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2020-03-10 第201回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和二年三月十日(火曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  三月九日     辞任         補欠選任      石井 正弘君     三浦  靖君      太田 房江君     長峯  誠君      高階恵美子君     岩本 剛人君      矢田わか子君     芳賀 道也君      秋野 公造君     里見 隆治君      下野 六太君     伊藤 孝江君      清水 貴之君     片山 大介君      柴田  巧君     石井 苗子君      田村 智子君     小池  晃君  三月十日     辞任         補欠選任      朝日健太郎君     本田 顕子君      佐藤 正久君     山下 雄平君      武見 敬三君     宮崎 雅夫君      中西  哲君     羽生田 俊君      山田  宏君     島村  大君      木戸口英司君     徳永 エリ君      武田 良介君     倉林 明子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         金子原二郎君     理 事                 石井 準一君                 福岡 資麿君                 三宅 伸吾君                 山田 修路君                 森 ゆうこ君                 蓮   舫君                 浜田 昌良君                 浅田  均君                 山添  拓君     委 員                 青山 繁晴君                 岩本 剛人君                 小川 克巳君                 小野田紀美君                 こやり隆史君                 古賀友一郎君                 佐藤 正久君                 島村  大君                 高橋はるみ君                 滝沢  求君                 中西  哲君                 長峯  誠君                 羽生田 俊君                 本田 顕子君                 松川 るい君                 三浦  靖君                 宮崎 雅夫君                 元榮太一郎君                 山下 雄平君                 山田  宏君                 有田 芳生君                 伊藤 孝恵君                 石川 大我君                 石橋 通宏君                 塩村あやか君                 杉尾 秀哉君                 田村 まみ君                 徳永 エリ君                 芳賀 道也君                 福島みずほ君                 伊藤 孝江君                 里見 隆治君                 高瀬 弘美君                 竹谷とし子君                 石井 苗子君                 片山 大介君                 倉林 明子君                 小池  晃君    事務局側        常任委員会専門        員        藤井 亮二君    公述人        独立行政法人地        域医療機能推進        機構理事長    尾身  茂君        特定営利活動        法人医療ガバナ        ンス研究所理事        長        上  昌広君        株式会社第一生        命経済研究所経        済調査部首席エ        コノミスト    熊野 英生君        全国労働組合総        連合事務局長   野村 幸裕君        恵泉女学園大学        学長       大日向雅美君        国際政治学者   三浦 瑠麗君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○令和二年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○令和二年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○令和二年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     ─────────────
  2. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、令和二年度一般会計予算令和二年度特別会計予算及び令和二年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、令和二年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構です。  それでは、公衆衛生新型コロナウイルス対応について、公述人独立行政法人地域医療機能推進機構理事長尾身茂君及び特定営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長上昌広君から順次御意見を伺います。  まず、尾身公述人お願いいたします。尾身公述人。よろしくお願いします。
  3. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 御紹介にあずかりました尾身です。よろしくお願いいたします。  本日は、まず六つの点について述べさせていただきたいと思います。  一点目は、これからどんな戦略基本戦略でやったらよいかという点であります。  基本的には、私は、社会経済機能への影響を最小限にして、感染拡大努力効果を最大限にするというバランスの取れた方法でやることがよいと思っております。そういう中で、言わば三本柱というものが大事だと思います。  第一の柱は、いわゆる、もう皆さん御承知だと思いますけど、クラスターサーベイランスによる早期発見早期対応ということで、クラスターを早く見付けて、言葉は悪いですけど、クラスターを潰すということであります。それから、しっかりした医療供給体制を充実強化して、感染者早期診断を通して重症化を防ぐという医療体制のことであります。三番目の柱が我々市民一般行動変容という、この三本柱だと思います。  日本状況は、この戦略を強化することにより感染拡大スピードを抑えられる可能性もあります。したがって、この三つ戦略については、これからも維持だけじゃなくて強化をしていくべきだと思います。  二点目でございますが、現在の国内感染状況をどう考えているかということであります。  現時点においては、感染者の数は増加傾向にあります。また、もう既によくテレビなんかでも言われているように、狭い空間に多くの人が集まる、一定条件を満たす場所においてのクラスター感染全国で相次いで報告されていることがあります。  しかし、全体で見れば、三つの点が指摘できると思うんですけれども、まず一点目、これまで国内感染が確認された方のうち、重症軽症にかかわらず、約八〇%の人はほかの人に感染をさせていないということであります。それから、二番目は、実効生産数ということで、感染流行中に一人の人がどれだけの二次感染をさせるか、五人させるのか、一人かなどという実効生産数は、もちろん日によって変動はありますが、今のところ、おおむね一程度推移をしています。これが二点目であります。  それから、三点目は、関係者のもうこれは夜に日を継いでの努力で、いわゆるクラスターの発生がどういう形で起きているかということをリンクが追えている例も出てきている。もちろんリンクが追えない例もあるんですけど、リンクの追えている、追えてきている例が出てきているということで、こういうことで、一応は諸外国と比べ、急激なペースで感染者増加している諸外国と比べ、感染者増加スピードをある程度抑えることができているんだと思います。  しかし、私ども、私自身も二月の二十四日に申し上げましたけれども、これからの一、二週間が急速に拡大に進むか終息できるかの瀬戸際というふうに申し上げましたけれども、以上の状況を踏まえると、本日、今日時点での日本状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、もちろん感染拡大はあるんですけど、一定程度持ちこたえているのではないかと考えます。しかし、感染者数はこれからも当面増加傾向が続くと予想されます。したがって、依然として警戒を緩めることはできない状況であると考えております。  三点目でありますが、重症化についてであります。  もう既に中国からの二月二十日の報告でもありますように、中国では、感染が確認された症状のある人の八〇%が軽症、一三・八%が重症、それから六・一%が重篤となっています。広東省からの報告では、重症者百二十五名のうち、軽快し退院した者が二六・四%、重症者百二十五名のうち、軽快し退院した者が二六・四%、状態が回復しつつある者が四六・四%ということになっています。  さて、我が国の状況では、既に感染が確認された症状のある人三百六十六例のうち、既に五十五例、一五%は既に軽快し退院しております。しかし、これは三百六十六人の経過が全て分かっておるわけではありませんので、私自身は、この一五%という数はこれからも増加するものと思っております。今の段階で一五%ですけど、もっと多くのパーセントの人が軽快するのではないかと思います。  日本では死亡者数は大きく増えていません。このことは、限られた医療資源の中であっても、日本医師が、これは現場医師が一生懸命努力していただいているおかげで、重症化しそうな患者さんの、全てではないですけれども、多くを検出し、適切な治療をできているという、日本医療の質の高さをある意味では示唆していると考えられます。  今後も死亡者数増加を抑えるためには、先ほど冒頭で申し上げましたように、日本医療体制を更に、今のままでは感染拡大に備えられませんので、更に強化する必要があると思っております。  四番目でありますけれども、二月の二十八日だったと思いますけれども北海道緊急事態宣言を知事のリーダーシップで出されたと思いますけど、そのことについてであります。  このコロナ感染症は、感染から発病に要する潜伏期間平均値が五日であり、さらに、発病から報告までに要する平均時間は約八日であることが知られており、我々が今日見ている、今日現在見ているデータはその約二週間前の新規状況を捉えたものであるというタイムラグがございます。そのため、北海道対策については、北海道での緊急事態宣言から少なくとも約二週間後からでなければその効果を判定することが、推定することが困難であります。  その後、さらに、幾つかの指標ですね、インディケーターと申しますけど、を三つ、我々は今、私は考えております。それは、一つ新規感染者推移、それから二番目は先ほど申しました実効の再生産数、一人がどれだけ感染をさせるか、それから感染源リンクですね、感染リンクが明確になっている患者さんの数、この三つ指標を用いて約一週間程度を掛けてその対策効果判断できると思いまして、そうすると、大体私は三月の十九日ぐらいになると今までのいろんな対策効果が判定できるというふうに思っています。  さて、五番目ですけれども、五番目はこれからの見通しということであります。  先週まで報告が少なかった諸外国において患者数が急増しています。皆さん御存じのとおりです。アジアにおいても感染が、数が増えている。ヨーロッパアメリカでも感染者数が急増しています。全ての感染源、あるいは感染状況、あるいはリンクが追えているわけではないので、感染拡大が既に日本各地で起きている可能性もあると思います。  よって、今回、国内での流行を一旦抑制できたとしても、しばらくはいつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれます。また、世界的な流行が進展していることから、国外国外から感染が持ち込まれる事例も今後繰り返されるものと予想されます。  さらに、中長期的な見通しということでは、国内に目を転じますと、各県、あるいは都道府県が一様に感染拡大あるいは終息のレベルが行われるということはほとんどないと思いまして、各地域によって感染レベルが少しずつ異なってくると思いますので、その状況によって各地域が適切な対応を取ることが求められると思います。  これから、私が、これからその長期の見通しの中で我々オールジャパンとしてやるべきことは四つあると思います。四つあると思います。  一つは、クラスターチーム、これはもう厚生省にクラスター班がありますし、それよりももっと多くの保健所関係の人、自治体の人が、これはクラスターサーベイランスというか、クラスターが起きたときのその接触者の追跡とか、これに対してかなりの能力とエネルギーを使って、ある意味では関係者は夜に日を継いでいるので疲弊をしている状況があります。これは間違いなく事実でありますので、私は、このクラスターチームの、これでクラスター早期発見して、クラスター感染の輪、連鎖を早く摘むということですけれども、この対応が長期間にわたって持続できる体制の急務、人の補充あるいは財政的な補充、これが非常に必要だと思います。  二番目は、保健所については、やはりもう保健所の職員は今もう目いっぱいになっておりますので、労務負担を軽減すべく、帰国者相談帰国者接触者相談センター機能については保健所以外の担い手を求めるなど、早急に人的、財政的支援を講ずるべきだと思います。  それから、三番目ですけれども、このコロナとの闘いの主要な戦力は現場であります。現場でありますので、地域公共団体保健所広域での連携ですね、広域、時には県の枠を超えての、あるいは市町村の枠を超えての広域での連携とそれから情報共有が極めて重要であります。どういうリンクがあったのか、追えなかったのかという情報をすぐに、今もやっていただいていますけど、更に迅速な情報共有が必要だと思います。  四番目、最後ですけれども、これから感染の更なる拡大が起こる可能性が否定できないわけですから、それに準備するためには、医療提供体制、今のままではもう既に感染者でいっぱいになってしまいますので、この状況対応するためには、一般対応する一般医療機関診療所を選定し、全ての診療所でやれば院内感染を起こして患者さんに感染がいくだけじゃなくて医療者感染を起こすということもあり得るので、ここは私は、この感染治療診断に当たる医療機関診療所を早く選定して、その選定したところにはいろんな支援、財政的、あるいは医療器具、マスク、そういうものをしっかりと供給する必要があると思います。  最後になりますが、一般の我々市民そして事業者に対するお願いということであります。  もう既に何度も私どもも申し上げているように、集団感染しやすい場所というのが大体分かってきまして、三つのことが、三つ条件が合うというか、三つ条件が全て満たされるところが感染リスクが非常に強い。一つ目条件というのは換気の悪い密閉空間であること、これが一つ目条件換気の悪い密閉空間、それから二番目、多くの人が密集しているということ、それから三番目は近距離、互いの手や腕を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる場所ということ、この三つが合ったところが非常に感染リスクが高いので、そうした場所にできれば行かないでいただきたいというのが、私どもの、一般の我々へのメッセージであります。  最後になりますが、事業者の方へのお願いということで、もう既に国からも、あるいは我々からも、リモートワークテレワークオンライン会議、あるいは時差出勤なんかをお願いしていますが、その上で、さらに、各事業者がどのような対策を取っておられるか、是非積極的に市民情報共有をしていただければと思います。そのことが市民にとって施設や各種サービス等の利用しやすさの判断につながると考えていますので、どうぞよろしくお願いします。  以上であります。ありがとうございました。
  4. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  次に、上公述人お願いいたします。上公述人
  5. 上昌広

    公述人上昌広君) 私は、上といいます。内科の医者です。  元々は、血液内科、白血病の治療をしていました。二〇〇一年から五年まで国立がんセンターでやっておりました。その後、御縁があって、二〇〇五年から二〇一六年まで東京大学医科学研究所研究診療をしておりました。現在も診療しております。  今日、先生方にお話しするのは、この問題に様々な見方があると。私は医師研究者でもあります。様々な見方を、皆様に様々な視点を御提供して政治判断にお役立ていただけたらと考えています。  今日、資料を配付いたしました。一ページ目です。  現在、渡航禁止世界各地でやられています。是非お考えいただきたいのは、この問題、ウイルスって世界中蔓延するんですね。日本だけエイエイオーってやっても、海外で様々なやり方があり、様々な形でコンセンサスが簡単にできるんです。  例えば、これは最近、サイエンスという雑誌があります。アメリカ科学誌です。今回の場合、医学誌アメリカニューイングランドという医学誌イギリスランセットという医学誌科学誌アメリカサイエンスイギリスネイチャー、この四つの影響力というのは絶大なんですね。実は、WHOより、我々研究者にしてみればここがコンセンサスなんです。ここのエディターというのが最も影響力がある一人なんですね。  サイエンスの三月号にどう載せたか。アメリカのボストンの大学からです。武漢閉鎖、彼らはシミュレーションの結果、発表したんですね。まあ余り効果なかったよと、三日から五日遅らせただけだと、なぜなら周辺に伝播していたから。一方、ヨーロッパなどはすごく患者さん減ったよと、八〇%も減った、なぜなら伝播していなかったから。  そうしましたら、現在、日本が取るべき対策は、日本ヨーロッパとみなすのか、中国の都市とみなすのか。これはいろんなお立場あります。  もう一つ、彼らは、効果を持続させるためには、九〇%の移動制限を続けて、さらに、コミュニティーの中で、要するに地域の中で感染者を半分以下に減らし続けろと、これをずっとやれば効果は持続できますよと報告しているんですね。恐らく、これ、アメリカだろうが日本だろうが一緒でしょう。これが科学的な現在のコンセンサスです。  私たちは科学的な事実を申し上げます、先生方は、政治判断、トータルの判断をなさいますから、これが一つ世界コンセンサスとお考えください。  渡航禁止というのは有効性はある程度証明されています。余談なんですが、どういうのをエビデンスと言うかと。九・一一のテロの後にアメリカではインフルエンザがはやらなかったんですよ。あれ、渡航禁止が起こったのと同じなんですね。この渡航禁止というのは状況によって大いに変わるんだと。臨機応変に対応をしなければいけなくなります。  二ページ目です。  私は、渡航禁止に少し戻りますと、ここまで日本が厳しくしてこなかったのは、医学的な判断としては極めて妥当だったと考えています。経済的判断や政治的にはまた別です。  イベントの自粛、これ、私、大分調べたんですが、医学的なエビデンスはございませんでした。そもそも論文がなかったです。学級閉鎖はもう山ほどありました。学級閉鎖をすることで感染症の蔓延を抑制する、何割か下げるというのはもう山ほどあって、これはコンセンサスです。今、相撲をやめている、野球をやめているということについては医学的なエビデンスはありません。だからやるなと言っているわけでは毛頭ありません。先生方の政治的な御判断です。  三ページ目へ参りますと、ここが実は難しいんですね。この病気は、怖いと思う人と大したことない、意見が真っ二つです。恐らく、両方の御意見をお聞きになっていると思います。よって立つデータはどこにあるのか。実は、死亡者の大部分が中国なんです。さらに湖北省、さらに武漢市なんです。  中国は、今回、かなり徹底的にデータを出しています。ネイチャーや、ニューイングランド医学誌ランセットのような、英米のメディア、医学誌に発表しています。これ大したものなんですよ。なぜなら、プロプロが見て、おまえおかしいだろうと言われる、それに堪えるデータなので私は信頼しています。  この図は、中国のCDCが作った年齢別死亡率です。すごいですね、八十歳代以上は感染したら一〇%以上亡くなるんです。私も医師となって約三十年弱ですが、こんな病気は診察したことがありません。怖いです。多分、世界では、エボラ出血熱とかそういう類いのちょっと弱いぐらいだと思います。  でも、我々の感覚とずれるんですね。我々は、研究者として様々なデータを様々な形で分析し直します。私は、湖北省とそれ以外を分けて解析してみました。実は、湖北省以外の死亡率は〇・八%なんです。豊かな地域、北京、上海、まあ浙江省なんかもそうですね。浙江省を見たら、〇・一%なんです。致死率が四%と言われるのと〇・一%、皆さん、受ける印象が違いますよね。  ここからは私の考察です。  なぜ湖北省が駄目だったのか。私は、地域が壊れたからだと考えています。  流行前、この地域は千四百万人の方がおられました。現在、九百万とされています。五百万人減ったんですね。二つの要因があります。春節のときに出かけて戻れなかった人。もう一つは、戒厳令がしかれる前に、午前二時に漏れたと言われているんですが、午前十時までにたしか三十万人が避難しています。  この結果、どうなったか。出ていった人の多くは若い方なんですね。高齢者が孤立するんです。高齢者が孤立すると、容易に健康を害します。この状況先生方見たことありますね。二〇一一年の福島です。  我々は、二〇一一年三月から現在に至るまで、我々のチームで現地で診療を続けています。飯舘村に、二〇一一年五月、健診をしたときには、高血圧、糖尿病うつ傾向、顕著に上がっていました。その年は福島浜通り脳卒中等死亡率が激増しています。高齢者が独居になって一人で閉じこもる、容易に健康を害するんですね。同じようなことが恐らく湖北省で起こったと考えています。  ですから、町の機能を維持することは極めて重要なんです。先生方の御両親、恐らく、家で一人でおられて外に出るなと言われて、簡単に持病悪化するの想像に難くありませんよね。日本をこうさせてはならないんです。これは私たち福島活動を通じた実感です。武漢のことと、とてもよく合います。  次のページ、御覧ください。  私が先生方にアドバイスできるとすれば、あまたあるデータの中で何を信頼すべきか。この病気のキャラクターを把握するためには、一番頼りになるのがクルーズ船データだと思います。なぜなら、軽症患者さんから重症まで、かなり広い範囲にわたって遺伝子検査を行ったからなんです。こんなことをやったのは恐らく世界でここだけです。  この結果、私、やっぱりびっくりしました。乗員乗客三千七百十一人中、六百十九人が感染しました。一七%です。非常に感染力が高いですね。一番驚いたのは、三百十八人が遺伝子診断陽性のときに症状がなかったんです。いや、これですと、今までの患者さんといった人と、それ以外、氷山の一角で、大部分が分からないんですね。感染者数は恐らく科学的には把握できません。この事態を考えますと、偶然見付かった患者さんに対して、余り過度な解釈をなすべきじゃないんですね。  もう一つは、やっぱり日本なんです。死者は七人出ています。このうち、年齢が公開されているのが五人です。全員七十歳代以上、四人が八十代以上、お一人七十代。仮に未公開の二人も七十以上としましても、致死率は最高で二・四%なんです。中国は七十代以上の致死率が一〇%を超えましたね。日本致死率は、恐らく中国データをそのまま使ってはならないんです。幾つか要因があります。もちろん、日本医療機関中国と比べて勝っているのかもしれません。それはもう分かりません。一つ確実に言えるのは、栄養状態がとてもいいんだと思います。昔の七十代と今の七十代、違いますよね。体力が付いているんです。  このデータは、科学的には私が知る限り一番客観的です。致死率二〇%と言うのか、クルーズ船の中でも二%強だったと言うのかは、これは社会に与える影響が全く違ってきます。  最後、このグラフは、世界各国に、横軸に感染者数、縦軸に致死率です。  先ほど御説明しましたように、感染を確定するには遺伝子検査が要ります。PCRという方法を使います。ウイルス感染診断遺伝子検査をしなければできないんです。感染数は、基本的にはPCRをどれだけやったかにかなり依存します。  日本を見ていただきますと、感染者も少なく、致死率も低くもなく高くもなくですね。アメリカは、感染者が極めて少なく、致死率が高いです。これは、重症者だけをやっているということです。現在、アメリカのメディアを見ておりますと、PCRの体制をつくれ、つくれ、つくれ、新しい検査体制をつくれというのがもう毎日出てきています。急速に増やしていくと思います。オーストラリアも同じですね。  一方、コリアを御覧になってください。もう感染者むちゃくちゃ多いんですが、致死率は余り高くないんですね。ここは、世界の中で一か国だけ特別です。極めてたくさんの遺伝子検査をやっておられます。ドライブインなんかでやっておられますね。この仕組みはアメリカも導入を検討していて、シアトルで既に始まりつつあるようです。  日本データは、致死率もある程度高く、一方、感染者が少ない。先ほど申し上げましたように、クルーズ船の中での高齢者致死率中国の十分の一です。私は、恐らくもっと低いと思います。なぜ下がらないのか。遺伝子検査が十分なされていないからなんです。  どうやってこの病気のエグジットをしていくか。病気の姿を正直に社会と共有することなんですね。一部の方はお亡くなりになりますが、多くは恐らく軽い感染症なんでしょう。無症状の方、軽い方、こういう方まできっちり診断をしていかないと、この病気の本当の姿は見えないんです。  今日、先生方に御提示したいデータは以上です。  最後に、これは医学、科学の問題でもあります。  この点に関しては、様々な見方があります。私のところに最近、海外のメディアがたくさんやってきます。何で皆さんいらっしゃるんですかと聞くと、独自の意見を言う研究者、医者というのはほとんどこの国にいないんですと、先生たちの評判が伝わってくると。  科学者は、ノーベル賞学者だろうが大学院生だろうが対等なんです。どの意見が正しいかどうか分かりません。私が申し上げたのも間違っている場合は十分あります。ですけど、議論を積み上げて、やがてコンセンサスになるんですね。ランセットサイエンスは、世界においてコンセンサスです。こういうものとそれぞれの意見とを区別する必要があると思います。  これは、あくまで医学、科学の話。最終的に政治の話。エビデンスがないのをやるべきではない、毛頭思いません。それは先生方のお仕事。ただ、エビデンスがある場合にはその部分を十分御配慮いただければと考えています。  以上です。どうもありがとうございました。
  6. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言をお願いします。
  7. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 自民党の福岡資麿と申します。  尾身先生、上先生、今日は本当にありがとうございました。大変貴重なお話を伺わせていただきました。  これまでの流れをちょっと時系列的に整理いたしますと、二月二十四日に政府の専門家会議がこの一、二週間が瀬戸際というような見解を示された。それの後、二月二十六日に首相が大規模イベントの自粛要請をされて、二月の二十八日に、先ほどもお話ありましたが、北海道知事が緊急事態宣言を行われた。そして、三月二日、首相が全国一律休校を要請したと。大きな話だとそういう流れに今来ているということです。  先ほど尾身先生自身も、例えば北海道についても効果が現れるのはこれからだというようなお話もされておりましたけれども、こうした一連の要請が感染拡大抑制にどういった効果をもたらしたのか、また、こうした要請をいつ解除したらいいのかといったことについても、専門家としての御意見をお二人にお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 尾身茂

    公述人尾身茂君) こうした自粛要請で、例えば学校の閉鎖とかイベントの自粛とか、それからさっき私が申し上げた、人の集まる場所に、まあできれば避けてほしいと。結局、感染症対策、さっき出入国の拒否という、人々の移動のということはありますけど、一番重要なことは、人の移動の自由の制限をするということはその一つの手段であって、一番の目的は感染した人あるいは感染したと思われる人とその以外の人の接触を断つということです。  そういう意味では、人の動きを、さっき言ったような、イベントをする、いろんな、学校閉鎖をする、さっき言った場所を、これをやれば必ず感染は下火になります。これはもう、先ほど上先生が論文のことを言っておりましたけど、全く正しくて、もうスペイン風邪の、一九一〇年頃の、まあ私が何度もこれ言って多くの先生御存じかと思いますけど、フィラデルフィアとセントルイスの対応、これ明らかで、こういうふうに人がなるべく接触しないようにすれば間違いなく新しい感染者は減ります。  そういう中で、今の先生の御質問は、いろんなことが、私ども専門家会議が二月二十四日に、この一、二週がクリティカルということで、その後いろんなことが、今おっしゃった様々な日、ちょっと一日、二日はずれて幾つか御指摘のことがありましたよね。私は、公衆衛生のずっとこういうことを、感染症をやってきた者として、この個別の要素を、それぞれがどれだけ効果があったということを今の時点で評価することはもうほとんどできないですね。したがって、私は、たまたまいろんなことが、これについてはいろんな御意見があるのは私も承知していますけど、こういうことが行われていると。  北海道では一番強い対応がされましたよね。北海道緊急事態宣言を、二十八日ですかね、出して、やりました。そういうことが、同時に、北海道以外の日本全国は、日本人の健康意識の高さというのもあると思いますけれども、かなり要請ベースなんだけど、それよりも、何といいますか、広いというか、強い対応一般の人が持つ、そういうことの結果を分かるのには、今、時間差があるといいますけど、やっぱり潜伏期が八日、五日ぐらいあって、プラス処理をする時間があると、まあ二週間ぐらいはたつということで、私は、まあ大体三月の十九日ぐらいになると。ある程度余裕を持って、それより前になるとまだ、感染がぐっと下がったんだけど次の日に上がっちゃうなんてこともあるから、十分余裕を見ないと、より正確というか適切な判断ができないと思うので、私はそこは三月十九日辺りが極めて重要で、そうすると今よりは、このウイルスの特徴は見えないんです、全てを見えているわけじゃないので、見えている情報から判断するしかないので。そういう意味では、十九日になると、不完全であるけど今よりは分かる。  そういう中で、一体、例えば北海道がなぜ緊急事態宣言をしたかというと、あのまま放っておくと、例のカーブがありましたね、高く行くのと、この高く行く方に入る、入りかけていましたので、そのまま放っておくとずうっと行っちゃう可能性があったので、かなり積極的な強い対応北海道はしたと思う。それによって、何を期待するかというと、まあ期待したことがかなり実行されればですね、これは理論的にあるいは経験的にも全く正しいと思いますけど、これがかなり実行されれば間違いなく急速に落ちます、だらだらと落ちるんじゃなくて。  そういうことが出るのにはまあちょっと時間掛かるので、そうした全国のことと北海道も併せて評価できるのが三月の十九日、びたっというか前後ですけれども、それを基にどの、いろんな要請がありましたね、一番感染リスクが高いのは、もう今回間違いなく、私どもが何回も言っている空間の、狭い空間、それ以外の感染の、小学校なんかもそれに比べたらどうかという話はありますけど、そこは評価をした上で、リスクの低いものと高いものと分けて、当然、解除していくのは低いものから解除していきますよね。というような基本的な、で、どれがというのはまだ今、時期尚早だと思います。基本的には私はそういうふうに考えております。
  9. 上昌広

    公述人上昌広君) 私は、正直分かりません。  二つ理由があります。  一つは、PCR法というのが十分やられていないので、実態としてデータがないので評価しようがないんです。  もう一つは、イベントについては、学級閉鎖についてはもう十分分かっています。ただ、それは、感染集団、もう明らかな感染集団を解除して隔離するということなんですね。町全体をシャットダウンするということは理論的には感染症減らしますが、シャットダウンしても、いや、実はどこどこ行っていたとか、いろんなのが考えられますよね。社会は複雑系ですから、今回の施策が果たして効果があったのかどうか、医学的には評価できないと思います。  もちろん、何度も繰り返しますが、これは政治的にどうこうという話じゃありませんよ。評価をするための仕組みも今整っていませんし、それから、過去の学級閉鎖を町のシャットダウンすることに演繹するのはかなり無理があると思います。
  10. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 ありがとうございました。  今様々な御意見聞かせていただきまして、特に学級の一斉休校についてお伺いをさせていただきたいと思います。  この委員会でも様々議論がありました。それは社会に与えるいろいろなインパクトが大変大きいということがあると思いますが、是非お二人に聞きたいのは、この学校の一斉休校が感染症対策上のどれぐらいの効果があると思われるのかといったことについて、特に上公述人については、先ほど、これは学級閉鎖は国際的なコンセンサスもあるみたいなお話もされていましたから、この一斉休校、このことについてどうお考えかということについて、お考えをお聞かせください。
  11. 上昌広

    公述人上昌広君) この点に関しても正直分からない部分があるんです。  一つは、クラスではやっている場合は休校することが有効です。ところが、今回は、はやっている、はやっていない、一律に休校しました。そのようなものが果たして本当に効果が出るのか、これについては分かりません。  今回の施策について科学的にどうであるかということは、我々の立場から申し上げることはできません。
  12. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 今回のコロナをよりよく分かるのは、一つはSARSとの比較と、もう一つは新型インフルエンザとの比較ですけど、あの新型インフルエンザ、二〇〇九年のインフルエンザは、日本死亡率はもう圧倒的に、もう桁が違うぐらい世界で低かったんです。  そこの要因はいろいろありますが、私は三つの要因があったと思いますけど、一つの要因は、あそこ、あの場合は兵庫と大阪で最初に感染がいきましたね。そこで、二つの県で、感染が始まってからですよ、始まる前にでなく、感染がいったといって、しかも、あのときの感染拡大のドライビングフォースは学童ですから、ここで果敢に小学、中学、閉鎖したんですね。しかも、地域をやや広めにいったということが、私は日本の、実はこれは知る人ぞ知るで、WHOはもちろん認識しましたけれども、実はあのときに神戸と大阪でいったので、一度あれは文字どおりあそこで制圧されちゃったんです、あの山は。次からいったのは、またあれメキシコとかいろんなところにいきましたから、もうこれは疫学、分子生物学的に分かっていますので、そこまでいったんですね。そういう意味で、新型の二〇〇九年のときには、間違いなくそれは学童が主なドライビングフォースだったからです。  今回の場合には、もちろん、今のところは、今のところの北海道で我々説明しましたけれども、比較的若い層が知らない間に感染、自分は症状がほとんど出ないので分からない。で、活動が活発ですから、それで若い人の間で拡大して、そのうち、たまたま時間差があって、特に地方の北海道では、地方の、いって、高齢者、で、高齢者になると症状があるからシステムに引っかかってくるわけですよね。  そういうことで、主なドライビングフォースが比較的若いということで、そういう中で、しかし、最近になって、いろんなところの発表が、学童も若い人も感染はするんだと、症状がないということがありますね。それと、先ほどからありましたように、シンガポールなんかでは今回、学校閉鎖しています。  WHOなんかも否定はしていないので、そういう意味では、私は、学童にも感染がいけば、症状は出ないけれども、ほとんど、そういう意味では、私はこれは、今回の判断については、はっきりとは分かりませんけれども、この一、二週間が非常に危機的な、大事な状況ということで、ただ、学校閉鎖は、何も感染がないところにやるよりは、やっぱり地域感染がいっているところにやるというのはこれ当然のことですけど、これは、私の感想は、こういう大きな今の時期、政府としては何とかしたいという、そういう判断があったのではないかというふうに私は思っております。
  13. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 ありがとうございます。  続いて、中国、韓国への検疫強化策に対しての評価をお聞きしたいと思います。  三月五日の新型コロナウイルス感染症対策本部において、中国や韓国全土から本邦への入国者に対する検疫を強化して、検疫所長が指定する場所で二週間待機し、国内における公共交通機関を使用しないことを要請するなどの措置を講ずるということが決められたところでございますが、この点についても、何でこのタイミングなのかとかといったことについて様々な御議論があったところだというふうに承知しています。  感染症の専門家から見て、このタイミングのこの措置についてどうお考えかについて、お二人からお聞かせいただきたいと思います。
  14. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 私は、このウイルスについて全てが分かっているわけではないので、全てについてクリアな判断をすることはできないんですが、ただし、私なんかの立場上、今限られた情報の中であなたたちはどう考えるのかというのを言うのが我々の責任だと思っていますので、一〇〇%の情報はないけれども、そういうことでありますので、いろんなことについて私は意見を申し上げています、自分は。  ただ、ここのことは、今の入国制限のことは、実はもう今、中国、韓国以外にも、このところ、もう名前は申し上げませんけど、アジアの隣国でもかなり感染は広がっています。これは、もちろん、報告がないということは感染がないということを意味はしませんので、実は感染があっても報告がされないということは様々な理由であるのは先生方御承知だと思うんですけど、そういう国がある。と同時に、欧米のヨーロッパアメリカでも、まだこれも一部しかピックアップしていないと思いますけど、感染拡大しているという中で、そういう意味では、純粋にですね、純粋に感染拡大防止という、純粋というか、公衆衛生学的あるいは感染症予防の観点だけからいえば、これは全部の国から人々の入ってくるのを防ぐことがいいですね、日本のためには。  そうすると、これ、今、ほとんど世界中に感染が広がっている状況になって、全ての国からストップすると。これは、言ってみれば、例えはやや比喩的な、言わば鎖国状態に近いということになりますよね。このことの社会経済への影響を考えると、これについて、この問題に関して、ほかのことは私ども意見をある程度判断。このことを実は我々専門家委員会の中でも、もちろんメンバーの間では議論していますけど、はっきり申し上げて、これについては様々な意見があって、コンセンサスが今のところありません。  これは今、実は、一方で、国内が大事だということで、今、クラスターサーベイ、これを今からやろうとしていて、このとき、そういう文脈の中で、鎖国をしてまでやるのか、あるいは中国、韓国だけでいいのか、このことに対する、この質問だけは私も正直言ってはっきりした自分の考えを述べることはできませんが、ただ、重要なことであるので、またこれから数日、ない頭を絞って考えたいと思っています。
  15. 上昌広

