかり言っていますけど、まあ、育成者を僕は否定しているわけではないです、非常にすばらしいと思っていますが、やはりそこはきちんと考えてほしいと思います。
  187. 紙智子

    ○紙智子君 ありがとうございます。  金澤参考人にお聞きします。  金澤参考人は、花の育種、生産、それから販売ということで、全国品種育成会の会長も務められてきたということですし、国産のラズベリーも作られたということなんですよね。  実は、私、話聞きながら、私、北海道なんですけれども、花屋さんで知り合いがいたんですね。いたというのは、もう亡くなってしまったんですけど、その方から、タモトユリといって、日本の固有種で、鹿児島のトカラ列島の口之島の断崖絶壁にだけ自生するという、そういう花があったんだけど、これがもう絶滅ということになっているんですけど、純白のユリの花です。それで、その球根を分けてもらって北海道に持ってきて、自生で復活させることができたといって非常にうれしそうに話をしてくれて、たしか農林水産大臣賞か何か受けたと思うんですけど。  そういうやっぱり新しいものを作っていくということの喜びとかそういうのを聞くと、大変な努力しているわけだから、これはやっぱり知的財産権としてちゃんと保障されるべきものだなというふうに思うわけですよ。そういうのはやっぱり大事だなと思うんですね。  ただ、やっぱり、花と食料とまたちょっと違うと。食料というふうになると、今度はやっぱり生きるために必要なものになってくるので、ここは私は区別というのも必要なんじゃないのかなというふうに思うんですね。  それで、先ほどの話も聞きながら共感するわけなんですけど、そのことと、やっぱり生産する側、農家の人とのやっぱりどっちもちゃんと成り立つようなことを考えたときに、先ほどロイヤリティーの話なんかもあったんですけれども、やっぱり、何というのかな、そういうやったことに対してのちゃんと評価と、それから対価ということで、農家増殖を、許諾料を取るというやり方ではなくして、いい方法がないのかなというふうに、もっと農水省として別のそういう応援する中身というのは考えられないのかなと思うんですけど、その辺はどうでしょうかね。
  188. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) まず一つ、許諾の料というのは、国が決めるわけでなくて、これは商業の相対の中でのいろんな条件によって許諾料というのは当然決まります。作っていただける人は安心して、その許諾を受ければ、その一定のキャパの中で精いっぱい自分の作りに専念できる、一つのそういうメリットもありますし、また販売する許諾料の部分についても、単価も含めて、その販売されるものの金額によって相当変わってきます。何円のものから何百円のものまで。  そういった部分での、育成者権側とそれを受けてやる側が、そういう形での契約の上に、相互理解を示しながら、そういった形で私は行くと思いますし、また、政府的な部分の中というよりは、そういう国の作られたものの中においては、そういった形で、量的なもの、それからまた、許諾をすることによって、ある程度の一定の、誰もが作られるわけじゃなくて、契約された選ばれた人が作っていくというふうな感覚で、逆手に考えれば、非常に特異的な販売だとか、そういった、はっきり言えば値段の交渉がこちら側にあるというような、成果物の、そういったものに広がっていくんじゃないかと思うんです。  誰もが、万民が作って、やっぱりだんだん粗悪なものも出てきて、それで単価が下落してその品種が終わってしまう、消費者にそっぽを向かれる、これが通常の今までの私たち昭和五十年代の花作りの悲劇でした。それが、そういう種苗法に基づいた中で登録を取られながら、一定の量の、マーケットに落とす一定の量を調節していきながら、許諾を受けた人たちがしっかりいいものを作ったおかげで、その品種が、まあ、早く言えば高く売れて、農家そのものにも許諾もあるし、しっかりしたものが消費者に渡ったときに、リピーターとしてまた循環が繰り返す。そういうものだと私は思っています。  自由に作る、作りたい、また、そういったのがちょっと頭に、ちょっとこう触って、どうも今までと違うその違和感はあるでしょうけれども……
  189. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 金澤参考人、申し訳ありません、時間が参っておりますので、おまとめくださいませ。
  190. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) はい、済みません。  どうもありがとうございました。
  191. 上月良祐

