○
内閣総理大臣(安倍晋三君)
柚木道義議員にお答えいたします。
新型コロナウイルス感染症
対策についてお尋ねがありました。
新型コロナウイルス感染症
対策については、何よりも
国民の命と健康を守ることを最優先に、二月十三日に第一弾、三月十日に第二弾の緊急
対応策を講じ、必要な
対応を直ちに実行してきました。こうした
対策の効果や
国民の皆様の御
協力により、
経済社会活動を可能な限り維持しながら、今のところ、諸外国のような爆発的な
感染拡大、いわゆるオーバーシュートは発生していない
状況にあります。
こうしたこれまでの
感染拡大の
状況を客観的事実として評価する限りにおいて、諸外国と比しても
我が国の
対応が遅かったとの御指摘は当たらないものと
考えております。
他方で、
東京や大阪など都市部を中心に
感染者が急増している等の
状況を踏まえ、
緊急事態宣言を行うとともに、今回の
緊急経済対策では、
医療提供体制の整備や
事業者に対する資金繰り支援、家計や中小・小規模
事業者に対する
現金給付など、前例にとらわれることなく、思い切った措置を講じています。
また、布製マスクは、使い捨てではなく、再利用可能であることから、急激に
拡大しているマスク需要に
対応する上で非常に有効であり、また、サージカルマスク等を
医療現場に優先して供給するためにも、
家庭向け布マスクの配布を行うことは理にかなった方策と
考えています。米国CDC等においても、布マスクの有用性が評価されているところであります。
PCR検査についてお尋ねがありました。
PCR検査については、四月十二日
時点で、
全国で一日
当たり約一万二千件以上の
検査能力を確保しています。
検査能力の分だけ実
検査せよとの御指摘については、
検査能力と実際に
検査が必要な
検査数は別のものと
考えており、
医師が必要と
判断した方が確実に
検査を受けられるようにすることが重要と
考えております。
PCR検査の実施件数については、都市部を中心として
感染者数の急増が見られる中で増加してきているとの
認識ですが、全相談件数に占める
検査実施の
報告件数が低い都道府県もあることから、その背景や事情について現在フォローアップを行っているところです。
政府としては、引き続き、
医師が必要と
判断した患者が確実に
検査を受けられるよう取り組むとともに、さらなる
感染拡大に備え、
緊急経済対策において、
PCR検査体制の一日二万件への増加や、保健所の体制整備によるクラスター
対策を抜本的に強化してまいります。
御指摘の、人と人との
接触機会の
減少割合は、必ずしもこれを直接的に示す数字ではありませんが、評価の
一つの
目安となるものとして、例えば、携帯電話の位置
情報を活用した
人口変動データを活用しています。このデータは、四月十二日
時点で、昨年に比べ、渋谷で約七割、横浜や梅田で約八割
減少するなど、一定
程度減少している
状況が見られます。
接触機会の具体的な削減
状況については、こうしたデータも参考にしつつ、
感染拡大の
状況についても日々分析した上で、
専門家の意見も踏まえて
判断していくこととしています。
また、
実効再
生産数については、
感染日から発症日までに要する
期間を考慮すると、二週間
程度経過した後初めて算出可能となるため、御指摘の
時点における
実効再
生産数をお示しすることは困難です。なお、
専門家によると、
早期収束のためには、その値を一より十分小さい
状況を目指すことが必要と指摘されています。
御指摘の
緊急事態宣言の解除については、
専門家の評価をいただきながら総合的に
判断していくこととなりますが、収束に向けて、
国民の皆様のこれまで以上の御
協力をお願いしつつ、
感染拡大の防止等に
政府としても全力を尽くしてまいります。
緊急経済対策についてお尋ねがありました。
世帯向けの
現金給付については、リーマン・ショック時に全
国民を
対象に一人
当たり一万二千円の
給付を行った際、全戸に対する
給付案内等の準備に三カ月もの時間を要したこと、高