    公述人上昌広君) 私は、現時点でやるのはエビデンスには反すると思っています。  冒頭の資料で御説明しましたが、一定程度の蔓延している場合には封鎖をしても効果は限定的だからです。
  16. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 今日、様々いただいた御意見をしっかり踏まえて、今後のこの予算委員会の審議に役立てていきたいというふうに思っております。  以上で終わります。
  17. 塩村あやか

    塩村あやか君 立憲民主党の塩村あやかです。今日はよろしくお願いいたします。  感染症拡大などの非常時には専門家の意見が大切だというふうに思います。今回は、総理の大きな判断について、疫学的な根拠、そして科学的な根拠があるのかについて公述人のお二人にお伺いをしたいと思っています。  まず、全国の一斉休校についてお伺いをいたします。  安倍総理は、二月二十七日、唐突に全国の学校へ春休みまでの一斉の休校を要請いたしました。子供を感染から守るための措置として理解を示す声がある一方、共働き世帯の子供はどこで過ごすのか、余った給食用の食材はどうするのかなど、突然の発表に現場は大混乱を招いています。また、共働きの家庭、父子・母子家庭は仕事を休まなくてはいけないなど、こうした親に対する休業の補償等、国民生活が大きく混乱をしていると、今こういう状況にあるというふうに思っています。  経緯を少し振り返ってみますと、二月二十五日、加藤厚労大臣からは、イベント等については主催者や自治体の自主性によるとのことでしたが、翌二十六日に総理は、大規模イベントの二週間の自粛の呼びかけがありまして、そして二十七日に一斉休校の要請がありました。これ、少し思うんですけれども戦略を持って本当に臨機応変に対応しているのかというところが少し疑問が残るところではあります。  この間、全国一斉休校の要請に対して専門家会議では提言をしていないと、同じ専門家会議の岡部先生はそのようにおっしゃっています。  そこで、まず上公述人にお伺いをいたします。この全国の一斉休校は科学的な根拠と合理性があるのか、お伺いをいたします。
  18. 上昌広

    公述人上昌広君) 先ほども申し上げましたが、医学的には根拠はないと思います。  ただ、それによって今回の決定がいけなかったかとは私は思っていません。根拠がないことを判断するのが政治のお仕事ですから、一定程度の合理性はあったと思います。
  19. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  一定程度の合理性はあったけれども、科学的な根拠に基づいた判断とは言いにくいということでよろしいでしょうか。
  20. 上昌広

    公述人上昌広君) 純粋な医学的には根拠がないんです。根拠がないものは医学の世界に山ほどあります。分からないんです。  ただ、パニックに対する問題、国民の理解、様々な判断を経て総合的に判断なさるのが先生方のお仕事ですから、その点については私はそんなに変な話ではなかったと思っています。
  21. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  そこで、もう一点お伺いしたいんですけれども、一斉休校を春休みまでと決めたことに対するちょっと疑問があります。ここについての疫学的とか、そして科学的な根拠があればお伺いをしたいと思います。
  22. 上昌広

    公述人上昌広君) 私は知りません。
  23. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  じゃ、尾身公述人にもお伺いしたいと思います。
  24. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 今の学校閉鎖については、今先生の御質問、先ほども言いましたけれども、これは新型インフルエンザのときは効いたんですね、はっきり。今回の場合には、もう繰り返しになりますけど、ドライビングフォースが今のところは小学生ではない、しかし、どうも感染は若い小学生でもしているということで、そうすると、その人たち感染を広げるという可能性はあるというようなことが後から分かってきたんで、私は、政治的な判断について私たち判断する立場にありませんけど、しかも、シンガポールなんかがやっていることを考えると、効果がないとはもう言えないんですね。  どれだけあるかは分からないんで、先ほど申し上げましたのは、三月十九日ぐらいになったら全体を評価したらいいと思うんですけど、それは学校閉鎖効果かどうかは分からないですけど、そういう中では、ただ、今までの、今言ったように、小学生なんかでも感染をしているということ、シンガポールでなんかもやっているということを考えれば、しかも、総理なんかはやっぱり今何とかしたいという気持ちがおありでしょうから、ただ、今働いているお母さんなんかに対するケアというのは私は当然やった方がいいと思いますけど、ある程度そういうふうにした気持ちというか判断はよく、一応理解はできるという気はします。
  25. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  やはり公述人の話を伺っておりましても、疫学的とか科学的な根拠というところにはまだはっきりとは言えないというところはあるけれども、合理的な部分でいえば、効果はないことはないんであろうというふうに理解をいたしました。  そこで、続けてお伺いをしたいんですけれども全国一律でよかったのかどうか、ここについても多くの声が私の下にも寄せられています。  私は地方の出身ですので、山間部とかちょっとした郊外の方では全然まだそういう症状も出ていないと。ただ、テレビを見てみれば怖いという声もたくさんあるんですけれども、正直全国一律というやり方がよかったのかどうか。  例えばお隣の台湾なんかは、クラスで一人感染がインフルエンザだった、あっ、今回の件ですね、ごめんなさい、クラスで一人出ればクラスを閉鎖して、二人出れば学年閉鎖をしてというような段階を踏んでいたと思うんですね。今回、日本はそのような段階を踏むことなく全国一律でやったと。それは確かにやらないよりはやった方がいいとは思うんですけれども、きちんと戦略を持って段階を踏んでやったところの方が実は効果が上がっているんじゃないかなという指摘もございます。  これについて公述人の方から御意見があればお伺いをしたいと思います。
  26. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 先生おっしゃるように、運用については、実際にどこでやるのかは、やっぱり地域感染が出てきたところから始めるというのは、その運用上やるのは、私はある意味では、実際に自治体等々はそういう形でやられて、そこが日本の強さというか、そういうことで、医療現場もそうですけど、これ、日本人の知恵がうまく働いてやっているんじゃないかと私は思います。
  27. 上昌広

    公述人上昌広君) トレードオフの関係があります。流行している教室、学校を閉じるともちろん感染症は減ります。これは公知です。一方、全く流行していないところを閉じても何の効果もありません。デメリットは、子供の教育を受ける権利、あるいはお母さんたちの負担を増やすことなんですね。トレードオフです。全国一律にやると、もちろんデメリットは必ず全部に出ますので、効果が薄れてデメリットが大きくなります。よって、余り勧められる方法ではありません。
  28. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  やはりそうした視点は大変重要だというふうに思います。全国一律でやってしまうと、本当にデメリットの方が大きくなる場面もあります。きちんと効果的に政策を打っていくということが今のお話から分かったというふうに思います。  もう一点だけちょっと確認をさせてください。  若い方、今回、学校閉鎖をしたようなところには、なかなか、何というんですかね、どんどんと感染拡大していくというふうな話があったんですけれども、一方で、上先生の資料を見てみますと、中国のこれは調査なんですが、致死率は非常に低いということはあります。致死率は低いというところはあるんですけれども感染率といいますか、どれぐらい本当に学童の皆さん感染力があるのか。確かにインフルエンザはかなりあると思いますが、今回のコロナウイルスが本当に、今回、小学校、中学校の方々感染をしているのかというような科学的な根拠とかエビデンスというのが今あるんでしょうか。
  29. 上昌広

    公述人上昌広君) 最近の研究で、感染自身は大人も子供も変わらないと出ています。子供同士でもうつし合っていると思います。
  30. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  じゃ、致死率に大きな差が出ているという認識でよろしいでしょうか。
  31. 上昌広

    公述人上昌広君) はい。致死率は子供は圧倒的に低いです。高齢者が高いです。
  32. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  じゃ、今、年齢の話が出ましたので、もう一度お伺いしたいんですけれども、こうした年齢等も考慮してどのような施策を打っていくべきだと考えられますでしょうか。両公述人にお聞きしたいと思います。
  33. 尾身茂

    公述人尾身茂君) それはもう感染拡大を抑えるためには、今流行しているのを早く少しずつ感染リンクを分かって飛び火しないという、先ほど言ったクラスターのことですよね、それが感染スピード拡大の。  もう一つは、医療現場が、この感染というか、肺炎、コロナ肺炎みたいのようなものが症状が出て重症化すると。重症化してから治療しても遅いのです。肺炎を起こす可能性があるという人を早くピックアップして治療。その重症化する人は、どうしても高齢になればなるほど多いので、そういう意味では医療体制をしっかりと。患者さんは、感染者は多いので、ただ心配だというような人が医療現場に行って、まだほとんど症状がない人が医療現場に行くともう医療は崩壊しますので、そこはやっぱりある程度基準を作って、症状がある程度出て、このままほっておくと危ないとなるのを早めにちゃんと診断をして、PCRをして重症化することを防ぐということで。これが一番大事で、そのためには、今のままだと医療機関はパンクしますから、間違いなく。  もう既にクルーズ船のことがあって、感染症指定病院は、今回、非常に不幸な出来事だったですよね、あの中の人にとっても。これでもういわゆる二千ぐらいある感染症のベッドはほとんどいっぱいになっちゃっていますので、早く一般診療機関、ただ、一般診療機関、クリニック、全てやれば、全ての医療機関クラスター化するから、ここははっきりと、私の個人的な意見は、はっきりと選別するということが重要で、そのためには、もう今から、そこの選別されたところは早く、これは国が予算を、政治家の先生、今度予算を付けていただけると思いますけど、そこに物品と人的と財政的な。  もうこれ、私は口を酸っぱく言いたいんですけど、感染症の闘いは現場で起こっていますから、現場の今クラスターチームはもう疲弊していますから、ここにどれだけサポートをするかということと、こっちはやや行政の方ですね、保健所なんかは。こっちは医療現場ですから、医師会の先生なんかにも協力をいただいて。もうそういうこと、これが極めて重要。ここの二つの柱を非常に強くして、と同時に、先ほどの、我々一般市民もできるだけ、できることをやるという、この三本柱が大事だと思います。
  34. 上昌広

    公述人上昌広君) 先ほども申し上げましたが、半分の方が無症状なんです。こういう病気を封じ込めるのは極めて難しいと思います。私、個人的には無理だと思っています。  感染者を減らす努力以上に、感染症ですから治れば後遺症はないんですね。死者を減らすべきだと思います。  弱い人は明確に分かっているんです。高齢者なんです。介護施設や老人病院の体制整備です。多くが民間組織です。介護施設の入居者に感染症が出た場合、引取り手がないところは多々ありますよね。職員が一名出たら、閉鎖したら、どうしますか。この問題こそ今皆さんがお考えいただきたいことです。
  35. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  今お話を聞いていて、高齢者の方に配慮をした政策を打っていかなくてはいけないというふうに感じたのと同時に、これまで日本はSARS、MERSなど様々な経験があったにもかかわらず、感染症に対する対応ができていないんじゃないかなというふうにも思いましたので、この点もしっかり注意をしていかなくてはいけないのだというふうに思いました。  次の質問に移る前に、一点なんですけれども、今回、例えば専門家会議の岡部先生などは、そもそも、一日で今回決定をして実行をするほど緊急性が高いものだったのかと、一日で総理が全国で一斉の休校を決定をして実行するほど緊急性の高いウイルスなのかということだと思うんですけれども、今回のように、事前の準備もなしにいきなり断行すると、そこまでやる必要があるというのは、致死率が五〇%というような、例えばこれはエボラとかだというふうに思うんですけれども、こういうようなときだと。僕は致死率二〇%のSARSでもここまで一気にやるのはおっかないと思うというふうにおっしゃっているんですね。僕は医学の方の専門家ですが、今回の措置は医学的な効果よりも社会的なインパクトの方が大きいというふうに取材で答えておられまして、先ほど、多分、上公述人だったと思うんですけれども、社会的なダメージの方が大きくなるんだというところと一致するんではないかなというふうに感じています。  次に、中国と韓国からの入国制限の強化についてお伺いをしたいと思います。  上公述人にお伺いをしたいと思います。  再度、改めてになるんですけれども、科学的な根拠、疫学的な根拠あるかないか、もう一度よろしくお願いします。
  36. 上昌広

    公述人上昌広君) これは、御紹介しましたサイエンスの論文にもあるように、今閉鎖をしても効果は極めて限定的です。根拠がないと思います。
  37. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  そして、もう一点お伺いしたいんですけれども、水際対策としてやられるということだったんですけれども、今のタイミングでのこの措置というのは水際対策としていかがなものかという御意見もあります。水際対策として有効かどうか、簡潔に両公述人に短くお願いしたいと思います。
  38. 上昌広

    公述人上昌広君) 有効性はほとんど期待できないと思います。
  39. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 有効性については限定的だと思います。あっ、ごめんなさい、効果ですね、効果については限定的だと思います。
  40. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  そして、例えばなんですけれどもヨーロッパとかを見てみれば、イタリアも今感染者数が増えているということですし、そのほかの東南アジアやアメリカなどにも広がっていまして、これ、同じ考え方でいくと、全部やらなく、ないといけないんじゃないかというような御意見も寄せられているところです。これについてどのように考えているか、お願いいたします。
  41. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 先ほど申し上げましたけれども、これは極めて難しい。感染拡大抑制という意味では、全ての、感染している全ての国の入国をという。なぜかというと、もう今中国、韓国以外にも感染が広がっているので、それをやることが今の日本の経済社会、今既に経済のダメージということが言われている、これ現実ですよね。これは医学の問題を超えての現実で、そういう意味で、これについて、私ははっきり言って、どうしたらいいのか、今、先ほども申しましたように効果は全くゼロではないので、ただ、先ほど効果とベネフィットのこと、あるいは社会経済への影響ですね、これがどうなのかは私ども分からないので、少しこれはこれからも勉強をして、なるべく早くこうだというようなものを言えたらいいと思っています。
  42. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございます。  残り一分ですので、最後上公述人にお伺いをしたいと思います。  日本ではPCR検査の数が少ないというお話でした。正しく感染症を捉えてこれから先に生かしていかなくてはいけないとなると、やっぱり正しい情報を得るということが大事だと思います。そうした観点から、PCR検査、今の日本体制、どのように感じているのか、そしてどうするべきなのか、どうすると有効になっていくのか、そしてどうして日本ではPCR検査がほかの国と比べて遅れているのか、是非お願いいたします。
  43. 上昌広

    公述人上昌広君) 最大の問題だと思います。世界でPCR検査がここまでやられていない国は日本だけなんですね。既にイタリアの件数、日本をたしか超えていたはずです。  なぜやられていないのか。私は、厚生労働省と内部組織の国立感染症研究所がコントロールしているせいだと思っています。日本には民間検査会社が百社あり、九百のラボを運営しています。一つ平均二十やるだけで、一日一万八千ができます。やはり情報開示をしっかりして、一つ特定の機関、研究所ですからね、検査会社じゃありません、検査会社は工場みたいにしてやるんです。研究機関に丸投げするというのは大きな問題だと思います。  この手の問題、今、日本でPCR反対論争等が起こっていますが、こんな論争が起こっているのは世界で実は日本だけなんです。アズ・スーン・アズ・ポッシブル、もう至急体制整備であると、今アメリカで毎日のように議論されています。  是非、患者さんの視点に立って、診断しないことには治療ができません。患者さんの視点に立って御議論いただきたいと思います。
  44. 塩村あやか

    塩村あやか君 ありがとうございました。  しっかりと拡充をしていかなければいけないと考えます。
  45. 里見隆治

    里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。  本日は、お二人の公述人先生方尾身先生、そして上先生、本当にありがとうございました。貴重な御意見をいただいて、またこの質疑をしっかり充実をさせて次の審議につなげていきたいと思います。  まず、私から御質問したいのは、高齢者に関わるこの感染拡大をどう防いでいくかという点でございます。  今、私、出身が名古屋、愛知県名古屋市でございますけれども、名古屋市では先週末も、デイサービス、二つのデイサービスの事業所が集団で感染をして、その地域一帯で事業所が複数閉鎖を余儀なくされたという事態がございまして、この高齢者の非常に重篤な状態に結び付く可能性ということを考えても、これをどう防いでいくかということで、まずお二方の先生方から御知見をいただきたいと思います。  上先生からは、高齢者がいかに大変かという資料も御提供をいただいて、その致死率についても御説明をいただきました。こうした高齢者、特に介護施設、また介護事業所におけるこの感染拡大をどう防いでいくかという観点での御示唆を、尾身先生、また上先生から続けていただければと思います。よろしくお願いします。
  46. 尾身茂

    公述人尾身茂君) もちろん、今回も、一番感染して重症化するリスクが高いのが高齢者あるいは基礎疾患を持っている人というのはもうみんな。そういう意味では、老健というか、老人保健施設とか介護施設とか、そういうところになるべく感染が広がらないようにするということが、これは当たり前のことですよね。  それと同時に、やっぱりこのために、例えば今北海道なんかでもいろんなことをお願いしたんだけど、何でもやめろやめろというふうになっちゃうと、これは本当に息が詰まるような、人間というのはやっぱり多少は息を抜く時間も必要ですよね。そういう意味では、はっきりと、ジョギングしたりマラソンしたり散歩したりするのはどうぞということで、そういう意味では、高齢者も、動ける方もおられるし、それから車椅子で行かれる人もいますよね。そういう意味では、何か施設に囲うなんということをすると、今度は精神的な部分も出てきますから。  だから、ウイルスがそういう場所に侵入しないようにするという、これはいろいろ考えられると思うんですけど、それと同時に、中にいる人の心身の健康ですよね、をどう維持していくかという、そっちの方も私は考える必要があって、我々自身も、今専門家会議なんかでも、これについては重要だというので、いずれこれについては深く議論をして、どんなレコメンデーションができるのか今考えようと、メンバーの間では今そういうブレーンストーミングを今始めたところであります。
  47. 上昌広

    公述人上昌広君) とても難しい問題なんですね。これもまたトレードオフなんです。  例えば、感染者が出たら閉鎖するというのがありました。高齢者は住環境を変えると多くが亡くなります。福島県の浜通り地区では、原発事故後、避難中に大勢亡くなりました。単に避難しただけですよ。  現在、感染者が出ると、ある意味強制的に閉鎖しておられますよね。そういう施策が本当にいいのか、検証すべきです。さらに、隔離状態になると、それ自身で持病が悪化するんですね。この点については、私は分かりません。もうトレードオフなんです。  どうするのがいいのか。現場の担当者に裁量を是非与えてやってほしいと思います。職員、私も医師として働くと、がんじがらめなんです。PCRのやり方から何から全部国が決めているんです。私たちは二〇一一年三月から福島でやっていますが、どうやって確立していったかと。現地の所長さん、市長さん、村長さんが独自にやっていって、やがてコンセンサスができたんです。あのときよりも現在の方が規制が厳しく、その結果、有効な方法が分かるまでに時間が掛かる気がします。  この問題の当事者は、介護の職員さんや病院の、中小病院、特に民間病院の方々なんです。そういう方々の声が是非届くような仕組みをつくっていただきたいと思います。
  48. 里見隆治

    里見隆治君 どうもありがとうございます。  また、尾身先生からは、この高齢者対策について、今ブレーンストーミング中であると、また対策打っていくということですので、是非またそれを政策につなげていただけるような御知見いただければというふうに思います。  次に、自治体におけるこの情報提供、公表の在り方について、これもお二方の先生方お願いをしたいと思います。  これは、やはり住民、市民皆さんに御理解をいただいて様々な行動の制約を、御協力をお願いしていくということになりますと、正確に迅速に皆さん情報提供していく必要がある。その点において、今、各自治体見てみますと、ある程度、これは個人情報保護とのバランスになろうかと思いますけれども、そこに配慮しつつ、より広めに情報提供、公開をするという態度で臨んでおられる方もいらっしゃれば、そういう自治体もあれば、一方で、個人情報保護ということを相当気にして、より制約的に情報を公表されると。  それぞれメリット、デメリットあろうかと思いますけれども、こうした情報の発信の方法について、特に住民、市民皆さんに一番近い自治体においてどのようにされるべきか、お二方の先生から、尾身先生、上先生からお願いをしたいと思います。    〔委員長退席、理事三宅伸吾君着席〕
  49. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 個人情報については、もう先生御指摘のように、これ各自治体でかなり差があって、これについてはいろんな現場状況で、より詳しい情報を出すところとやや控えめなところとあると思うんですけど、私自身はそのことは各自治体のいろんな裁量権でやったらいいと思うんですけど。  もっと大事なことは、実はクラスターサーベイをやるときに、感染のどんどん拡大するときに、実は、感染者が出た場合に、自分はクラスターの一部だって申告して出てくるわけじゃないわけですよね。複数の感染者が出てきて、そこが共通の要素があるかどうかというのが、これがクラスターサーベイランスなんですけど、それをやるために、今御承知の、いろんなところでかなり広域にいっていますよね。この類いのことには各自治体あるいは県を超えた連携が必要なので、これについては、私は、もう本当に自治体の方、いろんな方がもう日に夜を継いで頑張っておられるのを、もう十分それを分かっていて感謝しておりますけれども、より連携を強めてより迅速な情報公開があると、より今まで以上に迅速にリンクを追えるということで。  今、日本状況は、私は今は持ちこたえるというふうに昨日申し上げましたけど、なぜ持ちこたえるかと言っていると、やっぱり二つあって、PCRについては私もキャパシティーをもっと早くなることを、高くなることを期待していますけど、それでも何とかしのいでいるのは、日本のお医者さんは肺炎という病気についてかなり知見があるんですね。これについてはかなりピックアップして、肺炎と思ったらやっているのが結構多いんです。そのことは、PCRのキャパシティーが今のままでいいなんということは絶対になくて、もっとやった方がいいと思いますけど、そういうことで、是非連携をしていただいて、早くリンクをやって、感染拡大と同時に、感染者高齢者が多いですから、それについては早く、重症化する前に治療をと。この二つは、柱は別ですけど両方つながっていますから、その努力が今求められていると思います。
  50. 上昌広

    公述人上昌広君) その自治体の流行状況をどう捉えるかなんですね。流行していない地域は、お一人の方を見付けてその方の情報を出すことは、医学的には抑制すると思います、プライバシーの問題は別にしまして。ただ、ある程度流行している場合は、お一人見付けても無駄です。今日冒頭に御紹介したそのサイエンスの論文とまさに一緒で、蔓延していなければ有効ですが、していれば効果はありません。その地域をどう考えるかです。そのためには、広くPCR検査をしていないと分からないんです。尾身先生のおっしゃるクラスター、確かに重要な視点ですが、一方、もし蔓延していると、一人見付けて周囲を芋づる式にやれば、あたかもクラスターに見える可能性もあるんですね。  科学というのは様々な見方で議論をいたします。このウイルスは、中国では去年の十二月に既にヒト・ヒト感染しています。日本対策を講じたのは一月二十三だったか四なんです。一か月以上ノーガードです。これは仕方ないんです、分からないので。その間、一千万人以上が中国から日本に入っています。武漢だけでも恐らく十万単位で入っていると思います。二月五日には、既にタイ人の夫婦が日本に旅行し、帰国時に両方とも陽性です。感染源不明です。一例感染源不明が出ると、ある程度流行していると考えられます。現にアメリカは今回そういう対応を取りました。  ですので、日本の都市、特に中国との交流が大きい都市はある程度蔓延していると考えてもおかしくありません。地域地域の実情に合わせて、きめ細かい対応を取る必要があると考えています。
  51. 里見隆治

    里見隆治君 どうもありがとうございます。  次に、これから国会でも審議が始まります新型インフルエンザ対策特措法との関連で御質問したいと思います。  平成二十四年、このまさに法律を制定したときに、内閣委員会で、当時、尾身先生にやはり参考人として内閣委員会にお越しをいただいて、我が党の浜田理事、予算委員会の理事も当時委員としてちょうど先生に御質問されておりましたので、その議事録を拝見しておりました。  その際に、この感染状況レベル、またその感染の力、強さと、それから、それへの政策的対応との関係、これをどういうふうに柔軟に変化させていくかという重要性についての質疑がございました。  そのときの尾身先生の御発言、ここで御紹介をしますと、二十一年、平成二十一年の新型インフルエンザ、これがアメリカで発生したというときに、一番最初は最悪の状況を想定して取った対策、これはかなり強めに対策を打ったということですね、これは妥当だったと思いますという評価をされて。ところが、先生おっしゃるに、今反省すべきことは、その後、それほど強毒でなかったということがだんだんと分かってまいりまして、そのことはみんな認識をしておりましたが、その情報を基に対策レベルを下げるというところにいささか時間が掛かり過ぎたというのが事実でありますと。  まさに、今も全国に一斉に学校休業をお願いをしている、また大規模なイベントを自粛をお願いをしているという中で、これを、これからまだ一定程度感染程度広がっていくだろうという見込みの中で、どこかでは落ちていく、その状況に応じてどういうふうにこの対策の規模感を、レベルを変化させていく、もう非常に厳しい選択を迫られていく、これはまさに未知の部分でもあろうかと思いますけれども、御専門のお立場から、改めて、この現時点においてこの観点どのようにお考えか、まず尾身先生にお話を、また同じ観点で上先生にも御意見をいただければと思います。
  52. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 先生は、インフルエンザの前のときはおっしゃるとおりで、日本の場合、あのときは水際というのにかなり労力を費やした、ところが、だんだん必要なくなって、いろんな様々な理由があったんですけど、これを解除するのに時間が掛かった。  実は、先ほど私は感染症対策の原則ということで、人と人との接触ということを言いましたけど、もう一つ実は感染症対策の原則がございまして、感染がまだ初期の頃で、本当にもう例のグラフの拡大のピークの方にもう行ったときは、もう何をやっても遅いというところが、はっきり言って、まあ社会への影響をどれだけ下げるかみたいなことしかできなくなると思いますけど、このまずは上がり口の初期、この拡大の、ちょうど北海道みたいな感じ、上がり、こういうときに実務の対策は極めて重要で、そこのときは、先ほどサイエンスという話がありましたけれども、やや文学的な表現すれば、やややり過ぎがいいんです、やややり過ぎが。ここのピークになったときやり過ぎしたって社会は混乱するだけですから。  そういう意味では、いろんな、そこの今どういうふうに備えるかという意味では、やっぱり幾つかインディケーターがありますから、それを基になるべく合理的に科学的にやるんですけど、これ本当に私的な対応レベルは、神様だけしか知らないんですね、このウイルスは、文学、やや。なぜかというと、感染の広がりを全て知っているのは神様だけですから。我々は表面に出ているものを見て、それである程度判断をするということで。  そういう意味では、この初期というか、まだ感染がぐっと、今何とか国内で上がる、これ制圧はできませんから、ただ上がることを、ぐっと上がるのを抑える、ある程度終息に向けて低いレベルでやるということは可能なので、この時期にはやや多めがいいんです。少なめやると、これは、まあ私は先生たちと違って政治家のあれじゃないですけど、やや多めにやってもやや少なめにやっても、必ず批判されるんですね。これはもう感染症の歴史全てそうです。  ただ、歴史の判断は、多めにやった方が、これはそのときの批判はされるけど、どっちにしても、だけど多めにやった方が、なぜかというと、小出しにやると後であれを、感染が広がる、多めにやると、ここはやや過大にやれば社会経済への、そういうバランスの問題で、私は、その今のいろんな議論が今政治、国会でやられていることを私も十分知っていますけど、やや、ややですね、多めにするのは、これは今の、これは後になってはなかなか効果がないので、それだけは、これは危機管理の要諦なので、是非このことは申し上げたいと思います。
  53. 上昌広

    公述人上昌広君) これもとても難しいですね。なぜなら、中国から起こっているからなんです。物事がはっきり分かるまでに約一か月強掛かりました。もっと掛かったかもしれません。十一月に起こっていればもっと掛かっているんですね。その間に韓国、中国日本はもう交流をやって、非常に密に交流していますから一定数入っていることが予想されるんです。特にノーガードでしたからね。ノーガードを私、責めていません。仕方ないんです、やりようがないので。そうしますと、現状に応じてやらなきゃしようがないんですね。  今回、中国研究者たちは一か月でこの病気をほぼ解明しました。伝染力はとても強いけど、致死率は若い人に弱く、高齢者に強いと。今、日本がやるべきは、感染症対策ではないと考えています。高齢者の命を守ることです。国民の視点に立った対策だと思うんですね。  医学的エビデンスはとっても大切です。世界でどんどん研究が進み、かなりのことが分かってきています。ところが、その間、そのことを社会が合意形成するまで時間が掛かるんです。どこでも必ず一回パニックが起こるんです。それをどうするか。コミュニケーションなんでしょうね。メディアも政府も、もう全て含めたコミュニケーションだと思います。  ウイルスとの、我々闘っているんです。ウイルスは強権を振りかざしても変わってくれません。変わるべきは我々なんです。この国が特措法という形で強権を強くした方が変わるならそれもありです。独裁国家はそうでしょう。そうじゃないんだったら、これもメリット、デメリットを含め、私は一国民として、先生方に柔軟に対応できるような仕組みをつくっていただきたいと思います。  以上です。
  54. 里見隆治

    里見隆治君 貴重な御意見、また御回答、丁寧にしていただきまして、ありがとうございました。  以上で終わります。
  55. 片山大介

    片山大介君 日本維新の会の片山大介です。今日は、先生、よろしくお願いいたします。  まず、尾身先生にお伺いしたいのが、昨日の夜の発表でした。それで、現状については、今、スピードを抑えている、あとは、爆発的な感染にはなっていない、まあ持ちこたえているという言い方でしたか、されたんですけれども、これはそもそもどういう根拠で、そして何をどう比較してそういう判断になったのか、これについて御説明いただきたいんですが。
  56. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 一つは、このウイルスの特徴なんですけれども、今分かっていることは、五人感染したとしますよね、五人感染してもほかの人に感染させるのは一人だけなんですね。これが、いわゆるインフルエンザのように一人が少しずつ感染させるというのと違って、この人がそういうさっきから言っている感染リスクの高いところに行って、クラスターという、こういう広がり方をしている。多くの人が、四人、八〇%は感染に関与しないということが事実としてある。  それから、これはいろんな数理的な統計を用いて、北海道大学の西浦さんというのは世界的にこれで一番の先進的な研究をしている人ですけど、全てのデータがあるわけじゃないわけですよね。ところが、この分かってきたデータを基に、中国のことも参考にし、日本のことに参考にして、今報告された数と、それから報告されていないものもある程度推計するわけですよね。そういうものを見て、今の一人の感染者がほかにどれだけ、いわゆるRノートといって、実効生産数というのがどんどんどんどん高くなる。これは日本は比較的抑えているんです。今のところ、トータル五人を比較して一ぐらいです、ある、その五人の中の一人はぐっと上がっちゃうんですけど。こういうことで、感染拡大はこのRノートという、これに関係しますので、これが低い、一という、一の辺りで推移しているということで、一・一超えれば増える、一を超えれば下がるということで、こういうことが今大体分かってきている。  それからあとは、今、リンクの追えない、二月の十三日だったと思いますけど、初めてリンクの追えないのがばっと出てきて、複数の県から報告がされたのを先生方も覚えておられると思いますけど、あのときはもうほとんどリンクが追えなくて、ところが、かなりクラスターの、あれでだんだんとリンクが分かってきたんですね。今は、はっきり何週間と分けずに、時系列に言うと、リンクの追えている数が増えてきているんです、かなり。  そういうこともあって、したがって、幾つかの、当然新しい感染者数のことも入れますけど、そういったリンクが追えているのか追えていないのか、あと、再生産数とかということを見ると、今のところは、こんな爆発的、ただし、私がここを申し上げたのは、今の状況は、今日の、我々が判断しているのは二週間前のことを言っているんですから、だから、今のことは二週間後にしか分からないんですね。だから、はっきり現状のことが、これ神様だけですから、誰が今日、ということで、少し時間を置かないとこの北海道緊急事態宣言効果も分からないし。  しかし、じゃ、だけどそうはいっても、じゃ、何も言わないのかというと、今までのことをいろいろ判断すると、今日の時点で爆発的に感染者数が増えているということではないんじゃないか。しかし、それは我々の判断ですけど、それをもう少しちゃんとするには、私、さっきから申し上げている三月十九日頃になると、このデータをちゃんと分析して発表しますので、そうすると、今言っている、しかも、三月十九日と、いろんな要請が、さっき議論している学校閉鎖がどのぐらい効いたのか効かないのか、いろんなことを含めてある程度評価ができるんじゃないかということですが、今の時点では、我々の判断としては、少なくとも爆発的なふうに行っているのではないという判断ですけれども、正確には二週間後に、もう少し、三月十九日に分かるということだと思います。
  57. 片山大介

    片山大介君 上先生は、現状、どのような認識されていらっしゃるでしょうか。
  58. 上昌広

    公述人上昌広君) 私は、PCR検査をきっちりやっていないので分からないと思います。ですから、一つの仮説で現状の判断は原理的にできないと思っています。
  59. 片山大介

