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2020-12-02 第203回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和二年十二月二日(水曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 義家 弘介君    理事 伊藤 忠彦君 理事 稲田 朋美君    理事 奥野 信亮君 理事 宮崎 政久君    理事 山田 賢司君 理事 稲富 修二君    理事 階   猛君 理事 大口 善徳君       安藤 高夫君    井出 庸生君       井野 俊郎君    大塚  拓君       神田  裕君    黄川田仁志君       国光あやの君    小林 鷹之君       杉田 水脈君    武井 俊輔君       辻  清人君    出畑  実君       中曽根康隆君    野中  厚君       百武 公親君    深澤 陽一君       藤原  崇君    盛山 正仁君       八木 哲也君    山下 貴司君       吉野 正芳君    伊藤 俊輔君       岡本あき子君    寺田  学君       中島 克仁君    中谷 一馬君       松田  功君    松平 浩一君       屋良 朝博君    山花 郁夫君       浜地 雅一君    藤野 保史君       串田 誠一君    高井 崇志君     …………………………………    参議院議員        秋野 公造君    参議院議員        古川 俊治君    参議院議員        石橋 通宏君    参議院議員        梅村  聡君    参議院議員        伊藤 孝恵君    法務大臣         上川 陽子君    厚生労働大臣     三原じゅん子君    政府参考人    (法務省民事局長)    小出 邦夫君    政府参考人    (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君    政府参考人     (厚生労働省雇用環境均等局雇用環境総合整備室長子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)  岸本 武史君    参考人    (非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ) 石塚 幸子君    参考人    (帝塚山大学非常勤講師) 才村 眞理君    法務委員会専門員     藤井 宏治君    厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月二日  辞任         補欠選任   大塚  拓君     杉田 水脈君   神田  裕君     百武 公親君   黄川田仁志君     辻  清人君   山下 貴司君     八木 哲也君   池田 真紀君     松田  功君   寺田  学君     中島 克仁君   中谷 一馬君     伊藤 俊輔君 同日  辞任         補欠選任   杉田 水脈君     安藤 高夫君   辻  清人君     黄川田仁志君   百武 公親君     神田  裕君   八木 哲也君     山下 貴司君   伊藤 俊輔君     中谷 一馬君   中島 克仁君     寺田  学君   松田  功君     岡本あき子君 同日  辞任         補欠選任   安藤 高夫君     大塚  拓君   岡本あき子君     池田 真紀君     ――――――――――――― 十二月一日  生殖補助医療提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例に関する法律案参議院提出参法第一三号) 十一月二十日  国籍選択制度廃止に関する請願阿久津幸彦紹介)(第七〇号)  同(佐々木隆博紹介)(第七三号)  同(高木美智代紹介)(第七四号)  同(長尾秀樹紹介)(第七九号)  同(柚木道義紹介)(第八〇号)  同(荒井聰紹介)(第一一三号)  同(辻元清美紹介)(第一一四号)  同(小川淳也紹介)(第一三五号)  もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願阿久津幸彦紹介)(第七一号)  同(佐々木隆博紹介)(第七五号)  同(高木美智代紹介)(第七六号)  同(長尾秀樹紹介)(第八一号)  同(柚木道義紹介)(第八二号)  同(荒井聰紹介)(第一一五号)  同(辻元清美紹介)(第一一六号)  同(小川淳也紹介)(第一三六号)  法務局更生保護官署入国管理官署及び少年院施設増員に関する請願稲富修二紹介)(第一三四号) 同月二十六日  法務局更生保護官署入国管理官署及び少年院施設増員に関する請願赤嶺政賢君紹介)(第一七五号)  同(笠井亮紹介)(第一七六号)  同(城内実紹介)(第一七七号)  同(菊田真紀子紹介)(第一七八号)  同(穀田恵二紹介)(第一七九号)  同(佐々木隆博紹介)(第一八〇号)  同(志位和夫紹介)(第一八一号)  同(清水忠史紹介)(第一八二号)  同(塩川鉄也紹介)(第一八三号)  同(田村貴昭紹介)(第一八四号)  同(高橋千鶴子紹介)(第一八五号)  同(畑野君枝紹介)(第一八六号)  同(藤野保史紹介)(第一八七号)  同(宮本徹紹介)(第一八八号)  同(本村伸子紹介)(第一八九号)  同(岸本周平紹介)(第二三四号)  同(黒岩宇洋君紹介)(第二三五号)  同(寺田学紹介)(第二九八号)  同(照屋寛徳紹介)(第二九九号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償法制定に関する請願小沢一郎紹介)(第二二二号)  同(神谷裕紹介)(第二二三号)  同(岸本周平紹介)(第二二四号)  同(黒岩宇洋君紹介)(第二二五号)  同(佐々木隆博紹介)(第二二六号)  同(中川正春紹介)(第二二七号)  同(長谷川嘉一紹介)(第二二八号)  同(松田功紹介)(第二二九号)  同(宮本徹紹介)(第二三〇号)  同(屋良朝博紹介)(第二三一号)  同(赤嶺政賢君紹介)(第三〇〇号)  同(逢坂誠二紹介)(第三〇一号)  同(岡本充功紹介)(第三〇二号)  同(菅直人紹介)(第三〇三号)  同(関健一郎紹介)(第三〇四号)  同(辻元清美紹介)(第三〇五号)  同(寺田学紹介)(第三〇六号)  同(本多平直紹介)(第三〇七号)  国籍選択制度廃止に関する請願中川正春紹介)(第二三二号)  同(佐々木隆博紹介)(第二九六号)  もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願中川正春紹介)(第二三三号)  同(佐々木隆博紹介)(第二九七号) 同月二十七日  法務局更生保護官署入国管理官署及び少年院施設増員に関する請願池田真紀紹介)(第三四五号)  同(櫻井周紹介)(第三四六号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償法制定に関する請願池田真紀紹介)(第三四七号)  同(櫻井周紹介)(第三四八号)  同(清水忠史紹介)(第三四九号)  同(重徳和彦紹介)(第三五〇号)  同(畑野君枝紹介)(第三五一号)  同(村上史好君紹介)(第三五二号)  同(本村伸子紹介)(第三五三号)  同(横光克彦紹介)(第三五四号)  同(吉川元紹介)(第三五五号)  同(生方幸夫紹介)(第三八四号)  同(川内博史紹介)(第三八五号)  同(菊田真紀子紹介)(第三八六号)  同(近藤昭一紹介)(第三八七号)  同(高木錬太郎紹介)(第三八八号)  同(矢上雅義紹介)(第三八九号)  同(海江田万里紹介)(第四六四号)  同(尾辻かな子紹介)(第五一八号)  同(大河原雅子紹介)(第五一九号)  同(奥野総一郎紹介)(第五二〇号)  同(亀井亜紀子紹介)(第五二一号)  同(下条みつ紹介)(第五二二号)  同(武内則男紹介)(第五二三号)  同(日吉雄太紹介)(第五二四号)  同(道下大樹紹介)(第五二五号)  同(柚木道義紹介)(第五二六号)  同(吉田統彦君紹介)(第五二七号)  国籍選択制度廃止に関する請願近藤昭一紹介)(第三八二号)  もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願近藤昭一紹介)(第三八三号)  選択的夫婦別姓の導入など、一日も早い民法改正を求めることに関する請願赤嶺政賢君紹介)(第四五二号)  同(笠井亮紹介)(第四五三号)  同(穀田恵二紹介)(第四五四号)  同(志位和夫紹介)(第四五五号)  同(清水忠史紹介)(第四五六号)  同(塩川鉄也紹介)(第四五七号)  同(田村貴昭紹介)(第四五八号)  同(高橋千鶴子紹介)(第四五九号)  同(畑野君枝紹介)(第四六〇号)  同(藤野保史紹介)(第四六一号)  同(宮本徹紹介)(第四六二号)  同(本村伸子紹介)(第四六三号) 同月三十日  法務局更生保護官署入国管理官署及び少年院施設増員に関する請願石川香織紹介)(第六一二号)  同(松平浩一紹介)(第七三六号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償法制定に関する請願阿久津幸彦紹介)(第六一三号)  同(石川香織紹介)(第六一四号)  同(笠井亮紹介)(第六一五号)  同(金子恵美紹介)(第六一六号)  同(穀田恵二紹介)(第六一七号)  同(高井崇志紹介)(第六一八号)  同(藤野保史紹介)(第六一九号)  同(古川元久紹介)(第六二〇号)  同(山川百合子紹介)(第六二一号)  同(山花郁夫紹介)(第六二二号)  同(阿部知子紹介)(第六八七号)  同(階猛紹介)(第六八八号)  同(篠原孝紹介)(第六八九号)  同(小宮山泰子紹介)(第七三七号)  同(白石洋一紹介)(第七三八号)  同(田村貴昭紹介)(第七三九号)  同(津村啓介紹介)(第七四〇号)  同(長尾秀樹紹介)(第七四一号)  同(堀越啓仁君紹介)(第七四二号)  同(松平浩一紹介)(第七四三号)  同(森山浩行紹介)(第七四四号)  同(山崎誠紹介)(第七四五号)  同(志位和夫紹介)(第八〇七号)  同(塩川鉄也紹介)(第八〇八号)  同(緑川貴士紹介)(第八〇九号)  同(赤嶺政賢君紹介)(第八六五号)  同(小川淳也紹介)(第八六六号)  同(笠井亮紹介)(第八六七号)  同(穀田恵二紹介)(第八六八号)  同(志位和夫紹介)(第八六九号)  同(清水忠史紹介)(第八七〇号)  同(塩川鉄也紹介)(第八七一号)  同(田村貴昭紹介)(第八七二号)  同(高橋千鶴子紹介)(第八七三号)  同(照屋寛徳紹介)(第八七四号)  同(畑野君枝紹介)(第八七五号)  同(藤野保史紹介)(第八七六号)  同(宮本徹紹介)(第八七七号)  同(本村伸子紹介)(第八七八号)  同(今井雅人紹介)(第九五三号)  同(岡島一正紹介)(第九五四号)  同(中島克仁紹介)(第九五五号)  同(西岡秀子紹介)(第九五六号)  国籍選択制度廃止に関する請願井出庸生紹介)(第九四九号)  同(枝野幸男紹介)(第九五〇号)  もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願井出庸生紹介)(第九五一号)  同(枝野幸男紹介)(第九五二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  生殖補助医療提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例に関する法律案参議院提出参法第一三号)      ――――◇―――――
  2. 義家弘介

    義家委員長 これより会議を開きます。  参議院提出生殖補助医療提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。参議院議員秋野公造君。     ―――――――――――――  生殖補助医療提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 秋野公造

    秋野参議院議員 ただいま議題となりました生殖補助医療提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例に関する法律案につきまして、発議者を代表いたしまして、提案趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。  近年、我が国ではいわゆる生殖補助医療の技術が進展し、生殖補助医療を受ける方も増加しておりますが、生殖補助医療については、法律上の位置づけがなく、懐胎及び出産をすることとなる女性の健康の保護当事者意思の尊重、生まれる子の福祉への配慮といった共有されるべき理念も法定されておりません。  また、現に生殖補助医療により生まれた子は相当数に上り、今後も生まれることが見込まれるところ、生殖補助医療により生まれた子の親子関係については、最高裁判例解釈によって一定方向性が示されているものの、法律上明確な規律がないため、その子の身分関係が不安定となり、その利益を害するおそれがある状況が続いていると指摘されております。  本法律案は、このようなことから、個人の人権配慮した生殖補助医療に関する法整備が求められている等の生殖補助医療をめぐる現状等に鑑み、生殖補助医療提供等に関し、基本理念を明らかにし、並びに国及び医療関係者責務並びに国が講ずべき措置について定めるとともに、生殖補助医療提供を受ける者以外の者の卵子又は精子を用いた生殖補助医療により出生した子の親子関係に関し、民法特例を定めようとするものであります。その主な内容は次のとおりです。  第一に、生殖補助医療提供等に関する基本理念を明らかにし、不妊治療として心身状況等に応じて適切に行われるようにするとともに、懐胎及び出産をすることとなる女性の健康の保護が図られるべきこと、実施に当たっては、必要かつ適切な説明が行われ、各当事者の十分な理解を得た上で、その意思に基づいて行われるべきこと、精子又は卵子の採取、管理等安全性が確保されるべきこと、生まれる子について、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとすることとしております。また、生殖補助医療提供等に関する国及び医療関係者責務について定めるとともに、国が講ずべき措置として、知識の普及等相談体制整備及び法制上の措置等について定めております。  第二に、生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法特例を定めることとしております。具体的には、女性が自己以外の女性卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎出産したときは、その出産をした女性をその子の母とするとともに、妻が夫の同意を得て夫以外の男性の精子を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫は、民法第七百七十四条の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができないこととしております。  第三に、国会で検討が行われることを前提に、生殖補助医療の適切な提供等を確保するための事項として、生殖補助医療及びその提供に関する規制あり方生殖補助医療に用いられる精子卵子又は胚の提供又はあっせんに関する規制あり方、他人の精子又は卵子を用いた生殖補助医療提供を受けた者、当該生殖補助医療に用いられた精子又は卵子提供者及び当該生殖補助医療により生まれた子に関する情報の保存及び管理開示等に関する制度あり方等について、おおむね二年を目途として、検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置等が講ぜられるものとしております。  以上が、この法律案提案趣旨及び主な内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 義家弘介

    義家委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 義家弘介

    義家委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ石塚幸子君及び帝塚山大学非常勤講師才眞理君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 義家弘介

    義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長小出邦夫君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君及び厚生労働省雇用環境均等局雇用環境総合整備室長子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長岸本武史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 義家弘介

    義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  8. 義家弘介

    義家委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。
  9. 稲田朋美

    稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。  まず、この法案必要性について、提出者古川先生にお伺いをいたしたいと思います。  テーマとなっております生殖補助医療適用というのは、生命の誕生、そしてまた人間の尊厳、さらには、関係者、生まれた子供の人権にかかわる、極めて重い、そして重大なテーマだと思います。また、民法制定されていた当時には予想されていないものであって、親子や家族のあり方に重大な影響を与える問題だと思っております。  参議院法務委員会での審議において、この法律によっても検討事項とされているさまざまな重大な点、そしてまた、参議院の可決後も、私のところにいろいろな懸念課題の声が寄せられております。例えば、生殖補助医療によって出生した子の出自を知る権利をどうするのか、さらには、そのための情報管理をどうするのか、また、代理懐胎を認めるのか、さらには、代理出産の場合の親子関係はどうするのか、事実婚、シングル、同性カップルの場合の適用はどうするのかなど、重要な論点が検討事項になっているかと思います。また、法案第三条四項の表現のうち「心身ともに健やかに生まれ、」という表現が、障害者権利条約に反するのではないかといった指摘もございます。  参議院では十四もの附帯決議がなされており、今指摘した課題については本法附則三条の検討事項となっておりますが、こういった課題懸念、また検討事項も多い中において、でも、今早急にこの法案を成立させるべき理由について、古川先生にお伺いをいたします。
  10. 古川俊治

    古川参議院議員 稲田先生の御質問にお答えしたいと思います。  現に生殖補助医療によって生まれた子というのは、正確な統計はございませんが、一万例を超えているというようなことも言われております。また、今後も引き続きそうした子が生まれてくるということもわかっております。  そのような中で、生殖補助医療を使って出生した子についての親子関係というものは、最高裁判所判例解釈によって一定の方向づけはございますが、明確な規律がないために、裁判になることも多く今までもありました。そのような状況が続いている中で、やはり社会的に一番基本的な人間関係であるこの親子関係というものをしっかり定めていくことが、子の福祉の観点からも重要であると考えております。  過去の検討におきましては、二〇〇〇年より以前から、既にこの第三者配偶子を使った生殖補助医療に関する親子関係については議論が始まり、二〇〇三年に政府の方でも一定の見解が出たと考えられておりますが、現在まで立法がございません。  一刻も早くこのような状況を打開するために、現在、この附則三条を含め、法律をここで定めさせていただきまして、早急にさまざまなこの生殖補助医療をめぐる現状制度をつくるということを今考えているところでございます。
  11. 秋野公造

    秋野参議院議員 私の方から、附帯決議の意義につきまして御答弁をさせていただきたいと思います。  参議院における法案審議を通じまして、与野党、会派を超えて多くの附帯決議を賜ったところであります。これらは検討すべき事項にとどまらず、留意すべき事柄についても細かくいただきまして、今後の議論はこれらの附帯決議に沿って行われるべきことと、発議者一同、考えております。  また、附帯決議がなされたこと自体がこの法案提出を契機としたものと御評価をいただけるならば、これは発議者一同としてもこの上ない喜びでありまして、改めて早期成立をお願いをして、今後の議論につきましても議員各位の御指導を賜りたいと考えているところであります。
  12. 稲田朋美

