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石橋通宏君 私は、ただいま可決されました
雇用保険法等の一部を改正する
法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲・国民.新緑風会・社民及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
雇用保険法等の一部を改正する
法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の
施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一、六十五歳までの高
年齢者雇用確保措置が全ての
企業において確実に
実施されるよう、全国の常時
雇用する
労働者が三十人以下の
企業における高
年齢者雇用確保措置の
実施状況の把握・集計・分析を早期に
実施し、全
事業主に対する制度趣旨及び内容の周知の徹底を行うとともに、違反
事業主に対する厳正なる指導等の強化を通じて、早期に六十五歳までの
希望者全員の
雇用確保が図られるよう更なる努力を行うこと。
二、従来の高
年齢者雇用確保措置においては、継続
雇用制度を導入する
企業が大半であり、かつ、その多くで六十歳直前の
賃金と比べ、
賃金水準が大きく低下する傾向にあること等を踏まえ、高
年齢者雇用安定法の目的である職業の安定と福祉の増進に加え、
労働者の
年金支給開始年齢までの
生活安定及び
高齢期の働きがいの
確保に向け、不合理な待遇差を是正すべく
均等・
均衡待遇原則の徹底等、必要な対策を講ずること。
三、
事業主が複数の高
年齢者就業
確保措置を講ずる場合において、個々の
労働者の意思を十分に尊重することを指針等で明確にし、その周知徹底を図ること。
四、
事業主が高
年齢者就業
確保措置を講ずる場合において、七十歳までの
就労・就業を予定している
労働者が従前と異なる業務等に従事する場合には、必要に応じて新たな業務に関する研修や教育・訓練等を事前に
実施することが望ましいことを指針等で明確にし、その周知徹底を図ること。また、七十歳までの継続
雇用制度の導入に関し、他の
事業主によるものが選択された場合において、可能な限り個々の
労働者の
希望や経験・能力に応じた職務の内容及び労働条件とすべきことが望ましいことを指針等に明記し、その周知徹底を図ること。
五、創業支援等措置による就業は、労働
関係法令による
労働者保護等が
確保されないこと等から、
雇用による措置の場合とは異なり、改正後の高
年齢者雇用安定法第十条の二第一項ただし書における措置であること、過半数労働組合又は過半数代表者の同意が必要とされていること、当該同意が十分な
説明のもとに
雇用関係がない
働き方の場合には労働
関係法令による
労働者保護等が
確保されない措置であることも含め納得してなされるべきであることを踏まえ、以下の事項を指針等で明確にすることを
検討し、その周知徹底を図ること。
1
事業主は、当該措置の制度内容、特に
雇用関係がない
働き方の場合には労働
関係法令による
労働者保護が及ばないこと及び当該措置を選択する
理由を書面等により過半数労働組合又は過半数代表者に十分に
説明すること。また、当該措置を適用する
労働者に対しても丁寧に
説明し納得を得る努力をすることが重要であること。
2
事業主が当該措置を講ずる場合に、就業する者の報酬の額は、業務の内容や当該業務の遂行に必要な知識・経験・能力、業務量等を十分に考慮したものとすべきであること。
3
事業主が当該措置を講ずる場合に、契約の有効期間や解除要件、発注の頻度、報酬の算定方法及び業務遂行上の費用
負担、業務に関連した被災時の取扱い等を労使合意において書面により定めるとともに、対象
労働者にも示すこと。
4
事業主が当該措置のみを講ずる場合は、過半数労働組合又は過半数代表者の同意が必要であること。また、当該過半数代表者の選出に当たっては、同措置を講ずるか否かを協議するための過半数代表者の選出であることを明らかにした上で、民主的な手続により選出されなければならないこと。さらに、継続
雇用制度の導入に加えて当該措置を講ずる場合であっても、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。
5 当該措置により就業する者について、同種の業務に
労働者が従事する場合における労働契約法に規定する安全配慮義務を始めとする労働法制上の保護の内容も勘案しつつ、委託業務の内容・性格等に応じた適切な配慮を当該措置を講ずる
事業主が行うことが望ましいこと。
6 高
年齢者雇用安定法の改正の趣旨が七十歳までの
雇用・就業機会の
確保であることを踏まえ、当該措置を講ずる
事業主は、七十歳まで継続的に
労働者を支援することが求められること。
7 労使合意により当該措置の対象となる
労働者の基準を定めるに当たっては、選考の基準等が恣意的なものでない等適切なものとなるようにすること。
六、創業支援等措置の導入を
検討するに当たり、適切な労使合意を目指す観点から、
関係労使双方が、判例・裁判例を基に
労働者性の基準等について必要な知識を身につけることができるよう、研修や
資料提供等の具体的な方策を
検討し、
実施すること。
七、高
年齢者就業
確保措置の掲げる措置に、現在シルバー人材センターが行っている高
年齢者の就業機会の提供は含まれないことを周知すること。
八、創業支援等措置の社会貢献事業に関し、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業」に該当しないものを指針等において示すことを
検討すること。
九、高
年齢者雇用安定法に創業支援等措置を導入するに当たって、業務委託契約や請負契約、有償の
社会貢献活動等に基づいて就業する者に特化した公式な統計が存在しないことに鑑み、就業する者の
負担する経費や報酬の額、就業時間や就業日数、事故の発生