    片山大介君 それで、尾身先生今おっしゃったその三月十九日にある程度もう少しきちんとその効果判断すると。これは、北海道緊急事態宣言が出たことに伴って、それに対してということですが、その後に出た大規模イベント、国が出したイベントの自粛だとか、それから一斉休校だとか、これも、じゃ、その三月十九日に合わせてある程度の評価をされる、効果をされるということになるんでしょうか。そういうことでしょうか。
  60. 尾身茂

    公述人尾身茂君) おっしゃるとおりです。  一つ一つの、いろんな要請をしましたよね。私どもが、専門家委員会が要請したのは例の一番リスクの高いところ、それから学校閉鎖、イベント、それから北海道緊急事態宣言と、様々にちょっと色合いの、あるいは強度の違う要請が出たと思いますけど、それを個別にその効果判断することはこれは不可能ですので、それが一体として、ふだんとは違う、やや強い対応を今回要請したわけですよね。そのトータルとしてどういう、恐らく多くの日本の方、日本の方は非常に真面目な人々ですから、かなりのことを行動変容されたことを期待しますけど、それによってどうかなるかというのがもう少し分かると。  ということですから、全体ですね、学校閉鎖だけじゃなくていろんなことが、人々の、手を洗うとか、そういう危険な場所に行かないなんということを、今、どうも町の、大阪なんかでも、京都とか大阪のああいう関西の町でも随分人が少なくなっているようですよね。そういうことの効果というか、全体のあれがどのぐらい分かるかというのは、さっきの指標を明らかに、我々、そういう幾つかの指標も今分析していますので、ただ、限られたデータからの類推というところがあるので、一〇〇%の感染を、ただ、今ある、表面に出た、そこしか今ないんですね、そこしか今方法がない。そういう限界の中でどういうことかということを判断をするということだと思います。
  61. 片山大介

    片山大介君 国民の多くが知りたいのは、やっぱり出口戦略をどう描くのかということだと思うんですけれども、出口戦略についてのお考え方、これ、上先生も含めてお伺いしたいんですが。
  62. 尾身茂

    公述人尾身茂君) だから、出口戦略も、やみくもにやめるということ、何かのこの根拠がないといけませんよね。  だから、そういう意味では、今回の、例えば北海道は、私は、さっきから申しましたように、ぐっと一時、こう、ぐっと上がる方向に、入口に入っちゃったんですよね。それを、かなり強い対応を取られましたよね、北海道。これが、多くの人が知事が求めるようなことをすれば、これはもう原理的に必ず下がるんです。そういうことになっているのか、あるいは、それは全国のことも同じですね、こういうふうにある程度分かりますから、どうなったか。  それによって、その解除をどうするかというのは当然、もうこれはいわゆる一番ベストケースのシナリオですけど、ある程度下がったとしますよね。そうすると、じゃ、今まで要請した中でも、いろいろかなりリスクの高いところと、余りリスクはそれほどまだ証明されていないけどやった方がより良いというような、こういう大きく分けて二つありますよね。そうすると、仮にどっちを解除するかといえば、当然リスクの低い方を解除、それが何とかはまだ言えませんけど、そういう考えをすることになると思うんですけど、それのためにはある程度、三月十九日ぐらいになった、こうなっているのか、横ばいなのか、期待どおりいったのかはある程度はっきり、まあある程度ですね、見えてきた段階で、どのことを解除するかというのを決めるのが一番合理的だと私は思います。難しい判断ですけど、全くやみくもに、まさかさいころを振ってやるわけにいかないですから、そういうことだと私は思います。    〔理事三宅伸吾君退席、委員長着席〕
  63. 上昌広

    公述人上昌広君) 私は、正確な情報を社会でシェアすることだと思います。  今日配付、差し上げました最後の資料、日本感染率なんですが、日本感染者の数が韓国と比べて何十分の一、オランダやフランスやスペイン、スイスよりも少ないんですよ。さすがにこんなこと、あり得ませんよね。  正確な感染状況致死率が国民に分かれば、私、自然と合意形成していくと思うんです。日本医療レベルが確かに高いと思います。致死率が下がるのはそれは分かるんですが、感染率が日本だけ低いというのは、私、さすがにちょっとそれは合意できないんです、同じように世界中振る舞っていると思いますから。  この病気は、ある程度医学界ではコンセンサスが出ているんです。感染力は強いですが、致死率高齢者を除くと高くない。このことが分かれば、みんな安心なさるんじゃないでしょうか。今、それが伝わっていなくてパニックになっているんです。  ウイルスの出口戦略は、我々にはいかんともできません。ウイルスなんですから。それに合わせて生きていくしかないんですよね。こっちで強硬的にやっても、無理をして必ずまたパニックになるんです。先生方、新型インフルでも流行終息まで半年程度掛かりましたよね。十年前と今じゃ、もう国際交流が桁違いです。もっと掛かると思っても普通ですよね。去年は早い段階からインフルエンザがはやりましたね。沖縄では八月です。ワールドカップがあったんでしょうね。南半球から来たんです。  こういう事実に基づいて、正確な情報を国民に伝えることだと思います。いけないことは、データに基づかず恣意的な解釈をして、一定程度効果があった、これをしなければしようがなかった、これは政治判断としてはもちろんあるんですが、私は一医師として、医学的な合理性のないものはおやりにならない方がいいと思います。後々、世界から必ず反論が出てコンセンサスになって、先生方の信頼を国民から失うからです。ある程度のことが分かっていますので、それに準じた対策を取られるのが一番、出口戦略になると考えています。
  64. 片山大介

    片山大介君 それで、今、上先生もおっしゃったその流行の終息なんですが、これ確かに、上先生もしばらく掛かるんじゃないかと言っている、それから何かの記事には、やっぱり何か月もまだ掛かるんじゃないかと言っている。  ここら辺は、尾身先生、どのようにお考えなのか。
  65. 尾身茂

    公述人尾身茂君) もう先ほど冒頭で説明しましたけれども、これは終息を一旦しても、することが可能、あり得ますけど、これで完全にゼロなんということ、それからまた小さな山はずうっと、しかもそれが、北海道がありましたけど、ほかの県に同じようなこと、これは一発、すぐに終息できるような感染症ではないので、長く、比較的長く続くということは冒頭申し上げたとおりだと思います。  それはなぜかというと、SARSなんかに比べて、症状が比較的軽い人あるいはない人が感染に関与していることはほぼもうこれ明らかですので、そういう意味ではなかなか、全ての感染者を見付けて、まだ症状が出ていない人に運動制限、なかなか難しいですよね、それが今回の感染症の、SARSの場合には症状が出て初めて感染を人にやるのでそこで隔離すれば済むという、今から考えると、比較ですけど、やややりやすかったですよね、対策が。  だけど、今回のウイルス、ただ、今回のウイルスにもやっぱり弱点があるんですね、そういう強いところと弱いところと。割合安心なところと心配なところと。やっぱり、いいところは、ほとんどの人が無症状の人が多いということですよ、感染しても。だけども、先ほども、我々はこれは、一番のこの対策の目的は致死率を低くすることですから。  そこに、だからPCRも私もキャパシティーをもっと上げた方がいいと思いますけど、PCRは何のためにやるかというと、感染の疑われた、疑われてこれは危ないという人を早く見付けるためのものでありますよね。そのために医療がそこに集中するということは極めて重要で、それは、だから早くPCRのキャパシティーがもっといけば、これは感染コロナ感染の肺炎をこのままいくと起きて重症化するということが早い時間で分かったら、そのときに手を打つという、そういうふうな、全体としての戦略はそういうことだと私は思っています。
  66. 片山大介

    片山大介君 今回の対策の柱で、八〇%他感染させていないのでやっぱりクラスター対策だとおっしゃっていて、それで、そこに人的、財政的強化をすべきだと言っているんです。  これは具体的にどのようなことをお考えになっているんでしょうか。
  67. 尾身茂

    公述人尾身茂君) これは三本柱ということで、クラスター感染が今回の感染一つの大きなドライビングフォースになって、もちろんそれ以外の孤発というか、独立してクラスター感染を起こさない家族のこととか、これは当然あるわけですよね。そのことも大事なんですけど、感染拡大の主なドライビングフォースはそういうことが今のところ分かっていますので、そっちを早く見付けると。  そのためには、感染者が出てきて、今回も、実は、いろんなスポーツクラブだとかライブハウスが分かっているのは、これ懸命な努力で、最初から私はクラスター、ここに行きましたというふうに言わないわけですね。感染がいろんなところで、これのリンクをするための労力は物すごいんです。これについては先生方も是非理解していただきたいと思うんですけど。これはもう物すごい努力で、元々この積極的疫学調査というのは、もうはしかなんかでも物すごく労力の掛かることで、それについて比較的、保健所の人たちなんかもう物すごく労力が費やされていっているということで、そっちが一つのあれですよね。  あとは、もう先ほどから何度も繰り返していますように、この病気、これを我々はなるべく死亡者の数を減らしたいというのが最大の目標の一つですから、そのためには、感染して重症化する前に、早い段階でこれは危ないと思ったときにPCRもして、それで引き続き、つまり、重篤な人と重症とはさっき分けましたけれども重症になってもいいことは、半分ぐらい治っているんですよね、重症になっても。だけど、重篤になるとなかなかあれなので、まずは重症の手前で早く。  そういう意味では、私は早く治療薬等々、それから、PCRも大事ですけど、それと同じように大事なのは迅速の診断キットですよね。これは、いわゆる遺伝子の破片をやるんじゃなくて抗体、抗原抗体反応というのを利用してやる検査ですが、これはかなり今いろいろな関係者が開発に急いでいる。早くそれをやると、診断にももっと早く、あとはこのPCRと両方、両輪の輪になってできると思うので、そういうことが今求められているんじゃないかと思います。
  68. 片山大介

    片山大介君 終わります。どうもありがとうございました。
  69. 小池晃

    小池晃君 日本共産党の小池晃です。  昨日、専門家会議の見解が出されましたので尾身公述人にまずお伺いしたいんですが、日本状況は爆発的な拡大には進んでいない、一定程度持ちこたえていると、感染、この戦略でいけば感染拡大スピードを抑制することは可能だという見解でした。  そのスピードを抑制できたとすると、爆発的な患者増加であるとか、やっぱり医療提供体制の破綻を防ぐことはできるとは思います。ただ、そのスピードを抑えるということによって、終息までの期間というのは、これはその結果長期化するということになっていくのではないか。急峻なカーブがなだらかになっていくわけですね。先ほど、公述人尾身さんも、尾身先生も長くなるんじゃないかというお話されました。  昨日、舘田一博日本感染症学会理事長は、暖かくなると消えるウイルスではないから、闘いは数か月から半年、年を越えて続くかもしれないというふうにおっしゃっているんですが、同様の見解をお持ちでしょうか。
  70. 尾身茂

    公述人尾身茂君) どのぐらい掛かるか、いつまでかというのは、これはもう私自身はその予想をすることはできませんが、比較的長く続くというのは、今日あした終息することはないと思いますけれども、今議員がお聞きの、むしろ、今、長くなるということですよね。なるべく比較的低めに抑えていけば、その間に治療薬の、もう先生方御存じだと思いますけど、いろんなアビガンだとかステロイドの吸入薬とか、これは臨床試験を今、ここはやっぱり私は、一般の国民に急いで、これが仮に安全で有効なら福音だと思うので、そういうことにこの期間をうまく、長くなるということで。  ただ、インフルエンザのように熱、そこについては、ちょっと私は個人的にはそこのことはよく分かりません、先ほどの見解ですね。熱が、先生のおっしゃった、夏になれば、なっても、普通は、インフルエンザと違って続く、そのことについてはちょっと私は情報を持ち合わせていません。
  71. 小池晃

    小池晃君 長期化をしていくということになった場合に、昨日の見解でも、全てのリンクが追えているわけではないということを言われた。それから、いつ再流行してもおかしくない状態になる、それから、世界から感染が持ち込まれる事例も今後繰り返されるということ、感染者数は当面増加傾向が続くと予想されるというふうにもおっしゃっているわけですね。  ということは、今は持ちこたえているかもしれないけれども、いつ爆発的な増加が起こるかは現時点では予測できないということになるのではないか。そうすると、やっぱりかなりの長期にわたって今のような感染状況、あるいは今よりちょっと若干悪化する可能性もあるという中で、瀬戸際だというふうに言われてきたわけですけれども、かなり、その瀬戸際だというような状況が今後も一定期間続くというふうに認識しておいた方がいいのでしょうか。
  72. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 一番これ分かりやすいのは、もう実際に起きたので、北海道の例が比較的分かりやすいと思うんですよね。  私、先ほど何度も、北海道の場合は、ややほかの県に比べて数がばっと増えましたよね。そこの理由はこの前も何度も申し上げて、比較的若い世代がなかなか症状が余り出なくてという、もうこれは繰り返しませんけど、そういうことで、かなりがっと上がってしまうようなところのカーブの入口に入ったと思うんですね。  そこで、かなり、ふだんは今まで日本ではやらなかったようなかなり強い対応をやったと思うので、一度下がる可能性はある。その後どうなるかということを、もうこれは、それこそ我々の、これがうまくいった場合には下がりますけど、ゼロにはなりませんから。そうすると、どんなことが、まあこれは今までのいろんな公衆衛生学的な経験なんかを総合的にあれすると、どういうことが最も起こることが考えられるかというと、こういうのが一度下がってまた、そうやってまた少しずつ小さなこぶが起きると、うまくいった場合でも。そのことがほかの県でもちょっと時間差で起きていくというようなこと。  ただし、その間に、例えば、いろんなほかの原因で、例えばスーパースプレッダーが出るとかとなると、もうそういう状況じゃなくて、ばっと行ってしまうということも当然あり得るし、先ほども言ったように、全てのリンクが追えなくて、気が付いたらもう行っちゃっているということも、北海道はそれに近かったですから、北海道は一生懸命やって、それに引っかかってこなかったです。  そういうことで、気が付いた時点で対策を打ったということ、いろんなことがあり得るということで、普通、うまくいけばこういう、小さな山が来て、ほかの県にも起こる可能性が、同じようなパターンでということだと思います。
  73. 小池晃

    小池晃君 かなり、だから長期にわたって今のような状況が続く、そういう可能性も視野に入れた対応が私は必要になってくるということなんだろうと思うんですね。  それから、入国規制の問題については、科学的エビデンスがないということを両公述人一致されたと思うんですが、両公述人にお聞きしたいんですけれども、やっぱりこういう国際感染症を蔓延防止する際に、やっぱり国際的な協力というのは極めて重要だと思います。WHOのテドロス事務局長も各国の団結が唯一の選択肢だと言っておりますし、緊急事態プログラム責任者のマイク・ライアン氏は、互いに日本と韓国が入国規制を打ち出したことについて、政治的な争いを展開するのではなくて人命救助に尽力すべきだというふうにおっしゃっています。  やはり感染拡大の防止のためには、中国、韓国、その他の国々とのやっぱり緊密なコミュニケーションが欠かせないと思いますが、端的にこの点、お二人にお答えいただければと思います。
  74. 上昌広

    公述人上昌広君) おっしゃるとおりだと思います。  これからも中国で新感染症が出てくると思います。中国日本、韓国、台湾の共同のネットワークが要ります。平素から留学生をやり取りする、交流する、この積み重ねです。ウィーチャットを介してすぐに情報共有できますからね。政府から民間までのふだんからのインフラの構築が必要だと思います。
  75. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 例えば中国日本でも、中国の場合には湖北省以外で今かなり感染が、その経験については日本から学べる。それから日本の場合にはチャーター便とかクルーズ船のいろんな豊富なデータが集まっていますから、この情報を共有するということで、新しい治療薬とか、それを二国間でやってもいいし、WHOを介してやってもいい。こういう意味では、共に闘うというのは、議員おっしゃるとおり、是非やるべきだと思います。
  76. 小池晃

    小池晃君 尾身公述人にお伺いしたいんですが、新型コロナウイルス武漢ウイルスと呼ぶべきだという主張があります。  WHOは、国や地域や人名をウイルスに冠してはいけないというベストプラクティス、ガイドラインを発表しているわけですね。  なぜWHOはそういうガイドラインを示しているのか、WHOに関わっておられた経験からお聞かせいただけますでしょうか。
  77. 尾身茂

    公述人尾身茂君) それについてはちょっと、武漢ウイルスともう決まったんでしょうか。
  78. 小池晃

    小池晃君 いや、武漢ウイルスと呼ぶべきだという主張があるんですけれども、そういったことはすべきでないというのがWHOの見解だと思うんですね。何でそういう見解を出したのかということについて、もし御知見がありましたら。上公述人にもこの点、お伺いをしたいと思います。
  79. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 私は、武漢ウイルスと、個人的にはそういう名前を付ける必要はないと、私は個人的には思います。
  80. 上昌広

    公述人上昌広君) 医学的には何と呼ぼうが関係ないですからね。政治の話だと思います。
  81. 小池晃

    小池晃君 上公述人にちょっとお伺いしたいんですが、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されている中国データで、新型コロナの肺炎で入院時に三十七・五度以上の発熱があった患者は四割程度にとどまるというふうに言っているわけですね。それから、昨日の専門家会議の見解でも、これは重症化する患者さんは普通の風邪症状が出てから約五日から七日程度症状が急激に悪化して肺炎に至っているというふうにしているわけですね。インフルエンザやSARSであると、ほとんどの患者さん、発熱をするという経過はあると思うんですが、なかなか発症初期に発熱がないというケースがあるというふうに言われてきていると思うんです。  今、政府は、まあ政府というか専門家会議もですけれども、三十七・五度、四日間は自宅で経過観察という、そういうことを言っています。  私も、軽症患者さんが医療機関に殺到して医療機能が麻痺するようなことは避けなければいけないのは、それはそうだと思うんですが、特に高齢者に三十七・五度、四日間は自宅で経過観察、これは肺炎に移行するような重症患者さんを見落とす危険性はないんだろうか、こういう対応でいいんだろうかというふうに思うんですが、上公述人はいかがでしょうか。
  82. 上昌広

    公述人上昌広君) さすが先生、お医者さんですね。私、同感です。  これはコロナウイルス対策であって、高齢者の健康の対策になっていませんね。インフルエンザやほかの風邪でも熱が出ます。高齢者の場合、場合によってはすぐ点滴しないと脱水になりますし、解熱剤を使わないと体力が落ちます。患者さんを見ずにコロナウイルスを見ていると思います。  初めて、免疫がないものですから、かかってしばらく免疫反応が起きないので、炎症反応が遅れるんでしょうね。そういう場合は臨機応変に対応しなきゃいけませんから、七度五分の基準というのは医学的に合理性がないと思います。
  83. 尾身茂

    公述人尾身茂君) その議員の四日の話、実はあの文書も、高齢者のことは例外規定をはっきり書いてあって、もう少しそれは我々も政府も説明すべきだったと思いますけど、はっきりもう申し上げたのは、四日というのは普通の人で、高齢者とか基礎疾患がある人は二日となっていて、もっと言えば、私、個人的にはもう初日でもいいと思いますけど、そうすると例のいっぱいになっちゃうということがあるので、まあこれは。  一般の人はなぜ四日かというと、日本で、国際医療センターなんかで実際の国内患者を診た臨床科の先生だと、どうも今回の場合には症状が随分長く続いて、まあ五日ぐらいまで、で、症状が悪くなるのは一週間を超えてということがあるので、一般の人は三日ぐらいまで少し我慢していていただいて。  ただし、先生おっしゃるように、高齢者対策が肝ですので、高齢者については四日じゃなくてもっと前にして。さらに、症状で特にだるさというのがかなり今回の特徴と、あと、もう初日から、デーワンから息切れだとか息の速さ、こういうものについてはもう初日からというふうに、だってそこのところの説明はそういうふうに書いてあって、もちろん高齢者とそうじゃない元気な人と一緒にするという趣旨じゃないので、ちょっとそこが少し説明の仕方が悪かったと思いますけど、そこはそういうことで、十分、議員の先生のおっしゃる高齢者の方はほっといたらもっと悪くなる、早めにやるというのはもう私も大賛成です。
  84. 小池晃

    小池晃君 やっぱり公衆衛生と臨床医の発想というのはちょっと違うのかなという感じがして。  やっぱり私は、もう一日でも熱発したらば高齢者はやっぱり受診すると。あるいは、このケースでいうと、熱発していなくても肺炎に移行するような危険性のある症例もかなりあると言われているわけですから、僕はやっぱり、三十七・五度、四日、高齢者に二日としているとおっしゃるけれども、やっぱりこういう基準ははっきり撤回した方がいいんじゃないかと。やはり心配だと思ったら受診してくださいと。高齢者、真面目ですから、こういうふうに言われると我慢しちゃうと思うんですよ。僕は、これはまずいと。  専門家会議としても、是非この点はメッセージを出し直していただけないかと思いますが、いかがですか。
  85. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 初日にすれば、あるいは、これは実は、私自身は臨床科の先生を交えてこの議論を随分したんですけど、実はこれは、実態としては、当時まだPCRの検査のキャパシティーがという現実的な問題も当然考慮しました。もっともっと、あるいはもう、そういうのは我々の、つまりどこかで判断しなくちゃいけないので、そのときには、いわゆる机上の空論だけをしていても実際的なレコメンデーションになりませんので、当時のキャパシティーを考えると今言ったようなことで、もちろん、これからいろんなデータが出てきたり、キャパシティーの問題で、先生おっしゃるように少しアジャストするという、また検討するということはみんなで考えてはみたいと思います。
  86. 小池晃

    小池晃君 私は、これは見直すべきだというふうに思っております。  PCRという今お話が出ました。韓国は、疑わしきは検査するというか、かなり大規模にやっているわけですね。いろんな方から、何で韓国はあれだけできるのに日本はできないんだということが質問されます。  上公述人、あれだけ韓国が検査ができている背景、SARSのときの体験などが土台になっているというふうにも聞いていますが、どのように見ていらっしゃいますか。
  87. 上昌広

    公述人上昌広君) SARS、MERSのときの体験だと向こうの方はおっしゃっています。私自身も思い当たるところはあるんですね。福島でずっとやっていると言いましたが、風評被害対策って現地で余り有効じゃなかったんです。何言っているんだと。私たち、現地に入って何万件かもう既に内部被曝の検査をして、一人一人に御説明続けています。自分の結果を知るとやっぱり安心されるんですよ。この積み重ねがコンセンサスになっていくんですね。  韓国の医師と話したことがあるんですが、全く同じことを言っていました。やっぱりお一人お一人の検査結果を返す積み重ねが風評被害対策だと。安全なんです、問題ないんですと国家が言っても、信用する方もいますが、しない方も多いんですよね。地道にやることだと思います。
  88. 小池晃

    小池晃君 尾身公述人、やはりそのキャパシティーを広げるべきだということは公述人もおっしゃっているわけですね。今、政府は、蔓延して今の接触者帰国者外来で診れなくなったら一般外来へという、そういう段階論なんですが、私は、先ほど公述人がおっしゃったように、やっぱり一定の医療機能を持っているところについては支援をすることが当然必要ですけれども、今の段階から拡大していくと、PCRの保険適用しただけではなくて、検査できるようにするということが必要ではないかと思いますが、いかがですか。
  89. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 私もそう思います。
  90. 小池晃

    小池晃君 誤解なきように話すと、私は、どの医療機関でもやるべき、今すぐやるべきだとは思わないんですね。やっぱり日本の開業医のレベルは非常に高いです。使命感もあります。だから、やれというふうになったらやると思うんですね。ただ、やっぱり一定の被曝の危険もありますし、日本高齢者、開業医はそもそも高齢化していますから、そういった人たち感染してしまったら地域医療崩壊しますので、やっぱり一定の制約というのは当然あってしかるべきだと思うんですね。  それから、支援をしっかりしなければいけないと思いますが、やっぱりちょっと今の政府の対応は私は遅過ぎるというふうに言わざるを得ないんではないかなと思います。  最後に、一律休校問題で尾身公述人は、新型インフルのときの大阪、兵庫の対応が成功したんだとおっしゃいました。私もあれは成功だったと思うんです。しかし、あのときの新型インフルというのは、これは季節性インフル、要するに高齢者は免疫があった。やっぱり、かつてのスペイン風邪あるいは香港風邪等々の免疫があったから余り高齢者の中では広がらなかったですね。今度はやっぱり違うと思うんですよ。医学的に見ればやらないよりはやった方がいいというふうに、いや、やったらまずいという話じゃないと思うんですが。ただ、やっぱり一律休校という形でやることは、エビデンスとしてはないんではないかなというふうに思うんですが、いかがですか。
  91. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 先ほどももう何度も言いましたから繰り返しになると思いますけど、コロナの場合は、インフルエンザほど、学校閉鎖効果があるというエビデンスはないですよね。それはそうだと私も思います。  そういう中で、シンガポールなんかは学校閉鎖しているし、先ほど言ったようにどうも学童でも感染をしているし、感染させる可能性もあるということですから、いろんな、政治的にはいろんな意見があるということは私も承知しておりますけど、結果的には、決断のこのプロセス等についてはいろんな御意見があるのは、だけど、結果的には、例の働いているお母さんの職のことは大変だと思うんですけど、感染症感染拡大の抑制という意味では多少の効果があるかもしれないということだと思います。
  92. 小池晃