    稲田委員 それでは、本法案の肝というべき、第九条、第十条の、民法における親子関係規定特例についてお伺いをいたしたいと思います、民事局長。  まず、九条関係なんですけれども、今、現行民法では、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定するとして、父子関係については規定されておりますけれども、母親については、自分が懐胎をして出産をした事実があるということから、民法上には規定はないけれども、懐胎出産した女性出生した子の母親であり、母子関係懐胎出産という客観的な事実により当然成立することを前提とした規定を設けている、これは最高裁決定の文言でございますが、それが民法前提でございます。  では、民事局長にお伺いしますけれども、この本法案の九条は、まさしくその民法の考え、また最高裁決定と合致をしているわけですけれども、仮に九条がなければ母子関係は確定しないということなのでしょうか。お伺いいたします。
  13. 小出邦夫

    小出政府参考人 お答えいたします。  現行法上、第三者卵子提供により生まれた子の母子関係を直接規定している規定はございません。もっとも、委員指摘のとおり、母子関係につきましては、判例上、自然懐胎かあるいは生殖補助医療による懐胎かにかかわらず、分娩者が母となるとの解釈がされておりますので、これによりますれば、第三者卵子提供により生まれた子につきましても分娩者が母となるものと考えられると考えております。
  14. 稲田朋美

    稲田委員 ということは、やはり、九条を規定することによって、民法制定時には予定をしていなかった母子関係についても確定ができるということだと思います。  次に、十条関係についても民事局長にお伺いいたします。  十条で、夫の同意を得て、夫以外の精子を用いた生殖補助医療で妻が懐胎した場合について規定がされております。  現行民法のもとでは、妻が婚姻懐胎して出産した子については民法七百七十二条の推定がございますが、それに対しては、一年間に限って夫は嫡出否認訴えを起こすことができます。もし仮にこの規定がなければ、同意を得て懐胎をしたという場合でも、嫡出否認訴えが起こせるということになるのでしょうか。お答えください。
  15. 小出邦夫

    小出政府参考人 お答えいたします。  現行法上、第三者精子提供により生まれた子の親子関係について明記した規定はなく、また、これについて明確に判断した裁判例も見当たらないところでございます。  もっとも、現行法は、夫が子の出生後、その子が嫡出であることを承認したときは、嫡出否認をすることができないという規定を置いておりまして、子の出生前に、医療実施について夫が事前に同意したということのみでこの規定が直接適用されることはないと考えられるところですが、一般的に、妻の生殖補助医療同意した夫が生まれた子について嫡出否認訴えを提起することは、信義則違反又は権利の濫用に当たり、許されないと解釈されております。  また、下級審裁判例で、第三者提供精子を用いて夫の同意のもとで行われた人工授精により生まれた子に関し、母親も、夫と子の間に父子関係が存在しないといった主張をすることは許されないと判示したものがございます。
  16. 稲田朋美

    稲田委員 そういたしますと、今民事局長答弁のとおり、判例によって、多分、今の民法の考え方からしても、信義則上、また権利濫用として、同意があるような場合には認められないと解釈はされるけれども、やはりそれをここの十条でしっかりと明記することに意義があると思います。  古川提出者にお伺いをいたします。  では、この規定の中で規定のない、同意がない場合の認知請求ですね、同意がない場合の嫡出否認、そしてそれに伴う認知請求についてどのようにお考えなのか。また、将来認知請求がされるというおそれがあれば、精子提供者はますます減少するのではないかというふうに思いますけれども、その点も含めてお答えください。
  17. 古川俊治

    古川参議院議員 ありがとうございます。  妻が、夫の同意を得ることなく、夫以外の男性の精子を用いた生殖補助医療により懐胎したという場合につきましては、本法律案規定するところではなく、各事案に応じて裁判所において決定される、その場合には、親子関係規律民法規定により裁判所が判断をされるということになるというふうに考えております。  今先生の御懸念の、将来的に認知請求を受けるかもしれないということで提供者が減るのではないかということでございますが、この点については、医療機関の方で現在は夫の同意を確実に確認をしているというふうに承っております。  しかしながら、仮にそのようなことがあった場合に、夫の同意を得ないで、第三者精子が使われて出生したというような子の親子関係について、今後、附則第三条の検討の中で検討することも除外はされていないというふうに考えております。
  18. 稲田朋美

    稲田委員 今御答弁ございましたように、今のような点についても、附則三条で検討することも考えられるということでございます。  その附則三条の二年以内の検討なのでございますが、本案についての検討事項は大変多岐にわたっておりますし、また附帯決議もついているところですが、ここに言う二年なんですけれども、これは検討に着手する期限なのでしょうか、それとも、二年内に一定の結論を得る、そういう二年なんでしょうかということでございます。  先生は、参議院答弁の中で、二年以内に国会で議論してまとめるんだということを表明することに大きな意義があるというふうにおっしゃっておられました。ただ、余りにも多うございますので、結論が出たものからしっかり改正なりなんなりをやっていくというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  19. 古川俊治

    古川参議院議員 論点は多岐にわたっていると考えられておりますが、先ほど稲田先生がおっしゃいましたように、出自を知る権利あるいは代理懐胎等が大きな論点になるというふうに考えております。  一定の考え方というのは、比較的、論点についていろいろな考え方がありますけれども、一定の考え方も示されているところでございまして、そこについてさまざまな案を持ち寄って話し合うことは可能であり、その結果に基づいて、一定法制上の措置というのは二年以内にできるのではないかというふうに考えております。  もちろん一遍に全ての課題を解決することはできないかもしれませんが、その場合には、解決できる課題だけでも解決をしていくということが大事だと考えております。
  20. 稲田朋美

    稲田委員 それでは、今述べられました生殖補助医療における生まれた子の出自を知る権利ですけれども、附帯決議において、この権利あり方というふうに書かれているところでございます。仮に二年後にこの権利を認められるというふうにするというふうになった場合、現在の情報も確保されなければ、二年後にその権利を保障するということはなかなか難しくなると思います。  検討中も含めて、情報管理必要性、またその体制等についていかがお考えでしょうか。提出者にお伺いをいたします。
  21. 古川俊治

    古川参議院議員 御指摘いただきましたように、情報管理は極めて今後の問題として重要だと考えております。  この点につきまして、附則三条の一項におきまして、精子又は卵子提供者に関する情報の開示に関するあり方、あるいは、他人の精子又は卵子を用いた、生殖医療に用いられた精子又は卵子提供者に関する情報の保存及び管理開示等に関する制度あり方というふうに書いてありますので、どのように保存していくか、それを担保する方法についても、この検討の中で話し合われるというふうに考えております。
  22. 稲田朋美

    稲田委員 親子関係という民法の根幹をなす法律関係について、想定しなかった生殖補助医療提供によって生じる親子関係を安定的なものにするため、かつ、生殖医療が適切に行われるようにするため、本法案は意義のあるものだというふうに考えます。一方、検討事項も多くありますので、本委員会における審議を踏まえ、早急に検討し、結論を得て、必要な措置を講ずることをお願いをしたいと思います。  ありがとうございます。
  23. 義家弘介

    義家委員長 次に、大口善徳君。
  24. 大口善徳

    ○大口委員 公明党の大口善徳でございます。  生殖補助医療につきましては、行為規制は、厚労省の厚生科学審議生殖補助医療部会で議論されて、平成十五年ですか、報告書が出ております。また、親子法制については、法務省の法制審議会の生殖補助医療親子法制部会で議論されていて、この民法特例の要綱中間試案、これが平成十五年七月に出ている。ただ、それ以降、議論が進んでいない。  そういう中で、やはり親子関係法律にしっかり明記するということは非常に大事なことでありまして、本当に発議者の御努力によってこういう形で法案が提出されたことに対して敬意を表したい、こういうふうに考えております。  法案について質問させていただきます。  一つは、第三条四項の「心身ともに健やかに生まれ、」の文言が優生思想につながるのではないかとの御指摘がございます。障害者団体等からもございます。この文言を用いた理由と指摘される懸念について、御所見をお伺いしたいと思います。
  25. 石橋通宏

    ○石橋参議院議員 御質問ありがとうございます。  御指摘をいただいた御懸念については私ども発議者のところにも届いておりまして、丁寧にお答えをさせていただきたいと思います。  まず、本法律案は、先ほどの趣旨説明にもございましたとおり、その立法趣旨の柱の一つに生殖補助医療によって生まれ来る子供たちの福祉権利の尊重を位置づけておりまして、法案第三条第四項は、そのことを基本理念の中に明記するために設けたものでございます。  その趣旨は、障害者権利に関する条約第十条そして第十七条も念頭に置きながら、全ての子供が障害の有無にかかわらず、心身ともに健やかなる環境、これはつまり、安全で良好な環境で生まれ、そして育つ権利を有するということでございまして、当然、そのためには、お子さんを出産する女性についても、妊娠から出産に至るまで、健やかなる、つまり安全で良好なる環境が得られなければならず、その環境を整えるために必要な配慮がなされなければならないということを意味しております。  こういった立法趣旨を明らかにするために、本法律案の「心身ともに健やかに生まれ、」の文言につきましては、法的な安定性と整合性の観点からも、次世代育成支援対策推進法や母子保健法等において同様の趣旨で用いられております、健やかに生まれという法律用語を使用したところでございまして、これらの立法例と同様に、障害を有する子の出生を否定的に捉えるとか優生思想につながるものでは全くなく、全てのお子さんたちが安全かつ良好な環境において生まれることを意図して用いたものでございます。  また、心身ともに健やかに育つという趣旨の文言も、児童福祉法、これは平成二十八年改正後でございますが、またいわゆる成育基本法等においても用いられているところでございまして、これらの健やかにという文言につきましても、決して、障害を有する子供たちを排除したり、優生思想を想起させるような趣旨ではございません。  なお、「必要な配慮」の具体的な内容といたしましては、例えば妊婦さんたちに対する健診等が考えられますけれども、生殖補助医療は通常の妊娠、出産の過程とまた異なることから、特に念入りな健診等の対応も必要になることもあり得るということも考慮させていただいた規定でございます。  ありがとうございます。
  26. 大口善徳

    ○大口委員 次に、第三条の基本理念につきまして、女性のリプロダクティブヘルス・ライツ、性と生殖に関する自己決定権の保障、確保が含まれていると理解してよろしいんでしょうか。
  27. 秋野公造

    秋野参議院議員 生殖補助医療提供等に関する基本理念について定める第三条におきまして、第一項では、「提供を受ける者の心身状況等に応じて、」との文言、第二項では、「各当事者の十分な理解を得た上で、その意思に基づいて」との文言を用いておりまして、生殖補助医療の分野に関しては、リプロダクティブヘルス・ライツという概念に沿っているものと考えてございます。
  28. 大口善徳

    ○大口委員 次に、第十条についてお伺いします。  「夫は、民法第七百七十四条の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができない。」と、手続的規定になっております。夫を父とするとの実体的な規定にしなかった理由についてお伺いします。
  29. 秋野公造

    秋野参議院議員 御指摘のとおり、第十条は、民法父子関係について嫡出推定制度を採用していることを踏まえて、「嫡出であることを否認することができない。」と手続的に規定をしてございます。  すなわち、民法第七百七十二条第一項が、妻が婚姻中に懐胎した子の父子関係について夫の子と推定すると想定しており、その上で、夫は、民法第七百七十四条により嫡出否認をすることができるところ、これら民法規定を踏まえて、本法律案の第十条では、夫は、民法第七百七十四条の規定にかかわらず、嫡出であることを否定することができないと規定をさせていただいております。
  30. 大口善徳

    ○大口委員 次に、第十条の夫の同意ということについてお伺いします。  同意内容が、条文上、より明確になるようにする必要があるのではないかと思われます。例えば、夫が同意書に、妻が第三者精子を用いた生殖補助医療により懐胎することには同意するが、みずからの子として引き受けることまでは同意しないと記載した場合、第十条の同意に当たると言える、同意があると言えるのかということ、また、精子提供者が誰であるか具体的に知った上で同意する必要があるのか、お伺いしたいと思います。
  31. 古川俊治

    古川参議院議員 第十条の趣旨でございますが、夫が同意をした場合の、この「同意を得て、」の同意をした場合なんですけれども、この同意には、すなわち、妻の懐胎同意した夫は出生した子をみずからの子として引き受けるという意思を有しているというふうに考えられまして、この夫に父としての親の責任を負っていただくということが相当であるという趣旨でございます。  同時に、各事案については裁判所において判断されることになると思いますが、この場合に、夫の同意を得て、妻が夫以外の第三者精子を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫は嫡出否認をすることができないという条文になっていることからも、裁判所が御判断なされるというふうに思っております。
  32. 大口善徳

    ○大口委員 あと、精子提供者が誰であるかを具体的に知った上での同意かということは。
  33. 古川俊治

    古川参議院議員 失礼いたしました。  第十条では、精子提供者が誰であるかを知っていることまでは同意の要件としておりません。
  34. 大口善徳

    ○大口委員 次に、第十条の夫の同意がどのような方法で行われ得るかということなんですが、これは、平成十五年六月六日の衆議院内閣委員会で、生殖補助医療によって生まれた子と夫の間の父子関係が訴訟で争われた場合、夫の同意の事実の存在については、利益を受けるのは子である。また、夫の同意書が長期間適切に保管されるという制度整備されているということになると、子の側で証拠である同意書を入手し、夫の同意の事実を立証することも容易であるので、子の側が夫の同意の事実について主張立証責任を負うということになると考えられる、法制審議会の部会でも議論の大勢はその方向であるということで、子が主張立証責任を、こういう状況であれば負う、こうなっているわけですね。  そういう点で、この十条の、夫の同意の方法ですね、やはり、同意書を必要とする、書面による同意を必要とするとすべきではないか。あるいは、仮に、書面とか、録音、録画等という場合もあるでしょう、その場合の保管の主体、方法、期間等を本法律案でどう扱うのか、やはり、こういうことをきちっと整備するということが、子がもし主張立証責任を負うということであるならば必要ではないかと思います。
  35. 秋野公造

    秋野参議院議員 本法律案におきましては、第三条第二項におきまして、「生殖補助医療実施に当たっては、必要かつ適切な説明が行われ、各当事者の十分な理解を得た上で、その意思に基づいて行われるようにしなければならない。」と規定をしておりまして、実際に生殖補助医療を受ける際には、この基本理念を踏まえて、例えば、医療機関から生殖補助医療について必要かつ適切な説明が行われ、この当事者の十分な理解を得た上で、夫の同意を含む当事者同意書がつくられることになるものと考えておりまして、この同意書というのは医療機関で適切に保管されるべきと私どもも考えてございます。  一方で、書面による同意としなかった理由でございますけれども、第十条における夫の同意が、第三者精子により妻が懐胎することに対する親子法制上の実体的な同意ということで、これについて書面性が要求されるものではないと考えたところであります。  附則第三条一項で、この規制あり方について、施行後、おおむね二年を目途として検討する、この結果に基づいて法制上の措置を講ずるとしているところで、御指摘の書面の保管主体、方法、期間等について検討をしっかり行ってまいりたいと思います。
  36. 大口善徳

    ○大口委員 また、夫の同意はいつの時点で行われる必要があるのか、同意の撤回がなされた場合はどうなるのか。
  37. 秋野公造

    秋野参議院議員 第十条は、妻が夫の同意を得て生殖補助医療により懐胎した子と定めておりまして、この同意懐胎に至った生殖補助医療実施時に存在している必要があると考えてございます。懐胎に至った生殖補助医療実施前に同意が撤回された場合には、第十条の夫の同意は存在しないと考えてございます。
  38. 大口善徳

    ○大口委員 次に、生殖補助医療出生した子の出自を知る権利についてお伺いしたいと思います。  これは、平成十五年の厚労省厚生科学審議会報告書によれば、出自を知る権利について、生殖補助医療により生まれた子であって十五歳以上の者は、卵子提供者に関する情報のうち、提供者を特定できる情報の開示を請求することができる、こういう、平成十五年の時点でございます。  今、提供者のプライバシーのこととか、実際確保が難しくなるとか、いろいろな議論はあるんですが、やはり子供の出自を知る権利というのは非常に大事なことではないか、こういうふうに思っています。  これについて、この保障について、附則第三条一項三号の規定趣旨とこの権利の保障についてお伺いしたいと思います。
  39. 秋野公造

