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参考人(
竹森俊平君) 私は
医療関係者ではないので、まず自分の
自己紹介からしたいんですが、私が今まで
経済学の方で興味を持ってきたテーマというのは
金融危機、
経済危機と、そういったものであります。
私の記憶を探ってみて、
パンデミックがその原因で
経済危機が起こったことがあるのかというのを考えてみたんですが、残念ながら知らないと。
被害という点では、一九一八年から一九二〇年に、
スペイン風邪と言われる、
日本では
スペイン風邪と言った
スペイン・
インフルエンザがあって、その
死亡率は非常に深刻でしたが、当時は第一次大戦の
終末期で、
戦争があったためにそれを、
景気を刺激したためか、不況にはならなかった。
その当時を申しますと、
戦争を遂行するために邪魔になるので
インフルエンザという情報は一切隠蔽し、一方で、
アメリカ軍が初めて
ヨーロッパで大々的に展開されるというので
輸送船の中に
すし詰めになって、キャンプの中に
すし詰めになって、ざんごうの中で
すし詰めになって、
病院で
すし詰めになってという
状態が続くわけで、その
アメリカから
ヨーロッパに行ったという説が強いですが、それで二千万から五千万という死者が出たということであります。
今度、
医療が主役である。ここにいらっしゃる
先生たちは、
医療の問題と同時に、
景気にとっても一番大きな鍵を持っているわけですね。こういうことであるならば、
経済学者としても、
医療関係者の
意見を聞き、協力してやっていかなければならないと考えたわけであります。
西村大臣は、
諮問会議と
ウイルス対策の
諮問委員会の橋渡しを期待しているということですが、私個人からして、ともかく
経済対策を考えるんだったら、
医療関係のことがどうなっているか、
ウイルス問題がどういうふうに展開しているかを知らなければ駄目だと思うわけです。
よく今の
経済対策を
景気刺激策と表現することがありますが、私はこれは間違っていると思います。
景気を見るには、
渋谷とか
新宿のもう
繁華街ですね、その人出を見れば大体分かるんですが、今は
渋谷、
新宿に人がいないようにするということが
政策の
ポイントであるときに
景気なんか刺激できるわけがないわけでありまして、今の
経済政策は基本的に困っている人を助けることが主眼であって、じゃ、
景気対策はどうなのかと申しますと、
アメリカの連銀の
パウエル議長が、来年秋に
ワクチンが実用化するならば、恐らく
景気が本格
回復するのは来年の秋だろうと、これはざっくりした表現で非常に分かりやすいわけです。ただ、その前から
経済の
状況を良くしようということ、良くできるだろうかということを検討するためには本当に
医療関係者との
二人三脚が必要だというふうに今認識しているわけであります。
今やっているのを、今やっているようなその措置をソシアルディスタンシング、私は
社会的隔離と呼んでいますけれども、なぜそもそも
社会的隔離が必要かと申しますと、SARSの場合は割と
感染するとすぐ症状が出てくる、
隔離することが簡単だった。ところが、
新型コロナウイルスは
潜伏期があって、その
発症初期があって、そこでも
感染するということですよね。
潜伏期、
発症初期の患者を
一般国民と見分けるのができない、区別することが難しいということで、
一般国民の
接触そのものを下げる、つまり全体のアクティビティーを下げないとこの
感染の
拡大が防げないということから、この
社会的隔離というのが広がっているわけであります。
それを何とかしないで済むのか、済まないのかというと、これ、要するに
検査をして分ければいいだろうという考えになるんですが、それで
PCR検査という、一番スタンダードで
精度が高いのが
PCR検査と言われています。
ところが、これ、今その
PCR検査を一番熱心にやっている
ドイツでも一日当たり実行できる件数が十万件。ということは、三百六十日で三千六百万件。
ドイツの人口は八千三百万人おりますので、
ドイツでも
国民全部をひとわたり
検査するのには二年以上掛かって、その間にもう一度その
感染が起これば全部台なしになるということで、さすがの
ドイツでもこの
PCR検査だけで
隔離が可能だというふうには考えていない。となると、
社会的隔離という方法も必要だというわけです。