    小池晃君 政治の問題だということだと思います。その専門家会議意見も決めずに政治が決断をするということはやってはいけないと思います。  終わります。
  93. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、大変有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  94. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  95. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) それでは、引き続き公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、令和二年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構です。  それでは、新型コロナウイルスが内政に与える影響について、公述人株式会社第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト熊野英生君、全国労働組合総連合事務局長野村幸裕君から順次御意見を伺います。  まず、熊野公述人お願いいたします。熊野公述人
  96. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 皆様、おはようございます。  本日は、マーケット、経済の危機に際して皆様のお役に立てるということを大変うれしく、光栄に思っております。  私の方からは、現状の新型コロナウイルス、この感染阻止のためにイベントあるいは集会の自粛が経済の停滞を起こしていると、その影響について、現状と今後について御説明をしたいと思います。  まず、今回の悪影響なんですが、三つのルートがあるということを御説明します。まず一つは、訪日外国人の消費、いわゆるインバウンド消費ですね、これが内外の感染拡大によって大きく減少したと、これがルートの一です。ルートの二、これはイベント、集会の自粛が国内消費あるいは企業活動を停滞、抑制している効果。三番目が、海外経済の混乱によって輸出入が減少し、製造業の業績が悪化していると。  この三つのルートに分けて影響は考えられるんですが、非常に厳しいのは一番目と二番目、インバウンドの減少と自粛の影響がほぼ同じサービスセクターに重なって打撃を与えていると。具体的に言いますと、ホテル、飲食店、レジャー施設、小売、航空を中心にする交通、これら四セクターがダブルパンチを受けていると。これは極めて深刻です。  具体的な影響度合いを定量的に少し申し上げますと、インバウンドの消費は、年間で見て、恐らく二〇二〇年は五兆円ぐらいの規模が需要としてあったんじゃないかと思うんですが、その中で、中国、香港、台湾、韓国、大体六割を占めていると。つまり、五兆円の六割ですから、全体で三兆円もの需要があり、これは成長産業だと見られてきました。これらが例えば三か月間、半分の需要に減少したとしましょう。そうすると、四千億円の損失となります。これは非常に甚大です。  国内における自粛の影響はもっと大きなインパクトがあるんではないかというふうに私は見ています。例えば、三か月間国内で自粛が続くと、大体インバウンドのさっきの四千億円と合わせると約二・三兆円ほど損失が増えると。日本のGDPが五百四十兆円ぐらいですから、極めて大きな悪影響だと思います。  基本的に、私は自粛については感染阻止のために仕方がないというふうに思っていますが、これは、感染阻止と経済活動というのはジレンマ、どちらかを立てるとどちらかが沈んでいくような関係にありますから、なるべく早くこのジレンマの状態を解消し、つまり感染阻止をできるだけ早期に終了させて経済活動を早く立ち直らせると、これが肝要だと思います。  既に、自粛については、三月中のみならず四月末、あるいはそれ以降までキャンセル、計画の中止が起こっています。このままだらだらと自粛ムードが尾を引く、これは甚大な被害が予想されますので、誰かがこの先どこのタイミングで、もう自粛は終わりだと音頭を取る必要があるのではないかというふうに私は思っています。  具体的な悪影響について、雇用の面で御説明をしたいと思います。  心配なのは、先ほどの四業種、ホテル、飲食店、レジャー、小売、交通。これらの就業者数を全部トータルすると一千五百万人、これは大体就業者全体の二割強です。この二割強の部分で巨大な余剰人員が今発生していると。これ、私の推計、稼働率、非製造業の稼働率の推計から見てみると、大体百一万人の過剰雇用を企業は企業の内部に抱えていると。ですから、会社から外にリリースされると失業者になると。その人数がもう既に百万人、百一万人いる。  恐らく、これから感染がにわかには終息せず、長く自粛が続くとすると、企業は持ちこたえられなくなって倒産あるいは雇用カットが発生するんではないかと、そこを心配しています。企業から私もいろいろ生の声を聞きました。二月末の時点では大丈夫だと答えていた企業も、三月の上旬近くになると、いつまで自粛が続くか分からずに心配だと、見方が悲観的に変わっているという印象を受けました。  この雇用リスクについて私が参考にしたいのは、二〇一一年三月十一日、ちょうどあしたで九年目を迎える東日本大震災の教訓です。当時も実は被災地から離れた地域では自粛が広範囲に広がりました。初めのうちは宴会などは不謹慎だと、そういう声があったんですが、時間がたってくると、勇気がある人が、自粛というのは二次被害をもたらす、したがって自粛は最小限に抑えよう、応援消費、頑張ろう東北、こういう掛け声が上がり、自主的な消費拡大のムードが盛り上がりました。あのときほど、日本人の善意が危機に際してカウンターパワーになったことはないと私は思います。危機に当たって日本人が良識を失わず規律が正しい、そういう印象を世界にアピールしたと、それは今までにないことだと私は記憶しています。  結局、震災のときの自粛をいろいろアンケート調査などで調べてみると、ちょうど三か月間でした。このときの雇用はどうだったでしょうか。実は、失業率も高まらず、有効求人倍率もそれほど落ちませんでした。つまり、企業は、震災のときは、頑張ろう消費、東北を応援する、そういう気概がありましたから、良識を持って、雇用者の首を切ることを控えて持ちこたえたと。  今回も、そういうふうに、カウンターパワーとして、コロナに負けるなと、そういう気持ちが企業に強まると結果は変わってくるんじゃないかと。もちろん、そこには雇用調整助成金の効果もあり、休業すれば、中小企業の場合は本来の人件費の五分の一、二〇%、大企業の場合も三〇%、非常に大きな軽減効果、政策効果としては非常にパワフルだと思っています。  対応策の考え方についてお話をします。  対応策としては、恐らく三段階の支援が必要だと。一つは、血を止める、止血です。次に、震災になぞらえると復旧です、元に戻す。さらに、復興、前よりも成長させる。つまり、これは、超短期と短期と中長期の三つのディメンジョンで政策を切り分けながら、同時並行にやっていくということだと思います。  詳しくまず一つ一つ説明しますと、まず最初に止血、血を止めることですね、トリアージ。これは、恐らく現状の雇用調整助成金と資金繰り支援が非常に有効だと思います。もう既にツールとしては有効策は講じられていると。  ただ、企業が自主的に休業するかどうかについては不確実性があり、正社員を守ろうとして休業しない企業はパート、アルバイトを削減していくと。現在の非正規率は大体三八%、飲食店、宿泊については七六・五%と、直近の数字です、非常にパート、アルバイト比率が高いと。  次に、復旧、需要を元に戻すと。これは、恐らく感染拡大が一定まで終息した後に、皆が、これは個人も企業もそうですけれども、行事、宴会を活発に復活させ、個人のレジャーが盛り上がるようにすると、一人一人の心掛けが非常に重要です。従来型公共事業によるてこ入れという考え方もあるかもしれませんが、今必要な復旧というのは、もっと個人消費に近いところで需要を増やすということではないかと思います。  不幸中の幸い、経済対策が、もう既に昨年十二月に閣議決定された経済対策はあり、二〇一九年度の補正予算では四・三兆円と。今、案の段階ですけれども、二〇二〇年の対策費は一・八兆ほどあります。さらに、四月については、高校、高等教育の無償化が、住民税非課税世帯、大体三百四十万以下の世帯については減税効果、年間八千億円を出します。さらに、六月にはキャッシュレス決済が終了するということで、ここでの駆け込みもあると思います。さらに、極め付き、これが私は最大だと思いますが、東京オリンピックが仮に七月二十四日から八月九日まで予定どおりに開催されると、これ以上の需要刺激はないと思います。  恐らく、海外の人々は、東京オリンピックが無事に開催されるのを見て、安全宣言が下されたというふうに感じて、二〇二〇年の秋には大挙して日本観光に来るのではないかと。東京オリンピックが最大の経済対策、消費対策になると私は見ています。  ただ、ここにもリスクシナリオを考えておかないといけないということがあると思います。万が一、東京オリンピックが中止になるケース。恐らく訪日外国人は来なくなり、ホテルはたくさん外資系ホテルが進出してきていますので供給過剰になり、値下げ圧力が業界全体の体力をすり減らす。二〇二五年までは首都圏での大規模な都市再開発計画がめじろ押しですから、その採算性も狂ってきます。東京オリンピックは、単なる需要対策ではなくて、東京あるいは日本の成長戦略の役割もあったんではないかというふうに私は思います。  そう考えますと、東京オリンピックは絶対に中止してはいけない、中止してはいけない、取ってはいけない選択であると私は思っています。最悪一年延期という見直し、前例がない選択ですけれども、中止を避けるというアイデアが必要だと。こういう危機に際しては、最初から希望的な観測を持たないで、ダメージコントロールを考えた別のプラン、いわゆるプランBといいますが、これも事前に検討していくことが必要だと考えます。  具体的に言えば、一年後に東京オリンピックを開くのであれば、日本における感染症対策コロナ以外の感染症に対しても万全だというような体制をつくっておくと。私は医療の専門家ではないですが、素人考えでも、極めて迅速な検査、患者の受入れ、治療法の確立、これが一年後にしっかりとするということが、恐らく一年後にオリンピックを開催すると、延期して開催するということだと考えられます。  以上が、現状のダメージ、雇用への悪化、三段階の政策対応について、私の見方意見を述べました。  どうもありがとうございます。
  97. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  次に、野村公述人お願いいたします。野村公述人
  98. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) おはようございます。  本日は、発言の機会をいただき、ありがとうございます。私は、全国の産業別労働組合と地域の労働組合で組織している全国労働組合総連合の事務局長を務めさせていただいています。  本日は、コロナウイルスの現状について報告させていただきますが、報告に先立ち、貴委員会を始め国会議員の皆様が新型コロナウイルス対策について議論を重ねていただいていること、及び厚生労働省や各医療機関も含め、教育や保育、公衆衛生高齢者福祉など、あらゆる分野で活動している皆さんが献身的に拡大防止や抑制、治療等に当たられていることに感謝を申し上げたいというふうに思います。  さて、私からは職場の実態を中心に述べさせていただきます。ただ、今回の諸課題は、日本における将来の方向性を決める経済社会、行政上の課題を明らかにしているというふうに見ています。  具体的な職場の状況から見ていきます。資料については、職場の現状と課題と題した十二ページのものを用意いたしましたので、随時御参照ください。  職場の実態ですが、一つ目は学校職場です。  小学校を始め、学校への安倍首相による一斉休業の要請を受けた各都道府県による学校の休業の影響について、三つの角度からお話を申し上げたいというふうに思います。  まず、職員の状況です。  今回、改めて皆さんにお話を伺いますと、学校に働く職員の皆さんの心配事は共通をしています。それは何か。子供のことです。子供の学習や健康、安全、食事の偏りなどについて心を痛めていました。学校の方が安全ではないかという声が多く上がっています。子供の学習権を一方的に奪うことはできません。休業措置をやめてほしいとの声が多く上がっているということをお伝えします。  さて、教職員の勤務についてですが、特に非正規雇用の教職員の方、委託先からの情報や相談が多く寄せられています。資料の一ページから二ページにかけて幾つか紹介をしています。今回の学校の休業措置に伴う場合と、発症者があり学校が閉鎖になった場合についての相談が多く寄せられています。申すまでもなく、民法五百三十六条二項で、使用主に責任があれば反対給付の請求権を認めます。結論だけ言えば、正規雇用であろうと非正規雇用であろうと、新型コロナウイルスによって学校から休業を指示した場合は、特例措置として、休業補償の拡大とともに一〇〇%の賃金を支払うべきだ、このように考えています。  次に、保護者の方々状況です。  前提ですが、休みが必要なときには休めるという働き方の風土をこれから大いにつくっていくこと、このことが重要だというふうに考えています。  子供を一人きりにはできない、でも休めない、このことで悩んだ方が多数いらっしゃいます。今回、賃金を補償した有給休暇制度を早急に宣伝されたことにより、この不安は縮小されたかに見えました。しかし、対象が限定されていることや額が少額であること、事業主への助成金であることから、不安は解消されていません。雇用保険未加入者に対する一般会計からの支出も含めて早急に、臨時的であっても全額補償の方向での検討をお願いをしたい、このように考えています。  ところで、学校関係の最後に、学校に関する業者さんについてです。特に、給食に限定してお話を申し上げます。  学校給食に食材を納めている生産者の方々あるいは業者の方々は、子供たちの健康や食育の観点から、低農薬であったり、新鮮さを保つ工夫をしながら日々努力しています。直ちに一般市場への出荷とはいかない事情がそこにあります。また、中小零細企業も多数あります。牛乳はバターで政府が購入されるそうですが、それでも販売単価の減少あるいは輸送費など、損害が事業の継続に困難さを抱える可能性があります。  学校を再開した際、安心でおいしい給食ができるよう、農業や漁業者、中小企業者への緊急融資とともに損失補填が必要ではないかと考えています。  二つ目は、学童保育です。  突然の学校休業で、体制をつくったり、指導員の確保に苦労しました。今でもまだ苦労が続いています。  そもそも、学童保育の現場には、狭い空間、少ない正規雇用指導員、子供がいるときだけが保育の仕事という、準備や保育計画の会議等を顧みない基準、低賃金が押し付けられているという実態がありました。そこへ突然の時間延長です。面積や人員の配置基準の引上げが重要だというふうに考えています。  また、今回は臨時的措置として時間外手当や人件費の増に対する負担増を公民問わず対応するため、国による自治体への財源保障、これが重要になってくるというふうに考えています。今回の加算額を更に加算させていただきましたが、箇所単位に加えて人員分も加算して算出していく、このことが必要だというふうに思います。  さらに、民間施設では、非正規雇用で働く指導員から、新型コロナウイルスの発症により閉鎖した場合の賃金補償についての不安が寄せられています。労働者に対する賃金補償を実施し、運営者に対する自治体の助成金、そして自治体に対する国の補助金と財政支出が重要となっているというふうに考えています。臨時の措置として財源を確保することが必要です。  三つ目の職場は、介護職場です。  訪問拒否やサービスの変更が起こっており、訪問介護の実績確保は困難であり、支援や介護を必要としている方の状態が心配であるという声が多く上がっています。働く方にとっては長期化による収入減への心配もあります。正確な情報が求められています。  また、施設では、万が一発症した場合、隔離する部屋がないとの心配があります。代替施設を、都道府県、市町村が協力して、今から互いに融通することも含めて隔離場所の確保を計画する必要があるというふうに考えています。  四つ目の職場は、病院、公衆衛生です。  感染症病院、病棟の体制の強化をお願いします。この間削減された予算、これを元に戻すとともに、更に充実していく必要があると考えています。応援に行く人も出せません。賃金の引上げなど、処遇の改善も必要です。また、防護服やマスク、消毒液も足りません。医療従事者の感染拡大が懸念されています。早急な安全対策が必要です。  なお、感染症に関する病院の多くは公的公立病院です。地域医療の見直しといって一方的な統廃合の押し付けをするのではなく、地域の議論と合意形成による地域医療計画の作成がますます重要になっている、このように考えています。  五つ目は、交通、タクシーです。  タクシーは歩合給であるため、休むと収入減に直結します。賃金を補償した休業制度の確立が必要です。また、景気の後退と相まって、売上高が企業では二割から三割減少し、四割近い会社もあります。この収入減は運転者の賃金に直結します。最低賃金を割る方も出てきています。ドライバーに賃金の補償を行うとともに、特に中小を中心に事業者への賃金補償分の補助が必要だというふうに考えています。  六つ目は、契約社員や中小企業の不安です。  学校が休みになる、営業収入が落ちる、自宅待機させられるなど、不安定な雇用の中、体力のない企業では既に解雇や事業所閉鎖などがささやかれています。今、多様な働き方が喧伝されています。であるならば、多様であっても働き続けられる、そういう条件が必要である。全ての働く者、臨時でもパートでも短時間でも、行ってみたら帰れと言われた飲食店のパートの方でも、休業補償をすべきだというふうに考えています。  新型コロナウイルス影響は、雇用従属性が強い労働者はもとより、労働者に近い、資本の蓄積ができない国民も直撃しています。しかも、この方々日本経済を支えているのです。  さて、これらの職場の状況を踏まえると、二つの特筆すべきことがあります。  一つは、方策の、あるいは対策の方向性です。  休業補償の対象に、正規雇用労働者はもとより、非正規雇用労働者も視野に入れた対策を考えていることです。フリーランスや個人の小規模零細企業への支援も工夫されると報道されています。まさに、働く方全てが対象となれば、安心して働き続けられる大きな転換となります。この機をうまく生かして、今後、全ての働く人たちの労働条件の向上に資する、そういう政策を求めます。  しかし、具体化ではまだまだ不十分です。八千三百三十円では足りません。八時間で働くとしても、東京の最低賃金を僅かに上回るだけです。ましてや、中小企業にとって、三分の一を負担することとなると、申請に二の足を踏むことになります。雇用保険法の改正も今国会での課題ですが、一括法ではこのような議論ができません。日切れ法案と切り離し、慎重な審議が必要だというふうに考えます。  もう一つは、そもそも国民の中にあった漠然とした不安が一気に拡散したということです。不足しないはずのティッシュの買いだめなどがその現れです。  消費税が一〇%になって、懸念されていた以上に経済が落ち込んでいます。五%から八%に引き上げられた影響が解消しないうちでの増税です。格差も広まっています。労働分配率が低下をし、社会保険料の負担も増えている。労働者の消費動向はますます低下します。国内総生産の六割近くを占める個人消費の拡大こそ、景気回復の要です。  私たち全労連は、今国民春闘に当たり、日本経済の先行きが不透明なら、あるいは低迷しているなら、今こそ、この間総額を増やした内部留保を活用して、社員はもとより下請企業へも還元すべきだと、このように訴えています。なお、内部留保について活用できない場合は、臨時的な課税も検討すべき時期に来ているというふうに考えています。内部留保を多数の労働者や国民に還元し、経済の循環を高めるべきです。  日本経済の足下が弱まっているとき、その足下をえぐるような新型コロナウイルスによって、更に抜本的に日本経済が崩れようとしています。このとき、経済の全国民的な経済循環、これを実現するため大胆な財政支出が必要だと、このように考えています。  良識の府として、参議院が政府予算を組み替え、新型コロナウイルスに対する予算を盛り込んだ二〇二〇年予算とされることを心からお願いし、新型コロナウイルスを早期に制圧し、これまでの政策を抜本的に見直し、危機に強く、持続可能で力強い日本経済を、皆さんの御指導の下、つくっていきたいと思っていることを述べまして、公述を終わります。  ありがとうございます。
  99. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言をお願いします。
  100. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございました。  自由民主党の山田修路と申します。  熊野先生、野村先生には、大変分かりやすいプレゼンテーション、ありがとうございました。  昨日は原油価格の低下もあって非常に株価が下がったり、コロナウイルス影響が経済全般に及んでいるというふうに思います。  私の地元、石川県なんですけれども、石川県でもやはり工場を二週間ぐらい閉鎖をしようという企業が出たり、また、小松空港、これアジアに国際便もありますけれども、これもほとんどが止まっている状況です。それから、伝えられるところでは、春闘の労使交渉の日程も決められないというような、本当にいろんな影響が出ております。こういった影響、今ほどもいろいろお伺いしたんですけれども、やはり過度に不安になっている、あるいは過度な対応をしているということもあるんではないかというふうにも思うわけです。  その中で、やはり、先ほど野村さんからは漠然とした不安という話もありましたけれども、やはり、不安を解消するためには正確な情報の提供とか迅速な提供、そういったことも非常に重要だと思うんです。特に、今あるそういった対応について必要な情報、こういう情報があったらもっと不安、過度に不安に陥ることなく対応できるのではないかというようなことについて、お二人の公述人にお伺いをしたいというふうに思います。  熊野先生の雑誌での記述、金融財政ビジネスというのをちょっと見させていただいたんですが、その中で、普通のインフルエンザに比べて新型コロナウイルスに過剰な警戒感があるのではないか、これは実情が分かっていないからなのではないかという記述が、これ二月の下旬の雑誌にも出ていたんですけれども、やはりそのためには正しい情報を伝えていくということも大事かと思いますし、野村公述人に対しては、今ほど様々な不安があるということでしたが、それを解消していくためのやはり情報の提供、必要な情報というのもあると思うので、この情報についてお伺いをまずしたいと思います。
  101. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) ありがとうございます。  少し遠いところからの例え話をすることをお許しいただければ、不確実、先が見えないというのは、実はこの十年、リーマン・ショック以降日本を覆っている、そういう非常に悪影響をもたらすファクターだというふうに思っています。  これの一番象徴的な例はリーマン・ショックのときだったんですね。ちょっと金融の世界の話をして恐縮なんですけれども、リーマン・ショックの前にサブプライムローン問題というのがあって、住宅ローンの質が悪いものがどんどん破綻して、破綻するかもしれないグレー債権だったと。投資銀行、アメリカに投資銀行とか非常にグローバルな金融機関ありますけれども、証券化商品というのを持っていて、その中にサブプライムローンが組み込まれていたんですが、その組み込み方が非常にブラックボックスだったので、リーマン・ショックが起こったときは、金融市場では、証券化商品を一つでも持っていたらもう損失がどこまであるか分からないと。  つまり、中身が分からないものを持っていることに対する不安が金融市場を麻痺させて、短期金融市場取引は停止して、金利が付いたとしても一〇%あるいはそれを超えるような金利だったと。つまり、中身が分からないものを持っている金融機関は皆不安だというふうに思われました。  これ、実は今の新型コロナの話と同じで、感染者が一人出ていても五百人いても、両方ともやっぱり同様の自粛をやると。  これ、リーマン・ショックが一体その不確実性からどうやって脱却したかということなんですが、これはストレステストという、ちょっと専門用語で恐縮なんですけれども、金融機関のあの健全化チェックですね、日本でいうと二〇〇二年の十月に金融再生プログラムと、非常に評判が良くなかった政策ではあるんですが、あれは資産査定を非常に厳しくやることによって金融機関の資産内容を全部洗い出すと。ストレステストというのは、最悪のケースを考えながら損失を最大に見積もり、その損失によって自己資本、金融機関の自己資本が不足した場合は公的資金を注入することによって安全だと。つまり、証券化商品を持っていても大丈夫、不良債権を持っていても大丈夫だと。  この教訓から、今回の新型コロナ対応策、情報を考えると、やっぱり一番必要なのはチェックですね、ウイルスチェック。ウイルスの検査を広範囲にやって、この地域は大丈夫だと、北海道、東北、九州、それぞれ感染状況が違いますから、地域ごとにやっぱり感染を、感染状況を随時チェックした上で、安全宣言とはいかないでしょうけれども、安全確認を随時、つまり安全か危険かというその間のグレーゾーンがあると思うんですけれども、そこを切り分けて判定していくような措置が日本版ストレスチェックというか、不確実性への対応になると。  もうちょっと学術的な話でいうと、不確実性の反対用語は何でしょうか。これは予見可能性なんです。予想して、人々が予想したときに、ああ、このぐらいだなということが分かると。今回も、新型コロナがいつ収まるのかというのは非常に不確実です。ちょっと私の説明でも言いましたけれども、二月末に思っていたよりも、三月上旬の方がもっと先は厳しいだろうというふうに中小企業事業者が思うようになっていると。  そこで、やっぱり、政府なり公的な機関が予見可能性がある見通し感染者増加数に関しては三月の中旬でピークアウトし、四月の末にはおおむね終息すると、それはどこどこの地域とどこどこの地域とどこどこの地域では蓋然性が高い。それが外れたときは再び計画を練り直せばいいわけで、そういう道筋を見せるということが非常に今回の不確実性に対する対応策ではいいんではないかと。これは経済学的な視点からいうと、そういうことが言えると思います。  少し長くなって申し訳ありません。
  102. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) 御質問ありがとうございます。私の方からは三点申し上げたいというふうに思います。  一点目は、そもそもなぜこれだけ不安が拡大するのかということからすると、国民が自らの将来の人生設計、経済設計、生活設計ができない、そういう今の経済状況にあるのではないかということです。したがって、目先の不安がそのまま将来の不安につながってしまう、このことが非常に大きな要因だと。だとすれば、やはり財政的にも、あるいは行政的にも、あるいはもう少し言わせていただければ政治的にも、それぞれの国民が自らの人生設計が可能となるような賃金あるいは社会保険、そういうものをきちんと設計をし、国民に強いメッセージを伝える、このことがまず不安解消、これには重要だということです。  二つ目は、やはり正確な情報として何が一番欲しいかという点でいえば、それは、今はどの段階なのか、そして、それがいつどういうふうに変化をし、ここでこういう対応を取ればこういう形で解決しますよという、そういう具体的な現状に関わる分析と将来予測、これが必要ではないか。だからこそ、専門家委員会などでの率直な議論、及び、私はもう一つ、厚生労働省の、まあ皆さんの中には不満もあるかもしれませんが、職員の皆さんたちは必死なんです。その人たちは多くの情報を持っています。この情報が民主的に、行政の民主主義の中で生かされていないんではないか。どこかにネックがあるんではないか。そのネックを取り除いて、そういう現場の声が適切に反映する、そしてそれが国民に開示をされる、そういう情報が必要だというふうに思います。  そして、何よりも重要なことは、それは先ほど来も議論になっていますが、限界はあるとしても、やっぱり誰もが検査できるという状況ではないかと。これをどういう形で検査ができるのか、安心できるのか。この安心できる検査体制を確立し、そのことを一刻も早く国民に伝え、そしてみんなが検査をする。今回は、潜伏期間が長い、かかっていても発症しない、非常にダークな菌が原因となっています。ダークな菌であるならばこそ、その検査体制を確立をすること。  そして、もし検査キットを作った企業が作り過ぎて過剰生産になったら、その分は国が買い上げて今後のまたこういうときに対応するために活用するなど、多くの知恵を、これもそういう関係の行政マンやあるいは企業と一緒に考えていく、そういうことが重要なのではないかというふうに考えています。  以上です。
  103. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございました。  熊野さんにお伺いをいたします。  ちょうど、先生が書かれた「なぜ日本の会社は生産性が低いのか?」という本も読ませていただきました。先ほどおっしゃった不確実性とリスクのマネジメントの話がちょうど書いてあって、リーマン・ショックのときには、やっぱりほとんどの企業が先行き不安になって投資に慎重になったというお話もこの本の中にも書いてありました。  私がそれを見て思ったのは、これまでもSARSとかMERSとか新型インフルエンザとか、様々なこういった感染症が起こっておりまして、それを不確実なものということよりも、こういった感染症についてもっと地域社会、社会全体が過度に不安にならずに、過剰に警戒しないように、先ほど東日本大震災の際の自粛を最小限にしようという運動になったというお話もありましたけれども、こういった感染症に対してもそういったことが対応できるような社会というのをやっぱりつくっておかないと、必要な対応対策は必要なんですけど、過度にならないようにするために、そういった仕組みを社会の中に、もう何回も起こってきているので、学習して取り込めるということがあるんじゃないかというふうにも思うんですが、その点についてどうお考えでしょうか。
  104. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 私の著作を読んでいただいて大変ありがとうございます。  そこにちょっと書いていなかったかもしれないですけど、不確実性とセットになる言葉は疑心暗鬼なんです。御質問は多分、疑心暗鬼をどうやったら解消できるかということなんですが、これも日本の不良債権問題、まあ海外でもいいんですけれども、ここに一つの解があります。ディスクロージャー、情報提供です。つまり、感染症という未知なるものに対して、これは恐らく政府も、もしかすると医療関係者も未知のものかもしれません。そういうときには、その分からないものを公開してみんなで考えていくと。  日本人には学ぶという非常にいい文化、カルチャーがあります。つまり、政府あるいは公的機関が情報を提供すれば、知っていることを全て提供するとそれで理解していくんですね。つまり、政府が仮に分析結果を出さなくても、民間の間、あるいは民間の研究者の間で見解がいろいろ出てくると。  恐らく感染症というのは初めての経験、「バブルは別の顔をしてやってくる」と私は本を別に書いているんですけれども感染症も多分、MERS、SARS、別の顔をしてやってくるんですが、でも、新しいものが出てきたときに、前の経験のときに学んでいれば新しいものに対する免疫はそこで付いている、この免疫が恐らく疑心暗鬼を解消するのに非常にいい。  ですから、学ぶことをみんなでやると、その前提になるのは情報提供だと、これが疑心暗鬼対策として有効だと私は考えます。
  105. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございました。  もう一問、熊野さんにお伺いをしたいと思います。  今、昨日からですか、中国、韓国からの入国の制限が行われてきていて、もう観光客だけでなくてビジネスマンの行き来も非常にしづらくなってくると。それから、日本企業の中には、韓国や中国からのそれぞれ部品ですとか、そういったものが調達できなくて非常に困難に陥っているところもある。これは、今そういった中で、工場の進出、あるいは部品調達などについて、中国に一極集中しないで、集中しないで東南アジアに移ったらどうかとか、あるいは日本に回帰をしてほしいというようなことも出ています。それで、企業の日本回帰ということについて熊野先生にお伺いをしたいと思うわけです。  私自身は、日本の産業の空洞化が進むということを阻止する観点からも、できるだけ日本に企業が帰ってきてもらう、あるいは工場が日本に帰ってきてもらうというのは非常にいいことだと思っています。一方で、これも先生の著作、昔書かれた著作の中でありますけれども、そのサプライチェーンを変更していくとか、あるいは人件費などが高く付いて、なかなか日本に回帰をするというか、あるいは工場が海外に出ていくというのは避け難い、企業の論理からするとなかなか避け難いということで、その空洞化、産業の空洞化を防ぐのは実際にはなかなか難しいんじゃないかということも書かれておられるわけですけれども、一方で、やはりこういった様々な危険に対応する意味では国内に産業があった方がいいというのも、私もそう思っているわけです。  そういう意味で、国内に回帰をしてくるという可能性、こういったことが、条件があれば帰ってこれるんではないか、そういった観点からお考えをお伺いできたらと思います。
  106. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) ありがとうございます。  今の御質問を少し私なりに整理すると、今回のコロナ対策で止血と復旧と復興があるとすると、おっしゃっている御質問は、復興のアイデアについて多分御質問があるんじゃないかと思います。  まず、ちょっとサプライチェーンの話から、二〇一一年の話、震災のときの教訓を言うと、あのときは車載用の半導体が調達不能になって世界的にサプライチェーンが止まったんですが、その後どうなったかと。自動車産業は三か月間は生産は震災前より大きく落ち込んだんですが、二〇一一年の秋ぐらい、十―十二月には元の水準より右肩上がりになって成長していきました。そういう意味では、サプライチェーンの停止というのは恐らく三か月ぐらいだと思います。今回、農民工が三億人、都市に戻ってないので、どのぐらいになるか、まだマグニチュードは分からないんですが、自動車の例で分かるように、右肩上がりの成長が描ければ、自動車産業のように、復旧した後、復興に戻っていけるんじゃないかと思います。  もう一つ、回帰の、国内回帰の話なんですが、恐らく、これは日米の貿易戦争からもう既に中国一極集中を見直し、ベトナム、ミャンマーあるいはタイなどへの分散が起こっていて、そういう意味では、今回も恐らく、たしか東日本大震災の後、経済白書のアンケートでは三割の企業が分散、生産拠点の分散を考えるというふうに答えていたと思うんですが、それと同じことが起こると。  そういう意味では、日本に回帰せずにベトナムやミャンマーに行く代わりに日本の魅力を高めないといけない。これは恐らく教育水準だと思います。  私は、出身は山口県で、地元の山口の工場回帰とかそういうことも関心を持っているんですが、なぜ企業が地方に進出するかというと、優良な労働力が確保できて、そこで研究開発あるいは付加価値を高めるようなことができる。海外でできないような国内にいい人材が集まれば、それは地方に工場立地が進む、あるいは国内回帰が進むチャンスになるので、教育水準を上げ、地方大学とかが企業とコラボレーションを取りながらいい人材を育てていくということが一つの回帰の条件ではないかというふうに思います。
  107. 山田修路

    山田修路君 ありがとうございました。終わります。
  108. 田村まみ

    田村まみ君 共同会派、国民民主党の田村まみです。今日はよろしくお願いいたします。  熊野公述人、そして野村公述人におかれましては、本当にお仕事がある中でこうやって私たちのためにお時間を割いていただきまして、本当にありがとうございました。是非、これからの私たちの審議、そしていろいろな政治判断をする中で、御見識あるところの内容で御示唆いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。  さて、今の新型コロナウイルスに関する、本当に中小企業を発端に倒産や経営破綻ももう目に見える形で出始めておりますし、経済の悪化のステージというのは、当初は、元々、新型コロナが少し引き金になったかもみたいなことで、それ以前のいろんな経営の問題があった中でというふうなところも言われていたんですが、既にもう明らかに、この新型コロナウイルス対策によっての海外との交流が少しずつ閉ざされていく中で出てきている影響だというふうに分かり始めました。  そんな中で、新型コロナウイルス感染拡大が、熊野公述人の方にもありましたけれども、やはり個人消費、インバウンドも含めての個人消費の低迷に私は拍車を掛けていると思いますし、私自身も七月にこちらの国会来る前まではスーパーマーケットの方で勤めていましたので、本当に大手の百貨店がこの二月、売上げが軒並み実績下回ることが起き始めていて、本当に今、いわゆるサービス、レジャー、外食などの予約キャンセルの客数減少に見舞われるなど、本当に業種が幅広く影響が出てきているというふうに思っております。  そんな中で、お二人がお話しするところで言及された部分はあるんですけれども、雇用調整助成金について、今、政府は幾つか施策を出していますけれども、これで十分だという声はなかったと思います。まずは対策を打っているというのは、一旦はお二人も御評価されたと思うんですけれども、ここから悪化する業種が例えば絞られるとか、何か対象範囲をある程度もう少しこういうところに拡充した方がいいとか、もう一段その雇用調整助成金の範囲の中でまずはできることがあるんであれば、その企業を守る、そして雇用を守るということにつながると思いますので、そういう視点で、雇用調整助成金のところの中でもう一段というところがあれば御示唆ください。よろしくお願いします。お二人に。
  109. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) どうもありがとうございます。  今回、御指摘のように、雇用調整助成金の、何というかな、隠れた特例措置というのがありまして、それが非常に、一定の、ああ、少しは考えてくれているんだなという思いは出てきたのは間違いないというところです。  ただし、先ほども申し上げましたが、上限額が八千三百三十円というのはやはり低いということです。しかも、これも一〇〇%補償した場合に限定をするというようなことだし、この一〇〇%というのが結局、相談なんかであったのは、飲食店で、行ってみたら帰れと言われたとか、あるいは、短時間なので、八時間のところを六時間にしてくれと言われたとか、あっ、失礼、八時間のところを二時間にしてくれと言われたとか、そういう部分もやはりきちんと対応できるようにするということと、適用日については状況によって変更するということですので、それは変えていただいていいということと、あとは、やっぱり手続問題で、今回も手続問題については少し簡易にするというふうに言われていますので、それは期間、実績、それらの要件緩和ですね、それらを緩和してほしいと。  地域の限定というのは必要だとは思うんですが、地域が限定しなくても、全国的にやはり休業だとか閉鎖だとかそういうことが広がっているということを考えると、やはり申請があった場合についてはこれを基本的に認めていくということが必要になってくるんだろうなというふうに思っています。  更に言えば、あとはやはり補助率ですね、助成の率だというふうに思います。やはり中小企業にとって、やっぱり三分の一を自己負担するということは、それを捻出できる可能性があるならば別ですけれども、今回のように丸一か月間あるいは丸二か月間ゼロになる、あるいは半分になるというような事態の中で、これがさらに回復したとき、先ほど来あるように、幾つかの経済効果が生まれたとしてもそれは元々予測されているもの、あるいは想定されているもので、このマイナスかゼロというのはこれは予測の外にありますので、そういう点からいくと、中小企業者がこの助成金を申請しやすくするためには、やはり全額これを補助するということが必要になってくるということであります。  そのほかにも幾つかの措置はされていますので、これらについて対応していっていただければというふうに思っています。
  110. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) ありがとうございます。  私も、実は身近なところで、商店街の人、飲食店にどのぐらいダメージがあるかと聞いているんですけど、そのとき必ず聞くのは、雇用調整助成金って、あなた知っていますかと言うんですね。たまに知らない人もいます。  日本は、長く不況というか経済危機に見舞われずに、震災でももう九年前ですし、リーマンもそれ以上前です。金融不況はもっと前だと。つまり、危機に見舞われないと過去の経験が忘れられたりすると。  制度拡充はもちろん私必要だと思いますが、その前の段階で、周知徹底、身近にこの制度が利用できるんだと、そういうのが必要で、例えば雇用調整助成金、雇調金といいますけど、雇調金の手続、どのぐらいで申請してどのぐらいでお金が入ってくるのかとか、そういう実務的な知識も必要だし、私は、いろいろ日本の中でネットワークが、有意義なネットワークがあって、例えば税理士ですね、中小企業の人で税理士さんとの関係が非常に強い人多いでしょうから、税理士、中小企業診断士、あるいは社労士ですね、フィナンシャルプランナーでもいいのかもしれません、いろいろなそういうネットワークを通じて周知、利用についてのいろいろな知識を普及し、もしも危機が起こったときはそういうセーフティーネットがあるんだよということを広報、利用してみるというのが非常に重要なことではないかと、まず前提はそう思います。  おっしゃっているとおり、去年、台風十五号、十九号があったので、そのときの政策、特例措置みたいなのがあって、それが今回も非常に生きているということは非常にいいと思うんですが、恐らく、少し長い目で見てみると、休業補償が正社員も非正規も一律で六割でいいんですかと。  いや、例えば、非正規の人たちは少し前までは百三万円の壁とか、今も百五十万円にこう上がったり百三十万になったりするんですけれども、それに更にその六掛けで休業、仮に休業扱いができたとしても、非常に賃金水準が低くなるので、それはちょっと雇用形態によって分けた方がいいんじゃないかなと。あるいは、六割というのは低過ぎるので、全額はいいかどうかちょっとよく分からないですけれども、八割とか七割の水準まで水準を引き上げる。あるいは、そういう、普通六割のところを引き上げるのであれば、それはホテル、飲食店、レジャー産業など特定業種に絞り込むという手もあるかもしれません。さらに、中小企業については三分の二、大企業については二分の一というのを引き上げていくと。これは台風十五号、十九号でとられた措置ですけれども、そういう柔軟な方法もあると。  そういういろいろな見直しをしながら、制度の設計というのは終わりじゃないので、トライアル・アンド・エラーでその制度の使い勝手を良くしていくと、雇用調整助成金自体、私は非常に高く評価する制度なので、そういう柔軟性、肯定的に見直しを考えていくということは方向性としてはいいんじゃないかと思います。
  111. 田村まみ