    委員長上月良祐君) いや、おまとめください、簡潔に。
  192. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) ああ、そうですか。はい。ちょっと興奮ぎみだったんで、何話していたか分からなくなっちゃいました。  まあそういうことで、作る側も、許諾を受けた側である程度そういうマーケットの調節をしていきながら、農家そのものの手取り額も逆に多くなるような、そういう消費者との関係もウイン・ウインに持っていけるような方向性もできるのではないかと、私とすればいいんで、そういうことを推進してほしいと私は思っております。
  193. 上月良祐

    委員長上月良祐君) お時間が参っておりますので。
  194. 紙智子

    ○紙智子君 済みません、残念ながら時間になってしまいました。  私はやっぱり、育成者も大事だけど、やっぱり生産する側、農家の権利も大事なので、何とかこれをうまく釣合い取れるようにしていくべきだなということをちょっと改めて思ったところです。  どうもありがとうございました。
  195. 須藤元気

    ○須藤元気君 無所属の須藤元気です。  金澤参考人、村上参考人、本日はお時間をいただきましてありがとうございます。大変参考になりました。  早速質問に入らさせていただきます。  まずは村上参考人にお伺いします。  お話を聞かせていただき、そして関係資料を読まさせていただきました。私自身有機農業を盛り上げていきたいと考えておりまして、村上参考人に聞きます。村上参考人が推進されている持続可能な農業の在り方、大変共感しております。  自然農業は、この生物多様性の保護を通じた食料危機の回避と食料主権の確保ということが主要なテーマと推察しております。先ほどお話でもありましたが、アイルランドでジャガイモのお話がありましたけれども、やはりこの種というのはとても大切だなと思います。こうした観点からすると、今回の種苗法改正案には多くの疑問があるということは理解しました。  そこで、最大の問題点というのはどこにあるとお考えでしょうか。
  196. 村上真平

    参考人(村上真平君) 最大の問題点ですね。最大の問題点は、僕はもう既に言っているつもりなんですが、もう少し、もう一回確認、言いたいと思います。  それは、先ほどから申し上げていますように、種をずっと持ってきた人々は誰か。それは農民なんです。そして、この五十年ほどが農民の手からどんどんどんどんそれを専門とする人たち、会社に移っていっているというのが今の状況です。そして、それがなっていく中で、それまでも、いろんな人たちがいろいろな形で品種改良したものは、農民が作れば、この新しいのができた、そしてほかの人たちにやってどうだと、良かった、じゃ、みんなが作ると言ったら、まあ彼はどれだけのロイヤリティーもらったかどうか分かりませんが、彼らや彼女たち、作った人たちは、それが作られることを喜び、それで喜んでいる人たちがいることが彼らにとっては作る一つの目的だったわけですよね。また、村やいろんなところ、寒いところ、いろいろなところでできるものをどうやって作ろうかということを、コミュニティーのために。  そういう形で来たものが、今の時代はそれを、今まであった、蓄積された多くの遺伝子から自分たちが選んで、そして、それで自分たちにそれはロイヤリティーを付けて、そして、これはあなたたちずっと作っちゃいけないよと、私の許可がなきゃ駄目だという、これが問題だと僕思っています。それが問題なんです。  今まではそういうことをしていないがゆえに非常に多様なもので、多様であるがゆえに続いてきたんです。それを、あるところに集中させて、そして、ましてや僕は遺伝子組換え、全く、ゲノムも全く反対です。それは、遺伝子を非常に少ないところから自分たちの好き勝手に作るという、作り替えるということ。これは、僕はこの長い生命の中で、生命に対する冒涜だと思っています。ちょっと大きな言葉になりますが。  僕の言いたいことは、今まで、九千九百九十、あっ、五十年以上ですね、農民は当たり前のように、どこから得ても、それを増殖すること、そして新しく作ること、その地域に合わせることをやってきたことをこの今になって止める。これをやることは、倫理的にも、それから生態系においても非常に問題であると、それが僕の言いたいことです。
  197. 須藤元気