    秋野参議院議員 発議者一同は、出自を知る権利については重要な論点であると考えておりまして、そのあり方について検討すべきということで一致をしてございます。  その上で、この出自を知る権利については、制度化すべきという御指摘もあれば、ドナー情報が開示されることについて現時点で広い合意が得られている状況ではないとも考えておりますことから、附則第三条一項に基づく検討を行うとしているところでございます。
  40. 大口善徳

    ○大口委員 また、附則第三条一項一号の生殖補助医療及びその提供に関する規制あり方検討に当たって、同性カップル、事実婚の夫婦、独身女性も対象になると考えてよろしいでしょうか。
  41. 秋野公造

    秋野参議院議員 同性カップル、事実婚の夫婦、独身女性を対象とする生殖補助医療あり方についての検討も、排除してございません。
  42. 大口善徳

    ○大口委員 第八条の国が講じる必要な法制上の措置等と、附則第三条一項の法制上の措置関係は、いかなるものでございましょうか。
  43. 古川俊治

    古川参議院議員 附則第三条一項の方はおおむね二年をめどとして検討を加えるというような時限の定めが置かれておりますが、第八条につきましては時限の限定がない恒久的な規定となっております。  ですので、附則三条一項の法制上の措置というのは、第八条の法制上の措置に含まれるというふうに考えられますけれども、三条一項の法制上の措置が講ぜられた後についても、あるいは講ぜられる前についても、第八条というのは生きておりますので、法制上の措置を第八条によってとることも排除はされていないというふうに考えております。
  44. 大口善徳

    ○大口委員 この生殖補助医療の問題については、本当に倫理の問題があります。非常にそういう点ではいろいろ難しい問題はあるんですが、しっかり二年以内に一定検討をして、それぞれ措置をとっていく、こういう発議者の御決意であるわけであります。本当にこれは我々もしっかりこの議論に加わってまいりたい、こう思っています。どうかよろしくお願いします。  きょうはありがとうございました。
  45. 義家弘介

    義家委員長 次に、山花郁夫君。
  46. 山花郁夫

    山花委員 立憲民主党の山花郁夫でございます。よろしくお願いいたします。  さて、今回の法案は、生殖補助医療を使って子供が欲しいと思っている方々に関するものでございますが、ちょっとその周辺的な話から議論させていただきたいと思います。  世の中には、さまざまな事情によって生みの親が育てることができないというお子さんたちもいらっしゃいます。親を必要としている子供を自分の子供として育てるという制度で、特別養子縁組制度というのがあります。折しも河瀬直美監督の映画「朝が来る」が上映中ということで、これは直木賞作家の辻村深月さんが同名の小説を書かれていて、これが原作になっているものですが、この中でも特別養子縁組が一つのテーマとして描かれております。この制度は、思いがけない妊娠であるとか予期せぬ妊娠によって出産した赤ちゃんを、いわゆるわらの上からの養子として親子関係を創設する制度でございます。  子供を授かりたいと思う、願う方々には、生殖補助医療が最後の頼みの綱だと思って必死で努力されている方もいらっしゃると承知はいたしておりますが、中には何としてでも自分の遺伝子的なつながりがある子を持ちたいと思われている方もいらっしゃるんでしょう、そのことは全然否定するものではありませんけれども、他方、子供を持ちたい、子供のいる家庭をつくりたい、築きたいという中には、選択肢としては特別養子縁組というのも一つの選択肢としてあり得ると思います。  ただ、認知度が低くて、この治療をやっていて後から知ったとか、そういうケースもあると聞いておりますが、願わくば、別にそちらに誘導せよと言うつもりは全くありません、その上で、ただ、いろいろ不妊治療とか選択をする際には、こういう制度もありますよということをわかった上でやっていただくということも必要ではないかと思います。  これは厚労省に伺いたいんですけれども、この特別養子縁組制度が普及しない理由として、認知不足であるとか、あるいはあっせん機関が少ないことに起因するという認識なんでしょうか。そうであるとすると、特にこの機会に、広報の必要性だとか、あとは、なかなか児相が忙しくてということもございます、体制強化だとかあっせん機関への支援というのが必要ではないかと思うんですけれども、この点について見解を求めます。
  47. 岸本武史

    岸本政府参考人 お答えいたします。  特別養子縁組制度の普及に向けて、制度の周知や養子縁組民間あっせん機関への支援等も課題の一つと認識しておりまして、今後、更に同制度を普及させていくためには、子供を育てたいと願う家庭の選択肢として一層の普及啓発を図っていくこと、また、養子縁組民間あっせん機関への支援の拡充、児童相談所との連携強化を図ることが重要であると考えております。  こうしたことから、まず、令和二年度におきましては、不妊治療を受けている方への特別養子縁組制度等に関する意識調査や、制度の御案内の仕方に関するパイロット研究を実施することとしております。また、令和三年度以降、不妊治療医療機関などにおける普及啓発の取組の強化、不妊治療医療機関や不妊相談専門センター、婦人相談所、児童相談所、民間団体とのネットワークの構築、子供の出自を知る権利に関する支援等に取り組む養子縁組民間あっせん機関に対する支援の拡充といった取組を行うことを検討しておりまして、概算要求にこうしたことを盛り込んでいるところでございます。  厚生労働省といたしましても、今後とも、こうした取組を通じて、特別養子縁組制度の一層の普及に努めてまいりたいと考えております。
  48. 山花郁夫

    山花委員 しっかりとやっていただきたいと思います。  きょうの議論の文脈だと、どうしても親側の目線になっちゃうんですけれども、あくまでも子の福祉の観点からということについてはつけ加えておきたいと思います。  さて、生殖補助医療のルール等々につきましては、今もう既に議論がありました。そして、二〇〇三年からしばらくとまっちゃっていたよねという議論もありましたが、まだまだこれから議論が必要で、特に二年間集中的にということなんでしょう、それが必要だということは私もそのとおりだと思いますが、ただ、仮に、その議論の結果、このルールというか、この方法はだめだよねということになる可能性もあると思いますが、ただ、この間議論が停滞してしまった一つの理由として、親子関係についてルールをつくってしまうと、何か特定のことについて推奨しているのだとか、あるいはだめなんだというふうに受けとめられてしまうのではないかということがあったのではないかと思います。  私は、行為規範というか行為規制の話と親子関係を定めるルールというのは、これは別に考えるべきではないか、そういう前提で考えるべきではないかと思っておりますけれども、提出者はこの点について、例えば、ある親子関係を定めた、今回の法案もそうですけれども、これを定めたからといって、特定の生殖補助医療について、特に推奨しているとか、絶対これはだめだというものではないということについて確認をさせていただきたいと思います。
  49. 秋野公造

    秋野参議院議員 先生御指摘のとおりでして、本法律案は、生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法特例規定をしておりますけれども、一定生殖補助医療を禁止したり、あるいは積極的に容認したりするものではございません。  この行為規制をどう定めるかということにつきまして、附則第三条において、二年を目途として、検討を行い、その結果に基づいて法制上の措置その他必要な措置が講ぜられるものと考えてございます。
  50. 山花郁夫

    山花委員 仮に行為規範としてだめだという結論が出たとしても、じゃ、だめだからそういう人はいなくなるのかというと、そういうことでもなくて、現に生まれてくるケースもあると思いますし、また、日本ではこれは認められないのだと、かちっと決まったとしても、もしかすると、外国で、認められている国でそのことをやって日本で出産をするというケースもあるかもしれません。  そうすると、その場合、禁じられているから、親子関係は、やや不自然かもしれないけれどもこのルールだよねということではなくて、と思いますし、逆に、親子関係、くどいですけれども、定めたからといって行為規範の話としては別だよねと思いますけれども、別途定めることについて必要だということについて改めて伺いたいのと、今回カバーされていない部分もあるんだと思います。その点についての問題意識について、少しお話しいただければと思います。
  51. 古川俊治

    古川参議院議員 御指摘いただきましたように、現に、これが、やらないという結果になったとしても、既にもう生まれている子が相当数いらっしゃいますし、また、今後も、先生今御指摘いただきましたように、海外に行って第三者提供配偶子による生殖補助医療が行われている実態、これは報道で認識するぐらいなんですが、毎年百例ぐらいあるのではないかというようなことも言われております。そういう状況を鑑みますと、やはり、子の福祉の観点から、親子法制をしっかり定めるということは重要だと考えております。  また、御指摘いただきましたように、今回カバーができていないところもございまして、例えば代理懐胎の場合における親子関係ですとか、あるいは第十条の対象とならない第三者からの精子提供、夫の同意がない場合ですとか、あるいは事実婚の御家庭の精子提供による場合ということ、そうした場合においては、今後、この第三条の附則の中で検討されるということになると考えております。  それで、例えば代理懐胎の場合につきましては、第九条、第十条のその規定特例をつくるということも除外されないというふうに附則三条の三項に定めておるところでございます。
  52. 山花郁夫

    山花委員 ちょっと釈迦に説法かもしれませんが、今後、親子関係を定めるというときに、どうしても行為規範の話と何か混同されるケースがありますので、そこは明確に切り分けてということも、対外的にもメッセージとして発信していただきたいと思います。  考えてみれば、現行の民法であっても、例えば、行為規範でいうと、婚姻年齢に達していないにもかかわらず子供が生まれたであるとか、今、事実婚の話もありましたし、あるいは、近親婚は禁止されているにしてもその間で子供が生まれたとか、要するに、行為規範としては望ましくないケースでも、現に生まれた子をどうするのだということについては規定があるわけです。現行の規定があるからといって、近親婚や不倫やそんなことを推奨しているという話にはならないのと同じように、仮に、代理懐胎のケースで何か親子関係を定めたからといって、逆にそれを推奨しているわけでもないということについては明確にした上で、今後、議論いただきたいという思いがございますので、この点は申し上げておきたいと思います。  さて、先ほど大口委員からも、事実婚であるとか同性カップルの話がございましたが、何カ月か前でしょうか、NHKの「カラフルファミリー」という番組で、戸籍上は女性同士の方のカップルが、LGBTの運動で知り合った男性から精子提供を受けて子供を授かって子育てをしているという様子が取り上げられておりました。これも、同性の婚姻というのは、現時点では、私は認めたいと思っているんですが、認められておりませんが、そういう意味では、行為規範という観点からすると、現在ではだめよということなのかもしれません。  この点についても、確認ですが、附則の第三条第一項第一号に言う検討に含まれるということで、ちょっと先ほども議論がありましたが、その確認と、この場合、親子関係も定めたとしても、このことと同性婚が認められるか否かということとはまた別ですよねということについて確認をさせてください。
  53. 秋野公造

    秋野参議院議員 先生、附則第三条においては、生殖補助医療及びその提供に関する規制あり方を含め、施行後おおむね二年を目途として、検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置等を講ぜられるとしておりまして、女性同士を含めたカップルにおける精子提供による生殖補助医療あり方についての検討も排除されていないということでございます。  御指摘親子関係に関するルールにつきましては、これらの検討の結果を踏まえて対応を検討することになろうかと思います。
  54. 山花郁夫

    山花委員 それでは、次のテーマに行きたいと思います。  今回、この法案審議に当たりまして、きょう答弁席に座られている皆さんもそうですし、恐らく委員の先生方もいろいろな御意見をいただいていると思います。その中の一つで、やはり出自を知る権利のことについて、大変、いろいろな中でも一つの大きなテーマであると思っております。中には、これなしにこんな法律ができちゃうのという御意見も、率直に言って、いただいております。  ただ、出自を知る権利に関しては、実は、生殖補助医療に特有の問題ではないと思います。先ほど申し上げた特別養子縁組のケースでも起こり得ます。さっき紹介した本では、実際に生みのお母さんについてもちゃんと子供に教えていて、広島のお母ちゃんが別にいるんだよということを教えているケースではありましたけれども、そうやって教わっているケースだけではなくて、やはり痛切な思いをされている方というのは、両親の離婚の際であるとか、あるいは大きな病気をきっかけとして初めて自分のことを知るようになったという痛切な体験を持たれている方々がいろいろ声を上げているということなのかなと思います。そして、余りにも突然のことで、自分のアイデンティティーが、喪失感を味わったりというようなことのようでありますが。  なので、これはぜひと思う一方で、医療サイドからすると、何かこの議論が国会で始まるようになってからドナーがどんどんどんどん減っているというようなお話も一方ではあります。精子提供者からすると、何か昔そんなことがあったなと思っていたら、急に、私の親ですねという人があらわれてもということも、それもそれでわからないではありません。ただ、二者択一ではなくて、やはり両立する道というのを考えるべきではないかと思います。  出自を知りたい、そして、知ったということが、例えば、要するに、急に来られてもと思う人は、何か相続の対象がどうなっちゃうんだろうとか、扶養義務がどうなるんだろうという懸念があるんだと思いますけれども、そういうところをやはり切り離して制度設計することによって、出自を知る権利等々についても、いい形で制度設計ができるのではないかと思います。  先ほど、これなしでこの法律通っちゃうのという方々がいらっしゃいますけれども、ただ、この間長らくにわたって、それこそ十数年にわたって本当にとまっちゃっていたのが、今回は、法律に入っていませんけれども、今後しっかりとこの法律を契機に議論が進んで、二年後にぱしっと結論が出るかどうかわかりませんけれども、それを目指して議論が進んでいくのだ、その保障に向けた第一歩だ、こういう理解で、提出者の方、よろしいでしょうか、確認をさせていただきたいと思います。
  55. 石橋通宏

    ○石橋参議院議員 重要な御指摘ありがとうございます。  先ほど秋野発議者からもこの点については明確に答弁をさせていただいておりますけれども、御指摘の子供の出自を知る権利について、これは本当に長年にわたりまして法制度上の措置を講ずべしという要請が、私ども立法府に対しても、もちろん政府に対しても行われてきたにもかかわらず、これだけ長期にわたりましていまだにできてこなかったということだと思っておりまして、私ども発議者の中でも、これを保障する方向で、必ず、議論をして結論を得て、法制度上の措置を講じていくんだということについては、もう一致をいたしております。  ただ、委員もまさに御指摘のとおり、改めてこの議論をさせていただいたときに、さまざまな課題が、おっしゃったとおりで、この問題に限らずいろいろなところにもまた波及する問題でありまして、なかなか、例えば、ドナー情報の開示のあり方ですとか、そういったことについても、まだ法律規定する一致した合意が得られている状況にないということも、残念ながら我々も改めて認識をさせていただきました。それがやはり、ここまで時間がかかっていまだに法制化に至らなかった一つの大きな要因にもなってきたんだろうというふうに思っております。  ですので、今回の法律案におきましては、この出自を知る権利、明記はいたしておりませんが、附則第三条第一項の精子又は卵子提供者に関する情報の開示に関する制度あり方についての、二年をめどに検討して次なる法制上の措置を講じていくことということに、このまさに子供の出自を知る権利をどう保障していくのかということについてもしっかりと検討し、結論を得て、法制度上の措置を講じていくんだということで規定をさせていただいたというのが発議者の共通の認識でございます。  一点加えさせていただければ、先ほども参議院附帯決議に対する対応の今後のあり方もございましたけれども、私どももこれは速やかに検討に着手をしてまいりたいと思います。二年で結論を得ていきたいと思いますので、今後速やかに超党派の議員連盟なども立ち上げさせていただいて、この検討に着手をさせていただいて、まさに私どもが、皆さんの御参加、御参画もいただきながら、みんなでその責任を果たしていく、そういう決意で臨んでまいりたいというふうに思います。ありがとうございます。
  56. 山花郁夫

    山花委員 この出自を知る権利に関してですけれども、これは、一つは、特別養子縁組のケースでございますが、ある程度年がいってから、実はそうだったんだよということを当事者の方が聞きました。聞いたんだけれども、それでということで、実の親は誰なんだろうということで、記録も残っていたらしいんですけれども、なんだけれども、訪ねて行ったときは亡くなっていて、かつ、母の方はわかるんだけれども、もうお母さんが亡くなっちゃっているので、その相手方が誰だったのかももう全然わからないというようなこともあったと聞いております。  また、これは二十九歳のときにDIで生まれたことを告知された当事者の方が、医療機関に問合せをしたそうです。もう既に三十年近くたっているのでカルテもありません、施術を受けたお母さんならまだしも、生まれた子供にはそもそもカルテ開示請求はありませんよということを言われたということなんです。  先ほどから発議者の方はいろいろこうあるべきだとか話をされていますけれども、ちょっとこれは役所に確認したいんですが、出自に関する権利保障のためには、その情報管理など、先ほども議論があったところですが、体制整備が必要だと思います。そして、この法律がまだできているかどうかにかかわらず、既に実施されているものについては、実態の把握であるとか、また、現在管理するものがあるとすると、何か病院が閉院してしまったのでなくなっちゃいましたなんてことがあってはいけないと思いますので、その対策を講じる必要があるのではないかと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
  57. 大坪寛子