    田村まみ君 ありがとうございます。  野村公述人におかれましては、本当にパートタイマーで働いている人たちの、ふだん八時間なんだけど六時間になったときどうなのかとか、まさしく私もそういう声を受けていますし、今様々な対策を政府が提案してくる中で私たちもどう判断していくかという中で、一つ、中身もそうなんですが、なるべく早く一旦確定したものを出して、企業の人たちもその判断をしていくということができなければ、やはり、いわゆる雇用の期間に限りがある人たちに対してどういうふうな補償ができるかというのがやっぱり出ていかないと思いますので、私は、中身の充実もそうなんですが、スピード感も持ちながら今検討していきたいなというふうに思っております。  その中で、さっき私はあえて雇調金の方を強調してお話ししたんですけれども、今、予算委員会の中の議論等々でも必ず出るのが、要は、所得補償の中で、労基法の中で休業手当とあと健康保険の傷病手当金の中で所得補償される人たちはいるんですけれども、それもなかなか企業が休んでいいという、その企業責かどうかというところの判断も相当グレーです。  その中で、もう一つ出ているのが対象にならない人たち。傷病手当が受け取れないいわゆる自営業者や、特にフリーランスというのは今、世の中のマスコミの報道等々でも大きく取り上げられている区分の方たちではないかというふうに思っております。また、配偶者の扶養の被扶養者の方といわゆるパートタイマーの時間短い人たちですね、そういう公的な所得補償を受けられない人たちに対して全員全額できればいいのは重々承知しているんですけど、それ以前に今、政府からの答弁は、どのような人たちにどれだけ払うかのそこが判断がしづらいので、なかなかいわゆるフリーランスの人たちは対象にできないというのが答弁として目立っているんですね。  なので、そういう人たちを対象にしようと思ったときに、どうやってそこの、いわゆるフリーランスの人たちの所得を見極めて、その人たちが対象なのかどうなのかということを判断していけばいいかみたいなところを少し御示唆いただければと思います。それも両公述人お願いします。
  112. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 実は、御質問は非常に難題で、基本的にそこにはノーワーク・ノーペイというのがあって、やっぱり働き方が波があって平均賃金みたいなのが出ないので、例えば確定申告で、その人が前年申告したものを参照できるような形。でも、それは恐らく国税庁とかそういうところのデータベースを利用しないといけなかったり、申請したりしないといけないので、非常に大掛かりなものになって機動性は恐らくないんじゃないかと。まあ私、答えを持っていないんですけれども。  あと、やっぱり、これ保険会社の人間だから言うわけじゃないですけれども、生命保険というのは、いざ困ったときに、平常時にやっぱり気が付かないんですが、何か保険事故に遭ったときに、ああ、保険に入っていてよかったなというふうに思うんですよね。ですから、フリーランスの人、自営業者の人も、何らかのそういう所得補償の保険、これは公的制度か民間の制度かよく分からないですけれども、これもちょっと、すぐに早急にという話ではないですけれども、将来については何かそういう制度的な保険の枠組みをつくっていく方が重要なのかなと。  今、定年延長の脈略で兼業とか副業とかということが非常に喧伝されていますが、あれも少し言葉が先行している部分があって、そういう制度ってやはりまだ未知数な、まだ定着していないんですね。ですから、そういうところを定着させるにも、やっぱり雇用の安定性、フリーランスや自営業者に対しても、何か保険に入っておけば困ったときに助かるよみたいな制度設計というのも、短いスパンでの対策以外の長い制度設計としてそういう発想は必要なんじゃないかと思います。
  113. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) まず、フリーランスについてですが、皆さん御案内のとおり、二つの形態があるというふうに考えています。  一つは、フリーランス、請負や委託などの形態を取りながら実質的に契約者、相手方等の支配従属関係にあるそういう偽装的なフリーランスというのがあり、これは当然、実態を把握した上で雇用保険の対象とすべきだというふうに考えています。  それによらない自主的なフリーランスの方々もいらっしゃると。この人たちに対しては、それでもやっぱりそういう人たちは高度な技能やあるいは技術あるいはそういう研究成果を持っているわけですから、これをやはり将来につなげるという政策的価値は十分あるというふうに考えていますので、その人たちが急に転職したり就業できなくなったりするような事態は避けるべきだと、これは国の政策として避けるべきだというふうに考えております。  したがって、一般会計を使ってこれを救済をするということが必要になってくると。その際は、やはり雇用調整助成金の仕組みを準用して、あるいは、その仕組みを活用して、例えば前年同期との比較であるとか、そういうことによっての収入減というのがどのぐらいもたらされたのかとか、あるいは一月、二月、三月でどのぐらい低減しているのかとか、関係書類を提出することによって、これを対象としながら、中小企業者も含めてですけど、やっていく必要があると。  特に、中小企業者についても、先ほどもおっしゃられましたが、やはり日本経済を支えている中心は中小企業者なんです。ここのところが一つでも欠ければ、新幹線の頭が造れないというようなことの事態にだってなりかねない、まあ、そこの企業がそうだというわけではありませんが、例えばで言えばそういうことだってなりかねないわけで、これは日本産業全体にとって大きなリスクを伴うものだというふうに考えています。  したがって、これは一般会計によって、先ほども言いましたが、雇用調整助成金の仕組みを援用してやると。しかも、この事態というのは緊急事態なので、多少要件は緩和をし、大きく網を掛けてやっていくということが一つ。もう一つは、できれば前渡的、前渡金的な渡し方も工夫していただくということが必要なのではないかなというふうに考えています。  以上です。
  114. 田村まみ

    田村まみ君 あと一問ずつお二人にしたいんですけど、野村公述人の方にまず。  今日、職場の現状と課題というふうに具体的にたくさんの事例いただきました。これは、御本人の生活、雇用の視点で多く書かれているんですけれども、小売、サービスの現場で、やはりサービス等々が十分に受けられないときの顧客やサービス提供者からの様々な言葉の投げかけみたいな事柄という、いわゆるカスハラみたいな言葉が最近出ているんですけれども、その辺は今回の新型コロナ影響で声として上がっているでしょうか。
  115. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) 初期の段階も含めますと、例えば、保育園で何にも対策を取らないのかとか、あるいは、冬休み中に中国に行って帰ってきて、今多国籍化していますから、帰国した人を別な、隔離しないのかとか、そういうことを行政なり園に対して言われるということはありますが、それは一般的な不安の表明であって、明らかにハラスメントに至るというような状況ではないと。  あと、非常に営業している人たちとか皆さんが気にしているのは、やっぱりマスクをしていることに対して、お客さんに対する失礼にはならないのかというようなことが心配をされていたということです。
  116. 田村まみ

    田村まみ君 ありがとうございます。  熊野公述人に、済みません、時間がないんですけど、もう一問。  個人消費のところ、内需のところ、私は、下振れをもう少し抑えるというところ、施策しなければいけません。先ほど、経済対策の中でいろいろとありますが、今後、オリンピック終わった後、マイナポイントを使っての対策、私、これキャッシュレスポイント還元も含めて、なかなか、本当に経済の上振れになったかというと、なかなかそうじゃないと、使う者に対して割引になっただけじゃないかというふうに思っているんですけれども。  これ今、さっきの、全額補償難しいとか、いろんな雇調金とかの金額の中で、本当にこのマイナポイントをこのタイミングでその金額として使うのが今の日本コロナ対策の中で有用なのか、それとも、いや、違うところに使うべきなのかというのは、もちろんカードの普及という別のものはありますが、どうでしょうか。
  117. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 目的によってツールが変わってくるので、マイナポイントは恐らく制度の、マイナンバーの定着みたいな方に重点を置いていて、景気刺激はやっぱりキャッシュレスの方がメーンで、それは六月までというふうに決まっているということだと理解しています。
  118. 田村まみ

    田村まみ君 ありがとうございました。  終わります。ありがとうございます。
  119. 伊藤孝江

    伊藤孝江君 公明党の伊藤孝江です。今日はよろしくお願いいたします。  熊野公述人、また野村公述人におかれましては、本当に御多忙の中、今日お越しいただきまして、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。  まず、経済対策について熊野公述人の方にお伺いをさせていただきたいと思っております。  今回、新型コロナによる経済への影響というのを軽減するために、今現状として予備費を使っての対策という形で経済対策も含めてしているところではあるんですけれども、先ほど来、雇用調整助成金について高い評価をしているというお言葉もあったんですが、これまでの対策の中で、まずこの現状の中での対策として、ここは経済対策、評価ができるという部分と、そしてまた、緊急で今打ち出しているもの以外でするべきこと、こういう経済対策があるのではないかという点について、是非お考えをお伺いできればと思います。
  120. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) ありがとうございます。  評価できるというか、不幸中の幸い、あってよかったというのは、やはり安倍政権が、事業規模二十六兆円で、二・三兆円ですかね、補正予算では、本予算の方では一・八兆円と、あれは恐らく公共事業などを中心にして、あれは台風十五号とか十九号の脈絡で出てきているものだと思いますが、総需要を全体を押し上げるという意味では非常によかったなと。  あとは、消費税を引き上げる見返りに高等教育の無償化、住民税非課税世帯への無償化というのもよかったでしょうし、一つ、その応用として、次の質問とも絡むんですけれども、あるとするならば、キャッシュレス決済のところですね。  キャッシュレス決済って、今、六月で終わるので、これを延長しようみたいなことを言うエコノミストもいるんですが、一つ別のアイデアとして、六月までに期限を決めて一〇%にすると。何かそうすると、消費税全部、何か一〇%だからゼロになっちゃうじゃないかと言う人もいるかもしれませんが、もうこれは景気刺激として五%を一〇%にすると駆け込み需要がより大きくそこに出てくると。しかも、それは恐らく飲食店とかサービスとか家電製品の販売とかに効くので、そこで山ができると。で、谷はどうするんだというと、一応、オリンピックを七月二十四日からやる前提でいうと、オリンピックがその反動減を抑えるので、一つの考え方としては、キャッシュレス決済を一〇%にして期限どおり六月にやめるというのも一つ案なのかなと。  あと、聞き及んでいる話では、今、旅行需要が非常に沈滞しているので、ふっこう割ですね、これも台風十五号、十九号に対する対策みたいなので行われているので、復興旅行券みたいな、そういうものを、一人五千円でもいいんですけれども地域ごとあるいは全国的にやるというのも一つ、今疲弊しているホテル、レジャー業界に支援になるのかなという気はします。
  121. 伊藤孝江

    伊藤孝江君 今、熊野公述人からいただいた御意見、すごく、あっ、そういう考えもあるのかという、そのキャッシュレスのところも私も今思わせてもらったんですけれども、これから、もちろん状況に応じての対策を講じるという形になるんだと思うんですけれども、こんな観点、こんな視点を入れた政策というところを、特にこれまでなかったようなところで考えておられるようなものがありましたら、是非教えてください。
  122. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 期待されている答えでないかもしれませんが、我が国には結構使える、ワークさせるとすごいいい、いろんな制度があるんですね。例えば、それは交際費です。八百万円の交際費の枠があったり、損金に半分が算入されるとか。何か大企業ではちょっと縮小されるような傾向があったりするんですが、なぜ大企業のその交際費の優遇が縮小されるかと、みんなが思っていたほど使わないから縮小されるらしいんですけれども。  今こそ、やっぱり交際費は八百万円まで使えるんだからみんなで使おうと。震災のときの私はイメージが非常に強いんですが、頑張ろう消費の一環で、中小企業が、仮に今回のコロナ感染が終息、あるいは終息に近づいたときにみんなで交際費をたくさん使おうと。これだけ自粛が効いたんだから、みんなでお金を使おうもやっぱりすごく効くと思うんですね。そのときには、制度的なバックアップとしては交際費の枠があるので、できるだけこれを使おうと。既にある制度を使おうと。  今ちょっと聞かれている話と違うかもしれないですけれども、今、マーケットが非常に混乱していて、日銀は金融緩和すべきじゃないかという意見もあるんですが、日銀はもう既に八十兆円の枠で国債を買い入れることができるので、今、枠内買っていないので、追加緩和よりももっと国債を買えばいいし、ETFも六兆円まで全然買っていないので、こういうときほど枠内でやればいいと。  だから、新しいもの、新しいものよりは、今ある制度の中でもっとできないかという発想でいろいろ見直してみるということが実はより重要なんじゃないのかなというふうな気がします。
  123. 伊藤孝江

    伊藤孝江君 ありがとうございます。  ちょっと視点を少し変えて、これまでのSARS、MERSも含めての経済への影響ということでちょっとお聞きできればと思うんですけれども、これまでにSARSやMERSなどが発生して流行したというときにも、やはり日本経済、世界経済に大きな打撃が与えられたのではないかと思いますし、当時、もちろん将来的にも新たな感染症が発生するという、そういうリスクというのか、可能性というのはやはりあるというのは想定をされていたと思います。  以前、例えばSARSのときのことも今回よく比較の対象としても出てくるのではないかと思うんですけれども、SARSのときに、そのとき経済的打撃を受けたと。ただ、これからも同じような感染症、新たなものが発生するかもしれないということを考えた上で、日本経済、世界経済に関して講じてきた対策なりというのがまずあるのかどうか。あるいは、そういうような対策というのは、結局発生してみないと分からないものなので、経済対策としてはなかなか、都度都度マイナスを補うことから始めて、やっぱり先ほどおっしゃっていたような、止血とか復旧、復興という形で進めていくしかないんだというふうに考えるしかないのか。  この医療とかの体制は別として、経済対策というところで、この感染症対策について、これまで捉えてきたもの、やってきたことがどんなふうに考えたらいいのかというところについて、熊野公述人にお伺いをしたいと思います。
  124. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) これちょっと経済対策に絡まない話になってしまうかもしれないんですけれども、実は今回の感染症は、さっきSARS、MERSと言いましたけど、これは日本がかつては被害が少なくて、中国とか台湾とかが非常に多かったんですよね。アジア、東南アジア全体がそうですけど。  やっぱり、グローバルに知識を共有すると。今回もなぜ日本だけ検査がこんなにできずに、この前の公述人の人もこういうQアンドAしていたんじゃないかと思いますが、やっぱり海外の事例を学んで、将来の感染症対策、これは検査とか患者の受入れ、そういう海外の事例を、これ、学者とか研究者がやる話なのかもしれないですけれども、海外事例をもう少しシミュレーションとして生かすというプロセスがすごく重要なんじゃないのかなと思います。  実は、あのSARSの経験も、私、すごい重要で、何か、SARSも三か月間だったんですが、世の人々は、二〇〇三年の七月五日に終息宣言がWHOによって宣言されたというふうに、今、紙ではあるんですが、でも、いろいろ当時のことを考えてみると、それより一か月前ぐらいにもう鎮静化していたんですね。それはなぜかというと、中国患者が六月の頭に出て、その後、台湾の患者が遅れて、つまり、今のコロナも全く同じなんですけど、最初に中国で発生して、中国で鎮静化して、その後海外で燃え広がっていて、中国ではもう安定化していたと。中国では、実は、六月の二十四日ぐらいですかね、いろんな地域で危険地域の解除がどんどん行われて、遅ればせながらWHOは二〇〇三年の七月五日に解除したと。  この知識を言うだけで、いや、解除宣言というのは一気に行われるんじゃなくて段階的にその状況を見ながら行われるんだという知識を得るだけで、恐らく、事業者というか、この先どうなっているんだろうという人たちはすごい安心できるので、過去の事例の知識を普及させる。  情報開示も必要だと、私、さっき情報開示が必要だというふうに言いましたけど、情報開示以外に、海外の事例でどういうふうにやり過ごしたかと。過去の経験に学ぶというのは人間の思考のパターンの代表例なんで、経済への対策というよりは、不確実性自身が消費を抑制しているので、不確実性対策として、情報提供あるいは情報共有、過去に学ぶ、そういうことが必要なんじゃないかなというふうに思います。
  125. 伊藤孝江

    伊藤孝江君 本当にこれからますますグローバル化というのか、ビジネスとしても、また観光も含めたそういうビジネスとしても、移動を考えたときに、世界という単位で考えないといけないものがどんどん増えてきているし、これからもますます増えると思うんですけれども、その中で、このような今回の事態を受けて、世界全体の例えば人の移動であったり世界経済というものに対して今後どういう影響を与えるのかと。  短期的な当面、今年の段階と、来年以降の中長期的なそういう構造変化、これの可能性についてお教えいただけますでしょうか。熊野公述人、済みません、この点もお願いします。
  126. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 今、金融マーケットでは非常に悪い話が出ていて、アメリカの長期金利が過去最低になって日本化するんじゃないかと。つまり、アメリカも長短金利がゼロ金利化するんじゃないかというふうに言われていて、これは恐らく今回のコロナの悪影響アメリカ経済に甚大な影響を与えると、グローバル化はグローバル化でもその悪い方の例で、アメリカ自体も活力を何か失うんじゃないかという悲観的な説がありますが、御質問に対する答えは、私、その反対側で、やっぱり海外でも日本でもいろいろな危機の教訓を、リスク耐性を高めると。レジリエンシーというんですかね、耐久性。  政策、あるいはいろいろなその不確実性に対するケーススタディーを政府の中でも共有しながら、感染症が起こったときはこうするとか、地震が起こったときはこうするとか、そういう、恐らく欧米ではこれから、私の見方では、リスク耐性を強めて、単なる伝統的な財政政策以外に直接的に消費に非常に喚起ができるような対策が出てくるとか、そういう政策ツールの革新、そういうことが起こってくるんじゃないかなというふうに思うんですが、日本はそれに負けずに不況対策の最先端の、いろいろな対策研究をこれから深めていくことが必要なんじゃないかと。これはポジティブな私の将来についてのビューです。
  127. 伊藤孝江

    伊藤孝江君 ありがとうございます。  次の質問はお二人にお伺いをさせていただきたいと思います。  先ほども、これまでもありましたけれども、個人消費がやっぱり悪くなっていると。当然、経済的な現状の不安とこれからの状況、不安ですね、分からないと。不確実性という言葉も先ほど来出ておりますけれども、そういうものも含めて、なかなか個人消費を前向きにしていくような、そういう意欲とかマインドみたいなものがどんどんなくなってきているんじゃないかという現状の中で、やっぱりこの個人消費をいかに回復をさせていくのかというのは、応援消費みたいな話もありましたけれども、すごく大事なことなのではないかというふうに思っております。  これから、まだ現状としてはピークがどこになるのか、終息がどんなふうに落ち着いていくのかというのも分からない中ではありますけれども、今後、個人消費を上向きにしていくために有効な対策、どのようなものを特にこれをということで考えておられるのか、また、どんなタイミングでそれを講じるのがいいかという点について両公述人の御意見を伺いたいと思います。
  128. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) ありがとうございます。  個人消費を上げる一番の手は、私はやっぱり賃金を引き上げることだというふうに考えています。  そのためにも一つ重要なのは、底上げというのが重要になってきていて、やはり最低賃金を引き上げるということ、そして、今回やはり全国的に広がっている被害などを考えると、全国一律の最低賃金というものの引上げが必要だろうというふうに思っています。この後、終息した後に、大いに使おうと思ったときにその資金であるものがないというのは、やはり使いたくても使えないという状況になっているということですね。  二つ目は、やっぱり、そういう点からいっても、将来への蓄えというのに対する不安もあるということからすれば、やはり社会保障の現在の掛金自体を下げるということと併せて、将来のやはり社会保障の充実というのが必要になってくるだろうというふうに思っています。  よく財務省なんかは、社会保障費が予算を圧迫していると、こういうふうに言いますが、現代国家におけるやはり最大の役割は国民の社会保障をいかに充実させるかということでありますので、社会保障の充実ということをやはりきちんと、そのための予算というのが必要になってくるということだろうというふうに思います。  そして、もう一つは、やはり労働時間の短縮というのが必要です。  今回、デパートを始め多くのところが営業時間の短縮をしています。それによって確かに短期的に見れば営業収入は落ちていますが、収益自体がどういう形で現れてくるのかというのはこれからだろうというふうに思っています。それに見られるように、二十四時間社会、あるいはもう少し言うと、大量生産、大量消費というこれまでの日本の経済を支えてきた考え方自体を大幅に変更するいいきっかけだった。  実は、九年前の三・一一のときもそれが大きなきっかけになっていたんですが、どうしても成長幻想というのかな、それがあるということからするというのがあるので、やはり一人一人の個人を大切にしたそういう政策を徹底することによって、私は、個人消費はあるということと、あとは、それらの政策を総合的に展開することによって、将来の人生設計、これが可能になる社会を築いていくということが重要だというふうに考えています。
  129. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 野村公述人と全く意見は同じなんですが、少し形を変えてお話をしたいと思います。  賃上げが一番大切で、特に今みたいなショック、不確実性があったときに賃上げを続けると、企業経営者はどう思うか分からないですけど、勤労者は、不況期でも賃金が上がったんだと、非常に自分の将来所得に対する自信が付くので、これは非常に重要だと思いますが、一つ言いたいのは、二〇一四年ぐらいから、賃金が上がってもその上がり方よりも消費は鈍いんですね。つまり、貯蓄割合自体がこう、あっ、ごめんなさい、消費割合自体が減って貯蓄率が高まっているんですよ。二〇〇〇年から二〇一四年まではもう一貫して貯蓄率ゼロになるんじゃないかと言われていたんですけれども、二〇一四年から現在に至っては貯蓄する方が多くなっている。  これはなぜかというと、これは将来不安があるので、やっぱり年金制度ですね。二〇一四年、何があったかというと、消費税もあるんですが、実は厚生年金の報酬比例部分の受取が二〇一三年から三年ごとに六十歳支給や六十五歳支給になって、シニアの人々はみんな雇用不安になって、若い世代も、俺の年金はいつもらえるんだと、もしかしたら七十までもらえないんじゃないかと。やっぱり社会保障に関して、働けばそれだけ年金収入を補填できるんだと、そういう発想が大切だと。  短期でいうと、旅行のクーポン券とかキャッシュレス決済ですけれども、短期以外に中期でいうと、やっぱり雇用の部分で、これは二〇〇三年のときに、いろいろ雇用不安が出たときに、アンケート調査とかでは、私、調べたり研究したことがあるんですけれども、消費が減る理由というのは、身の回りの人が、身近な人が失業していて、その苦労話を聞くと自分も消費マインドが萎えるというのがあるんですね。これは逆手に取りましょう。周りの人が失業したんだけれども、職探しは意外にやりやすくて、前よりもいい職場が見付かったと。実は、失業時における職探しの柔軟性を高めるということは消費マインドを上げることになるので、これは長期の社会保障じゃなくて、中期の政策としてはそういうアイデアがあると思います。
  130. 伊藤孝江

    伊藤孝江君 以上で終わります。ありがとうございました。
  131. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。日本維新の会の石井苗子です。  両公述人皆様、お二人の皆様は今日はお忙しいところおいでいただきまして、ありがとうございます。専門的な示唆の御意見いただきまして、大変感謝申し上げます。  私は、この新型コロナウイルスが与える一般的な経済への影響について質問をさせていただきます。  熊野公述人の論文の中に、訪日中国人観光客が二〇二〇年の一月から三月に半減すると消費が二千五百億円失われるということで、コロナウイルスがもし消息せずに長引くことになりますと、年間で一兆円の損失額になる計算になります。こうしたことを踏まえまして、中国の方の観光客が日本に来なくなるだけでこれだけの損失があるということなんです。  大きな影響があるんですが、先ほど訪日外国人の観光客がサービスのセクターと同じ関連性があるというお話がありました。これ、ホテル業や飲食業を始めとする観光業界というのはこれまで投資してきたわけですから、今後コロナ影響が長引いたときに、先ほどのサービスセクターの業界全体にどのくらいの大打撃があるのかという、この計算をもしお持ちでしたらお伺いしたいと思いますのが一つ。    〔委員長退席、理事三宅伸吾君着席〕  それから、熊野さんの御意見の中に、ダメージコントロールという言葉が出てまいりました。これも論文の中に書いておられますけれども、政府はこれまでインバウンドの旗を振ってきたわけなんですね。その中で、インバウンドの政策を始めたり進めたりするに当たって、こうした感染症のようなリスク対応することを考えるべきだったか、それとも、想定外の事態なので、このようなリスクに備えるということは不可能なのか、この辺の御意見をいただきたいと思います。
  132. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) ありがとうございます。  先ほど私の論文で、一―三月、中国人が来なくなると二千五百と言ったんですが、ちょっと私の当初の説明では四千億円と言っていて、これは違うんじゃないかということからちょっとお話をしたいんですが、メーンランド・チャイナ、香港を除く中国中国本土ですね、それだけでいうと二千五百なんですが、韓国、台湾、そして香港を入れるともっと大きくなって、つまり、中国本土だけで考えるよりはより全体になって、そうすると、一―三月というか、三か月で四千億円になるので、もっとマグニチュードは大きいし、恐らくこれが三か月から半年、もうちょっと言えば、東京オリンピックが仮に延期になっただけでも、このマグニチュードはもっと計り知れないぐらいになるんじゃないかと。  とにかく、東京オリンピックがあるから、まだそこまでは頑張ろうという気持ちが今恐らくホテル業界とか、まあ供給過剰とおっしゃいましたけれども、供給過剰になったとしても、企業が蓄え、内部留保を使いながら雇用を支えていられるのは、東京オリンピックがあるからあそこでリカバリーを果たせるというような、やっぱりそういう期待があるんじゃないのかなというふうに思います。  ちょっと事態を言うと、実は去年の十一月に北海道に行って講演をして、いろいろ当地のホテル業界の人とかとも意見交換をしたんですけれども、当時は日韓関係が非常に険悪化して韓国人が来なくなったので非常に韓国人が少なくなって、そのときはもう中国人頼みだよねと、これで中国人が来なくなったら我々もう上がったりだと言っていたら今回のコロナの話が来たので、今回は、インバウンドを地域で分散して考えていても、今それが減っているので非常にダメージが大きいと。  じゃ、このダメージコントロール、どうすればいいのかというと、①はやっぱり東京オリンピックを予定どおり七月二十四日からやるというのが最大のプラスの効果になるのではないのかなというふうに思います。これ以外の効き目のある方法というのは思い付きません。  もう一つは、インバウンドをどうやって対処するかということなんですけれども、これ、今はやっぱり我慢の時期というか、今やっぱり世界的にその感染拡大が広がっているので、これをどうすることもできないので、今インバウンド産業の人たちは、将来、二〇四〇年に、四千万人という、あっ、六千万人という目標がありますから、その目標を達成するために、今、京都などでは外国人が多くなり過ぎていてオーバーキャパシティーだという話が出ているので、外国人の受入れ体制自体を拡大すると。  私も実は外国人の友達が日本病気になったりする経験を目の当たりにしているんですが、実はその日本にいる外国人でさえ、英語対応だったり、外国人の人がアメリカイギリスなどで受けているサービスを日本で受け入れられるかというと、なかなかそういう、まあ言語だけじゃなくて、制度としてなかなか自国と同じような対応が取れないと。  だから、今回のようなことが想定外だったかどうかに関しては、そもそも外国人が、日本で働いている外国人が病気になったときの受入れ体制自体が実は余りそう強靱、充実したものではなかったので、それを充実させていくことがひいてはいろんな感染症に対する受入れ体制を拡充することにもなるので、やっぱり外国人の、インバウンドだけではなくて、外国人の医療体制を複線的に充実させていくということも中長期で考えたときの訪日外国人の拡大策になるのかなというふうに思います。
  133. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。  インターナショナルホスピタルと英語で書いてあっても、受付が日本語でしか受けられないというような病院も日本でもたくさんありますので、今の御意見は非常に貴重な御意見だったと思います。  ちょっと視点を変えまして、先ほど、やっぱりマイナスなことばっかりしゃべらないでプラスの方向にというお話がありましたが、熊野公述人にお聞きいたします。  今、政府の、イベントや集会の自粛を呼びかけておりまして、高校野球が無観客になってしまったり、至る所で身近なイベントというのが中止されております。一方で、外食をする人が減ってスーパーの売上げが上がっているというような話もありまして、熊野公述人は、巣ごもり消費が拡大するという言葉が、私、御著書を読んでおりましたら書いてありましたので、日本経済全体を見て、今、自粛拡大で需要が増える業種というのがほかにどんなものがあるか、もしお気付きだったら教えてください。
  134. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 誤解のないように言うと、今、マスクとかばか売れしていますし、トイレットペーパーも、私も家庭で、八個あれば一か月もつので、とにかく八個を確保していればいいと言っているのに、何か八個以上トイレットペーパーを買いたがる人が我が家にいたりして、なかなか難しいんですけれども、トータルで考えてみると、何か自粛で増える巣ごもり消費は三ぐらいで、ダメージの方が四十か五十ぐらいあるので、増える消費はあるんですけど、減るダメージの方が、つまり、労働市場全体でいくとマイナスの方がすごく大きいと。  私は、極めて重要なのは、ちょっと最初の冒頭のお話でも差し上げましたけれども、やっぱり頑張ろう消費ですね。震災のときは東北を応援するために消費しようと。今回は、自分自身のために、今回の感染拡大がある程度落ち着いたら旅行にも行こうと、自分の旅行の消費は地域を活性化する、自分のために旅行に行くんじゃなくて、これは地域を支えるんだと。私も実は先週、友達の焼き肉屋さんが多分困っているだろうと思って、しばらく行かない焼き肉屋さんの友達のところへ行きました。  だから、雌伏のときは、やっぱり今回の冬が終われば、春になったら何をするかと。日本の消費というか、日本人ってやっぱりムードというのが非常に重要なので、是非、企業や政治のリーダーの皆さんは、感染拡大がある程度終息したらお金を使おうというムードをつくっていただければ、それに勝る消費刺激効果はないんではないのかなというふうに思います。
  135. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。  医療現場で働いているものですからしきりと気持ちが暗くなっていく方向にあるんですが、今の、大変、三月に、暖かくなったら旅行に行こうという、どこかでキーフレーズを作っていただければと思っております。  ちょっとまた分野が違う質問をさせていただきます。熊野公述人にお聞きしますけれども。  政府は、新型コロナウイルスで、一つの国への生産依存度が極端に高いということを危機として、危険、危機を感じております。危険を感じていると言ってもいいと思うんですが、その危険を認識して、中国などの生産拠点を、先ほどにもお話がありましたが、国内や東南アジアに移転させる企業を後押しするという方針を政府は取っていくということなんですが、先ほどに質問も出ておりましたけど、自動車メーカーなどはこれまで生産拠点を中国などに移してきたわけですけれども、政府が後押しして再度国内に生産拠点を移動するということは、これ長期的に見て可能でしょうか、それとも可能じゃないでしょうか。
  136. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 御質問の答えから最初に言うと、可能だと思います。  これ、山田先生からもちょっと国内回帰の御質問があったんですけれども、今、製造業の競争力というのは、もう安い労働力じゃないんですね。私も著書でいろいろ論じたことがあるんですけれども、生産性は恐らく付加価値生産性になっていて、つまり、労働力の投入を小さくするんじゃなくて、労働力が生み出す付加価値をいかに大きくするかと。付加価値を大きくする源泉は何かというと、一つはスキルですね、あとは教育水準。教育水準というのは、単に作る人の教育水準ではなくて、消費者を啓蒙すると、非常に高度なもの、あるいは少し難解で複雑なものまで売れると。  だから、そういう意味では、付加価値生産性を高めるように日本企業あるいは製造業がシフトしていけば、国内回帰も十分に可能だと思います。  これは、国内回帰も単に東京に集まっただけではいけないので、やっぱり地方で、優良な労働力、付加価値生産性、アイデアによって価値を上げられるような、そういうプロダクトを作れるような産学一体になった体制が出てくると、国内回帰は非常に、これは長期の話ですけれども、できるのではないのかなと思います。  あともう一つは、やっぱり都道府県単位で見てみると、今は恐らく海外から国内回帰の機運が高まるような非常にチャンスだと。だから、やっぱり各県、都道府県というのは企業の誘致をもう少し活発にし、いろいろな受入れ体制をやれば、海外から海外へ分散するんじゃなくて、海外から国内へと生産拠点を引き寄せるような、だから、日本全国の各地がいろいろ労働供給の質を高めるとか税制優遇をするとか、そういう競争的なことをやれば、国内回帰がもう少し促されるのではないのかなという考えを持っています。  ありがとうございます。
  137. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。  海外から国内回帰のチャンスだということを今お伺いしましたので、野村公述人にお伺いしたいと思いますが、このように生産拠点を国内に移転するということになりますと、これは今国内で働く側にとっても就労機会が増えるということで歓迎すべきことなのではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
  138. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) 生産拠点を国内に移転するということは、やはり就労の機会が増えるという点からいけば、とても歓迎すべきことだというふうに思いますし、今言われたように、付加価値生産性を上げるという点では、要するに総合的な政策というのがやはり必要になってくるだろうというふうに考えています。
  139. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。  ちょっと最後の質問になりますけれども、お二人にお伺いしたいと思います。  新型コロナウイルスで雇用調整圧力が高まると言われておりますが、小売とかサービス業は非正規雇用の割合が高い、これは皆さん御存じだと思いますけれども、雇用調整圧力が強まると思われますということで、これは政府が雇用調整助成金の適用範囲を拡大すると、こう発表していますが、そもそも雇用調整助成金は雇用維持にどのくらいの効果があるのかと、これを一問目でお聞きしたいと思います。お二人にお聞きします。二問目は、今回の適用範囲の拡大の政策的な効果、どのくらいだと思われますか。この二つをお聞きいたします。
  140. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) ちょっとどのぐらい効果があるかというのは、なかなか先験的には分からないですけれども、私の説明の中でもちょっと紹介したんですが、今、非製造業の稼働率が非常に下がっていて、統計的な手法で導き出すと、大体百一万人の過剰雇用を企業は抱えているんですね。これは、人件費が百一万人分だけ時間の経過とともに掛かると。そこに対して、中小企業、二割ぐらいに負担が減ると、大企業は三割ぐらいに負担が減ると。  これは非常に時機を得た、非常にプラス効果は大きいと思います。これは裏返して言うと、雇用調整助成金が今回なければ、恐らく雇用調整圧力は物すごく高まると。  ただ、これは限度があって、たとえ人件費が二〇%に減ったとしても、三か月で終わるものが五か月、半年、一年続くとやはり失業が増えてしまうので、そういう意味では、雇用調整助成金は、止血作用としては非常に私はパワフルだと思いますし、更なる拡大余地もあるんじゃないかと思います。  済みません、二問目はどういう御質問。
  141. 石井苗子

    石井苗子君 済みません、雇用調整助成金が雇用維持にどのくらい効果があるのかという質問と、その適用範囲拡大の政策的効果はどのくらいかということなので、今のお答えでよろしいかと思いますが、お付け加えることが。
  142. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 付け加えるとしたら、自営業者やフリーランスの人たちはなかなか手厚くできないので、そこをどうするかと。それは枠組み自体が余りないので、なかなかフォローはできないですけれども、フリーランスや自営業者に対する補償が検討されているというふうに聞くだけで、それがなかった場合よりは雇用を吸収することができるので、いろいろなプランを複線的に出すということは非常に重要だと思います。
  143. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) 熊野公述人とほぼ同じですが、雇用維持に効果があるのかという点から言えば、雇用維持に効果はあるというふうに見ています。ただ、それで十分かというふうに言われれば、今の制度設計では不十分だというふうに言わざるを得ないと。  したがって、より効果を高めるためには、まず、中小企業に対する補助率を上げるだとか、あるいは申請に係る実績等に関する書類についても簡素化するとか、そういうこと及び全体的予算を増やしていくということがやはり必要になってくるというふうに思っています。  今、ちょうど学生たちが就職活動をしています。学生たちは一生働ける場を探して、今必死にやっているわけですよね。この一生働ける場を探している学生たちの期待に応えるためにも、その就職した企業で働き続けられる、そのことを保障するのがやはり役割ではないかなというふうに思っています。  そして、そのことを明確に、今回のような場合、特に明確に打ち出すことがアナウンス効果が高いということを考えれば、この助成金を拡大して適用するという今回の政策は、非常に政策的効果があるし、そういう点からいけば、やはり若い人たちも含めて、安心して働き続けられるんだなと、雇用は守られるんだなというふうな思いが強まるというふうに思います。  したがって、この若い人たちの思いを裏打ちするような具体的な政策を実施していくことが必要だというふうに考えております。
  144. 石井苗子

