○古本伸一郎君
国民民主党の古本伸一郎でございます。
野党共同会派を代表し、
政府提出の原案に対し、税を通じ、つくりたい社会を分かち合うに至らず、
反対の
討論をいたします。(
拍手)
新型コロナウイルスの流行により、お亡くなりになった
方々の御冥福をお祈りし、罹患された皆様、御家族、職場、地域の
方々に謹んでお見舞いを申し上げます。
全国の
行政、医療従事者、救急隊員を始め、各所で懸命に働いておられる皆様に感謝を申し上げます。
委員会の
質疑で求めました国税の確定申告について、四月の十六日まで一月延長が決まりました。国税庁の協力にも感謝申し上げます。
しかし、昨日、
総理が表明した
全国の
小中高、
特別支援学校への三月二日からの
休校要請に、教育現場、保護者から不安の声が広がっています。
子育てと仕事を両立する保護者、特に、頼る人が近くにいない一人
親家庭は、困難な
状況になることが予想されます。誰かが勇気を持って決めなければならないことと後で振り返れるかもしれません。しかし、
感染者が
発生していない県も含め
全国一律としたことの
説明は重要です。非正規の方は、休むと即収入を失うおそれがあり、こうした世帯を始め、きめ細かな
経済支援を強く
要請いたします。
新型コロナウイルスが
発生した現在、
税収の下振れ、
経済への
影響が懸念されます。
そもそも、税の決め方について、原案作成に関与しない
野党にわずかな
審議で賛否だけを求める一方通行の
議論で、より多くの納税者に納得いただける税制をつくることができるのか、この間、葛藤してまいりました。
そこで、
国会に小
委員会を設置し、通年で丁寧な
議論の上、税を決めてはどうか、
提案いたします。これにより、未知の
感染症対策や自然災害など予期せぬ変化にも、
国会での機動的な税の合意形成が可能となります。
毎年、各地で自然災害が
発生します。温暖化を踏まえると、何年に一度の大雨では済まされない
状況です。家屋を流され、途方に暮れる被災者の
方々が、我が家を失ってもローンは残り、住宅再建に大変苦労されます。家や車を失った場合、評価額相当を雑損控除として引くことができますが、三年限り。これでは控除し切れません。
そこで、災害損失を全額控除できる租税特別
措置を
提案いたします。東
日本大震災では五年に延長した前例もあり、新たな発想で踏み出すべきであります。
東
日本大震災から間もなく十年、風化させてはなりません。
あのとき、警察や消防、海保、自衛隊の皆様が活動されましたが、予備自衛官らも、仕事を休み、多くの方が応諾されました。
新型コロナウイルスの
対応で、消防、自衛隊の皆様が、
クルーズ船始め
支援活動されており、今後、予備自衛官にも出動
要請する
事態も想定しなければなりません。
こうした極めてとうとい任務での出動に対する特別手当に対し、所得税、住民税が課税されます。消防団、民生児童
委員、保護司の
方々もしかりです。公益に尽くす
方々には、特別な減免税をもって社会全体の感謝の念をお示しできたならばどれだけすばらしいかと思いますが、いかがでしょうか。要求官庁がなくても、
政治の意思を示すときです。
税は社会をつくります。御負担をお願いし、使い道を決める資源分配は
政治そのもの。超少子高齢社会のただ中にある今、大胆で斬新な税制を通じ、社会を創造しなければなりません。それなのに、今
年度の改正案は、
消費税率や所得税のブラケットなど基幹三税の本則に大胆な見直しはなく、租税特別
措置も、減税及び増税とも目玉なし、近年にない小粒の改正となっています。
消費税疲れをしたのかもしれませんが、世の中の動きは待ったなし、目指す社会を切り開く気迫が伝わらず、残念です。
法人税について、ベンチャー企業への投資額の一定割合を損金算入する制度が盛り込まれましたが、益金法人にしか効果がありません。法人の七割は赤字です。投資促進するならば、赤字法人も負担している償却資産課税こそ見直すべきではないでしょうか。既に減免税が導入されておりますが、三年限り。そもそも、生産性の高い設備を導入すれば、国税である法人税は減税されるのに、地方税たる固定資産税は評価額が上がり増税となる矛盾を、国と地方が知恵を出し、今こそ根本的に解決すべきではないでしょうか。
金融課税について、売却益の課税強化を求める声があります。その一方、
株価安定のためには配当課税を優遇すべきなど、論点もさまざまです。改革の方向が示されておりません。NISAなどの拡充は盛り込まれましたが、老後の資金が二千万円不足する問題など、残されたままであります。
自動車関係諸税について、道路建設目的税時代の遺物、二倍の重課、いわゆる当分の間税率が四十六年も続いています。かつて担税力があるとされた車も、今や多くの
方々の
生活必需品であります。
この際、自動車重量税の当分の間税率を廃止し、本則税率部分を思い切って地方税化し、新しい自動車税と新しい軽自動車税に一本化したらどうか。ユーザーの負担の軽減と地方財源の確保という、利害が反するため、長らくこの問題を避けて通ってきた
政治が国税を地方税化すれば、解決できる糸口も既に示されております。いよいよ決断するときです。
所得税について、未婚の一人親世帯も寡婦控除の対象となり、前進しましたが、死別かどうかによる差は残ったままです。多様な家族の
あり方を支える観点から、原案では物足りません。ひとり親控除として一つにすることを
提案します。
社会を創造する税制として、配偶者控除の
あり方について
委員会で問題提起しました。出生率が改善しないのは、完結出生児数が辛うじて一・九を維持する現実からも、婚姻率の低下が一つの原因と分析します。
ところが、税制や社会保障は、若い世代の結婚に対する価値観が多様化しているのに、結婚を前提にしたままであります。社会の仕組みが変わらない限り、少子化を克服する選択肢も限定されてしまいます。解決には
立法府で家族観の共有が不可欠となりますが、結婚を前提とせず、出産、子育てができる社会に変えるための合意形成は容易ではありません。
与野党が今こそ意見を出し合い、
議論をすべきテーマではないでしょうか。
実は、国家公務員の一般職の扶養手当は事実婚でも支給を長らく続けています。時代を先取りした貴重な事例として受けとめます。
手始めに、婚姻を前提とする税や社会保障の象徴たる配偶者控除を、事実婚の妻や夫への
適用拡大をするのか、そもそも配偶者控除が時代に合わないのか、私
たち政治がつくりたい次の社会を税で示さなければなりません。
きのうまでの常識も思い切って変えることで地平を切り開く、変化への挑戦こそ
政治の本懐であります。
安倍総理はこれから十年
消費税率は引き上げないと言われました。これに対し、五%に引き下げ共闘しようとの呼びかけ、いや、十年は一〇%で社会保障を守れるとする
政府、逆に、
消費税率を引き上げてでも社会保障や教育をこう変えたいとの
提案、さまざまな選択肢を若い世代に示す
責任があります。なぜならば、若い世代は、この先より長く生きていくわけであります。真剣に
財政を憂い、将来を憂います。
政治が目指す社会を示さなければなりません。
税は社会をつくるとかたく信じつつ、ほど遠い
政府原案を憂いまして、
反対討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)