    大坪政府参考人 お答え申し上げます。  現在、診療における診療録等は医療法制の中で保存年限が定まっているところでございますが、御指摘いただきました実態といたしましては、今、日本産婦人科学会におきまして、提供精子を用いた人工授精に関する見解という会告が出ております。その中で実施医師は精子提供者の記録を保存するものという定めがございまして、関係医療機関におきましては、この会告を踏まえた対応をされているというふうに承知をしております。  ただ、この目的といたしましては、出自を知る権利というよりは精子提供回数というものを制限するという意味合いが強うございますが、現状においてはこのような対応をしているというところでございます。
  58. 山花郁夫

    山花委員 時間が参りました。  今後しっかりといい形で議論が進みますことを、また政府の方もぜひしっかりとした対応をしていただきますことをお願いいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  59. 義家弘介

    義家委員長 次に、中島克仁君。
  60. 中島克仁

    中島委員 立憲民主党の中島克仁です。時間をいただきましたので、質問をいたします。  今回の法案審議に当たっては、本当にさまざまな立場、さまざまな御意見があります。私も、自身、医師として患者さん、またその御家族、また福祉にもかかわる者として利用者さん、またその御家族、それぞれの声に真摯に耳を傾け、日ごろから努力しておりますし、本法案についてもそういった姿勢で向き合ってきたつもりであります。本法案においては、改めてやはり、本来であるならば生命倫理にかかわるさまざまな立場での疑念に議論を尽くすことが求められると私は考えております。  本法案基本理念、第三条四項につきまして、認定NPO法人日本障害者協議会の藤井代表名で緊急要望が出されております。同協議会以外にも、同様の趣旨内容の要望書が多数の団体から示されてもおります。基本理念、第三条四項には「生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとする。」とあります。「心身ともに健やかに生まれ、」という表現について、優生思想、優生政策につながるのではないか、同じ表現を日常生活上で用いるのとは全く意味を異にするものであり、立法理念としてうたわれたのと同時に、それは優生政策に入ったも同然と厳しく指摘もしております。  このような指摘発議者としてどのように答えるのか、丁寧な御答弁をいただきたいと思います。
  61. 石橋通宏

    ○石橋参議院議員 御質問ありがとうございます。  私どものところにも、今、先ほどJDの藤井代表の言葉も引用していただきましたが、さまざま、障害者団体の皆様から御懸念、御心配の声をいただいております。この場で御質問いただきましたので、改めて丁寧にお答えをさせていただければと思います。  まず、本法律案につきましては、立法趣旨の大きな柱の一つに生殖補助医療によって生まれ来る子供の福祉そして権利の尊重というものを位置づけておりまして、法案第三条第四項は、そのことを基本理念の中に明記をするという目的をもって規定をさせていただいたものでございます。  その趣旨は、障害者の権利に関する条約第十条そして第十七条にも留意しながら、生殖補助医療によって生まれる全ての子供たちが、障害の有無にかかわらず、心身ともに健やかなる環境、これはつまり安全で良好な環境で生まれて、そして育つ権利を有するということでありまして、そしてそのためには、お子さんを出産される女性についても、妊娠から出産に至るまで、健やかなる環境、つまりは安全で良好な環境が得られなければならず、その環境を整えるために必要な配慮がなされなければならないということを意味したものでございます。  このような立法趣旨を明らかにするために、本法律案の「心身ともに健やかに生まれ、」の文言につきましては、法的な安定性と整合性の観点から、次世代育成支援対策推進法や母子保健法等においても同様の趣旨で用いられております、健やかに生まれという法律用語を使用したところでございまして、これらの立法例と同様に、障害を有するお子さんの出生を否定的に捉えるといった優生思想につながるものでは全くございません。全てのお子さんたちが安全かつ良好なる環境において生まれることを意図して用いさせていただいたものでございます。  また、心身ともに健やかに育つという趣旨の文言も、児童福祉法、平成二十八年改正後でございますが、それと、いわゆる成育基本法などにおきましても同様に用いられているところでございまして、これらの健やかにという文言についても、決して、障害を有するお子さんたちを排除をしたり、優生思想を想起させるような趣旨ではございません。  ここで言う「必要な配慮」の具体的内容といたしましては、例えば妊婦さんたちに対する健診等が考えられるところでございますが、生殖補助医療は通常の妊娠、出産の過程とまた異なることもございまして、特に念入りな健診等も必要になるということもあり得ることを考慮して規定させていただいたものでございます。  なお、児童福祉法におきましては、昭和二十二年の制定当時から用いられておりました「児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成される」という文言が平成二十八年改正において用いられなくなっております。しかし、この改正は、児童が権利の主体であることをより明確化するために、全て児童は、心身の健やかなる成長及び発達が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する、これは第一条でございますが、と規定するとともに、あわせて、生まれることについては、全ての国民の努力義務として、児童が良好な環境において生まれ、これは第二条第一項でございます、そこに規定したものと承知をしておりまして、制定当時からの文言が優生思想につながりかねないといったような理由で改正されたものではないと承知をいたしております。
  62. 中島克仁

    中島委員 今、石橋発議者から答弁がございましたが、改めて、与党発議者も今の石橋発議者説明で間違いないのか、確認をさせていただきたいと思います。
  63. 古川俊治

    古川参議院議員 今、石橋発議者が答えたとおりでございます。
  64. 中島克仁

    中島委員 今、与野党ともにということで確認をさせていただきましたが、その上で、過去、優生思想に基づく非人道的な歴史があったことについて、そのことを顧み、絶対にあってはならないことである旨の表明が発議者からあってこそ懸念が払拭されるものと考えます。  我が国において反省すべき優生政策の歴史について、発議者はどのような認識をされておるのか、与党発議者にお尋ねをしたいと思います。
  65. 秋野公造

    秋野参議院議員 優生思想につきましては、平成八年に当時の優生保護法が優生保護法の一部を改正する法律により改正され、法律の題名が母体保護法に改められたこと、優生保護法の目的規定中、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、」が、「不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、」に定められたこと、遺伝性疾患等の防止のための手術に関する規定が削除されたこと等により、明確に否定されたものと理解をしてございます。  過去の政府答弁におきましても、一人一人の命の重さは平等であり、全ての人に生きる価値があると考えているという答弁がなされているところでありまして、発議者一同、全く同意であります。
  66. 中島克仁

    中島委員 改めて、過去の反省に基づいて、二度と過ちを繰り返さないという強い意思と、また丁寧な説明が欠かせないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  次の問いは障害者権利条約十七条についてだったんですが、一の問いで触れておられましたので、最後の問いに飛ばさせていただきたいと思います。  この三条四項の「生殖補助医療により生まれる子」とは、すなわち生まれていない子とも解釈でき、胎児は法律的には母体の一部、憲法が胎児を権利の主体として保障していると見るわけにはまいらないとする昭和四十五年四月二日の内閣法制局の見解と矛盾するとも言えます。  今回、生まれる子に必要な配慮の部分について法的な権利を定めることは法制上の大転換にならないのか、発議者にお尋ねをしたいと思います。
  67. 秋野公造

    秋野参議院議員 出生前の子については権利の享有主体ではないということで発議者一同一致しておりまして、本法律案では、権利とは規定をせずに、生まれる子については必要な配慮がなされると規定をしたものでありまして、御指摘のような大転換といったものではないと考えてございます。
  68. 中島克仁

    中島委員 前の御質問、さきの質問でも、多々問題点、また懸念の部分が御指摘されておることと思います。今の、生まれる子についての定義、また出自を知る権利を保障するための制度あり方、さまざまな検討事項について、新たな立法も含めて、二年を待たずに改正していくことも必要だということを申し伝えて、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  69. 義家弘介

    義家委員長 次に、藤野保史君。
  70. 藤野保史

    藤野委員 日本共産党の藤野保史です。  きょうは、生殖補助医療で生まれた当事者である石塚幸子さん、そして研究者である才村眞理先生にもお越しいただいております。御多忙のところ、本当にありがとうございます。  まず、石塚参考人にお聞きしたいんですが、この問題について、あるいは法案についてどのようにお感じなのか、少しまとまってお話しいただければと思います。
  71. 石塚幸子

    石塚参考人 石塚幸子と申します。  本日は、意見を述べる場を与えていただき、ありがとうございます。  私は、匿名の第三者精子提供、AIDという技術で生まれました。同じく精子提供で生まれた人たちと当事者のグループというものをつくっています。  私が生まれたAIDという技術は、一九四八年に慶応義塾大学で始まり、既に七十年以上の歴史があるものです。提供者は匿名であり、その事実は子供に秘密にすることがよいとされて、ずっと行われ続けてきました。そのため、長い間、問題は起こっていないと思われてきていましたが、最近になって、私のように、生まれた当事者が声を上げ始め、これまで秘密と匿名のもとに行うことがよいとされてきたこうした技術が、実は、そのことによって親子関係を崩し、当事者に大きな喪失や痛みを与えているということが報告され始めています。  本日は、私の体験をもとにしながら、この技術で生まれた当事者が、そしてその家族がどのような問題を抱えているのかということを知ってほしいと思っています。  まず、私が事実を知ったのは二十三歳のときで、父の遺伝性の病気をきっかけに、自分への遺伝について悩み、その結果、母から告知を受けました。  現在私たちのグループにいる当事者のほとんどは、親の病気や離婚などをきっかけに事実を知るケースがほとんどで、子供にとっては、まず家庭内に何か問題が起こった上の告知になるため、二重にショックを与えていると言えます。そうした告知であるからこそ、事実を知る時期が非常に遅く、三十代や四十代になってから知るということも少なくありません。  私が母から告知を受けたときに聞いたことは、父親と血がつながっていないということ、昔、慶応大学でそういうことをやっていたということ、提供者についてはわからないということだけでした。  自分の出自を知り、まずは父の病気が遺伝していないことに安心したものの、その後すぐに、なぜこんなにも大切なことを今まで私に言ってくれなかったという思いが湧き上がってきました。信頼していたからこそ、言ってくれなかったということが非常に悲しく、裏切られたというようにも感じてしまいました。そして、何よりも、自分の二十三年間の人生が母のついたうその上に成り立っていたものであるかのように思えてしまい、何が本当で何がうそなのかがわからなくなり、自分が一体何者なのかということがわからなくなってしまいました。  しかし、母親にとってもこれは想定外の告知でした。技術を実施するときに、私の両親は、子供には言わない方がいいと医師に言われ、それでうまくいくと信じてやってきたからです。  しかし、父の病気もあって言わざるを得なくなった結果の告知であり、結果、親と子の関係は崩れ、その後、母は、この問題に触れたくないとか、公にしたくないというような態度をとり、そうしたことに私は傷つき、親がそんなにも後ろめたく隠したいと思っているような技術で自分が生まれてしまったのかと感じ、それは、親にすら自分のありのままの存在を認められていないと感じてしまうことで、とても悲しいことでした。自分の感情をコントロールできず、体にも不調があらわれ、涙がとまらなかったり、眠れなかったりするような状態になり、私は、結局、告知を受けてから二カ月後には家を出てしまっています。今も、親との関係は完全に修復できたとは言えません。  私が当事者として問題だと感じていることを主に三つにまとめてお話ししたいと思います。  まずは、告知の時期が遅いということです。  私の例がそうであったように、告知を受ける時期が遅くなればなるほど、親に隠されていたと感じる期間が長くなります。そのショックは大きくなります。こんなにも長い間、親にだまされていた、隠されていたと感じ、親に対する信頼が大きく揺らぎます。また、AIDという技術そのものを隠そうとしたり、周囲に打ち明けてはいけないこととして扱うことで、子供は、自分の存在自体が親にとって後ろめたく恥ずべきことであるかのように感じてしまいます。  親子関係において、子供が親に自分の存在を認めてもらえていないと感じてしまうことは、子供が自分自身を肯定して生きていくことを非常に難しくさせてしまっていると思います。  二つ目は、アイデンティティーが崩れるという体験のつらさやその衝撃です。  私が告知を受けた後、自分の人生は親のついたうその上に成り立っていたと感じてしまったという感覚は、多くの当事者に共通しています。人はさまざまな経験や体験を積み重ねて自分を形成していきます。その土台の部分には自分の出自というものがあります。それが、それまで自分が信じていたものと突然違うと言われてしまうと、その土台が崩れ、その上に積み重ねてきたもの全てが崩れてしまいます。何が本当で何がうそなのかということ、自分が一体何者なのかということもわからず、大きな不安にさらされます。事実を知る時期が遅ければ遅いほど、それまで自分が行ってきた選択というものが多く、それが崩れることは、そうした選択に自信が持てなくなることにもなります。そして、それはとてもつらいことです。  私たちのグループの中には、結婚や出産など、人生の大きな決断をした後に事実を知ったという方も少なくありません。知らなかったとはいえ、自分が新たな世代を生み出してしまったこと、四分の一ルーツがわからない子供をつくってしまったことで、子供やパートナーを自分の問題に巻き込んでしまったことに、皆さん、非常に悩みを持っています。  三つ目が、提供者情報がわからないということです。  一度崩れてしまった自分を再構築するには、さまざまな情報が必要です。AIDという技術自体について、そこにかかわった人の思いや提供者情報など、人により知りたいことはさまざまに違っていると思います。しかし、自分が知りたい情報を、うそではない真実の情報を一つずつ確認し、自分の人生に改めて組み込んでいくという作業が必要です。そこには、情報だけではなく、その作業を支えてくれる人の存在も必要です。しかし、現在、私たちには提供者を知るすべがありません。崩れてしまったアイデンティティーを再構築したいと思っても、私たちの中には一生埋めることのできない空白があるのです。  提供者情報がわからないということは、自分の遺伝情報がわからず、医療受診の際にも不安を抱いたり、同じ提供者精子から生まれた別の異母兄弟だったり精子提供者自身の子供だったりと近親婚の可能性があるという問題も実際に生じています。  提供者情報を知るということは、自分を確立し、自分を肯定して生きていくために絶対に必要なことです。過去があることで今の自分があるということを確認し、それによってこれから先の未来について考え、生きていくことができるのだと思っています。  私たちが提供者情報にアクセスするためには、まずは、自分がそうした技術で生まれた子だということを親に告知される必要があります。そして、親から早期に告知される、しかも、それが積極的な告知であることで、少なくとも親子の信頼関係は保つことができますし、それは子供にとって、とても重要なことだと思います。  親からの告知と、知りたいと思ったときに知りたい人が情報にアクセスできる環境というものを、この技術を今後も続けていくのであれば絶対に必要だと思っていますし、それが整えられないのであれば、私はこの技術はやめるべきだと思っています。  今回の法案では、出自を知る権利は、その後の検討課題とされるにとどまっています。しかし、その後の検討期間とされる二年間の間にも、私たちと同様の子供は生まれ、権利が保障されぬまま、情報も、保管も管理もされず、将来的に今の私たちと同じような悩みを抱えてしまうことになりかねないと思っています。一刻も早い出自を知る権利の保障と、そのための提供者情報の保存、管理をぜひお願いしたいと願っています。
  72. 藤野保史

    藤野委員 本当にありがとうございます。  重ねて石塚参考人にお聞きしますが、情報というお話がありましたけれども、提供者の方についてのどこまでの情報が保障されるべきだとお考えでしょうか。
  73. 石塚幸子

    石塚参考人 私が提供者を知りたい最も大きな理由としては、自分が、母親と、精子という物から生まれていたという感覚があって、そこに非常に違和感を持っているからです。物ではなくて、きちんと人が介在していたということを実感として感じたいと。だからこそ、提供者については、身長や体重といった断片的な情報ではなく、個人が特定できるまでの情報を、そして、一度でもいいので会いたい、その人が人として本当に実在しているんだということを確認させてほしいと思っています。  当事者の中には、提供者情報について特に興味がないという人も中にはいます。しかし、海外の例を見ると、初めは知りたくなかったとしても、その人が結婚するときとか、自身が子供を生むときに、そのタイミングで知りたくなるというような例も報告されています。知りたいと思ったときに知ることができる環境を整えるのが重要だと思っています。  また、提供者を知りたいか知りたくないかというのは、それまで育った家庭の親子関係のよしあしには関係しないということも、海外の例からは報告されています。よく、愛情深く育てれば子供に提供者のことを教える必要はないとも言われるんですけれども、愛情のあるかないかと、提供者情報を知りたくなるかならないかということは、全く別物だというふうに考えています。
  74. 藤野保史

