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2020-05-27 第201回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和二年五月二十七日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 松島みどり君    理事 伊藤 忠彦君 理事 越智 隆雄君    理事 鬼木  誠君 理事 田所 嘉徳君    理事 葉梨 康弘君 理事 稲富 修二君    理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君       秋本 真利君    井出 庸生君       井野 俊郎君    上野 宏史君       奥野 信亮君    門山 宏哲君       神田  裕君    黄川田仁志君       国光あやの君    小林 茂樹君       高木  啓君    出畑  実君       中曽根康隆君    藤井比早之君       古川  康君    宮崎 政久君       山下 貴司君    吉川  赳君       和田 義明君    逢坂 誠二君       黒岩 宇洋君    日吉 雄太君       松田  功君    松平 浩一君       山尾志桜里君    山川百合子君       竹内  譲君    藤野 保史君       串田 誠一君    高井 崇志君     …………………………………    法務大臣         森 まさこ君    内閣官房長官      西村 明宏君    法務大臣        義家 弘介君    総務大臣政務官      木村 弥生君    法務大臣政務官      宮崎 政久君    厚生労働大臣政務官    自見はなこ君    政府参考人    (警察庁長官官房審議官) 小柳 誠二君    政府参考人    (警察庁長官官房審議官) 高田 陽介君    政府参考人    (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     竹村 晃一君    政府参考人    (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       西山 卓爾君    政府参考人    (法務省民事局長)    小出 邦夫君    政府参考人    (法務省刑事局長)    川原 隆司君    政府参考人    (法務省人権擁護局長)  菊池  浩君    政府参考人    (出入国在留管理庁次長) 高嶋 智光君    政府参考人    (国税庁課税部長)    重藤 哲郎君    政府参考人    (厚生労働省大臣官房総括審議官)         田中 誠二君    政府参考人    (中小企業庁長官官房中小企業政策統括調整官)   太田 雄彦君    政府参考人    (国土交通省自動車局次長)            江坂 行弘君    参考人    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      橋爪  隆君    参考人    (公益社団法人被害者支援センターとちぎ事務局長)    (公益社団法人全国被害者支援ネットワーク理事)  和氣みち子君    参考人    (弁護士)    (公認不正検査士)    久保有希子君    法務委員会専門員     藤井 宏治君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十七日  辞任         補欠選任   門山 宏哲君     秋本 真利君   黄川田仁志君     上野 宏史君   古川  康君     高木  啓君   松田  功君     黒岩 宇洋君 同日  辞任         補欠選任   秋本 真利君     門山 宏哲君   上野 宏史君     黄川田仁志君   高木  啓君     古川  康君   黒岩 宇洋君     松田  功君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  自動車運転により人を死傷させる行為等処罰に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)      ――――◇―――――
  2. 松島みどり

    松島委員長 これより会議を開きます。  内閣提出自動車運転により人を死傷させる行為等処罰に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学大学院法学政治学研究科教授橋爪隆さん、公益社団法人被害者支援センターとちぎ事務局長公益社団法人全国被害者支援ネットワーク理事和氣みち子さん及び弁護士公認不正検査士久保有希子さん、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人の皆さんに委員会を代表して一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。よろしくお願いします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、橋爪参考人和氣参考人久保参考人の順に、それぞれ十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人の方から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、まず橋爪参考人にお願いいたします。
  3. 橋爪隆

    橋爪参考人 ただいま御紹介にあずかりました東京大学橋爪と申します。専門分野刑法でございます。  本日は、このように参考人として意見を述べる機会をいただきまして、大変光栄に存じております。  私は、法制審議会刑事法部会委員として、本件法改正をめぐる審議に参加いたしました。本日は、刑事法部会議論を踏まえながら、刑法研究者としての観点から、改正法案内容に関しまして若干の意見を申し上げたいと存じます。  A4判で二枚の資料をお配りしているかと存じます。それに即して進めてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。  先に結論から申し上げますと、今回の危険運転致死傷罪改正法案は、危険運転に対する有効な方策として正当な方向にあり、賛成したいと考えております。  まず、議論前提といたしまして、危険運転致死傷罪の基本的な構造について確認しておきたいと存じます。  配付資料の一をごらんください。  例えば、飲酒酩酊による運転行為、制御困難な高速度による暴走運転など一定の危険な運転行為には、故意の暴行行為傷害行為と同程度生命身体に対する危険性を認めることができます。したがって、これら生命身体に対する危険性の高い危険運転行為から被害者の方の死傷結果が発生した場合、すなわち危険運転行為因果関係を有して死傷結果が発生した場合には、傷害罪傷害致死罪と同様に処罰することが正当化できます。これが危険運転致死傷罪の基本的な構造でございます。  そして、このような前提からは、本罪の実行行為である危険運転行為には、生命身体に対する高度の危険性を有する運転行為と言えるかという観点から、個別具体的に吟味する必要が生じてまいります。  まさに今回の改正法案、このような観点から、最近の社会情勢を踏まえ、新たに問題となった生命身体に対する危険性の高い運転行為を本罪の実行行為として追加しようとするものでございます。  これを踏まえて、改正法案内容につきまして個別に意見を申し述べます。  まずは、改正法の第五号の類型でございます。  第五号の類型は、加害車両被害車両に急接近する危険運転行為、すなわち、あおり運転想定した犯罪類型です。  あおり運転危険運転と評価されるのは、それは、車同士あるいは車と人が、条文の文言で申しますと、重大な交通の危険を生じさせる速度接近する点において、生命身体に対する高度の危険性を肯定できることを根拠としております。まさに現行法の第四号の類型は、このような発想から、加害車両が危険な速度被害車両に急接近する行為危険運転実行行為と評価し、これによって死傷事故が発生した場合を処罰しております。  もっとも、改めて考えますに、生命身体に対する危険性が発生するのは、加害車両が危険なスピードを出して急接近してくる場合だけではありません。加害車両スピードを出しておらず、停止徐行する場合であっても、その後部を走行する被害車両の方が一定スピードで急接近してくる場合には、やはり車同士が急接近する可能性が高く、それゆえ死傷事故が発生する危険性は同様に高いと言えます。単純に申し上げますと、二台の車のうちいずれか一方が一定スピードを出していれば、車の接近には重大な危険性が伴うわけでございます。  そして、既に申し上げましたように、現行法の四号は加害車両が危険な速度で走行することを要件としておりますので、加害車両停止徐行運転を行い、それによって急接近を招く行為は、現行法四号の速度要件を満たさず、現行法では危険運転として処罰できません。ここにおいては、現行法処罰範囲に不十分な点があったことは否定できないと思われます。そして、この穴を埋めるために、改正法第五号の新設が必要と考えております。  すなわち、改正法第五号は、後行の被害車両接近が見込まれ得る状況において、加害車両停止徐行を行うことによって、被害車両加害車両衝突して生じた死傷事故、あるいは、被害車両が急停車に至った後、さらに第三車両衝突して生じた死傷事故等について適用することを想定した規定であり、現行法の第四号の規定を補充する機能を有するものでございます。  続きまして、改正法第六号の類型につきまして意見を申し上げます。  第六号の類型は、高速道路という環境の固有の危険性に着目した規定でございます。  すなわち、高速道路においては自動車停止したり徐行運転することが極めてまれであり、一般的には想定が困難であると言えます。だからこそ、自動車高速度運転ができるわけです。したがって、このような想定に反して急に自動車停止徐行した場合、回避措置を講じて安全を確保することは極めて困難と言えます。このように、高速道路においてみずからが停止徐行を行い、それによって被害車両停止徐行させる行為は、当該高速道路交通に対して高度の危険性をもたらす行為であり、これを危険運転実行行為として評価することができます。  すなわち、加害車両停止徐行することで被害車両停止徐行を強いることは、他の運転者にとっては想定困難な事態であり、対応が困難な危険を招く行為と言えますので、このような状況下被害車両と第三車両衝突等によって人が死傷した場合には、これを危険運転致死傷罪として処罰する必要性があると考えます。改正法第六号はまさにこのような趣旨を踏まえた規定であり、正当な法改正として賛成したいと存じます。  以上の評価を踏まえて、幾つかの問題につきまして若干のコメントを申し上げます。  二枚目でございます。  まずは、現行法第四号及び改正法五号、六号の関係でございます。  恐らく先生方は、この改正案をごらんになって、現行法の四号、改正法の五号、六号には共通する側面が多く、適用範囲にも大幅な重複があるとお感じかもしれません。しかし、これらの規定は全て別の観点から危険性根拠づけるものと言えます。  すなわち、現行法四号及び改正法五号は、加害車両被害車両の急接近に伴う死傷の危険が現実化したことを処罰根拠とする犯罪類型ですが、そのうち、現行法四号が加害車両の危険な速度に基づく生命身体の危険をカバーするのに対して、改正法五号は、被害車両スピードを利用した危険に着目する点において相違します。さらに、改正法六号は、高速道路上で被害車両停止徐行を行わせることに基づく道路交通の危険、すなわち停止徐行状態被害車両を手段として利用した危険の創出を処罰根拠としております。  このように、現行法四号、改正法五号、六号は、全て別の観点から生命身体危険性根拠づけているため、これを別々に規定することは必要かつ合理的な判断であると言えます。  もちろん、事案によっては、一つの危険運転行為複数類型に同時に該当する場合があり得ますが、こういった事態現行法でも生じ得ます。この場合には、検察官が適切な類型を選択して、公訴提起すれば足りると考えております。  第二に、近時、東名高速道路で発生した悪質なあおり運転との関係でございます。  先生方御案内のとおり、東名高速道路事件に関して、東京高裁は、本件行為現行法第四号の類型に該当し、現行法においても危険運転を構成する旨の判断を示しております。このことから、本件事件現行法においても解決が可能であり、あえて法改正は必要ないという印象をお持ちかもしれません。  しかしながら、東名高速事件を具体的に確認しますと、資料で申し上げますが、まず、1加害車両が危険な速度被害車両直前に進入し、その後、2加害車両直前停止をしたことから、3被害車両がやむなく停車し、その後、4第三車両との衝突によって死亡結果が発生したという事件でございます。  東京高裁は、このうち1の行為を四号に該当する実行行為と認定した上で、2、3を因果経過と評価した上で、本罪の成立を肯定したわけです。  刑法における因果関係は、実行行為危険性が実現する過程として評価できるかという観点から事案ごとに個別に判断されますので、本件のように複数行為が介在、競合する事例については、まさに事案ごと判断でございますので、常に因果関係が肯定できるわけではありません。また、そもそも本件は、1の行為が先行しているからこそ、辛うじて現行法対応が可能であったにすぎず、もし1の行為がなければ、実は現行法では危険運転として構成することが困難な事件でありました。  これに対して、今回の改正法案は、本件と類似の事件について、1の行為がなくても危険運転での処罰を可能とするものでございます。  すなわち、改正法五号は、2の行為実行行為とした上で、その際に被害車両一定速度で走行することを要件として罰するものです。また、改正法六号は、高速道路における2の行為によって被害者の3を招く行為を、被害車両スピードを問わず処罰対象とするものです。  このように、改正法五号、六号は、別の角度から、あおり運転処罰範囲を適切に整備、拡充する趣旨規定であり、今後の実務においても重要な意義があると考えます。  最後になりますが、危険運転致死傷罪改正のあり方について一言意見を申し上げます。  危険運転致死傷罪は、平成十三年の刑法改正によって新設された規定でございますが、その後、平成二十五年の改正によって行為類型が大幅に追加され、さらに、今回の改正によって新たに二つの類型の追加が検討されております。このように、社会情勢等に鑑みて複数回の法改正が行われ、その都度、新しい類型が追加されているわけです。  先生方におかれては、それであれば、現行法のように個別の類型を列挙する形式ではなく、むしろ一般的に、生命身体に対する危険性が高い運転行為危険運転として処罰するというふうな一般的、包括的な処罰規定を置くべきではないかという御意見もあるかもしれません。しかし、私は、このような一般的、包括的な規定ぶりは好ましくないと考えております。  もし、現行法と違い、今申しましたように一般的な処罰規定が置かれた場合、危険運転成立を肯定するためには、当該運転行為危険性が高いことを具体的に証明する必要がありますが、いかなる事情から危険性を認定すべきかの判断基準条文上明らかではないため、危険運転致死傷罪実務上の適用が極めて困難になることが懸念されます。こういった意味においては、今後もまた社会の変化によって法改正の必要が生ずるかもしれませんが、現行法のように、生命身体危険性が高い運転行為を具体的に、かつ個別に類型化する方法の方が立法論としてもすぐれていると考えます。  私の見解は以上でございます。ありがとうございました。(拍手
  4. 松島みどり

    松島委員長 ありがとうございました。  次に、和氣参考人にお願いいたします。
  5. 和氣みち子

    和氣参考人 ただいま御紹介いただきました和氣みち子でございます。  私は、二〇〇〇年七月三十一日に、娘の由佳、十九歳と八カ月の大切な命を悪質交通事犯で奪われた犯罪被害者です。被害後、犯罪被害者として日本の社会で生きていく中で、かなりのリスクを抱えながら生活をしなければなりませんでしたし、二次的被害を受けてしまった経験から、犯罪被害者には支援が必要であると強く感じましたので、現在は、公益社団法人被害者支援センターとちぎの事務局長として被害者支援活動をさせていただいております。また、公益社団法人全国被害者ネットワーク理事としても活動しております。  本日は、このような機会をいただき、大変ありがたく思っております。私は、今回のテーマである危険運転あおり運転の当事者ではございませんが、私と同じような心情ではないかと思いまして代弁をさせていただきたいと思います。  本日は、時間に限りがありますので、全国被害者ネットワークのパンフレット、当センターのリーフレット、冊子、手記などをお手元に配付させていただきましたので、被害者支援重要性についても御参考にしていただきたいと思います。  まず初めに、私が犯罪被害者となってからの心情現状をお伝えしたいと思いますので、あおり運転被害者の方に置きかえて受けとめていただきたいと思います。まず、私の心情現状をお伝えしたいと思います。  行ってきます、私たち家族最後に聞いた娘、由佳の声でした。あれから二十年が間もなく七月三十一日でたちますが、ただいまという声はもう二度と聞くことができません。とてもつらいことですが、葛藤しながら生きています。  平成十二年、二〇〇〇年七月三十一日、真夏の非常に暑い日でした。午後七時ごろ、病院での老人介護仕事を終え、家族の待つ自宅に帰宅途中、栃木県さくら市蒲須坂の国道四号線で、泥酔した飲酒居眠り運転大型トラックに正面衝突され、命を奪われました。人生の希望に燃えていた、わずか十九歳と八カ月でした。私たち手元生活をした期間よりも、由佳が亡くなってからの方が長い年月が過ぎようとしています。とても複雑な思いです。  あの悪夢のような日から生活は一変し、家庭もばらばらになり、私は魂が抜けた状態が続き、食事も喉を通らず、会社仕事も手につかなくなり、由佳傷だらけで横たわる姿を思い出すと体が固まり、動かなくなるPTSDにも悩まされました。毎年来る命日の一カ月前ぐらいになると、あの日に戻され、心身ともに不安定になります。  皆様にわかっていただきたいことは、犯罪被害者になると犯罪被害者をやめることができません。やめることができたらどんなに幸せかと思います。  加害者は、仕事中に立ち寄った栃木県西那須野町のドライブインで、別のトラックで来ていた同僚ビール大瓶を四本ずつ飲み干し、五分ほど仮眠しただけで、百五十キロも離れた千葉県にある運送会社に戻るために運転を始めました。十八キロ以上も公道蛇行運転で走り続け、同僚が、危ないからとまれ、とまれと携帯電話で警告しましたが、大丈夫、大丈夫と意に介さず走り続けました。そのうち仮眠状態に陥り、ガードレールに車体をぶつけて目が覚め、慌ててハンドルを右に切ったために、対向車線を走ってきた由佳と車をめちゃくちゃに潰し、民家に突っ込んでようやくとまりました。  大型トラックを鉄の塊の凶器にかえ、公道を走る行為は、無差別殺人同等だと思います。しかし、業務過失致死道路交通法違反酒酔い運転の罪で起訴されましたが、求刑は、たった業務過失致死三年半でした。判決も、業務過失致死三年半でした。その当時の法律は、どんなに危険な運転でも業務過失でしか裁かれなかった時代でした。裁判長は未必の殺意と断言しましたが、命の重みを全く反映していませんでした。  娘は、老人介護仕事を熱心にこなし、彼との将来の夢に向かって一生懸命生きていました。私たちも将来を楽しみにしていました。そんな夢を奪った悪質きわまりない行為は、決して許すことはできません。こんなつらい思い、誰にもさせたくはないです。私たちと同じ思いをする被害者を出さないためにも飲酒運転根絶を訴えることが娘からのメッセージではないか、このメッセージをずっと伝え続けることが供養だと思い活動を始めました。  ちょうどそのころ、全国の同じ痛みを持つ被害者たちが、命の重みを反映していない法律改正を求めて署名活動を展開していました。私も参加させていただき、歴代の法務大臣署名簿を手渡した結果、とうとい命の犠牲のもと、刑法危険運転致死傷罪平成十三年十一月に新設されました。現在、現行法平成二十五年自動車運転致死傷行為処罰法第二条です。  その後、危険運転致死傷罪を逃れようとする救護義務違反、ひき逃げがふえました。また十年をかけて全国署名活動をし、法務大臣に九回手渡しした結果、自動車運転致死傷行為処罰法第四条に過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪新設につなげました。  これらの活動に参加したことで、私自身達成感が得られ、被害回復につながりました。  現在大きな問題となっている平成二十九年六月に神奈川県東名高速道路上で発生したあおり運転妨害運転による死傷事案についてですが、今回の改正内容は、妨害目的相手の車の前で急減速したり停止したり、あおり運転をした結果、死傷させた場合も、危険運転致死傷罪対象にするものです。  東名高速道路での危険運転致死傷事件では、相手の車の前に停止することが危険運転なのかと、法律解釈をめぐって裁判が長くかかっている。一審でやっと有罪になったのに、二審でも法律解釈をめぐって手続に問題があったとして差戻しになった事案です。  また、私が被害者支援センターとちぎで支援を行った事案の中に、平成二十八年に起こりました危険運転致死傷罪事件でも、一審判決が二審で破棄され、差し戻されたことがありました。裁判がなかなか決着しないことで、犯罪被害者にとっては長くつらい状況が続くことになります。さらに、被害回復もおくれてしまいます。東名高速道路事件でも、高速道路で前にとまって相手の車を停車させること自体、どう考えても危険なのに、法律要件に当たるかどうかの解釈の問題でいつまでも裁判の決着がつかず、加害者が服役しないということは、耐えがたいことだと思います。  こんなことがないように、立法府の国会議員先生方には、裁判所の解釈に任せておくのではなく、ぜひ、はっきりとした条文に書いて、誰が見ても危険運転だとわかるよう法律改正を実現していただきたいと思っております。  本改正は、私自身被害者、それから被害者支援立場として歓迎するものです。迅速な対応をしてもらえたものと認識しております。  被害者遺族被害者支援立場から望むことは、今回の改正により悪質、危険な運転行為に対する厳罰化が進めば、警鐘となり、抑止力につながります。コロナ禍のもとではありますが、今般の法整備がおくれれば、意図的な妨害運転があっても危険運転致死傷罪処罰されないという事態が生じかねません。そのような事態が生じないよう、被害者遺族のためにも、理不尽に命が奪われたり傷害を受けることがないよう、一日も早い施行を望んでおります。  加害者が生まれなければ、犯罪被害者は生まれません。最大の被害者支援は、犯罪被害者を生まないことです。  施行後は、要件の認定が不確かにならないようにドライブレコーダーを積極的に活用するなど、各ドライバーも自分の身を守るために設置し、証拠を残すよう対応し、捜査を充実してもらい、改正法の積極的な適用をお願いしたいと思います。国民が安全で安心な社会生活できるよう期待しております。  最後に、あおり運転被害を受け、大切な命を奪われた御遺族様、御家族様に対しまして、御冥福をお祈りいたします。  以上で私からの参考意見は終了とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  6. 松島みどり

    松島委員長 心あふれるお話、本当にありがとうございました。  次に、久保参考人にお願いいたします。
  7. 久保有希子

    久保参考人 弁護士久保有希子と申します。  本日は、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。  私は、ふだんの業務として刑事事件に注力しておりますので、そのような経験に基づき、本日は個人的な意見を申し上げたいと思います。日本弁護士連合会では刑事事件の関連の委員会にも所属しておりますが、本日私が申し上げることは会としての意見ではございません。  私が本日最も申し上げたいことは、処罰範囲を拡大し過ぎないようにしていただきたいということです。これに関連して、三点、これから申し上げたいと思います。  一点目は、条文化をするということの意義について、二点目として、今回の法案は表現が難しい部分があるということについて、そして三点目に、検察官の裁量により決まる、そういう部分が大きくなりかねないものであるということについて、申し上げたいと思います。  一点目として、法律制定時に想定していなかった、そういう類型が生じたときに新たに条文化をする、それ自体について反対をするものではありません。  今回の改正につきましては、先ほど橋爪参考人からも御紹介がありました、東名高速道路事件がきっかけになって改正の話が出たと認識しております。この事件自体は、現時点では因果関係解釈によって危険運転致死罪の成立は肯定されるという結論になっております。直前停止行為それ自体は現行法危険運転行為には当たらないとする一方で、その前の、当初のあおり行為現行法危険運転行為に該当するものであり、死亡という結果はその危険が現実化したものであるという解釈のもとで因果関係が肯定されております。  個別の事件については私は証拠は拝見しておりませんので、その当否について申し上げることはできません。今後、差戻し審が予定されておりますので、そこで改めて審理が尽くされ、因果関係が否定されるという結論になるのかもしれません。  ただ、昨今、刑事裁判では、危険の現実化という表現のもとで因果関係が広く肯定される、そういう傾向にあります。この傾向は危険運転致死傷罪に限るものではありません。因果関係を緩く解釈することにより、ある行為と結果とを結びつけることが行き過ぎると、どんどん処罰範囲も広がっていきます。処罰するべき行為解釈によってどんどん広げていくということは、法律の安定性を損なうことになりかねません。  東名高速道路事件のようなケースも含めて、危険運転致死傷罪として処罰するべき類型として当初の制定時に想定されていなかった行為や、あるいは疑義が生じるようなケースがあった場合には、因果関係を緩く解釈するということで対応するのではなく、新たに法律を制定して明確化するべきだと考えております。そのため、処罰するべき類型条文で明確化するということについては賛成の意見を申し上げたいと思います。  その上で、二点目として、今回の法案は表現が難しいということについて申し上げます。  罪刑法定主義、つまり、ある行為を犯罪として処罰するためには、法律行為と刑罰をあらかじめ明確に規定しておかなければならないというのは、刑法の大原則です。人権を侵害する方向で作用する法律は、それによって萎縮効果が生じないように、また、誤って不利益を受ける、そういうことがないように、明確に規定されなければならないとされております。  危険運転致死傷罪は、重大な結果を及ぼす悪質な、危険な運転行為に対して特に厳しい罰則で臨むものですから、その適用範囲はできる限り明確でなければなりません。しかし、例えば、今回の法案にある重大な交通の危険を生じることとなる速度という表現は、一読して理解できるものではありません。  さまざまな犯罪がある中で、自動車の事故というのは、普通の人が普通に自動車運転をしている中でもかかわることがある、当事者となる可能性がある、そういう犯罪類型です。一見して自身が行う行為がどのような意味を持つのかということが理解できなければ、多大な萎縮効果を招きかねません。どういう行為が該当し、どういう行為が該当しないのかということは、広く国民に周知されなければならないと考えております。  三点目として、検察官の裁量が大きくなる危険があるということについて申し上げたいと思います。  極端な例になるかもしれませんが、改正六号の表現だけを見ますと、例えば、高速道路での渋滞の場合、のろのろ運転をしていてブレーキを踏んだという場合で、後続車両が追突をした、その場合に、改正六号では被害者側にも速度要件というものはありませんので、加害車両被害車両も両方とものろのろで、こつんとぶつかったようなケースでも、通行妨害目的があれば改正六号に形式的には該当します。  もちろん、形式的に当てはまったとしても、故意や因果関係の段階で絞られるだろう、そういう意見もあるかもしれません。ただ、先ほども申し上げたとおり、近年、刑事裁判では因果関係は広く肯定される傾向にあります。また、故意は内心の、心の中の問題ですから、結局は外形的な行為で推測をされるということになります。裁判所が、このような場所でこういう行為をしたのだから故意もあったのだろう、そういうふうに認定をすることは容易なことです。一たび検察官が危険運転致死傷罪として起訴されれば、それはそのまま有罪となる可能性が高いと言えます。  危険運転致死罪の適用を検討するようなケースでは、残念ながら死亡という重大な結果が当然生じております。それに先行して非難されるような行為が存在している、そういうケースです。  結果を重視し過ぎると、それを自動車運転過失致死罪として非難すべき行為であるか、危険運転致死罪として非難すべき行為かという判断をする際に、危険運転致死罪で起訴する方向に傾きかねません。少なくとも御遺族としては、危険運転致死罪を問うてほしい、そう希望されるでしょうし、その心情は当然のことです。  ただ、御遺族がいらっしゃる事件であれ、いらっしゃらない事件であれ、やった行為が同じ危険運転致死罪として起訴されるべきものであればそうされるべきですし、そこまでの非難が値する行為でないのであれば、本来あるべき刑罰を処せられるべきです。  危険運転致死罪というのは、裁判裁判対象にもなり、重大な刑罰を伴うものです。形式的に当てはまれば、検察官の気持ち次第で恣意的に危険運転致死罪で起訴することは可能となる、そういう運用となることは許されません。  同時に、形式的に条文には当てはまるものの処罰されることはない、危険運転致死罪になることはない、そういう類型があるということは、一般国民にとって非常にわかりにくく、結局は、先ほども申し上げた萎縮効果につながるものです。  今回、改正をされた場合には、恐らく検察庁や裁判所内で、どういう類型が今回の改正類型に当てはまるのかという勉強が行われると思います。その際には、危険運転致死傷罪はもともと、自動車運転過失致死傷等と区別されて、特に生命身体に対する危険性類型的に高く、かつ、実際の交通犯罪で問題となる行為類型を限定列挙した故意犯であるということを改めて意識していただきたいと思います。  そして、実際に運用していく際には、裁判所、検察庁はもちろん、弁護人となる弁護士自身、本当にほかの危険運転行為と同じ程度に特に悪質な、そういう悪質性が強い危険な行為であるのか、慎重に検討することが必要だと考えます。  以上です。ありがとうございました。(拍手
  8. 松島みどり

