○今井雅人君 今井雅人でございます。
私は、
立憲民主・
国民・社保・
無所属フォーラム、
日本共産党、社民党を代表して、ただいま
議題となりました
法務大臣森まさこ君
不信任決議案について、提案の
趣旨を御説明いたします。(
拍手)
まず、決議案を朗読いたします。
本院は、
法務大臣森まさこ君を信任せず。
右決議する。
〔
拍手〕
以上であります。
以下、本決議案を
提出するに至った経緯と
理由を申し上げます。
安倍内閣は、一月三十一日の閣議において、二月八日に六十三歳の
定年を迎える東京高等検察庁の黒川弘務
検事長の勤務を半年間延長することを
閣議決定いたしました。「同
検事長を管内で遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査・公判に引き続き
対応させるため、国家公務員法の規定に基づき、六か月勤務延長するものでございます。」というのが閣議の
議事録に記された決定
理由です。
検察官の
定年については、検察庁法の中で、
検事総長は、年齢が六十五歳に達したときに、その他の検察官は年齢が六十三歳に達したときに退官すると明確に規定され、後から定められた国家公務員法の
定年制度に関する規定は適用されないというのが
政府の見解であり、事実、検察官が
定年を過ぎて任期を延長されたことは過去一度も例がありません。
予算委員会では、当然のことながら、このことをめぐって激しい議論が重ねられてまいりました。
二月三日、我が
共同会派の渡辺周委員が、
総理、これはどうしてこの方がこんな駆け込みで
定年延長をされるんですかと
質問すると、
安倍総理は、法務省の
人事でございますから、
法務大臣から
答弁させますと人ごとのように答え、かわって
森法務大臣が、検察庁の業務執行上の必要に基づき、
法務大臣である私から閣議請議を行って
閣議決定され、引き続き勤務させることとしたものでございますと事もなげに答えたのであります。
渡辺委員が、それでは、東京高検の
検事長として、誕生日の一週間前に駆け込みで
定年延長をしなければならないほどの緊急性や必要性とは一体何ですか、その業務はと問いますと、
森法務大臣は、その具体的な緊急性や必要性は明らかにせず、東京高検、検察庁の管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査、公判に
対応するため、黒川
検事長の検察官としての豊富な経験、知識等に基づく管内
部下職員に対する指揮監督が不可欠であるというふうに判断した、法令に基づく
人事を行っていますと平然と説明をしたのでございます。
渡辺委員は、これは違法若しくは脱法ではないかと識者から
指摘されている、なぜこの検察庁法に別段の定めということでわざわざ書いてあるかといえば、やはり、刑事訴訟法上、強力な権限を持っている、その職責に鑑みて、やはり長くできないような仕組みになっていると
指摘して、
安倍内閣の決定を強く批判いたしました。
これに対して、
法務大臣は、特別法である検察庁法に書いてないことは、一般法である国家公務員法の規定が適用されるので、勤務延長については国家公務員法が適用されるとの説明を繰り返すのみでございました。
二月十日の
予算委員会では、我が
共同会派の山尾志桜里
議員が
質問に立ち、昭和五十六年に国家公務員法に
定年制を導入する法改正の
審議が行われた際の
議事録を紹介し、当時の
人事院任用
局長が、「検察官と大学教官につきましては、現在すでに
定年が定められております。今回の
法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、」ここが大事です、「今回の
定年制は適用されないことになっております。」と明確に
答弁した事実を挙げて、検察官には国家公務員の
定年制は適用されないというのが当時の
政府見解であるということを
指摘いたしました。
これに対して、
森法務大臣は、何と、その
議事録を読んでおらず、当時の
政府見解も知らなかったということを渋々認めたのであります。
さらに、二月十二日、我が
共同会派の同僚
議員である後藤祐一
議員が、検察官について適用が除外されている国家公務員法の
定年制規定の中に
定年延長も含まれるかと
人事院にただすと、
人事院の給与
局長は、
人事院といたしましては、国家公務員法に
定年制を導入した際は、
議員御
指摘の昭和五十六年四月二十八日の
答弁のとおり、検察官については、国家公務員法の勤務延長を含む