    藤野委員 ありがとうございます。  そして、提供をする側からいいますと、先ほど減少する懸念というのも議論されておりましたけれども、これも石塚参考人にお聞きしたいんですが、出自を知る権利を認めた場合、提供者が減少する懸念がある。これについてはどのようにお考えでしょうか。
  75. 石塚幸子

    石塚参考人 既に海外で出自を知る権利を認めた国の様子を見ると、確かに、いっときは減るんですけれども、精子提供者となる男性の層が、その後、変わっていくという状況が見られます。それまでは若い大学生などが提供者となっていましたが、法律ができた後には、年齢層が上がって、自身にもう既に子供がいるような男性の層に変わってくるというふうに言われています。  出自を知る権利議論するときに、それが認められると、あたかもこれまで提供してきた人の情報が勝手に開示されてしまうというような誤解があるように私は感じています。出自を知る権利は、その法律ができた後に生まれた子供にしか認められるものではないということを、私たちはきちんと理解しています。  提供者は、提供者になるかならないかということを選ぶことができます。将来的に自分の情報が子供に開示される可能性があるということを理解した上で、提供者になるのかならないのかということを選べます。それをもし受け入れられないのであれば、提供者にならなければよいのだというふうに私は思っています。  そして、その結果、仮に提供者がいなくなってしまうのであれば、私は、この技術は行われるべきではないというふうに思っています。
  76. 藤野保史

    藤野委員 ありがとうございます。  才村参考人にもお聞きしたいと思います。  才村参考人が翻訳をされた「大好きなあなただから、真実を話しておきたくて」という、外国のオリビア・モンツチさんの本なんですが、これは、ゼロ歳から七歳の告知、八歳から十一歳、そして十二歳から十六歳、そして十七歳以上と、生殖補助医療によって生まれた子供を持つ親向けのガイドで、大変参考になったんですけれども、才村参考人は、親から子の告知についてはどのようにお考えでしょうか。
  77. 才村眞理

    ○才村参考人 才村です。  今の御質問に対して、私は、長年、養子支援もしていました。やはり、告知の仕方というのは、生殖補助医療で生まれた子供たちも、同じように小さいころから、しかも、できたら二、三歳のころから、二、三歳のころよりも、もっと小さい、ゼロ歳、一歳からやった方がいいんじゃないか。  ゼロ歳、一歳の子供は、言葉は理解できませんよね。でも、親が告知をするのに、やはり覚悟も要るし、どうやっていいかわからないと最初思いますよね。だから、そういう意味では、ゼロ、一歳の赤ちゃんで、相手がわからないときにやると、赤ちゃんは全然負担がないわけです。ショックも受けません。でも、告知する側は、告知する言葉の選び方とか、どうやってこの話題にしようかなという練習ができるということですよね。だから、そういう意味では、せめて二、三歳のころから、幼児のころにはスタートする。  告知は一回きりじゃないんですね。何回も、子育ての長い間に、要所要所に入れていく。ある人は、お誕生日ごとに話をする、毎年一回は話をするという方もおられたり、それから、そういう仰々しい日じゃなくて、日常生活の中で、お風呂に入りながら、あなたはね、子供が私たちは生まれなくてね、ある一人の女の人が助けてくれたのよとか、あるいは、親切なというふうな言い方をする人もいるんですけれども、親切かどうかはちょっとわからないので、いろいろな家族の物語というのを、そこの家庭、家庭でつくっていかれたらいいと思うんですけれども。  できれば、絵本とかを使いながら、日本でも、数は少ないんですけれども、精子提供それから卵子提供を告知する絵本ができています。それを、例えばおもちゃ箱に転がしておいて、それで、ふだんからそれを見ながら、そのことが世の中には普通のことなんだ、特殊なことではなくて、この家庭でそういうことをしたことを親御さんが誇りに思っていて、プライドを持っていて、そして、そのことが後ろめたいことではなく、そして偏見を持たれているような、びくびくしているわけじゃなくて、オープンにできるような、そういう姿勢がすごく大事です。  そうすると、子供は、あ、私はいいことで生まれたんだと。何か、悪いことをして、隠すようなことで生まれたというと、子供自身は自分の生命を後ろめたいものと見てしまいますよね。そうではなくて、あ、このことって普通なんだと。  だから、ある程度大きくなって告知された人は、先ほど石塚さんの話にもありましたように、すごくショックが大きいですし、特に、例えば思春期以降ですね、十歳以降、成人して、今皆さん、告知されてすごいショックで、大きなアイデンティティーのクライシスになっておられますけれども、小さいころから家庭の中に、そういった助けてもらえる人がいたんだよということをずっとこう入れながら大きくなっていきながら、この家庭では普通のこととして認識できるということが、私は告知にとって大事かなと思っております。
  78. 藤野保史

    藤野委員 ありがとうございます。  石塚参考人にも、当事者の立場から、親から子への告知というのはどうあるべきだというふうにお考えでしょうか。
  79. 石塚幸子

    石塚参考人 私も才村先生と同様に、子供が幼いときから、その時々にわかる言葉で、何度も告知してほしいというふうに思っています。  実際、日本でも、特別養子縁組の告知の方法などを参考に、子供に告知をするという取組が、少しずつですが、行われ始めています。海外では、幼いころに告知を受けた人と大人になってから告知を受けた場合で、親や技術そのものに対する意識について調査した報告というのがあります。子供のころに告知をされた当事者は、親にも、そして技術自体にも、肯定的な思いを持つ傾向があります。逆に、大人になってから告知をされた当事者というのは、親に対しても技術に対しても否定的な感情を抱くという報告がされています。  AIDは、これまで一生隠し通せるものとずっと思われてきていました。しかし近年、簡単にDNA検査などができるようにもなっていて、隠し通すことというのはもう難しくなっているというふうに思っています。  事実を知った当事者の多くは、知る前から家庭の中に違和感だったり緊張感を感じることがあったというふうにも言っています。親子の間に何らかの秘密がある場合、それは日常の親子関係にも影響を与えるものだと思います。子供は親が思うよりもずっと敏感です。  多くの親は、この技術を使うことで子供を持って幸せな家庭を築きたいと思って、その結果、技術を選択しているんだと思います。そうであるならば、秘密を持ってうそをつき続けるというのではなく、うそのない真実の親子関係を築くことの方にこそ、目を向けてほしいというふうに思っています。
  80. 藤野保史

    藤野委員 石塚参考人、最後にお伺いしたいのは、一九四八年に慶応病院でこれが始まった、七十年以上の歴史があるという御発言がありました。  七十年以上もの間、こうした技術が問題ないという形で行われてきたのは、なぜだというふうにお考えでしょうか。
  81. 石塚幸子

    石塚参考人 これまでは、親や医療者が子供のためにというふうに考えてきたことと、実際に生まれた人が思っていることの間に大きなずれというものがあるように思います。  そして、これまでAIDを実施した後の追跡調査のようなものもほとんど行われてこなかったということも問題だと思っています。不妊という状態が問題だとした場合、子供が生まれればその問題は解決したと思われてきていたと思います。だからこそ、子供が生まれた後のことについてこれまでは余り意識が向けられてこなかったのかもしれません。  現在、私たちが抱えている問題というのは、今後、卵子提供など技術が拡大していけば、そうした技術によって生まれた子供にも同様に生じる問題だと思っています。技術の範囲を広げる前に、今既にAIDで起こっている問題についてまずは向き合って、その解決の道を考えてほしいというふうに思っています。そうでなければ、今の私たちのように悩みを抱える子供をふやしてしまうだけだというふうに思ってしまいます。
  82. 藤野保史

    藤野委員 ありがとうございます。  本当に貴重な御意見をいただきました。しっかり受けとめたいと思います。  そして、その上で提案者の皆様にもお伺いしたいんですが、先ほど優生思想の問題についての御答弁があったんですけれども、そこで挙げられた次世代育成支援対策推進法や母子保健法、あるいは児童福祉法、ありましたけれども、やはりそうした法律は生命倫理に直接かかわる法律ではなくて、生まれた子や母の支援についての法律だと思うんですね。  今回はまさに、もう生命倫理そのものにかかわる問題で、こういう文言、いわゆる心身ともに健やかに生まれという文言が使われる。だから、ほかの法律を出して、こっちにもあるからということではなくて、なぜこの法律に、生命倫理に深くかかわる法律にこの文言が使われたのかというのが問題なわけですから、そこは本当に曖昧にできない問題だというふうに思います。  その点でちょっとお聞きしたいのは、配付資料の一にもあるんですけれども、先ほども出ました障害者権利条約について、十七条では「全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する。」という文言があります。  提案者にお聞きしたいのは、この障害者条約十七条と今回の法案の三条四項、この整合性というのは検討されたんでしょうか。
  83. 石橋通宏

    ○石橋参議院議員 御質問ありがとうございます。  重ねて、御指摘の点を含めまして、先ほど来御答弁をさせていただいておりますが、私ども、この検討過程に当たりましても、障害者権利条約、御指摘の点、十条、先ほども申し上げました十七条も含めて、それを念頭に整理をさせていただいて、そして、先ほど御答弁させていただいたとおりでございまして、この文言について、健やかなる環境、これについては、安全で良好なということを繰り返し述べさせていただいたところでございます。  その関係において、この障害者権利条約十七条とも整合するという整理を発議者の間でしっかり確認をさせていただいて、御説明申し上げているところでございます。
  84. 藤野保史

    藤野委員 本当に、生命倫理にかかわる問題というのは非常に重いわけですので、これは引き続き、しっかりと追求していきたいと思います。  その上で、衆議院の厚労調査室に来ていただいております。お忙しいところ、ありがとうございます。  ことしの六月から衆参の厚労委員会で旧優生保護法一時金支給法二十一条に基づく調査が始まっていると思いますが、どのような調査であるか、そして、こうした調査の前例が過去あるか、これをお答えいただけますか。
  85. 吉川美由紀

    ○吉川専門員 お答えいたします。  旧優生保護法一時金支給法第二十一条に基づく調査につきましては、本年六月十七日、衆議院及び参議院厚生労働委員長より、衆議院厚生労働調査室及び参議院厚生労働委員会調査室に対して調査命令が、また、国立国会図書館に対して調査への協力要請がございました。  六月十七日に衆参の厚生労働委員会理事会で合意された文書には、調査項目として、旧優生保護法の立法過程、優生手術の実施状況等、その他として、諸外国における施策等が示されております。  また、調査期間はおおむね三年とされ、報告書の原案は衆参の調査室が分担し、国会図書館の協力を得て作成することとされております。  これを受け、現在、衆議院と参議院、また国会図書館とで連携協力しながら調査を実施しているところであります。  なお、今回のように、衆参で協力し、三年にわたって調査を行うような例はなかったものと思われます。
  86. 藤野保史

    藤野委員 ありがとうございます。  まさに、同じく生命倫理に深くかかわる問題、旧優生保護法について、立法府も含めて、どういう問題があったのか、どういう教訓があったのかと。それを立法府として、まさに今、三年かけて調査しようとしている。  配付資料の二を見ていただきますと、この下の方には、この結果については、「衆参の厚生労働委員長からそれぞれ衆参議長に報告することが考えられる。」とまで書かれておりまして、極めて重い調査なんですね。  提案者にお聞きしたいんですが、まさに同じように倫理がかかわった問題を、立法府が、率直に言って誤りを犯してしまった、痛苦の反省だと思うんです。それについての調査が今まさに始まっている。こういう状態で、本法案もまさに同じように生命倫理に深くかかわる法案であります。  この両者の関係についてといいますか、率直に言いますと、もう時間もないのであれですが、私が調べた範囲では、旧優生保護法のときも参議院先議で、当時は、本会議を含めて三回ぐらいしか議論していないんですね。委員会一回だけで、参議院も三十分ぐらいです、実質。今回は三十分じゃないです、こうやって各党やっていますから違うんですけれども、しかし、非常に共通点があるわけですね。  今まさに前回の旧優生保護法についての反省について議論されている、かつてない調査が行われているというもとで、今回も極めて短時間の審議でこういうことをやっていく、このことについての提案者の御認識をお伺いしたいと思います。
  87. 古川俊治

    古川参議院議員 ありがとうございます。  きょうの御質問にもさまざまありましたけれども、この問題というのは、実は二〇〇三年からずっと放置をされていたという認識でございます。ですので、一刻も早く、現在の何も定まっていない状況を改善をしたいということが一つございます。  また、今御指摘の問題につきましては、附則三条におきまして、優生思想の濫用を防止するための方策ということの検討も、排除はされていないというふうに考えております。
  88. 藤野保史

    藤野委員 もう終わりますけれども、こういう生命倫理にかかわる法案というのは拙速にやっちゃだめなんですよ。それが過去の経験であり、教訓であり、それを今、国会挙げて、衆参挙げて検証しているさなかに、今回もまたこういった拙速な形で法案を通そうとする。これは到底許されない、立法府として許されない、このことを述べて、質問を終わります。
  89. 義家弘介

    義家委員長 次に、串田誠一君。
  90. 串田誠一

    ○串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。  この法案の中にも、出自を知る権利についての検討を進めるということもございますので、その重要性について、きょうは参考人からお聞きをしたいと思っております。  才村先生には遠いところから来ていただきました。ありがとうございました。これまでの先生の研究内容などを御紹介いただければと思います。
  91. 才村眞理

    ○才村参考人 お話しさせていただく機会をいただき、ありがとうございます。  私は、長年、児童相談所の児童福祉司で、児童虐待とか里親委託の問題だとか、ありとあらゆる子供の問題の対応の仕事をしておりまして、その後、大学教員として児童福祉を教え、そして、社会的養護、里親さん委託だとか施設の子供さんの生い立ちの整理ということで、ライフストーリーワークという手法で生い立ちの整理をする研究活動をしております。  そして、平成十三年、先ほどから出ています厚生科学審議会の委員として、二年間、私も出席して審議しまして、平成十五年の報告書作成にもかかわりました。  その後、そのときからなんですけれども、AIDで生まれた人たちが、今、石塚さんのように、ずっと自身の生まれについて秘密にされ、そして、成人後に知った後に大きなショックを受けられて、生きづらさを抱えておられるということを知り、この問題は大きな問題だなということを認識いたしました。  その方々のアイデンティティーが、結局、それがわかったときに一夜にして崩れて、生きていく意味が見出せないほどつらい日々を過ごしておられるのを見て、何か少しでもサポートできる方法はないだろうかということで、先ほど申しましたライフストーリーワークという援助方法を活用することを考えて、そして実践し、この援助活動を世の中に広めたいということで、今、AIDで生まれた子供たちと一緒に啓発活動も行っております。  以上です。
  92. 串田誠一

    ○串田委員 ずっと出自に関する子供への影響というものを研究されていたということがよくわかりました。  平成十三年から十五年まで厚生科学審議会補助医療部会のメンバーでいらっしゃったんですけれども、出自に関する議論、どんなことがそこで出てきたんでしょうか。
  93. 才村眞理

    ○才村参考人 ちょっと見にくいんですけれども、資料を、こういうのを用意しています。  子供の出自を知る権利必要性というところではかなり議論が白熱しました。最初は、産婦人科のお医者さんとか、提供者がやはり減るんじゃないか、せっかく医療がこんなに進んできて、廃れてしまうとか、ある日突然、提供者の家に子供が戸口に立って、どうするんだみたいな不安。先ほども出ていました養育費だとかいろいろなこととかもありますよね。  そんな反対意見が最初は目立っていたんですけれども、いろいろ論議をかなり時間をとってする中で、生まれた子供たちがいかに苦しみ、悩んでいるか。秘密にされたことですごく怒っておられますよね。そして、自身の生まれについて正直に親に話してもらいたかった、提供者を知りたくても知ることができない、生まれた子供の幸せをこの医療は責任を持って果たすべきではないのかなどの意見が少し優勢となりました。  隠そうと思っても、先ほども出ましたけれども、昨今、DNA鑑定が子供のお小遣い程度、そのとき一万円とかいう話が出たんですけれども、かなり簡単にできる時代になっており、事故とかでもDNA鑑定ですぐ親子でないというのがばれてしまいますよね。だから、秘密にするのにも限界があるんではないかというような意見も出たりして、最終的に出自を知る権利を認めるという結論に達したんですね。  ここの資料にもありますように、提供者を知ることはアイデンティティーの確立などのために重要なものだ、子供の福祉の観点から考えた場合、このような重要な権利提供者意思によって左右され、提供者を特定することができる子とできない子が生まれることが適当でないとの意見が半数以上を占めまして、この出自を知る権利は、全面的に開示ということで結論が出たわけです。  二年間、その前の委員会も含めますともう五年ほどずっと論議をしてきた、論議をし尽くした中での結論が出たのに、それが、今回、ここで取り上げていただけるのはまことに喜ばしいとは思いますが、そのときの論議をやはり引き継いでほしいなというふうに思います。
  94. 串田誠一

