○
参考人(
川本哲郎君)
同志社大学の
川本です。よろしくお願いいたします。
お
手元の
資料をちょっと御覧いただいて、初めにのところですけれ
ども、私の若干経歴を紹介させていただきます。
私は
刑事法の
専門でありまして、
精神障害の犯罪というのに取り組みまして、そこで、
精神医療の方で
強制治療というのがあると。
強制治療を認めているのは、実は
精神障害と
感染症だけでございます。それで、
京都市の
精神医療審査会の
委員になりまして、一九九八年に
感染症法ができたので、そこで
感染症診査協議会というのができまして、その
委員になりました。さらに、五、六年前には
京都府の
感染症診査協議会の
委員も務めております。
そして、その
感染症と
人権ということに
関心を持っていたところ、二〇〇九年の
新型インフルエンザが流行しましたので、そこで
論文を何本か、
感染症と
人権に関する
論文を書きました。それを認めていただいて、八年前の
特措法の
参考人として呼んでいただいたという次第です。その後、
尾身先生が座長の
新型インフルエンザ等有識者会議というのが
内閣府にございます。その
委員を六年ぐらい務めました。
そういうことで、ずっとこの問題に
関心を持っていたところ、今回またこのような
事態になって呼んでいただいたということでございます。
その次の二番の
緊急事態宣言、これが一番
皆さん関心は高いところだろうと思いますけれ
ども、私、まず、その
法律全体については、こういう
手当てをされるというのには基本的に
賛成でございます。ただし、その後の
フォローが非常に大事だろう、そこで不十分なところがあるのではないかというふうに
考えています。
お
手元の
資料を御覧いただくと、
緊急事態宣言、法の三十二条で、
国民の
生命及び健康に著しく重大な
被害を与えるおそれがあるものとして
政令で定める
要件というふうに書かれています。
施行令でどうなっているかというと、重篤である症例の
発生頻度が
通常の
インフルエンザにかかった場合に比して
相当程度高いと認められる場合と書いてあるんですね。上と余り一致していない。つまり、著しく重大な
被害というのがどの
程度であるのかとかは書いていない。そして、その次の
施行令でも、
相当程度高いと。
ただ、これは、
法律家として申し上げると、
法律の宿命でございます。そんな詳しく書けるわけではないわけですね。けれ
ども、ここで止まっているというのはやはり不十分ではないかと。つまり、そんな正確に重大な
被害というのがこういうものなんだというのは
説明できなくても、そこに、著しく重大なで止まっているというのはやはり問題があるのではないかというふうに思っております。
そして、その次の、急速な
蔓延により
国民生活及び
国民経済に甚大な
影響というのもそうでして、甚大な
影響というのはどんな
影響なのかということについて、
施行令の方では
感染させた
原因が特定できないものなどというふうな、そこ
説明があるだけなので、そこも不十分だと思っております。
時間の
関係で次に、三に参ります。
蔓延防止措置、これ法四十五条で、多数の者が利用する
施設というのが閉鎖されるということですけれ
ども、ここについても多数というのが何名なのかと。これも今と繰り返しですが、百とかそんな具体的な数字は絶対出ないです。さらに、これは申し上げると、今の現在でいうと
密度の問題もあるのかなと。つまり、百という数じゃなくて、どれぐらいの
スペースのところに百人が集まっているのかというのが問題なんだろうと。そうすると、やはりそういうところも
手当てをしていかないといけないのではないかというふうに思っています。
さらに、そこに、
資料を御覧いただくと、
学校、
興行場等の
使用制限を受けた者は
法的義務を負うんだけれ
ども、罰則による
担保等によって
強制的に
使用を中止させるものではない、だから
強制の
制約の
内容は限定的である、この
措置は
事業活動に内在する
社会的制約であると
考えられて公的な
補償は
規定されていない。これは、この
特措法の
コンメンタールという本がありまして、一番下に
逐条解説という本ですけれ
ども、そういうところに
説明があるんですね。したがって、それはちょっと今後の、この
法律の
運用の問題ですね、それは
考えていただきたいということと。
次に行きまして、
学級閉鎖の
