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太田房江君
ODA調査派遣第三班について御
報告申し上げます。
当班は、本年一月十日から十八日までの九日間、
タンザニア連合共和国、
ウガンダ共和国及び
エチオピア連邦民主共和国に
派遣されました。
派遣議員は、
団長の宇都
隆史議員、今日も
委員としておられます
鈴木宗男議員、そして私、
太田房江の三名でございます。
さて、今般
訪問いたしましたアフリカ諸国への
支援につきましては、二〇一九年八月に
日本で開催をされました第七回アフリカ
開発会議、TICAD7の横浜宣言で、
経済、
社会、平和と安定と三つの柱が掲げられました。
調査に当たりましては、このことを踏まえまして、質の高いインフラ、連結性強化に係る
支援、産業
人材育成支援といった
経済分野、さらに、保健
分野や教育
関係への
支援といった
社会分野に着目して
視察するとともに、
各国で
意見交換をしてまいりました。
まず、タンザニアについて申し上げます。
タンザニアでは、スポーツを通じた国際
協力としての野球グラウンド整備
事業を、質の高いインフラ、連結性強化としての市内交通網の整備
事業を、
社会分野としての病院及び学校への
支援事業を、それぞれ
視察いたしました。
まず、ダルエスサラーム市では、草の根文化無償
資金協力による野球グラウンドの整備
事業としてアザニア中学校を
視察いたしました。タンザニアでは、スポーツは
経済発展にとって不要というような軽視がされてきましたけれども、本整備を契機に、様々な
社会的
課題の
解決法としてスポーツが見直されつつある実態に触れることができました。
また、無償
資金協力によるダルエスサラーム市内の交通網整備
支援事業としてゲレザニ交差点を
視察いたしました。同
事業は、交通網の改善に大いに寄与すると高い
評価を受けております。また、
日本のマネジメント手法であるカイゼンに取り組むことで無事故の
施工が続いているとのことでした。さらに、シニア海外
協力隊が活動するムヒンビリ国立病院を
視察いたしました。同病院は、カイゼンの導入によって医療ミスの減少、作業の効率化が図られ、大勢の患者に対し適切な医療を提供できるようになったということでした。
次に、タンザニア北部のアルーシャ市へ移動し、草の根無償
資金協力等で
支援をいたしましたさくら女子中学校とキマンドル中学校をそれぞれ
視察しました。両中学校とも優秀な教員の確保や実験資材の更新といった共通する
課題を抱えるとともに、劣悪な道路事情のため緊急車両が入ってこられず、生徒の安全確保に支障を来していたり、あるいは、通学時に女子生徒が暴行を受ける事件が多発しているため、早急な女子寮の整備が求められているといった
課題も伺いました。
次に、
ウガンダ共和国についてです。
ウガンダでは、質の高いインフラ、連結性強化としての送電所の
改修事業と
橋梁の整備
事業、米の生産性と品質向上に向けた農業研究の
支援事業、保健
分野としての病院マネジメント改善の
支援事業をそれぞれ
視察いたしました。また、ウガンダ
国民議会議長及びウガンダ大統領と
日本の
ODAについて
意見交換を行いました。
まず、無償
資金協力で
支援した
首都カンパラ市内のクイーンズウェイ変電所、円
借款で
支援した北部回廊上のナイル川源流橋、そして、
技術協力で米の品質改良や生産性向上に向けた研究を
支援している国立作物資源研究所を
視察しました。変電所整備や
橋梁整備といった
支援は、同国労働者への技能、知識移転の
重要性からも高く
評価されておりました。また、米の品質改良や生産性向上のための
技術支援は、農家の所得向上につながる重要な
取組として定着しており、私たちの
視察中も地方から多くの研修生が実技講習を受けており、皆熱心に参加している姿に感銘を受けました。さらに、エンテベ
地域中核病院を
視察しました。カイゼンの導入によって効率的な医療体制が実現され、患者の待ち時間の短縮を始め様々な面で効果が見られているということでした。
次に、カダガ
国民議会議長及びムセベニ大統領と
日本の
ODAについて
意見交換をいたしました。カダガ議長からは、草の根無償
資金協力を始め
日本の様々な
支援に
感謝をするとともに、
国民議会は
日本とウガンダの
協力関係を積極的に支持するとの発言がありました。ムセベニ大統領には二時間半待たされましたけれども、
日本の
支援に
感謝するとの発言をいただきました。ただし、
中国は、ウガンダに来て日が浅いにもかかわらず投資額が非常に大きい、古くからの
関係がある
日本には更なる市場開放と投資を要望するといった発言もございました。これについては、安倍総理のTICADにおける発言を引用するなど、
日本の考えと正確な
情報をお伝えしてまいりました。
次に、
エチオピア連邦民主共和国についてであります。
エチオピアでは、
民間投資、産業
人材育成支援としての女性起業家
支援事業、カイゼン
実施促進能力向上
支援事業をそれぞれ
視察いたしました。また、エチオピアの財務国務
大臣と
意見交換を行いました。
まず、円
借款で女性起業家を
支援している印刷会社を
訪問し、女性経営者からは、資金集めや一定水準の労働者を雇用し続けることの難しさ等、経営上の
課題を伺いました。また、
技術支援を行っている靴製造
企業では、カイゼンの導入により生産性や品質を高め海外へ進出したい、輸出したいといった積極的な姿勢を伺い、
支援の