    松島委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 松島みどり

    松島委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志さん。
  10. 黄川田仁志

    ○黄川田委員 自民党の衆議院議員の黄川田仁志でございます。  自由民主党を代表して、参考人の皆様に御質問をさせていただきます。  本日は、皆様、お忙しい中、またこのコロナ禍の中、国会に来ていただきまして、まことにありがとうございます。  法務委員会の中で、弁護士の資格を持っている方とか元検察官の方とかいろいろいらっしゃいますが、私はそういう法曹界の人間ではなく、一般の人間から議員になった者でございますので、私が一番近いのは、和氣みち子参考人心情は近いのではないかというふうに思っております。  私は、和氣参考人資料を読みまして、被害者の訴えとしての中で、やっと生まれたたった一人の娘だった、夢や希望が全て奪われてしまったという言葉に胸が詰まりました。私も、一人娘がいるんですけれども、結婚してなかなかできなくて、今もやっとこさっとこ育てているという状態で、そういう一人の娘さんの命が奪われたということに関して、本当にこういう事件はあってはならないと思いますし、和氣参考人のお気持ちに寄り添って、こういう法律を早く制定させていただきたいというふうに思っている一人でございます。  そこで、今回の法改正について、被害者家族としてどのような思いがあるか。  今もお話をしていただきましたが、法制審議会刑事法(危険運転による死傷事犯関係)部会において、東名高速道路で停車させた車に大型トラックが追突して夫婦が死亡した事件において危険運転致死傷罪に問われた事件で二審において差し戻されたことを例に置いて、今回もはっきりした条文をということを言っておりますが、その審議会においては、法律は細かく規定することが大切だということをおっしゃっておりますが、今回の法改正、第二条五号と六号が追加された、これについて、十分であるかということ、また、不十分ということであれば、具体的にどういう部分を細かく規定してほしいということがあるのかどうか、評価があれば教えていただきたいと思います。
  11. 和氣みち子

    和氣参考人 私の方から質問に対してお答えさせていただきます。  私も法律の専門家ではございませんので、法律の部分は専門の先生の方に伺っていただきたいと思っておりますが、被害者心情としまして、皆さん方も御家族がいらっしゃると思います、その御家族がもしこのような事件、事故に巻き込まれた場合、どのような感情になるか、その辺を置きかえて考えていただけると非常にわかりやすいのかなと思いますけれども、とにかく理不尽に命を奪われてはいけないんですね。  ところが、毎日のように犯罪被害者は生まれておりまして、それこそ災害よりも多い。犯罪被害者が毎日生まれているんです。交通事故ですとか、殺人、性被害、DV被害、窃盗ですとか、詐欺に遭われたとか、とにかく警察に被害届を出されて受理された方々は全員犯罪被害者で、その日からとにかく生活が一変し、自分の環境も変わってしまう。非常につらい思いをしていまして、さらに、その被害者をやめることができない状態で、もう大変な思いをしているので、被害者支援が必要となっているんですけれども。  いろいろお話を被害者の方々から伺う機会もありますけれども、相手が悪質であるという部分は、被害者にとっては、とにかくどんな法律を当てても間に合わないんですね。結局、被害者心情からすると、命を奪われただけでも、相手に対しては死刑だというような思いでいるところなんですね。ところが、日本の法律はそうではありませんから、私も記者会見で申し上げたんですけれども、法律にのっとって相手処罰する、感情では納得はいかないという思いがしておりまして、それでも日本の法律に従わなければいけないところで、非常にどの被害者も歯がゆい思いをしていると思っています。  以上で質問の話は終わりにさせていただきます。
  12. 黄川田仁志

    ○黄川田委員 和氣参考人、もう一問だけ、ちょっと質問させてください。  先ほど橋爪参考人のお話の中で、一般的な、包括的な処罰規則というものは好ましくないということで、こういう個別具体的に類型化する方法がいいのではないか、いいのだというお話がありました。しかしながら、包括的に表現してあれば、何か予想がつかないときに、何か起こったときに、解釈とか運用の面で融通がきく場合もあるかと思います。東名高速道路事件においても、非常に類型化して一つ一つはっきりしているものがあるということで、速度ゼロ、停止した場合にはなかなか適用にならないという判断になっていたと思います。  そういうことになると、この類型に入っていないものは、今後何か起きたときに法律で罰せられないということになると思います。そういった場合は、被害者の方が、何でこんな危険な運転をしているのに、ここの法律に書いていないから適用ができませんということになると思いますが、その辺、なかなかお話しするのは難しいと思いますが、そういう点ではどういうふうに思われていますでしょうか。
  13. 和氣みち子

    和氣参考人 ちょっと難しい部分ではあるんですけれども、被害者からしますと、法律の部分は知らない方がほとんどだと思います。ただ、危険な運転であるという解釈は、被害者としては、線引きが、それぞれの部分もありますけれども、その辺は弁護士の先生ですとか専門家の先生に聞きながら、これは危険な運転で悪質なものだというような判断、説明を受けながら被害者の方も裁判に臨もうとしているところでもありますので、特に、裁判所の文言の理解、解釈、それによって随分変わってきてしまっているのが現状ではないかと思いますので、その辺はやはり明確に書いていただけると被害者側もわかりやすいのではないかというように感じています。
  14. 黄川田仁志

    ○黄川田委員 ありがとうございます。  次に、橋爪参考人に質問でございます。今と同じような質問になります。  個別具体的に列挙するということ、これに関しては、やはり、そこに当てはまらなかった場合は、結局、何か起きたときに、当てはまらないということで、後追いの法律をつくっていくということになるというふうに思います。これについては、やはり被害者心情に沿わない部分が出てくるというふうに思いますが、そのあたりはどのように評価されますでしょうか。
  15. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答え申し上げます。  確かに、現行法といいますのは個別に行為類型を列挙しておりますので、明らかに危険性が高い行為であっても現行法条文に該当しない場合はあり得るわけですね。そういった意味では、ある種、同じような危険な行為でも危険運転で罰せられる場合と罰せられない場合がある、そういった不均衡が生ずることは先生御指摘のとおりで、否定できないと思います。  しかしながら、仮にですけれども、一般的、包括的に危険性が高い運転行為を罰するとなりますと、ある種、人の生命が失われた場合は、全ての運転行為は危険な印象を持つわけですね。そういった意味からは、逆に、何が危険かということについて明確な判断基準が与えられないというふうな問題があるように考えております。やはり、検察官がきちんと事実を証明して危険運転で起訴をするためには、条文上明確な、具体的な要件といったものを挙げなければ、なかなか対応が難しいというふうに考えてございます。  もちろん現行法に不備があることは問題でございますので、仮に、今後、またそのように条文に明記されていない危険な運転行為がある場合につきましては、それは、やはり研究者実務家も、それについては積極的に法改正に関する提言をしていきたいというふうに考えております。
  16. 黄川田仁志

    ○黄川田委員 もう一度、橋爪参考人に質問でございます。  しっかりと規定を書いていくということが、そういう方向がいいということでございます。実は私も、これに関してはそういうふうにやっていく必要があるとは思っております。  しかしながら、東名の事故において裁判で否定されました、二条四号の、速度停止についての考え方ですね。普通に読んでみても、検察の方は、速度に関して、停止速度ゼロということで立件できるのではないかというような判断を下されましたが、裁判では否定されております。条文をしっかり、拡大解釈をしないということはもちろん大切ですが、余りにも条文に忠実であり過ぎると、やはりそれは融通性がない法律になってしまうのではないかというふうに思います。  そして、久保参考人も指摘されておりましたが、この第二条の五号と六号、なかなかわかりづらい表現があるということであります。裁判裁判をやることになると、やはり一般の方が読んでもわかるようにしておくということも大切かというふうに思います。  そこで、ちょっと最後に中途半端な質問となってしまいますが、この五号において、重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中でなかった場合でも停止行為の妨害によって死傷した場合、こういうのはどういうふうになるのでしょうかというところを教えてもらいたいと思います。これは、答弁できますか。
  17. 橋爪隆

    橋爪参考人 では、お答え申し上げます。  ただいまの御質問でございますけれども、改正法第五号で速度要件を満たしていない場合、すなわち、後行車両が重大な交通の危険を生ずることとなる速度で走行していない場合につきましては、それは改正法五号の要件を満たしておりませんので、五号では処罰ができません。  その上で、高速道路でそれが起きた場合につきましては第六号で処罰をする余地がございますけれども、それは危険運転ではカバーしていない。それはやはり、確かに車がぶつかってはいるんですけれども、お互いスピードが出ていないという状況であれば、まあ、確かにそれは、けがをしたり、場合によっては死亡事故も起きるかもしれませんけれども、類型的には危険性が高い運転行為とまでは言えないだろうという観点から、それは処罰範囲から除外したものと承知しております。  やはり、刑法の中では、先ほども久保先生からございましたけれども、罪刑法定主義という原則がございまして、どんなにけしからぬ行為でも、条文がなければ処罰ができないという原則があるわけでございます。そういう観点からは、条文がなければ処罰ができない以上、そういうことはやむを得ないというふうに考えてございます。
  18. 黄川田仁志

    ○黄川田委員 時間が来ましたので終わりにしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  19. 松島みどり

    松島委員長 次に、浜地雅一さん。
  20. 浜地雅一

    ○浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。  きょうは、三人の参考人の皆様方に大変忙しい中お越しいただきまして、私からも心から感謝を申し上げます。  和氣参考人のお話し中に、ちょっと私、手を挙げてしまいまして、済みません。マイクの声が小さかったので、しっかり聞きたかったものですから。謝罪をしたいと思っております。  そこで、まず、和氣参考人にお聞きをしたいと思いますが、ちょっと今回の自動車運転罪、いわゆる危険運転罪とは別の観点なんですが、内閣委員会でかかっております道路交通法で、いわゆるあおり運転罪というのが今回創設されることになりました。基本的には、この危険運転罪の二条四号にある妨害目的での行為を、いわゆる死傷の結果にならない場合でも、これを処罰しようという法案になっております。あおり運転を行った場合には懲役三年以下、罰金は五十万円以下、高速道路でこれを行った場合には懲役五年以下、罰金百万円以下ということです。  行政処分の方も、一回の違反で免許取消しになるような法案になるわけでございますけれども、こういった事故の被害者の御遺族として、今回のあおり運転罪というものが、法案の中身はちょっと今、私は概括的にしか申し上げませんでしたが、これができたことの意義について、また、何かもしさらなる御要望がございましたら、わかる範囲で結構でございますので御意見をいただければと思います。
  21. 和氣みち子

    和氣参考人 お答えしたいと思います。  今回、道交法も同時に変えていただくということは、被害者にとっては非常にありがたく思っているところです。  なかなか道交法も後手後手に回っているようなところもあると思うんですけれども、法律だけではなくて道交法の方も同時に厳罰になっていただいた方が被害者にとってはありがたいんですけれども、我々被害者は厳罰だけを求めているのではないということも知っていただきたいと思います。  もちろん、厳罰になっていくことも重要ではありますけれども、やはり一般の皆さんに対して警鐘を促す、被害者を生まない、加害者になる人をなくす、この辺が我々伝えたいところでありますので、その辺も御理解いただけるとありがたく思います。
  22. 浜地雅一

    ○浜地委員 大変参考になる意見でございました。  当然、被害に遭われた方からすると厳罰というのは必要な観点思いますが、まさに当事者として、それだけではなくて、しっかり、そういったあおり運転等をまず起こさせない、周知徹底も含めて、そういったことを語っていただいたと思っております。この点も、警察庁を含めて、また今回、この危険運転罪の新しい条文ができましたら、そういったことを国民の皆様方に知らせる我々責務があるなというふうに改めて感じた次第でございます。  そこで、今、あおり運転罪との関係で聞いたんですけれども、ちょっと橋爪委員にお聞きをしたいと思っています。  当然、危険運転致死傷罪は暴行、傷害の非常に危険性の高いものを類型化したものだという御説明がございました。ただ、世の中の方というか、私も実は最初そうだったんですが、今回、あおり運転罪を警察庁の方でつくることによって、それによって死傷の結果が生じた場合は全て処罰されるんじゃないかなというふうに私自身は感じておりました。  例えば、道交法のあおり運転罪の中には、いわゆる暴行や傷害の態様ではない、ハイビームをかなり点灯してあおるとか、若しくはクラクションを非常に何回も鳴らすような行為も道交法のあおり運転罪では処罰対象になっております。しかし、二条四号のいわゆる妨害目的の走行ではそれは入っていないというのが、対象となっていないというのが法務省からの説明だったわけでございます。  そのあたり、やはり限定という点から外されたとは思いますけれども、世の中のイメージで言いますと、やはりあおり運転によって死傷の結果が生じた場合にはしっかりと処罰してほしいというような要請もあるように思いますけれども、今回、こういったクラクションやハイビームを多用する者の行為類型については全く法制審では議論になっていないのか、議論になっていないとすると、もう一度、先生の口から御説明をいただければと思います。
  23. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答え申し上げます。  法制審議会刑事法部会でも、その問題については議論がございました。すなわち、ハイビームやクラクションによって高速道路被害車両をとめる行為につきましても、危険性は共通でありますので、それも危険運転にカバーできないかという議論はございました。が、あくまでも今回は危険運転致死傷罪法改正でございまして、危険な運転行為実行行為とするわけです。例えば、運転中に窓をあけて大声で怒鳴るとか、ハイビームとか、それはやはり運転行為とは言えないという観点から、これは危険性があるとしましても危険運転致死傷罪法改正としてカバーすることは困難であるというふうに考えました。  また、やはり、処罰を考えるときには典型的な行為をきちんと罰することが重要と考えておりまして、そういった意味では、車自体を利用して急停止徐行をして危険性をつくる行為を典型的な行為と考えて罰することが相当であろうと。ある種、非典型的な行為を全て罰しますと処罰範囲が広過ぎて、それはそれでまた問題があるというふうにも個人的には考えております。
  24. 浜地雅一

    ○浜地委員 ありがとうございます。  実は午後に対政府質疑がありますので、その点、また聞こうかと思っておりましたが、法制審に実際出られている先生からの御意見として拝聴させていただきました。本当にありがとうございます。  次に、妨害目的について、これも橋爪委員と、これは久保参考人にもお聞きをしたいと思います。  妨害目的車両を運行するというのが、もともと四号にも、五号にも六号にも入っているわけでございますが、法務省からの説明によりますと、この妨害目的というのは、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することというふうに私は説明を受けております。  五号の一般車両であれば、特定の被害車両を狙ってといいますか、その被害車両の安全な通行を妨げようという意図というのは非常に限定されるというふうに私自身思いますけれども、これが六号の高速道路上で起きますと、およそ高速道路で、全く、今のコロナ禍のようにほとんど走っていない状態であるとその意図というのはできないと思いますけれども、通常であれば、やはり自分の後ろにはある程度速い速度で走っている車両があるということは、実行行為者といいますか、運転者は予想できるわけでございます。  そうなりますと、先ほど久保参考人からありましたとおり、処罰範囲が広くなり過ぎないかという懸念が六号について私は生じるんじゃないかと個人的に思います。先ほどの理由です。およそ高速道路であれば後ろの車両が速い速度で来ているわけでございますので、それを、自分がとまるということになると、特定の車両を狙わなくても何らかの車両がそういった事故に遭う危険があるのではないかという、目的を認定されやすくなるのではないかというふうに私自身思いますが、この点に関して、橋爪委員また久保委員の御見解を拝聴できればと思います。ああ、参考人ですね、済みません。
  25. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘でございますけれども、改正法第六号におきましては通行妨害目的要件とされております。  通行妨害目的につきましても法制審議会刑事法部会議論をいたしましたけれども、これは、特定の車を妨害する意図はなくて、一般的、概括的でも後行車両の通行の妨げになる目的があればいいというふうに考えられております。そうしますと、例えばオフシーズンの高速道路で全く車が走っていないというケースにつきましても、ある種、概括的に、これから来る車の妨害になってもいいだろうというふうなつもりでとまる行為についても要件を満たすんじゃなかろうか、そういった御懸念かと思います。  確かにそういった行為類型的に危険性は低いと思うんですね。しかし、やはり高速道路は車が来るわけです、いつかは。車が来れば、いきなりとまっているわけですよね。そういった意味からいえば、それは明らかに妨げになると思うんですね。そういった意味からは、時間的な密接性というものはそこまで厳密に要求されてはおらず、多少のタイムスパンがありましてもそれは危険性がある運転行為と評価すべきと考えますので、個別の車両を狙い撃ちしなくても、一般的、概括的に後行車両の通行の妨げになるという認識であればこの要件は満たすというふうに考えておりました。
  26. 久保有希子

    久保参考人 今御指摘いただいた御懸念につきましては、私は全く同じ懸念を持っております。同じような懸念を持って、たしか部会でもそのように質問をさせていただいたという記憶をしております。  形式的には、およそ高速道路運転をしていれば、そういった、何か、通行を妨害する可能性がありますので、極端に言えば、高速道路自動車運転していれば、それだけで通行妨害目的を認定される危険性さえあるのではないかと考えております。  その懸念を前提に、私としては、先ほど意見で申し上げましたように、そういった、およそ、高速道路自動車運転している際に結果的にぶつかった場合に通行妨害目的を認定されるようなことは許されず、あくまでも類型的に、特に危険性の高い悪質な行為処罰するものだという御説明をいただきましたし、検察官や裁判所においてもそのような運用がされることが前提となっている、故意や因果関係できちんとそこは否定されるはずであるという説明をいただいております。  ですが、現行の法案ですと、そういった御懸念があるのは、私も全く同感です。  以上です。
  27. 浜地雅一

    ○浜地委員 ありがとうございます。  実は私も経験があって、ある高齢者の方が、高速道路のインターをおりようと思って、通り過ぎたんですね。通り過ぎて、とまって、バックしようと思ったら、後ろから追突されて、その方は亡くなったんですよね、逆にその高齢者の方が。  ですから、なぜこういう話をしたかというと、高速道路妨害目的というのがやはり緩く認定されるとすると、多分この御老人は後ろの車両を、もしこの法律があれば、妨害しようと思ってはいなかったと思いますけれども、およそ、高速道路で自分がインターを通り過ぎて、まずいととまって、バックして、インターをおりようといったときに後ろからぶつけられていますので、そういったことはなかなかないとは思いますけれども、非常に広く捉えられるんじゃないかというふうな、私自身のそういった考えを持っておりますので、そういった質問をさせていただいたところでございます。  しっかりここは、また実務の面でも運用をしっかり、認定のところは大事になってくるのかなというふうに個人的に思ったところでございます。  最後の質問にしたいと思いますが、先ほど久保委員からも御指摘がございましたが、五号の被害車両のところでございます。  走行中の車両について、法文上では、括弧して、重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中の車両の前で停止する行為なんですけれども、確かに、この要件、ぱっと見てイメージがつく場合と、そうではない場合があろうかと思っています。  そこで、この重大な交通の危険が生じることとなる速度というものは、さまざまな、ケース・バイ・ケースあると思いますけれども、実際にこれは、橋爪参考人はどういった速度での走行というものを、例えば、この条文を見て、もう少し詳しく解説をされるとしますと、どのような御説明をされるか。  もう一度、久保参考人に、やはりこの要件について、御自身はこの要件について、どのような速度での走行というふうに認識をされるのか、ちょっと参考までにお聞かせいただければと思います。
  28. 松島みどり

    松島委員長 質疑時間が終了しておりますので、簡潔に、手短にお願いします。
  29. 浜地雅一

    ○浜地委員 じゃ、橋爪参考人のみ、先ほどの。
  30. 橋爪隆

    橋爪参考人 では、簡潔にお答え申し上げます。  今御質問の、改正法五号の重大な交通の危険が生ずることとなる速度でございますけれども、これは、万が一ぶつかった場合に重大な事故が生じ得るスピードというふうに考えられております。そういった意味では、車対車でございますので、例えば三十キロ、四十キロぐらいでしょうか、のスピードでぶつかれば、それはやはり事故が生じ得ますし、さらに、この車には自転車も含まれておりますので、そういった意味から、二十キロ、三十キロでもそれに該当する場合もあろうと考えてございます。
  31. 浜地雅一

    ○浜地委員 わかりました。  済みません、時間超過しました。  以上で終わります。ありがとうございます。
  32. 松島みどり

    松島委員長 次に、松田功さん。
  33. 松田功

    松田委員 立国社の松田功でございます。  本日、参考人の皆様、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。また、こういった機会でございますので、ぜひ貴重な御意見をお聞かせいただきますよう、よろしくお願いいたします。  あおり運転の問題は、近年、本当にふえてきていると言うべきなのか。実はこれは、自動車が生まれて、それはもともとあって、最近になって、ドライブレコーダーの普及等々で、これがあおりだというふうな認識に変わってきたということも考えられると思います。  そういった状況の中で、過去の流れから、このあおり運転の変遷ではないですが、状況が、近年非常に悪質になってきたのか、過去からも非常に悪質だったのか、そういった状況先生方参考人の皆様に一言ずつちょっとお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  34. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答え申し上げます。  法律の問題ではないような気がいたしますけれども、個人的な感想を申し上げますと、恐らく、昔からあおり運転といったものはあった感じはするんですね。それが、近時、やはりドライブレコーダーの普及であったりとか新聞報道等の影響で顕在化したような印象を持っております。  ある種、車の中というのは密室ですので、そこでお互いに不信感が生じたりとか特殊な精神状態になりますので、そういった意味から、類型的に、自動車運転においてはあおりとかトラブルといったものは生じやすい環境があると思うんですね。それが特に最近の事件の頻発や記録によって顕在化したというふうに考えておりました。
  35. 和氣みち子

    和氣参考人 お答えいたします。  私自身も、あおり運転を受けたことがございます。車に乗っていて、後ろからかなり接近をされまして、あるところまで行きましたら、今度は、変則的な交差点だったんですけれども、急に左折をして反対方向から私の車を追い抜いて、かなりのスピードで行った。ところが、五キロほど行ったところの交差点でまたその車が赤信号で待っていたという体験をしまして、何もそれだけ急いで私の車を追い越していっても何ら時間は変わらないのではないかというような体験をいたしました。ちょうどラジオの栃木放送の生放送があってお呼びいただいたときでしたので、生放送でその事例を伝えた経験があります。  ですから、昔からあったのではないかというような思いをしていますし、それがドライブレコーダーによって皆さんで画像で確認ができて、これは危険だと、ちょっと悪質化はしていると思いますけれども、そういうことがやはりドライブレコーダーによって明確になってきているのではないか。ですから、先ほど私の話の中にも出させていただきましたけれども、ドライバーもやはり証拠となるものを車に取り付けておくべきではないのかなというふうに感じています。
  36. 久保有希子

    久保参考人 私自身はペーパードライバーですので、実感として、あおり運転を受けたとか、そういう経験はないんですけれども、個人的には、恐らく昔からそういった行為は行われていて、それが、先ほど御指摘のあった、ドライブレコーダーやあるいは防犯カメラの普及によって立証手段が容易になったということがあるのではないかと思います。昔であれば、同じような行為があったとしても、立証手段が何もないので、やった、やっていないという水かけ論になるということがあったと思うんですけれども、客観的にそういった行為が明らかになるという面があって、より注目されるようになっているのではないかと思います。  一方で、以前と比べて、新聞報道はもちろんですが、インターネット上で誰もがいろいろな情報に接することが容易になったので、あおり運転行為についても、報道されれば、誰もがすぐにその情報に接することができる。そういうこともあって、あおり運転行為に、そういうものがあるんだなということを国民がすごく触れやすくなって、その悪質性に注目するようになったという面があるのではないかなと考えております。
  37. 松田功

    松田委員 ありがとうございます。  このあおり運転自体、それの被害というか、遭ったり、はたまた知らぬ間に一般の方があおってしまっている行為になってしまうということが前段としてあるのではないかというふうにかねてから思っておりました。私自身も、運転をしているところで、相手がどう捉えるか非常に、橋爪先生の方も書籍で書かれたりもしていますけれども、相手の顔が見えない中での行為でありますから、相手の気持ちもわかりませんし。  そういったことで、その行為があるかないか、これから認定していく、その問題の中で、やはり被害に遭われた方、そういった観点の、まず最初にお伺いを和氣さんの方からさせていただきたい部分が、犯罪被害に遭った方がPTSDになる確率は物すごく高い状況になっています。若干先ほども述べられておりましたが、ユーチューブなどでもちょっと拝見させていただいて、弟さんが亡くなられて、お姉さんがそれを発症してしまった。非常に家族の方が苦しんでいる状況というのは、なかなかわからないことが多いと思います。そして、加害者がその苦しみをわかるのは事故が起きた後になっていくということも含めて、今この場で、その被害で苦しんでいる人たちの声をぜひもう少し詳しくお聞かせいただけるといいかなと思いますが、よろしくお願いいたします。
  38. 和氣みち子

    和氣参考人 ただいまの御質問ですけれども、PTSDというのは、個人ではわからないものなんです。自分では何かおかしいなと思っているくらいで、やはり専門の先生に診断をいただくものでありますので。私も、体が固まって、汗が出て、体が動かなくなってしまった、それは自分がおかしいのではないかというような判断でいましたけれども、後で専門家の先生にお聞きすると、それはPTSDという症状でしたというふうなことを、お聞きして初めてわかったようなところもありますが、このPTSDは何年たった後でも出てくる症状です。  私が被害者支援センター被害者支援に当たっている中で、十年後に出てきた方もいらっしゃるんですね。それは、ある日突然、マスコミさんたちが十年後で改めて取材をしたいというような希望があって、それに答えていたり、それから新聞報道とか、そういう報道された時点でまたよみがえって、そのPTSDを発症されたというような事例も多々ございます。  いつ発症するかはわからないですし、個人的にも自分がどういう状況なのかもわからない。そういうところは、全国の四十七都道府県、四十八カ所にあります被害者支援センター、それから全国被害者ネットワーク、こちらの方に相談いただければ、我々が面接をさせていただいたり、直接的な支援をさせていただく中で、専門の先生の方に向けて、その判断をしていただき、薬の処方ですとか、そういうものも出していただいて、少しずつ、一歩一歩前に進めるように支援を行っているというような状況です。  とにかく、全国民が全国にある犯罪被害者支援センターをわかっていただいて、それで、周りに被害者の方がいらっしゃったら、そちらに向けてあげるということも被害者支援の大きな一つの支援となりますので、その辺も皆様方には御協力をお願いしたいと思っております。
  39. 松田功

    松田委員 ありがとうございます。  それでは、久保参考人の方にちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。  先ほど参考人の方からお話をいただいた中で、運転手自体が萎縮をするという言葉が少し多く出ていたような気もしたものですから、こういった、運転手が萎縮をするというか、慎重になること自体は、交通安全の観点からすると非常に重要なことの一つではないかというふうに思われますが、その辺についてはいかがでしょうか。
  40. 久保有希子

    久保参考人 おっしゃるとおり、自分の行為がもしかしたら刑罰の対象になるかもしれない行為だということで、安全な運転を心がけようというそれ自体は、重要な刑法の役割でもあるとは思っております。その前提として、ただ、そうはいっても、余りに不明確になりますと、どこまでの行為が許されるのかということがやはりわからなくなる。それはやはり危険なことです。  先ほども申し上げましたように、罪刑法定主義という、これは本当に刑法の一番大きな原則ですので、どういう行為が自分が刑罰に当たるのかがわからないということによる萎縮効果というのは、それはやはり危険なことですので、国民が、もしかしたら当たるかもしれないなと思って気をつけるということ自体は大切なことではありますけれども、それと、やはり法律が明確でなければならないということはまた別の問題だというふうには考えております。  以上です。
  41. 松田功