所得世帯を中心に多くが貯蓄に回ったことなどの経験を踏まえ、今回は、全
世帯に一律の
給付を行うのではなく、甚大な
影響を受けて収入が
減少し、
生活に困難を来している御
家庭に集中することで、スピーディーに、思い切った額である三十万円の
給付を行うこととしたところであり、大変な
状況にある方々に迅速かつ効果的な支援を行うものであります。
事業者への
現金給付については、過去に例のない措置でありますが、今般の
感染症により休業を余儀なくされた
事業者のみならず、売上げが大きく
減少した中堅企業、中小・小規模
事業者を業種にかかわりなく幅広く
対象とするものです。また、中堅・中小企業には二百万円、フリーランスを含む個人
事業者には百万円を上限に
給付を行うものであり、他の
欧米諸国との比較において、
対象範囲の広さでも、金額でも、遜色のない支援を行う施策であると
認識しております。
自治体への交付金についても、今回の
対策では、全額国費
負担の
事業が多い中にあって、リーマン・ショック時と同じ規模の金額を確保することにより、今般の
感染症に係る
自治体における
対策に万全を期したところであります。
その上で、今般の
緊急経済対策では、六兆円規模の
現金給付のみならず、雇用調整助成金の
拡充を通じた従業員の皆さんの雇用と収入の確保、
事業者負担の軽減、税や
社会保険料の猶予による手元資金の確保、実質無利子無担保、最大五年間元本返済不要の融資
制度によって資金繰りに万全を期すなど、あらゆる手段を駆使して、困難に直面している
事業者や御
家庭の皆さんを支えることとしています。全体で
事業規模百八兆円、GDPの二割に当たる
対策規模は、世界的にも最大級であると
考えております。
このための
補正予算を来週にも国会に
提出する予定であり、
野党の皆様の御理解と御
協力を得て
早期の成立を図ることにより、
対策を速やかに実行に移してまいります。
引き続き、内外における事態の収束までの
期間と広がり、
経済や
国民生活の
影響を注意深く見きわめながら、
国民の命と暮らしを守るため、必要に応じて、時期を逸することなく、臨機応変かつ果断に
対応してまいります。
子育て世帯への支援についてお尋ねがありました。
政府としては、今般の
新型コロナウイルス感染症の
経済への甚大な
影響により困難に直面されている御
家庭に対して、迅速かつ徹底的な下支えをする所存であります。
このため、甚大な
影響を受けて収入が
減少し、
生活に困難を来している御
家庭を中心に、集中的に三十万円の思い切った
給付を行うとともに、お子さんのいる御
家庭に対しては、これに加えて、可能な限り迅速にお支払いする観点から、
児童手当の
対象者に、そのお支払いにあわせて子供一人
当たり一万円を一時金としてお支払いすることとしております。
さらに、光熱水費等について支払いの猶予を求めるとともに、八十万円まで利用が可能な返済
免除特約つきの緊急小口資金の活用等も可能としております。
政府としては、引き続き、御指摘のシングルマザーを始め大変な
状況にある方々の実態をよく踏まえ、こうした方々に直接手が届く効果的な支援策を実施してまいります。
年金の
給付水準についてお尋ねがありました。
将来の
年金水準を見通す上では、現役期の
賃金との比較である
所得代替率と、
年金受給者の購買力をあらわす、物価上昇分を割り戻した実質価格の双方を見ることが大切と
考えています。
この点、昨年
公表した
財政検証の結果によれば、将来世代の
給付確保のために行うマクロ
経済スライドによる調整が終了した後の
所得代替率については、当初、前回検証よりも悪化するのではないかとの臆測もあったところでありますが、こうした一部の臆測に反し、代表的なケースでは、前回検証時の五〇・六%に対し、五〇・八%と改善したところであります。
また、
基礎年金額は、物価上昇分を割り戻した実質価格で見るとおおむね横ばいとなっており、
年金受給者の購買力や実質的な