    ○須藤元気君 ありがとうございます。  続きまして、金澤参考人にお伺いします。  ブランド品種というものは、結構大変な時間や労力を掛けてでき上がっているんだなと、何か分かっているようで分かっていなかったです。やはり、この育成者権というものはしっかり守っていくべきだと思います。  そこで、一つ、自分の思いというか、なんですけれども、今回の種苗法改正案は、花やフルーツ、野菜、米の自家増殖を一律に許諾規制する内容になっています。率直なところ、世界の趨勢である食料安保重視の観点からすると、野菜、米は従来どおり自家増殖の自由度を残し、金澤参考人が営んでいる花やそのほかのブランド品種は規制を別枠にして、規制条件を細かくし、そして厳しくするアプローチもありかなと思うんですが、金澤参考人の御意見を伺えましたら幸いです。
  198. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) 長年やはり、おっしゃられたことはよく分かるんですけれども、食物が今まで人間の大事なもので、それは誰のものかと、種の起源は誰のものかというようなところから発展してきているんですけれども、近年、やはり世界全体的に食べるもの、食料というものが一つの商品、強いて言うならば国際間の戦略物質に変わってきているという、そういった部分に来ているんではないかと。  今までの食料についての部分については、長年のその文化といいますか、日本人古来の、日本の米であればそういう部分の流れは来ているのかなと思っています。そこから、より一層、収穫量が多かったり、耐病性、耐寒性、農家にとって、生産量を多くしたり、そういう日本の環境の中でいろんなものが改良されてでき上がってくる。しかし、そのゆっくりした流れの、その植物本来の持っている変化の部分の中で淘汰されていく流れの中であればいいと思いますけれども、実際それを人為的に更に優秀なものに仕上げていくということになると、相当のいろんな経費とか、そういったものも掛かってきます。  その中で、当然、やはり、そういったものの開発費用だとか、まあ、国費でやっていればそれは国のものだろうとはいいますけれども、先ほど来あるように、そういったものの部分についてのところをやはり一律にと言われていますけれども、今、民間育種でも相当多く育種されています。  私も米の育種を今手掛けているところなんですけれども、そういった意味での部分であれば、国でやられているところから民間がたくさん入ってきていて、そういった部分での、農業の分野じゃない特許とか、そういったもので、育種の、農業関係の種苗法ですと、それをまた交配親に使っていきながら新しいものを作り出すということは可能なんです、許可になっているんですけれども。これを、問題は、特許と称した工業的な考え方の部分が非常に多くて、そこの部分から、一つは、絶対触れては駄目、この遺伝子を触っては駄目というものが海外からは今入ってきています。そういう中で、先ほど言われているように、種の部分に、種について全部掌握されてしまう、制圧されてしまうというおそれは本当にあります。  それで、実は、民間も含めた、国もそうですけれども、その対外国に対しての部分のところをもっと日本国内での戦略的な育種開発をするためには、やはり統一性を決めていきながら、今後、そういう部分を推し進めていきながら、そういった許諾制にしていきながら攻めていかなければ、国際社会の中でのそういう重要な食料にまで、もう反対に侵略されてしまう。だから、こういった意味も含めて、やはり推し進められればいいかなと思っています。
  199. 須藤元気

    ○須藤元気君 ありがとうございます。  村上参考人にも今のちょっと質問なんですけれども、この野菜や米、従来どおり自家増殖の自由度を残し、その他のブランド品種はこの規制を別枠にして規制条件を細かくすることについてどうお考えでしょうか。
  200. 村上真平

    参考人(村上真平君) 僕はその方がいいと思います。
  201. 須藤元気

    ○須藤元気君 ありがとうございます。  村上参考人は、タイ、バングラデシュで農村開発のNGOで活動なさっていました。グローバル企業による農業のグローバル化と食料安保とのバランスについて、今後、日本はどのように考えるべきか、種苗法と絡めて御教示いただけますでしょうか。
  202. 村上真平