    松田委員 ありがとうございます。  今回の法律改正については、御存じのように、東名高速死傷事故において、停車させられるという速度要件を満たさない状態で起きた事故に対して網をかける意味での危険運転致死傷罪対象行為を追加するものであると思います。危険運転致死傷罪は厳しい罰則を科すものですから、適用範囲を明確にすることが求められていることは理解をいたしております。  そのかわり、今回の東名高速の事故のように、一般常識的に考えて危険運転としか思えない行為であっても、危険運転行為規定に当てはまらなければ罪に問えないという可能性もあったというふうに思います。今回は一連の行為として因果関係を認められましたが、我が国は罪刑法定主義をとっているため、悪質な行為だとしても法律規定がなければ罰することができない。その場合、今回のように危険運転行為を追加していくことは、いい対策の方向へ向いていくことも考えられますし、また、それで足りない部分もあるのかというふうに思います。  私のような法律家でない者が、一般の者が裁判員として参加をして、当然危険運転行為と思うものであっても、法律家からすればそうはならない、それは対象行為を細かく規定し過ぎるからではないかというふうにも考えられる。また危険運転に当てはまらないような事故が起きた場合、また対象行為を追加、法改正というやり方をしていくと、次の被害者対象行為に当てはまらなければ救われない可能性が出てくることも考えられるのではないかとも思います。  もう少し裁判員や裁判官に裁量が与えられるくらいの規定にすることが、今、複雑な世の中、思いも寄らぬ事故が起こる現代において必要と思われますが、この辺について橋爪参考人久保参考人の方にお伺いをしたいと思います。
  42. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答えを申し上げます。  確かに御指摘のとおりでございまして、危険運転致死傷罪は個別に規定がございますので、一般常識では危険、悪質な行為でも、現行法要件を満たしていない場合には危険運転致死傷罪処罰ができないという問題は生じます。生じますが、二点申し上げますと、一つは、全く無罪になるわけではないわけですね。あくまでも過失運転致死のレベルでは処罰ができ、その限度で量刑判断をできますので、全く無罪になるわけではないということが一点です。  もう一点申し上げますと、仮にですけれども、現行法規定ぶりを改めまして、一般的、類型的に生命に危険が高い運転行為を罰するとなった場合、多分、検察官の方は極めて証明が困難になってしまいまして、かえって適用を萎縮する傾向があると思うんですね。やはり、現行法のように個別に書いてあるからこそ、要件を満たせば危険運転成立するという観点で、証明しやすい、適用しやすいという観点もあると思うんです。  そういう観点からは、先生の御懸念は十分理解できるんですけれども、やはり現行法のような規定ぶりには一定の理由があると考えております。
  43. 久保有希子

    久保参考人 実際の裁判裁判では、さまざまな法律解釈が問題になっております。刑事裁判の大原則として、疑わしきは被告人の利益にという大原則がありますので、解釈の範囲が広くて、疑わしければ疑わしいほどそれは処罰できないという方向に傾きやすいという点はむしろあるのではないかなとも思っております。  一方で、特に悪質な類型について、例えば危険運転致死罪が適用されない場合、先ほど橋爪参考人がおっしゃったことは全く私も同意見なんですけれども、過失犯として処罰する以外に、特に悪質な行為が行われた場合は、実際はより別の、自動車運転に関する罪以外で、暴行ですとか傷害罪ですとか、そういった適用が実際に検討されている事例もあるという認識です。  ですので、先行行為として何か特に悪質な行為があれば、暴行、あるいは傷害、あるいは強要罪なども問うこともできると考えておりますので、自動車運転過失致死傷罪や危険運転致死傷罪だけが問題になるというわけではないということについても申し上げておきたいと思います。  以上です。
  44. 松田功

    松田委員 ありがとうございました。  この問題は、運転をする皆さんが非常に、自分自身におかれる意味においては大変重要な法律であるということも認識いたしておりますので、周知を、また広めていきたいと思っておりますし、また、これからも御協力をよろしくお願いします。  きょうはありがとうございました。
  45. 松島みどり

    松島委員長 次に、藤野保史さん。
  46. 藤野保史

    ○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。  三人の参考人の皆様には、大変御多忙の中、きょうは御出席をいただきまして、貴重な御意見を本当にありがとうございます。  和氣参考人から、犯罪の被害者遺族としての思い、そして、最大の被害者支援被害者を生まないことである、加害者をなくすことであるというこの御指摘は、本当に重く受けとめたいと思っております。  その上で、まずは久保参考人にお聞きをしたいんですが、非常に骨太な、条文化の必要性は、法的安定性の観点から一定の意義がある、ただ、罪刑法定主義の観点、そして実際の運用での検察官の裁量に左右されるという点、非常に太い視点で、論点といいますか、御指摘をいただいたと思っております。  私は、ちょっとお聞きしたいのは、条文化の意義はある、しかし、今回、表現が難しいというお話をされました。なぜ、今回、表現が難しくなったかといいますと、やはり、実際に起きたものに対して、それに対応するといいますか、停止なり今回の事案がもとにあって、それを法案にどう落とし込むかという組立てでやったがゆえに、立法事実として、どのように法務省内で法案が、条文が検討されたのかという点で、これは午後の政府質疑でも聞いていきたいというふうに思っているんですが。  ちょっと具体的に聞きたいんですけれども、二条五号で、法務省は、加害者が自車の後方を走行している車の存在を認識していない場合であっても、要するに自分の後ろに車がいないという場合であっても、そのような車があれば嫌がらせをしようと考えて急停止をする場合には、いわゆる先ほど問題になっています通行妨害目的要件を満たすというふうに説明を法制審でしております。ですから、積極的にあの車の通行を妨害しようという意図でなくても、あるいは、自分の後ろに通行中の車がいなくても、形式的には構成要件に該当するという説明なんです。これはやはり適用範囲がかなり広範になる可能性があると思うんですけれども、その可能性と、これはどうやって限定をかけるのか、法制審ではどのような議論がなされたんでしょうか。
  47. 久保有希子

    久保参考人 御指摘のとおりで、今回のその条文というのは、形式的に当てはまるものはかなり広くなるのではないかなということを懸念しております。私としては、最終的には賛成の意見を申し上げたんですけれども、ただ、限定的に解釈をされるということが前提での賛成ということにはなります。  やはり、そのまま形式的に条文に当てはめると広くなるという一方で、法制審の部会の方で御説明いただきましたのは、形式的に当てはまるもの全てを処罰する趣旨ではないと。  先ほども申し上げましたように、これから、運用についてどういうふうにしていくか、法曹三者はもちろん、多方面の関係各機関で検討されていくことになると思います。こういった行為対象となり、こういった行為対象とならないということを広く共有して適切な運用をしていただく、その上で何か問題があれば、やはりそれはまた改めて改正をしていただくということで対応していくしかないのかなというふうには考えております。  以上です。
  48. 藤野保史

    ○藤野委員 同じ論点で橋爪参考人にもお伺いしたいんですが、やはりどうしても、こういう条文ですと、形式的に当てはまる、処罰範囲が広がってしまうという懸念に対して、橋爪参考人としましては、こういうやり方があるんじゃないか、そういうものがもしあれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  49. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答え申し上げます。  二点申し上げます。  まずは、改正法五号の条文でございますけれども、これは、走行中の車の前方で停止と書いてありますので、前方要件があるんですね。ですから、車が全くいないところで徐行運転を行いましても、前方に停止要件を欠きますので、空間的に車が存在する状況停止をしなければならないという観点からは、処罰範囲の限定は図り得るというふうに考えております。  もちろん、改正法五号、六号はかなり広範な規定ぶりになっておりますので、場合によっては処罰価値が低いものが形式的には該当する場合はあると思うんですね。ただ、刑法解釈におきましては、専ら形式的な文言だけで勝負がつくわけではなく、実質的な観点から限定を図る可能性はあると思うんです。  つまり、実行行為と申しますのは結果発生の具体的な危険性を有する行為でございますので、例えば、個別の状況におきまして、危険性が低い場合については実行行為に該当しないという解釈があり得ますし、また、刑法因果関係と申しますのは実行行為の危険が現実化する過程と言えますから、そういった実行行為危険性が乏しく非典型的な因果経過の場合については因果関係を欠くという解釈もあり得ます。  そのように、個別の実質的な観点から、実行行為性あるいは因果関係を否定するという観点処罰範囲の限定が図り得るというふうに考えております。
  50. 藤野保史

    ○藤野委員 私もそうあってほしいなと思うんですが。  ただ、例えば六号で先ほど議論になりましたけれども、高速道路で渋滞中という局面ですと、そこにおける実行行為性というのは何なのか。  結果発生の危険性が高いというのが、渋滞の場合、のろのろのろのろ行くわけですね、その時点での行為は何なのかという話も、審議会を読みますと議論になっておりまして。これは部会長の言葉なんですけれども、正面から行為の時点で具体的な危険性を要求すると、それは故意の要件にもなってしまって、そういうたてつけに条文をしてしまうと故意の要件にもなってしまうので、そうすると六号の罪の適用が困難になる事態も生じてしまい、この規定の持つ意味が減殺されかねない、こういう井田部会長の指摘がありまして、私は、なるほどなというふうに思ったんです。  非常に難しい規定というか、刑法の考え方、基本からすると、やはり、実行行為性があって、それに対応する行為があって、因果関係があってというふうに私も考えていたんですが、この六号の渋滞という局面では、それを余り厳密にやるとなあみたいな議論がされていたのが大変印象的なんですね。  やはりそういう意味でのこの法律の運用のあり方というのが非常に重大だというふうに思っておりまして、引き続き、この問題については午後の質疑でも問いたいと思います。  そして最後に、三名の皆様全員にお聞きしたいんですが、和氣参考人もおっしゃっていましたけれども、やはり本当に加害者自身をなくしていくという点で、厳罰化という対応はあると思うんです。ただ、厳罰化で、今回のように起きた事態に対して法律を当てはめていくというようなやり方ですと矛盾が生じてくるのもありますし、何よりも、やはり、法律以外で皆様がお考えの、こうしたあおり運転をなくしていく上で、もっとこういうやり方があるんじゃないかという点ですね。  例えば、警察庁も通達を出しておりまして、例えば教育の問題、講習時における教育、あるいは安全運転管理者に対する啓発、さらには行政処分、こういう、法律ではなく、刑事罰というか、行政処分の実施というものも言われております。そういうことを考えられておると思うんですが、皆様の観点から、こういうことが必要ではないかというのがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
  51. 久保有希子

    久保参考人 究極的に言えば、私としては、法教育の必要性ということに尽きるのではないかなと考えております。  私、弁護士会の方では、法教育に関する委員会にも所属しておりまして、例えば、小学校ですとか中学校ですとか高校で、依頼があれば出張の講義をして、いろいろ議論をしたりするという場がございます。やはり、あおり運転に限らず、法律について正しい知識を身につけて、将来、自分がそういった間違ったことをしないようにするためには、早いうちから法教育をしていくということこそが一番重要なのではないかなと思っております。
  52. 和氣みち子

    和氣参考人 被害者立場と、それから一般の方から申し上げますと、やはり、警察ですとか学校ですとかそういうところの教育も必要ではないかというふうに思いますし、これは常に細かく伝えていかなければいけない問題かなと思います。  また、あおりとか、罪を犯した者が刑務所に入っているわけですけれども、私も刑務所で矯正教育をさせていただいている中で、自分が犯した罪に対して余り自分自身反省もせず、理解もせずという受刑者が非常に多くて、再犯の原因になっているのではないかということを常々思っていますので、刑務所で服役している中で、きっちりと、受刑者たちの矯正教育も絶対に必要ではないかと。それから、出てきてからも、仮釈放の時点での教育、こういうこともしっかりと行っていただきたいなと思っています。  以上です。
  53. 橋爪隆

    橋爪参考人 お二人の意見にもう尽きておりますけれども、あえて一点つけ加えて申し上げますならば、危険運転が生じにくいような環境づくりと申しますか、交通整備を含めまして、そのような環境整備というものも課題になると考えております。
  54. 藤野保史

    ○藤野委員 ちょっと、最後橋爪参考人で、もう少し教えていただけますか。環境整備というのは具体的にはどのようなことなんでしょうか。
  55. 橋爪隆

    橋爪参考人 なかなかちょっと、私も専門外でございますけれども、恐らく、やはり運転していますと、お互い精神状態が特殊になりますので、ある種、常に危険運転というのは生じやすいと思うんですね。そういった意味で、ドライバーの方のストレスが少ないような道路整備や道路環境といったものをつくっていきながら、何とかストレスなく運転できるような環境といったものが、結果的には危険運転の抑止という観点からも意味があると考えておりました。
  56. 藤野保史

    ○藤野委員 終わりますけれども、今、ドライブレコーダーの普及が進んでいて、これによって裁判等の認定でもかなり客観的な認定が行われる環境が広がってきているというふうに伺っております。  他方、この間、二〇一八年に、警察庁が「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転に対する厳正な対処について」という通達を出しまして、この通達が出たら、二〇一七年には七千百三十三件だった車間距離義務違反などの摘発件数が、一万三千二十五件に増加しているんですね。ですから、倍近くになっているんですけれども。  要するに、そういう現状のもとでこういう新たな、適用できる法律がふえるということの問題点も十分踏まえて、午後は審議をしていきたいと思います。  参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
  57. 松島みどり

    松島委員長 では、串田誠一さん。
  58. 串田誠一

    ○串田委員 日本維新の会の串田誠一です。  東名高速の事故とか、あおり運転でおりてきて殴ったりとかという動画が随分流されて、国民も本当にあおり運転は怖いなと思ったんだと思うんですね。ですから、こういったような法律ができるというのは必要だろうと思うんですが、一方で、こういうふうに多くの国民が必要だと言う法律というのは、勢いによって、かなり拡大解釈といいますか、条文の文言がきっちりとなされていないままに世に出るということもあるのかなというふうに思っておりまして、そういったようなところの解釈というのが非常に大事かなと思うんですけれども。  まず最初に橋爪参考人にお聞きをしたいんですが、各委員から、どちらも高速でないような場合というのがありましたが、逆に、第六号は停止又は徐行ということになっているわけですけれども、高速道路あおり運転を受けて、非常に相手方が恐怖を感じて、みずから運転を誤ってガードレールから飛び出したりとかいうようなことも十分考えられると思うんですが、このような場合、六号ではちょっと把握し切れないのかなと。そうすると、これは五号に戻るのかとか、四号に戻るのかとか、いろいろあると思うんですが、この点はどのような検討をされてきたんでしょうか。
  59. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおりでございまして、高速道路についても四号、五号は適用の余地がございますので、事案によりましては、むしろ、六号の要件を満たしていなくても、現行法四号あるいは改正法五号で適用できる場合があると考えております。
  60. 串田誠一

    ○串田委員 むしろ、六号は今回の東名高速道路のような感じをイメージしているのかなと。あらゆる事項というのは考えられるわけですけれども停止徐行というものをあえて入れたというのは、そういったような意識もあったのかなと思うんですけれども。  次に、目的犯のような感じになっているんですが、車の通行を妨害する目的でとなっているんですけれども、前方で停止したり著しく接近するというようなことがあれば、これはそのまま通行を妨害するというふうに一見思うと思うんですよ。要するに、目的犯なのかどうか、ちょっと確認させていただきたいんですけれども、目的犯と、直前停止したり著しく近づけるということ自体、これも故意があって行われるわけですよね。そうすると、故意があれば妨害をすることになるというのが通常予想できるんじゃないか。そうすると、ここの主観的な部分を明確に分離することが果たしてできるのかどうかというのを橋爪参考人久保参考人にお聞きしたいと思います。
  61. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおりでございまして、刑法では目的と故意が別の概念でございます。したがいまして、故意があるとしても目的を欠く場合がございます。そういった意味では、本件も、急停車、急徐行をする場合につきましては、故意はあるわけなんですけれども、場合によっては目的を欠く場合が観念できると理解しております。  例えば、道路交通状況によってやむを得ない状況において停止しなければいけないケースがございます。そのときについては、自分が直前停止をするという認識がありますけれども、そのときには停止する必要性がございますので、目的要件については証明できないというふうになると思います。  そういった意味では、事実上、停止徐行する必然性や正当な理由がない場合については目的が推認しやすいという関係があるというふうに考えております。
  62. 久保有希子

    久保参考人 今、橋爪参考人の方から厳密なところについては御説明いただき、それについては異論はありません。  ただ一方で、やはり、いずれも、目的にしても故意にしても内心の問題ですので、かなり重なってくる部分はあると思います。理論的に区別できたとしても、実際に裁判裁判の場でそれが一般の裁判員の方が理解できるかというと、それはまた別の問題であり、事実上、故意と目的というのは重なって、いずれも肯定されるということになる危険性は非常に高いのではないかなと私は懸念しております。  これから私としては運用の現場の当事者となっていくと思いますので、刑事裁判でそのような場面に遭遇した場合には、きちんと目的と故意を区別していかないといけないんだよということをしっかりと説明していくように、私自身努めたいと思っております。
  63. 串田誠一

    ○串田委員 そこの部分をもう少し、もう一歩ちょっとお聞きしたいんですが、今、橋爪参考人の例というのは非常によくわかったんですけれども、逆に、どうしても前方に入らなければいけないというのは故意があると思うんですが、そうした場合には、通行の妨害にはなるだろうという認識もあると思うんですよ。そうすると、この妨害というのは、悪意というか、相手方に対して不要な行為を行うという主観的な部分がこの妨害という言葉の中に入っているという理解をしないと、物理的にはやはり妨害になるのではないかと私は思うんですが、この点は、橋爪参考人久保参考人解釈論として問題がないのか、もう一度お聞きしたいと思います。
  64. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答え申し上げます。  確かにおっしゃるとおりでございまして、何か理由があって急いでいるというケースでも、強引な車線変更をした場合につきまして、それが危険運転に該当する場合はあると思うんですね。つまり、正当な目的と妨害目的が併存する場合は理論的にあり得るわけでありますので、やはり、強引な運転行為が妨害になり得ることを承知した上でそれをやっている場合につきましては、それが危険運転を構成する場合はあると考えます。  ただ、実際問題、先ほどから議論がございますけれども、目的というのは主観的要件でございますけれども、客観的な事実関係からそれは推認するわけです。そういった意味では、何かここで停止をしたり車線変更する理由がある場合というのは、そういった正当な理由があることからは目的を認定することが困難になってまいります。そういった意味で、事実上明らかに合理的ではないような運転行為があった場合に限って、実務的には目的要件が認定できるという関係に立ちますので、事実上、正当な運転行為でありながら目的要件が認定できるケースというのは、実際にはほとんど生じないというふうに考えておりました。
  65. 久保有希子

    久保参考人 これも、実際に刑事裁判になったときに私がどういうふうに説明するかということになるかと思うんですけれども、ただ、この目的要件というものが問題となった場合には、私であれば、危険運転致死傷罪というものが創設された経緯、特に危険な、悪質な行為類型化したものなんだから、そこについてはしっかりと限定的に解釈をされなければならないということを主張するだろうと、私は、弁護士としての立場としてはそうなるだろうと思います。  その中で、先ほど橋爪参考人からも意見のありました、例えば、客観的な事実関係としてこういう正当な目的があったんだ、そういった目的がある場合には、ここの目的は否定されなければならないんだというような主張をしていくのではないかなと考えております。
  66. 串田誠一

    ○串田委員 私自身は、運営の方法の中では、例えば、ドライブレコーダーとかが今非常に普及していますので、反復継続するような行為というような形で実務的には運営していくのかな、一回こっきりの中で主観的に、明確にしていくというのはなかなか難しいのかなというのは、ちょっとそこら辺を感じているわけでございますが。  次に、久保参考人にお聞きをしたいんですけれども、先ほどお話の中で、危険の現実化というのが拡大解釈をされていくという話がありまして、恐らくこれは、今回の法律の中の一番前にある、よってという因果関係の部分も非常に想定しておっしゃられたんじゃないかなと思うんですけれども、東名の事件も含めて、今回、五号、六号が入りましたが、よってという表現自体は変わらないわけですので、因果関係自体が解決したわけでは私はないんだろうなと。  普通、因果関係というのは、相当因果関係説というのがあって、一般人が認識し得るというのが加わるわけですけれども、ここの部分が拡大していくというのを恐らく久保参考人は心配していらっしゃるんじゃないかなと思うんですが、その点についてもう少し何か言及していただければと思います。
  67. 久保有希子

    久保参考人 おっしゃるとおりで、今回の改正がなされたとしても、結局、因果関係の問題については残り続けることになります。  個別の事件には立ち入りませんが、私が担当している事件でも、因果関係がすごく拡大解釈されていると感じている事件はありますし、それについて、それは危険だという主張をしている事件もございます。  今回の改正とは別として、因果関係についての拡大解釈がどんどん進んでいくということについては、現場に携わる者として、危険だという警鐘をしていかなければいけないなと考えております。
  68. 串田誠一

    ○串田委員 最後に三人の参考人にお聞きをしたいんですが、東名の事件なんかを考えると、被害者からすれば、これはもう殺人事件なんだ、殺人なんだ、東名高速道路でこんなことをしたら当然、大事故が起きても仕方ないというのは想定できるじゃないか、いわゆる未必の故意があるから殺人罪じゃないかというような思いというのは、私は被害者の中にはあるのかなと。よく、ほかの事件でも、これはもう殺人じゃないかという、過失犯に近いようなものがあると思うんですが、その点について、橋爪参考人久保参考人、そして最後和氣参考人の方から、未必の故意の認定が十分あり得るのかどうかということについての検討が行われているのか、最後に三人の方にお聞きしたいと思います。
  69. 橋爪隆

    橋爪参考人 お答えを申し上げます。  確かに、事案によりましては殺意を認定できるケースはあると思うんですね。実際、大阪の事件では殺意を認定した事件があると承知しております。  ただ、やはり、殺意といいましても、客観的な事実関係から推認する必要がありますので、相当悪質な運転行為であり、かつ、例えばドライブレコーダー等から具体的な対応が明らかになり、あるいは発言等が明らかにならないと、なかなか実務において殺意を認定することは困難であるというふうに考えておりました。
  70. 久保有希子

    久保参考人 私も、事案によっては殺人罪というものが適用される事案も出てくる可能性はあると考えております。  東名の高速道路事件についてそれが適用されるかどうかは別として、一市民としては、やはりあの事件というのは非常に危険な運転行為であるということは間違いないと思っております。  今後、あの事件と同じような事件であれ、ほかのもっと悪質な事件であれ、それが未必の殺意というものが認定されるようなケースであれば、殺人罪というのが検討されるというのは当然のことだと思います。
  71. 和氣みち子

    和氣参考人 冒頭で私の方から、私の事例に関して裁判官から、未必の故意の状態だったというふうに、私たち裁判の中で言われましたけれども、当初、私はその未必の殺意とかそういう言葉自体がわからずに、後になって記者の方から説明を受けたんですけれども、被害者からしますと、本当に、当時は業務過失しかありませんでしたので、それが未必の故意だとか断言されても、そのときの法律でしか裁かれないわけですね。そこの乖離している部分が非常に歯がゆかった覚えがございます。  ですので、東名高速道路の方々、御遺族たちもそういう思いをされているのではないかと非常にその辺を心配しているところです。
  72. 串田誠一

    ○串田委員 時間になりました。  大変参考になりました。午後に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。
  73. 松島みどり

    松島委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたします。  この際、参考人の皆さんに一言御礼を申し上げます。  本当に、参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時二十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  74. 松島みどり

    松島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、内閣提出自動車運転により人を死傷させる行為等処罰に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官小柳誠二さん、警察庁長官官房審議官高田陽介さん、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長竹村晃一さん、法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾さん、法務省民事局長小出邦夫さん、法務省刑事局長川原隆司さん、法務省人権擁護局長菊池浩さん、出入国在留管理庁次長高嶋智光さん、国税庁課税部長重藤哲郎さん、厚生労働省大臣官房総括審議官田中誠二さん、中小企業庁長官官房中小企業政策統括調整官太田雄彦さん及び国土交通省自動車局次長江坂行弘さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 松島みどり

    松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  76. 松島みどり

    松島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。吉川赳さん。
  77. 吉川赳

    ○吉川(赳)委員 ありがとうございます。  午前中の参考人質疑に引き続いての質疑ということであります。よろしくお願いいたします。  まず、ちょっと冒頭なんですが、午前中の参考人への質疑で、この法律の概要、たてつけ、こういったものが見えてきたかとは思うんですが、ちょっとイメージのお話をさせていただきたいなと思います。  私も、今回この質問の機会をいただくまでそういうイメージを持っていたんですが、ニュースで報じられるようなあおり運転による重大な事故、これで皆さんイメージされるのが、乗用車と乗用車、さらには、大型トラックに乗用車があおられる。午前中の参考人でも、飲酒運転事案においてトラックが引き起こしてしまったというようなお話があったわけでありますが、ただ、これは地元の運送業の皆さんに今回のこの法案についてお伺いすると、高速道路上でトラックが乗用車にあおられるというケース、これが実際多いようであります。  というのも、大型トラックというのは、高速道路上でスピードのリミッターもついておりますし、乗用車より車幅もとるわけであります。さらには、加速の問題。これも乗用車より遅いわけであって、結果的に、トラックが乗用車に後ろからあおられて、そしてその乗用車がトラックを追い越して、前で急に減速をする、そういった場合において、トラックが急ブレーキを踏むわけなんですけれども、これは制動距離が普通の乗用車よりもありますから、結果的にトラックがぶつかってしまったとする。そうした場合に、本来このあおり運転加害者であった乗用車の、前に割り込んだ方がけがをして、トラックは高さがあったりするので、そのぶつけてしまった、本来あおられたトラック運転手さんはけがをしない、こういったケースも、実際これはかなりあるようなんですね。  ちょっと法案から離れてしまうわけなんですけれども、これを、民事的な責任の過失の割合、こういったものに置きかえると極めて複雑なことになって、本来被害者だったトラック運転手さんがけがをさせてしまったという関係で、民事的な責任においては必ずしも責任を負わないということではないといったような事案も多く存在するようであります。  ですので、今回の事案なんですけれども、やはり報道に載るケースというのは、非常に痛ましい事故というのは、乗用車と乗用車ですとか、非常に車体が小さい方の乗用車が被害者になるケースというものが多く報じられるわけでありますが、実際は、今回のこの法案に関して、さまざまなケースがあるんだということをぜひ委員の皆様方にも御認識をいただいた上で、質問に入らせていただきたいなと思います。  まず、午前中の質疑でも見えてきたところではありますが、提出側である法務省に関して、今回の法律の立法の意義、そして、さらにはこの構成要件について、改めてお伺いしたいと思います。
  78. 宮崎政久

