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国務大臣(
江藤拓君)
家畜改良増殖法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案の理由及び主要な
内容を御説明申し上げます。
和牛を始めとする我が国の畜産物は世界的にも評価が高まっており、高品質な畜産物の生産を促進する上で、家畜人工授精及び家畜受精卵移植が適切に実施されることが一層重要となっております。しかしながら、一昨年、和牛の精液と受精卵の不正な
輸出を図る事案が発生し、家畜人工授精用精液等の流通の適正化が強く求められているところであります。
こうした観点から、家畜人工授精用精液等について、流通に関する規制を強化するほか、容器への表示、譲渡等に関する記録の義務付け等の規制を整備することとし、この
法律案を
提出した次第であります。
次に、この
法律案の主要な
内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、家畜人工授精用精液等の不適切な流通を
防止するための規制の強化についてであります。
家畜人工授精所等以外の場所で家畜人工授精用精液等を保存してはならないこととするとともに、家畜人工授精所等で保存されていない家畜人工授精用精液等の譲渡等をしてはならないこととしております。
第二に、特定家畜人工授精用精液等に関する規制の整備についてであります。
特にその適正な流通を確保する必要がある家畜人工授精用精液等を、特定家畜人工授精用精液等として
農林水産大臣が指定できることとし、その容器に畜種の名称等を表示すること及びその譲受け、譲渡し等について帳簿に記載して保存することを義務付けることとしております。
第三に、家畜人工授精等に関する規制違反に対する抑止力の強化についてであります。
農林水産大臣及び都道府県知事は、家畜人工授精所等で保存されていない家畜人工授精用精液等を譲渡した者に対し、その譲渡した家畜人工授精用精液等の回収及び廃棄等を命ずることができることとしております。
続きまして、
家畜遺伝資源に係る
不正競争の
防止に関する
法律案につきまして、その提案の理由及び主要な
内容を御説明申し上げます。
家畜遺伝資源は、他の家畜との品質上の差別化を図る畜産の改良という創造的な活動によって生み出され、知的財産としての価値を有しているものであります。しかしながら、
家畜遺伝資源が不正に流通し、改良の成果を不正に利用した家畜の再生産が行われる事態を放置すれば、更なる改良へのインセンティブが失われ、ひいては国全体での家畜の振興に重大な影響を及ぼすおそれがあるところです。現に、一昨年の和牛の精液と受精卵の不正な
輸出が図られた事案を受け、このような危機感が広く共有され、
家畜遺伝資源の不適切な流通等を
防止し、その知的財産としての価値の保護を強化すべきとの
社会的
要請が高まっております。
こうした観点から、
家畜遺伝資源について、不正な取得等の
不正競争を
防止し、
家畜遺伝資源生産
事業者の利益の保護を図るため、この
法律案を
提出した次第であります。
次に、この
法律案の主要な
内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、
不正競争の定義であります。
家畜遺伝資源について、人を欺いて、又は窃取する行為等により取得する行為や、その取得後に使用し、譲渡し、引き渡し、
輸出する行為、また、不正の利益を得る目的で、又は
家畜遺伝資源生産
事業者に損害を与える目的で、契約による制限を超えて
家畜遺伝資源を使用し、譲渡等する行為を、
不正競争として定義することとしております。
加えて、これらの行為の介在を知って、又は重大な過失により知らないで当該
家畜遺伝資源を取得し、使用等する行為、さらには、
不正競争に該当する
家畜遺伝資源の使用により生産された家畜や受精卵を譲渡する行為等についても、同様に
不正競争とすることとしております。
第二に、
不正競争により営業上の利益を侵害された者に対する民事上の救済措置等であります。
不正競争によって営業上の利益を侵害された
家畜遺伝資源生産
事業者は、その営業上の利益を侵害した者に対し、その差止め及び損害賠償を請求することができることとするとともに、
家畜遺伝資源生産
事業者の立証負担の軽減等を図ることとしております。
第三に、罰則による抑止であります。
家畜遺伝資源について、不正の利益を得る目的で、又は
家畜遺伝資源生産
事業者に損害を与える目的で、人を欺いて、又は窃取する行為等により取得する行為やその取得後に使用し、譲渡し、引き渡し、
輸出する行為等について、個人に対しては十年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金又はそれらの併科、法人に対しては三億円以下の罰金を科すこととしております。
以上が、これらの
法律案の提案の理由及び主要な
内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。