効果についても、確かにこれはまだ疑問はあるんだけれ
ども、
効果がないということはないわけなので、それは実行されることに私は異論はございません。ただし、今回の例を見ると、全国一律であるとか、さらに、幼稚園は外れているんですね。これ、
特措法では幼稚園入っているんですね。だから、そこらのつじつま合わないというか、もうちょっとちゃんと、まず
政策を打ち出すのは必要だけれ
ども、
政策を打ち出してからその後の
フォローでちゃんとその
運用をしていくというのが必要なのではないかというふうに思っています。
その次が、さらに
施行令で、
使用制限の
対象となる
施設は
床面積の合計が一千平方メートル以上に限るんだとなっているんですね。ただし、これは例外がありまして、十四号で、
発生の
状況、動向若しくは
原因又は
社会状況を踏まえて特に必要なものとして公示するものというふうになっている。これも、
コンメンタールでは、
社会状況とは、例えば臨時休業している
学校の生徒らが
興行場等の一千平米以下の
施設に多数集合しているなどの場合が想定されると書いてあるんです。
これは
有識者会議で
議論をいたしました。カラオケは
対象外なのかということですね。けど、それはやはり小さい
施設なので、それと、先ほど
尾身先生がおっしゃったように、
新型インフルエンザと今回の
新型コロナはちょっと違いますから、そういう点でも少しは
説得力があったのかも分からないけど、今回の場合、どうも
人口密度というのが
関係があるらしいと。そうなると、こういうところも
運用で、この例外的に一千平米以下の
施設というのを加えるというのは見直してもいいのではないかと。つまり、
運用の問題ですね。
法律の基本的な
枠組みには私は
賛成です。そして、どんどん早く手を打っていくというのにも
賛成です。ただし、早く手を打ってから、その後ちゃんと
フォローをして、実際にどういうふうに
社会が動いていくのかとかですね、そういうところの問題も十分
考えていただきたい。
そして、その次のページに行きまして、
不服申立てです。
ここでいうと、
附帯決議がありまして、
附帯決議で、三年後を目途としてというふうになっていたんですけれ
ども、これ実際に、
行政不服審査法で
対応するんだで終わってしまったんですね。これで申し上げると、私、八年前に
参考人で
出席させていただいて、私が申し上げたことの一部が
附帯決議の中に入っております。それを改めて見直しました。
附帯決議の中で実現されていないものがかなりあります。ですから、やはり
附帯決議を忠実に実行していただく、それが必要なのかなと。
さっきも、先ほど申し上げた
学級閉鎖なんか、私は八年前に
論文書きまして、そこで、
学校の休業が長期になった場合は、
アメリカ等では
テレスタディー、テレラーニングですね、そういうものを
考えているんだというのを書いたんですけれ
ども、それから以降、そういう
議論はないのですね。
日本では全然進んでいない。報道を見ていたら、
中国に追い越されているという感じですね。
中国は
テレスタディーをちゃんとやっていると。
日本の方では、ここは
文部科学省の担当ですから。先ほどの
有識者会議は
内閣府の所管です。この
法律も
内閣府です。今までは
厚生労働省です。その
関係なんかも
考えていかないといけないし、
有識者会議に
文部科学省の方はメンバーとしてオブザーバーとしても入っていないんですね。だから、そういうところは
フォローが不十分だというふうに私は思っています。
さらに、
行政不服審査法だとちょっとハードルが高いので、もう少し、
精神医療審査会のような、ハードル下げると。そういう不満とかがある方の
意見をちゃんと聞けるような
枠組みというのもつくるのが必要だというふうに
考えています。
最後、今後の
課題ですけれ
ども、やはり、先ほど申し上げたところですが、八年前に私、ここでいろいろ申し上げた。そして、それ以外にいろいろ書きました。そこで提言していることは余り実現していないんですね。つまり、
法律ができて、一応通って、
附帯決議ができて、一年ぐらいは頑張ってガイドラインを作るというふうな
枠組みですけれ
ども、それから後ですね。それから後、六、七年あったわけですから、その間にいろんな
手当てはできたのじゃないかと。それが余りにも不十分であったというふうに思っております。
時間が来ました。以上でございます。