    宮崎大臣政務官 午前中の質疑でも出ました、平成二十九年六月五日、お二人の方がお亡くなりになりましたいわゆるあおり運転による悲惨な死傷事故、この件は、吉川先生の御地元の静岡五区の御殿場市も通っている東名高速道路で起きた事故でございまして、大変痛ましいことだと思っております。  また、その後、自衛のためのドライブレコーダーを装着する人がふえたというお話もありました。事件の翌年には売上げも二倍増になっているというような話もあったわけでございまして、こういった、近時、いわゆるあおり運転による悲惨な死傷事故等が少なからず発生しておりまして、この種事犯に対する厳正な対処を求める国民の皆様の声も高まっているというところでございます。  現行の自動車運転により人を死傷させる行為等処罰に関する法律第二条第四号の危険運転致死傷罪につきましては、例えば、加害者が通行妨害目的で、走行中の被害者車両の前方で自車を停止し、被害者車両が追突するなどして人を死傷させたとしても、著しく接近をしたときの加害者車両速度が、重大な交通の危険を生じさせる速度等の要件を満たさなければ、同法に掲げる行為には該当しないということになります。  しかしながら、こうした行為は近時の事案でも見られるところでございまして、被害者車両の走行速度や周囲の交通状況などによっては、重大な死傷事故につながる危険性類型的に高く、現行の危険運転致死傷罪規定されている行為と同等の当罰性を有しているところでございます。  そこで、罪刑法定主義に基づく明確性の原則にも配慮をいたしまして、こうした行為実行行為として捉えて、よって人を死傷させた場合にも危険運転致死傷罪対象とする必要があると考えて今般の法整備を行うとしたことが、この法案の求めている背景でございます。  国民の皆様の声に応えて、悪質、危険なあおり運転による死傷事犯に厳正に対処ができるように、一日も早く本法律案成立をお願いしているところでございます。  また、構成要件についての御質問もございました。このたび改正しようとしております危険運転致死傷罪は、各号に掲げる運転行為の結果人が死傷する場合の処罰を定めるものでありまして、その対象として追加をいたしますのは、車の通行を妨害する目的で、走行中の車、これは重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限ります、の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車運転する行為、また、高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車運転することにより、走行中の自動車停止又は徐行させる行為でございます。そして、これらの運転行為によって、よって人を負傷させた者については十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処することとしております。  これらの運転行為を行ったものの、人の死傷の結果が生じなかった場合には、危険運転致死傷罪対象とはならず、今回に提出をされました道路交通法一部改正法案において新設することとされている妨害運転罪などに当たる場合には、それらの罪によって処罰をされるということを予定しているものでございます。
  79. 吉川赳

    ○吉川(赳)委員 非常にわかりやすい答弁でありまして、ありがとうございます。  結果としては、これは致死若しくは致傷が生じた場合に今回の罪が適用されるということでありますが、いずれの形にせよ、これを立証するのに、午前中の審議でも出ていたんですけれども、ドライブレコーダーの搭載というものはかなり大きな役割を果たしてくるかと思うんですけれども、お越しいただいている国交省にお伺いしたいんですが、このドライブレコーダー、現在の搭載割合等がわかれば教えていただきたいなと思います。
  80. 江坂行弘

    ○江坂政府参考人 お答えいたします。  国土交通省では、毎年度、国土交通行政に関する事項につきまして、広く国民一般の方々からインターネットモニターを約千人公募いたしまして、関連事項のアンケート調査を行っておりますけれども、昨年十一月にはドライブレコーダーについてのアンケート調査を行いました。  このアンケート調査におきまして、自動車を保有されていると回答した約七百人の方々を対象ドライブレコーダー搭載の有無をお尋ねしましたところ、約四五%のユーザーの方から搭載をしているという回答があったところでございます。
  81. 吉川赳

    ○吉川(赳)委員 ぜひ、このドライブレコーダーの搭載に関して、今後、何か推進等もあわせて行っていただきたいなと思います。最近、走っていると、後ろに、ドライブレコーダーを搭載していますよというようなシールを張っているような車も見かけるわけでありますが、ああいったことも一つの抑止効果というようなことにつながってくるかと思います。  そして、今回、このあおり運転厳罰化とも言えるわけでありますが、道路交通関係でいいますと、平成十四年の六月施行ということで、飲酒運転厳罰化をされているわけであります。  これは余りいいことではないんですけれども、私より少し上の世代の方に聞くと、昔は結構飲酒運転したよねという方が、実際これは多くいらっしゃるわけでありますけれども、ただ一方で、現在、昨今を見てみますと、飲酒運転というのは、もうこれは絶対やってはいけないんだ、こういった社会通念が定着をしつつあるわけであります。  この飲酒運転の罰則の強化以降、飲酒運転での事故の推移、これを、警察ですか、教えていただきたいと思います。本日、資料でも配付をさせていただいておりますが。
  82. 高田陽介

    ○高田政府参考人 お答え申し上げます。  今委員より御指摘のありました罰則の引上げということは累次にわたって行われておりますが、その中で平成十四年に罰則の引上げも行われているところでございますけれども、その際のデータを申し上げますと、飲酒運転の、その平成十四年の罰則の引上げ等が行われた前年の平成十三年につきましては二万五千四百件、前年比でいきますと約三・三%の減少でございましたが、その罰則の引上げ等が行われました翌年の平成十五年につきましては一万六千三百七十六件で、前年比でいきますと一九・五%の減少ということでございまして、この十三年と十五年を比較いたしますと約三五・五%の減少となったところでございます。
  83. 吉川赳

    ○吉川(赳)委員 この数字を見ると、飲酒運転というものを厳罰化することにより一定の抑止効果が出ているというふうに見てとれるわけでありますが、ただ、私、午前中の質疑を聞いていてもそうなんですけれども、俗に言うと目的刑論ですか、一般予防論として、厳罰化をすることによって、それだけであおり運転というものが抑制できるかということを我々はしっかりと考えていかなければならないと思うんですね。  午前中の串田委員の質問にもありましたが、未必の故意が認定できるのではないかという質問もありました。確かに私もそのとおりかと思うんですが、ただ、あおり運転という行為自体が故意なのか過失なのかととったときに、例えば、朝起きて、きょうあおり運転をするぞという人はなかなかいないわけなんですよね。道路上の交通トラブルによって、ついかっとなってしまってあおり運転をやってしまうということです。  ですから、これは長期的に見れば、いわば故意か過失かというよりは、計画的な犯行というものはないわけであります。一般予防論として、刑を制定する場合に、計画性を抑止するということがよく言われるんですね。何か犯罪を計画している人が、これをやったら罪になるからやめようかな、こういう効果が期待できるというんですね。ただ、あおり運転というのは、これは計画的な犯行というのはほとんどありませんので、そうなったときに、本当に厳罰化をしただけであおり運転というものがなくなるかというのを我々は考えていかなければならないのだと思います。  その立場に立ったとき、先ほど、例えばドライブレコーダーであるとか、例えばトラックの話もさせていただきました。こういったことが重要になってくるんだと思うんですね。そもそも、一般のドライバーの皆さんが、トラックというのは、リミッターがついていたり、制動距離が出たりだとか、加速が遅いという認識を持ってもらうだとか、さらにはドライブレコーダーを普及させるということが私は重要になってくると思います。  そして、さらには、運転免許の付与ということに関しても、例えば、あおり運転は、やはり、言ってしまえば、この罪を犯す方は性格的なものが私は結構あると思うんですね。例えば、免許を取るときに、若しくは更新するときに、視力というのをはかるわけですよね。視力が一定に満たない方はコンタクトレンズ、眼鏡ということで、運転免許というものを取得できるわけでありますけれども、それと同じような取組というのも必要になってくるのではないかと私は思います。  きょう、配付させていただいているんですが、事前に警察のところに聞いたところ、私も免許を取ったときにやったはずなんですけれども余り記憶にないくらいなんですけれども、一応、自動車教習所でこのような運転適性検査というものを実施をしているようであります。その個人の性格であるとか、これで引き出された注意点があれば教官から指導をして、運転免許を取るというような作業に入っていくということでありますけれども、これに関して、ちょっと警察の方で簡単に説明をしていただけたらと思います。
  84. 高田陽介

    ○高田政府参考人 お答え申し上げます。  今委員からお話のございましたとおりでございまして、あおり運転を含む違法な運転を予防する観点から、運転免許の付与等に当たりまして、御自分の性格的な特性、いわゆる運転適性というものでございますが、そういうことを自覚していただくということが重要であるということでございまして、そのような考えに基づきまして、警察庁におきましては、指定自動車教習所における教習に関しまして、入所時の運転適性の検査ということを行うとともに、その結果を踏まえた教習の実施等を指示しているというところでございます。  引き続き、運転適性の自覚等に基づく安全運転や、思いやりを持った運転の普及啓発の促進に努めてまいりたいと考えております。
  85. 吉川赳

    ○吉川(赳)委員 ありがとうございます。  さらに、先ほど答弁でもあったように、今回、致死、致傷に至らなかった場合においては、運転妨害罪という、新設される法律において処罰があるということでございました。  例えば、あおり運転をしてしまって、幸いにも致死、致傷に至らなかった、その場合において、運転妨害罪で何らかの罰があり、そして免許を更新する、こういった際においては、例えば免許の更新ですとか事故後の講習等でこういったところにしっかり力を入れていただいて、あなたはあおり運転をしやすい傾向にあるからぜひ注意をするようにというような注意喚起、こういったものも、ぜひ今後積極的に取り入れていただきたいなとお願いをする次第であります。  このように、今回、この立法というものは極めて重要なわけでありますが、同時に、先ほど飲酒運転の事故の推移というものも御説明いただいたわけでありますけれども、飲酒運転というのは、厳罰化以降、社会通念として本当にやってはいけないことなんだよということがもう定着しているんだと思います。今回のあおり運転も、これは同じように、社会通念としてあおり運転というのはいけないんだよということを私はやっていかなければならないと思うんですね。  というのも、今、国交省が高速道路を段階的に百二十キロまで制限速度を上げるというふうなことを考えているようでありますけれども、極端なことを言えば、我が国はアウトバーンじゃないわけですから、自動車に全てリミッターをつけてしまえば、より安全性というものは高まるわけなんですよ。ただ、そういったことをしないかわりに立法をして、さらには、社会通念として、あおり運転が引き起こすさまざまな悲劇、悲惨な事故というものを防ぐためにも、ぜひ、立法した後は法務省の手を離れるかもしれませんが、警察、さらには国交省にそういった取組をお願いしたいと思います。  ですので、時間も間もなく参りますので、最後の質問といたしまして、警察、国交省ともに、立法化された後、あおり運転というものを防止するための取組、警察でしたら例えば啓発活動であるとか、国交省であれば高速道路等の使用について、何か、あおり運転を今後抑制していくための取組、考え得るものがあればお答えいただきたいと思います。
  86. 高田陽介

    ○高田政府参考人 お答え申し上げます。  今お話ございましたように、あおり運転というものは極めて悪質、危険な行為でありまして、これを抑止することが重要でございます。  今委員よりお話ありましたように、警察庁におきまして、まず、あおり運転を効果的に抑止するために、他の車両等の通行を妨害する目的で一定の違反行為を行った者に関する罰則の創設等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律案を今国会に提出しているところでございます。成立をいただきました暁には、そういった周知に努めてまいります。  また、そもそも、こういうあおり運転というものが非常に悪質、危険なものである、このような行為に対しては厳正な取締りが行われるということにつきまして周知をしますとともに、思いやり、譲り合いの気持ちを持った運転必要性等について啓発をしていく必要があるというふうに考えてございます。こうしたことにつきまして、更新時講習等の機会あるいは都道府県警察のウエブサイト、SNS等を活用しながら広報啓発に努めて、あおり運転の抑止を図ってまいります。  また、ドライブレコーダー、先ほどお話が出ておりますが、これは運転者自身交通安全意識の向上にもつながりますので、その効果的な活用等についても広報啓発を実施してまいりたいと考えております。
  87. 江坂行弘

    ○江坂政府参考人 国土交通省におきましても、高速道路会社自動車ディーラーなどを通じて、サービスエリアなどにおけるあおり運転防止を呼びかけるポスターの掲示でございますとか、あと、小冊子の配布などによります啓発活動を引き続き実施してまいります。  今後とも、関係省庁や関係団体などと連携しながら、ドライブレコーダーの装備促進に取り組むとともに、どのような防止対策が効果的かにつきましても引き続き検討してまいりたいと考えております。
  88. 吉川赳

    ○吉川(赳)委員 罰することも必要でありますが、やはり、防止をする、悲惨な事故を起こさない、その抑止に努めるということが私はそれ以前に重要だと思いますので、ぜひ、各省庁、全力で取り組んでいただきたいと思います。  最後に、コロナウイルスへの緊急事態宣言が解除されたわけでありますが、緊急事態宣言下では、交通量が減少したことにより、高速道路で思わぬスピード違反であるとか思わぬ事故、こういったものも多発していたようであります。そんな中で、管理者である国交省また取締りの警察、大変御苦労があったかと思いますが、そのことに敬意を申し上げて、本日の質問としたく思います。  本日は、ありがとうございました。
  89. 松島みどり

    松島委員長 次に、浜地雅一さん。
  90. 浜地雅一

    ○浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。  午前中の参考人質疑に続いて、質問をさせていただきます。  まず冒頭、森法務大臣にお聞きをしますが、今、国民の皆さんは、このコロナ禍において、この国会審議、どういう法案が、その必要性においてなぜやるのかということに非常に注目が集まっております。基本的には、国民の皆様方のお考えの中には、コロナ対策以外は、なぜその法案をやるのかということの説明がないと納得いかないといったような声も聞かれるわけでございます。  そこで、国民の皆様方にわかるように、なぜこのコロナ禍で、この時期にこの本法案を審議するのか、森法務大臣にお答えいただきたいと思います。
  91. 森まさこ

    ○森国務大臣 まず、新型コロナウイルス感染症対策については、政府を挙げて取り組んでいるところでございます。  一方、近時、いわゆるあおり運転による悲惨な死傷事犯が少なからず発生しており、この種事犯に対して厳正な対処を求める国民の声も高まっております。  現行の、自動車運転により人を死傷させる行為等処罰に関する法律第二条第四号の危険運転致死傷罪については、例えば、加害者が、通行妨害目的で走行中の被害者車両の前方で自車を停止し、被害者車両衝突するなどして人を死傷させたとしても、著しく接近したときの加害者車両速度が重大な交通の危険を生じさせる速度との要件を満たさなければ、同号に掲げる行為には該当しないことになります。しかしながら、こうした行為は近時の事案でも見られるところであり、被害者車両の走行速度や周囲の交通状況等によっては重大な死傷事故につながる危険性類型的に高く、現行の危険運転致死傷罪規定される行為と同等の当罰性を有するものと考えられます。  そこで、こうした行為実行行為として捉え、よって人を死傷させた場合も危険運転致死傷罪対象とする必要があると考え、今般の法整備を行うこととしたものであります。  私が大臣に就任してから、国民の皆様のお声に応えて、急いで法制審の方で、諮問し、審議し、結論を出していただいたものでございます。コロナ禍ではありますが、この法案を一刻も早く成立をさせるということ、それが大切であると思います。  午前中も、被害者支援ネットワーク理事の方からのお話もありましたように、この一刻も早い成立施行によってこのような重大な死傷事故を少なくしていくということが、今回の法案を提出した目的でございます。
  92. 浜地雅一

    ○浜地委員 しっかり理解をさせていただきました。  特に、この緊急事態宣言が解除されて、これから観光に出られる方々も多くなると思います。ですので、まさに高速道路での事故と、またそれに付随して、あおり行為というものも生じる可能性もあるわけでございます。  ちなみに、この法案の附則には、施行の日は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行されますので、そういう意味では、速やかな施行が予定されている法案でございますので、まさに私自身も、このコロナ禍収束後の交通事情を考えると、やはりこの法案は一刻も早く成立をさせるべきだというふうに思うところでございます。  先ほど大臣の答弁でも出ましたけれども、実行行為の問題がございました。今回の二条の五号、六号は、主に速度を出さずに停止する行為処罰対象にするわけでございますが、ただ、東名高速事件のときには、停止行為ということで、速度がなかったということで、なかなか難しい認定をしたわけでございます。その直前行為を捉えて、そこから結果にわたる因果関係論で認定をしたところでございます。  それと、もう一つ指摘があるのは、この四号の、重大な交通の危険を生じさせる速度というふうにございますので、これは、場合によっては、低速若しくはゼロキロでも当たるのではないかという指摘もあるところでございます。  そこで、この二つの問題でございますが、東名高速のように、今回、因果関係論を適用すれば五号、六号は必要なかったのではないか。もう一つ、四号の、重大な交通の危険を生じさせる速度と書いてございますが、これを低速若しくはゼロというふうに読み込むことができれば、五号、六号の改正は必要ないのではないかという声もございますが、その辺について、法務省に明快なお答えをいただきたいと思います。
  93. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  まず、因果関係の点でございます。  御指摘の事件の控訴審判決は、自動車運転死傷処罰法二条四号に該当する運転行為、すなわち、通行妨害目的で重大な交通の危険を生じさせる速度被害者車両に著しく接近する運転行為があったことを認定した上で、その後に被害者車両停止させたことは、結果発生に至るまでの介在事情の一つであり、被害者死傷結果は当該行為危険性が現実化したものであるから、因果関係を肯定して危険運転致死傷罪成立を認めたものと承知しております。  しかしながら、同号において、加害者車両が重大な交通の危険を生じさせる速度で走行して著しく接近することが要件とされているため、いわゆるあおり運転による死傷事犯でありましても、これらの要件を満たさなければ、同号の運転行為に該当しないこととなります。そのため、例えば、加害者車両が通行妨害目的被害者車両の前方で停止し、被害者車両が追突するなどして人が死傷した場合で、著しく接近したときの加害者車両速度が重大な交通の危険を生じさせる速度との要件を満たさない場合などについては、御指摘の控訴審判決の考え方を前提としても、現行法のもとでは、危険運転致死傷罪として処罰することができないものと考えております。  そこで、こうした行為実行行為として捉え、よって人を死傷させた場合にも危険運転致死傷罪対象とするため、今般の法整備が必要であると考えたものであります。  また、速度要件でございます。現行の自動車運転死傷処罰法二条四号の重大な交通の危険を生じさせる速度とは、妨害目的で特定の相手方に著しく接近した場合に、自車が相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度、あるいは、相手方の動作に即応するなどして、そのような大きな事故になることを回避することが困難であると一般的に認められる速度を意味するところでございます。  実務もこの解釈前提にしているものと考えられるところ、先ほどの控訴審判決におきましては、立法趣旨を踏まえると、速度要件を満たす下限を具体的な数値で一般的に画することは困難であるとしても、速度がゼロとなる直前停止行為類型的に該当しないと判示し、重大な交通の危険を生じさせる速度には下限があり、停止はこれに当たらないとしております。  このような考え方を前提といたしますと、重大な交通の危険を生じさせる速度には、一定速度以下の低速度の走行や停止させることは含まれないこととなるため、例えば、加害者車両が通行妨害目的被害者車両に著しく接近した場合において、その際の速度が同号の罪の成立に必要とされる一定速度以下の低速度であったり停止したりしたときは、同号の実行行為である運転行為に該当せず、事案の実態に即した対処をすることができないことになります。  したがいまして、今回のような法整備が必要であると考えているところでございます。
  94. 浜地雅一

    ○浜地委員 詳しい説明、ありがとうございました。私もその考えでございますけれども、改めて、この法務委員会での質疑という場で法務省の考えを聞いたところでございます。  次に、先ほども私、参考人質疑で聞いた問題意識でございます。  今回、道路交通法、警察庁所管の道路交通法のあおり運転罪をこのたび創設することになったわけでございます。あおり運転を行っても罪に問われるということは非常に画期的でございますけれども、ただ、死傷の結果が生じた場合には、この危険運転罪の適用があるのではないかというふうに考えたところでございます。  しかし、先ほどの橋爪参考人が言われておりましたけれども、この危険運転、今回の法務省の法案の方の実行行為は、生命身体に対する危険の高い類型に限定しているという、そういったお話がございました。  しかし、道交法の百十七条の二の二、いわゆるあおり運転罪は、先ほどの参考人質疑でも申し上げましたが、車両等の灯火、いわゆるハイビームを多用する、若しくは警音器の使用、クラクションというものも、あおり運転では処罰をするというふうになっております。かつ、ただ単にクラクションを鳴らすとか、またハイビームをするのではなくて、そういった行為交通の危険を生じさせるおそれのある方法による場合を処罰するわけでございますので、そのように限定をかけているわけでございます。  そうしますと、この危険運転致死傷罪においても、やはり、危険行為実行行為として、生命身体に対する危険性の高い行為類型に限定しているわけでございますけれども、道交法のあおり運転罪においても非常に危険性を生じさせる行為に当たるハイビームやクラクションの多用を規定しているわけでございますので、私は、個人的には、そういった行為も、今回の二条の四号になると思うのでございますけれども、そういった検討をすべきだったかと思っております。  先ほどの参考人の答弁では、検討したけれどもということで、検討項目に挙がったようでございますが、改めて法務省に、こういったハイビームやクラクションを多用する行為をなぜ今回危険運転、主に二条四号に当たる場合だと思いますけれども、これを盛り込まなかったのか、明快な答弁をいただきたいと思います。
  95. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  危険運転致死傷罪は、故意に自動車の危険な運転行為を行い、その結果人を死傷させた者を、その行為の実質的危険性に照らし、暴行により人を死傷させた者に準じて処罰しようとするものであり、暴行の結果的加重犯としての傷害罪傷害致死罪に類似した犯罪類型でございます。  いわゆるあおり運転の態様としましては、今委員が御指摘されましたクラクションやハイビームが用いられることはあり得るものの、それ自体は危険運転致死傷罪処罰対象とする運転行為には当たらない上、クラクションやハイビームは物理的な接近を伴うものではなく、これらの行為危険運転致死傷罪対象とすることは現行の同罪の考え方と整合せず、また、暴行に当たらない脅迫による致死傷という犯罪類型を創設することになるという点で、刑法の考え方との整合性にも疑義があるということから、今般の法整備としては対象としていないものでもあります。
  96. 浜地雅一

    ○浜地委員 局長の答弁でよくわかりました。もともとの犯罪類型として暴行や傷害に対するものを規定しているのが、自動車運転における危険を規定しているのが危険運転致死傷罪だということでございます。  ただ、実際には、恐らく、著しく危険な方法による運転でございますので、例えば非常に急接近をしたりとか、又は急に割り込みをして、かつ、そのときにハイビームをしたり、またクラクションを鳴らすという行為、これ自体は処罰対象にならないんですが、行為態様の一つとして、当然、接近があれば、その中において、クラクションやハイビームということの行為も恐らくさまざまな量刑の中にも盛り込まれるんだろうというふうに思っておりますので、ぜひ、先ほど申し上げた問題意識も含めて、運用に生かしていただければというふうに思うところでございます。  最後の項目になりますけれども、午前中の参考人質疑でも、若干、この妨害目的というところが非常にしっかりと運用によって厳格に運用されなければ、なかなか広がってしまうのではないかというような懸念もあったところでございます。  そこで、まず端的に、この危険運転致死傷罪における妨害目的というのは具体的にはどのような目的を指すのか、法務省に簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  97. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  御指摘の通行を妨害する目的とは、相手方に自車との衝突を避けるために急な回避措置をとらせるなど、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することをいうものでございまして、これらについての未必的な認識、認容があるだけでは足りないと考えております。
  98. 浜地雅一

    ○浜地委員 そうですね。ちょっと余り細かく言われると。先ほどの参考人の答弁は、橋爪委員は法制審の先生なんですけれども、具体的と言われたのか積極的と言われたのか、そういった認識までは必要ではないのではないかというふうに私は捉えたんですけれども、そのような認識でいいですか。  要は、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することを目的というふうに捉えられましたけれども、そこをもう一度ちょっと答弁していただいていいですか。済みません、私も、朝の議事録がまだでき上がっていないので、ちょっと今は正確性に欠けますけれども。
  99. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  先ほど御答弁申し上げましたように、相手方の自由かつ安全な通行を妨げること、これにつきましては、積極的に意図することが必要でございます。  恐らく、午前中の橋爪参考人のお答えは、その意図、積極的な意図という状態は必要であるけれども、特定の車、その意図の向けられた特定の車の通行を妨害する意図までは必要でない、そのようなことを言った趣旨であろうと思います。
  100. 浜地雅一

    ○浜地委員 済みません。私も、そうであると今改めて感じたところでございます。  そこで、そうはいいましても、先ほど参考人の皆様方から、理屈の上では、なかなか、妨害目的というのは当てはまり得るということですので、だから今後の運用が大事なんだということがございました。  そこで、これはまた具体的なケースを申し上げるとなかなか当てはめは難しいんですが、以下の三つのケースについては、一般論として妨害目的が認められ得るのかということを最後、質問したいと思います。  一つ目が、被害車両にも致死傷の結果が生じましたが、その後、第三者車両が玉突きをした場合が考えられます。もう一つは、積極的に意図をした、被害車両は実は危険を回避した、しかし、その直後に走ってきた第三者車両が追突をするケースもあろうかと思っております。もう一つ、最後に、これも被害車両は危険を回避しましたが、しばらくたってから第三者車両が追突をする、高速道路ではそういったことが起き得ると思いますが、この三つのケースについて。  いわゆる被害車両に危険は生じました、しかし第三者車両が玉突きをした場合、被害車両は危険を回避しましたが直後の第三者車両が追突した場合、被害車両は同じように危険を回避しましたがしばらくたって第三者車両が追突した場合に妨害目的が認定できるか。一般論で結構ですので、最後、お答えいただきたいと思います。
  101. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  まず、通行妨害目的との関係でございますが、先ほど来申し上げておりますように積極的な意図が必要ですので、まずその積極的な意図を有する目的があるということが大前提となります。  その上で申し上げますと、特定の車の通行を妨害する目的、すなわち、その目的が向いている対象が特定の車である必要はございません。したがいまして、いずれのケースにおきましても、通行妨害目的があるならば、積極的に自由かつ安全な車の進行を妨げるという目的があれば、これは通行妨害目的があることになります。  あとは、その余の要件との関係でございますが、一のケースは、運転行為死傷結果との間に因果関係が認められれば、今回の改正法の五号の罪が成立いたします。二つ目のケースも同様でございます。  問題は三つ目のケースでございます。しばらくたってからぶつかっている、すなわち、この犯人の主観においては、妨害してやろうと思っていたその特定の車は衝突を回避したんですが、後ろから来た第三者車両が更に玉突きをして、第三者車両に乗っている人が死傷したという場合でございます。  先ほど来申し上げておりますように、積極的な意図はあり、その目的の対象は特定の車である必要はありませんので通行妨害目的はあるのですが、その三つ目の事例になりますと、そもそも、しばらくしてから追突しているということですので、第三者車両は、加害者による当該運転行為の時点では加害車両から離れた地点を走行しているというふうに考えられますので、実行行為である著しく接近することとなる方法との要件を満たさない、あるいは、場合によっては、運転行為死傷結果との間の因果関係が欠けるということで、五号の罪は成立しないこととなると考えられます。
  102. 浜地雅一

    ○浜地委員 私は具体的にイメージできました。  先ほどもございましたとおり、余り要件が広過ぎて、そういった運用にならないように、これから法律成立をしましたら、運用のやり方も含めてしっかりと検討をいただきたいというふうに思います。  以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  103. 松島みどり

    松島委員長 次に、黒岩宇洋さん。
  104. 黒岩宇洋

    黒岩委員 立国社の黒岩宇洋でございます。  きょうは、自動車運転処罰法の議論ですけれども、この後の同僚委員にこの質問は行ってもらうことにいたしまして、私は黒川検事長のかけマージャン事案について法務大臣に質問をさせていただきます。  このかけマージャン自体も、これはもう大変ゆゆしき問題ですよ。ただ、それと同時に、今現在のこの事案に対する法務省の対応、これも大問題だと思っています。  まず、大甘な調査、そして訓告という大甘な処分、さらには満額支払うという大甘な退職金。結果、身内に大甘な検察だ、こういうレッテルが国民に張られつつあるんですよね。捜査、起訴をする機関としては、国民に、身内に大甘なんて思われたら、それは機関の機能性が私は失われると思いますよ。  法務大臣に関しては、やはり黒川氏の定年延長問題で検察の信頼が大きく揺らぎ、そして今回の当事者である黒川氏のかけマージャンで検察の信頼は著しく失墜し、そして、今申し上げたように、この対応を間違えば検察の信頼が崩壊しかねない、こういう緊張感を持って、きょうの質疑でも答弁をしていただきたいと思っております。  それでは、この調査についてですけれども、何点かだけ確認をさせていただきます。  法務大臣、この黒川氏の調査は法務事務次官が担当したということですが、どういう態様で調査が行われたのか、事情聴取が行われたのか、お答えください。
  105. 森まさこ