日本の場合、
感染かどうか分からない
部分のうち、
感染者との
濃厚接触があった人を経路を追跡して、そこをまず潰そうというか、そこをまず見付けようということをずっとやってきたんですが、だんだん
感染者が増えてくるとそれだけでは十分にならなかったというのは
皆様御承知のとおりだと思います。
それで、
社会的隔離をして
感染者の、新しい
感染者が増えることを抑えながら、
潜伏期の人が
有症者になったらそこの
段階で
検査をして、それを
隔離をするということで
感染者全体の
規模を下げていくという
作戦を取られたんだと私は理解しておりますけれども、その成果が出ていることは、今、
尾身先生あるいは
脇田先生がおっしゃったとおりだと思います。
ただ、私は、今回の
作戦が成功するとすれば、まああとちょっとだと思いますが、最大の
貢献者は
日本国民自体であって、今、
脇田先生、
尾身先生もおっしゃいましたが、この
程度の緩い
社会的隔離策でうまくいくかというのを、私の友人がニューヨークにいますが、何か
日本の
政策見たけど、こんなんじゃできるわけないだろうというような感じで送ってまいりまして、私自身、外から見ていて、これは電車を全部止めるとかバスを全部止めるぐらいのことをしなきゃ無理ではないかと思ったものが何とかここまで来れたというのは本当にすばらしいことだと思います。
それで、
ポイントはこれからどうするかということで、これからその
隔離が、解除された、
緊急事態が解除されたところで、まだその
ワクチンもないし免疫もできていない、非常に薄氷の
状態なのでもう一度
スパイクが起こる
可能性があります。
スパイクが起こったら、その
発生者の
スパイクが起こる
可能性があります。
それにどうするかということが一番の
ポイントで、時間が経過している間に
日本の
体制も整ってきて、ITCの技術をいよいよ導入できるということで、
接触アプリというものをこれから使うようになるわけですね。取りあえずは、接触した場合はその人のところに警告が行くだけですけれども、例えばその方の
同意が取れれば、
保健所との間でその
同意を取れれば、私はこういう者ですと、私のところに、ここに住んでおります、私のところにこういう
アラームが来ましたから、どうぞそれを利用して
トラック、
感染者の
トラックをしてくださいというようなことができるわけですね。是非そういうことをしていただきたいと思うんです。
ともかく、今後のことは、早く動く、もう一度この同じことが繰り返すというのは、恐らく
国民にとっても心理的にだけではなくてビジネスの上でも大変なその不
確実性があって困ることだと思うので、もうともかく行動を早く早く、その
対応を早く早くということをしていく必要があるのではないかと思います。
私は、
危機のときにいろんなところで引用される
一つの
言葉がありまして、その
言葉を引用したいと思います。十八世紀のスコットランドの
哲学者のトーマス・リードという人が言った
言葉ですが、鎖の
強度、強さですね、はその一番もろい箇所の
強度、強さに等しい、なぜなら、その鎖の一番もろい
場所、
部分が崩れたら鎖全体がばらばらになって崩れ落ちるからだという
言葉があります。
私は、このことは非常に考えるので、今、今回の
危機でもって
日本社会の中に弱い
部分があった、それは
中小企業であり、非正規の
労働者であり、フリーランスの
労働者であり、で、我々がまずするべきことは、先ほど申しましたように
景気刺激というのは今の
段階で余り考えられないので、むしろそういう弱い
部分を何とか接合し、守りということを第一にするべきだと思います。
また、これを国際的に見ますと、そもそもこういう
感染が来たのは、警戒の緩い国、その
アラームの十分働かないところからそういうものが来たわけですね。この弱い
部分をどうやって埋めていくのかということは今後国際的に考えていく必要があります。もう一度
国際活動を再開する、もう一度人間が国際的に移ることができる、どうしたらそれができるかということですね、
安全性について、これも
医療関係者の、
医療の
専門家と相談して、そのルール、基準を作っていくことが絶対に必要だと思います。
その意味で、今後とも、我々は
二人三脚で、
医療関係者と
経済関係者、
政府、
二人三脚で行動していく必要があると思いますので、
皆様にも御協力をいただきたいと思います。
以上です。