    石井苗子君 時間が来ましたので終わりますが、若者が将来の人生設計が持てないから目先の不安がそのまま将来の不安につながると野村さんがおっしゃっていたことを踏まえまして、これからの政策も考えていきたいと思います。  ありがとうございました。
  145. 山添拓

    ○山添拓君 日本共産党の山添拓です。よろしくお願いをいたします。  新型コロナウイルスによる国内への影響を考えるに当たって、既に昨年の十月からの消費増税によって国内経済に深刻な消費不況が起こっていたということがだんだんいろんな面で明らかになってきていると思います。昨日、内閣府が発表した昨年十月から十二月のGDP二次速報でも年率マイナス七・一%だったとされています。政府も予想を上回るマイナスと認めざるを得ない数字であります。  しかし、この事態は決して予想できなかったわけではないだろうと思います。景気の後退局面での消費増税だったからですし、GDPが増税前からゼロ成長だということも明らかになってきています。その上、一月以降、更に景気が悪化をし、例えば自動車の販売やデパートの売上げなどで一月の落ち込みが拡大しておりました。こうした中で新型コロナウイルスによる影響が追い打ちを掛けている状況で、二月は急激な悪化だと評価をされています。  そこで、熊野公述人、野村公述人にそれぞれ伺いたいのですが、これ以上暮らしと経済の危機を深刻化させないためには経済政策の転換が必要だ、我が党は消費税を五%に戻すべきだと考えますが、少なくとも、この消費増税がコロナに先立って国内経済に深刻な影響を生んでいた、それはもう明らかだと思います。そうである以上はそれに対する対策が必要ではないかと思いますが、御意見をお聞かせください。
  146. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 御質問の一つは、今回のコロナは予想できたんじゃないかというものもあったと思うんですけれども、消費税を上げるに当たっていろんなリスクを考えて、それ政策を打っていて、今回は補正予算で四・三兆、来年度予算では一・八兆という形で、そういう意味では、既に対応が備えられてきたことは私は非常に不幸中の幸いで、全く予想できないことが起こったわけではないかもしれないですが、ただ、ちょっと、そこでもう一つ、消費税がだからいけないんじゃないかという話に関しては、私はそうは思わないということを申し上げたいんですけれども。    〔理事三宅伸吾君退席、委員長着席〕  なぜ消費税を上げるかというと、これから生産年齢人口、十五歳から六十四歳の人数はどんどんどんどん減っていって、勤労者が減っていくわけで、そうすると、恐らく所得税も減っていきますし、法人税も減っていくだろうと。そういう中で社会保障費がどんどんどんどん上がっていくので、これはやっぱり法人税や所得税では賄い切れないので、それは、将来の社会保障を支えるために、つまり、中長期的な人口動態の変化、経済構造の変化に備えて消費税率はいつか上げないといけないと。  何回か先送りされたんですけれども、昨年の十月に引き上げられたんで、消費税率の引上げ自体はこれはいつかやらないといけないということで、雇用の情勢などを見ると、安倍政権の消費税率の引上げというのは私は間違いではなかったと思いますし、それに対する反動減に対しては、先ほども申し上げましたけれども、補正予算などで対応していたので、今の政策に誤りは私はなかったんではないかと思います。
  147. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) 先ほど来申し上げていますように、GDPの約六割は個人消費です。二〇〇三年と一八年を比較すると、十五年間で平均消費性向は五%減っています。  ところが、これは総務省の家計調査からですけど、定期収入が五分位の一番の方々はほとんど変わりません。定期収入の五分類、分位に属する人たちは約八ポイント、七ポイントぐらい下がっています。これは、収入に応じてこの減少というのが大きくなっている。つまり、この間のやはり消費税の増税や、あるいは非正規雇用労働者の低賃金、労働条件の悪化を放置してきたことによって生じるやはり消費の低迷が大きな要因になっているというふうに考えています。  したがって、八%から一〇%だけではなくて、やはり五%に戻すことによって消費に対するその性向を上げていくということが今非常に重要になってくるし、そういうメッセージを数字として発することが大きな力になっているんではないかなと。と同時に、やはり最低賃金を引き上げるとか中小企業を支援するとか、そういう経済というか財政の投入先をどこにするのかという基本的な考え方についての転換というのは必要になってくるというふうに考えています。
  148. 山添拓

    ○山添拓君 私は、昨年の消費増税によって消費が落ち込んでいる、GDPが落ち込んでいる、消費不況が深刻化している、こういう事態がやはり予想できなかったわけではないだろうということを申し上げたいと思っておりました。消費増税による影響を緩和するためのいろんな対策を政府も打っていると言いますけれども、それに加えてこのコロナによる影響がこれから顕在化をしてくると、そういうときに今のような対策でよいのだろうかという問題意識があります。  熊野参考人に伺いますが、政府は、今日この後、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策第二弾を発表するとされています。ところが、そこには目新しいものはほとんどないと言ってよいかと思います。まあ中には、フリーランスについて一日四千百円の、所得、生活補償のようなものを入れると、こういうものも含まれているようですが、規模として総額は二千七百億円の予備費の一部を使うという状況にあります。しかも、これは今年度予算の予備費ですので、今月末までの限られた対策でしかありません。今、香港では一兆七千億円、シンガポールで五千億円、韓国一兆三千七百億円などといった、ちょっと規模の違う、桁の違った対策が次々講じられておりますし、アメリカでも補正予算が組まれるような状況です。  今、日本で求められているのは、こうしたいろんな諸外国でも見られているようなちょっと規模の違った、桁の違った支援策であって、コロナ対策が一円も含まれていないような来年度予算を、これは組み替えてでもですね、対応していくべきときなのではないかと。  この影響いつまで続くかということが分からない中での問題ではありますけれども、このまま、コロナ対策、明示的にされているのが一円もないような予算を通していくというのは、やはりこれは予算の審議としてふさわしくないのではないかと思いますが、この点についての御意見はいかがでしょうか。
  149. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) 恐らく、今日出てくる対応策というのは不十分だという、そういう見方もあるかもしれないですが、これは一連の対策のうちの一番最初のアクションじゃないのかなと思います。  私もちょっと御説明の中で整理いたしましたが、まずは止血が大切で、その次に復旧が、元に戻すやつが必要で、さらにその後、復興で右肩上がりのトレンドにもう持っていくと。そういう意味では、安倍政権が今やろうとしているのはまさに止血政策で、やっぱりここは、雇用調整助成金と資金繰り支援というのは非常に的確なんではないのかなと思います。物足りない部分については、恐らくこれから幾らかの金額を掛けながら、復旧策、で、復興が出てくるので、もう少し政策の推移を見た方がいいんじゃないかと思います。  あと、欧米では大規模な金額のいろいろ財政出動が出ているじゃないかという話なんですが、東京オリンピックが仮に七月に開かれると、これに勝るお金を掛けた対策はないので、日本は海外と違って元々そういう対策が七月にあるんだというふうに認識すると、追加的な補正予算の投入というのも、金額ありきではそれほど大規模なものは要らないんじゃないかと。  むしろ、従来型の公共事業よりも消費に近いところ、今、建設業界では人手不足で、建設受注ががあっと積み上がったとしても、それを消化するのにすぐには消化できない状況ですから、やっぱり機動的な消費に近いところでの対策を考えながら、投下とはまた別の復旧、復興を考えていくというのが上策ではないかと思います。
  150. 山添拓

    ○山添拓君 野村参考人に伺います。  今、熊野公述人の話にもありましたけれども、この間政府が打ち出してきた対策の中では、例えば雇用調整助成金にしても、あるいは新たな休業補償、所得補償の助成金にしても、いずれも事業主に対する助成だと思うんですね。事業者が休業手当を支払った場合にその一部を負担する、あるいは事業者が特別の有給休暇を取得させた場合にその分を補填すると。いずれも、事業主がこの制度を把握し、自社で適切に運用しなければ、これは支払われないことになります。ところが、実際には、年休を取って済ますように求めたり、あるいはそもそもシフトに入れないと、契約を更新しないことで休業扱いにしなかったりといった事態が起きていると伺います。  熊野公述人からは周知徹底が大事だというお話もありましたが、事業主を相手にした仕組みとなっていることの問題点について、野村公述人はどのようにお考えでしょうか。
  151. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) 労働相談の中でも、事業主が請求するのではなく労働者に直接支払うというシステムはないのかとか、あるいは、やっぱり私自身が欲しいんだと、しかも、本当に貧困ライン等で、シングルマザーの方々から言わせると、あしたの食料費どうやって稼ぐんだという話まで出てくる事態ではあるんですね。だとすると、やはり少なくとも労働者に直接支払う方法が全くないのかどうかという点については、やはりこれからの国会審議の中で十分に議論していくということが必要だというのが一つです。  二つ目は、やっぱり広報というのは当然私も思います。  三つ目は、あわせて、やはり事業主が請求しやすい、あるいは事業主がこの制度を使っても損失が少なくなるという制度設計、これが必要かなというふうに思います。特に今回のような場合については、やはり子供たちがよく言うんですが、日本は島国だろうと、なぜ水際で止められなかったのかと。そのことを考えると、その子供たちの答えにもなるように、やはり私たちがこの止められなかったことに対する責任をきちんと果たすべきだと。  そういう点からいっても、特に今回については、これをやっぱり十分の十というのが特に中小企業に対しては必要になってくるだろうというふうに考えています。
  152. 山添拓

    ○山添拓君 ありがとうございます。  既に、観光バスの会社で雇い止めされたという報道がありました。解雇やあるいは契約を更新せず雇い止めをするということが、これから年度末になるということもあり、起こり得ると思います。ところが、この予算委員会でもそうした観点からの審議がありましたが、厚労大臣は、失職した場合には失業給付を受けてくれと、こういう答弁で、これはもう余りにも冷たい姿勢だと思うんですね。  野村公述人に伺いますが、今、職を失う人が出ないようにするために政府に求められる対応は、当面ですね、求められる対応としてどういうことを現場からは求められているか、この点について伺いたいと思います。
  153. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) 私どもは、消費税の税率引上げによって中小企業の倒産や廃業が増えているという事態から、地域によっては失業者は増えてくるという、ベースとして増えているというふうに考えています。したがって、年越し派遣村のような事態が発生しないとは誰にも言い切れないというふうにそもそも思っていました。それに加えて、今回の新型コロナウイルスによって解雇や廃業が続けば、市、町にはその失業した労働者が増えてくるという危険があるというふうに思います。  したがって、そこには、既に中国旅行社なども中心に失業、廃業が続いていますので、そこには、廃業させないための、やはり融資の先送りだけではなくて、直接的な営業の補填というのが必要になってくるだろうと。しかも、これは前渡金的な性格を有する資金でやっていくということが必要になってくると。  だから、企業を継続させるための資金、あるいは、企業がこれまでは中国を中心にやっていたけれども、未来投資会議で言っているように、ほかのところも対象にするんだというのであれば、それに係る時間も必要になってくるので、その間の活動資金というかな、資金が必要になってくるだろうと。
  154. 山添拓

    ○山添拓君 非正規で働く人にとっては、例えば、そもそもシフトが入れられないために、労働日でないから休業ではないと、したがって休業手当や特別休暇の対象とならないと、こういうケースもあるだろうと思います。  非正規で働いていて今回の事態に直面し、いろいろな要求を持っている方の声として、労働組合にどのような実態が寄せられているのかについて、先ほど、行ってみたら帰れと言われたと、こういう声も紹介いただきましたけれども、ほかにどのような声が寄せられているかについて御紹介をいただき、こういう人たちに対しての手当てが当然必要だと思います。  自治体の中には、国の用意しようとしている休業補償の対象とならない人を対象にして独自の支援制度をつくろうと、こういう動きもあるようですけれども、本来、これは国の要請で起こっている事態に対して取り組むべき点が多々あるだろうと思います。この点について野村公述人に御意見を伺いたいと思います。
  155. 野村幸裕

    公述人(野村幸裕君) 幾つかの点については職場の現状と課題という資料の中でも展開をさせていただいていますが、具体的なところでは、例えば、六ページのところが契約社員やフリーターの方々からの意見としてあるんですが、自宅待機を命じられたけれども、今回の事態は会社の責めに帰すべき事由に基づくものではないから、あなた方にお金を支払う必要はないというふうに言ったり、あるいは、ほかのところで働く予定、ほかのところで試験の監督をする予定にしていたんだけど、今回それがなくなったので、もうあなたの需要、枠はないですよと言われて、その分の補償もないと言われた人。あるいは、スポーツジムがやはり多いんですけど、スポーツジムなどでは、閉鎖になったんだけれども、それはそもそも私たちの責任ではないので、あなたに支払う必要はないというようなことなど。  要するに、私たちの働く権利が奪われたにもかかわらず、その権利を保障する手がないということに対する相談があり、しかも、まだまとめていないんですが、昨日、全労連で一斉の労働相談を行いました。マスコミの注目も高く、大分や山口や多くのところで放送局も来ました。その中では、そういう非正規の方々からの声がたくさん寄せられたということです。
  156. 山添拓

    ○山添拓君 ありがとうございます。  残された時間で熊野公述人に伺いたいのですが、昨日、中国、韓国からの入国規制を強化をいたしました。経済への影響は、出口が見えないだけに深刻なものです。私は、同時に、これまでの政府のインバウンド政策そのものも問われるべきときに来ているように思うんです。訪日外国人客四千万、六千万という数字ありき、とにかくたくさん来てもらって金を落としてくれればよいと、こういう政策の下で、交通機関や観光地が飽和状態になり、違法民泊など地域で様々な問題も生じてきました。  住んでよし、訪れてよしというこの観光立国推進基本法の精神とも反するような事態が起こっていると思うんです。こうした点についてもし御意見ありましたら、伺いたいと思います。
  157. 熊野英生

    公述人(熊野英生君) おっしゃるお気持ちは私も全く同感なんですが、恐らく中国、韓国の渡航を制限する背景には、やっぱり感染拡大をごく短期で終息させないとという安倍政権の考え方があるので、まずはやっぱり感染阻止の方を優先したので、そういう点では同時におっしゃっているようなダメージが出ているんだというふうに、まあ仕方がないということではありますが、ごく短期でやっぱりこの渡航制限については終わらせるような形で感染対応全体を考えていかないといけないのではないかというふうに思っています。
  158. 山添拓

    ○山添拓君 ありがとうございました。
  159. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後一時九分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  160. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  令和二年度総予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、令和二年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構です。  それでは、内政・外交の諸課題について、公述人恵泉女学園大学学長大日向雅美さん及び国際政治学者三浦瑠麗さんから順次御意見を伺います。  まず、大日向公述人お願いいたします。大日向公述人
  161. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) 恵泉女学園大学の大日向でございます。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。  私の専門は発達心理学でございまして、主に家族問題、親子関係の領域をテーマとしておりますことから、長年、育児相談、人生相談に関わっております。また、政府の少子化対策関連の審議会などにも関わらせていただいております。そして、ここ十数年は、地域で子育て、家族支援のNPO活動もしております。こうした経験を踏まえまして、本日は日本の内政問題として少子化について話をさせていただきます。  少子化対策は、言うまでもなく喫緊の内政問題ですが、子育て支援の観点から捉えると見えてくるものがございます。結論を先に申しますと、男女平等社会の構築と老若男女共同参画の推進に今こそ注力すべきと考えます。今更とお思いの方もおられるかもしれませんが、これが少子化対策の基本であり、今後に向けて改めて力を注ぐべき点と考えております。  目下、政府におかれましては、第四次少子化社会対策大綱の策定に取り組まれているところかと存じますが、私は昨年、それに向けた検討会に委員として関わらせていただきました。検討会としての提言の概要は資料を御覧いただければと存じますが、これをまとめるに際しては事務方に大変な御尽力をいただきまして、最終回では全ての委員から事務方に感謝の言葉が寄せられました。私も全く同じ思いでございますが、その上で、今後の課題と感じていること三点、私見でございますが、述べさせていただきます。  第一は、希望出生率一・八を打ち出したことについてでございます。  その部分の記述を読んでみますと、希望出生率一・八の実現に向け、令和の時代にふさわしい環境を整備し、国民が結婚や出産、子育てに希望を見出せるとともに、主体的な選択により、若い世代が希望する時期に結婚ができ、かつ希望するタイミングで希望する子供を持てる社会をつくるというように、希望と主体的選択の言葉が繰り返し使われております。  この意義はとても大きいと考えます。そうであれば、もう一言欲しいという思いがございます。すなわち、令和の時代という言葉の前に、男女が共に自分らしく生き、かつ互いの生き方を尊重し合えるよう、男女共同参画や価値観の多様性などを考慮した令和の時代という記載であってほしいと思います。先ほども申しましたが、これがまさに少子化解決の真の鍵と考えるからでございます。  第二は、結婚支援の強化が前面に打ち出されたことについてでございます。  この点につきましては、若い世代、特に若い女性たちがなぜ結婚にちゅうちょするのか、その本当の理由を見誤ってはならないと強く思います。  最近、若い女性から、子供は欲しいけれど結婚はしたいと思わないという声がよく聞かれます。そこにどういう思いが込められているかを考えてみる必要があります。女性たちは学んだことを生かして仕事を続けたいと思っている。でも、結婚すると依然として家庭のことは女性の仕事とされ、同世代の男性でもそういう考え、意識の人が少なくない。結局仕事を辞めざるを得なくなるか、継続したらしたで仕事と子育ての両立に苦しむ。男性に比べて女性は結婚によって失うものがいかに多いかを考えてしまうということです。  女性から主体的な生き方、希望する生き方を奪わないことがまず先決かと思います。男性の育児休業取得を推進する際も、妻の就業形態や就業の有無にかかわらず、子育ては男女が共に担うべきだとすることを前提としてほしいと思います。  女性の育児休業取得率は八割台で推移していますが、男性は六・一六%、取得期間は五日未満が七割というのが現状でございます。晩婚、晩産が少子化の原因として問題視されていることは分かりますが、男女が本当の意味で人生を分かち合うパートナーとなれるのか、社会はそのためのシステムを構築しているのかを問うことなく、出会いのマッチング推進だけ走っても効果は上がらないと思います。  第三は、在宅家庭支援、三世代同居、近居支援が強調されていることについてでございます。  全ての子育て世帯を誰一人取り残さず支えていく意義は言うまでもありません。しかし、在宅家庭支援につきましては、今専業主婦が直面している二つの孤独、すなわちワンオペ育児による孤独と社会から疎外される孤独の二つをしっかり視野に置くことだと思います。  ワンオペ育児による孤独については、ママ友をつくったり、育児の悩みを相談できる子育て広場などが随分普及しておりますが、後者の社会から疎外される孤独への支援が手薄でございます。子供はかわいい、育児の大切さも分かっている、でも社会からどんどん取り残されていくよう、育児が一段落したとしてもいつ再び社会に戻れるのという疎外感、不安に悩まされています。  育児を一段落した女性が仕事や社会的活動に参加することを可能とし、それが安定した経済力につながるような支援が必要です。できれば、子育て中からも再就職支援があればなお望ましいと思います。女性活躍が言われていながら、子育てに直面した女性の孤独、とりわけ社会参画への支援が非常に薄い現状の問題点を指摘したいと思います。  また、三世代同居、近居に関してでございます。  最近、祖父母力が着目されています。子育て、子供の成長に祖父母が果たす意義は認めるところでございますが、しかし、待機児対策などの目的から三世代同居、近居を推奨することは、今日の子育て世代、親世代の意識、実態と乖離が大きいと言わざるを得ません。  育児相談、人生相談をしておりますと、祖父母世代と若い世代の葛藤が数多く寄せられております。むしろ、シニア層を地域の祖父母とするなど、子育ての担い手の多様化を進め、地域のみんなで子育てを支えていく仕組みづくりが急がれるべきだと思います。  大綱策定の提言に触れて感じたことは以上でございますが、次に、子育て支援と少子化対策をめぐって是非とも考えておきたいことを二点述べさせていただきます。  第一は、子育て支援は少子化対策にならない、効果がないという声が昨今強まっております。特に、出生数が九十万人を割るというニュースとともにこうした声が湧き起こり、もっと際立った特効薬的な対策をという声が強まりつつあります。  しかし、私は、従来の少子化対策の経緯及び今地域で起きている様々な子育て支援の動きについて、是非とも正確に現状を把握し、理解をすべきだと思います。  レジュメの末尾に掲載しております少子化対策の経緯には、九〇年の一・五七ショックから四半世紀の時間と労力を掛け、超党派で先生方が築いてくださった軌跡が記されています。そして、そこから確かな実りが見えてきていることを是非お伝えしたいと思います。  NPO、様々な団体がそれぞれの地域のニーズに即した活動を展開し、基礎自治体との協働で、あるいはそこに企業も参画するなどして新たな地域創生の動きが始まっております。私が関わっておりますNPO法人あい・ぽーとステーションの取組もその一例でございますが、今日は時間がございませんので、添付の資料を御覧いただければ幸いでございます。  ここまでようやく来たものの芽を摘むことなく開花させ、実を結ばせなければならない、社会のみんなで子供と子育てを支えようという子ども・子育て支援新制度の理念を、焦らず、諦めず、迷うことなく果敢に推進し続けていくべきだと考えます。子供の成長も子育て支援も見えにくい部分があるからこそ、地道な努力を注ぐことが、遠回り、迂遠なようでいて最も確かな道であると考えます。  第二に、私が一番懸念いたしますことは、子育て支援策が女性活躍につながっていないということです。  母親たちが訴える声を聞きますと、依然として女性の生きづらさが解消されていないことが明らかです。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数が、昨年、日本は百五十三か国の中で百二十一位まで下がってしまったということです。女性活躍を言いながら、一方で、少子化を憂える余りか、あるいは待機児対策などの限界もあってか、小さい子供には母親が一番だという三歳児神話を復活させ、女性を子育てに縛り付けるような風潮が再び一部に強まっています。  私は、半世紀前からこの三歳児神話の問題点について研究し、三歳児神話からの解放を訴えてまいりました。でも、それは、子供を産み育てる喜び、大切さを否定するものでは決してございません。むしろ、母親が心から子供を愛するためにこそ社会の皆で子供を守り、子育てを支援することである、つまり、三歳児神話からの解放は子育て支援につながることだということを申し上げたいと思います。  最後に、一人の女性の声をお伝えして私の話を終えさせていただきます。  私は、大学で学んだことを生かして働きたかった。幸せになりたくて結婚した。そして、幸せな家庭を築きたくて子供を産んだ。でも、今、子供を育てながら仕事をしていると、女性が仕事も子育てもと願うことはまるで罰ゲームを受けているみたいですと。  キャリアとしてメディアの最前線で働いている方の声です。こうした女性たちの声にどうか真摯に耳を傾け続けていただきたいと願っております。  私からは以上でございます。ありがとうございました。
  162. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  次に、三浦公述人お願いいたします。三浦公述人
  163. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) 本日は、公述の機会をいただきまして、ありがとうございます。国際政治学者、シンクタンク山猫総合研究所代表を務めております三浦瑠麗と申します。よろしくお願いします。  既に、今日午前中から新型コロナウイルスという感染症に関する専門家の御意見を披露されたということで、感染症の専門家の方々、そして経済への影響を論じた方々の御意見がこちらで開陳されたことと思います。  私自身は、本来は二〇二〇年の内政と外交の相互の関わりを論じなければいけないのですが、しかし、新型コロナウイルス世界的な広がりによって、この新型コロナウイルスという、本来は感染症であるところのものが国際政治的にも、そして内政的にも大きな影響を持ってしまいましたので、その観点から、比較政治的な視点を交えつつ、国際社会にどのような影響を与えているかという視点からお話を申し上げたいと思っております。  一言でまず申し上げますと、今般の新型コロナウイルスをめぐる状況というのは非常に深刻であるというふうに思っております。ここ数日、特に世界経済の中心であるニューヨーク市場に危機感が広がったことによって深刻度というのは急速に高まっております。二〇〇一年には九・一一の危機がございました。二〇〇八年の金融危機もございましたが、それに匹敵するような経済的かつ地政学的な危機になる可能性があると考えております。  ただし、それは、今般の伝染病が直接的にその伝染病そのものに起因する危機であるという意味では必ずしもございません。むしろ、ウイルスをめぐる各国内対応及び国際的な反応によって危機が増幅されている部分があるのではないかと思っております。  第一の問題は、各国の反応が非常に情緒的であり、自国中心主義的な発想であるとか排外主義的な考え方に基づいてしまっているからでございます。  各国の政策が科学に基づく知見よりも大衆の感情を優先する傾向が強まっております。これは憂慮すべきあしきポピュリズムであると考えます。ポピュリズムというのは一概に悪というふうに私は捉えているわけではございません。ただし、大衆の感情にのみ基づいて、もちろんいい方向に行く場合もあれば悪い方向に行く場合もあるということで、今回のケースは悪い部分が際立ち始めているように思います。  かつて日本においても、安全と安心は異なるなどといって科学的知見を矮小化するような政策的失敗が繰り返されてまいりました。政治、行政、メディアは社会におけるプロフェッショナルでありますから、科学的知見に基づいて安全を確保する責任がございます。間違っても安全と安心を混同してはプロフェッショナルの責任は全うできません。文字どおり、プロ意識を持って当たっていただきたいし、いきたいというふうに思っております。  そもそも人間社会というのは、未知のリスクについては高く見積もってしまう傾向があります。今般の新型コロナウイルスに関しましてはまだまだ解明されていない点が多いのは事実でございます。特に、ウイルスは突然に変異して性質が変化する可能性もありますから、それまでも視野に置いて十全な対策を行うことは当然です。ただ、社会に存在する無数のリスクと比較して均衡ある対応を行っているかどうかについては絶えず検証が必要であろうと思います。  一例を挙げますと、二〇一八年のインフルエンザの死者数は約三千三百二十五人というのが厚労省から発表されておりますし、二〇一九年の交通事故の死亡者数も約三千二百十五人ということでございます。かといって我々は、冬の間は大型のイベントは自粛しようであるとか、交通事故をなくすために自動車を廃止しようというふうなことはもちろん言わないのでございまして、それはなぜかといいますと、我々の社会がインフルエンザや交通事故のリスクについては既に織り込んでいるからです。ところが、新型コロナウイルスに対するリスクは未知の部分が多い。新型コロナウイルスに関しては、リスクにまだ不明な点が多いものの、分かってきていることもございます。  最も重要な点は、被害を重大にしないためには医療崩壊を起こさないことであるということだと思います。つまり、感染者をゼロにすることは現実的な目標ではなくて、一定の感染者を許容しつつ、重症化しやすい高齢者や持病を持っていらっしゃる方に医療リソースを効率的に振り向けることが重要であるということです。  国内における報道についても、私はさんざん繰り返してまいりましたが、各地で何人の患者さんが生じたかを追いかけるのはそれほど生産的とは思われません。むしろ、各国で検査方法が違う、検査の数も違うわけですから、一番参考になるのは死者数であって、感染者数ではないのではないでしょうか。  今般の危機において問題となったクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号における対応ですが、これも、感染をゼロにするという目標を立ててしまうと船内にとどめ置くという判断になってしまうところ、患者を集中させず重篤な患者をなるべく出さないようにしようという目標設定に立てば、異なる判断があり得るだろうということです。実際、米国で類似の状態が起きておりますが、そこで日本の教訓が生かされているのは喜ばしいことだと思っております。  ただし、全体として見ますと、危機が深刻さを増すに従って、各国の政治的対応が、科学的知見よりも果断な決断を演出することで人々の安心に訴えかける政策、自国中心主義的で、時に排外主義的な反応が多く見られていることは誠に残念と言わざるを得ません。必ずしも科学的な根拠に乏しいにもかかわらず一定の国からの渡航者を全面的に排除すること、あるいは、一定国からの渡航者の制限を科学的見地ではなく政治的な見地から徐々にエスカレートさせてしまうといったことです。  実は、このような動きは各国で生じております。イタリアについては、ちょうど昨日でしたでしょうか、フォーリン・ポリシーで詳細なレポートが論文という形で載りまして、そこで起きてきたことというのは、日本よりもはるかに政治利用された新型コロナウイルスの議論、そして、その政治利用された結果として、国と中央がお互いに責任を押し付け合うであるとか、あるいは、州知事が、我々はみんな中国人が生のネズミを食べることを知っているよねというようなどうしようもない発言が繰り出されるなど、そのようなことが起きている。  それに加えて、より憂慮すべき方向として挙げられていたのは、科学者でさえ分断されているということです。時には、メディアの注目を求める科学者が、結果的には異なる処方箋であるとか、あるいは異なる思想をツイッター、テレビ番組その他の、恐らく議会においても発信をすることによって、どんどんどんどん人々が分断されていくと。科学がそのように分断されてしまうと、ほかの人々はどうしていいか分からなくなるというのは当然のことでございます。  つまり、現在、私が特に具体例を挙げなくても、日本で起きていることについて、皆さん、参議院議員の皆様方、それぞれ憂慮する心をお持ちだろうと思いますが、実はこれはユニバーサルに起きる、普通の民主主義国であれば普通に起きてしまうことなんだと。逆に言えば、日本の方がまだ大分ましに見えるという状況でございます。  アメリカでも早速、株価の暴落に続いて、FOXテレビを皮切りに物事の政争化が今朝も始まっておりました。韓国についてもしかりです。こういった構造を見るにつけ、物事の事象を批判するだけではなくて、その裏に潜む構造というのを見て取る必要がございます。  政府への一定の信頼がある場合に、危機の際には必ずどこの国においても政権与党の求心力が高まる傾向にあります。その際、野党にはジレンマが生じます。政権に協力をすると自らは政治的に埋没してしまう傾向があるからです。反対に、危機に際して政権を攻撃し続けると、国難のときに自らの政治的利益ばかりを追求するのは利己的だという批判が高まるわけです。  結果的にどういう構造になりやすいかというと、もっと果断に対応しろ、あるいはもっと厳しい政策を採用すべきという意見に流れがちであるということです。これは各国においてそのような展開があった。したがって、イタリアはまさにこのような与野党対立によって事態のコンテインメントに失敗したのだということは、我々はしっかりと教訓としなければなりません。こういった圧力が生じると、政権側も、科学的には大して根拠がない、つまり安全には大して効果はないけれども安心には効くかもしれない政策を乱発するようになります。  こういった与野党対立の構造に加えて、今回の新型コロナウイルスに関するポピュリズムの発生で顕著に見られたのが中国恐怖症の文脈でございます。  先ほどの生のネズミ発言がございました。これはイタリアの北部のとある州知事の発言ですが、ほかにも、人種差別的意識に基づいた普通の一般市民の行動であるとか、あるいは政治家、政策絡みの研究者、その他新聞記者などの中国に対するナショナリズム的、対抗心的見地からする誹謗中傷やこの問題の自分のアジェンダへの利用が見られた。あるいは、イタリアで顕著だったわけですが、元々排外主義を取っていた政治家による問題の政治利用というのもございました。  与野党の皆様にはこの種の構造というものをしっかり意識していただいて、無駄に果断に見える政策ではなく、しっかりとした科学的根拠のある政策を論議していただきたいと要望したいと思います。  次に、国際社会への影響でございますが、最大の点は、国際経済の停滞は非常に深刻であろうということです。  直近数日の国際的な経済指標は非常に不安定な動きでございます。御案内のとおり、各国の株式市場は大きく下落しており、為替相場、エネルギー相場も相当な荒れ模様でございます。  国際社会はかつてもパンデミックを経験しています。例えばSARSの感染などがあったわけですが、世界経済への影響はそれほど大きくはありませんでした。今般、国際経済への影響拡大しているのは、幾つかの要因が重なった結果だと思います。第一に、震源地が中国であったということ。国際経済に占める中国の存在感はSARS当時の約四倍となっています。もう一つは、世界的なサプライチェーンのグローバル化がはるかに進んだこと。その中でも中国の存在感が非常に大きいことで、現に新聞記事などでは、アメリカで抗生物質を使用した医薬品が足りなくなる、なぜかというと、実はインドから輸入している医薬品なのに原材料は実は中国であったというふうな報道さえ出ているわけで、相当なパニックにつながりやすいということです。新型コロナウイルスよりもはるかに致死性の高いエボラ出血熱が世界経済にそれほどの影響が出なかったのは、やはり世界経済における重要性の差分に基づいていると思います。  日本にとっては残念なことですが、今般の危機を狭い発想に基づいた産業政策に結び付けようという発想は、やはり筋が悪いと言わざるを得ません。御案内のとおり、一応休戦中とはいえ、今般の危機の直前まで米中は激しい貿易対立のさなかにありました。危機の初期、ロス商務長官が中国からの製造業の国内回帰を促進する好機であるという趣旨の発言を行っていますが、先進各国にとって中国への過大な集中リスクは取り組むべき課題であるとはいえ、直近の優先順位はむしろ世界的な景気後退を防ぐことではないでしょうか。  各国における経済活動の停滞、国際的なサプライチェーンの寸断、国境を越えた人、物、金の移動の停滞は、それぞれが世界経済への強烈なマイナス要因であると思います。二〇〇八年の金融危機直後と同様に、各国には協調して需要を喚起するような政策を期待したいと思います。  パンデミックそのものが峠を越える頃、最も重要となるのが世界的な不況の連鎖を起こさせないことであります。  国際社会をどのような構造として見るかは国際政治学者の中でも長らく意見が分かれてきましたが、一つには各国を対立関係で捉えるリアリズム的な見方、もう一つには各国がより協力するというリベラリズム的な見方がございます。  ただし、各国がこのような新型コロナウイルスに基づくいわゆる安全保障化、本来、安全保障問題とはみなされなかった問題の安全保障化が起きてしまうと、本来、共通に危機に対処しなければいけない性質の課題であるにもかかわらず、かえって協力が阻まれてしまうということで、日本政府に対しては、今後まさに、新型コロナウイルスリスクを直面しつつもまあまあ程度に抑えている国としての経験をしっかり世界に伝えるとともに、自国さえよければという立場ではなく、これから南半球で、そして発展途上国に新型コロナウイルスが伝播していく際に、日本が率先してリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思います。  今日はありがとうございました。
  164. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  165. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 自由民主党の三宅伸吾でございます。  大日向先生、三浦先生、すばらしいお話を誠にありがとうございました。  まず、大日向公述人にお聞きをしたいと思います。  昨今、選択的夫婦別姓制度、選択的な夫婦別姓制度、そしてまた、子供が一人しかいない、一人っ子の男性、一人っ子の女性は、我が国では選択的な夫婦別姓が認められていないがために、法律婚をしてしまうと名前が絶えてしまうから困るという意見がかねてございます。  そしてまた、一人っ子に限らず、選択的な夫婦別姓制度の導入を求める機運が十年、二十年前に比べると右肩上がりで高まっているのは各種の世論調査を見ると明らかでございます。  そこでお聞きをしたいのは、様々な要因で少子化は進んでいると思うんですけれども、少子化対策というか、結果としての効果かもしれませんけれども、選択的夫婦別氏、別姓制度をどのように公述人は考えていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  166. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) 御質問ありがとうございます。  先ほど私が申しましたが、少子化対策の基本は、主体的な生き方を阻まない、特に女性に対してということを申しました。そういたしますと、結婚によって失われるものを少なくするという意味ではやはり、姓が結婚によって変わって、また離婚によっても変わって仕事上で大変不自由があるという声はもうずっと前からございました。  それに対して、同姓でなければ家族が崩壊するというような考え方も随分あるかと思いますが、私は夫婦のきずなとか親子のきずなはそんなもので崩壊するものではないと思っておりますので、望むことであれば別姓制度というのは更に推進されていくことではないかと思います。  ヨーロッパでは、フランスなどでは、あるいはその近い国では、もう当たり前のようにして夫婦別姓というのが望む人たちは選べるようになっている、その辺りはこれから日本もどんどんどんどん改定していく必要があるかと考えております。
  167. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 レジュメのこの希望出生率一・八を打ち出した意義と課題のところに、先生は、近年の少子化の真の原因を直視する言葉を前面に掲載すべきではないかと、このようにまとめていらっしゃるんですけれども、それでは、先生が自由に書けるとすれば、どのような言葉でお書きになるんでしょうか。
  168. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) ありがとうございます。  それはレジュメのところに書いてございますが、令和の時代イコール、その後でございます、男女が共に自分らしく生き、かつ互いの生き方を尊重し合えるよう、男女共同参画や価値観の多様性などを考慮するということが認められるということです。  先生が先ほど御質問くださいました夫婦別姓の問題も、これに即して考えていただければと思います。
  169. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 この、いろんな審議会に入っていらっしゃると思いますけれども、政府の少子化関連の審議会では、少子化対策のために選択的な夫婦別姓制度を主張される委員の方とか、そういう方は余りいらっしゃらないんですか。
  170. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) ありがとうございます。  検討会では、特段それが書き込まれるようなことはなかったと記憶しておりますが、個人的にいろいろ話しているときには、やはり別姓をもうきちっと認めることだということは、少子化対策をやっている者たちにはかなりもう一定の見解になっているかと思います。
  171. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 この関連で三浦先生にもお聞きしたいんですけれども、多くのアカデミアの先生方は、法律上の名前が変わっても、通称というか旧姓を括弧の中に入れたりして使っていらっしゃる方多いと思うんですけれども三浦先生御自身は、この選択的な夫婦別姓制度についてはどのようなお考えですか。
  172. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) ありがとうございます。  私は、二十二歳で結婚しておりますので、幸いなことにといいますか、旧姓での業績というのがないんですね。でも、もしかしたら三十歳などで結婚していれば、重要な業績がひょっとしたら旧姓でということで、これは困ったなと思ったかもしれません。  私が結婚した時代からもう十七年たちましたから、十七年前の人間の常識というものと、現在の例えば九歳下の私の妹の実感というのがかなり隔たっているんだということを日々感じておりまして、特に夫婦別姓を望む人に、阻む理由がどこにあるのだろうかということは日々いたく疑問に思っております。
  173. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 次に、男性の育児休業取得について、妻の就業形態とかそういうものとの関係ではなくて考えるべきじゃないかという御主張だと思うんですけれども、内閣におきまして、小泉進次郎環境大臣がパパになられて、育児休業をするんだという宣言をされました。様々な、賛同する意見、批判する意見、あったと思うんですけれども、私あのときいろんな方とお話ししておって、私が思ったのは、実は私、元々民間企業におりまして、国会議員になると言ったら、父親の、母親の死に目に会えなくなるよと私言われたんですね。そのときに、そういったときに、国会議員になったら子供の世話ができなくなるよと僕に言った人はいないんですよ。ですから、あれっと思いましてですね。  ちょっとお聞きしたいのは、小泉進次郎大臣の育児休業取得について、世論では賛否両論ございましたけれども、大日向公述人三浦公述人はどのようにメディアの報道を含めてオブザベーションされていましたでしょうか。
  174. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) お答えさせていただきます。  よろしいんではないでしょうか。
  175. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) 私は、進次郎さんが取得されることには大賛成ですけれども、それは彼個人の人格の陶冶だけではなくて、国会議員の男性の多くが実は育児の実態を知らないと。その後、聞くに、国民民主党さん、立憲民主党さんの私の知り合いの議員さんも、ちょっと今まで何もやっていなかったけれども、僕たちはやらなければいけないということに目覚めたようで、何よりの超党派の取組ではないかと思っております。
  176. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 今日、実は、三浦先生にはアメリカ大統領選挙、民主党の候補者選びの話をお聞きしようと思ったんですけれども、新型肺炎の話が多かったものですから、ちょっとその話からお聞きしたいと思いますけれども。  先生がおっしゃりたいことは、恐らく、国際的な危機、日本にとっても危機でありますけれども、この問題を政局に利用するなというメッセージが一つあったかと思います。やり過ぎだという批判ばかりをしてもよくないし、もっとやれという過激なことばかりも言っても駄目だと。冷静に、根拠に基づいて、科学的根拠に基づいて冷静な対応をできるようなことが大事であって、かつ、課題先進国というか、先にああいうダイヤモンド・プリンセスのようなケースを、そこそこ、先生の表現ですと、まあまあうまくやったじゃないかみたいなお話だったと思いますけれども、そういう日本のレッスンを海外にうまく伝える等して国際協調の音頭を取ってはいいんではないかという御示唆も含まれていたように思いますけれども。  一つ私やっぱり気になるのは、今回の新型肺炎、中国、この数十年膨張してきた中国にとってどのような影響を与えるのか、これは日本の安全保障を考えても極めて大事だと思っておりますので、是非、三浦公述人に、今回の新型肺炎を契機に中国の膨張にブレーキが掛かるのか、実は逆で、もっと加速するのか、ざっくり言うとどちらなんでしょうか。
  177. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) ありがとうございます。  この新型コロナウイルス中国に与える影響というものは、やはり米中貿易戦争、そして香港デモ、その上にこの新型コロナウイルスが生じたのだということを理解して論じなければいけないと思うんですね。  中国というのは、大国でなかった時間というのは非常に例外的な短い時間でございまして、元々ナショナリズム、大国意識は強い国です。過去に植民地支配されたというふうな被害者意識を原点に持っていると、ここが国としてのまとまりの要の一つでもあるわけでございます。そこへ米中貿易戦争が生じたことによって、アメリカが意図的に中国経済に打撃を与えようとしたという認識がテレビなどのメディアを通じてしっかりと民衆に広まったわけでございます。ここで注意すべきは、中国政府が非常に人権抑圧的で、しかも一切の異論を許さない報道管制をしいているということと、中国の民衆がナショナリズムを持って、あるいは反米感情であるとか西側に対する反感を持つのは、両立可能だということなんですね。  そこをしっかり見た上で、今回の新型コロナウイルスのときに観察された様々な欧米の人種差別的言動、あるいはこれを機に中国経済を弱めてやろうというふうな意図的な発言を見ると、やはり中国はもう起死回生を図るとともに一致団結をすると。この起死回生というのは、当然、米中貿易戦争で生じた中国にとってのリスク、つまり、対米依存度の高過ぎる経済を続ければ必ずやまたやられるであろうという認識と呼応するものになります。  つまり、今後、どんどん中国は米国に依存し過ぎない経済圏の確立に急ぎ、西側諸国を互いに分断するような外交を行っていくだろうと思われます。現に、5Gからの中国勢の締め出しを見ても、アメリカに対するフォロワーというものがどんどん狭まってきております。  ということは、西側同盟諸国はアメリカからの圧力、例えば同盟負担をもっと担えというふうな圧力にさらされ、かつ貿易上の摩擦にさらされる中で、中国からの分断工作に乗りやすい環境にあるわけでございます。現に、昨年は欧州等の中国の貿易は増えておりまして、決してアメリカが思うような形での、中国の例えば国力の弱まりであるとか、政府に対する離反する行動が増えるなどというふうなことは期待はできないし、そんなことをしてしまったらかえって世界経済にも、秩序にも悪影響があるだろうと。  つまり、我々は、二〇二〇年以降、もっと被害者意識を強め、習近平政権が盤石となった中国に対しなければいけないということだろうと思っております。
  178. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 今回の新型肺炎でも、中国の経済的影響力の強いエチオピア出身のWHO事務局長の発言とかを見ていると、ちょっと恥ずかしいよねという印象を私は持ちますけれども、実態は、大きな流れで見ると、三浦公述人のおっしゃるように、今回の貿易戦争を含めた外的要因を、アメリカ経済圏から完全に出るわけじゃないんでしょうけれども、自主独立で更に強くなると、強靱な経済、そして防衛、軍事力も、経済力を背景に軍事力を高める方向に行くのかもしれないと、私も今そのように思っているところでございます。  その関係で、アメリカ大統領選挙、民主党候補、何となくバイデン候補が行きそうな感じでございまして、アメリカ政治を見ている私の友人に聞くと、バイデン候補だったらトランプさんに勝てるんじゃないかという方が結構多くて、これは日本にとって、トランプさんの再選、それからバイデン候補の当選、どちらが日本にとって望ましい展開でございましょうか。
  179. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) ありがとうございます。  日本にとっては、どちらが来てもさほど変わらないと思っております。  というのは、アメリカが今現在直面している財政的制約というものが変わらない。トランプさんの場合は、そこにディールを絡めることによって、自分がより多くの取り分を同盟国から得たと言いたいパフォーマンスの側面がございます。他方、民主党の場合は、本当にシリアスな政策的要求によって国防費を削減しないと公約を実現できないという圧力があるわけで、いずれにしましても、同盟国に対する負担を高めると、求めていくというのは、レトリックの違いこそあれ、さほど変わらないと思っております。
  180. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 JRの葛西さんとの座談会の記事を拝見いたしまして、非常に興味深く読んだのでございますけれども、そういう中国のこれからの持続的な膨張と、それからアメリカの内向き志向というか、どっちになってもそうなるだろうという中で、我が国、どのようにして立ち位置を確固たるものにしていくかということは極めて大事でございまして、国の生存を自ら守ろうとする強い意思のない憲法だという評価があり、かつ、国民の中にも自衛に対する必ずしも深い自意識のない方もいらっしゃるように私は残念ながら思っております。  三浦公述人は、我が国の憲法、そしてミリタリーに対する生理的な拒否感を持つ国民が多い中で、我が国はこれからどのような国民意識になっていくのか。それとも、そういう展望についてどのようなお考えをお持ちか、お聞かせいただけますか。
  181. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) ありがとうございます。  実は、弊社は世論調査というものを行っておりまして、日本に関しては、与野党の支持者間で大きな政策的対立が見られるのは憲法と同盟に関して、ほか、以外は、実務的な物事ではかなり意見の乖離が小さいんですね。例を申し上げますと、イギリスとオーストラリアに関しては同盟を結んでも構わないと考える人が、自民党をどれだけ評価するかにかかわらず賛成優位の、全ての人が賛成優位の平均点を出すことになりました。ということは、結果として、日本人は今象徴的に憲法を変えるかどうかでは争っているけれども、現状認識や、あるいは西側に存在するということに関してはほとんど意見の相違は見られないということです。  であるならば、憲法を変えるに当たっても、私個人は憲法を改正すべきと、九条を改正すべきと思っておりますが、どこに意見の統一点を見出せるのかと。  例えば、文民統制に関しては、日本は憲法にきちっとした根拠の条文がございません。それに関して国会はむしろじくじたる思いを持つべきであって、内閣が自衛隊をシビリアンコントロールしているのに、自らほとんど何の役割もシビリアンコントロールについて果たしていないのではないか。予算一つを取っても内実を論じられる人はまれで、憲法解釈に応じてこれが専守防衛の範囲を逸脱するのか否かという、本来法学者しか論じられないような問題を国会議員の先生方は論じているわけでございます。  したがって、そこについては、私は改正したいと思っておりますが、専守防衛という、まあ神学論争を続けることの不毛さを皆様にしっかり認識していただいて、実務的な話をしていただきたいと思っております。
  182. 三宅伸吾