    ○森国務大臣 黒川氏の調査は法務省が行いました。黒川氏に対する事情聴取については、法務事務次官において行いました。令和二年五月十九日から二十一日にかけて、複数回にわたり、電話又は面談によって聴取を行ったものでございます。
  106. 黒岩宇洋

    黒岩委員 これは、指摘させてもらいますけれども、この聴取、対面よりも電話による聴取の方が長かったと。大臣、事情聴取が電話ってあり得ますか。世論調査じゃないんだから。先方の相手は寝転がっていようがたばこを吹かしていようが対応できるわけでしょう、電話ということは。こんな事情聴取って世の中にあるんですか。私は黒川さんだけだと思いますよ。当然、事務次官からすれば、もともと自分の上司だ、だから呼ぶに呼ばれなかったとすれば、このこと自体が緊張感を欠いた事情聴取であり、私は大甘な対応だと思っているんですよ。  更に聞きますけれども、この黒川氏がかけマージャンの後に乗ったハイヤー、これが、黒川氏個人用に手配されたものではない、あくまでもこの記者のために手配された、こういう事実認定を法務省の調査ではしていますよね。じゃ、この事実認定の根拠は一体何ですか。
  107. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  調査におきましては、黒川氏から事情聴取をするとともに、その時点で関係する報道機関が公表していた内容根拠としております。直接マージャンの相手方だった記者あるいはその所属する報道機関に対する聴取等を行うことは、取材活動にかかわり得ることであったため、これは控えるべきだと考えております。  したがいまして、ハイヤーに関する調査に関しましても、事実認定は基本的には黒川氏の話によっているところでございます。
  108. 黒岩宇洋

    黒岩委員 今刑事局長がおっしゃるのは、相手方には聞けなかったと。だけれども、事実認定しちゃったんでしょう。事実認定できますか。  だって、ハイヤーを頼む主体は、これは相手方の側の会社なんですから、その事情を聴取せずに事実認定してしまっていいんですか。
  109. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  今申し上げたような手法により調査したものでございまして、その調査として事実認定をしたものでございます。
  110. 黒岩宇洋

    黒岩委員 刑事局長、だから、事実認定ができたんですね、してしまったんですね。
  111. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  私どもとしては、調査結果として事実認定をしております。
  112. 黒岩宇洋

    黒岩委員 法務省の調査結果でも、そして、この本件に対する対応というところでも、相手方の新聞社の公表というものも、これは出ています。でも、そこには、一字一句、このハイヤーについては触れていませんからね。  私が申し上げたいのは、いち早く、刑事局長が、今の事実認定をもとに、便宜供与はなかったとおっしゃった。これは、便宜供与があれば、当然、国家公務員倫理規程に反する。そうなると、この後の処分に大きく関係してくるわけですよ。便宜供与も認めたら、かけマージャンとあわせて、これは当然加重されるわけですよね。  これはあえて質問しませんけれども、例えば、秘密漏えいがあったかどうか。職務上知り得た事実を、こうやって、かけマージャンとかで秘密漏えいをしたら、これは懲戒免職ですよ。だから、調査というのは、この後、処分に直結することなんですよ。調査が甘ければ処分が甘くなる、こういう大問題があるんですよ、大臣。  調査については、これはまだ、立ちどまることもできるし、引き返すこともできる。すなわち、再調査ができるわけですから、私は冒頭、再調査を改めて求めさせていただきます。  それでは、今度は、検事長の処分の甘さについて。  きのうは、この委員会で、かけマージャンないしはかけごとという同じカテゴリーの中で、自衛隊組織でのこの軽重、軽い重いということも議論されましたし、自衛隊の同じかけマージャンと比べたら、黒川さんのこの行為についての処分というのは、訓告、要するに、懲戒処分ではないわけですから、これは余りにも軽いと。  これは、別の見方で、私の方から指摘しますけれども、行った対応は違います、ただ、一般服務関係で、これは人事院の指針の中にありますが、例えば欠勤、これは、一日でも正当な理由なく欠勤した職員というのは、減給又は戒告とするですよ。懲戒処分ですよ。  では、遅刻、早退。勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。懲戒処分ですよ。黒川氏は繰り返しかけマージャンをやっていたんでしょう。一般の公務員は、繰り返し遅刻しただけで懲戒ですよ。同じ繰り返すことでも、かけマージャンの方が軽いんですか。これは、大臣、答えてもらいますからね。  三つ目、休暇の虚偽申請、病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員、すなわち、この病気休暇の虚偽申請というのは俗に言う仮病ですよ、仮病を使った職員は、減給又は戒告ですよ。  法務大臣、今言った正当な理由ない欠勤や遅刻や仮病、これよりも、検察官の繰り返すかけマージャン、これが訓告という懲戒よりも軽い処分で、これは社会通念上通用すると思いますか。
  113. 森まさこ

    ○森国務大臣 今委員の方でさまざまお示しのあった人事院の指針でございますが、勤務時間に遅刻してくる、勤務を無断で欠勤する等、職務との関連性の有無も重要な要素になってまいります。  黒川氏については監督上の措置の中で最も重い訓告としたものでございますが、法務省の調査では、黒川氏については、緊急事態宣言下であったにもかかわらず、報道関係者三名と金銭をかけたマージャンを行っていたことが認められました。このことはまことに不適切で遺憾でございます。厳正に対処すべきものと考えます。  そこで、処分において、お示しの人事院の指針や先例等を検討した結果、これらの行為が旧知の間柄の者との間で行われたこと、又はそのレート、黒川氏が事実を認めて深く反省していることなどの理由も踏まえ、検事総長において、懲戒処分ではなく監督上の措置として最も重い訓告としたものでございます。
  114. 黒岩宇洋

    黒岩委員 もう詰めませんよ。正直言ってばかばかしくて。  大臣、わかっているはずですよ。今いろいろな理由を言いましたよ、勤務上かどうかとか。そんなことじゃないでしょう。この委員会で、今失いかけている検察への信頼を取り戻す機会なんじゃないですか。だったら、私は、自分の心で考え、自分の言葉でしゃべっていただきたい、率直に。  無断欠勤や遅刻や仮病よりも常習賭博が、繰り返し行われるマージャンが、検察官のした行為が軽いなんて、国民がそんなことを許すと思えないでしょう。  私は、法をつかさどる法務省そして法務大臣がこんな愚かな判断を下したとは、心の中では思っていないんですよ。当然、人事院の規則、その中でも最も重い部類かもしれない、最低でも懲戒、そういう思いがあったのではないかと思っているんですね。これは報道によりますけれども、それを官邸がねじ曲げたのではないかと。私は、その方が自然であるし、少なくとも委員会質疑を聞いて合理的に我々は判断できる、そのように思っています。  それでは、次に、この訓告の決定経過についてお尋ねしますけれども、これは非常に関心が高まっているんですよ。  大臣は二十二日の記者会見で、内閣の上で決まったと。その後、ある意味発言を翻して、この訓告の決定をしたのは法務省、検事総長だということなんですが、お聞きしますけれども、法務省の職員の訓告等に関する訓令にもありますように、懲戒とおぼしき事案、これは国公法の八十二条の第一項各号に、すなわち懲戒処分することができるという、こういう事案が発生した場合には、当然、懲戒処分をするのかしないのか、これを先に判断することになるはずです。これは、法務省の訓令でも、第一条にそのことが定められ、処分を、訓告を行うことができる、ただし、同項に規定する懲戒処分を行うとき、行ったときは訓告は発せられないと。明らかに、訓告よりも先に当然懲戒するかしないかを決める、これが入り口ですよ。  一般の国家公務員で、懲戒権者、任命して懲戒する、これは検事長の場合は内閣ですけれども、そして措置権者、訓告という措置を行う、これは直接には検事総長。これは分かれているのは検事だけなんですよ。通常は、懲戒権者も措置権者も同じ省内で自己完結する。今申し上げた検事長のこの懲戒事案だけが、内閣と法務・検察とに機関として分かれるんですね。  そこでお聞きするんですけれども、当然、これは過去にもこういう事例はあったし、これからもあり得る。その場合、じゃ、どういった協議なり、それを定める、こういった形で両機関が意思疎通を図る、この手続は定められていますか。これは法務大臣と西村官房副長官双方にお聞きしますので。
  115. 森まさこ

    ○森国務大臣 訓告と決まるまでの経過をお聞きしているというふうに理解をいたしました。  黒川氏の処分については、法務省としては、調査結果を踏まえ、懲戒処分ではなく、監督上の措置として最も重い訓告が相当であると考えました。そこで、検事長の監督者である検事総長に対し、法務省が行った調査結果とともに、法務省としては訓告が相当と考える旨を伝え、そして、その伝えたことの結果として、検事総長から……(黒岩委員大臣、聞かれたことに答えてください。定めはあるんですか。あるかないかだけでいいですよ」と呼ぶ)定めと申しますと。(黒岩委員「両組織間の意思疎通を図るための手続を定めたものです」と呼ぶ)少々お待ちください。
  116. 松島みどり

    松島委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  117. 松島みどり

    松島委員長 速記を起こしてください。
  118. 森まさこ

    ○森国務大臣 失礼いたしました。  定めについてはないものと承知しております。
  119. 黒岩宇洋

    黒岩委員 では、副長官、ないでよろしいですね。
  120. 西村明宏

    ○西村内閣官房長官 今、内閣が任命権を有する者についての御質問だと思いますけれども、国家公務員法に基づく懲戒処分を行う場合については、通常、所属府省の長として行政事務を分担管理する国務大臣が処分案の閣議請議を行い、閣議において懲戒処分を決定するということが決められております。
  121. 黒岩宇洋

    黒岩委員 ですから、もう懲戒が事実上決まって、閣議請議をした後からの話だけをしているんですよ、副長官は。  当然、懲戒事案が起こったら、今申し上げたように事前に、今言ったように懲戒権者と措置権者が違うわけですから、そこですり合わせなきゃいけない。これは、今法務大臣がおっしゃったように、その定めはありません。この問題自体が大変私はゆゆしきものだと思っていますが。それで、法務大臣のこの間の答弁はいろいろと変わりましたが、ただ、変わらないのは、少なくとも、内閣とは全く接触していないとは言っていないんですね。先例だとかさまざま参考になる事案だとか、これについては、大臣は途中から、内閣に報告と、事務方によると内閣に説明すると、してきたと、複数回にわたって。  西村官房副長官にお聞きしますが、じゃ、内閣官房として、内閣として、誰がこの説明を聞いたんですか。
  122. 西村明宏

    ○西村内閣官房長官 黒川氏の処分に関しましては、法務省においてまず必要な調査を行った上で、法務省及び検事総長として訓告が相当であると判断し、まず決定したものと承知しております。その上で、法務省から総理や官房長官にその旨の報告がなされ、その決定に異論がない旨の回答をしたと承知しております。官邸としてはそういう承知をしております。
  123. 黒岩宇洋

    黒岩委員 法務大臣に聞きますけれども、じゃ、法務省の誰が、今言った、総理大臣と官房長官に直接説明したようですけれども、誰が説明したんですか。
  124. 森まさこ

    ○森国務大臣 法務省から内閣に対し、事務的に、先ほどの言ったような調査の経過の報告、先例の説明、処分を考える上で参考となる事情の報告を行ったのは事務次官でございます。
  125. 黒岩宇洋

    黒岩委員 だから、その事務次官が菅官房長官と安倍総理に直接報告したということでよろしいですね。今、官房副長官の答弁はそういう答弁でした。  法務大臣、それでよろしいんですね。違う、法務大臣です、法務大臣
  126. 松島みどり

    松島委員長 一応、西村副長官から、何かあるようですから。
  127. 西村明宏

    ○西村内閣官房長官 先ほどの法務省から総理や官房長官にその旨の報告がなされというところは、法務大臣から総理大臣、官房長官に報告がなされたということでございます。
  128. 黒岩宇洋

    黒岩委員 違うじゃないですか。  だから、森大臣、事務次官は誰に説明したんですか。
  129. 森まさこ

    ○森国務大臣 事務次官は、内閣の中のしかるべき担当者に報告したというふうに承知をしておりまして、それ以上は、個別の人事プロセスに関することであるため、お答えを差し控えさせていただきます。
  130. 黒岩宇洋

    黒岩委員 じゃ、副長官、そのしかるべき人事の、人事案件の担当部署、担当者はどこですか、内閣官房で。
  131. 西村明宏

    ○西村内閣官房長官 今、法務大臣がお答えさせていただいたように、この内閣と法務省の個別のやりとりにつきましては、人事のプロセスの詳細でございますので、お答えは控えさせていただきたいと思います。
  132. 黒岩宇洋

    黒岩委員 これが大問題なんですよ。  今お聞きになってわかるとおり、内閣、懲戒権者そして措置権者の法務省、当然、今言ったように、報告であり、そして説明であり、当然あり得るわけですよ。まずその一般ルールができていない。  そして、今、その窓口となる部署。これもきのう、我々ヒアリングで、内閣官房、この組織の国会担当である内閣総務官、じゃ、どこが担当だと。わからぬ、自分のところじゃないと。どこでも、わからぬ、窓口はないと。結局、誰か窓口、誰か出してくれ。出席拒否でしたよ。ブラックボックスだ、これじゃ。  それで、今、個別の話になったら、言えない。これだけ重要な、しかも、法務省は人事にかかわるからと言いましたけれども、これは辞職した人ですからね。その特定個別の人事にはもう関係ないですよ。  そして、今申し上げた、これだけ右往左往した大臣答弁、総理との答弁も違うことを。大事なこの処分案件について我々は検証できないわけですよ。そうでしょう。これ、現代の法治国家と言えるんですか。  今言った、一般ルールすらない、担当窓口も言えない。じゃ、誰か出てこいと言ったら、担当者は誰もいません。懲戒権者ですよ、内閣は。その内閣官房に担当窓口がないなんということは、こんな職務放棄みたいなことがあり得るんですか。  私は、これは、今回の個別案件でいったら、法務省から今言った官房長官、総理まで、ここの足跡を結果的に消しているんですよ、結果的に。誰がどうやって意思決定したのかを、これは消えちゃっているんですよ。うがって言えば、意図的に消しているとしか思えない。だって、今申し上げたとおり、個別的人事案件だからといって、これは何にも拒否する理由になっていない。非常に不合理ですよ。  それで、じゃ、このことにこだわって言うと、森大臣、森大臣はきのうの答弁でも、処分内容、この訓告を任命権者である内閣に報告したところ、異論がない旨の回答を得たと。この内閣というのは誰ですか。
  133. 森まさこ

    ○森国務大臣 これも、内閣のしかるべき窓口に報告をしたということでございます。それにおいて決定されたという意味でございます。
  134. 黒岩宇洋

    黒岩委員 じゃ、異論がない旨の回答、異論がないというのは一つの判断が入っていますからね。異論がないというのは誰が判断したんですか。
  135. 森まさこ

    ○森国務大臣 内閣において決定されたものと承知しております。
  136. 黒岩宇洋

    黒岩委員 森大臣、閣議以外で内閣の判断は示せるんですか。
  137. 森まさこ

    ○森国務大臣 閣議決定事項でないものでございますので、この黒川氏の処分について、懲戒処分ではなく訓告が相当であるという意見を申し上げ、それに異論がないという回答が来たわけでございます。
  138. 黒岩宇洋

    黒岩委員 だから、異論がないと判断したのは誰ですかと聞いているんです。内閣というのは合議体ですから、森大臣もその構成員の一人である内閣ですよ。それ以外に私は内閣があるとは承知していない。  誰が判断したんですか。
  139. 森まさこ

    ○森国務大臣 人事上の処分のプロセスでございますので、詳細は差し控えさせていただきたいと思います。(黒岩委員委員長、ちょっととめてください。詳細じゃない。内閣と言ったんですよ」と呼ぶ)
  140. 松島みどり

    松島委員長 とめてください。     〔速記中止〕
  141. 松島みどり

    松島委員長 速記を起こしてください。  大臣
  142. 森まさこ

    ○森国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、法務省の事務方から、事務的に、調査の経過の報告や先例の説明、処分を考える上で参考となる事情の報告等を行いました。  その上で、最終的には、総理に対し私が報告をし、法務省の対応について了承を得たというのが経過になります。
  143. 黒岩宇洋

    黒岩委員 全然違います。  議事録があったからちょっと、私読みますよ。黒川氏の訓告の処分内容を決定したのは、あくまでも法務省及び検事総長ですと。訓告の決定ですよ。決定したんですよ。報告だとか今言った先例じゃありません。そして、任命権者である内閣に報告したところ、ここからが肝心、法務省としての決定に異論がない旨の回答を得ましたと。  異論がないという判断を下したのはこれは内閣ということで、さっき法務大臣お答えしましたけれども、内閣とは具体的に誰を指すんですか。
  144. 森まさこ

    ○森国務大臣 ですから、今申し上げたとおり、訓告が相当というふうに決定をしたのは、訓告の主体である検事総長そして法務省でございます。その旨を私が最終的に総理のところに持っていきまして報告をしたところ、その決定に異論がないというふうに回答を得たものでございます。(発言する者あり)
  145. 松島みどり

    松島委員長 では、黒岩さん、疑問があったらもう一度質問してください。
  146. 黒岩宇洋

    黒岩委員 だから、異論のない旨という、この判断をした主語を言ってください、総理なのか、内閣なのか。
  147. 森まさこ

    ○森国務大臣 最終的に総理の方から法務省の対応について了承を得ましたから、総理でございます。
  148. 黒岩宇洋

    黒岩委員 これは、法務大臣、訓告でいいということは、イコール懲戒に当たらないということですよ。  このことを決定できる権限のあるのは誰ですか。唯一だと思いますけれども、誰ですか。
  149. 森まさこ

    ○森国務大臣 懲戒処分を行うのは内閣でございます。
  150. 黒岩宇洋

    黒岩委員 今申し上げたとおり、これも、与党議員の質問に答えて、かなり練られたものだと思っているかもしれないけれども、全くもって論理破綻している。総理は総理で、私は報告を受けて了としたと。全く理屈がわかっていない。内閣というこの合議体の意味がわかっていない。そして、その実務者の窓口がないと言っているんだから。  私は、実務がここだというならまだわかりますよ、実務から上げてとか。全くない中で、いきなり総理だ官房長官だという話が副長官からも出てくる。これは、統治機構も含めて、とてもあり得ない話を、机上の空論をやっているんですよ。総理も森大臣も、完全に論理破綻している。その理由は、今までどおり、総理が無理くりの答弁をしちゃったんですよ、五月二十二日に、私は何も判断していないと。  森法務大臣は、ある意味正直に答えたんですよ。当たり前だ。こんなひどい状況で、訓告なんて口が裂けても言えないですよ、法務大臣として、法務省として、検察として、恥ずかしくて。  今までのモリやカケや桜と同じようになっちゃったじゃないですか。総理が答弁しちゃって、それに合わせるためにこれだけひどい目に遭っている、役人の皆さんが。これがこの問題の本質でしょう。だから、ここから立ち直らなかったら、検察はまた十年眠ることになりますよ。  幾つもお聞きしたかったんですけれども、これは大臣、今言ったように、この対応を失敗したら、少なくとも、十年前のフロッピーディスクの証拠改ざんのときには、徹底してうみを出そうと頑張ったんですよ。この対応で、リカバーに第一歩で失敗したら、検察は立ち直れないですよ。  法務大臣最後に聞きますよ。  法務大臣は、二十二日におっしゃった、内閣からおりてきたと。私は、これが事実だと思いますよ。今なら間に合う。法務大臣、勇気を持って、検察のために、国民のために認めていただけませんか。お願いします。
  151. 松島みどり

    松島委員長 持ち時間が来ておりますので、大臣、ごく短くお願いします。  持ち時間が速記停止分も終了しておりまして。
  152. 黒岩宇洋

    黒岩委員 会派内で調整しますから、私。
  153. 松島みどり

    松島委員長 わかりました。調整してくださいね。
  154. 森まさこ

    ○森国務大臣 質問の趣旨がちょっとわかりかねるんですけれども。
  155. 黒岩宇洋

    黒岩委員 じゃ、もう一回。  大臣が二十二日に、この訓告という判断は内閣が決めた、決定したとおっしゃいました。私は、それが事実だと思っています。  検察のために、国のために、これは真実を言うだけでいいんですよ。頭で考える必要はない。森法務大臣、あなたの知っている事実を言うことが、あなたのもとにある行政組織である法務省、検察庁、そして何よりも法の支配のこの国を支えることになるんですよ。真実を言ってください。お願いします。
  156. 森まさこ

    ○森国務大臣 二十二日の記者会見における私の、内閣において決定されたという発言は、法務省及び検事総長が訓告が相当と決定した後、内閣に報告したところ、その決定に異論がない旨の回答を得たことを申し上げたものでございます。
  157. 黒岩宇洋

    黒岩委員 非常に残念ですよ。私は、聡明な法律家として、そして正義を重んじる法務大臣として、森大臣は当然、このかけマージャンに対する初動においてしっかりした対応をとられたんじゃないかと思って、こういう質問をさせていただきました。だが、このような、不自然どころか不合理きわまりない論理破綻をどんどん来していく。これはまた定年延長のときの後づけと同じことですよ。  しかし、こうなったら、先ほどから名前の出てきた、西村官房副長官がおっしゃった登場人物、安倍総理大臣、そして菅官房長官、この当事者に直接来てもらって、そして横並びになってもらって、一人一人に、これは我々が事実を事情聴取しなきゃいけない、質疑しなきゃいけない。しかるに予算委員会での集中審議を求めて、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  158. 松島みどり

    松島委員長 黒岩さんの時間超過分については、立国社の中で配分を考えてください。  次に、日吉雄太さん。
  159. 日吉雄太

    ○日吉委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの日吉雄太です。  きょうは、法案の審議ではありますが、後ほど私も黒川氏の件についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、法案についてお伺いいたします。  午前中の参考人への質疑の中におきましてもありましたが、この刑罰を重くすること以外にもさまざまな方法であおり運転を減らしていくことができないかということで、教育をする、また環境を整備する、このようなお話がございました。  ちょっと、そもそも論なんですけれども、なぜこのあおり運転が起きているのか、これについて何らかの分析なりをされているのかどうか、されているのであれば、その内容を教えていただけますでしょうか。大臣、お願いいたします。
  160. 宮崎政久

    宮崎大臣政務官 午前中の質疑でもございましたが、あおり運転というものがもともとあって、それがドライブレコーダーなどの普及によって顕在化してきたという見解もあり、また、そうではないのかもしれないというさまざまな意見があるということは、委員と共有しているところではないかというふうに思っております。  法務省としましては、あおり運転は悪質、危険なものであり、許されるものではないというふうに考えておりますし、こういう運転行為に至る原因についてはさまざまなものがあると考えておりまして、正直に申し上げますと、これを網羅的に収集、分析をしているというところでは、その原因等についてはですね、ないものであるから、お答えすることが現状においては困難であることは御理解いただければと思っております。
  161. 日吉雄太

    ○日吉委員 やはり、しっかりとした原因分析があってこそ対応というのもできるわけでありますので、さまざまな、刑罰を重くする以外の対応、これも求められている状況でありますので、しっかりと原因を分析できるように、さまざまな原因があろうかとは思いますけれども、それを類型化するなりして対応していただきたいなというふうに思います。  二つ目の質問です。  あおり運転の認定について、一つ事例について確認をさせていただきます。  今のこの法案の審議では、説明を聞きますと、やはり同じ車線というか、走行車線を二台が走っているようなケースが例示としてよく挙げられているんですけれども、例えば、自分が走行している車線の方に対向車線の対向車が前に出てくるというようなことも、高速道路では考えにくいですけれども、一般道なんかではあったりすることもありますが、こういった事例もこの法律適用対象になるのでしょうか。教えてください。
  162. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  お尋ねは、加害者車両センターラインを越えて対向車線走行中の被害者車両にという事案だと思います。  そのように対向車線を走行してくる被害者車両に対してセンターラインを越えてその走行を妨害したというケース、この運転行為によって人が死傷した場合でありますが、加害者車両が、通行妨害目的で、重大な交通の危険を生じさせる速度被害者車両に著しく接近したと認められる場合、すなわち、加害者車両の方に俗に言う速度要件がある場合には、現行の自動車運転死傷処罰法の二条四号の罪、これが成立し得ると考えられるところでございます。  また、被害者車両が重大な交通の危険を生じることとなる速度で走行している場合、俗に言う速度要件が今度は被害者車両にある場合で、加害者車両が、通行妨害目的で、対向して進行してくる被害者車両の前方で停止するなど、両方の車両が著しく接近することとなる方法で自動車運転したと認められる場合には、改正後の同条五号の罪が成立し得るものと考えられます。
  163. 日吉雄太

    ○日吉委員 ありがとうございました。今の事例でも成立するということがわかりました。  そしてもう一つ、今回の改正案で刑罰が重くなりますけれども、これによってあおり運転が減っていく、そしてこれが確実に抑止力になっているというふうなところについて、大臣の見解をお尋ねいたします。
  164. 宮崎政久

    宮崎大臣政務官 先ほども御説明をさせていただきましたとおり、あおり運転の、要するに原因というものはいろいろなものがあるわけでございます。そして、あおり運転、さまざまな要因で左右されるものでありますけれども、今般の法整備によってあおり運転が具体的にどれだけ減少するかということについては、一概にお答えすることはなかなか困難であるかと思います。  ただ、午前中からの質疑でもございましたように、やはり法規範には、特に刑罰法規には社会規範の形成機能がございます。そういった意味で、今回しっかりとした犯罪類型を罪刑法定主義にも配慮した上できちっと定めるということによって、社会にしっかりと伝えることによって、こういったあおり運転というのは許されないんだということをしっかりとお示しすることによって、あおり運転が一般予防という観点から減少していくことを求めているものでありますし、こういったことをしっかりと達成できるように政府を挙げて取り組まなければいけないというふうに考えているところでございます。
  165. 日吉雄太

    ○日吉委員 じゃ、大臣も、この法案への思いをお願いいたします。
  166. 森まさこ

    ○森国務大臣 あおり運転において悲惨な死傷事故が生じておりますところから今般の法整備をしたわけでございますので、今政務官がお答えしたとおり、刑罰が有する一般予防効果として自覚を促して、抑止する効果もあると思いますので、これから、法務省としては、新設される罰則の内容等について広く周知をしてまいりたいと思いますし、検察当局において適切に対処していくものと承知をしております。
  167. 日吉雄太

