○
岸田委員 私
たちは、
国民の一体感、大事にしながら、
国際社会に向けては、分断から協調への流れ、これをぜひリードできるような国でありたいと強く思います。
今、
国際社会においては、自国第一主義ですとか、保護主義ですとか、ポピュリズムですとか、あるいは
国民の分断ですとか格差、こういった動きがどんどんと広がっている。息苦しささえ感じる昨今です。
その中で、少なくとも、
環境とかエネルギーとか保健とか、あるいは平和ですとか、こういった地球規模の
課題、これはどんな大国が一国で力んでみても
対応はできない、結果につながらない、こういった
課題であると思います。各国の協調、
協力なくして、こういった地球規模の
課題に取り組むことはできない。
こういったことを
考えますと、ぜひ
我が国は、こうしたみずからの
国民の一体性も大事にしながら、この分断から協調へという国際的な動きをリードして地球規模の
課題に貢献し、国際的な存在感や発言力を確保し、そして国益につなげていく、こういった
取組を進めていくべきではないかと思います。
この点については、もし後ほど時間があれば触れさせていただくとして、もう一つ、きょう
総理にお伺いしたい
課題があります。それに移っていきたいと思います。それは憲法の問題です。
ことしは戦後七十五周年の節目です。その節目の年に当たって、
総理は施政方針演説において、改めて憲法改正について、憲法審査会の場でともに
責任を果たしていこうと国会における議論を呼びかけられました。
私も、国の形の
基本を示す憲法について、時代の
変化を
背景に、絶えずどうあるべきなのか
考えていく、こういった姿勢は極めて重要であると
考えます。ただ、その際に大切なことは、憲法は
国民のものであるという意識です。憲法を変えるか変えないか、これはまさに
国民が決めることです。
憲法改正を訴える我が党のポスターでも、「憲法改正の主役は、あなたです。」というキャッチコピーを添えていますが、これは今言った、憲法は
国民のものであるという意図だと
理解をしています。その意味では、
自民党として既に四項目にわたる改正案をお示ししていますが、決めるのはあくまでも
国民でありますから、この四項目の改正案はたたき台素案として示している、たたき台素案と称している、こういったことであります。
そして、
国民の
皆さんの中には、
もともと憲法に関心の強くあられた方もおられます。一方、憲法にこれまで余り関心のなかった方も多くおられます。大切なのは、憲法を内輪の議論にすることなく、これまで関心のなかった層にも幅広く関心を持っていただくことではないかと
考えます。
そして、憲法改正といいますと、報道の様子を見ておりますと、必ず憲法九条の議論に焦点を当て、そしてその部分に集中している、こういった感じを受けます。そして、従来から憲法改正に取り組んできた方々は九条に大きな関心を持っておられる、これも事実であります。そして、私も、この九条において自衛隊の違憲論争に終止符を打つ、このことは大変重要なことだと思います。
ただ、私自身、
自民党の政調会長として、
地方政調会ということで、
地方を回って、多くの
地方の方々と直接対話集会を昨年からずっと続けています。憲法改正も重要なテーマと取り上げて、対話集会を続けています。多くの方々に御参加いただいていますが、その対話集会を行いますと、自衛隊の違憲論争への終止符、これも大きな議論ではありますが、それ以外の事柄に反応を示す参加者も思いのほか多いというのを感じています。
例えば、他の、
自民党のたたき台素案の三項目、選挙における票の平等の問題ですが、今、東京へ、大都市へ人口がどんどん集中していく、この東京への人口集中というのは大きな社会的な
課題になっていますが、こういった人口の移動の中で、例えばことし国勢調査を行いますと、二年ほど先にはまた衆議院の区割り等が変えられるわけですが、もし今国勢調査をやって各都道府県の衆議院の定数の変更を予想した場合に、例えば
総理の山口県も一議席減るだろうと言われています、私の広島県も一議席減るだろうと言われています、また、加藤厚労
大臣の岡山県も一つ減るのではないか、こんなことが言われています。
中国地方においても、島根、鳥取は、参議院選挙において既に一つの県で一議席を維持できないということで合区も行われている、こういったことでありますが、一方で、東京都は恐らく四つも五つも議席がふえるのではないか、こういったことが予想をされています。
どうしてこういうことが起こるのか。こういった流れに逆らうということになりますと、国政選挙をやるたびに、選挙で争われて、最高裁まで、選挙は違憲ではないかといって争う、これがずっと続いていくことになるわけですが、何でこういうことが起こるのか。これは、憲法において、一票の平等の物差し、人口割しか用意していないからであります。人口割以外に、都道府県や地域のつながりなど、さまざまな
国民感覚に合った物差しというのは
考える余地がないんだろうか、こういった議論があります。
また、教育の問題についても、
自民党として、一つ、改正、たたき台素案を用意しているわけですが、今、子供
たちの貧困、これは社会問題になっています。子供食堂というのが大きな話題になり続けている、こういった実情にあります。そして、子供
たちの家庭の所得の格差が教育の格差を生み、教育の格差が所得の格差を再生産する、こうした負のスパイラルが
日本の社会でも始まっているのではないか、格差がどんどん進んでいるのではないか、こういった
指摘があります。
だからこそ、今憲法を
考えた場合に、義務教育の無償化ということだけ書いてある、これだけで十分なのか。やはり、
経済的な格差の中にあっても、
日本の子供
たちに少なくとも教育を受ける機会だけは与えようではないか、こういった議論をしてもいいのではないか、こういった議論も
自民党の議論の中にあります。
更に言うと、
緊急事態、今、災害の時代と言われている中にあって、首都直下型地震ですとか南海トラフ地震ですとか、こういった大きな地震もあるのではないか、将来に備えなければいけない、こういったことが言われている中にあって、
緊急事態の中にあっても
国民の代表である国会の権能をいかに維持していくのか、あるいは非常の場合にはどう代替していくのか、こういったことについて、ほかの国々のように
日本も準備しておく必要があるのではないか、こういった議論、これも
自民党のたたき台素案の四項目のうちの一つなわけですが、こういった議論を行いますと、対話集会が終わった後に多くの方々が寄ってこられまして、憲法改正というのはこういう議論だったんですか、あるいは、
自民党がこんなことを
考えていたとは初めて知りましたといって握手を求められる、こういった場面にたびたび直面をいたしました。
私は、こういった反応を見ておりまして、憲法改正について、より幅広い
理解や改正の議論を行う、議論や
理解の幅を広げていく、こういったことに手応えを感じるわけですが、自衛隊の違憲論争の議論もあわせて、ぜひこうした幅広い憲法改正のアプローチを続けていきたいと
考えます。
総理は、
国民の間に憲法の議論の広がりを持たせるための議論のアプローチについて、どのようにお
考えになられるでしょうか。