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参考人(
福家秀紀君)
駒澤大学名誉教授の
福家でございます。
本日は、法案の
審査に
当たり意見を述べる機会を与えられたこと、大変光栄に存じます。
早速、お
手元にある
資料に沿って
説明させていただきたいと思うんですけれども、一枚紙でどんな項目について触れるか、
参考資料の方で
市場の現状、幾つか
データをまとめておりますので、こちらに併せて御覧いただければと思います。
まず、デジタルプラットフォームの現状認識なんですけれども、この法案の規律対象としているのは両面
市場におけるデジタルプラットフォームであると理解をしております。デジタルプラットフォームには出品事業者と
一般利用者という二つのタイプの顧客が存在をして、プラットフォームは、この両者の間の間接的なネットワーク効果を
利用してビジネス展開をしているのではないかと思います。
この
資料については、昨年、シカゴ
大学、ここはどちらかというと
市場原理主義の立場に立って
規制緩和政策を推奨してきた経済学者が多いのですけれども、その重鎮の一人であるスティグラーという先生が設立した
研究センターも、この
市場は先行してビジネス展開をした事業者による寡占化、独占化の傾向が強いということから、一定の
規制が必要であると提言しております。事実、プラットフォーム
市場におきましてはGAFAの影響、GAFA、アメリカのIT四社ですけれども、グローバルに大変大きいものがございます。
参考資料の表紙の次に表一というのがございますけれども、事業規模、これはもう
日本の楽天とかヤフーに比べて比較にならないほど大きいと。しかも、収益性、まあ収益性を見る
資料はいろいろありますけれども、
売上高営業利益率で見てみますと、アルファベットは二一・一%、アップル二四・六、フェイスブック三三・九というふうに、まあアマゾンは小売業ですのでこれほど高くはないんですけれども、非常に高い収益性というものを誇っております。
アマゾンは、ついでに触れさせていただきますと、アマゾンウェブ
サービスというクラウドの
サービスで営業利益の六割を稼いでいる、こういう構造になっているわけでございます。
したがいまして、次の
ページに表の二というので営業キャッシュフローを挙げておりますけれども、いずれも非常に潤沢なキャッシュフローを持っています。楽天と比較しますと、楽天はこれらに比べると数%にすぎないわけです。
これだけ豊富なキャッシュフローを何に使っているかというのが、
一つが、次の
ページにございますGAFAの
研究開発費です。アルファベットが二兆八千億、アップル一兆七千億、フェイスブックは一兆四千億というふうに、
日本で最大のRアンドD費用を使っているトヨタですら一兆一千億ですので、これをはるかに上回る
研究開発費を使用しておるということで、もうこれらの
企業は、今ある
サービスに加えて、いろんな
分野の
企業を買収する、あるいは新規
分野の
技術開発を進める、こういうことで更に有利な地位に立ってきているわけでございます。
というふうに考えていきますと、なかなか、
我が国の大手のプラットフォーム事業者といっても、これに対抗するのは大変難しいんではないかということで、表の四、次の
ページにありますけれども、
スマートフォンでは
日本のメーカーはもう影も形もないと言っていいかと思うんですね。表の五がクラウドの
世界シェアですけれども、これで見ても、アマゾン、マイクロソフトあるいは
中国のアリババ集団といったところが
シェアを占めていて、
日本の
企業はここに出てこない。
こんなことでございますので、特に法案で目指すべきは、特定の
企業を指定するわけではないんですけれども、GAFAといったような
米国のIT
企業が非常に強い
市場支配力を持っている、こういう
市場支配力から出品事業者あるいは
一般利用者をいかに保護するのかということを考えていくことが重要ではないかと思います。
もちろん、楽天の送料無料化問題ありますように、
我が国の
市場において一定の影響力があるプラットフォームの
規制、必要ですけれども、私の問題意識としては、こういう
米国の主要なIT
企業が革新的な
サービスの提供で消費者の利便の
向上、これに寄与したことは非常に評価したいと思うんですけれども、他方では、具体的な
市場支配力の濫用とか国際的な税逃れ、あるいは、フェイスブックは極端ですけれども、個人情報の悪用、あるいはアマゾンとかウーバーに見られますように、ギグワーカーの
活用といった形で労働者の使い捨ても、成長にあるということは否定できないと思うんです。
このように考えますと、本法案が立案されたということは非常に貴重なことだということで評価には値すると思いますけれども、具体的な中身についてやはり足りないところがあるんではないかということで、あと七項目ほど申し上げたいと思います。
二番目が、項目にあります規律対象の明確化と
拡大ということなんですけれども、この法案の定義だと両面
市場を対象にしているということだと解されるんですけれども、この定義では、
参考資料の一番
最後にアマゾンの直販比率という
資料がございますけれども、これは、アマゾン自身がサイトで販売しているものと、ファーストパーティービジネスと称していますが、それからマーケットプレイス、他社の商品を扱うというこの二つに分かれるんですけれども、近年、マーケットプレイスでの取扱いが増えてきておりますけれども、アマゾンは基本的には直販を
中心にした
サービスであったわけですね。これは、この法律でいうと、両面
市場に当たらないから網の目から漏れているんではないかというふうに考えられます。