    ○日吉委員 ありがとうございました。適切な対処をお願いいたします。  続きまして、黒川氏の件に移らせていただきたいと思います。  先日も質問させていただきましたけれども、もう一度確認です。かけマージャンの常習性が認定されなかった、これについて、具体的にどういった調査をしたことによって常習性が認められなかったのか、教えてください。
  168. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  まず、どういった調査をしてという点でございますが、調査の方法は、これまでもお答え申し上げておりますが、法務事務次官において黒川氏から調査を行い、あるいは、この相手方である報道機関関係者が所属する各社が公表した内容を総合的に判断して事実認定をしております。  常習性の認定に至らなかった理由でございます。  今回は、人事上の処分でございますので、人事院の処分指針にあるところの常習性があるかどうかということでございますが、これも従前から御答弁申し上げておりますが、これについては解釈等が示されておりません。そのため、刑法の常習性、常習賭博における常習性の考え方が参考になると考えて判断をしております。  この刑法の常習性についての考え方でございます。これにつきましては、最高裁の判例があり、また、幾多の実務事案の集積がございます。これらによりますと、常習として賭博をしたか否かということについては、その賭博の種別、種類、それから賭博の複雑性、賭場の性格、規模、かけ金額の多寡、その者の役割、賭博の相手方、あるいは営業性などの諸般の事情を総合してしんしゃくして判断されるべきと言われております。  そして、今回の具体的な判断でございます。今言ったような常習性についての考え方を前提といたしますと、まず、調査の結果明らかになりましたのは、賭博の種別はマージャンでございます。賭博の種別、複雑性について、マージャン自体は社会一般で行われている遊技でございまして、また複雑とまでは言いがたいこと、それから賭場の性格、規模、あるいはその者の役割、賭博の相手方などについては、旧知の間柄にある知人三人と知人宅で行ったものであること、それからかけ金額についても、必ずしも高額とまでは言えないこと、それから営業性もないことなどから、常習として賭博をしたものとは認められないということで、常習性要件の認定に至らなかったものでございます。
  169. 日吉雄太

    ○日吉委員 今、具体的にそれぞれの要件について調査されたというお話をいただきましたが、例えば相手方なんですけれども、今回は記者とやられていたということなんですけれども、例えば大学なり学校の友人とかOBとか、又は同僚の方とか、こういったことでほかにもやっていたかどうか、こういった調査はされたんですか。
  170. 川原隆司

    ○川原政府参考人 調査を行った上、御指摘のような事実は認定できなかったものでございます。
  171. 日吉雄太

    ○日吉委員 調査を行ったということで、それ以外の人とマージャンをやったことはなかった、こういう結論でよろしいですか。
  172. 松島みどり

    松島委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  173. 松島みどり

    松島委員長 速記を起こしてください。  局長。
  174. 川原隆司

    ○川原政府参考人 済みません。ちょっと、今の御質問、ちゃんと調査したのかという。済みません。(発言する者あり)
  175. 松島みどり

    松島委員長 とめてください。     〔速記中止〕
  176. 松島みどり

    松島委員長 速記を起こしてください。  繰り返しになっても結構ですから。
  177. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答えの前提として、済みません、確認的に申し上げさせていただきますが、調査の結果、そういった事実は認定できなかったのかという御質問だと理解をします。  その上で、調査の結果、御指摘のような事実は認定できなかったと先ほどお答えをしたものでございます。
  178. 日吉雄太

    ○日吉委員 確認ですけれども、そういった事実はなかった、友人なり同僚なりとかけマージャンをやった事実はなかった、調査の結果、なかったと。確認です。
  179. 川原隆司

    ○川原政府参考人 繰り返しでございます。  調査の結果、御指摘のような事実は認定できなかったというものでございます。
  180. 日吉雄太

    ○日吉委員 そうしたら、金額の話もありましたけれども、過去三年間で総額どれだけのお金が動いていたのか、これは把握できていますか。
  181. 川原隆司

    ○川原政府参考人 結論から言いますと、過去三年間の総額という金額は把握をできておりません。  ただ、これまでも御答弁させていただいたことがあると思いますが、五月一日あるいは十三日ごろのマージャンにおきましては、参加した者の間で一万円から二万円程度の現金のやりとりがなされたという事実、これは、調査の結果、認定されております。それから、この三年間の回数につきましては、約三年前から月一、二回程度、そういった形で認定されております。  ただ、今申し上げましたように、これ自体、確たる、何回で、一回につき幾ら幾らという厳密な認定までできているものではございませんので、総額ということになりますと、認定はしておりません。
  182. 日吉雄太

    ○日吉委員 やはり総額も常習性を判断する上で重要になってくるのかなと思います。ですので、そういった調査も必要ではないのかなということを申し上げさせていただきます。  そして、もう一つ、この記者と黒川さんは、国家公務員倫理規程上の利害関係者に当たるのか当たらないのかという点について、これは調査を行ったのでしょうか。それで、当たる、当たらないというふうな結論になっているのでしょうか。ここを教えてください。
  183. 川原隆司

    ○川原政府参考人 調査と当てはめということで申し上げますと、相手方が報道機関の関係者というのは調査の結果でございまして、当てはめとして、報道機関の関係者は利害関係者には当たらないというものでございます。
  184. 日吉雄太

    ○日吉委員 報道関係者という点では当たらない、これはわかりました。  ほかに何か個別の利害関係があるかないか、これについて調査は行われましたか。
  185. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お尋ねは、国家公務員倫理規程を念頭に置いて、利害関係者に当たるか否かということをお尋ねかと思います。  そうなりますと、まず国家公務員倫理規程で定める利害関係者とは何かということでございますが、これは、例えば補助金等の交付の対象となっている事業者や立入検査を受ける事業者等を指すとされております。  具体的に検察官について見ますと、捜査を受けている被疑者、公訴の提起を受けている被告人などが利害関係者に当たり得るところでございます。  したがいまして、マージャンの相手方は報道機関関係者ということでございますので、この国家公務員倫理規程の見地から見て利害関係者には当たらないという判断をしたものでございます。
  186. 日吉雄太

    ○日吉委員 わかりました。利害関係者には当たらないという判断の中で、ハイヤーの問題についてお伺いいたします。  このハイヤーは、記者のために用意されたハイヤーなのか、そもそも新聞社としてずっと全体で契約している中で、たまたまこの記者がハイヤーを利用したのか、これはどちらなんでしょうか。
  187. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  私どもの調査結果では、記者、調査結果の報告の書面では記者Bとしておりますが、記者Bが手配したハイヤーという形で認定をしております。  ただ、再三お答え申し上げていますとおり、取材行為に当たり得る可能性があるということから、報道機関側に対する聞き取り等を行っておりませんので、そのハイヤーがどういう形で、当該報道機関において、委員の御指摘のような観点から手配したものであるかどうかということは、確認はできておりません。
  188. 日吉雄太

    ○日吉委員 記者Bが手配したハイヤーということです。今、記者Bが帰宅するときに黒川さんが同乗されたということなんですけれども、その記者Bが戻る、家に戻ったかどこかにかわからないんですけれども、行く目的地と、黒川さんが行く目的地というのは同じ方向だったんですか、それとも全然違う方向だったんですか。
  189. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  今委員御指摘のそのルート、これは必然的に黒川氏や記者の自宅の所在地という問題になりますが、このルートを明らかにすることは、黒川氏等の自宅の所在地を推知、推しはかって知ることということになりかねないものでございまして、プライバシー保護の観点からお答えを差し控えさせていただきます。
  190. 日吉雄太

    ○日吉委員 じゃ、仮に、黒川氏の自宅まで遠回りしていくようなことがあった場合に、これは、ハイヤーの追加料金というのはかかるんですか。
  191. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答えを申し上げます。  先ほどお答えいたしましたとおり、私どもの調査結果では記者Bが手配したとなっておりますが、記者Bが費用負担するのか所属する報道機関が費用負担するのかは別にして、どういうハイヤーとの契約内容になっているかということは私どもとして確認をできておりませんので、今、その追加料金が発生するかどうかということについて、その点は判明していないところでございます。
  192. 日吉雄太

    ○日吉委員 そうしますと、こちらの五月二十一日の検討結果に、追加費用が発生した事実も確認できないことからと書いてあるんですけれども、調べていないのになぜ、確認できないという、追加費用が発生していないという結論になっているんですか。
  193. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答えを申し上げます。  今御指摘をいただいたのは職責についての検討結果の方だろうと思います。  確かに、委員御指摘のとおり、追加費用が発生した事実も確認できなかったと。まさに、発生していないと認定もできないし、発生したとも認定できない。  ただ、これは黒川氏に対する不利益処分をするという関係でございますから、不利益処分となる根拠事実につきましては、不利益処分をする私ども役所の側において立証する責任がございます。そういったところ、調査の方法につきまして先ほど来申し上げている手法をとっていることもありまして、発生した事実が積極的に確認できないということで、ここについては、確認できなかったという形で記載をさせていただいているところでございます。
  194. 日吉雄太

    ○日吉委員 それは調査が不十分だということなんじゃないですかね。  国家公務員倫理審査会が事例研究用事例集というのを出されているんですけれども、そこの五十六ページに、職務として利害関係者を訪問した際に、公共機関がなくて一緒に自動車を利用するということ、こういうことはあるでしょうということなんですね。でも、ここで言う自動車というのは、日常的に使用している社用車であって、職員のために用立てたタクシーやハイヤーはこれには該当しないということになっておりまして、追加費用が発生するようなものというのはやはり倫理規程に違反すると。  これは利害関係者という前提がありますけれども、同じく、供応接待、財産上の利益というような、こういった観点からは同様に解釈できるのかなというふうに思うんですけれども。  そういった中で、やはり、黒川さん、送迎に対してやはり調査が不十分なんじゃないのかなと思っています。これについて追加の調査を行うべきじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  195. 川原隆司

    ○川原政府参考人 今、追加の調査だということで、その前提として、今、国家公務員の倫理規程の関係をおっしゃられまして、委員も御指摘されたところでございますが、利害関係者かそれ以外かというのは根本的に違うところでございまして、利害関係者に該当しない者の場合については、社会通念上相当と認められる程度を超えるかどうかということでございまして、利害関係者とは相当取扱いが違うところでございます。まずその点を、私ども、調査、それから職責の検討に当たって、念頭に置いて当然行っております。  その上で、従前から申し上げておりますとおり、処分に必要な調査はもう既に行っているという理解でございます。
  196. 日吉雄太

    ○日吉委員 でも、そこの、追加費用が発生したか発生していないかというのは調査していないから、していないとおっしゃられたじゃないですか。それで、認められなかった。していないから、それは認められないですよ。だから、そこを調査するべきじゃないですか。
  197. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  繰り返しになりますが、報道機関側に対する調査につきましては、取材活動にかかわる可能性があるということで差し控えたものでございます。その結果、不利益事実の積極的認定に至らなかったというものでございまして、必要な調査としては行ったと認識しております。
  198. 日吉雄太

    ○日吉委員 大臣、もう一度調査する意思はありませんでしょうか。
  199. 森まさこ

    ○森国務大臣 黒川氏の処分を決するに当たり必要な調査を行ったものと認識しておりまして、再調査の必要はないと考えております。
  200. 日吉雄太

    ○日吉委員 時間が来ましたので終わりますが、今申し上げたように調査は不十分でありますので、再調査をお願いして、私の質疑を終わります。  ありがとうございました。
  201. 松島みどり

    松島委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  202. 松島みどり

    松島委員長 それでは、速記を起こしてください。  次に、稲富修二さん。
  203. 稲富修二

    ○稲富委員 立国社の稲富でございます。よろしくお願いいたします。  まず、あおり運転について伺います。  新設の二条五号について、まず伺います。  この中に、車の通行を妨害する目的についてとありますが、妨害する意思はなく、外形的に危険運転致死傷罪と同じ行為をしてしまった場合、そういったことも想定をされますが、改めて、この妨害する目的という判断基準をお示しください。
  204. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  改正後の自動車運転死傷処罰法の二条五号の車の通行を妨害する目的、これは、現行の四号の車の通行を妨害する目的と同様でございまして、相手方に自車との衝突を避けるために急な回避措置をとらせるなど、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図するというものでございます。  したがいまして、この積極的な意図がなければ、単に外形的に危険運転致死傷罪と同じ行為をしてしまったというだけでは五号の罪は成立しないと考えております。
  205. 稲富修二

    ○稲富委員 次に、同じく、車の通行を妨害する目的についてなんですが、漠然と後続車両を妨害するということはあり得ると思うんですが、そういった場合の認識について、漠然と妨害することの認識がある程度のもので足りるかということをお伺いします。
  206. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  車の通行を妨害する目的というのは、先ほど来申し上げておりますが、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることをまず積極的に意図することをいいまして、車の通行を妨害する目的であれば足りまして、特定の車の通行を妨害する意図までは必要ないものでございます。  したがいまして、漠然とというお尋ねでございます。例えば、加害者が自分の車の後方を走行する自動車の存在を、その車の存在自体は明確には認識していないものの、そのような自動車がいるのであれば妨害しようと考えて、先ほど申し上げたような積極的な意図によって妨害行為に及んだということならば、そのような積極的な意図があれば、通行を妨害する目的の要件は満たし得るものと考えております。
  207. 稲富修二

    ○稲富委員 ありがとうございます。  その次に、きょう、けさも参考人質疑の際に、あるいは午後の質疑の際も、ドライブレコーダーのことに触れられている委員先生方もたくさんいらっしゃいました。これについてちょっと伺います。  妨害目的、こういった認定において、ドライブレコーダー危険運転致死傷罪の立証の決め手となる場合はこれからふえてくるものと思いますが、必ずしもこれが万能であるかどうかというのは、またこれは別の問題かと思います。その点、改めて、この効用あるいはその限界についてお伺いをいたします。
  208. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  通行を妨害する目的につきましては、委員が御指摘されましたドライブレコーダーの映像のほかに、例えば被害者、目撃者、加害者の供述などさまざまな証拠に基づきまして、加害者の具体的な運転態様、犯行時や犯行前後における加害者の言動などさまざまな事実を認定した上で、総合的に評価して行うこととなります。  証拠の内容やその評価は個別の事案ごとに異なり得るため、一概に申し上げることは困難でございますが、一般論として申し上げれば、通行を妨害する目的の認定に当たって、ドライブレコーダーの映像は客観的な運転態様や加害者の言動を明らかにするものであり、これが立証の決め手となる場合も十分にあるものと考えております。
  209. 稲富修二

    ○稲富委員 このドライブレコーダーですけれども、仮に被害者の不利になるような場合、あるいはそれが証拠として採用されることがあるのか。また、その逆もあって、加害者にとって有利な、そういったことも採用されることがあるのか。それを伺います。
  210. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  刑事裁判における証拠の採否は、当該事件を担当する裁判所が事案に応じて判断する事柄であるため、一概にお答えすることは困難でありますが、あくまで一般論として申し上げれば、被害者車両ドライブレコーダーの映像は証拠能力を有し、証拠調べの必要があると判断された場合には、その内容被害者にとって有利であるか不利であるか、あるいは被告人にとって不利であるか有利であるかを問わず、刑事裁判における証拠として採用され得ると考えられます。
  211. 稲富修二

    ○稲富委員 ありがとうございました。  次に、コロナ関連の質問に移りたいと思います。入管について伺います。  きょうは厚労省から政務官に来ていただきました。ありがとうございます。  コロナの影響で、ただいま、海外からの入国者が大幅に減っております。したがって、入管業務も減っているということでございまして、入管の管理の補助に当たっている方々の業務も減っているわけです。福岡空港で入管審査の支援業務に当たられる方が雇主から三月十三日に自宅待機を命じられているにもかかわらず、給料が出ていないという事案が発生をしております。コロナで休業を命じられたにもかかわらず給料が払われていないということは不条理であると考えます。  私の問題意識は、国は、仮に義務がないとしてもなるべく休業手当を払うよう、労働者の利益が損なわれることがないようにということを促してまいりました。であれば、少なくとも国が業務を委託している事業者についてはそのような対応をとっていただきたいというのが基本的な問題意識です。  これはまた、今これから福岡のことを聞きますけれども、福岡だけに限らず、その他の地域にもあり得る話だと思います。  そこで、まず事実関係を伺います。福岡空港における海外からの入国者数、一月以降の推移について伺います。
  212. 高嶋智光

    ○高嶋政府参考人 本年一月以降におけます福岡空港での外国人入国者数は、外国人ですが、一月は約十七万三千五百人、二月は八万二百人、三月は一万三百人、それから四月は三桁落ちまして三十人でございます。それから日本人帰国者数ですが、一月は約九万三百人、二月は六万七千人、それから三月は一万四千人、四月は、これは暫定値でございますが、二桁落ちまして百八十人となっております。  以上でございます。
  213. 稲富修二

    ○稲富委員 次に、福岡空港における入国管理に関する委託業者に対して、ことしに入って、特に入国制限が厳格化して海外からの入国者が激減する中で、業務、そしてそれに対する支出をどれぐらい減らしたのか、お伺いします。
  214. 高嶋智光

    ○高嶋政府参考人 委員御指摘の福岡空港におけますイミグレーションアテンダント業務及び出入国審査支援通訳業務につきましては、福岡出入国在留管理局におきまして、航空機の運航計画等に基づいて、配置する人員を決定しております。業務委託契約に基づくものでございますが、本年一月は約七千六百時間、二月は約七千時間、三月は三千二百時間、四月は七百時間に相当する業務を委託しております。  支出金額についてのお尋ねでございますが、契約上、委託した業務の時間に応じて決定する、こういう契約になっておりますが、具体的な金額につきましては、個別の事案につき、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。     〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕
  215. 稲富修二

    ○稲富委員 約一桁減っている、七千六百時間が七百時間に変わったということで、十分の一になったということかと思います。  そこで、自見政務官にお伺いします。  先日、厚労委員会質疑の中で、当該事業を実施するために雇用された作業従業員への賃金などが事業を実施するために準備、維持した経費と認められる場合は、各事業の内容にもよるが、委託事業に要した費用として、人件費を含め、支出した経費を国が支出しても差し支えないという御答弁がございました。  本人の人件費、この場合、休業を命じられて休んでいるというその方の人件費は、まさに事業を実施するための準備、維持した経費と認め、委託事業に要した費用として国が人件費を支出すべきだと考えますが、見解を伺います。
  216. 自見はなこ

    ○自見大臣政務官 お答えいたします。  五月二十二日の厚生労働委員会では、あくまで、公共調達に関する一般的な取扱いの観点を踏まえ、厚生労働省における取扱いについて答弁をさせていただいたものでございます。  委員御指摘の福岡空港における入国管理に係る委託業務につきましては、当該事業を実施する法務省において判断されるべきものであると考えており、私の立場での答弁は差し控えたく存じます。
  217. 稲富修二

    ○稲富委員 同じ政務官の答弁の中で、労使がよく話し合って、休業中の手当の水準を話し合うべきだ、それで労働者の不利益を回避する努力をしていただくことが大変重要だということをおっしゃって、同趣旨のことは厚労省の企業向けのQアンドAにも書かれております。  入国管理に従事する方はこれから必ず必要になっていくわけでございますし、何度も申し上げているように、国が委託している事業者ということでございますので、休業手当を払うように国が何らかの働きかけをするべきだし、そのような指導を厚労省がすべきだというふうに考えますが、先ほど政務官はそういう答弁をされましたけれども、ぜひ前向きに、これはやはり、言うと、ゆえなく困っていると思うんです。そして、何度も言うように国が委託をしている先です。それが国の方針と違うということであれば、国としての何らかの指導が必要じゃないかということでございますので、前向きな答弁をお願いします。
  218. 自見はなこ

    ○自見大臣政務官 お答えいたします。  あくまで厚生労働省の取組を申し上げればということになりますが、厚生労働省では、労働関係法令を始めとする諸法令をしっかりと遵守していただくこと、守っていただくことが非常に重要だというふうに考えております。  ただ、繰り返しとなってしまって恐縮ではございますが、委員御指摘の福岡空港における入国管理に係る委託事業への個別の対応につきましては、当該事業を実施する法務省において判断されるべきものと考えており、私の立場では答弁は差し控えたいと存じます。  ただ、一般論でございますけれども、個別の事案につきましては、労働局でよく御相談させていただくような体制を整えておりますので、引き続きしっかりと我々も取り組んでまいりたいと思っております。
  219. 稲富修二

    ○稲富委員 ありがとうございます。  なかなかちょっと、前向きにとはいかないかもしれないけれども、ぜひ、ちょっと、改善を求めていきたいと思います。よろしくお願いします。  政務官、もう大丈夫です。ありがとうございました。  次に、黒川検事長の辞任についてお伺いをしてまいります。  先ほど来ありましたけれども、私は、この問題でまず一番思ったのは、この調査検討結果の紙です。この中に、いろいろ書かれてあるんですが、最後に、職責のあり方のところで、処分の最終的な結論があるわけですけれども、(1)で、いかに黒川さんがこういうことがよくなかったかということが書いてあって、最後の(2)のところで、やはり点ピンは必ずしも高いとは言えないということがあって、反省しているとあって、長い貢献があるということで、最後にその結論を得るわけです。ここのところが非常に、この(2)のところは、言えば、私からすると、余りにも露骨であり、赤裸々であり、非常に無防備な言葉だなと思います。  大臣、基本的なことをお伺いしますが、この文書は、法務省のクレジットがありますので、大臣も決裁があって、そして広く国民に知れ渡ってもいいという文書かと思いますが、その確認をさせてください。     〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕
  220. 森まさこ

    ○森国務大臣 はい。私が見て了承した文書でございます。
  221. 稲富修二

    ○稲富委員 昨日、当委員会で刑事局長は、串田先生とのやりとりの中で、この処分の、要するに、点ピンレートについてはどうか、国民の意識とかなり違うんじゃないかといったときに、この点ピンレートのこのことと刑事の処分はこれは別なんだということを強調されました。これは別なんだと。だから、ここで書かれてあることはあくまで処分の内容であって、刑事とは別なんだということを主張されました。  しかし、大臣、ここが問題なんですよ。これが世に出て、私もそうなんですけれども、マージャン好きの人に、点ピン、これはいいのか、法律で問題ないんだねと言われるわけです。  問題は、普通の国民からすると、これが表に出たときに、その処分と刑事のあり方とは違うと幾ら言われても、わからないんですよ。だから、私は、大臣にお願いしたいのは、まさに国民の意識と違うというところをつなぐのが大臣の役目だというふうに思います。  最後に伺います。  法務・検察行政刷新会議なるものを大臣がつくられるということでございますが、改めて、検察の理念ということに立ち返って、身内に甘い調査をやり直す、私はそういう機会にしていただきたいと思いますが、最後、答弁を求めます。
  222. 森まさこ

    ○森国務大臣 今回の黒川氏の行動は甚だ不適切でございます。法務・検察に対して国民の皆様からさまざまな御批判、御指摘をいただいております。私は、検察はもとより法務行政も、国民の信頼がなくてはなし得ないものだと考えておりますので、この機会に、法務省内に法務・検察行政刷新会議を設置することを決めました。さまざまな御指摘を踏まえて、この会議で検討してまいりたいと思います。  黒川氏の処分については、必要な調査を行ったと認識しております。
  223. 稲富修二

    ○稲富委員 終わります。ありがとうございました。
  224. 松島みどり

    松島委員長 次に、松田功さん。
  225. 松田功

    松田委員 立国社の松田功でございます。  それでは、早速、質問に入らせていただきます。  あおり運転についてでございますが、あおり運転行為は、常識的に考えて、あおろうとしている加害者被害者に対してあおったり、かぶせたり、いろいろな状況想定される範囲内であると思います。しかしながら、どういった形で、最終的な、死亡事故につながっていくことも含めると、いろいろな場合が考えられます。  例えば、この二条第五号に当たる加害者に追突をしてしまった場合においた中で、加害者が急ブレーキでとまった、それが、後ろから来た被害者に当たる人間が後ろから追突し、前の人間が死亡してしまった場合、その場合においたら、被害者たるものが加害者になる可能性も秘めてくる可能性があるのかということも考えられますし、また、二条の六号においても、第三者の車が追突をするということにおいて加害者たるものが死亡してしまう可能性がないとは言い切れない。そういった状況の中で、どの時点が被害者であり加害者になるという判断になるのか、御説明をいただきたいと思います。
  226. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  改正後の自動車運転死傷処罰法二条五号又は六号の適用に当たりましては、ある人の行為がそれぞれの要件を満たすかどうかによってこれらの罪の成否が判断されるところでございます。  例えば五号でございますと、Aという人が、車の通行を妨害する目的で、Bという人が運転する走行中の車、これは重大な交通の危険が生ずることとなる速度で走行中のものでございます、この前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車運転する行為を行い、よってBを負傷させ又は死亡させたという場合には、Aが加害者でBが被害者ということになります。  そして、これらの要件に該当する事実があったかどうかということにつきましては、ドライブレコーダーの映像、事故現場に残されたタイヤ痕、車両の損傷状況、目撃者や事故当事者の供述など、さまざまな証拠に基づいて認定することになります。  いずれにしましても、個別の事案における同罪の適用については、検察当局において、法と証拠に基づき、適切に対処するものと承知しております。
  227. 松田功

    松田委員 その場合場合によって非常にということもあります。あおり運転自体というのがどこからがという、まあ定義で、パッシングをしたりとか、前に、通行を邪魔したりとか、いろいろな定義があり、また、お互いがやり合ってしまう場合があったりということも考えられるということも含めると、非常に立証がしづらい部分がすごく想定されてくるものであり、今の御説明に、状況によってはどう変わるかわかりにくいということも想定がされることも出てくるのではないかという意味においては、私自身は、ドライブレコーダー自体が非常に有効だと。これが車の標準装備にされていくようなまた法律になっていくのかどうかも含めてですが、非常に立証されにくい。又は、本当に、どの時点で被害者加害者というのは、非常に重要なものになっていく。  一番は、そういった運転をすること自体が間違っていますから、そういったことにならないように、啓発も含めた中で法改正を進めていく中で、より一層進めていただきたいと思いますし、ドライブレコーダーの普及に対しても、やはり力強く進めていくことは必要ではないかというふうに思います。そういった形でしっかり取り組んでいっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  それでは、続きまして、インターネット上の人権侵害について御質問させていただきたいと思います。  人気番組に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが亡くなられました。直前にSNSで、自身が誹謗中傷されていることへの悩みや、さようならといった投稿をしておりました。報道によれば、ネット上の誹謗中傷はおさまらず、母親であります響子さんのアカウントにまで波及していったということでございます。木村さんによれば、誹謗中傷は一日百件ペースで最近まで進んでいたということでありました。  たかがネット上の書き込みが一人の人間の命を奪うこともあります。その事実はとても重いものであります。だったらネットを見なければいい、そういう時代は終わりました。このコロナ禍の中でインターネットはますます重大なインフラとなっておりまして、インターネットなしに生活することはもうほとんど不可能であるというふうにも思われます。  そこで、インターネットの人権侵害について、人権問題に取り組んでおります法務省として、法務大臣として、この事案について一言お言葉をいただければと思います。
  228. 森まさこ

    ○森国務大臣 木村花さんが二十二歳という若さでお亡くなりになったこと、本当に心が痛みます。木村花さんの御冥福を心からお祈りいたします。  SNS上の誹謗中傷の書き込みは、同様の書き込みを次々と誘発し、取り返しのつかない重大な人権侵害にもつながるものでございまして、失った命は戻りません。このような人権侵害は決してあってはならないと思います。  法務省としては、これまでもインターネットによる人権侵害について啓発をしてまいりましたが、引き続き、インターネットによる人権侵害の解消に向けて、総務省など関係省庁と連携してしっかり取り組んでまいります。
  229. 松田功

