○内閣
総理大臣(安倍晋三君) 志位和夫議員にお答えいたします。
施政
方針演説と説明責任についてお尋ねがありました。
まず、桜を見る会については、本年は開催せず、また今
国会に
提出した百兆円を超える来
年度予算には関係
予算を全く計上していないことから、施政
方針演説に特段の記載を行っておりません。
また、捜査に関する事柄に関しては、内閣として言及することが個別の事案の捜査に
影響を与える可能性があることから、記載しなかったものです。
いずれにしましても、これらについては、私の
演説内容のいかんにかかわらず、
国会における御指摘があることはもとより承知しているところであり、こうした御指摘には当然誠実に
対応させていただく所存であります。
桜を見る会の推薦者についてお尋ねがありました。
私の事務所からの推薦に基づく招待人数の概数については、既に官房長官が、内閣官房及び内閣府の事務方を含む
関係者からの聞き取りを踏まえ、
国会にて報告をしたところですが、私の事務所から何名を推薦したのかについては、既に記録が残っていないことから、その詳細は明らかではありません。
また、内閣官房が確認した結果、私の事務所から推薦を行った者で、招待されなかった例もあったものと承知しております。具体的な人数については、名簿も廃棄されていることから、明らかではありません。
いずれにしても、桜を見る会の招待者については、
提出された推薦者につき、最終的に内閣官房及び内閣府において取りまとめを行っているところであり、当該プロセスに私は一切関与していないことから、公職選挙法に抵触するものではないかとの御指摘は当たりません。
桜を見る会の招待者についてお尋ねがありました。
桜を見る会の個々の招待者の推薦元に関する
情報は、その者
個人に関する
情報であるとともに、招待者に密接に関係する
情報でもあることから、従来から回答を差し控えさせていただいているところです。
また、招待の有無等については
個人に関する
情報であり、個々の言動等を踏まえて、
政府として明らかにすることは考えておりません。
なお、一般論として申し上げれば、桜を見る会が
企業や
個人の違法、不当な
活動に利用されることは決して容認できません。
招待者名簿の管理についてお尋ねがありました。
御指摘の私の
答弁については、あくまで昨年の招待者名簿に関して行ったものであり、昨年の招待者名簿は、内閣府において、公文書管理法などのルールに基づき、会の終了後遅滞なく廃棄する
対応をしたところです。虚偽
答弁との御指摘は当たりません。
また、御指摘の行政文書の管理に関するガイドラインについては、平成二十九年十二月にこれを改正し、保存
期間一年未満の行政文書の取扱いに関する新たなルールを設けたところです。これに基づき、桜を見る会の招待者名簿については、会の終了をもって使用
目的を終えるほか、
個人情報を含んだ膨大な量の文書を適切に管理するなどの必要が生じることから、保存
期間一年未満文書として、終了後遅滞なく廃棄する取扱いとしたものです。このような
対応は、ガイドラインにのっとった
対応であると考えており、法律等を無視して
組織的隠蔽を図ったとの御指摘は当たりません。
なお、菅内閣、野田内閣の民主党政権
時代の平成二十三年、二十四年を含めて、平成二十三年から二十九年の間の招待者名簿の取扱いについては、公文書管理法に違反するものであり、当時の文書管理者である担当課長を厳正に処分するとともに、官房長官から内閣府に対し、改めて文書管理のルールの
徹底を指示したところと承知しております。
IRについてお尋ねがありました。
副大臣も務めた現職の
国会議員が逮捕、起訴されたことはまことに遺憾です。
かつて副大臣に任命した者として
事態を重く受けとめておりますが、御指摘の事案については、捜査中の刑事事件にかかわる事柄であることから、詳細なコメントは差し控えます。
また、法律案の取扱いについては
国会においてお決めになるべき事柄と承知しておりますが、IRは、カジノだけでなく、国際
会議場、展示場や大
規模な宿泊施設を併設し、家族で楽しめるエンターテインメント施設として、観光先進国の
実現を後押しするものと考えています。
もとより、IRの
推進に当たっては
国民的な
理解が大変重要であり、
事業者の選定における公正性、透明性の