    参考人(村上真平君) 非常に大きいことなので、この質問に答えるところで、話には大きいんですが。  これから、ますます種苗会社も合併をして、世界的なマルチナショナルカンパニーといいますか、そういうものの力がどんどん強くなっていくだろうと思います。そしてそれは、TPP等いろいろな形を通して、国に対してもその企業の権利とかを強く出すような法的なことが来ると思います。それはもう既に流れの中でありますね。やっぱり彼らは物すごいお金とロビーイングする力を持っていますから、そういう意味において、もし日本が、日本はただでさえ今自給率が四〇%を切りまして、食料自給をちゃんとしなきゃならないということをずっと言っていますが、ほかの先進国に比べても最低である、イギリスでさえ七〇%あるのに日本は非常に少ない。そして、いわゆる安全保障とかいろんなことを言ったときに、これからの異常気象も含めた様々な問題がある中で、自分たちの国できちっとした食べ物を自給していくという方向性を本当にやっていかないと、これはそのグローバル企業の問題もありますが、これから米のことも含めて、やはりのほほんとはできないだろうというふうに思っています。  質問時間ですから余り、簡単に言いまして、もう少し世界のそういう流れ、趨勢の中で物をきちっと見るべきだと思っています。
  203. 須藤元気

    ○須藤元気君 ありがとうございます。  私が本日最後の質問者となります。残り時間、あと三分ほどですけれども、ここまで両参考人の御所見を伺いましたが、まだ最後に言い残したことがありましたら、最後にお一人ずつ、簡潔にお願いいたします。
  204. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 金澤参考人、ありますか。
  205. 金澤美浩

    参考人(金澤美浩君) ありがとうございます。  やはり、我々、育種力、国のためとかじゃなくて、まあ全体的に見ればこの国のためになるとは思いますけれども、消費者のため、新しいものを絶えず、味覚、聴覚、視覚、そういったものも全て含めて、より新しい文化的な生活をしてもらうために一生懸命頑張っています。  こういった中で、やはりエネルギーとなるのは、ロイヤリティーが戻ってきて、この品種良かったよと言われるような育種作りを、作っていければ、これからますます育種に対する関心度合いも深まり、若い人たちも、こういった開発に向けての人たちも参入してきて、もっともっと育種国家日本をこれからつくっていくために何とかこの法案通してください。お願いします。
  206. 村上真平

    参考人(村上真平君) やはり、僕らというか、僕は日本の問題を考えますけど、日本の問題は世界の問題と常につながっているわけですよね。そして、今はこのSDGsという言葉が言われて、二〇三〇年までにあの十七の目標を達成しようとしている。で、もう一つの言葉は、誰も後ろに取り残さない、誰も取り残さないということです。ですが、実際は、この七十五億の中で八億以上の人たちが飢えに苦しみ、世界の食べ物は足りている、それらを全て食べさせるだけ生産できているにもかかわらず、そういう状況があるわけです。  自分たちの生活を良くしたい、これは誰でも考えることです。ですが、このSDGsが求めるものは、環境的な、環境的健全性、それから社会的公正性、そして経済的平等性です。もうける人間だけがもうけて、本当にお金がない人間は飢え死にしてしまえというような非常に情けない今のこの社会状況に対して、自分たちはどうするのか、この環境に対して自分たちがどうするのか、そういうところ、そういう観点から一つ一つの皆さんがこの法案、考えていただきたいと思います。
  207. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 時間が参っておりますので、おまとめください。
  208. 須藤元気

    ○須藤元気君 はい。  今日いただいた御意見をしっかりと踏まえて、この法案の最終的な審議、決議に挑んでいきたいと思います。  改めて、貴重な御意見、心から感謝いたしまして、私からの質問を終わりにします。ありがとうございました。
  209. 上月良祐

    委員長上月良祐君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。  参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十一分散会