    松田委員 そのインターネットでございますが、今、インターネット、重要性が増す状況である中、安心してインターネットを使用できる法制度がほとんど整っていない状況であります。  現行法にはさまざまな問題があり、まず、インターネットの人権侵害があったとしても、プロバイダーが任意に誹謗中傷の書き込みを削除していることは少なく、それを書き込んだ人を特定するための発信者情報を任意に開示してくれることはほとんどないというのが問題であります。裁判所の仮処分決定がなければ削除に応じないという運用方針で固めているプロバイダーもいて、プロバイダーごとに対応が異なります。したがって、現状では、任意請求で問題が解決することは少なく、削除請求及び発信者情報開示請求のいずれに関しても裁判手続が必要となります。  また、この裁判手続自体においても、非常に被害者本人が一人で対応することが難しく、弁護士に依頼することになるにしても、弁護士費用を被害者自身が負担しなければならず、泣き寝入りせざるを得ない状況であります。  被害者としては、なるべく裁判手続を用いず、プロバイダーが任意に人権侵害情報の削除及び発信者情報の開示をすることが望ましいと思われますが、その法制度がほとんど整っておりません。  そういった状況の中、救済ができるような方向に進めていくことはお考えでしょうか。
  230. 竹村晃一

    ○竹村政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がありましたとおり、発信者情報開示手続に関しまして、被害者はプロバイダーに対し、裁判手続を通じて発信者情報の開示を求めることが必要となる場合が多いことから、発信者の情報の開示に時間がかかり、迅速な被害者救済が図られないとの御指摘があることは承知をしてございます。  第三者機関の設置によってこうした課題に対処することはできないかということにつきまして、総務省において平成二十二年から二十三年にかけて開催しました有識者会議においても検討が行われました。しかしながら、第三者機関の判断裁判官に対する法的拘束力がなければ被害者救済の実効性に欠けることとなる一方で、第三者機関の判断裁判官に対する法的拘束力を認める場合には、表現の自由といった憲法上の重要な権利について国民が裁判を受ける権利を侵害するおそれがあるなどの課題が指摘をされまして、見送られた経緯がございます。  このような経緯を踏まえて、本年四月に設置した発信者情報開示のあり方に関する有識者会議におきましては、発信者の特定を容易にするために発信者情報の開示対象に電話番号を加えることや、権利侵害が明白である場合に、裁判によらずプロバイダーが任意で情報開示することを促すための方策などについて検討をしているところでございます。  有識者会議の検討を通じまして、より迅速かつ効果的な被害者救済の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
  231. 松田功

    松田委員 不特定者に対するヘイトスピーチにもまだまだ問題点がございます。現行法で、不特定の者に対するヘイトスピーチは削除の対象とならないといった問題点があり、最低でも、これから禁止事項がなければ、インターネット上のヘイトスピーチは野放し状態のままとなっているところであります。  その意味におきまして、例えばドイツにおいては、二〇一八年にSNSに関する法執行法が制定されました。この法律は、ヘイトスピーチなどについて、フェイスブック、グーグル、ツイッター、ユーチューブなどのインターネット上の大手プロバイダーに対して、書き込み削除又は情報のブロッキングなどの措置を施すことを義務づけ、これを懈怠した場合には、責任者には最高五百万ユーロ、企業に対しては最高五千万ユーロの過料を科す法律であります。報道によれば、書き込みをした個人の処罰の強化も含む、さらなる規制強化が検討をされているということであります。  また、フランスでは、つい先日、五月の十四日に、インターネット上の児童性的虐待といった有害コンテンツなどの投稿について、プロバイダーに削除義務を課し、違反した場合には罰金を科す法律が制定をされたということでございます。  諸外国は既にインターネット上のヘイトスピーチや誹謗中傷に対しての対策をとっておりますが、我が国におきましてどのようにこれからまた進められるか、お聞かせください。
  232. 竹村晃一

    ○竹村政府参考人 委員御指摘のように、ドイツでは、ネットワーク執行法において、SNS事業者は、違法コンテンツに関する苦情があった際には直ちに違法性を審査し、一定の期間内に削除する義務を負うとともに、苦情対応義務を果たさなかった場合には過料が科される仕組みを設けてございます。また、フランスにおいても、同様の内容の法案が今月、国会において可決をされたというふうに承知をしてございます。  この点、ドイツ・ネットワーク執行法に関しましては、SNS事業者による過剰な削除が起きることによって表現の自由が阻害されることへの懸念の声が寄せられており、また、フランスにおいても、憲法評議会において法案に関する審査が行われているというふうに認識をしてございます。  一方、米国などにおいては、違法コンテンツへの対応につきましては、SNS事業者などによる透明性、アカウンタビリティーの向上など、自主的な取組を促す方法で進められているところでございます。  我が国においても、事業者に規制や罰則を科すのではなく、まずは、関係者で構成するフォーラムを設置することなどを通じて、各者の取組状況の共有などを行い、自主的な対応を促してまいりたいというふうに考えてございます。
  233. 松田功

    松田委員 なかなか自主的な対応が難しいという状況もありますので、ぜひ進めていっていただきたいというふうに思っております。  今、現在、総務省の発信者情報開示の在り方に関する研究会が発足され、四月三十日に第一回目の会議が開かれました。そこでは、発信者情報開示請求の対象となる発信者情報の拡充について、また権利侵害が明白な場合、任意開示促進の方策、被害者の負担軽減などが議論されております。プロバイダー責任制限法の改正という手段もありますが、専門的な第三者機関を設け、そこで削除や開示を判断させるという法制度もあり得ると思います。現行法では不特定に対するヘイトスピーチには対応し切れません。禁止条項も設けるなどの措置もあわせて必要でないかと思われます。  その辺についてお聞かせください。
  234. 松島みどり

    松島委員長 質疑時間が終了しております。総務省、短くお願いします。
  235. 竹村晃一

    ○竹村政府参考人 インターネット上のヘイトスピーチへの、差別を助長、誘発する情報については、不特定の者に対する差別を含めて、プロバイダーなどの通信事業者が約款に基づき、削除などの対応を行ってございます。  具体的には、通信関係団体において策定している違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項では、ヘイトスピーチが禁止事項として定められており、総務省では、各事業者に対し、同モデル条項を踏まえて約款などを定めて適切な対応をとるよう促しているところでございます。  インターネット上のヘイトスピーチへの円滑な対応を促すために、平成三十年十月より、法務省とともに、通信事業者との実務者検討会を開催し、意見交換を行っているところでございます。  総務省としては、今後も関係事業者に適切な対応を促してまいりたいと考えてございます。
  236. 松田功

    松田委員 ありがとうございます。  今、コロナ禍で、インターネットに接続する機会が大変多くなってきた今だからこそ、一刻も早く救済措置に向けて取組を進めていただきたいと思います。人の命を大切にぜひ思っていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。  ありがとうございました。
  237. 松島みどり

    松島委員長 次に、松平浩一さん。
  238. 松平浩一

    ○松平委員 立国社、松平浩一です。どうぞよろしくお願いします。  私も、引き続き、ネット上の誹謗中傷についてお聞きしたいと思います。  一年ほど前、私もネット上の誹謗中傷についてここで議論させていただいたときに、法務省の方から、ネット上の名誉毀損事犯の件数というのが五年ぐらい前に比べて倍ぐらいにふえていますよ、そういうお話がありまして。本当にネットというものがもう身近というか不可欠なものになって、誰でもネットから情報を得てネットを通じて発信しているということで、その動きがますますこれからも進んでいく、そんな中で、匿名に守られた状態で人をたたく、そういった行為が野放しにされていいのかという点に関して、やはりかなり大きな問題だと思っていて、何らかの対応が急務だというふうに思っています。  そこで、誹謗中傷が刑法上の侮辱罪、名誉毀損の対象となり得るということで、まずこちらを議論させていただきたいと思います。  侮辱罪についてなんですが、法定刑は拘留又は科料というふうになっています。科料となっているんですが、この科料とされたのは、明治四十年にこの刑法典がつくられたとき、それ以来変わっていないわけなんです。  この明治四十年というと、口頭での情報の伝達というのが主流だったと思います。もちろん新聞であるとか雑誌というのもありましたけれども、発行部数は格段に少ないわけです。  それで、おわかりのように、それ以来、情報の伝達手段というものが相当に今変わってきていて、印刷技術もそれから格段に向上して、それで、書籍と新聞、紙媒体も本当に発展しました。それが近年のインターネット革命によって、更にこれは比べ物にならないぐらい劇的な変化がありました。もう本当に、そういった状況の中でいうと、ネットの進化で、普通の人が被害に遭ってしまう、それで、その被害程度というものも、世界に発信されてしまうので、ネット普及以前に比べて、比べ物にならないぐらいになってしまっているという状況にあります。  それでいうと、私、調べましたところ、昭和四十九年に刑法改正の草案というものが公表されています。今から四十五年前です。そのときに、この侮辱罪の法定刑について引上げが検討されていました。今、先ほど言いましたように、拘留又は科料なんですけれども、そのとき、それに加えて、一年以下の懲役、禁錮、十万円以下の罰金というものが加えられていたんです。これはやはり、当時、四十五年前ですけれども、出版が発展していった、それを考慮しての改正案だったと思います。  ただ、その改正案は現実化しなかったわけなんですけれども、それから四十五年がたった今、更に進んでインターネットの高度情報化社会になっている中で、再度、やはりこの法定刑の引上げということを検討するということも十分理由があるのかなというふうに思います。それが一つ目です。  そして、二つ目。新たな罰則行為類型化というものを、私、提案したいなと思います。  これは、最近も集団強姦罪というものが新しく設置されたことがありました。ネットでは、やはり、SNSのコミュニティーサイトとかができて、集団での誹謗中傷という新しい類型ができています。ですので、こういった集団での誹謗中傷に対して、新たな罪の行為類型を設けるというのも一考に値するのではないかなというふうに思っています。それが二つ目。  そして、三つ目。三つ目としては、現状の名誉毀損と侮辱罪が親告罪であるということについても申し上げたいと思います。  これは、親告罪となっていると被害者の刑事告訴が必要となってきます。被害者本人からの刑事告訴というのは、本当に精神的にも負担ですし、手続的にも大変負担を与えるものだと思います。  それで、私、もちろんこれらの罪が親告罪とされた趣旨というのも存じ上げておりますので、直ちに何か非親告罪とした方がいいよと、そこまで言うつもりはないんですけれども、この親告罪というところの柔軟化というものも考えていいのではないかなと思います。例えば、集団による場合など、一定行為が重大だと思われるような場合、そういうものに限って違う扱いにするですとか、より告訴をしやすくするような何か取組とか、そういったものがあってもいいのではないかなと思います。  以上、ちょっと私、今いろいろ申し上げましたけれども、その三点、侮辱罪の法定刑の見直しというところ、そして、新しい罪の行為類型を設置してもいいのではないかというところ、そして、親告罪の柔軟化、これは私のあくまで例ではあるんですけれども、こういった本当に時代が変化している、そして、このたびの悲しいニュースがあった、そういった中で、何か考えられないかというところで、大臣、いかがお考えでしょうか。
  239. 森まさこ

    ○森国務大臣 委員御指摘のようなインターネット上において誹謗中傷を行う行為、それによる人権侵害はあってはならない行為だと認識をしております。  今委員の御提案について、その背景についてもさまざまお考えになった上のことだなと思いながら聞いておりました。一つ目が侮辱罪の法定刑を引き上げること、二つ目が多数人による侮辱罪の法律新設、そして三つ目が多数人による侮辱罪について非親告罪化または告訴の柔軟化をしていくというようなことでございました。  侮辱罪に当たる行為にはさまざまな態様のものがある中で、法定刑を引き上げるということについての必要性や理由をどのように考えるか、法定刑を引き上げるべき行為の外延を明確に定義することができるのか、侮辱罪を親告罪とした趣旨との関係をどのように考えるかなど、さまざまな観点から十分な検討が必要であると考えておりますが、いずれにしても、インターネット上における誹謗中傷は人権にかかわる問題であり、今このように社会問題化している中で、法務省として何ができるかをしっかりと検討してまいりたいと思います。
  240. 松平浩一

    ○松平委員 どうもありがとうございます。  本当にいろいろな検討課題はあるとは思いますけれども、ぜひお願いしたいと思っています。やはり飲酒運転社会問題化したとき、世論が動いて厳罰化がなされました。今回の改正あおり運転のところ、これもやはり同じだと思います。時代とともに法律を変えていかなければならないときというのはあると思います。法務省として、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。  それで、以前の質疑のとき、名誉毀損については属人主義をとっているけれども侮辱罪については属人主義をとっていないという話、つまり、侮辱罪については国外犯処罰はできないということについて議論させていただきました。  これは、簡単に問題意識を言うと、今旅行中で海外にいるんだ、だから今だったらネットに投稿しても大丈夫だであるとか、サーバーが海外にある、だから大丈夫だということで許していいのか、そういった問題意識なんですけれども、この国外犯処罰について聞いたときに法務省からどう答えがあったかというと、法定刑の軽重もその一つの要素として考慮されるべき、そして、法定刑が拘留又は科料とされている侮辱罪について現時点において国外犯処罰等の対象とする必要性があるとは考えていないという回答があったんです。だからこそ、私、先ほども意見を述べさせていただきましたけれども、侮辱罪も法定刑を上げて国外犯も処罰できるようにできないかなというふうに思っています。  ちょっと余計なことかもしれないですけれども、一言私の方で言っておくと、これはお聞きしても個別具体的事案なのでという答えが返ってくるので、ちょっと私の方で言っておくと、私は、海外から海外のサーバーに書き込んだ場合であっても、日本国内で見られるという結果が発生している場合は、構成要件該当性の一部は結果が日本で発生しているので日本国内の処罰対象となるというふうに思っています。ただ、やはり国外犯規定というものがないと、国内犯としてどこまで処罰が可能であるかという疑義がなかなか解消されないということなので、処罰範囲を明確化する意味でも国外犯規定を設けるべきではないかというふうに思っています。  次に、ちょっと現状対応についてお聞きしたいと思います。  総務省政務官、来ていただいてありがとうございます。  現状、ネット上に誹謗中傷が書き込まれた場合で、被害者が自分で書き込んだ人に責任追及する場合、これは普通は発信者情報の開示請求をしなきゃいけません。ただ、これは、事業者はなかなか応じてくれません。事業者としては、応じてしまうと発信者から責任追及されてしまうリスクがあるからなんですよね。やはり通信の秘密を侵害しているですとか、そういうことを言われてしまうと。したがって、裁判所の命令がない限りなかなか応じてくれないのが実情だと思います。  これは、被害者からすると裁判をする必要があるわけなんです。しかも、この裁判というのは通常三回も必要です。まずコンテンツプロバイダーにIPアドレスの開示請求をして、そしてISP、インターネットサービスプロバイダーにそれをもとにやはり開示請求をして、そして初めて損害賠償請求できる。本当に、時間も手間もコストもかかってしまう。  したがって、これは、私からは、この原因となっている事業者の負担ですね、事業者が責任をかぶらないようにするために、その事業者の判断の助けとなる第三者機関を設置したらどうかと思うんです。事業者が開示しやすい環境を整えてあげるということです。これは既に、児童ポルノであるとか、リベンジポルノであるとか、あと薬物であるとか、そういったものについて、セーファーインターネット協会というところがありまして、そこが同じような取組をやっているので、参考になると思います。  こういった考えについてどう思われるか、政務官、いかがでしょうか。
  241. 木村弥生

    ○木村大臣政務官 お答えいたします。  現行のプロバイダー責任制限法で定める発信者情報の開示の手続に関しましては、被害者がプロバイダーに対し、裁判手続を通じて発信者情報の開示を求めることが必要となる場合が多いことから、発信者の情報の開示に時間がかかり、迅速な被害者救済が図られないとの指摘があることは認識しております。  第三者機関の設置によりこうした課題に対処することができないかということについては、総務省において平成二十二年から二十三年に開催した有識者会議においても検討が行われました。しかしながら、第三者機関の判断裁判官に対する法的な拘束力がなければ被害者救済の実効性に欠けることとなる一方で、第三者機関の判断裁判官に対する法的拘束力を認める場合は、表現の自由といった憲法上の重要な権利について国民が裁判を受ける権利を侵害するおそれがあるなどの課題が指摘され、見送られた経緯があります。  このような経緯を踏まえ、本年四月に設置いたしました発信者情報のあり方に関する有識者会議におきまして、発信者の特定を容易にするために発信者情報の開示対象に電話番号を加えること、また、権利侵害が明白である場合に、裁判によらずプロバイダーが任意で情報開示をすることを促すための方策などについて検討をしているところでございます。  この有識者会議の検討を通じまして、より迅速かつ効果的な被害者救済の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
  242. 松平浩一

    ○松平委員 ありがとうございます。  今、実効性がないとちょっとおっしゃられたんですけれども、どうですかね、実際、セーファーインターネット協会がやっている事例もありますので、もう一度ちょっと御検討いただきたいなというのが私の要望でございます。  あと、ネットでの誹謗中傷が多い理由としては、やはり匿名性にあると思います。人間、匿名だと攻撃的になる、これはもう、心理学者のジョン・スラーの研究で判明しています。ラジオの匿名性は怪物を出現させるという言葉もあるぐらいです。  韓国では、二〇〇七年の法改正で、掲示板利用者の本人確認の制度というものなんかがつくられたようなんです。利用者の多い通信サービスの事業者は、利用者の本人確認措置をとらなければならないとされたんです。これはインターネット実名制と言われています。その後、実は廃止となってしまっているんですが、最近では再導入を求める声というのも上がっています。  ネット実名制というふうにちょっと言ってしまったんですが、これは別に投稿者のIDを実名化しろというわけではなくて、あくまで、掲示板とかSNSに投稿するのであれば、そのサービスの運営者に本人の情報を持たせようということなんです。先ほど、ちょっと御答弁で電話番号がどうのということもおっしゃっていただいたんですけれども、そこに通じるところはあると思います。そもそも、ISPは本人情報を持っていますので、それをコンテンツプロバイダーにも持たせようという話になると思います。  こういったサービスを設けることについて、この制度自体をどのように考えるかというより、匿名性についてどのように考えるかというところも含めて、お聞かせいただければなと思います。
  243. 木村弥生

    ○木村大臣政務官 インターネット実名制につきましては、御指摘のとおり、韓国において以前導入されていた時期はありますが、平成二十四年、二〇一二年に、憲法裁判所において、実名制がネット掲示板利用者の表現の自由を侵害していると判断されたことにより、違憲判決が下されたため廃止された経緯があるものと承知しております。  このような韓国の例を見ましても、インターネット実名制については、表現の自由の保護の観点から問題があり、導入は難しいと考えております。  総務省といたしましては、先ほども答弁いたしましたとおり、有識者会議において発信者情報の開示を促進するための検討を進めることとしており、匿名による誹謗中傷の被害救済のために必要な対応を進めてまいります。  以上です。
  244. 松平浩一

    ○松平委員 御答弁ありがとうございます。  ただ、どうでしょうかね、表現の自由。単にコンテンツプロバイダーに本人確認義務を負わせるということだけなので、例えば今ネットカフェでネットしようとしたら本人確認義務をとらなければいけないという条例もあったりするので、ちょっとその辺は、表現の自由との絡みではそんなに直ちに問題となるのかなということも思ったりします。いずれにせよ、この議論、しっかり深めて、迅速にいっていただければと思います。  済みません、最後、ちょっと一言言わせていただくと、この匿名化については、私、先日ある本を読んでいて、それを思い出したんですけれども、著作と文体についてという本なんです。これは、今から二百年ぐらい前にドイツの哲学者の、ショーペンハウアーという哲学者がいて、その方が書いた本なんです。それで、匿名による文書というものを非常に厳しく批判していたんです。日本では江戸時代の話です。日本では江戸時代に当たるそのぐらいの時代から、匿名による批判というのが問題となっているわけなんです。ですので、このショーペンハウアーの言葉は、むしろ現代においてこそ重要になってきているんじゃないかなと思います。  この匿名化の問題について議論を深めていただくことを希望いたします。  総務政務官、ありがとうございました。
  245. 松島みどり

    松島委員長 お帰りいただいて。
  246. 松平浩一

    ○松平委員 残った時間、危険運転致死傷罪についてお尋ねしたいと思います。  大臣自動車専用道路の標識というのは御存じですか。わかりますか。ごめんなさい、通告していないんですけれども。いや、いいです。実は私もわからなかったので。どんなものかというと、こういった、青の中に自動車の白抜きのマークが描かれている、これが自動車専用道路の標識なんです。  それで、今回の改正案、六号の方なんですけれども、高速自動車国道又は自動車専用道路においてということになっているんです。高速道路は料金所とかETCレーンがありますので、自分が走っているところが高速道路だなというのはわかりやすいと思うんです。わからない人はいないと思うんですね。しかし、自動車専用道路というのは、結構、通行料金が無料であったり、レーンを設けているかとか、これは地域の実情によってさまざまになっていると思います。それで、今ちょっと申し上げたこの標識も、知らない人も多いし、余り気にする人もいないんじゃないかな、少ないんじゃないかなと思ったりもします。  そうすると、自動車専用道路を今走っているんだ、自分が走っているんだと気づかない場合に、この六号所定の行為を行ってしまう行為者も出てきてしまうのではないかなと思います。  これは、きょうの久保参考人の御意見の中で、構成要件が明確になることが必要で、故意の認定にも懸念があるみたいな御指摘があったと思うんですけれども、それに関連すると思うんですが、この自動車専用道路についての認識の程度というのは、今回、どの程度のものが要求されることになっているんでしょうか。
  247. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  御指摘の六号の罪が成立するためには、この行為の客観面に対する故意、具体的には、高速自動車国道又は自動車専用道路において、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車運転することにより、走行中の自動車停止又は徐行させることに対する故意が必要となります。  したがって、委員御指摘のとおり、加害者実行行為の時点でその走行している道路が自動車専用道路であることを認識している必要があるところ、その認識の程度といたしましては、通常の故意と同じく、未必的なものであったり、例えば自動車専用道路かもしれないがそれでも構わないと考えていた場合においても、自動車専用道路であることの認識に欠けることはなく、故意が認められ得ると考えるところでございます。
  248. 松平浩一

    ○松平委員 未必的なもので足りるということですね。そうですね、ただ、ちょっと心配ですね。これが自動車専用道路なのかという未必的な故意ですね。例えば、一方通行道路はさすがにわかるんですけれども、自動車専用道路なのかという、全くわからない人も出てくるんじゃないかなと思っているんですが、これはやはり私は、そもそも錯誤が問題となるような法律の定め方というのはどうなのかなというところもあります。  今回、やはり、実際の運用として、錯誤がなるべく起こらないようにするというところも大事だと思います。そういう意味でいうと、周知というものが大切になってくると思います。  そこで、質疑時間の関係最後の質問にさせていただきます。今回、この大切な周知というもの、自動車専用道路というものを知らなかったというところを防ぐために、どのように運転手に周知していくのかというところ、最後、お聞かせください。
  249. 松島みどり

    松島委員長 時間になっていますから、短くお願いします。
  250. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  御質問は今般の法整備についての周知と考えますが、これにつきましては、これまで同様、法務省のホームページなど、さまざまな機会を通じまして、広く国民に適切に周知してまいりたいと考えるところでございます。
  251. 松平浩一

    ○松平委員 今回の問題意識としては、自動車専用道路の周知というところも、これは私は必要になっていると思いますので、その辺もよく国交省の方と連携をとって進めていただきたいと思っております。  以上にて終わります。どうもありがとうございました。
  252. 松島みどり

    松島委員長 次に、山川百合子さん。
  253. 山川百合子

    ○山川委員 立国社の山川百合子でございます。  早速ですが、あおり運転厳罰化について伺っていきたいと思います。  まず、午前中の参考人招致では、私も、三人の参考人の方から伺ったお話、大変参考になりまして、この法の改正案の意義と、またその課題というようなものも、ああ、なるほど、そういうことなんだなということ、大変参考になりました。また、いろいろ先生方質疑されているんですが、私も、こういうときはどうなるんだということと、この法改正によって期待される効果と、積み残されている課題というものを改めて伺っておきたいというふうに思います。  いろいろと個別のケースをちゃんと判断していかなきゃいけないということのやりとりであったというふうに思うんですが、じゃ、私自身が経験したことということで、この場合はどうなるんだということを一つ二つ伺っておきたいと思います。  この法の改正案は、先ほどもありましたけれども、同じところ、同じレーンを走っている車同士のことがいろいろな説明の中にも出てくるんですが、対向車はどうかということは先ほどありましたけれども、じゃ、並行している道路で車が走っている場合には果たしてどうなるんだということであります。  私の経験で、私は同乗していた方、運転はしていませんでしたけれども、何か突然、高速道路でしたけれども、隣、私は追越し車線、右側で、左側の車線にいきなりぼんと出てきたんですね。それで、並走というか、同じ速度で走って、車の中でこちらに向かって、何人か乗っていましたから、わあわあわあわあ何か言っているんですけれども、内容は聞こえませんでした。ただ、ずっと並走して、何かすごくプレッシャーもかかるし、なので、少し速度を緩めれば、こちらも緩める、それで、じゃ、少しスピードを上げて行っちゃおうかなと思っても、同じスピードでぐっとついてくるみたいな、そういう感じだったわけです。  そのときは結局、事故には特になったわけではもちろんないんですけれども、そういうような場合で、もし事故が起きた場合は果たしてどうなるのか。この法が改正されると、そういう場合はちゃんと裁かれるのかという。こちらはプレッシャーを感じて、それで、例えばとまってしまったり、停止云々と話がありましたけれども、とまってしまったことで事故が起こったりした場合はどうなるのかというのが一点。  もう一つは、ちょっと午前中もあったと思いますが、別に妨害する意図はなかったけれども、車線変更をしようとしたら、されまいとする車がぐっと加速して、されまいとしてぐっと加速したことで事故になった場合、この場合は一体どうなるのかということをケースとしてお伺いしておきたいと思います。
  254. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  まず、ちょっと、一番最後の事例から申し上げますと、通行を妨害する目的がなければ、これはもう、危険運転致死傷罪の今回の罪は成立しません。したがいまして、それは現行の四号、あるいは新設する五号、六号の処罰対象外であります。その目的は、先ほど来申し上げているとおり、積極的な意図を必要とするところでございます。  次に、先生の事例でございます。  高速道路一定速度で並走しながら相手方が接近したりなどすることによって事故になった場合ということでございます。  これはいろいろな事案が考えられるところでございますが、例えば、相手方がとまることなく前に割り込むように接近するなどして、そのときにその加害車両の方に重大な交通の危険を生じさせる速度があったような場合には、現行の危険運転致死傷罪の二条四号の罪が成立するところでございます。  それに対して、むしろ加害車両の方が前に出て前方で停止するなどした場合には、今回の関係で、今、被害車両一定速度を出している場合には五号が成立するところではございますし、また、場合によっては六号の罪が成立するところでございます。
  255. 山川百合子

    ○山川委員 このあおり運転というのは、午前中からの話を聞けば、質疑を聞けば聞くほど、やはり自分が被害者になると同時に加害者にもなるという可能性を必ず気をつけておかなきゃいけないなと。それは、意図がなくても、この法律で裁かれないとしても、やはりあおり運転というのは、自分がどちらかになる可能性を本当によくよく意識して運転しなきゃいけないなということを思っています。  それで、この法の改正によって期待される効果、そして積み残されている課題というものについて、私からももう一度伺いたいというふうに思います。大臣にお伺いをしたいと思います。
  256. 森まさこ