定年制は、検察庁法により適用除外されていると理解していたものと認識をしております、現在までも、特にそれについては議論はございませんでしたので、同じ
解釈を引き継いでいるところでございますと明確に
答弁をされました。
また、参院の
共同会派の同僚
議員であります小西洋之
議員が独自に国立公文書館で見つけ出した国家公務員法の
定年制導入当時の
政府の想定問答集のつづりの中に、「検察官、大学の教員については、年齢についてのみ特例を認めたのか。それとも全く今回の
定年制度からはずしたのか。」という想定問に対して、「
定年、特例
定年、勤務の延長及び再任用の制度の適用は除外されることとなる」とする回答が明確に示されていたことが明らかになりました。
このほかにも多くの同僚
議員の鋭い追及によって、
森法務大臣の
答弁は迷走を続けました。
ここまでの経緯に照らせば、検察官については、国家公務員法の定める
定年の年齢や、その年齢に達した後に初めて到達する年度末に退職するという規定が適用されないだけではなく、勤務延長、つまり
定年延長の規定も適用されないということは、このように国家公務員法の
定年制導入当時から明確であり、今回の黒川
検事長の勤務延長を決めた
閣議決定は、この明確な
政府見解に対し、違法、無効な決定であることはもはや明らかであります。
ところが、これに対して
安倍政権は、今度は、法
解釈を変えたというむちゃくちゃな論法を持ち出して、黒川
検事長の
定年延長の
閣議決定を正当化しようと躍起になってまいりました。
二月十三日、衆議院本
会議で、我が
共同会派の高井崇志
議員の
質問に対しまして、
安倍総理は、今般、検察官の勤務延長については、国家公務員法の規定が適用されると
解釈することとしたと、拍子抜けするような見解を突然表明したのであります。
この
総理答弁を皮切りに、
人事院給与
局長が、さきの、同じ
解釈を引き継いでいるという
答弁の撤回に追い込まれました。また、
解釈変更を決裁した文書の
提出を求められた法務省が、作成日付のない怪しげな文書を
委員会に
提出したり、省内の決裁は口頭決裁だったと驚くべき報告があったりと、全てが後づけで、
閣議決定や
総理の
答弁とつじつまを合わせるように事態が動いたのであります。
こうした中で、
森法務大臣も、過去の
政府見解は知っていたが、今回、法
解釈を
変更したというような
趣旨に軌道修正をしたのでありますが、しかし、過去の
政府見解はいつから知っていたのか、いつ
解釈を
変更したのかという
質問には、しどろもどろで、
意味不明な
答弁が繰り返されました。
さて、この一連の……(
発言する者あり)それは違います。
この一連の経緯を踏まえて、
森法務大臣をなぜ信任できないかという
理由を述べたいと
思います。
黒川
検事長については、官邸の意向に忠実であるとか、これまで何人もの自民党
議員の政治と金をめぐる事件を不起訴にするために注力してきたとか、
安倍総理はこの人物を次の
検事総長に据えたいのだろうというのは、衆目の一致するところだと言ってよいかもしれません。それゆえ、今回の法を無視した異例な黒川氏
定年延長には不穏な意図が隠されていると疑わざるを得ません。
そもそも、なぜ検察官には、検察庁法が制定された当時、厳格な
定年制が設けられ、後に国家公務員法に
定年制が
定年延長などの条項も含めて導入されたときにも、なぜ検察官にはこの
定年延長が適用されないとする
政府見解が明快に示されたのか。
それは、検察官が
内閣総理大臣をも刑事訴追できる強力な権限を有するがゆえに、その身分が時の政権などによって恣意的に左右されないように、政治的中立性と
独立性を担保すると同時に、強力な権限に歯どめをかけるという両面のバランスをとる必要があったからであることは、検察庁法制定当時の、
最後の第九十二回帝国議会の議論などでも明らかであります。いわく、準司法官としての身分保障、かつての司法ファッショへの反省などの白熱した議論がそこでは交わされていたのであります。
そうであるがゆえに、
政府がある特定の検察官だけを
定年延長させたりさせなかったりというような恣意的な
人事の余地があってはならないというのが、国家公務員法の
定年延長制度の検察官への適用を除外するという基本的な
理由であると私は
考えます。
一方、国家公務員法で
定年延長を認めることができる事由については、
人事院規則は、「職務が高度の専門的な知識、熟達した技能又は豊富な経験を必要とするものであるため、後任を容易に得ることができないとき。」と定め、その具体例として、
人事院は、