    ○串田委員 その点に関しても、法案に関しては検討するということでございますので、きょうの参考人の発言というのはそれに対しても大変貴重な資料になっていくのではないかなと思うんですけれども。  ここに、子どもの権利条約で、知る権利ができる限り認められるべきだというのも書かれていますが、世界的な動向、要するに、匿名から知る権利になっていっているのだろうかということもぜひ御紹介いただきたいと思います。
  95. 才村眞理

    ○才村参考人 海外の方では、例えばイギリスやスウェーデン、オーストラリア、ニュージーランド、ほかにもたくさんの国々では、初めは匿名でしたけれども、やはり出自を知る権利を認める法律にどんどん変わってきております。その原因、背景を私が調べたところでは、AIDで生まれた人たちがやはり立ち上がり、そして、いろいろなところに訴えたり、そして、当事者だけではなくて、さまざまな分野の専門家もそれに対して一緒に共同して運動が起こり、そして、ドナー情報を知りたいというふうな運動が起こってきました。  その理由が、やはり、先ほど少し出ていました、養子は出自を知ることができるのに、AIDではできない、これは不公平だというふうな意見、それからまた、先ほどから出ています子どもの権利条約第七条、八条による子供の出自を知る権利は、国連の子どもの権利条約で保障されており、そして日本も批准していますので、それを守るべきじゃないかという世界の声というのが大きかったかなと思います。  その際、先ほどもありましたように、提供者が減少してしまうのではないかという懸念が、どの国でもやはりそういう論議はあったようです。しかし、先ほど石塚さんもおっしゃったように、一時、法律制定されると下がりますけれども、その後、やはり提供者の質が変わり、子供さんがいる男性だとか、ボランタリーにそういうのに協力しようという趣旨がわかった人たちに層が変わってきて、徐々に上がってきているという報告を聞いております。  そして、日本でも特別養子縁組の場合は、出自を知ろうと思えば知ることができます。だから、その辺、ちょっとパラレルじゃないですね。戸籍に民法八百十七条の二による裁判確定というのが記載されていますから、それを見れば、自分が特別養子と、生まれたとわかりますよね。  また、平成二十九年に成立した、民間養子縁組あっせん法というのが最近成立していますけれども、そこでは子供の出自を知る権利について認められており、子供がみずからの出自に関する情報を知りたいとの相談があれば、丁寧に相談に応じて対応するということになっているようです。  公的機関である児童相談所が関与した養子縁組の子供の記録というのは、厚生省の方からの通知、児童相談所の運営指針によって永年保存ということで、永久に保存する。ほかのはそうじゃないんですけれども、養子については永久保存というのが全国の児童相談所に行っております。  そういうことで、子供の相談にも、出自を知りたいという相談にも応じるように今はなっております。その動きの中で、生殖補助医療で生まれた子供の出自を知る権利を私は認めるべきじゃないかなと思うんですけれども。  ちょっと資料の方へまた戻っていただきましたら、この下の方なんですけれども、子どもの権利条約第七条、八条の中に、よく話題になる、できる限りその親を知りという文言があります。このできる限りという言葉があるから、全部教えなくてもいいんじゃないかというのはよく言われたりするんですけれども、私が調べた限りはそうではない。  許斐有さんという法学者なんですけれども、ここへ、ちょっと小さいんですけれども、できる限りその親を知る権利を有することを定めています、第七条ですね。そして、親とは、自然的な親、つまり、血のつながった実の親のことである、子供自身が、自分の出生について説明を求めたり、自分に関する記録の開示を要求したときに、これを拒否する理由はない、あるとすれば、子供の年齢及び成熟の度合いなどを考慮に入れて子供の最善の利益に反すると考えられる場合や他者のプライバシーを侵害するおそれがある場合などであると。  ただ、この他者のプライバシーを侵害するおそれがある場合というのは、しっかりと開示に同意をして、そしてカウンセリングで出自を知る権利も理解した提供者提供する医療をスタートをすれば、そういうプライバシーの侵害というのはあり得ないと思います。  法学者の鈴木博人先生も、子供の最善の利益は加味して、例えば、教えるときに、子供がまだちょっと理解が乏しいだとか、それを聞いて、今すぐ聞いたらショックになるから、やはりその環境を整えてから話をしようとか、子供の側に立った条件でやりなさいと国連は言っているわけですよね。だから、大人の側といいますか、医療者側とか御夫婦の方での判断で、知らせなくていいのだということにはならないと。  その国連の子どもの権利条約の意見というのは、この右の方ですけれども、ちょっと字が小さいですが、これを見ても理解していただけると思うんですね。例えば、国連子どもの権利委員会、国連の子どもの権利条約をちゃんと守っていますかというのをちゃんとチェックする機関ですけれども、そこが各国への指摘事項を出しています。  例えば、フランス、二〇一六年には、委員会は、自己の生物学的親及びきょうだいを知る子供の権利を全面的に執行するため、あらゆる適切な措置をとるべきだと。  例えば、ドイツでは、二〇一四年、匿名出産というのがあるんですけれども、それであっても、子供が将来的にアクセスできる、親に関する秘密の記録を保存しておくべきだと。これは、ドイツもそれで保存されているようです。  それから、スイス、二〇一五年ですけれども、委員会は、養子又は生殖補助医療によって生まれた子供が自己の出自を知る権利の尊重を可能な限り確保するための努力を強化せよと勧告しています。  ノルウェーそれからアイルランドも全て、子供の出自を、しっかりと情報にアクセスできるようにしなさいよというふうに勧告しているわけですね。  だから、そういう意味では、このできる限りという文言がちょっと取り違えられないように、私は考えていただきたいなと思っています。  そういう意味で、そんな動きの中で、この二つの要因、養子と一緒に、それから、子どもの権利条約を守っていくというふうなことが世界の流れでもあり、日本でも期待したいところと思います。
  96. 串田誠一

    ○串田委員 今回の法案は、非常に法律的に不安定なところを明確にしていくという点で、私は大変前進だなと思いつつ、また、今のような参考人の御意見、世界の趨勢とか子どもの権利条約なども踏まえ、今回の第三条は二年を目途としていて、非常に、比較的短い期間で検討を入れているという意味で、ぜひ今の参考人の意見というのを尊重していただければなというふうに思っているんです。  一方で、先ほどの検討会でこんな議論が出てきていないだろうかということで、ちょっと質問させていただきたいんですが、提供者の知られたくない権利というのはなかったんだろうか、あるいは、知られることによって提供者が出てこないという懸念はないだろうかというようなことの議論、こういったようなものがあったのかどうか、そして、それに対して先生としてはどのようにお考えでしょうか。
  97. 才村眞理

    ○才村参考人 先ほど申しまして、ちょっと繰り返しになりますけれども、知られたくないといいましても、例えば、法律ができてスタートした後に生まれた子供さんが出自を知る権利を確保することになりますので、法律以前までさかのぼって、今まで匿名で提供した人にまでそれが及ぶということは私はあり得ない。  中にはそういうふうな法律、例えば、養子とかで、イギリスでも、これまでの養子縁組をした人にも教えるというようなこともあるみたいですけれども、今考えられているのは、やはり法律成立以後に、ドナーの、提供者のインフォームド・コンセントをしっかり行って、ドナーの、提供者の方にも出自を知る権利の重要性をしっかり理解をしてもらって、それで、例えば、親としての権義、義務はないけれども、ルーツとしての役割をとっていただくというふうな形をしっかりと認識してもらった上でスタートしますから、そういう意味では、知られたくないというふうなことにはならないと思います。  また、出自を知る権利を認めると提供者が集まらなくなるというのは先ほどから出ているんですけれども、それは、ちょっとこの資料の方の、上の箱の右からポツ二つ目なんですけれども、「国民一般への意識調査の結果では、提供者を特定することができる情報を含めて生まれる子に開示するとしても、一定提供者が現れることが期待される」ということで、その当時、調査もされて、そういった結果が出ているということでは、今、これはいいかどうかわかりませんが、インターネットでも、精子提供しますとかいうのがいっぱい、匿名じゃなしに顔出しでもあらわれている人もいる時代になってきました。  それがいいかどうかは、医療を介していないので、チェックもないのでよくないと思うんですけれども、しかし、そういった、非匿名の方もあらわれるんじゃないかなというふうに私は期待しています。
  98. 串田誠一

    ○串田委員 この検討をまた行うに当たって、その出自を知る権利を実現するために登録システムというものも考えていかなければならないと思うんですけれども、二〇〇三年の報告書等を踏まえて、そのときの検討会でどういうような登録システムというものが案として出てきたのでしょうか。
  99. 才村眞理

    ○才村参考人 平成十五年の報告書では、出自を知る権利を始め、さまざまなシステムを考えられたと思います。  その報告書の内容についても今回も引き継いでほしいなと思うんですけれども、そこでは、公的管理運営機関というのを、政府のもとにそういうものを設置されて、そこで記録も保管し、そして、開示請求があったときにぼんと開示するのではなくて、しっかりと仲介をしながらカウンセリングもできるというふうな形でもって、そして、相談にも乗れるという体制もつくって、記録を開示したり、それから、いろいろな御夫婦の相談にも応じる、子育ての、そういうようなこともあり、それから、マッチングとか調整なども、いろいろ包括的に行うとしておられましたし、そして、そういった総合的な統括機関というのは今回も必要になってくると思います。各医療機関だけに任せるということではなくて、政府のもとにそういうものをつくるという必要があるのかなと思っております。
  100. 串田誠一

    ○串田委員 参考人に対して最後の質問にはなるんですけれども、出自を知る権利は、提供によって生まれた子供又はその子供の家族にとってどのような意味があるんでしょうか。
  101. 才村眞理

    ○才村参考人 出自を知る権利とは、皆さん御自身が誰から生まれたのか御存じ、ほとんどの人は御存じですよね。だから、当たり前に知っているからこそ、なかなかこの必要性というのは実感として湧いてこないということがあるんだと思うんですけれども、自身が誰から生まれたのかということは、人間の生命誕生のルーツなんです。そのルーツがわからない状態だと、ぐらついて、地に足をつけて立って歩けない状態ですよね。  誰でも人間はルーツを知る権利を持っています。それがアイデンティティー、つまり、自分は何者なのか、どこから来たのか、こういうことなんですけれども、これが混乱してしまうと、とても生きづらいものになります。  知らされない権利とかいう人も時々おられるんですけれども、それは、知りたい、知りたくないの二者選択ができる状態で、自分は知りたくないんだと選べるわけであって、知りたいときにも知らせてもらえない状態というのは、私はそういうのは当てはまらないと思っております。  養子の人たちも、五十歳になっても六十歳になっても、自分自身が最初に社会的養護に入った乳児院に訪ねてこられることはよくあります。自分の、どんな、施設はかなり記録もずっと置いていただいているので、その当時の職員がいなくても、ああ、こういう赤ちゃんだったよとか、そういうのを聞くと、何かすごくほっとしたりしますよね。自分のルーツに近い存在ですので。  だから、確かめたいんですよね。提供者に養育してほしいとか、親として何か期待しているのではなく、例えば、ちょっとした癖です、髪の毛が天然パーマだとか、それから、ちょっとこの癖、一緒だわとかいう感じで、自分との共通点を見出して安心するんだと思うんですね。だから、精子が物ではなく、確かに人間としての存在が自身の生命誕生に関与してくれたのだと確信したいんですね。  そして、子供の出自を知る権利を理解し、子供の小さいころから告知をするオープンな家族には、子供自身が親に信じてもらっていると安堵感があります。さまざまな家族の長い歴史上に起こるいろいろな問題にも、そういったオープンな家族は対処できます。柔軟な家族の姿勢が醸成されると思います。子供が幸せに生きられるということは、親も幸せになるということですよね。子供が不幸になって親だけが幸せ、そんなことはあり得ないですよね。  ぜひ子供の出自を知る権利を認めていただき、基本理念、これは二〇〇三年にやったんですけれども、生まれてくる子の福祉を優先する、これが第一義にあったんですね。今回もそういった理念基本理念にしていただきたいとお願いいたします。
  102. 串田誠一

    ○串田委員 参考人には、大変ありがとうございました。今後の検討に関して大変貴重な発言になったのではないかと思います。  残された時間は発議者にもお聞きをしたいと思うんですが、第三条の基本理念に、「生殖補助医療は、不妊治療として、」と書いてあります。  先日、実は、オリパラを目指している選手が、要するに、アスリート生命を維持するために卵子の凍結というものを行ったという報道がなされました。これが「不妊治療として、」と言えるかどうかという意味でどうなんだろうかと思うんですけれども、基本理念としては、女性の健康の保護が図られなければならないとか、説明は十分行われなければならないというような部分もあるという意味からすると、生殖補助医療として、不妊治療としてと限定する必要が果たしてあるんだろうかというのもちょっとあるんですけれども、発議者としてはいかがでしょうか。
  103. 梅村聡

    ○梅村(聡)参議院議員 串田委員にお答えいたします。  今、確かに御指摘いただきましたように、今回の法律がどこをカバーするかということだと思いますが、まず、これは第二条に今回の生殖補助医療についての定義と書いてありまして、その定義については、人工授精と、それから体外受精、それから体外受精胚移植を用いた医療というふうに定義をしていますので、今おっしゃったように、卵子をとってこられて凍結保存ですよね。とするその行為そのものが、それは今回のこの生殖補助医療には入らないんです。  しかし、おっしゃったように、この基本理念のところに、第三条の三項ですね、生殖補助医療に用いる精子又は卵子の採取、管理等については、それらの安全性が確保されるようにしなければならないとありますし、それから第四条は国の責務ですね。「生殖補助医療の適切な提供等を確保するための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」と、国の責務があります。それから五条は医療関係者責務。これは「第三条の基本理念を踏まえ、良質かつ適切な生殖補助医療提供するよう努めなければならない。」とありますので、そういった意味からいえば、そういう環境がこの法律によって整備されていく、また、その責任を国も医療関係者も負うんだ、そういうことで法律整備されるということは意味があることではないかと考えております。
  104. 串田誠一

    ○串田委員 前の委員の質問も重なっているのでちょっと別の質問で、第十条で「妻が、夫の同意を得て、」と書いてあるんですけれども、これは法律婚を前提としているのかなと思うんですが、この法案を見ると、まさに選択的夫婦別姓が認められないために仕方なく事実婚を採用している国民も多数いらっしゃると思いますし、同性婚という状況も認められていないという意味で、この十条が適用できないというのはとても残念ではないかなと思うんですけれども、発議者として、この重要な法案適用する幅を広めるためにも、このような今課題となっているものを前進するという意味で、後押しをするというお気持ちはありますでしょうか。
  105. 梅村聡

    ○梅村(聡)参議院議員 発議者も各党でさまざまな御議論があるというふうに聞いておりますし、また、今回附則の三条でも、さまざまな、今おっしゃっていただいたことも含めて検討することを排除しない、我々はそのように今回説明をさせていただいておりますので、今、串田委員からの御指摘も踏まえて、これから更によいものをつくっていく、そのことを改めて申し上げたいと思っております。
  106. 串田誠一

    ○串田委員 附帯決議の中で、偏見の部分がございました。「政府は、生殖補助医療及び不妊治療を利用する当事者及びそれにより生まれる子への偏見を防止するとともに、不当な差別を禁止するために必要な措置を講ずること。」。まさにこれは、当然、本当に必要なことであると思っているんですけれども、「不妊治療を利用する当事者」と書いてある。  この法案というのは、そういう意味で、法律の安定性というものを前進させるという点で非常に重要な法案だと思うんですが、だからといって、利用しないという意思決定も私は尊重するべきではないだろうかと。  例えば、子供ができないときに、昔のテレビドラマなどはいじめられるなんという場面もよく見るわけです。そうすると、こういう法案ができたよ、何でこの法案にのっとってこれを進めないんだというふうに言われることもあり得るわけですよね。何でこの法案を使って医療をしないんだという非難をされる可能性もあると思うんです。  ですから、私は、この「利用する当事者」という書き方というのは、非常に重要なんですけれども、利用しないことに関しての偏見というものもこれはなくしていかなければならないと思うのですが、発議者としての御意見をお伺いしたいと思います。
  107. 梅村聡

