○古賀之士君 立憲・
国民.新緑風会・社民合同会派の古賀之士です。
ただいま
議題となりました
所得税法等の一部を改正する
法律案について、高校野球の学校紹介のようですが、私は今回で四年
連続四回目、参議院の本
会議登壇は通算九回目となります。残念ながら春の甲子園は中止となっているものの、選手宣誓を見習い、正々堂々、会派を代表して、
反対の
立場から
討論をいたします。
まず、
新型コロナウイルスでお亡くなりになった
方々に謹んで御冥福をお祈り申し上げるとともに、その御家族の皆様方にお悔やみ申し上げます。また、現在この病気と闘っている患者さんにもお見舞いを申し上げます。さらに、この
新型コロナウイルスと、最前線で苦しむ患者さんと向き合っている
医療関係者を始め多くの関係者の皆様方に敬意と感謝を申し上げます。
一方、本論に入る前に、まず法務大臣にお願いがございます。
大臣という職務は激務であり、自分が立案したわけでもない検事長人事の件で批判され、ストレスも相当たまっているでしょう。しかし、だからといって検察官が最初に逃げたなどと、事実でない訳の分からないことを発言していいわけではありません。
法務大臣にとりましては、ここは一丁目一番地、立法府の
国会であります。答弁が二転三転、うそにうそを重ねる有様は、
政治への信頼を大きく失っている、フェアプレーの精神がないと申し上げておきます。
さて、本
法案の基となった与党税制大綱が発表された昨年の十二月の時点で、合同会派三党は談話を発表しております。
立憲民主党は、様々な
立場にある人々が、その個性と能力を十分に発揮し、多様性を力にする
社会への転換を図るための税制にシフトすることを求めました。
国民民主党は、既にこの時点で
世界経済の減速を認識していたことから、減税など
家計第一の
政策を
提案しました。
社会民主党も、不公平税制から脱却と所得・法人課税などをパッケージとした税制
改革を迫っております。
これらの観点を基に、合同会派は、
財政金融
委員会では真摯な議論を行ってまいりました。
私や大塚耕平
委員は、来
年度税制の
見通しを示すよう強く要求しましたが、大臣は、予想屋みたいなことは申し上げられないなどと、具体的なお答えはいただけませんでした。
先ほど
議題となった来
年度予算は、ついに百兆円を超える
規模です。使うお金の百兆円は決まっているが、入ってくるお金は幾らになるかよく分からない。こうした無
責任極まる
政治を誰が信用できるでしょうか。大塚
委員が指摘したように、認識をはっきりさせないとマーケットが荒れる
可能性があると改めて警鐘を鳴らさせていただきます。
同じ
財政金融
委員会の熊谷裕人
委員は、父親から会社を受け継いだときに税金で苦労した経験を基に、納税の猶予や減免の重要性について尋ねましたが、
政府側は、柔軟かつ迅速な処理を行うなどとする一般論に終始しました。
地域を歩いて人々の声をすくい上げる
政治と、
政府側の指示だけを下ろす
行政の違いを痛感いたしました。
勝部賢志
委員からは、
企業グループを使った租税回避行為への疑問が出されました。専門セクションへの重点的な人員配置と金融実務家の採用をしていると、一見すると美しい答弁があったものの、事案が起こってから慌てて
対応を練るという、まさに泥縄であり、不安が残ると言わざるを得ません。実際、本
法案の
審議中である三月に、大手製薬会社への八十億円の課税が取り消される敗訴判決が出るなど、
事態は国の先を行っております。
那谷屋正義理事や川合孝典
委員は、森友学園をめぐる公文書の改ざんの
経緯に対し、再
調査を行うよう迫りました。
本件は、改ざんを主導した理財局長の資質に対して、
野党側は強い疑問の声を上げましたが、大臣は、適材適所として、事もあろうに国税庁長官に起用した事実を忘れてはいけません。そればかりか、近畿財務局長として大きな
責任を負い、それがゆえに、二年間、戒告処分を受けた方は、他の局と比べ圧倒的な
立場にある東京国税局長に収まっています。現場の
職員が自死に追い込まれたことを考えれば、一将功成りて万骨枯るという故事成事がまさに当てはまると言えましょう。折しも延長された確定申告の時期を迎えておりますが、納税者からの税務
行政への信頼を財務省自らが放り投げる行為はとても容認できません。せめてもう一度
調査をやり直すよう、強く要求をいたします。
なお、擦れ違いが目立った
委員会審議の中で、前向きな答弁がありました。適正、公正な課税と徴収の
実現及び歳入の確保のため、国税
職員の定員確保と機構の拡充を求めたところ、マンパワーはどうしても必要と大臣が答えたことには、素直に評価をさせていただきます。もっとも、こうした質問と答弁は、毎年毎年繰り返されております。税務
職員については、博多弁で言えば、ちょびっとずつの増員ではなく、もっと大胆な采配を行っていただきますよう、大臣に強くお願い、要望いたします。
以上申し上げたとおり、議論の大
前提となる
税収の見積り、不安を強めている
国民が求める納税の猶予、公平な課税を担保する租税回避行為への
対策、そして、全ての基礎となる税務
行政への信頼など、あらゆる点で欠点が目立ちます。それゆえ、本
法案には
反対せざるを得ません。
結論は既に申し上げました。
国民は今、
新型コロナウイルスという見えない恐怖と闘っております。「人々は自分が自由だと信じていたが、天災が存在する限り、誰も自由にはなれないのだ」。これは、フランスのノーベル賞文学賞作家、アルベール・カミュの「ペスト」に出てくる
言葉です。
東京においても、週末の外出
自粛要請が出された今、自由の重さを改めて感じています。この「ペスト」には、「この病気を阻止するためには、それが自然に終息しない場合、あらかじめ
法律で定められた重大な
予防措置を適用する必要がある」というフレーズまで残されております。
WHOが
緊急事態宣言を行った一月三十一日の
予算委員会で、我が会派の矢田わか子議員が、この「ペスト」の
言葉どおり、あらかじめ定められた
予防措置である新型インフルエンザ特措法の適法をいち早く求めました。このとき
政府が
提案を受け入れていれば、
感染者は恐らくもっと少なくなったことでしょう。総理の専門家の意見を十分に聞かずに学校が突然
休校になるなど、自由をめぐる
社会的な混乱も避けられました。
危機管理で最も重要なことは、目の前の事実を直視する勇気です。自衛隊の日報隠蔽、森友問題、加計問題、勤労統計不正、そして桜を見る会など、うそにうそを重ねた現政権の体質が、新型ウイルスという不都合な真実から目をそらすこととなり、
対策の遅れにつながったのではないでしょうか。
劇作家でチェコ共和国初代大統領を務めたバーツラフ・バベルの著書「力なき者の力」に印象的な
言葉があります。「過去を偽造する。現在を偽造し、未来を偽造する。統計資料を偽造する。何も偽っていないと偽る。それゆえ、嘘の中で生きる羽目になる。」と。まさに現政権そのものです。総理や閣僚が個人としてうその中で生きるのは御自由ですが、
国民がそれに巻き込まれてしまうことは不幸です。博多弁で言えば、大概にしときんしゃいという思いです。
重ねて申し上げますが、税務
行政への信頼をこっぱみじんに吹き飛ばし、あらゆるものを偽造してうそにうそを重ねる現政権には税制を語る資格はなく、それゆえ本
法案に
賛成することはできない。こう断言をいたしまして、
反対討論を終わります。
御
清聴、誠にありがとうございました。(
拍手)