生活水準が三割低下するわけではありません。
さらに、昨年、
財政検証結果において、
被用者保険の適用
拡大は、厚生
年金のみならず
基礎年金の水準を確保する上でもプラスの効果を持つことが確認されたところであり、今般の法案では、このような
内容も盛り込んでいるところです。
なお、低
所得や無
年金、低
年金の
高齢者の方には、
年金受給資格
期間の二十五年から十年への短縮、
年金生活者支援給付金の
支給、
年金給付から天引きされる
医療、介護の
保険料軽減を実施してきており、今後とも、
社会保障制度全体で総合的な
対応を検討してまいります。
厚生
年金の適用
拡大についてお尋ねがありました。
被用者である方には、
被用者保険である厚生
年金を適用することが原則であり、その意味で、
企業規模要件も最終的に撤廃すべきものであると
考えています。
他方、厚生
年金の適用
拡大は、特に中小企業への
影響も大きいことから、全世代型
社会保障検討
会議等の場で関係者の意見を丁寧にお伺いした上で、今回は、五十人超の中小企業まで段階的に
適用範囲を
拡大していくこととしたものです。
まずは、中小企業への生産性向上支援、
社会保険手続の
負担軽減も図りながら、五十人超の中小企業までの適用
拡大を着実に進め、その上で、次期
財政検証の結果も踏まえて
適用範囲の検討を加えることとし、その旨、法案の附則にも
規定したところです。
年金積立金の
運用、
リスク等
情報の開示についてお尋ねがありました。
年金積立金の
運用は、長期的な観点から行うこととされており、
株式市場を含む市場の一時的な変動に過度にとらわれるべきではありません。
また、
年金積立金の
運用は、安全かつ効率的に行うことが重要です。このため、
経済動向や
運用環境などを踏まえて、
株式や内外の債券を含めた分散
投資により、ポートフォリオ全体としての
リスクを抑えつつ、
年金財政上必要な利回りを確保していくことが必要であると
考えております。
御指摘の
年金積立金運用の
リスク情報については、
GPIFにおいて、会計
検査院の指摘も踏まえて、御指摘のバリュー・アット・
リスクについては
平成三十年度の業務概況書において、また、ストレステストについては本年三月の
基本ポートフォリオ変更に伴うプレスリリースにおいて、既に開示されているところです。
受給開始時期の
選択肢の
拡大についてお尋ねがありました。
全世代型
社会保障の実現のため、人生百年時代の到来を見据えながら、
年金制度においても、働き方の
変化を中心に据えて改革を進めることが必要であると
考えています。
このため、
政府としては、
高齢者が意欲を持って働ける環境整備を進めるとともに、そのための手段として、
受給開始時期の
選択肢を七十五歳まで広げ、受給額についても、
年金財政中立の
考え方のもと、八四%までの割増しを受けることを可能としております。
こうした改革により、
支え手をふやし、
年金制度全体の安定性を高めることで、低
所得の方々を含めた将来の
年金水準の確保にもつなげていくことが可能となります。
なお、低
所得や無
年金、低
年金の
高齢者の方には、
年金受給資格
期間の二十五年から十年への短縮、
年金生活者支援給付金の
支給、
年金給付から天引きされる
医療、介護の
保険料軽減を実施してきており、今後とも、
社会保障制度全体で総合的な
対応を検討してまいります。
年金生活者支援給付金についてお尋ねがありました。
年金生活者支援給付金は、
平成二十四年の
社会保障と税の一体改革における三党合意において、定額
給付は
保険料納付のインセンティブを損なうため
社会保険方式になじまないとの観点から、
月額五千円を
基準としつつ、
保険料納付済み期間に比例した
給付として、当時の民主党政権が法案化した経緯があり、こうした経緯は重いものと
考えます。
また、どのような
給付を行う場合も、それを支える安定財源がなければ持続可能な
制度とならないものと
考えます。(
拍手)
〔尾辻かな子君
登壇〕