    ○梅村(聡)参議院議員 今おっしゃっていただきましたように、今回、不妊治療に対する偏見そのものに対してまず対応していかないといけないということがあると思います。  今回もこの第六条においては、「国は、広報活動、教育活動等を通じて、妊娠及び出産並びに不妊治療に関する正しい知識の普及及び啓発に努めなければならない。」、こういう規定がありますし、第七条においても、国は生殖補助医療提供を受けようとする者、その提供を受けた者等からの各種の相談に応ずるために必要な相談体制整備を図らなければならない旨を規定しております。  ですから、まずは、この不妊や不妊治療に対するさまざまな偏見等にきちんとこの法律の中で対応していく、それとあわせて、今委員がおっしゃったのはこれを利用しない場合ですよね。  不妊治療にかかわらず、自己決定権というものは、これはもう広く国民の皆さんには保障されていることだと思っておりますので、ですから、そういうことも含めてきちっと対応していく整備、これをやっていきたいと考えております。
  108. 串田誠一

    ○串田委員 時間になりました。  きょうは才村先生に貴重な御意見をいただきまして、出自に関する大変重要なことであるということを、私たちもしっかりとそれを吸収しながら、よりよいものに更にまたしていきたいと思います。どうもありがとうございました。
  109. 義家弘介

    義家委員長 次に、高井崇志君。
  110. 高井崇志

    高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井でございます。  まず、この大変な重要な法案、おまとめになられた発議者の皆さんに敬意と感謝を申し上げたいと思います。我が会派でも大変激論が交わされました。伊藤孝恵発議者がそれをしっかりまとめられてきょうを迎えておりますので、後ほど伊藤さんからぜひ思いのたけをお話しいただきたいと思っておりますが、その前に、まず、きょうは三原厚生労働大臣、お忙しい中来ていただきましたので、ちょっと一、二問、今回のこの法案の大きな意義は、私はやはり不妊治療がしっかりと法律の中で位置づけられていくということが大変重要だと思っています。  といいますのも、私自身が不妊治療当事者でございます。五年前からずっと続けておりまして、今もまだ続けておりまして、五年前からこの不妊治療のさまざまな問題を国会で取り上げ、ことしの二月には本会議でも安倍総理に直接、保険適用をすべきじゃないかというような、きょうこれから聞くことも聞いたんですけれども、その当時は余りいいお返事じゃなかったんですが、今、保険適用については大きく前進をするということになってまいりました。  一方で、もちろん、私も不妊治療をやっていて本当にお金がかかるなというのが最大の悩みでありますが、それは保険適用で一つ、一歩前進するとして、もう一つ大きな課題、これは本会議でも申し上げたんですが、実際にその環境がなかなか整っていない。妻が、もう本当にこれは週一回や二回通って、しかも急に休まなきゃいけない、病院に行かなきゃいけない。職場にどうやってそれを言うのか、なかなか、特に男性の多い職場では理解がされない現状をすごく感じます。  また、病院に私も一緒に行くこともありますけれども、本当に三、四時間平気で待たされる、朝一番に行っても午後までかかるとか、何時に終わるかわからないから休暇もとりようがないみたいな、本当に仕事と不妊治療の両立というのは物すごく大変だなというのを感じます。  これは、私はお金の問題よりも深刻じゃないかとも思うし、でも、これは解消する方法は幾らでもあるんじゃないかと思うんですよね。例えば、不妊治療用の休暇をつくってくれることでも会社の意識が変わりますし、あるいは、もちろん、職場でもっともっと不妊治療とはどういうものなのかということを知ってもらう、あと、待ち時間の短縮ですよね、これは本当に、三、四時間待つというのは何とかならないのか。  こういった環境整備を私はぜひ厚生労働省には本気で取り組んでいただきたいと思いますが、三原副大臣、ぜひ、この点、いかがでしょうか。
  111. 三原じゅん子

    ○三原副大臣 お答えさせていただきます。  今委員おっしゃいました、不妊治療と仕事が両立できる職場環境の整備は重要な課題であると私も認識しております。  平成二十九年度に行った調査では、不妊治療経験者のうち一六%、女性では二三%が、仕事と両立できずに離職をしていること、仕事との両立が難しい理由としては、通院回数の多さ、今委員がおっしゃったように精神面での負担の大きさというもの、そしてまた仕事の日程調整の難しさ、こうしたことが挙げられております。不妊治療を受ける労働者の多くはそのことを職場に伝えていないということもわかりました。  このため、ことしの三月に、不妊治療と仕事の両立を支援する企業内制度の導入に向けたマニュアル等を策定するなど、周知啓発の取組を進めてきたところでございます。  具体的には、半日、時間単位で取得できる年次有給休暇制度、多目的休暇制度不妊治療のための休暇制度、時差出勤やフレックスタイム制など、通院に必要な時間を柔軟に確保しやすい職場環境整備を企業において進めていただくことが重要だと考えております。  また、不妊治療を受けやすい職場環境整備に向けた検討を進めるべく、十月二十六日に内閣府とともに両省の合同の検討チームを立ち上げまして、まずは職場における理解、関心を深めつつ、不妊治療を受ける労働者が働きながら通院に必要な時間を柔軟に確保しやすい、そうした制度等の普及などを図って、職場環境整備を進めてまいりたいと思っております。
  112. 高井崇志

    高井委員 ことし二月に聞いたときよりはちょっと、半歩前進したかなと思いました。  ただ、やはりそれでもまだ足りない気がします。やはり、保険適用、費用の問題と本当に車の両輪で、これは重要なテーマ、お金があってもこっちの方でできないという方も相当多いですから、これは本気でぜひ取り組んでいただきたいと思います。  あわせてもう一つ聞きますが、今回、参議院附帯決議でももう入っているんですけれども、不妊治療に関する実態調査、今も調査はされていると言いましたけれども、それ以上に、今回、こうやって法的に明確に位置づけられたことで、例えば、どういう治療をどういう病院がやっているんだ、あるいは成功率、まあ、成功率は結構議論があって、余りそれを問うと高齢の方が行きづらくなるとかがあるので難しいんですけれども、そういうこと。あるいは待ち時間が平均どのくらいなのかとか、そういったこともぜひ実態調査、統計整備。それから、治療技術の標準化ですね。やはり治療技術にばらつきがあるから、人気の病院に集中して待ち時間が長くなるという実態もありますから。あと、情報公開。これをやることによって、こういった、まさに附帯決議で書いていることなんですが、これは附帯決議で言われるまでもなく、ぜひ厚労省、やっていただきたいんですが、その辺の決意をお聞かせください。
  113. 三原じゅん子

    ○三原副大臣 今委員がおっしゃいました参議院における附帯決議では、安心かつ安全に必要とする治療を受けられるよう、質の向上に努めるとともに、その確保のために、実態把握、治療技術の標準化、情報公開等のあり方等検討を行う旨が規定されております。  現時点におきましては、生殖補助医療のうち、夫婦間の体外受精等について、体外受精や顕微授精についての保険適用を見据えて、治療技術の標準化を目指し、ガイドラインの策定等の検討を行っているところでございます。  国会における議論を踏まえまして、生殖補助医療の質の向上のために必要とされる実態把握、情報公開等について引き続き関係学会等と連携して検討してまいりたいと思っておりますが、今議員おっしゃいましたように、今さまざまな角度で調査を行っているところでございます。その回答が出てから、しっかりと皆様に寄り添うために、しっかり闘ってまいりたいと思っております。
  114. 高井崇志

    高井委員 三原副大臣、ホームページを見ましたら、不妊治療の議員連盟にも入られて、自民党の前の岸田政調会長にも要望書を出しに行かれたというのが出ていましたので、ぜひ、これはなかなか、やはり役所任せにすると、厚生労働省はなかなか本当に腰が重いので、私は五年間ずっとやっていますから、これを機に、まさにこの法律が成立することを機に、厚労省としてしっかりやっていただきたい、そのことをお願いして、どうぞ退席してください。  それでは、発議者にこれから伺いたいと思います。  先日、私の地元の岡山大学の調査でこういうアンケート調査が発表されました。二〇一九年の六月から九月にかけて、全国七千人に質問票を送って九百十四人から回答、こういう難しいテーマで九百十四人、結構な母数だと思うんですが、その中で、生殖補助医療に関する包括的な法律をつくる必要があるという答えは何と七一%にも上った、他の法律の範囲で規定すればよいというのは一〇%あったということです。  この他の法律というのが何を意味するのかちょっとわからないので難しいんですが、ただ、私の理解では、やはり現行法ではもう、出生した子の身分、これについては安定できないんだ、だからこそ今回の立法になって、今回の立法によってこの出生した子の身分というのはどのように安定することになるのか、発議者にお聞きいたします。
  115. 秋野公造

    秋野参議院議員 精子又は卵子提供を受けた生殖補助医療により出生した子の親子関係、これにつきましては民法に直接規定をされておりません。よって、本法律案の第九条それから第十条の規定を設けることで、親子関係を安定的に成立させる効果があると考えてございます。
  116. 高井崇志

    高井委員 そのことは確認をさせていただきました。  それで、次とその次の質問はこれまでの委員からの質問とかぶるのでちょっと省きまして、後で、もし時間があればまたやりたいと思います。二つ飛ばして、六の質問に入らせていただきます。  今回、先ほどからずっと議論になっている出自を知る権利、これが二年を目途として検討ということになっているわけですが、この出自を知る権利そのものはあるんだと、権利はあるという前提で私は議論がされるものだと思っていますが、それでよろしいのかどうか。そもそも、あるなしまでも白紙だという認識なのか、そこはちょっと発議者に確認したいと思います。
  117. 秋野公造

    秋野参議院議員 発議者間におきましては、出自を知る権利については重要な論点であって、その具体的なあり方について検討するということで一致をしてございますので、あるという認識で検討していきたいと思っております。  しかしながら、先ほど御答弁させていただきましたけれども、この制度化をするに当たって、ドナーの情報が開示されることについては国民のコンセンサスが得られている状況ではないだろうということ、それから、そもそも出自を知る権利が法定化されておりませんので、そこの意図するところ、先ほど来、どこまでの情報を求めることになるかといったような御質問もございましたように、その出自を知る権利の中身につきましてもまだまだ多様な意見があるところだろうと思っておりますので、こういったところをしっかりと検討してまいりたいと考えているところであります。
  118. 高井崇志

    高井委員 ありがとうございます。  はっきりあるというふうにおっしゃっていただき、私の知る限り、今まで重要な論点ではあるという言い方にとどまっていて、そもそも重要な論点であるということは、あるかないかも重要な論点だということかと思っていたんですが、今はっきりと、あるというふうに御答弁いただきましたので、その出自を知る権利があるという前提で、しかしさまざまな問題があることはもちろんよく承知しておりますので、しっかり検討いただいて、また結論を出していただきたいと思います。  それでは、その次に、これも大きなテーマになると思います代理懐胎であります。恐らく、本当に大きな、国論を二分すると言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、大きなテーマじゃないかなと思います。  私は、個人としては、先ほど申しましたように、今も不妊治療を続けている身ですから、これは選択肢としては大きな選択肢なんですね、代理懐胎ということも。ですから、これはぜひ認めてほしいという立場ではあります。  妻に言わせれば、やはり、そういうやりたいと思う人にやれる権利をちゃんと残してほしいと。もちろん、いろいろな問題があるとか、安易な代理懐胎がさまざまな弊害を生むということもわかりますけれども、しかし、それを望んでいる、それしかないという方もいるという、その選択肢としては、私は、それをやはり認めてほしいという思いが私なりパートナーにはあるわけですけれども、この点、どのように、これから二年間の中で国民の皆さんの意見を聞いて、そして本当に二年で結論が出せるのか、あるいは、その際、どういう判断基準でこの問題を決めていくのかについて、発議者の御見解をお聞かせください。
  119. 伊藤孝恵

    伊藤(孝恵)参議院議員 当事者の思いも含めて質問していただき、ありがとうございます。  発議者の中で現在想定されておりますのは、衆参の厚生労働委員会の合同審査会、又は法案成立後速やかに全国会議員の方々に呼びかけを行いまして設立予定の超党派議連の中で、各議員に託された声、それから参考人招致、パブリックコメント、さらにはマスコミ等の力もかりまして、これは国民的議論に付すことが必要だと思っております。  その期限は、目途、あくまで二年でありますので、その判断基準となるのは、寄せられた声、世論調査、科学的事実、専門家の諮問、各種の統計や社会情勢などの社会的事実であって、最終的には法案に定めた基本理念に基づくべきものと考えております。  いずれにいたしましても、立法府には、結論を出すというような大きな課題が課せられていると認識しております。
  120. 高井崇志

    高井委員 ありがとうございます。重要な決意をお聞きできたと思います。  本当に、この問題は、何か知っているようで知っていないというか、代理懐胎という言葉も余りなじみはないでしょうし、あとは何となくちょっとタブー視されているような感じもあって、なかなか一般に議論が進んでいるという状況ではないような気がいたしますので、ぜひ、今国民的議論でということでいろいろな具体的な手法もおっしゃっていただきましたので、ぜひこれはきちんと議論をして、私は結論を出していただきたいというふうに思っております。  それでは、その次の質問ですが、これはちょっと古川発議者にお聞きしたいんですけれども、参議院審議の議事録を見ておりましたら、趣旨として、二年後以降の法整備においては、臓器移植法改正のときのような、複数案を提起して党議拘束を外すといったような趣旨の認識が示されたように私は理解したんですけれども、これは、更に具体的にどのような法案提出を想定しているのか、お聞かせください。
  121. 古川俊治

    古川参議院議員 あくまでも自由民主党の党内での議論におきましては幾つか案をつくったということでございまして、それは党議拘束がかからないという前提で幾つかの案をつくったわけでございますが、最終的に各党で党議拘束を外すか否かは、各党の御判断だというふうに思っております。  その上で、自由民主党においてつくりました案、先ほどから議論がございます、まず代理懐胎について、これを禁止するのか、あるいは一部認めるのか。あるいは、出自を知る権利についてどのように扱うのか。その場合に、親子関係のさらなる特例をもう一度民法に設けるのかどうか。こういうことも含めた幾つかの案でございまして、さらには、出自を知る権利をもし認める場合には、その内容についてさまざまな案が更に出てくるというふうに考えております。
  122. 高井崇志

    高井委員 与党第一党から、そういう方式が党内ではということですので、それはほかの党も賛同すればそういうことになるんだろうというふうに理解をいたしました。  それでは、続いて、これも同じく参議院審議で、柘植さんという参考人の方から御指摘いただいた記述が、私、非常に、ちょっと自分のことともかぶってすごく関心を持ったんですけれども、こういうことを柘植さんはおっしゃっています。  不妊治療をしてきた方に長くお話を聞いてきて思うのは、不妊治療によって生殖補助医療をしても、子供を得られた人ばかりではありません。むしろ、子供を得られなかった人たちも大勢いらっしゃいます。それで、その方たちがおっしゃるのは、不妊治療のやめどきがわからない、それから、自分の子供をもう諦めようと思うんだけれども、どうやったら諦められるかがわからないという声も多く聞きますと。  また、体外受精でお子さんができた方とできなかった方を別々にインタビューしたんですが、思いがけず同じ言葉をもらったことがあります。不妊治療をしていたときには、あんなに子供がいなければいけない、どうしても子供が欲しい、こんなに頑張っているのになぜできないのということで苦しんだけれども、不妊治療を離れて、どうして私はあんなに自分を追い詰めていたんだろうか、あんなに子供ができない自分を卑下していたんだろうかというのが今は不思議だという、そんな言葉だったと。  私もこれは非常に印象に残ったんですけれども、こういった現状はあると思うんですね。こういった現状に対してどのように対処していくのかについても、発議者にお聞きしたいと思います。
  123. 伊藤孝恵