確保についても、今月発足した高い独立性を有するカジノ管理委員会や
国会での御
議論も十分に踏まえて丁寧に進めてまいりたいと考えております。
消費
税率の
引上げの
日本経済への
影響についてお尋ねがありました。
消費税率引上げの前の
駆け込み需要やその後の落ち込みは、一部では
台風の
影響等もあって販売減が見られておりますが、現時点では、全体として前回ほどではないと見られています。引き続き、
引上げによる
影響には十分注意してまいります。
その上で、相次いだ
自然災害からの
復旧復興に加え、海外発の下方
リスクに万全の備えを行うため、事業
規模二十六兆円に及ぶ
総合経済対策を取りまとめました。
この中で、
中小企業、
小規模事業者の
生産性向上に資する
取組を複数年にわたり継続的に
支援することとしており、
我が国経済の屋台骨を支える
中小・
小規模事業者をしっかりと
支援してまいります。
東京オリンピック・パラリンピック後も見据え、切れ目なく政策を実行していくことで、デフレ脱却と
経済再生への道筋を確かなものとしてまいります。
全
世代型社会保障の考え方についてお尋ねがありました。
全
世代型社会保障は、
人生百年
時代の到来を見据えながら、働き方の変化を中心に据えて、
年金、
医療、
介護、
社会保障全般にわたる改革を進めるものです。
生涯現役で
活躍できる
社会をつくる中で、年齢ではなく
能力に応じた負担への
見直しを進めることで、現役
世代の負担上昇を抑えながら、全ての
世代が
安心できる
社会保障制度を
構築してまいります。
医療費の窓口負担割合については、七十五歳以上の
高齢者であっても
一定の
所得以上の方について新たに二割とすることとし、
高齢者の疾病、
生活状況等の実態を踏まえて、具体的な
所得基準とともに、長期にわたり頻繁に受診が必要な患者の
高齢者の
生活等に与える
影響等を見きわめ、適切な配慮等について
検討を行ってまいります。
介護施設における食費や居住費への助成については、現行の助成
制度においては
年金収入の水準いかんによっては助成額に大きな差異が生じる場合もあり、
社会保障審議会において、こうした
年金収入段階ごとの助成額の差をなだらかにする
見直し案が
検討されているものと承知しております。
引き続き、厚生労働省において
検討を進め、二〇二一
年度からの次期
介護保険
計画期間が始まるまでの間に成案を得ることとしています。
また、
介護離職
対策については、
介護の受皿整備、
介護人材
確保対策、仕事と
介護が両立できる
環境整備などを総合的に進めてまいります。
年金については、昨年公表した財政検証の結果によれば、将来
世代の給付
確保のために行うマクロ
経済スライドによる調整が終了した後の
所得代替率は、前回よりも悪化するのではないかとの一部の臆測に反し、代表的なケースでは、前回検証時の五〇・六%に対し、五〇・八%と
改善したところであります。また、基礎
年金額は、物価上昇分を割り戻した実質価格で見ておおむね横ばいとなっており、三割も削ろうとしているとの御指摘は当たりません。
消費税の減税等についてお尋ねがありました。
今回の消費
税率の
引上げは、
少子高齢化という国難に正面から取り組むに当たり、お年寄りも
若者も
安心できる全
世代型社会保障制度へと大きく転換していくためにどうしても必要なものです。
他方、景気については、事業
規模二十六兆円の
総合経済対策を取りまとめ、相次いだ
災害からの
復旧復興や海外発の下方
リスクに対し、万全の
対応を行ったところです。
国保
制度については、毎年約三千四百億円の新たな財政
支援を継続することにより、安定的な運営を強力に後押ししてまいります。
年金のマクロ
経済スライドについては、将来
世代の給付水準の
確保のために不可欠な仕組みであることから、廃止は考えていません。
最低賃金については、政権発足以降の七年間で、
全国加重平均で百五十二円引き上げました。今
年度は、現行方式で過去最高の上げ幅となっています。引き続き、
中小企業、
小規模事業者が
賃上げしやすい
環境を整備することと相まって、
地域間
格差にも配慮しながら、
引上げを図ってまいります。
高等
教育への進学の
支援については、これまでも無利子
奨学金の
対象者の
拡大などの
充実を図ってきましたが、本年四月から、真に
支援が必要な学生に対する高等