    ○三宅伸吾君 終わります。
  183. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 国民民主党、野党共同会派の森ゆうこでございます。  今日は、両公述人先生方、貴重なお話、大変ありがとうございます。  私、先生方歓迎のために、バラの花、付けてまいりました。というか、これ、今日、農林水産委員会で、コロナウイルス影響でどの生産物も売れないという部分もありまして、花卉振興のために持ってきてくださったということで、農林水産委員会で配られたものでございます。  ということで、まず、大日向参考人にお話を伺いたいと思います。  少子化対策、これずっとやられてきたんですけれども、本当にいろんなメニュー、もうこれ以上ないよというぐらいいろんなメニューが行われてきましたけれども、お子様ランチ、いろんなメニューがあるけれども量が少なくておなかがいっぱいにならないということで、私はなかなか効果を上げてこなかったのではないかなというふうに思っております。  それで、先生が、先ほど、このレジュメの中で線を引かれております、希望するという言葉、これは大変いい言葉だというふうに思うんですけれども、ただ、この希望するタイミングというのは、私はこれちょっと大丈夫かなと、誤解されないかなと。要するに、いつでも子供を出産、妊娠、出産できるわけではない、専門家の先生方から、やはり妊娠、出産には適齢期があるということ、これが少し教育が足りなかったのではないかということで、専門の先生方からはそういう御懸念がこの間ずっと、参議院、国会においても参考人質疑の中等で指摘をされたところなんですけれども。  でも、希望するタイミングで希望する子供を持てる社会をつくる、趣旨はもう大賛成ですし、そういう時代に、まあ遅過ぎるかなというふうに思うんですけれども、ただ、この出産適齢期という問題について、もう少し私は知識としてみんなが持っているべきではないかなというふうに思うんですけど、ここの点だけちょっと気になったので、それについて御見解がございましたらお願いいたします。
  184. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) 御質問ありがとうございます。  先生がおっしゃるとおりでございまして、確かに出産適齢期、生物学的な適齢期というのはあると思います。それは否めません。ただ、それだけを強調されることであって、女性が、それならば仕事よりも早く産みなさいとか早く結婚しなさい、そうなる流れに陥ることの方を私は逆に心配をしております。  若い人たちは、十分にその辺りの知識を与えれば、自分の人生ですからきちんと考えると思います。でも、今産まないと、あっ、今仕事をしないと後に職場に戻れない、そういう体制を残したまま生物学的な適齢期を言うことはどんなに酷かということは考えております。
  185. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 先生のおっしゃるとおりだと思います。そういう意味での希望するタイミング、きちんと、ここで仕事を休んで子供を授かる、そして出産することを、育児をすることを選択したら自分の仕事が続けられない、あるいは展望が開けないということであれば、それは女性がそれを求められるのは大変酷なことであるというふうに思います。  それで、私、今回の新型コロナウイルス対策全国一斉休校、この判断についてはいろいろな御意見があるんですけれども、私は、この判断の是非というよりも、これを総理が唐突に発言をされたことについて、一番、ああ、まだ日本ではこうなのか、政策決定の現場にいらっしゃる総理以下男性の偉い方たちというのは、全国一斉休校と言ったら、女性たちは、あるいは男性もですけれども、すぐ休みが取れて子供を家で見られると、そういうことがすぐ調整できるというふうに思っていらっしゃったんじゃないかなと、すごくちょっと驚いたんですね。  ほとんど、今、もう専業主婦なんというのは、そもそも望んでいない方の方が若い方多いと思いますし、望んでもなかなか若い人たちの収入が少なくてできないというそういう中で、この全国一斉休校、これに伴って、そういう、女性たちはみんな働きながら、男性も働きながら子供を育てていて、子供と一緒に急に言われても休めないというようなことが理解していないのではないかというふうに、私は驚きを持って総理のあの発表を聞いたんですけれども、大日向参考人は、全国一斉休校についてはどのような、子育て、少子化対策ということを研究されてきた立場からどのような感想を持たれたでしょうか。
  186. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) 今の時期で一斉休校が必要かどうか、その効果がどうか、医学的なことがどれだけ考慮されたか、そこは私は判断ができません。ただ、今先生がおっしゃったように、そこから見えてきた問題は非常に大きいということでございます。  一斉休校にすると、親はどう働いたらいいのかというときに、すぐ出たのがテレワークがいいじゃないかという。どれだけの人がテレワークで代えられるのか、とんでもないことでございます。実際に介護職として働いている方、スーパーで働いている方、いろいろテレワークとは全然違うところで地道に働いています。  また、子供たちにいたしましても、学校がお休みになるとなると、今度、一斉に学童がぎゅう詰めになっております。あるいは、伸び盛りの子供を家庭の中に、家の中に閉じ込めておくことはできない、公園にみんな行きます。そうすると、また元々、日本社会は最近、子供が公園で遊ぶことに対して非常に冷たい目を向けて、そこに対して更に更に、今こんなときになぜ公園で遊ぶのかという、子供を公園に連れていくお母様たちもそういう目で、非常につらい目に遭っている。さらには、お昼にとてもママたちが苦しんでいます。お昼どきになると、コンビニにおにぎりを買いに来る子供たちがあふれるという話もあります。  一斉休校がよかったかどうかではなく、これを一つのきっかけに、どれだけ子育てをしている親、お母さんだけでなくお父さんも、シングルペアレントもどういう窮状で生活をし、働いているかということをいま一度、与党、野党を超えてしっかりと御覧いただければ有り難いと思います。
  187. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 本当に、子育てをしながら仕事を続けていくということは、みんな、パパであれママであれもう綱渡りで、そんなにそういう期間が長いわけではないんですけれども、そこに、きちっと現実に我々が目を向けなければいけない。私もかつては三人子供を育てながら仕事を続けてまいりましたので、そういう経験があるんですけど、でも、いっときなので、それを過ぎてしまうと、やっぱり切実さが本当に分かっているのかなと、自分でも時々省みるというところでございます。  三浦参考人もたしか学校に通っていらっしゃるお子様がいらっしゃると思うんですが、そういう意味で、今回の全国一斉休校、その判断、これは議論あるところなんですよ。これだけ大変な感染症、これを食い止めるために、唐突だけれども一斉休校した方がよかったんだ、いや、科学的根拠がない、いろんな今議論があるところですが、それとは別に、今回の唐突な、やっぱり現実問題としてそういうことがあって、今、大日向参考人からも御指摘があったところですけれども、そういうことについて少し御見解いただければと思います。
  188. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) ありがとうございます。  私は小二の子供を持っておりまして、うちのオフィスは夫のオフィスとのシェアオフィスですので、もちろん代表取締役として子連れ出勤しやすい環境にはあります。  ただ、それ以外の、例えば私は公立小に入れておりますが、様々な御家庭があって、もちろんシングルペアレントもいれば、そしてお母様が、おっしゃるように現場に行かなければいけないというふうな職種の方もいらっしゃいます。弊社で、今日は七人、金曜日は九人預かっております。本当なんですよ。  皆様と同じように、私も二十四時間三百六十五日働いておりますが、それに関してやっぱり皆さんに考えていただきたいのは、将来世代を誰が最後面倒見ているのかということなんです。国が継続していくためには将来世代が必要ですが、その将来世代は、はいどうぞ、はいどうぞというふうにバケツリレーやっていくと、最後最後はやっぱり母親なんです。その母親が働き方がひょっとして夫よりも忙しかろうが、最後の手配をするのは母親なんですね。したがって、木曜日の夕方に総理がアナウンスをされた後に、木曜日の夜から金曜日の夜までにかけて物すごい電話やSNSのメッセージを通じて、ようやく皆さん手配されたことと思います。  ですから、こういった危機のときに、いたずらに文句を言っているんじゃないんです、ただ単に、誰が最後の面倒を見ているのかということの想像力を持っていただければ、当然、一日指示を遅らせてでも各省庁に検討を要請し、仮にそこで各省庁の担当記者らが情報を漏らしてしまって果断な決断のイメージが損なわれたとしても、やはり同時に発表していただくことで、学童やその他のいろんな補償も含めてですが、そういった対策が金曜日の時点で全ての判断材料に加えられていたかったなというのが一国民の母親としての感想でございますが。  国際的な比較でいっても、台湾も同時に発表しておりますし、イタリアで休校措置を行っておりますが、同時に、様々な営業時間や高齢者が集まったときの行動制限なども同時に行われております。日本だけが、高齢者に対してさしたる行動制限をしないままに、国民の中の一番小さい子だけに行動制限を課しているということについては、やはり国際的に悪目立ちしているかなというふうにも思えます。
  189. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございます。  実は、今話題になっております新型インフルエンザ等対策特別措置法、これは民主党政権のときにできた法律で、私ども国民民主党、この予算委員会の中で一月三十一日に、特措法を適用すべしと。で、特措法には、政府行動計画、それから都道府県行動計画、政令都市も行動計画を作ることになっていたと思います。全部あるんです。海外発生期、あっ、その前の未発生期、海外発生期、国内発生早期、国内感染期、そして小康期ということでフェーズがこう書いてあって、そのときに何をすべきかということがありまして、これ、特措法を適用していれば、既に、こういう場合には学校の休校を要請しましょうと、その準備段階としてもういろんなことを各省庁が準備するようになっていたんです。  だから、先ほど三浦参考人からは、こういうときには野党は政局に利用するなと、過大な要求をするなと、批判をするばかりではいけないというようなお話があったんですけど、実は、我々野党の言っていることってなかなかマスコミに取り上げられないので、御存じないかもしれないんですが、もうずっと前からこれきちんとある法律ですので、適用するように提案をし、そうすればきちんと準備が各省庁できて、今回の休校制限についても、当然、感染を防止するためには、これ地域限定になるかと思いますけれども、休校の要請というのが法律に基づいて粛々と行われていたというふうに思っております。  そういう意味では、本当に現実の子育て、これはもうママだけじゃなくてパパも、シングルもパパ、ママ両方いますし、本当になかなか大変なところを、突然降って湧いた話で、ああ、現実が分かっていないんだなと改めて思ったところであります。  大日向参考人におかれましては、研究者でいらっしゃるのみならず、NPO法人も運営をされていて、地域の子育て支援関わっていらっしゃるということでございますが。私は逆に、地域の中で町づくり、子育て支援地域の中で教育力を高める、いろんな町づくりのコーディネーターをやっておりまして、そこからこの政治の世界に入ってきたということなんですけれども。  少子化対策にも関わられている先生から、そしてまた、NPO法人を運営されている先生の立場として、今日、もう少しここ、言葉をこう入れてほしかったという御提言はあったんですけれども、具体的な施策でここを早くやってほしいということがもう少しございましたら、お話を伺えればと思います。
  190. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) ありがとうございます。  地域の子育て支援に関わっておりますと、非常に面白いんですね、社会をつくっていくエネルギーを地域の人たちは持っている。しかも、今、シニア世代がマグマのように動き始めています。その方たちの、まあ、女性であれば子育てとか介護をした経験、仕事ももちろんございます。男性は、企業戦士の、あるいは国際社会で生き抜いた一枚の名刺に込められている知識、技術、それを子育て支援地域づくり、非常に巧みに動かしていただけます。多様な人間が動いて新しい地域をつくっていく。  私がしておりますNPOの活動は社会実験だというふうに思っております。それは、ただNPOだけでできることではございません。基礎自治体の強力なサポート、そしてそこに企業も入ってきている。まさに、企業、自治体、NPO、市民が四つどもえになって、コラボレーションで新しい地域をつくっていくときです。  そのときに、国は大きなビジョンと財源を確保していただく、これでもう十分でございます。あと、基礎自治体がコラボレーションを動かしやすいようにしてもらうということですね。もうそれは、私のNPOだけの話をいたしましたけど、今全国を見ますと、本当に雨後のタケノコのように動いている。これは子ども・子育て支援新制度で地域を認めたことです。基礎自治体を認めてくださった。ここがすごく大きい。ここの火をどうか消さないでいただきたい、その願いでおります。  NPOって本当にちっちゃい脆弱なところもたくさんございます。首長が替わると、もうそれだけで潰されてしまうNPOもあります。そうならないように大きく花を開かせていただきたいと思います。
  191. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 どうもありがとうございました。  先生のおっしゃるとおり、地域の自主性に任せる、国は財源をしっかり確保する、これが今回の新型コロナウイルス対策にしても、本当に感染症防止を機能させるためには、思い切って権限と、そして思い切った財源を地域にしっかりと移譲すべきだというふうに思います。  両先生方、ありがとうございました。
  192. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  本日は、両公述人皆様、ありがとうございました。とても興味深く聞かせていただきました。  最初に、大日向公述人にお聞きしたいと思います。  まさに少子化対策は内政の喫緊の課題だと思っております。特に、今は第四次少子化社会対策大綱、これを取りまとめなきゃいけないというときでございまして、そういうときに少子化というこの問題をどう捉えるのかと、問題の構図をしっかり捉えなければ対策も間違うと思っておりました。そういう意味では、先生から、まさに真の男女平等社会の構築、そして二番目には老若男女の共同参画の今こそ一層の推進という二本柱を御提示いただきました。これを今までもやってきましたが、これは地道により進めていかなければ、どうしても我々自身は、あの九十万人ショックというのがあったわけですね。何かそういうのがあると、これは先ほど三浦公述人がおっしゃいました、何かどっとショックがあると、何か特効薬が何か要るんじゃないかという発想になりがちなんですが、そうではなくて、より基本は何なのかということを気付かさせていただきました。  そこで、二点お聞きしたいんですが、一点目には、資料の二ページに書いていただきました、四半世紀掛けた子育て支援は今着実に地域に確かな動きが出てきていますと書いていただきました。発表の中で、NPOや自治体、そして企業との連携の中でいろんな実りが出始めていると、そういうようなお話もございましたし、大日向公述人はNPOもやっておられますので、こういう具体的な動きがあるんですよと後ろの方にパワーポイントも付けていただいていますので、これを是非全国にこういう形で展開していければというのがありましたら少し御紹介いただきたいのが一点目でございます。  もう一点は、昨年の十月からいわゆる幼児教育、保育の無償化をスタートさせていただきました。そして、今年の四月から私立高校また高等教育機関の無償化をスタートさせていただきます。これが子育て支援という意味でどういう評価ができるのか。さらに、これをさらに、より子育て支援という目で効果を上げていくためにはどういうことに留意すべきかと、この点について二点、まずお聞かせいただければと思います。
  193. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) ありがとうございます。  地域のNPOの活動として私が関わっていることで恐縮でございますが、シニア世代の特に男性が関わってくれる。男性はなぜ育児支援など関わってくれるかといいますと、ほとんどざんげなんですね。自分のときはおむつ一枚替えたことがなかった。それから、社会とやっぱり関わっていたいという切実な思いがあるようです。それから、妻から追い出されたといいますか、ずっとうちにいないでということもあって、理由は様々ですが、しかし、そうして子育て広場に来て子供たちと関わってくると、本当に癒やされると言うんですね。  企業人だった頃は、業績を上げればお給料は上がった、昇進はする。でも、そこで終わり。でも、地域に出て子育て広場などで親子と関わっていると、ありがとうと言ってもらえる、子供の無償の愛に支えられる。人生長いんだということを言って、そのシニア世代の男性たちの働きが、今度は祖父母、地域の祖父母力として若いお父様、お母様たちの新しいよりどころとなっているという点で、ただ自分の孫だけという狭い視野じゃなくて地域全体を見渡せる。ですから、昔は、電車に乗ったときなどに子供が泣くと、現役時代はうるさいなと思った方たちが、今は折り紙をポケットに忍ばせてあやしたりしている。こういう活動を聞きますと、私は、競争社会から分かち合いというモード転換ということも地域から発することができるだろうと思います。  もう一つ全国地域を見ておりますと、子供食堂だとか、本当に要保護家庭の方たちに、本当にかゆいところに手の届くような形で活動しているのはやはり地域の方、NPOでいらっしゃいます。ですが、そういう活動ができるためには、そんな大きなお金でなくていいんですね、その活動をきちっと支えてくださる財源と、それから信用として基礎自治体が認めてくださることがとても大事だと思います。その二つを、今マグマのように起きている。五年前、十年前は余りなかったんです。やはり基礎自治体はお金とか信用がある、NPOはフットワークの軽さと当事者性がある。うまく持ち味を生かすことだと思います。  二点目の幼児教育無償化に関してでございますが、これは私は、実は正直に申しまして複雑な思いで受け入れました。と申しますのは、もちろん無償化が悪いことではなく、教育、子育ての経費をできるだけ低くすることはもう全世界共通の課題で、日本は遅れているくらいです。ですから、無償化をしてくださることはうれしいこと、でも、優先順位というものがあるということは常々考えておりました。  特に消費税増税分は、未来の子供たちに借金を残さないというところに、返すというふうに使うものだと思っていた、あるいは、待機児対策とか学童保育の充実とか様々に問題がたくさん山積みしていた、保育士の処遇改善だってあっただろう、そういう中でいきなり無償化ということが降って湧いたように起きたこと、そして、これは、子ども・子育て会議では十分議論をする場ではなく、官邸マターとして下ろされてきたことに関しましては戸惑いも正直ございました。でも、とにもかくにもスタートしたのであれば、何とかより良いものにしようということで、会議でも皆が知恵を絞っておりました。  そういうところで、今一番心から願っておりますことは質です。保育の質というのは子供たちの成長に何より大事なところ。無償化するのであれば、世界各国は政策的効果をきちっと測った上で無償化の対象を選んでいる。この効果測定ということが日本は遅れていると思います。遅まきながら、そういうところに、私たち教育、保育に携わっている者はこれからますます力を注がなくてはいけないというふうに考えております。  以上でございます。
  194. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 ありがとうございます。  この幼児教育、また保育の無償化につきましては、効果測定という言葉をいただきました。しっかりそういう形ができるように、保育の質が保てるようにこれからも改善させていただきたいと思っておりますし、また、このNPOの活動を通じられて、企業また自治体、NPOの協働といいますか、五年前、十年前にはなかったものが動き出していると、これを更に後押しできるように我々も力を尽くしていきたいと思います。  続きまして、三浦公述人にお聞きしたいと思います。  今般の新型コロナウイルスのこの世界的な状況につきまして、いわゆる国際政治学の観点から、地政学の観点から公述いただきまして、興味深く聞かせていただきました。その中で、各国が排外主義的な対応をしていると、それが科学者であっても分断が生じ、それがまた市民の分断に助長し、これが今言われている世界的な経済的な問題を増幅するのではないかと、興味深く聞かせていただきました。  そういう中にあって、我が国もまだ取組の途中でありますけれども、その経験をしっかり、逆に、国内対応だけではなくて、こういう医療とか保健の分野で十分な資源がない国もあるでしょうし、そういう国への支援にも使わせていただきたい、使っていきたいと思っておりますけれども、逆にこの分断の状況を少しでも協調に変えることはできないのか。  御存じのように、三月下旬にはG7の外相会議もあります。アメリカである予定でありまして、元々このコロナの問題がない前からも、中国の問題を議論しようよということになっていたわけでございます。  これについて、今回はまさに重要な時期だと思うんですね。できればこの排外主義的な対応を少しでも協調に持っていくためには、どういうような日本の貢献、主張が、していくのがいいのかお聞きしたいのが一点目でございます。  もう一点は、もう一つ分断している問題ございます。核廃絶、核軍縮の問題でございまして、この三月五日は実はNPT発効五十周年の日だったんですね。今年は五年に一回のNPT再検討会議の年でございまして、四月の下旬からいわゆる運用検討会議が始まる予定でございましたが、割と各国とも悲観的な状況になっています。  御存じのように、いわゆるアメリカとロシアがINF全廃条約についてこれをやめてしまったと、失効してしまった。一方で、二〇二一年には、いわゆる新STARTの期限という問題がある。これについて、少しでもそれが再延長できるように、できれば二国間だけではなくて多国間のものになっていくようにということへつなげれるかどうかというのが問われているわけです。  逆に言えば、一つ目の問題とも関係するんですが、これだけ世界の危機感が高まっているときだからこそ、最近、G7って余り価値観が、価値が下がってきているわけですね、G20に比べて。G7で一つの、このコロナウイルスに対する一つの方向性を出しながら、ほかのいろんな問題についても協調していく。ともすれば、今は分断型、自国ファースト的なものがあるものを、それだけではやはり地球は回らないということを言うタイミングでもないのかなと、そういうことに日本は貢献できないのかなということを併せて、コロナの問題と核軍縮の問題についてそれぞれ御意見をお聞かせいただければと思います。
  195. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) ありがとうございます。  新型コロナウイルスに関して、先ほどイタリアの例を、フォーリン・ポリシーの論文を引きながら御紹介いたしました。そこでも、やはり一番の分断や政治化、問題の政治化の原因として挙げられたのが、やはり弱い政権なんですね。つまり、弱い連立政権を通じて政治化が起こると。つまり、日本でどうして、イタリアに比べるとですね、これだけ深刻なコロナの被害がありながらも、まあこの程度で収まっているかというと、政権が安定しているからだろうと思うんですね。  したがって、まずG7のその首脳同士の間でできることというのは、お互いに支え合うことであって、間違っても入国制限をお互いにぶつけ合ってやり取りすることではないんですね。  これを、せっかく意見陳述の機会をいただきましたので、一つだけ日韓両国について申し上げますと、確かに韓国の感染は深刻ですから、入国を制限するかどうかというのは政府の御判断だろうと思います。ただ、そこにおいて外交的な緊張を和らげるやり方というのはあったわけで、例えば根回し、もう一つは、政府の対立は致し方ないけれども、実際に日本企業の大企業を含め、あらゆる現場で頑張って労働力として貢献してくれている、韓国からそのまま就職してくれている人たちに関する目配りができているよというメッセージを、例えば四月入社を決めている人たちに関するこのような日本政府は目配りをしているよと、企業に対しても指導するよというふうなメッセージさえあれば、仮に韓国政府がこれだけ同じように感情的に反応しても、やはり印象は違ったと思います。  というように、まずは、現状ある政府しか存在しないのだから、首脳同士非難し合ったり協力を拒むのではなくて、まずは資源を融通し合ったり、そしてその当事国の、被害が広まっている当事国の制限にまずは任せるというのが大事ではないかと。  つまり、イタリアのコンテ首相は、サルヴィーニさんからのどんどん右から圧力を掛けられた結果、初動対応が遅れたという批判を受けて、中国からの直行便、中国への直行便を禁止するんですね。それがヨーロッパ初の試みであったということを自分の成果として公言されます。その後にイタリアに対してヨーロッパ各国が、あるいは世界各国がとった措置に関しては、コンテ首相御自身は反発を抱いておられるわけですね。  外交というのは相互主義です。したがって、自分が行ったことが、内政上のインパクトだけではなくて、いずれ自分がその場に置かれたときに降りかかってくると。これは、コロナについてはもう一番、人を選ばずに感染しますから、表出することなんだろうというふうに思います。  もう一つ日本人が、日本政府がG7始め世界各国に助言できることというのは、やはり先ほど申し上げた外交上の原則とも関連しますが、法律至上主義というのはそこまで悪いことではないと思うんですね。それは、新しい事態が起きると新しい法律を作れということになりますが、やはり、日本のように厳格な法治国家であっても多少の融通は利くのであって、日本がなぜこれだけ被害がまあまあ抑えられているかといったときに、やはり香港と並んで人々の、末端の人々それぞれの、例えば手を洗うであるとか、いろんな行動の規則を守るとか、そういった秩序正しい公衆衛生の概念というのは無視できないだろうと思います。その公衆衛生の概念こそ、伝えること、あるいは移入することが難しい概念なのですが、しかし、そういった地道な努力こそ役に立つ場合もあるだろう、逆に自分たちが学ぶべきこともあるだろうと思います。  一斉休校は整然と行われましたが、他方で、パチンコであるとか様々な高齢者が出入りする施設に関して、じゃ、どのように体温測定していくのか、あるいは健康状況を見ていくのか、人々を離すのかというような、そういったオペレーションに関しては、シンガポールや香港の方に学ぶところが大きいだろうと思います。  自分たちだけが優れているという立場に立たずに、そこら辺の自分たちの貢献できるところをメッセージとして昇華していき、同時にほかの国のいいところも紹介していくというやり方が必要ではないかと思います。  二つ目の御質問ですが、核兵器に関しましては、基本的に軍拡あるいは軍備管理、両方について言えることですが、技術革新の側面においては軍備管理というのは進みません。ですから、核兵器やその運搬手段が技術革新、軍事革命の局面に入っていれば必ずその軍備管理は失敗し、他方で、それが不要なものになればなるほど軍備管理が促進されるという構造がございます。  実際に、オバマ政権で戦略核を削減した背景には、そのような大量の戦略核を維持していくだけの費用の見通しが立たないという現実的な理由がございました。他方で、トランプ政権で再確認されました核、戦術核をめぐる方針については、これは実際にロシア、中国が軍拡を行っている局面では、なかなか日本としても何らかの対案を出さなければ戦術核の増産に歯止めを掛けることはできないと思われます。  基本的に百三十兆円ほどの支出が見込まれると考えられているアメリカの戦術核の増産を止めるためには、逆説的ですが、日本が通常兵力を拡大するしかないんですね。核が嫌なのであれば、日本が同盟の中での負担割合を増やして、それを核ではない兵力によってアメリカの負担を多少肩代わりするという方向でしか実現が難しいのではないかと思いますが、とはいえ、正論を維持し続けることも大切ですから、日本政府としてはその二重の努力をしていただきたいと思います。
  196. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 ありがとうございました。終わります。
  197. 浅田均