    伊藤(孝恵)参議院議員 不妊治療中の焦燥感、本当に希望と絶望を繰り返して自分自身が疲弊していく感じというのを、私も高井議員同様、当事者ですので、非常によく理解しているつもりであります。  可能性が一%でもあれば諦められない、諦めたくないというのがこの不妊治療の大きな特徴でございますので、本法の第七条では、国は、生殖補助医療提供を受けた者等からの各種の相談に応ずるために必要な相談体制整備を図らなければならない旨を規定しておりますので、この中で御指摘のような相談にも応じていくことができると考えております。
  124. 高井崇志

    高井委員 今、伊藤発議者から大変重い言葉をいただきました。一%でもあれば諦めたくない、本当にそうなんですよ、当事者は。  だけれども、一方で、例えば医療の助成制度なんかは四十三歳、今ちょっと上がったのかな、四十四歳、三歳で補助が打ち切られるとか、そういったこともあり、確かに高齢出産のリスクというのもあるものですから、本当にこれは難しい、悩ましい問題なので、ぜひこの相談体制は、本当に相談体制だけでいいのかということも含めて、これは厚労省がまだ、三原副大臣はあれですけれども、厚労省いらっしゃると思うので、ぜひここは十分にケアをする形をあわせて考えていただきたいというふうに思います。  それともう一つ、柘植参考人がおっしゃっていた点で、こういった指摘もありました。  この法案の中で足りないことを二点指摘させていただきたいんですが、一つが統計の整備について書かれていないことです。統計を整備して、その分析をして、そして情報開示をして、そしてそれを技術の進歩につなげていかないといけないと思っていますと。  もう一つが、この治療を受ける人たちが、医療を使う人が十分な情報を得て自分で決めていくという制度を設けることが必要です。これが結果的に技術の安全性を高め、成功率を上げて費用を下げることにつながっていくと思いますと。  全くそのとおりだなと思うわけですが、こうした点がこの法案には欠けていると柘植参考人からは指摘があったわけですが、この点については発議者としてどのように考えますか。
  125. 秋野公造

    秋野参議院議員 まず、一点目に御指摘をいただきました統計の整備につきましてですけれども、そもそも基盤となる記録があるかということで、附則の三条には、生殖補助医療提供を受けた者、精子又は卵子提供者及び生殖補助医療により生まれた子に関する情報の保存、管理開示等に関する制度あり方ということで検討をするということとしているとともに、参議院法務委員会におけます附帯決議においては、政府は、生殖補助医療の質の確保のために、自由診療のもとでの医療費及び高額請求等の実態把握、諸外国より低いとされる成功率の実態調査及び原因、要因の分析、生殖補助医療提供者の治療技術や治療実績などの把握や検証等を行い、必要に応じて法制上の措置を講ずることとしているところでありまして、今後政府においても適切に対応していただけるものと考えてございます。  二点目の、治療を受ける人が自分で決める制度ということにつきましては、本法律案の第三条の基本理念に「生殖補助医療実施に当たっては、必要かつ適切な説明が行われ、各当事者の十分な理解を得た上で、その意思に基づいて行われるようにしなければならない。」と規定をするとともに、七条におきまして、国は生殖補助医療提供を受けようとする者等からの各種の相談に応ずるために必要な相談体制整備を図らなければならない旨規定をしておりまして、この中で、治療を受けるかどうかといったようなことについての相談にも応じていくということになろうかと考えてございます。
  126. 高井崇志

    高井委員 関連するんですけれども、今回の法律では、医療関係者責務、これを規定したことは大変評価しますけれども、今申し上げたような医療を受ける側の問題、それについての責務ですね、いわゆるデザイナーベビーというような懸念のような、そういったことも含めて、医療を受ける側の責務というものについては検討はなかったんでしょうか。
  127. 伊藤孝恵

    伊藤(孝恵)参議院議員 医療を受ける側の責務、大変重要な御指摘かと思います。  責務については、医療法で「国民は、良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め、医療提供施設の機能に応じ、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない。」と規定されておりますので、本法律案には特段の規定を設けてはおりませんが、委員の御指摘はそういった一般的な責務と性質を異にするものではないかという問題提起かと思いますので、附則第三条第一項の規定によりいわゆる行為規制あり方について検討していく中で、医療を受ける側の責務規定する必要性についても議論されることもあり得べしというふうに考えております。
  128. 古川俊治

    古川参議院議員 先生が今御指摘されたデザイナーベビーの問題につきまして、これは、受精胚、胚に対しまして遺伝的改変を行う技術を使うということでございますが、これにつきましては大変社会的な問題が大きいということでございまして、既に海外では行われた例がございまして、この点は政府においても今検討会で議論は進めているところでございまして、二年を待たずして政府の方で法律を出させていただくということもあり得ると考えております。
  129. 高井崇志

    高井委員 予定どおり進みましたので、ちょっと先ほど飛ばしたのを一問、五番というところで通告しているんですけれども。  これは何度か質問して、なかなかいい答えはいただいていないんですけれども、附則三条の、二年を目途として検討という、この会議体を、どういう具体的な構成員の想定があるのか、あるいはどのくらいの頻度でやるのか。超党派の議連を動かすということはもう表明いただいていますけれども、あるいは幅広い国民の声を、どういう仕組みでこれを聞いていくのかについて、改めて発議者からできるだけ具体的にお答えいただけたらと思います。
  130. 古川俊治

    古川参議院議員 この合同検討会というやり方は、将来の国会に対して国会が議論をすることを義務づけるにはどういう方法があるのかというような議論から、これが先例としてあったということで挙げさせていただいたわけでございまして、これ以外の方式を用いることももちろん排除はしていない、「等」というふうに書かせていただきました。この中でひとつ与野党を超えて話し合っていくということになるわけですけれども、先ほど伊藤委員からもございましたが、議連という形でやっていく方法もあると思っております。  頻度等につきましては、今後、皆さんと一緒にこれを検討しなきゃいけないと思っていますが、二年という限界もありますし、できるだけ広くさまざまな立場の方々から御意見をいただき、また広く国民の皆さんから御意見をいただける形にしていくことが重要と認識しておりまして、その点を含めて、今後、与野党の中で話合いが進んでいくんだろうと思っております。
  131. 高井崇志

    高井委員 そろそろ時間ですので、最後に、冒頭申し上げましたとおり、国民民主党・無所属クラブ、大変な激論があった中で何とかまとめました。本当に伊藤孝恵発議者の御尽力が大変すばらしかったと思っていますが、まずこの法案の意義と課題、それから二年後の検討に向けてどのような方法でどういう議論を行っていくのかも含めて、伊藤発議者の決意をぜひお聞かせいただきたいと思います。
  132. 伊藤孝恵

    伊藤(孝恵)参議院議員 さまざまな御配慮をいただき、ありがとうございます。我が会派のみならず、各党各会派から、次なる課題について大変いろいろな御指摘をいただきました。出自を知る権利、また代理懐胎等について、今後、とにかく幅広に、そして活発な議論をする環境を整えてまいりたいというふうに思います。  その上で、意義を述べさせていただけるのであれば、今の日本の法律に初めて生殖補助医療についての存在が示されたこと、生殖補助医療の基本法と申しますか、長年手つかずだった不妊治療関連法制がようやく前進したことなんだというふうに思います。  明治時代に制定された現行民法は、当然ですけれども、生殖補助医療についての出産を想定しておりません。しかしながら、現実には、我々もそうですけれども、五十万人以上が不妊治療を行っております。また、夫婦のみならず、同性婚カップルや事実婚、未婚、一人親への生殖補助医療提供を始め、子を産み育てたいと思う方々、願う人全てのあらゆる選択肢を準備するためにこの議論の枠組みが必要だった、そういうことだったと思います。  また、先ほど、才村参考人の方から言及ございましたけれども、今後、出自を知る権利を確保していく、体制整備をしていくということは、生殖補助医療のみならず、内密出産、匿名出産等のあり方議論を進めていく、そういったてこにもなるんだというふうに思います。  当然ながら、生まれ来る子供の福祉権利を何よりも尊重し、議論を進めてまいります。
  133. 高井崇志

    高井委員 時間になりましたので終わりますが、本当に、この法律が成立して、生殖補助医療不妊治療が非常に今国民の大きな関心事、課題にもなっておりますので、ぜひこれが前に進んでいくことを期待いたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  134. 義家弘介

    義家委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  135. 義家弘介

    義家委員長 これより討論に入ります。  討論の申出がありますので、これを許します。藤野保史君。
  136. 藤野保史

    藤野委員 私は、日本共産党を代表し、本案に反対の討論を行います。  反対理由の第一は、どのような生殖補助医療を認め、どう規制するかという、いわゆる行為規制あり方が全て先送りされていることです。  法制審の親子法制部会は、行為規制の立法の見通しが立たないもとで親子関係だけを規定することは慎重な検討を要するとしています。近時の最高裁判例でも、医療法制親子法制は両面からの検討が必要としており、親子関係のみ先行して規定すべきではありません。親子関係の早期確定といいますが、本法案が要件とする夫の同意については、その有無をめぐって裁判例があるほか、精子提供者と出生した子との間の認知の問題についての規定もなく、早期に確定するとは限りません。  反対理由の第二は、親子関係と不可分一体である出自を知る権利が認められていない点です。  きょうの参考人質疑でも、生殖補助医療で生まれた当事者から、知りたいと思う人が知りたいと思うときに提供者情報にアクセスできる環境が、この技術を続けていくのであれば絶対に必要です、検討期間とされる二年の間にも、私たちと同様の子供が生まれ、権利が保障されぬまま、私たちと同じ悩みを抱えてしまうことになりかねませんという意見が示されました。この声を真摯に受けとめるべきです。  反対理由の第三は、本法案が、商業的な濫用の危険、優生思想の介入を許す危険があることです。  複数の団体から、本法案第三条四項に「心身ともに健やかに生まれ、」という文言が入っていることが旧優生保護法をほうふつとさせるという厳しい意見が寄せられています。本案が、商業的、優生思想的な濫用禁止規定については定義が不明確という理由から明文化しない一方で、当事者から優生思想の介入を許しかねないという批判を招くような文言を盛り込んでいることは、大きな問題です。  最後に、本法案をめぐって、立法府のあり方が問われています。  ことし六月から、衆参両院の厚労委員会で、旧優生保護法の制定、改正時の問題点について大規模な調査が始まっています。立法府が犯した過ちを二度と繰り返してはならないという立場で過去に例のない調査が行われているさなかに、同じ生命倫理に深くかかわる法案をわずか二時間半の審議で押し通すなど、立法府として許されるものではありません。  このことを強く述べて、反対討論といたします。
  137. 義家弘介

    義家委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  138. 義家弘介

    義家委員長 参議院提出生殖補助医療提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  139. 義家弘介

    義家委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  140. 義家弘介

    義家委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、奥野信亮君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・社民・無所属、公明党、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。階猛君。
  141. 階猛

    ○階委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文の朗読により趣旨説明にかえさせていただきます。     生殖補助医療提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   本法の施行に当たっては、次の諸点について適切に対応するべきである。  一 政府は、生殖補助医療及び不妊治療提供に当たっては、以下の基本的認識に基づいて施策を講ずること。   1 生殖補助医療提供等については、それにより生まれる子の福祉及び権利が何よりも尊重されなければならないこと。   2 当事者、特に女性心身保護及びリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する自己決定権)の保障が尊重、確保されなければならないこと。また、保障されるべきリプロダクティブ・ヘルス/ライツには、女性の健康の確保だけではなく、身体的にも精神的にも本人の意思が尊重され、自らの身体に係ることに自ら決定権を持つことが含まれるものであることに留意すること。   3 商業的な悪用・濫用を禁止し、防止するとともに、優生思想の排除を維持すべきこと。   4 生殖補助医療及び不妊治療は、国による少子化対策としてのみ推進されるべきものではないこと。  二 政府は、血縁のある子をもうけることを推奨するような誤解を招くことや、子をもうけることが人生のプロセスとして当然かのような印象を与えることがないよう、適切な措置を講ずること。  三 政府は、本法第三条第三項に規定する精子又は卵子の採取、管理等安全性の確保の要請は、胚についても及ぶことを踏まえた措置を講ずること。  四 政府は、本法第三条第四項の規定が、本法の目的の一つである生殖補助医療によって生まれくる子どもの福祉権利の尊重を理念に定めたものであり、障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが安全で良好な環境で生まれ、育つ固有の権利を有すること、及びその尊重と確保のために必要な配慮がなされなければならないことを規定していることに留意し、必要かつ適切な施策を講ずること。  五 政府は、生殖補助医療及び不妊治療提供を受ける者が安心かつ安全に必要とする治療を受けられるよう、不断にその質の向上に努めるとともに、その確保のために、自由診療の下での医療費及び高額請求等の実態把握、諸外国より低いとされる成功率の実態調査及び原因・要因の分析、生殖補助医療提供者の治療技術や治療実績などの把握や検証等を行い、治療技術の標準化や情報公開等の在り方についての検討を行った上で、必要に応じて法制上の措置を講ずること。  六 政府は、生殖補助医療及び不妊治療の効果に関するインフォームド・コンセントを尊重したカウンセリング体制の強化並びに生殖補助医療及び不妊治療への社会の理解の促進を図ること。  七 政府は、本法附則第三条に基づく法制上の措置が講ぜられるまでの間、生殖補助医療提供等において婚姻関係にある夫婦のみを対象とするのではなく、同性間カップルへの生殖補助医療提供等を制限しないよう配慮すること。  八 政府は、生殖補助医療及び不妊治療を利用する当事者及びそれにより生まれる子への偏見を防止するとともに、不当な差別を禁止するために必要な措置を講ずること。  九 政府は、養育里親、特別養子縁組等多様な選択肢の周知と支援体制を強化し、多様な生き方及び多様な家族の在り方を保障するための取組を推進すること。  十 政府は、生殖補助医療及び不妊治療の研究において、ヘルシンキ宣言及び国の研究指針等が遵守されるよう努めること。  十一 政府は、仕事と生殖補助医療不妊治療等との両立が実現できるよう、職場における働き方の環境や制度整備を行うとともに、周囲や社会全体の理解の醸成のためのヘルスリテラシー等に係る教育の推進など必要な措置を講ずること。  十二 政府は、生殖補助医療提供における適正性を確保するための幅広い分野の専門家を構成員に含む検討会を設置すること。  十三 政府は、ヒト受精胚に対する遺伝情報改変技術等の規制の在り方を検討すること。  十四 本法附則第三条に基づく検討を行うに当たり、以下の事項をその対象とすること。   1 女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツの保障が本法第三条の基本理念に含まれ、それは健康にとどまらず身体的にも精神的にも本人の意思が尊重されるべきことが含まれるものであって、その徹底が強く要請されていることを踏まえ、その十分な確保のための具体策   2 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)が子どもの最善の利益とともに命の権利意思表明権の保障も要請していることに十分に留意した、生殖補助医療により生まれた子のいわゆる「出自を知る権利」の在り方   3 本法が児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)及び障害者の権利に関する条約の要請に十分に合致するものであることを担保する観点での、生命、生存及び発達に対する権利、子どもの最善の利益、子どもの意見の尊重等の保障の在り方の具体策   4 精子又は卵子提供者及び提供を受ける者が十分かつ適切な説明を受けた上で承諾した事実の管理等を公的に行う機関の在り方   5 第三者機関による審査・監督制度や胚培養士等専門職の資格制度の在り方   6 精子卵子提供を受ける側の要件及び判断の在り方   7 生殖補助医療不妊治療に係る法令違反の際の罰則等と倫理規定の在り方   8 同性間のカップルにおける生殖補助医療提供の在り方や同性間のカップルに対する生殖補助医療に係る支援の在り方   9 精子卵子提供者を含む当事者に対する生殖補助医療に係るインフォームド・コンセントの確保・確立と不利益の回避のための具体的な制度の在り方   10 生殖補助医療に用いられる卵子提供において、家族間等の無償の卵子提供の強要を防止する対策   11 代理懐胎についての規制の在り方   12 現在、法制審議民法親子法制)部会において行われている嫡出推定制度等の親子法制に係る見直しの検討について取りまとめがなされた場合、その結論を踏まえた、生殖補助医療により生まれた子に関する新たな法制上の措置  十五 本法成立後速やかに、幅広い会派の参加により本法附則第三条の検討を行うこと。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  142. 義家弘介

    義家委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  143. 義家弘介

    義家委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。上川法務大臣
  144. 上川陽子

    ○上川国務大臣 ただいま可決されました生殖補助医療提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法特例に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  145. 義家弘介

    義家委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 義家弘介

    義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  147. 義家弘介

    義家委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十九分散会