教育の
無償化を
実現することとしています。引き続き、家庭の
経済事情にかかわらず、
安心して学べる
環境の整備に努めてまいります。
なお、法人税や
所得税については、これまで、法人税の課税ベースの
拡大による
財源確保とあわせた法人
税率引下げ、
所得税の最高
税率の
引上げ、金融
所得課税について
税率を一〇%から二〇%に倍増するなどの
施策を既に講じてきたところであり、今後の
税制のあり方については、これまでの改正の効果を見きわめるとともに、
経済社会の
情勢の変化等も踏まえつつ、
検討する必要があると考えています。
また、これまでの歳出改革の
取組を着実に進め、無駄を
徹底して排除することにより、財政健全化も着実に進めてまいります。
米・
イラン関係についてお尋ねがありました。
ソレイマニ司令官の殺害に関しては、
我が国は直接の当事者ではなく、詳細な事実関係を十分把握する立場にないことから、法的評価について確定的なことを申し上げることは差し控えます。
その上で申し上げれば、
米国は、国連の安保理
議長宛てに、自衛権の行使として行ったものである旨の書簡を
提出したと承知しています。
我が国は、
イラン核合意を、国際不
拡散体制の
強化と
中東の安定に資するものとして、今日に至るまで一貫して支持しています。同時に、
米国とは、
イランの核保有を認めず、
地域の平和と安定を
確保するという
目標を共有しています。
トランプ大統領との間でも、
イランの核問題が平和的に解決され、
地域の平和と安定が
確保されるよう、真剣な
議論を行ってきています。
今後も、トランプ大統領やローハニ大統領との
個人的な信頼関係を活用しつつ、
中東における
緊張緩和及び
情勢の
安定化に向け、粘り強い平和外交を展開してまいります。
中東地域における
自衛隊による
情報収集活動及び
米国との
連携についてお尋ねがありました。
現時点において、
米国、
イラン双方とも、これ以上のエスカレーションを回避したい意向を明確にしています。
具体的には、
米国のトランプ大統領は、八日の
演説において、軍事力を使いたくない旨の発言をしており、また、
イランのザリーフ外相は、八日、
イランは相応の報復
措置を完了した、さらなる緊張や戦争を望まない旨発言しているものと承知しています。
こうした
状況も踏まえれば、現時点において、米・
イラン間で武力の行使が行われている
状況ではないと認識しており、
自衛隊が何らかの武力紛争に巻き込まれるような危険があるとは考えていません。
その上で、
我が国としては、
米国提案の海洋安全保障イニシアチブには参加せず、
我が国独自の
取組として
自衛隊による
情報収集活動を
実施し、
米国との
連携の一環として
情報共有を行うこととしています。
米国と
情報共有を行ったとしても、
我が国が
米国の指揮統制を受けることはなく、また、
米国のニーズに応じて
活動を行うわけでもありません。
このように、
自衛隊の
活動は、あくまでも
我が国独自の
取組として行うものであり、他国による武力
攻撃が発生しているような
状況下で、
我が国がみずから武力紛争に巻き込まれるような形で行うものではないと考えています。
中東情勢への
対応についてお尋ねがありました。
我が国は
中東に原油輸入の約九割を依存しており、船舶の航行の安全を
確保するため、
外交努力と相まって、
情報収集態勢を
強化する
観点から、
我が国独自の
取組として
自衛隊を
派遣することとしました。
中東に対する
日本の外交的関与は、
イランからも、また先般訪問したサウジアラビア、UAE、オマーン各国からも高く評価されており、
米国のお先棒担ぎとの指摘は全く当たりません。
トランプ大統領との間でも、先ほど述べたとおり、
イランの核問題が平和的に解決され、
地域の平和と安定が
確保されるよう、真剣な
議論を行ってまいります。
ジェンダー平等についてのお尋ねがありました。
我が国のジェンダーギャップ指数が国際的に低いことについては、
経済分野における
女性管理職の割合が低いことなどが主な要因でありますが、これらについては、
一つ一つの
課題にしっかりと取り組んでいくことが必要と認識しています。
安倍内閣のもと、強力に
取組を進めた結果、