状況等について必要な実態把握を行い、公表することを
検討すること。
十、高
年齢労働者の労働災害を防止するため「高
年齢労働者の安全と健康
確保のためのガイドライン」の周知徹底を図るとともに、創業支援等措置による就業についても、同ガイドラインを参考とするよう周知・広報すること。また、創業支援等措置により就業する者が被災したことを把握した場合は、当該措置を講ずる
事業主が
厚生労働大臣に報告することを
検討することとし、同種の災害の再発を防止するための対策の
検討に当該報告を活用すること。さらに、都道府県労働局等において、高
年齢者雇用安定法や指針等に照らして問題のあるおそれのある契約上のトラブルや委託業務に起因する事故等による
相談を受け付け、必要に応じて適切な助言・指導を行う体制を整備・強化することを
検討すること。
十一、高年齢期においては、
労働者の体力や健康状態その他の本人を取り巻く
状況がより多様となり、労働災害等の発生場面、頻度、負傷の
程度等も異なってくる蓋然性が高いことから、
事業主が高
年齢労働者の
働き方にふさわしいより柔軟な労働条件を整備できるよう適切に支援すること。
十二、六十五歳以降も働くことを
希望する全ての
労働者が個々の意欲及び能力に応じて働くことができる環境整備を図るため、その意欲や納得性に配慮した、能力及び成果を重視する評価・報酬体系の構築に対する助成、ハローワークの生涯現役支援窓口や産業
雇用安定センターによるマッチング機能の強化等を始め、施策の充実に努めること。
十三、シルバー人材センター事業のいわゆる「臨・短・軽」要件の緩和が行われ、派遣・職業紹介に限り、週四十時間までの就業が可能となったことに鑑み、
平成二十八年高
年齢者雇用安定法改正後の同事業における高
年齢者の就業
状況、労働災害に当たる事故の発生
状況等について
調査を行い、必要に応じて適正就業ガイドラインの
見直しを含めて
検討すること。
十四、
雇用政策に対する
政府の責任を示すものである
雇用保険の国庫
負担については、改正後の
雇用保険法附則第十五条の規定に基づき、早期に安定財源を
確保し、本則に戻すこと。また、今回、前回改正時の本
委員会附帯決議のとおりでなく時限的な国庫
負担率の引下げ措置が継続されることは遺憾であり、今回の措置については、
令和三年度までの二年度間に厳に限った措置とすること。
十五、失業等給付と異なる給付体系に位置付けられる育児休業給付について、給付額が増加傾向にある
状況を踏まえ、中長期的な観点から国庫
負担割合も含めた制度の在り方を
検討すること。また、介護休業給付金に関する暫定措置の恒久化についても
検討を進めること。
十六、求職者支援制度について、
雇用の安定化の
必要性が高い者に対し十分な支援が行き届くよう制度運営の充実に努めるとともに、
雇用政策に対する
政府の責任を示す観点から、国庫
負担割合の在り方を
検討すること。
十七、
企業による六十五歳までの
雇用継続を下支えしている高
年齢雇用継続給付について、今回の給付率の引下げに当たって、
働き方改革関連法の「同一労働同一
賃金」に基づく高
年齢者の不合理な待遇差の解消に取り組む
企業に対して十分な支援を行うこと。その上で、今後の給付の在り方については、六十五歳までの高
年齢労働者の
雇用の進展
状況を十分に踏まえ、中長期的な観点から
検討すること。
十八、複数の事業所に
雇用される六十五歳以上の
労働者に対する
雇用保険の適用について、
施行後五年を目途に、懸念される逆選択やモラルハザードといった事象も含め、適用による行動変化や財政への影響等を十分に検証し、必要に応じて、マルチジョブホルダーに対する
雇用保険の適用の在り方を
検討すること。
十九、
新型コロナウイルス感染症により我が国経済は大きな影響を受けており、今後
雇用への影響の拡大が懸念されることから、
雇用調整助成金を始めとする
雇用保険二事業等を活用し、
雇用の維持に万全を期すこと。
二十、
雇用保険の対象とならない個人
事業主・
フリーランス等が、
新型コロナウイルス感染症の拡大により多大な影響を受けている実態に鑑み、制度の在り方も含めその支援の強化に努めること。
二十一、労災保険の複数事業者に係る改正事項を確実に
実施するとともに、特別加入制度について、
働き方が多様化し、
雇用類似の
働き方も拡大していることから、
労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる者の加入促進を図るため、制度の周知・広報を積極的に行うこと。また、社会経済情勢の変化を踏まえ、その対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合ったものとなるよう必要な
見直しを行うこと。その際、今回の創業支援等措置により就業する者のうち、常態として
労働者を使用しないで作業を行う者を特別加入制度の対象とすることについて
検討すること。
二十二、大
企業における中途採用比率の公表に当たっては、
企業の実態や入社後のキャリアパス等の情報も中途採用を目指す
労働者にとって有益であることから、様々な情報を総合的に公表しやすくするための支援を
検討すること。また、中小
企業においても大
企業に義務付ける項目と併せてその他有益な情報の公表が自主的に進むよう支援を行うとともに、
政府機関においても中途採用に関する情報の公表の在り方等について
検討すること。
二十三、本法による特定社会保険労務士の業務追加に当たり、一部の社会保険労務士が「不適切な情報発信」を行うことにより、社会保険労務士の事業の健全な発達と
労働者等の福祉の向上を損なわせることのないよう、
平成二十八年三月三十日付基発〇三三〇第一〇号・年管発〇三三〇第五号「社会保険労務士の不適切な情報発信の防止について」の更なる徹底を図ること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ
委員各位の御賛同をお願いいたします。