    ○浅田均君 日本維新の会、浅田均と申します。  両公述人におかれましては、本日、大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。御礼申し上げます。  まず、両公述人にお尋ねしたいんですが、まず大日向先生の方から、冒頭、発達心理学が元々のバックグラウンドであるというお話がありましたのでお聞かせいただきたいんですが、明日、また三・一一を迎えます。大地震とか大事件があった後に、子供に対するその傷痕といいますか、PTSDといいますか、トラウマといいますか、そういうことについて議論が盛んにされるわけでありますが、今回のこの新型コロナウイルス、これは一斉、小中高、支援学校の一斉休業ということで、多分初めてのことだと思うんです。  それで、いろいろ年齢の差はありますので、各お子さん方、受け止め方いろいろあろうかと思いますけれども、こういう事象といいますか事件が、将来、この現代のお子さんたちが大きくなったときに、何かこう悪い、あるいはいい、何か心の傷として残るということはあり得るんでしょうか。
  198. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) ありがとうございます。  自然災害とかあるいは虐待とか、そういうつらい事件に遭いますと子供の心に傷が残る、これは一定の真実でございます。ただ、その度合いとか子供の年齢、あるいは子供の持っているトレランスによっても一律に言えないこともございます。  何より大事なことは補償システムです。どれだけ傷を負った子供たちを親や家庭だけでなく社会の皆で守っていけるかによって、傷の程度を最小限にするということはできなくはない。  今から半世紀、四十年くらい前でしょうか、日本の中部地方で、日本で初めてと言われるほどのひどい虐待を受けた兄弟がございました。救出されたときに五歳、六歳だったんですが、そのときの身長は一歳児、二歳児しかなかった。でも、そこに大学研究者がみんな集まり、地域の保育者たちも総動員して補償プログラムを作って、その子たちは普通高校まで卒業できるまでの社会人となったということでございます。  虐待でも自然災害でも一律に、その子供たちが病んで将来が潰されることのないよう、補償システムに私たちは知恵と力を注ぐべきだというふうに思っております。
  199. 浅田均

    ○浅田均君 三浦公述人、いかがでしょうか。
  200. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) 私は専門家ではその件はございませんが、やはり、済みません、メディアに携わる者としてこのようなことを自分で言うのは情けないのですが、子供がやはり休校でテレビを見ます。そうすると、一日中、新型コロナウイルスのニュースを見ているわけですね。それに関して、もう少し前向きな議論であるとか、例えばこれを機会にいろんな体験をしてみようというふうになるのならともかくとして、あたかも社会において子供が邪魔であるかのような、ウイルスを、キャリアになっているかのようなコメントが、かえって、実は高齢者のコメンテーターなどから出てまいりまして、それも高齢者が、御自分はやはり死んでもいいと思われているんじゃないかというふうなやっぱり感情を抱きやすいような報道があったりとか、どこかで発言を耳にしたりということがあると思うんですね。  したがって、今回の新型コロナウイルスは、子供はそれほど感染しやすいわけでもないし、重症化は特にしにくいというデータが出されていますが、なぜか世代対立の問題になってしまったんですね。それが一番子供にとっても将来的にはダメージがあろうかというふうに思いますので、できる限りで支えていきたいと思っています。
  201. 浅田均

    ○浅田均君 貴重な御意見、ありがとうございます。  それでは、次に大日向先生にお尋ねいたします。  老若男女共同参画社会。私、先生と同世代でしょうかね、大変失礼なことを発言したかもしれませんけど、勝手に同世代かなと思っているんですが、僕らの子供の頃というのはこれが当たり前で、じいちゃん、ばあちゃんがおって、近所に何をしているか分からぬような自営業のおじさんがいっぱいおって、その人たちが、地域が子供を見るというふうな環境だったんですが、それがだんだん都会では失われてしまっておりまして、それを、地域祖父母ですか、代替すると。  それがいい社会であるというふうな御発言が先ほどあったんですが、都会の、都市の中においてもう既にその限界集落的な地域がもう発生してきていると。すなわち、先生がおっしゃるような、そういう理想的なもう社会は自然発生的にはできないというふうな状況に追い込まれている地域がいろんなところにあると思うんです。  そういうときに、制度的にこういう老若男女共同参画社会、こういうものを何か制度的に構築していく上でどのような制度が、制度構築が必要だと先生はお考えでしょうか、お教えいただけたらと思います。
  202. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) ありがとうございます。  私は先生の方がずっとお若いと思っておりましたが、ただ、地域でみんなでこうという時代にお育ちになったとしたら私の方がもうちょっと若いかなと、そういうのを崩壊の過程を見てきて育ったかなと思います。  今危惧いたしますのは、昔はそうだったから昔に戻そうというような、安易に、先生はそうではないんですよ、でも、安易に昔の地域再生という言葉を使う方がいらっしゃいますが、それは、先生がおっしゃるように、自然に再生はしないと思います。  と申しますのは、確かにかつての村落共同体は相互扶助システムがあってよかった。でも、同時に、監視し合い、縛り合って不自由な社会だった。だからそれを崩してきたんだと思います。崩し過ぎたのが今だった。それを、昔のエッセンスを新しい器の中に入れてつくっていく、そこには新しいシステムが必要だと思います。  私がNPOで老若男女共同参画ということをやったとしても、ただ単にいたずらに、じゃ、地域のお年寄りの方いらしてくださいではないんです。その方々に徹底的に講座を受けていただきました。そうでないと、子育て支援を、親を説教するんだなんというような方がいまだにいらっしゃるわけです。それから、私らの時代はこんな子育て支援がなかったけど頑張ったなどというような方もいらっしゃる。そういうのは禁句なんです。  そして、今の若い人たちはこういう思いで一生懸命働いているとか、女性が共働きになるとかシングルになるとか当たり前の世界だというようなことを徹底的に学んでいただき、子供の発達についても学んでいただく。三か月掛かって勉強していただきます。しかも、それを、一回認定証をお取りになった後も毎月バックアップをして、現場に出ていかれた後、いろんな問題にぶつかる、それをみんなでブレーンストーミングで考えているということをやっています。  ですから、新しく社会をつくっていくシステム、本当に根気が要ることですが、ただ、大変だと思ったことはありません。それに応えてくださるだけの地域方々が本当にたくさんいらして、励まされる思いでございます。私は研究者として孤独な闘いを長くやってきましたので、今NPOで地域の方と活動する喜びが本当に貴いものだというふうに思っております。
  203. 浅田均

    ○浅田均君 ありがとうございます。  それでは、次に、別の視点からまた両公述人にお尋ねしたいんですが、先ほど大日向先生の方から、希望する生き方を奪われないと、これが非常に重要であるという御発言をされまして、私も全く同感するところであります。  それで、一旦家庭に入ってしまった後、また再就職するときにもう職がないと。だから、どちらを選ぶかというところですごく悩まれる方が多いということは承知しております。  それで、制度的に、これ言わば上からの制度だと言っていいと思うんですけれども、クオータ制度というのがあります。男女比率を一対一にするとか、何十人を女性社員にするとか女性役員にするとか、そういうクオータ制度、上からのそういう制度導入に関して、大日向公述人あるいは三浦公述人はどういうふうにお考えでしょうか。
  204. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) そうして公的な縛りを付けて、例えば男女の比率を等しくしていくとか、あるいは男性が育児休業を取れるような仕組みをつくっていくということは、確かに必要だったと思います。そういうことで乗り切った欧米あるいは北欧の国はたくさんあったかと思います。  ただ、私は、そろそろそういうところは卒業すべきだというふうに思っております。例えば、男性の育児休業を取りにくいから義務化してくれという声があります。何を言っているんだと思うんですよ。  ここまで男性の育児休業も応援しようと言っているのであれば、権利として認めること、権利として自分たちで要求することも大事だと思います。女性はそうやって闘ってきたんです。権利のないところで、何とか仕事をしたい、だからここは休みたいとか、子供が病気のとき何とか休ませてほしい、でも、それを補って仕事をバックアップするとか、そういうことを必死になってやってきた。どうして男性だけそんなに甘えるんでしょうかというふうに思いますので、男性はもっと強くなっていただきたいと思います。
  205. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) 私は、もちろん自由競争を旨としておりますので、クオータ制という制度自体に対するためらいがないわけではありません。  ただし、一つ問題がございまして、同じような儒教的影響が強い社会でも、これほど何か優しい女性がいる国って余りないと思うんですね、優しい女性が。ですので、やっぱり配慮が行き届き過ぎてしまって、非常にまともな感覚を持っている方がやはり遠慮してしまうということで、どうしてもクオータ制を入れなければ進歩できないのであれば、一つの選択肢として考えてみたらいいのではないかと思いますし、実際、私の意識調査でも、そんなに与野党支持者、認識離れていません。そして、クオータ制は大体においてマイルド賛成であります。ですので、実際に議論を始めてもいいのではないかと思います。  ただ、問題は、クオータ制に行く以前の問題として、先ほど御専門の方から様々なお話が出ましたけれども、やはり飲み会経費が経費となるのに、会社において必要不可欠な経費であるはずのナニーさん代などの多様な保育の経費が経費にならないという、日本独自のこういった欠点というのは改めていけば、それこそ女性の議員さんでも会社幹部でも増えていくだろうと思うんですね。  この制度、実は各国いろんな考え方がありますけれども、例えば所得を控除するに当たって、保育に使った費用、もちろん日本は幼稚園や保育園に関しては無償化がなされておりますが、それだけではカバーし切れないのが女性のキャリアなんですね。そこの追加的に掛かった費用について、所得控除にするのか税額控除にするのか、あるいはそれを組み合わせたドイツのような形なのか。実は先進国では様々な控除の仕組みがあります。つまり、資本主義と、つまり自由競争のどんなサービスを選ぶかも母親、父親の考え次第という、こういった選択に重きを置く考え方を維持しながら、市場創出しながら、しかし、女性の社会進出と幹部化を支えていくという仕組みは日本でも本来は導入した方がいいと思うんですね。  ただ、どうしても日本というのは、社会主義的に全員にひとしく同じサービスを与えなければいけないと。ただ、働き方は多様ですので、男性幹部と男性の平社員の働き方が違うように保育のニーズも全く違うので、そこに関してはもう少しインセンティブを入れていった方が実現しやすいかと思います。
  206. 浅田均

    ○浅田均君 もう時間がないんですが、大日向先生におかれましては、女学園大学学長さんですよね。女学園大学というのは男子生徒というのはいないんですよね。(発言する者あり)いるんですか。いない。そういうところでやってこられて、今、三浦公述人から御発言あったんですけれども、また、先生、NPOもなさっているんですけれど、そういうところで、母ちゃんというか女手一つで頑張ってこられて、男どもに何かメッセージ、この際ありましたら。
  207. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) 女子大でございます。女性だけでございます。だけど、より多く客観的に男性の関係とかそういうのを見ることができます。  これから男性たちは、どうか生活力をしっかりと磨いていただきたい、子供の頃からです。家事も育児もできる男でなければ将来結婚はできませんということをお伝えしておきたいと思います。共にパートナーとして生きるということを是非ともお考えいただきたいと思います。  以上でございます。
  208. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) もう全くもって賛成なんでございますけれども、大日向先生がおっしゃったことに。  ただ、やっぱり対立概念で捉えないと、御自分の権利が削られるというのではなくて、より豊かな生きやすい社会になるんだという観点から女性の社会進出を捉えていただければなというふうに思います。
  209. 浅田均

    ○浅田均君 三浦公述人に専門のところを全然聞いていませんので、一つだけ質問させてください。  今回の新型コロナウイルス肺炎に関して、中国の習近平体制対応、これを国際的にはどう評価していると捉えておられますか。
  210. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) これ重要な点でございまして、当初は情報隠蔽に対する強い批判の声がありました。しかし、先進国の中で新型コロナウイルスをめぐる政治闘争が広がるにつれて、中国が羨ましいとでもいうかのような論調が出てきているんですね。権威主義体制の方がこういった事態に合っているのではないか。  これは、私は非常に注意すべき言論だと思っておりまして、見渡せば、別に日本に限らずイタリアに限らず、みんな同じような政治闘争をやっているわけですね。だからといって、悲観して権威主義体制を称賛するかのような言動はよくないと。裏を返せば、我々が苦しまなければいけないのは民主主義のコストですけれども、やはり彼らは権威主義のコストに苦しんでいかなければいけないと。  したがって、習近平政権に対しては、一時的に国際的な、ある意味評価というんですかね、というのは高まっていますが、今後長期戦で見れば、やはりより問題を抱えていることが認識されるのではないかというふうに思っています。  ただ、それと権力基盤が強化されるというのはまた別個の問題です。
  211. 浅田均

    ○浅田均君 両先生、ありがとうございました。
  212. 倉林明子

    倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。  今日は、両先生、本当にありがとうございます。  そこで、早速質問なんですけれども、先ほども出ていました新型コロナウイルスをめぐる一斉休校の問題なんですね。これ突然始まったということであって、もう既に一週間、大分もういっぱいいっぱいになってきているんじゃないかなということで心配をしております。  大日向公述人は、港区でNPO法人あい・ぽーと、一時保育で小学生のところまで対象にしてお預かりになっているという実践も見せていただきました。先ほどは、子育てしている親の窮状を是非見てほしいという御発言もございました。  そして、三浦公述人のツイッターも見せていただきまして、率直に本当にそうだなと思いましたのは、私が想像したのは数多くのぎりぎりで働いているお母さんたちのことだったと、シッターさんを雇う余裕もない人たち、余裕があっても、前もって計画しなければ来週から手配できるわけでもない、学童に一月いれば息が詰まる、危なくて一人で家に置いていけないと、こういう発言は本当にそのとおりだし、木曜日から金曜日にかけての葛藤はたくさんお聞かせもいただきました。  そこで、改めて、今、一週間で何があったのか、そして子供や保護者が置かれている実態ということで、先ほど御紹介もあったんだけれども、是非リアルなところを、やっぱりみんな、想像できない人もいるんじゃないかと、是非御紹介いただきたいと。その上で、今回の総理の要請についてですけれども、子供、そして母親、この目線から率直な御意見もお聞かせ願えればと思います。お願いいたします。
  213. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) これなかなか難しい問題でございまして、春休みはどうしていたんだということになると思うんですね。春休みは何とかやっていたじゃないかと言う方もいらっしゃいます。でも、それには準備期間がきちんとあったということでございます。突然あしたから、あさってからと言われて本当に困っているということは先ほど申し上げたとおりでございます。  そこで、もうあの手この手を使ってできることをみんなやっている。行政もやってくれています。私のNPO法人は港区と千代田区でございます。そこで広場もやらせてもらっているんですね。プログラムで人がたくさん集まるところは駄目だけど、港区は広場オーケー。そして、港も千代田も一時預かりは継続をさせてくれています。  でも、そこで困っているのが、マスクが足りなくなっている。ですから、やはり支援者は、子供と対するときにマスクを掛けなくてはいけないけど、このマスクの調達に非常に頭を悩ませているということは一つ大きいところでございます。  それから、先ほど、このコロナの問題が子供たちにどういう影響を与えるかということに関しまして、子供たちが公園に行っても邪魔者にされる、学童に行っても何か窮屈な思いをさせる、そういうことを見ながら、親たちが、自分が十分面倒を見れない、仕事をしていて、そのつらさ以上に、子供たちがおうちで、あるいは公園でどうしているだろうかという不安にさいなまれています。さらには、中学生以上になりますと、もうおうちにいろというのはこれは無理です。ですから、中学生たちが随分繁華街に出歩いているということもあって、その居場所づくりということも非常に悩ましいところですね。  その辺りを、確かに喫緊で十分議論する時間がなかったという御説明もありましたが、でも、この事件が起きてから、騒ぎが起きてから一か月ございましたので、その辺りでは、もう可能な限り関係省庁と連携を取っていろんな対策を取っていただき続けることがこれからまた必要ですし、もっと心配なのは四月以降でございます。四月になって新学期がオープンできるかどうかによって、今の、もう過去のことを言っても仕方ないと、今起きていることの窮状をどれだけ各省庁、基礎自治体、そして地域、親たちが力を合わせて子供を守り切れるかということがまさに今瀬戸際だというふうに考えております。
  214. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) 重要なことを大日向先生おっしゃっていただきました。要は、準備がなければ春休みと同様にはならないということですね。  今の小学生が実際に行動範囲、どのような行動範囲をしているかというと、自宅、恐らく徒歩通学の子がほとんどでしょうが、徒歩で行ける小学校、そこからまた、徒歩で行けることが多い、あるいはバスに乗ってでの習い事、それで家に帰ってくるというのが多くの場合です。学童が小学校に併設されていれば、学童からそのまま帰宅する子供たちもいます。つまり、行動範囲というのは非常に狭い範囲だったわけですね。  しかし、休校が始まってどのようなことが起きているかというと、まず、私の友人のママさんたちもそうですが、親に助けを求めます。そうすると、祖父母の方々が必ずしも近隣に住んでおられなくてもお手伝いに来られるんですね。あるいは、ずっと家を空けると不安だからということで、子供さんを連れ帰る祖父母の方もいらっしゃって、それによって長距離移動が生じます。そのような様々な生活スタイルの崩れというのもありますが、それだけでなく、感染の経路のポテンシャルですが、可能性が広がってしまうこともあり得ます。これは当初政府が余り想定していなかったのではないかと思います。  日々ですね、まあ個人的な話になって申し訳ないんですが、どのようにこの一週間を乗り切ってきたかといいますと、まず、金曜日までの時点でほかに行き場がない子供たちを自分のネットワークで募りました。そこから、月曜日に朝一緒に連れていく子たち、あるいは私の職場に連れてきてもらう子供たち。まあ五人から最大十人まで、それ以上超えると、さすがに狭いオフィスですので、ちょっと混み過ぎるかなというふうな気がしますが、そこでやはりお昼を用意しなければいけないわけですね。毎日給食が出ていたのが、そこでお昼を用意しなければいけないという負担がのしかかります。したがって、これも輪番制でやったり、弊社に置いてあるレトルトのカレーであるとか、そのようなものを供出しながら面倒を見ています。  ところが、小学生にもなると運動がやはり必要になってくる。そうすると、皆さんの御近所で、私、千代田区のオフィスなんですが、行けるところってそんなにたくさんはないわけですね。そして、公園に行っても白い目で見られるというのもありますが、オフィスビルのそばで子供が、いかに子連れ出勤をしたとしても、やはりたばこを吸って公園のスペース、屋上スペースを使われている男性の会社員の方々からすれば、いきなり大声で子供が駆け回って、芝生に入っちゃ駄目だよとか、いろんなあつれきもございます。  で、通常の自分の業務量をこなして、そして、私、今朝は六時迎えの早朝の番組担当でございましたので、その前に、十二時に本日の参議院の公述の準備を終えて、そこから今日のお昼御飯を作りました。ですから、皆さんがその次の日の十人分のお昼御飯を作らなければいけないとしたら、どれだけ参議院議員としての仕事のほかに負担が生じるかということを考えれば、やはり末端になればなるほどしわ寄せが来るんだなということが想像が付くかと思います。  ただ、今回の問題は、実際には港区も、私、港区ですが、後々に、学童を学校使用させるとか様々な提案もしてくれました。ただ、それが一週間たってからでしたので、やはり子供も親も三浦さんのところがいいということで、これから四月の上旬まで走り切るというのが実態でございます。御興味があれば。
  215. 倉林明子

    倉林明子君 ありがとうございます。  やっぱり突然の総理の要請ということで、現場にかなりのしわ寄せや影響というのが出ているということがリアルにお話しいただけたかなと思うんです。  三浦公述人もおっしゃいましたけれども、科学的な知見、この私権を制限する場合に、まして子供の私権を制限する場合にどれだけ科学的根拠が示されるのかということ、これ重要なことだと思うんですね。確かに、感染拡大防止という観点から私権の制限が必要になると、そういう場合があるということは前提としても、そのためにも、合理的で、それをやる場合にも合理的で最小限なもの、科学的な根拠も示した上で踏み込んでいくということがとても大事になるんだろうということを改めて思っているところです。  そこで、今御紹介もあったように、一週間遅れでいろんな自治体での支援の工夫などもされているという御紹介ありましたけれども、ぎりぎりで生活している方々への所得補償とか、一定の、あした、あっ、今日ですか、公表もされるようですが、休まざるを得なくなって解雇されたというようなシングルマザーのお話なども伺っているんですね。  暮らしと、子供の暮らしを支えるということは、すなわちシングルマザーやその親の所得を補償するということとこれは一体のものでもあると思うんですけれども、具体的に、国、行政、これからやるべきだと思っていることで、具体的な支援策ということですね、御提案あれば是非御教示願いたいと思います。両公述人お願いします。
  216. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) ありがとうございます。  余り国がというような大きなことは、私はちょっと、ごめんなさい、思い浮かばないんですが、例えば各地で御飯の食べられない子に対して子供食堂的な人たちが宅配をしていくとか、そういう動きは起きているだろうと思います。地域が動いているときだと思いますので、そういう動きをどんどんどんどん地方、基礎自治体は活性化してほしいと思います。  子供を抱えている親だけではなく、このコロナウイルスの経済的な困難というのは、例えば、お店、レストランやっている方ももう休業しなくてはいけないとか、先ほどお花が売れないとか、もう様々、経済が破綻しかかっている、そこをどうやって一番弱い子供にしわ寄せが行かないようにするかということは、もう本当にどうしたらいいか分からないんですが、できることを、対策をどんなことでも打っていきたいと、NPOをやっている者としては願っているところでございます。
  217. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) まず、浅田さんの御質問のときに申し上げたとおり、実際には、事業者が、会社の側が申請をすれば、三月に関しては後からの申請であったとしても、二十五万円ちょっとですか、済みません、正確な数字は覚えていませんが、二十数万数千円のチケットの補助が出るというか使えると。つまり、一日一枚しか使えないというふうな枚数制限が、保育サービスのチケットに関しては制限をなくすというふうなことを内閣府は発表しているんですが、そこにたどり着ける事業者がどれだけいるのかと。  これ、試しに電話してみたんです。そうしたら、実は一週間で、新しい事業者さんであったとしてもチケットを送れると、混んでいるんですがというふうにおっしゃって、非常に親切な対応だったんですが、どうして内閣府からそういった通達を出すときにどこに申請すればいいのかを書かないのかと。ニュースに出ても、結構ニュースに出ているんですよ、どこに行けばいいのか誰も分からないわけです。大体、中小企業の今の経営者の方は、御自分の企業の売上げ、経営の厳しい見通しでいっぱいいっぱいで、従業員の使うナニーサービスなんて、そんなの気にしている暇はないという精神状態だと思うんですね。  でも、本来悪意がなくても、そこで二十数万円補助してもらえるのに、それを使わないで、ああ、休めないと思って無理をしてしまったり、子供を一人で家に置いたりするというケースがあるわけですから、まず、現行の制度をしっかり周知する努力、コミュニケーションは頑張るべきです。  それに加えて、先ほど申し上げたとおり、やはり飲みニケーションの経費が経費ならば、保育のサービスは何よりも経費だろうと。これに関しては、企業さんに関しても経費として認めるべきであるし、個人の確定申告においても経費として認めるべきなんですね。それは、多様な生き方と、そして適切な補助というものを両立させるやり方なんだろうと思います。  加えて、このときに、休まざるを得ないという理由で非正規の方に有給休暇を出すと、そういった企業さんに関しては、八千数百円ですか、八千八百円などを補助するというふうに言っていらっしゃるようなんですが、これも中小企業の社長さんがそれを申請するところまでちゃんとサポートしての政策なんですね。  だから、ここら辺が非常に大企業目線であるというか、何か制度を出せばそれに応募してくるだろうという政府の感覚のずれというのを私は感じるんですね。  あとは、フリーランスの方々に関してもそうなんですけれども、今、フリーランスの方々って確定申告されますよね。確定申告の、もちろん時期をずらしてもいいということになっているんですが、既に終えてしまって、新型コロナウイルス影響を何も考えないで普通に素直に真っ当にやってしまった方が、これから三月は運転資金や生活費で貯金を食い潰してしまったときに本当に所得税払えるのかと。  この所得税を今払えと言われて生活が苦しくなるという方も出てくるので、現場というのはそういうことが起きるんだよということをもう微に入り細に入りあらゆる可能性を検討して、親切に制度を使ってもらう工夫をすべきだし、経済対策というのは、それこそ果断なリーダーシップを求めたいというふうに思っております。
  218. 倉林明子

    倉林明子君 ありがとうございます。是非、こういう御意見、本当に生かしていきたいなと思います。  時間がなくなっちゃったんですけれども、大日向公述人からも御指摘あったように、やっぱり少子化対策でもそうなんですけれども、男女平等、ジェンダー平等、この取組というのが日本においては大きな課題になってきていると思うんですね。その上で、やっぱりショックでもあったジェンダー指数が百二十一位と過去最低、最悪という事態になっているわけで、様々な課題があろうかと思うんですね。  先ほど出た選択的夫婦別姓の問題、同性婚の問題どう考えるのか、あるいは、女性の議員の比率が余りにも低いという問題、賃金格差の問題。ジェンダー平等を実現していくという上で一番これを進めるべきだというところや思いがありましたら、最後聞かせていただきまして、終わりたいと思います。
  219. 大日向雅美

    公述人大日向雅美君) ありがとうございます。  時間がないようでございます。一言で申しますと、女性の人生にリスペクトを持ってほしいということです。逆に、女性も男性にということでございまして、先ほど三浦先生もおっしゃったように、権利の闘いではない、互いに相手の人生に関心とリスペクトを持つということです。女性、日本の女性がこれだけ低いということは、もしかしたら日本の男性たちは善かれと思ったかもしれないけど、女は家庭で子供といるのが幸せだよね、そこにとどまっていて、女性を一人の人間としてリスペクトしていただけなかった、ここをどうか改定していただきたいというふうに思っております。
  220. 三浦瑠麗

    公述人三浦瑠麗君) 女の子たちが、小さい頃に何にでもなれるというふうなしっかりとした信念を、あらゆる方が、国会議員の方々含めて支えていただきたいなと思います。
  221. 倉林明子

    倉林明子君 ありがとうございました。
  222. 金子原二郎

    委員長金子原二郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。特に、男性議員にとりましては大変勉強になりました。改めて、委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  次回は明十一日午後二時から委員会を開会することとし、これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時三分散会