女性の就業者は二百八十万人以上ふえました。保育の受皿整備を進めるなどにより、M字カーブも確実に解消に向かっています。また、コーポレートガバナンス改革などにも取り組んだ結果、この七年間で、上場
企業の
女性役員は三倍以上にふえています。今後とも、
政治の責任において、
女性活躍を後押しする
制度整備などに
全力で取り組んでいく考えであります。
一方で、例えば、
育児休業などの両立
支援制度については、
政治の側が幾ら
制度整備を進めても、実際には、職場の雰囲気や
組織風土によって利用しづらいという声が根強くあります。全ての
女性が
活躍できる
社会をつくり上げるためには、
政治だけの
課題と捉えるのではなく、
社会全体での意識改革を進めていく発想が不可欠であると考えています。
ただし、そのためにも、
政治に果たすべき
役割があると考えています。
女性活躍推進法の制定は、見える化を
徹底することを通じて、経営者の意識改革、
組織風土の変化を促すものです。今後とも、安倍内閣は、
社会全体の機運を一層高めていくため、
女性活躍の旗を高く掲げていく考えであります。
男女間の賃金
格差についてお尋ねがありました。
我が国の男女の賃金
格差の要因には、管理職比率と勤続年数の差異を始め、さまざまなものがあると承知しています。こうした複合的な要因がある中で、一律に男女の賃金の差異の公表を行うと、求職者の誤解や混乱を招くおそれもあるとの指摘等もあり、
女性活躍推進法に基づく
情報公開の
対象とはしていません。
一方で、男女間の賃金
格差の
改善を図ることは重要な
課題であると認識しております。
政府としては、男女の賃金
格差の是正に向けて、昨年五月末に
成立した
改正女性活躍推進法において、管理職比率の
目標など自社の
課題に基づいた
目標を設定し、取り組むための事業主
行動計画の
策定義務の
対象拡大を図るとともに、
出産や
育児に関係なく
女性が働き続けられる
環境等のために、保育の受皿の整備等の両立
支援体制の整備も
推進しているところであり、こうしたさまざまな
取組を総合的に進めていくことにより、男女間の賃金
格差の解消に努めてまいります。
選択的夫婦別氏
制度及び同性婚
制度についてお尋ねがありました。
夫婦の別氏の問題については、
我が国の家族のあり方に深くかかわる事柄であり、
国民の間にさまざまな意見があることから、引き続き、
国民各層の意見を幅広く聞くとともに、
国会における
議論の動向を注視しながら、慎重に
対応を
検討してまいります。
また、同性婚
制度に関してでありますが、憲法二十四条は、婚姻は両性の合意のみに基づいて
成立すると定めており、現行憲法のもとでは、同性カップルに婚姻の
成立を認めることは
想定されておりません。同性婚
制度の
導入の是非は、
我が国の家族のあり方の根幹にかかわる問題であり、極めて慎重な
検討を要するものと考えております。
性犯罪の要件の
見直しについてお尋ねがありました。
性犯罪は、
被害者の人格や尊厳を著しく侵害する悪質、重大な犯罪であると認識しております。
平成二十九年に
成立した刑法の一部を改正する法律の附則においては、施行後三年を目途として
施策のあり方について
検討を加えることが求められており、
被害者を始めとするさまざまな方の御意見に耳を傾けつつ、御指摘の点を含めて、適切に対処してまいりたいと考えています。
ジェンダー平等に関連し、各種の発言、自民党の改憲案などについてお尋ねがありました。
女性差別、セクハラは、重大な人権侵害であり、あってはならないものであります。また、
社会において
多様性が尊重されるべきことは言うまでもありません。
発言に当たっては、こうした認識について誤解を招くことのないよう、また、
関係者を傷つけることのないよう、細心の注意を払う必要があると考えます。
なお、御指摘の自民党の改憲案は、家族のきずなを重視するものであり、
個人と家族とを対比して考えようとするものではないと承知しております。
いずれにせよ、男女共同参画
社会基本法にあるとおり、
女性も男性も、
個人としての尊厳が重んぜられること、性別による差別的取扱いを受けないことなどの理念がこれからも貫かれるべきことは当然のことであると考えております。(拍手)
〔
議長退席、副
議長着席〕
――
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