取組の効果を目の当たりにできました。
次に、アドマス財務国務
大臣と
ODAの
在り方等について
意見交換を行いました。アドマス
大臣からは、これまでの有償、無償
資金協力への
感謝が示されたとともに、農業主体の同国
経済構造を工業化にシフトすべく取り組んでおり、送配電網整備や地熱発電
事業への
支援、カイゼンの
取組や知識、
技術移転等への更なる
支援が必要であるとの要望等が示されました。
また、今般
訪問した三か国では、
JICA海外
協力隊、
JICA専門家、
国際機関や
企業等、現地で活躍する邦人の
方々と非常に有益な
意見交換の
機会を得ることができました。青年海外
協力隊を始めとする
方々の生活上の御苦労や帰国後の就職の不安といったことのほか、
国際機関邦人職員との
意見交換では、現地では、難民への
支援があるのに周辺
地域住民への
支援がないといった不満等、
日本にいてはなかなか気付きにくい
課題等も伺うことができ、有
意義な
派遣であったと思います。
なお、至る所で
中国の
存在感を目の当たりにしました。大規模な資本により目立つ建造物等を整備する
中国流の
支援の方法は一般市民の目にも分かりやすい一方で、
日本の
支援は、質は高いものの小規模であったり、電力や経営サポートのような目に見えない
支援も多く、より
相手国市民に宣伝をしていく必要もあると思いました。
ODA調査派遣第三班は、以上の
調査を踏まえ、今後の効果的な
ODAの
実施に向け、以下の八項目の提言を取りまとめました。
政府及び
関係者の
皆様方におかれましては、その趣旨を十分に理解され、これらの実現に努められるよう要請します。
一、連結性の高い
案件に積極的かつ戦略的に取り組む
必要性。
今般
視察しましたナイル架橋整備
事業といった回廊
開発に係る
支援は、TICAD7の連結性強化に向けた質の高いインフラ投資として、
地域の力を引き出し、
地域の
経済成長を促進し、高い裨益効果が期待できるため、積極的かつ戦略的に取り組む必要があります。なお、回廊
開発といった
地域横断的な
事業への
支援に当たっては、東アフリカ共同体、EACといった場を活用することも重要と考えます。
二、マスタープランの
策定に参画する
必要性。
ODAは先方の要請に基づいて
実施することが基本です。しかし、
支援がパッチワーク的に行われては十分な
事業効果が望めません。そこで、質の高い
支援を効果的に行うため、引き続き、マスタープランの
策定からの積極的な参画が重要です。
三、インフラ
支援に付随した
技術協力の
重要性。
インフラ
支援を契機として、
日本の安全意識が根付いたことや、現地
企業が
ODA受託
企業に研修
機会を要望するといった実態に触れることができました。
ODAにより被
支援国の自立を促すことは重要であり、こうした
人材育成の
取組は、
ODA受託
企業任せにせず、
政府も一緒になって進める必要があります。
四、カイゼン導入
支援を拡充する
必要性。
カイゼンの
取組は建設現場、学校、病院、役所等、
各国の様々なところで導入されていました。カイゼンは地味ですが、導入の結果、生産性が向上することで、取り組んだ
事業体だけではなく、その国の
経済発展の礎にもなるため、今後も積極的に
支援するとともに、成功例を他の
地域へ広めて、導入の拡充を図ることが必要です。
五、質の高い教育
支援を
日本とのつながりを踏まえて継続する
必要性。
質の高い教育
支援は、継続性に留意しなければなりません。そのためには、優秀な教員の確保、教育器材の更新はもちろんのこと、生徒の通学、就業環境の改善に目を向けていく必要があります。また、
日本語教師を
派遣する等、
日本へ留学したり、
日本に
関係する
企業に就職したりする
可能性を考慮した
支援が大切です。
六、最低限の学習環境を整備するための
支援の
必要性。
通学路における危険から学校に通わせてもらえない女子学生がおり、女子寮の建設が急務との要望がありましたので、早急に
対応いただきたいと思います。また、最低限の学習環境の整備への
支援は直ちに
実施し、中長期的な
課題には、被
支援国側と
解決策を探るといった姿勢が求められます。
七、青年海外
協力隊等への
支援を充実する
必要性。
青年海外
協力隊の帰国後の就労
支援の
重要性は、
参議院ODA派遣報告で累次取り上げられてきておりますが、今般も、その充実を求める声をいただきました。適切な就労
支援がなければ、志願者の減少にもつながります。帰国後のビジョンを描けないままにしておかず、
派遣任期中からの進路相談等を行い、任期終了前には新たな就労先について
方向性が見えるようにする等の具体的な
対応を求めます。
八、
日本の広報活動に本腰を入れて取り組む
必要性。
日本の
支援は、高い品質、高い安全性を重視しておりますが、質や安全性は目に見えづらく、被
支援国の市民に対して伝わりにくい面があります。
訪問した国では、テレビをつけると
中国の放送が流れ、現地語版に訳されたテレビ番組までございました。
日本の
プレゼンスを確保するため、そして
日本の
支援の良さを理解してもらうために、マスコミ等も含めた広報活動に本腰を入れて取り組まなくてはなりません。
終わりに、今回の
調査に当たり、多大な御
協力をいただきました
視察先の
関係者、
外務本省、
在外公館、
各国の
JICA関係者、
国際機関職員の
方々、そして
日本企業関係者の
方々に改めて
感謝を申し上げます。
以上です。ありがとうございました。