○山内
委員 今、タイムズ・ハイアー・エデュケーションに百十六校ランクインして数は多いということをおっしゃいましたけれども、これも多分、
文部科学省に尻をたたかれて、ランクインというか、
調査に協力しなきゃいけないということで、かなり頑張って各地の
大学がタイムズ・ハイアーの
調査に協力したんだろうなというふうに思います。
この世界
大学ランキングを政策の指標として使うことに関しては、これまでもいろいろな批判があったと思います。私自身も、この世界ランキング、はっきり言って当てにならないというふうにずっと前から思っておりまして、その問題点は、ざっくり分けると三つあると思います。
一つは、圧倒的に英語圏の
大学が有利になってしまいます。実際の学術レベルと関係なく、英語圏が、あるいは英語を公用語としている小国が非常に有利になるという
仕組みがあります。
それから、どの指標をとるかによってかなりランキングの順位が変わってしまうことがあります。特定の指標に合わせて
大学の運営とか
教育方針が変わってしまうということがありますので、そういう、かなり指標によって一気に順位が入れかわるランキングで本当にいいのかということ。
それから三つ目が、世界
大学ランキングの指標に合わせて
大学改革をやるという
大学がふえてくることが、本当に
日本の
大学教育の質の
向上に役に立つのか。
この三つの点について
質問をしていきたいと思います。
例えばですけれども、今おっしゃったタイムズ・ハイアーもQSも、どっちもイギリスの民間企業のやっていることです。公的機関ですらありません。単なる営利企業がやっていることです。
例えば、タイムズ・ハイアー・エデュケーションのトップテンの
大学を見ると、イギリス三校、アメリカ七校、アメリカとイギリスがトップテンを独占しています。QSのトップテンは、イギリス四校、アメリカ五校、スイスが一校ですね。人口三億三千万のアメリカに比べて人口六千万のイギリスは結構過剰に代表しているというか、かなり
英国に甘いランキングだろうなという印象を受けます。
どっちも、QSもタイムズ・ハイアーもイギリスにあって、恐らく、QSとタイムズ・ハイアー・エデュケーションの
調査をしている
調査員とか社員も、大体イギリスの
大学を卒業しているんだと思います。要するに、イギリスに有利な
仕組みなんじゃないかなと私は前から思っていたんですが、同じことを専門家の方もおっしゃっています。
例えば、オックスフォード
大学の苅谷剛彦教授、
教育社会学の専門家の方ですね。苅谷教授の著書から引用させていただきます。
一九九九年にブレア首相の肝いりでイギリスの
高等教育グローバル化政策が本格化し、さらに二〇〇六年にはその第二段目のロケットに点火がなされた。二〇〇〇年代に入って急拡大する
高等教育のグローバル市場で優位な地位を占めるための政策である。このような動きが本格化する時期にイギリスの有力紙が世界
大学ランキングを発表するようになったのである。タイムズ・ハイアー・エデュケーションのランキングではイギリスの
大学がアメリカの
大学と並んで常に上位を占める。このような動きの連動を偶然と見るか、それとも国家的なマーケティング戦略と見るか。偶然と見るには余りにも話ができ過ぎていると。
オックスフォードの苅谷教授は、イギリスの国家戦略として世界
大学ランキングがつくられて、それに乗っかった営利企業と一緒になってやっているんじゃないかということをおっしゃっています。私もそういうふうに思います。
それから、このランキングの大きな問題の一つは、論文の評価も英語の論文だけしか評価していないことですね。比較的、理工系だったら英語で論文を書く習慣がありますけれども、特に人文
社会科学系は、別に英語で書かなくても困らない分野が多いわけですから、そんなに英語論文ばかり書いているわけじゃありません。
例えば、私は
大学院で
教育政策を専攻していたんですけれども、自分のある程度わかっている
教育分野だけでいうと、例えば、
日本の
大学の
先生、国語の教授法の専門の
先生が英語の論文を書くかというと、書く必要は全くないんですね。恐らく、多くの
日本の
教育学部の
先生方は、そんなに英語で論文を書かなきゃいけない
ニーズもなければ動機もないんだと思います。
だけれども、当然、英語圏の
大学の
教育学の
先生たちはみんな英語で論文を書くわけですから、英語の論文数だけで比べたら、
日本の
大学は圧倒的に不利になります。これは
日本だけじゃなくて、フランスとかロシアとかドイツとか、母国語で
大学教育を受けられる国の
大学の
先生は、みんな不利な立場にあると思います。
実際、フランスとかドイツとかロシアとかを見ていると、あの国力とあれだけ発展した
科学技術の水準を考えると、もうちょっと
大学ランキングの上に来てもいいはずの
大学がそんなに評価されていないという実態もあります。
そういった
意味でも、イギリスによるイギリスのための世界
大学ランキングであり、英語圏に圧倒的に有利なランキング、これを
日本の
大学の評価に当てはめるのが本当にいいのかということを考えてしまいます。
それから、イギリスが仕掛けた
大学のグローバル化。イギリスは
大学を輸出産業と捉えています。まず、留
学生が落としてくれるお金、それから、イギリスで学んだ留
学生は、大体イギリスに好意的になって帰ってくれますから、そういった国家戦略として、イギリスの
大学をプロモーションするためのランキングにすぎないと思います。
そういった
意味では、こういう英語圏の
大学に非常に偏ったランキングを使うことは問題じゃないか。その点について
文科省の認識を伺いたいと思います。