定年退職予定者がいわゆる名人芸的技能等を要する職務に従事しているため、その者の後継者が直ちに得られない場合を挙げています。
この名人芸的技能というのは、宮内庁の雅楽師のような、ごく例外的なケースであろうというのが一般的な解説であります。黒川
検事長を始め検察官が一体どのような名人的技能を持ち得るのか、私には想像ができません。この
意味からも、検察官に
定年延長を適用しないというこれまでの
解釈、運用には極めて合理性があると私は
考えております。
しかるに、今回の黒川
検事長の
定年延長をめぐる
森法務大臣の説明には、従来の法
解釈を変えてまで
定年延長を行わなければならないという必要性や合理性は全くなく、ただ単に、検察庁法の条文を改めてよく見たら、国家公務員法の
定年延長制度を明確には適用除外していないといったような
趣旨のへ理屈を並べているだけです。
この問題は、まさに我が国の政治システムが
法治主義なのか人治主義なのかを厳しく問うています。官邸の後押しを受けた検察官だけが出世できるという前例をつくってしまうことは、検察官の職務の公平さについて、
国民の信頼を地に落とすものと言わざるを得ません。あなたは、この国の三権分立をぶち壊し、この国を息苦しい統制国家にしようとしていることがわからないんですか。
もちろん、怠慢がゆえに従来の
政府見解も見落としていたということも
責任は重大でありますが、そればかりでなく、我が同僚
議員から
指摘を受けたことに対して、
考えや態度を改めるどころか、
安倍総理の
解釈変更の
答弁と軌を一にして、一層かたくなに、黒川
検事長の
定年延長決定を正当化するために、恥の上塗りのような姿勢をとり続けているのは、もはやあなたの政治的信念に基づく確信的行為のようであります。
法務大臣の私が
国会で
答弁しているんだからそれが正しいと強弁する不遜な態度、
立憲民主党の
枝野代表が
質疑で事実を整理して説明しているのに対して、ファクトでなくストーリーで話しているとでたらめを言う姿、まるで
安倍総理が乗り移っているんじゃないかと背筋が寒くなりました。これだけははっきりと申し上げておきたいと、
総理お決まりのせりふをまねして強がってみても、
うそは真実にはならないということを申し上げておきたいと
思います。
大変残念ですが、
法治主義の先頭に立つべき
法務大臣としての資格は、
森まさこ君には全くないと断言せざるを得ません。悪魔に魂を売り渡してしまった元人権派弁護士、
森まさこ君に申し上げたい。恥を知りなさい。
あわせて、
安倍総理にも申し上げます。
あなたには、
法治主義とは何なのか、人治主義ではなぜいけないのか、恐らく理解ができないのかもしれません。しかし、あなたのなすことによってどれだけ多くの優秀な
官僚がつじつま合わせのために不本意な尻拭いを余儀なくされているか、おわかりでしょうか。日付もない怪文書のような文書を
国会に
提出せざるを得なかった法務省の面々もそうです。今回、
総理答弁に合わせてみずからの正しい
答弁を撤回、修正せざるを得なくなった
人事院給与
局長もそうです。こうした
官僚の
皆さんの立ち振る舞いは、見ていて気の毒でなりません。このままでは、
官僚のなり手もだんだん先細っていくに違いありません。あなたは、
日本の民主政治と優秀な
官僚によって支えられた統治機構をどんどん解体に追いやっているんです。
今回
定年延長された黒川さんにも、この場をおかりしてお伝えしたいと
思います。
もしあなたに検察官としての矜持が少しでもあるのであれば、今すぐにでも任期延長を返上して辞任されてはどうでしょうか。まさかないとは
思いますが、この
定年延長の末に、従来の
人事慣行に反して、官邸の後押しで
検事総長になることなど夢にも
考えるべきではありません。
先日開かれた各地の検察官トップの集まる検察長官会同の場でも、今回の
定年延長に出席者から公然と疑問の声が上がったと伺っています。そうした疑問の声に背を向けて
検事総長になったとしても、その任務を適切に務められるとは全く
思いません。早急に辞任されることを強くお願いを申し上げておきたいと
思います。
以上が、
法務大臣森まさこ君を不信任とする経緯と
理由でございます。ぜひ、
野党のみならず、
与党の
皆様にも御賛同を賜りますことを心から訴え、
提出者を代表して、私からの
趣旨弁明とさせていただきます。
御清聴どうもありがとうございました。(
拍手)
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