EUにおきましては、オンラインの仲介
サービス事業者、ここでいうプラットフォーム事業者と並んでオンライン検索事業者も
規制対象になっているということで、グーグルの検索
サービスなんかも射程に入れているわけですけれども、
日本はこれが入らないのではないかと考えると、
規制対象が非常に狭いんではないかと。その
拡大、明確化を図っていく必要があるんではないかというふうに考えております。
法案では、売上総額などから見て、大規模なオンラインモール、アプリストアを政令で
特定デジタルプラットフォームとして指定するということで、報告などについて詳細な規律が規定されていますが、この政令がどうなるかということにもよるんですけれども、余りに大きいところで切ると
規制対象が少なくなり過ぎるし、逆に、小さいところまで入れますと届出などの義務に加えていろんな義務が課せられているので過剰な負担になるんじゃないか。
この法案では内外無差別に適用するとされておりますけれども、じゃ、
売上高ってどうなるんだろうと。
日本の
売上高が、アマゾンのように公表されているものもありますけれども、把握が困難なものもあると。EUなどは、基本的にはEU向けに
サービスを提供している事業者の全
世界での
売上高ということから
規制を考えておりますので、こういったことも考えられようかというふうに思うわけです。
同時に、どこまで届出義務を課すかということにも関わるわけですけれども、小規模な海外の事業者も全て
日本向けに
サービス提供していればここに届出義務があるんだというふうに考えるのもいささか非現実的という、この両面、二つの側面があろうかと思います。
三番目に、具体的な禁止行為、それから罰則の問題ですけれども、基本的に共同
規制の考え方に沿って取引の
透明性、
公正性の
向上を図るという考え方のようですが、そのために、取引条件などの情報の開示と自主的な手続、体制の整備、それから運営
状況のモニタリングというのが規律の
三つの柱になっているかと思いますが、開示すべき項目は挙げても、そこで何が禁止されているのかということは明確になっておりません。EUではそれを具体的にかなり書き込んでおりますので、同じ共同
規制といってもかなり濃淡があるのではないか、それでいいのかなというのが問題意識です。
イノベーションが
期待される
分野、流動的な
市場だと、それはそのとおりなんですけれども、かといって、基本的に禁止しなければいけない行為、これは存在すると思うんですね。
昨年の公正取引
委員会の報告書においても競合商品の取引拒絶だとかいろんなことが指摘されておりますけれども、こういう問題行為は禁止するんだということを明示しておく必要があるんではないか。事業者の自主性に任せるというのは、いささか抑止効果の面で限界があるように思います。GAFAのように、
市場でもう大きな地位を占めてしまった
企業に対してこれが効果があるかというのはいささか疑問に思っております。
ということで、大手のプラットフォーム事業者がこの法案の規律に従うか。罰金という面を見ましても、EUなどは競争法違反に対してグーグルに累計で一兆円近くの制裁金を科しているわけですけれども、これほどの規模の
企業にとっては、この
日本の法案に示されているような罰金というのは痛くもかゆくもないんじゃないかというような気がいたします。
事実、その次に考えなきゃいけないのは、
一般利用者の保護に関する規律の明示ということでございまして、これはもう細かいところは省かせていただきますけれども、マスクの販売だとか、いろんなところでいろんな行為が問題視されているわけで、こういったことを禁止するという面で
一般利用者を保護していくということが必要なんじゃないかと思います。
五番目は、先ほども申し上げましたけれども、GAFAなど海外の事業者に対する規律、これ本当に有効に働くんだろうかということですね。プラットフォーム事業者が守るべき指針が第七条で示されて、
国内管理者の選定も義務付けられているわけですけれども、これ本当に守られるんだろうかという疑問がございます。
それから、六番目は個人情報の保護。もうこれはあらゆる機会に強調されておりますけれども、プラットフォームというのは出品者、消費者の個人情報を収集、分析して商品販売、広告販売に
活用するという仕組みでありますので、ここに
一つの枠をはめておくということが必要なんだろうと思います。
こう申し上げている私も、アマゾンなんかは非常に便利なので愛用しているわけですけれども、これ、
利用規約というのがございますね。
利用規約にいろんなこと書かれているわけですけれども、これに承諾しないとその
サービス自体が
利用できないという仕組みになっておりますので、このことを考えていく必要があるんじゃないかと思います。
七番目は、ギグワーカーなど、アマゾンやウーバーですけれども、これ、個人事業者とされて、何か
事故があったときにも、ウーバーなんかはこれは無視している、個人の責任だと言っているようなことがありますから、そこを保護していく必要があるんじゃないかと。
最後は、やはりこういったものをトータルで考えていくためには、
一つの独立したデジタルプラットフォームを対象にした
規制機関を設立をして、それからプラットフォームと事業者あるいは消費者との間の紛争の解決も図っていくというのも
一つのアイデアではないかなというふうに私は考えます。
ということで、今のデジタルプラットフォームの現状というものを考えますと、やはり一定の
規制、これは明確化していくことが必要なんじゃないかということを私としては強調させていただいて、陳述を終えさせていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。