    ○森国務大臣 自動車運転死傷処罰法第二条の危険運転致死傷罪は、故意に危険な自動車運転行為を行い、その結果人を死傷させた者を、その行為の実質的危険性に照らし、暴行により人を死傷させた者に準じて処罰するものであり、暴行の結果的加重犯としての傷害罪傷害致死罪に類似した犯罪類型であり、同条に掲げられている危険運転行為は、先ほど来説明しているものでございます。  今般の法整備は、このような考え方を前提に、いわゆるあおり運転による死傷事犯の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするために、危険運転致死傷罪対象となる行為を追加するものであります。これにより、同罪の対象とすべき悪質、危険なあおり運転による死傷事犯に適切に対処することができるようになると考えております。
  257. 山川百合子

    ○山川委員 あわせて、積み残されている課題についてもお伺いをできればと思います。
  258. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  今大臣からも答弁がございましたように、今回の法改正は、あおり運転行為による死傷事犯の実情に鑑みて法整備を行うところでございます。  したがいまして、従前から規定のございます危険運転致死傷罪の四号の罪に加えて、今回、実情に合わせて、前方で停止するなどの行為規定して危険運転致死傷罪に加えるものでございますので、基本的に、現在の実情に鑑みますれば、これによって、あおり運転行為の対処として、危険運転致死傷罪としての、一応、処罰としては必要な範囲をカバーできるものと考えております。
  259. 山川百合子

    ○山川委員 必要な範囲はカバーできているという御答弁なんですが、午前中の参考人の皆さんからのお話の中でも、またカバーし切れないこともあるだろうから、そういう場合には、そういう事案があったらまた法改正を提案していきたいという橋爪参考人からのお話もあったかと思いますので、その点はどうお考えでしょうか。
  260. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、この危険運転致死傷罪というのは、人の生命身体の安全を保護するために、悪質な運転行為につきまして、傷害傷害致死類似の結果的加重犯として対処するものでございます。  したがいまして、繰り返しになりますが、現時点におきましては、その事案の実態に即した処罰をするために今回の改正で足りていると考えているところでございますが、その後いろいろな、また社会の実情が変化いたしまして、法改正の必要が出ますれば、これは刑罰法規でございますので、罪刑法定主義の観点から、きちんとそれに対処していくこともあり得ると考えております。
  261. 山川百合子

    ○山川委員 ありがとうございます。  続いて、コロナ関連の質問をさせていただきたいというふうに思います。  ラブホテルのことであります。風営法の関係ですけれども、ラブホテルがこのコロナ禍にあっても融資や給付、税等の特例が受けられないという御相談を私受けまして、これは私も御相談を受けて初めて認識したことですので、伺っていきたいと思います。  こういうようなメール、御相談、切実な訴えをいただきました。親の代から約四十二年間、事業継承しているあるラブホテルの経営者の方であります。切実な訴えです。  この方のお話によりますと、自分は、二〇一一年の改正風営法に従い、風営法上の移行手続をして合法的にラブホテルを経営し、誠実に納税の義務も果たしてきたのに、今回のコロナ禍で政府が打ち出している融資、給付、税等の特例を受けることができない、ホテルのスタッフに給料を払うことも、既に引退して高齢者となっている親を養うこともできず、このままではホテルを手放さなければならなくなってしまう、これは国による職業差別なのではないかという思いにまでさいなまれているというものであります。  そこで伺いたいんですが、ちょっと時間もあれですが、全部あわせて伺いますけれども、例えばなんですが、事業承継税制や中小企業強化税制等からラブホテルは除外されるのかどうか。また、ラブホテルが信用保証協会による保証の特例の適用外となっているようですが、それはなぜか。持続化給付金の対象からラブホテルが外されている理由は何か。そして、雇用調整助成金では、性風俗関連特殊営業は、そもそも通常の場合は助成対象外とされているようですが、今回の特例が適用となっていますが、それはなぜか。これはあわせて、小学校休業等対策助成金についても同じです。  以上について、それぞれの政府参考人から御答弁をお願いしたいと思います。
  262. 太田雄彦

    ○太田政府参考人 お答え申し上げます。  ラブホテルを含めまして、風営法に規定します性風俗関連特殊営業につきましては、公的金融機関がこれを支援する対象とすることは適切ではないとの考えのもと、信用保証協会の保証や日本公庫等の融資の対象外といたしております。  それから、持続化給付金につきましては、これまで中小企業支援対象範囲を踏まえつつ、できるだけ幅広い事業者を対象にしておりますが、他方で、ラブホテルも含めまして、風営法に規定する性風俗関連特殊営業につきましては、災害対応を含めまして、これまで一貫して公的金融支援や国の補助の対象とされていなかったことを踏襲いたしまして、対象外としております。
  263. 重藤哲郎

    ○重藤政府参考人 御質問の順番と前後いたしますが、税制に関してでございます。  まず、今お話ありましたように、ラブホテルというのは、風営法におきます性風俗関連特殊営業に該当するものと承知してございます。  その上で、まず事業承継税制ですが、この適用を受けるためには、その会社あるいは事業者が中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、いわゆる円滑化法に基づいて認定を受ける必要がございますが、円滑化法では、性風俗関連特殊営業に該当する事業を営む会社というのは、その認定の対象から除かれております。したがいまして、ラブホテルを営む会社などは事業承継税制の適用も受けることはできないということでございます。  また、中小企業強化税制におきましては、その中小企業等が取得した設備を指定事業の用に供するという必要がございますが、この指定事業の範囲からも性風俗関連特殊営業は除かれておりますので、ラブホテルを営む中小事業者等はこの税制の適用を受けることはできないということでございます。
  264. 山川百合子

    ○山川委員 済みません、雇調金の話はありましたか。
  265. 松島みどり

    松島委員長 呼んでいませんね。厚労省です、雇用調整助成金は。
  266. 山川百合子

    ○山川委員 そうなんですね。済みません、きのう通告した際に呼ばれているものと思っていました。そうですよね、厚労省。小学校の休業補償もそうですよね。じゃ、済みません、こちらのミスがあったんだと思いますが。雇調金は、通常は対象外だけれども、今回は生活支援ということで対象にしているというようなことを確認したように思いますが、ちょっと答弁いただきたかったんですが。  いずれにせよ、今の御答弁からすると、風営法上の性風俗関連特殊営業は除いているんだという御答弁であるというふうに理解をいたします。  じゃ、その風営法におけるラブホテルというのがどういうふうに位置づけられているかということを伺っていきたいんですけれども。  私自身は、今回この相談を受けるまで、ちょっと、ラブホテルについて意識をしたこともないですし、利用したこともないので、よくわからないというか。実は、私自身も、余りラブホテルというのは、何というか、余りいいイメージを持っていない。何となく、余り近づかない方がいいのかなみたいな、そういうイメージ、印象を持ってまいりました。  しかし、今回、他県の方からではあったんですけれども、相談を受けてみて、その切実な訴え、別に自分は反社会的勢力でも暴力団等とつながっているわけでもないし、ちゃんと納税義務も果たしているし、真っ当な営業を行っているにもかかわらず、こういう国家的危機、コロナ禍においても何の支援も受けられない、それは明らかに職業差別じゃないかという切実な訴えなんですね。  私、それを読んで、ああと思ったんです。自分自身が実態も知らない、使ったこともないし、入ったこともないし、見たこともないわけで、よく知りもしないのに、何かちょっといかがわしいというか、そういうイメージで私自身が捉えていたということに、今回の御相談で気づいたんです。私自身の中に、実は偏見とか差別、実態を知りもしないのに差別や偏見があるのかもしれないというふうに思って、調べてみたんです。  それで、調べてみると、私が抱いているような、私が抱いているというのは皆さんに伝わらないかもしれませんけれども、つまり、いわゆる性風俗関連特殊営業という中に位置づけられるのは、例えばソープランドだとか、ストリップ劇場、ポルノ映画館とか、あとファッションヘルス、アダルトショップなどが、一号、二号からずっと書かれているんですけれども、それと本当に並ぶものなのかという疑問を私自身が持つに至ったわけであります。  調べてみると、今のラブホテルは、一般のビジネスホテルの実態と、垣根というか、その違いが余りなくなってきている、そういう経営実態もあるのではないか、全てがそうかどうかわかりませんけれども、そういうところもあるのではないかというふうに思うに至ったわけです。  例えばラブホテルというのは、平成二十三年の法改正のときに、ラブホテルにするのか、旅館業法の一般のホテルにするのかというのは、フロントを設けて、フロントマンというんですかを設けるとか、そういう、デスクを置いてちゃんと対面でやるかどうかということが一つの基準になったみたいですけれども、つまり、自動支払い機の精算ができるかどうかという、それがラブホテルの特徴だったらしいんですが、今や、私自身も利用したことのある赤坂のその辺のホテルは、フロントマンを置かずに、誰も人がいないで、機械でやるんですよね。支払いして、それで終わりみたいな、一度も人に会わないでも寝泊まりできちゃう、そういう現状がある。  それから、アダルトビデオというのは、かつてはラブホテルでしか提供されていなかったサービスなんだそうですね。ところが、今は、さっきお昼時間に電話で確認しましたけれども、シティーホテルでもアダルトビデオはありますということでありました。  それから、男女が利用するというふうに一般的に思われていると思いますが、今は一人でそこを利用するというケースもふえていると。  それから、私に相談があった方のをちょっとネットで調べてみました、遠くでしたから。外観とか部屋の中も写真が出ていたんですけれども、別に普通のビジネスホテルと変わらないなと。いわゆる、私がイメージしていたような、何かネオンとかそういうのじゃないな、全然その違いはわからないな、そういう現状なんだなと。  さらに、東日本大震災のときは、被災者の家族連れ、みんなが家族でそこで寝泊まりするようになったと。  そういう実態があるという中で、果たしてこの風営法の、さっきから出ている、性風俗関連特殊営業、性的サービスをする、ここに分類されていることが果たして正しいのか、実態にかなっているのかということをきょうは問いたいわけであります。  そこで、時間も限られているんですが、あと二つ。まず一つは、ラブホテルの現時点での風営法上の位置づけと、ここの位置づけになっているこれまでの経緯をまず参考人に伺っておきたいと思います。
  267. 小柳誠二

    ○小柳政府参考人 お答えいたします。  風営適正化法の目的は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することにございます。  ラブホテル等営業では、このような観点から問題が生じ得ることから、所要の規制を設けているところでございます。  現に、ラブホテル等を発生場所といたしまして、昨年中、強制性交等を百六十八件、強制わいせつ等を四十三件認知しておりまして、また、本年一月から四月末までの数値でございますけれども、児童買春、児童ポルノ禁止法違反を百五十六件検挙しているところでございます。  ラブホテル等営業に対しましては、営業の禁止区域や十八歳未満の者の客としての立ち入らせの禁止等の規制を設けているところでございまして、これらの規制は引き続き必要なものというふうに考えてございます。
  268. 山川百合子

    ○山川委員 ありがとうございます。  今の御答弁で、いろいろと問題があるんだ、強制わいせつとか強制性交とか、いろいろあるんだということはお答えいただいたんですが、ラブホテルという営業そのものが、経営者がそれをあっせんなどしているということであれば、それはつまりラブホテルという業態がいけないということになりますが、そうではなくて、そこで、場所としてそれが行われるということをもって、それをもって性風俗関連特殊営業に今もって定めておき続けるのは、あるいは、もちろん、この中に定めるとしてもなお、ほかのものとは、性的サービスを直接その経営者があっせんするということとは切り離した形の法体系にすべきではないのかというのが、今回、そういう考えに私は至ったわけであります。  それで、私は今回初めてこのことに直面していろいろ調べたんですけれども、森大臣は、こういった問題、こういう現状とかこういった課題が提起されているということは多分御存じではないかと拝察いたします。  社会の変化や実態に合わなくなった法律は速やかに改廃するというのが近代法治国家の唯一の立法府である国会の使命なのではないかと私は思ってお聞きするんですけれども、例えば、風営法の二条六項四号には、専ら異性を同伴する客の宿泊の用に供する政令で定める施設というふうに書かれているんですが、今やLGBTのカップルなどもいますし、この法文一つとってもちょっと合わないなというふうに思います。  もちろん、ラブホテルが建設されるような、国民の理解が得がたい実例ももちろんあるでしょう。
  269. 松島みどり

    松島委員長 済みません、持ち時間が終了していますので、短く。
  270. 山川百合子

    ○山川委員 はい。  ですが、こういう社会の実態の変化に伴って、この法律の見直しというものの必要性について森大臣がどう思われるか、御見解をお伺いしたいと思います。
  271. 松島みどり

    松島委員長 では、簡潔によろしく。
  272. 森まさこ

    ○森国務大臣 お尋ねの法律法務省の所管外でございますので、法務大臣としてそのあり方についてお答えする立場にございませんので、お答えは差し控えさせていただきます。
  273. 山川百合子

    ○山川委員 じゃ、残念ですが、森大臣法律家としての意見を聞ければなと思いましたが、大臣としては答えられないということですので、関係の省庁に聞いていきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  274. 松島みどり

    松島委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  275. 松島みどり

    松島委員長 それでは、速記を起こしてください。  次に、藤野保史さん。
  276. 藤野保史

    ○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。  黒川検事長の問題につきましては、後ほど質問をさせていただきます。  まず法案についてですけれども、悪質なあおり運転を取り締まって事故を未然に防止していくというのは当然必要なことであります。しかし、午前中の参考人質疑でも参考人から指摘があったように、本法案というのは罪刑法定主義の観点から、参考人の表現をかりれば、表現が難しい、つまり、規定がかなり曖昧になっていて、検察官の裁量に左右されるという指摘もありました。つまり、処罰範囲が広がり過ぎるのではないか、こういう懸念が持たれているわけであります。ましてや、車の運転という国民の誰もがかかわる行為に関する刑罰規定新設であり、裁判裁判対象にもなります。やはり慎重な検討が必要だと思いますし、これからの答弁で、そういう処罰範囲が拡大し過ぎるのではないかという懸念をしっかりと払拭していく必要があると思っております。  その点、大臣に、基本的な考え方ですけれども、法制審でも、実際に裁判所の方が、適用される方がかなり懸念を表明されて、解釈上疑義が生じないようにしてほしいということも言われております。やはり、大臣としても、立法者意思としてはっきりとさせていく必要があるという御認識でしょうか。
  277. 森まさこ

    ○森国務大臣 法文に、処罰対象とすべきではないような場合も明記すべきではないか等の議論がされたことは承知をしております。  こういったことについて、さまざまな議論を踏まえて、これを条文化しようとしても当罰性のある場合を過不足なく捕捉できる要件を設けることが困難であることから、解釈上疑義が生じないようにすることにより対処することが相当であるというような議論がされたものと承知をしておりますので、この場、国会での審議や、また法制審での議論を踏まえて、本法律案趣旨や意義等について国民の皆様に適切な周知に努めてまいりたいと思います。
  278. 藤野保史

    ○藤野委員 現行法は、二条の四号で、「通行中の人又は車に著しく接近し、」という能動的に規定をしているんですけれども、改正案といいますか追加される規定は「著しく接近することとなる」という書きぶりでありますし、現行法が「重大な交通の危険を生じさせる速度」、生じさせる、ここも能動的な規定なんですけれども、改正案というのは「重大な交通の危険が生じることとなる」という規定ぶりであります。ですから、危険が生じることとなるという規定ですと、重大な危険が実際に発生してしまうと、能動的な行為は不要になって認定されてしまうおそれが、やはりどうしてもこの規定からは出てくると思います。  ちょっと具体的に聞きたいんですけれども、五号の要件によりますと、もう細かい要件は言いませんが、一般道での一時停車とか徐行とか、あるいは右折するので待っていて、信号待ちの状態で動き出したときとか、あるいは駐車場での駐停車、あるいはタクシーが、客がぱっと手を挙げたのでそれのためにとまるというような一時的な停止、こういうものも外形上は構成要件に当てはまる可能性があると思うんですが、こういうものを処罰範囲として限定していくというのはどのようにされるんでしょうか。
  279. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  御指摘の五号の罪は、被害者車両が重大な交通の危険が生ずることとなる速度で走行している場合に、加害者車両が通行妨害目的被害者車両の前方で停止するなど、両方の車両が著しく接近することとなる方法で自動車運転する行為危険運転致死傷罪対象とするものでございます。  この通行妨害目的というものは、再三申し上げておりますように、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することをいうものでありまして、これらについての未必的な認識、認容があるだけでは足りないものでございます。  お尋ねの行為がこの五号による処罰対象となるか否かにつきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係に基づいて判断されるべき事柄であるため、一概にお答えすることは困難でございますが、今申し上げたように、五号の罪は、単に停止することだけではなく、今申し上げたような意味内容を持った通行を妨害する目的との要件を満たす必要がございますので、この目的の要件を満たさない事案においてはこの五号の罪は成立しないと考えるところでございます。
  280. 藤野保史

    ○藤野委員 今、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図するという要件があるからこれで限定されるんだという御答弁でしたけれども、しかし、現行法の四号、現行法は、先ほど言ったように、著しく接近するという要件がありますので、ですから、そこはまず担保されるというのと、四号は、専ら通行を妨害する目的というのは規定しておりません。していないんです。今回もしていないんです。先ほどおっしゃったように、積極的に意図するで足りるとされているんですね。逆に、接近するという能動的行為は今回の要件から外れているわけで、審議会での議論でも、客観的要件がある意味広がるわけで、主観的要件で限定したらどうだ、例えば、専ら通行を妨害する目的、こういうものを入れたらどうだという議論もあったと思うんですね。しかし、結局、これが入っていないわけでありまして、本当に今答弁された積極的に意図するというこの要件で限定がされるのかというのは、やはり非常に私たちは懸念がまだあると思うんですね。  やはり、そういう意味で、五号の一般道でのさまざまな、正当なといいますか、普通の運転行為停止行為徐行行為、こういったものが本当に外形上、構成要件に当てはまって処罰対象になりかねないという部分をしっかりと限定をしていく必要があると思っております。  六号についてもお聞きしますけれども、高速道路上であっても渋滞中というのは、渋滞ですから停止とか徐行が繰り返されるわけですね。それが渋滞であります。この渋滞中に後続車両が追突して死傷事故が起こったという場合、それが、今言ったような積極的な意図を持って行われたものなのか、過失なのか、これは法文上、区別は難しいと思うんですけれども、過失事故と今回の法案による犯罪との事故をどのように区別するんでしょうか。
  281. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  お尋ねは、高速道路上で渋滞、すなわち車が徐行停止を繰り返している中で事故が起きた、こういった事案において、通行妨害目的を持った運転行為によるものなのか、それとも過失行為なのか、そこがわからないので、本来、通行妨害目的がない過失行為であってもこの危険運転致死傷罪対象となることがあるのではないか、そういう御趣旨の質問と捉えて、お答えを申し上げます。  高速自動車道等でございましても、渋滞によって他の走行車両徐行停止を繰り返しているような場合には、通行妨害目的で自己の運転する自動車被害車両の前方で停止させるなど、被害者車両に著しく接近することとなる方法で運転し、これにより被害者車両停止又は徐行させ、そのような行為によって人に死傷結果が生じたといたしましても、改正後の自動車運転死傷処罰法二条六号の罪の実行行為が予定している危険性が現実化したものとは言いがたいと考えますので、当該行為死傷結果との間の因果関係は認められず、同罪の処罰対象にはならないと考えております。  すなわち、目的の問題というよりは、今委員が指摘しているようなシチュエーションですと、もともと六号というのはとまっている車がないという前提状況での危険性に着眼していますので、徐行停止を繰り返している中ですと、そもそもが、仮に事故が起きて死傷の結果が生じたとしても、その六号の実行行為が予定している、繰り返しですが、危険性が現実化したものではないというところで、委員が御指摘のような事案につきましては、六号の危険運転致死傷罪成立が認められないと考えております。
  282. 藤野保史

    ○藤野委員 法制審の議論の中で、法務省の方はこう言っているんですね。今おっしゃられたような徐行停止を繰り返しているような状況であれば、やはり因果関係が認めがたいと。今おっしゃったとおりです。しかし、続けてこうおっしゃっているんです。渋滞が解消しつつあって、だんだん速度が上がっていく状態であれば適用があり得ると。だから、要するに、その区別というか境というか、今おっしゃったように、渋滞でとまっている、スタックしている、動かないというのであればわかるんですが、法制審自身で、だんだん速度が上がっていく状態であれば適用があり得るという話がされているわけで、そこはやはり懸念がまだ残っているというふうに思うんですね。  ですから、やはり、そういう意味で、法制審も実は二回しか議論されておりません。合わせて三時間三十分で、これだけの刑を新設するという議論が終わっているわけですね。先ほど紹介した島田東京地裁の判事の発言というのは、その二回目の最後最後のところで、もう矢も盾もたまらずという感じだったのか、ちょっと議事録からは読み取れませんが、二回発言されております、続けて。立法上明確にしてほしいという話と、そして、解釈上疑義のないようにしてほしいというような発言がまさに適用する側から出ているという、その法案の特殊性をやはり踏まえて議論する必要があるというふうに思っております。  最後に、これはもう大臣にお聞きしませんけれども、先ほどの参考人質疑の中では、要するに、厳罰化厳罰化対応していくという今のアプローチといいますか、一定その立法の必要性があるとしても、やはり本筋としては、被害者加害者も生まないというふうに和氣参考人もおっしゃっておりましたけれども、そういう被害者加害者も生まないための例えば公教育の徹底だとか、あるいは、一旦罪を犯した方でも、再犯防止の教育、再犯防止のプロセスの中でこうした認識を持っていただくようなことも必要じゃないかとか、あるいは、あおりはいらいらから起きるので、ちょっと私、具体的にはあれですけれども、運転の環境づくり、そういう状況に陥らないようなことも参考人から提起がされました。そうしたさまざまなイニシアチブを法務大臣に求めておきたいと思います。  その上で、黒川元検事長の問題についてお聞きをしたいと思います。  まず確認ですけれども、昨日の当委員会で後藤委員が質問されました。そのときに、黒川元検事長の処分内容について内閣と協議していないのかという後藤委員の質問に対して、大臣は、はい、協議しておりませんと答弁されました。これは間違いないですね。
  283. 松島みどり

    松島委員長 一度とめてください。     〔速記中止〕
  284. 松島みどり

    松島委員長 速記を起こしてください。  大臣
  285. 森まさこ

    ○森国務大臣 今、速記録を確認いたしました。  後藤委員の御質問において、「そうしますと、法務省と内閣側との協議においては、訓告だとか、あるいは懲戒処分だとか、処分の内容については具体的には一切議論にならなかったということですか。」という質問に対して、「はい、そうでございます。」と答えています。  これは、協議がなかったという意味ではございません。
  286. 藤野保史

    ○藤野委員 それではもう一点確認しますが、検事長については、検察庁法十五条により任命権者は内閣、そして国公法八十四条により懲戒権者も内閣、これは間違いないですね。
  287. 森まさこ

    ○森国務大臣 はい、そうです。
  288. 藤野保史

    ○藤野委員 懲戒権者でない者が懲戒処分をするかどうかを決定するというようなことになりますと、これは、人事行政上、大変な問題になります。ですから、懲戒権者は現行法で定められております。任命権者です。検事長の任命権者は内閣であり、処分権者も内閣。  大臣は、協議をしたと今おっしゃいました。処分権者である内閣と協議をしたのに、処分内容について話し合っていない、こういうことですか。
  289. 森まさこ

    ○森国務大臣 先ほど御説明いたしましたとおり、法務省から内閣に対し、事務的に、調査の経過の報告、先例の説明、処分を考える上で参考となる事情の報告等を行っております。  私の、内閣と協議した旨の答弁は、その法務省から内閣に対しそういった報告等を行ったことを申し上げたものでございます。
  290. 藤野保史

    ○藤野委員 経過や先例、いろいろな協議をされるのはいいんですが、内容について全く議論をしていないと。ということは、処分権者を差しおいて、処分権者、任命権者である内閣とは協議の中で全く処分内容については議論せずに、処分権者でない法務大臣と検事総長でお決めになった、こういうことですか。
  291. 森まさこ

    ○森国務大臣 内閣の一員である私、法務大臣において調査等を行い、さまざまな先例等の分析も行いました。その上で、懲戒処分ではない訓告が相当であるのではないかという意見に至りました。それについて内閣に報告したところ、その決定に異論がない旨の回答を得たものでございます。
  292. 藤野保史

    ○藤野委員 ごまかさないでいただきたいんですが、内閣の一員であろうと、内閣ではないんです。内閣というのは合議体であって、先ほど西村副長官も答弁されたように、内閣で意思決定する場合には、内閣に請議があって、それを閣議で決める、これは当たり前です。幾ら一員であっても、勝手に決められないんですよ。  大臣、もう一回お聞きしますけれども、懲戒処分にするかどうかという中身については全く協議されていないんですね。そうだとすると、処分権者を差しおいて勝手に、懲戒処分しないという判断大臣がされたということですか。
  293. 森まさこ

    ○森国務大臣 内閣が任命権を有する者について国家公務員法に基づく懲戒処分を行う場合においては、通常、所属府省の長として行政事務を分担する国務大臣が処分案の閣議請議を行い、閣議において懲戒処分を決定することとされているものと承知をしております。  すなわち、仮に検事長について懲戒処分を行う場合には、法務大臣から閣議請議を行うこととなります。したがって、まず法務省において検事長について懲戒処分を行うかどうかというのを検討するのは何ら不適切ではないと考えます。
  294. 藤野保史

    ○藤野委員 今のはちょっと新しい答弁なんですね。今の根拠はどこにあるんですか。行う場合は閣議請議するけれども、行わない場合は閣議請議しない、これは根拠は何なんですか。
  295. 森まさこ

    ○森国務大臣 今御答弁したとおりでございまして、通常そのようにされております。  そして、私の方で、懲戒処分ではない訓告が相当と決定した後、内閣に報告したところ、その決定に異論がない旨の回答を得ました。
  296. 藤野保史

    ○藤野委員 処分をするかどうか、ここがポイントなんです。するかどうか、ここを内閣が決めるわけですよ。しないと別の人が決めて、それを了とするなんという制度になっていないんです。するかどうかという重大な判断について任命権者ができるわけです。任命権者しかできないわけですね。これを、いわゆる処分権者である内閣が懲戒処分をしないと決めたのではなくて、任命権者とは別のところでしないと決めて、後で了とする。しかも、内閣ではなく総理が了とする、個人が。二重にそういう仕組みになっていないんですよ。  大臣のおっしゃるとおりなら現行法に反するんですけれども、そういうことが行われたということなんですか。
  297. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  国家公務員法八十四条、御指摘の条文は、「懲戒処分は、任命権者が、これを行う。」ということですので、懲戒処分を行う場合には、内閣の意思決定、すなわち閣議決定が必要でございますが、懲戒処分を行わないという閣議決定まで必要としているものではないと解されます。  したがいまして、大臣が先ほど答弁されましたように、懲戒処分を行う必要があるということ、この場合は検事長でございますから、検察を所管する法務省の主任の国務大臣であり、また主務大臣である法務大臣が、内閣の一員として、内閣による意思決定が必要な場合、すなわち懲戒処分を行う場合は、閣議請議をして、内閣による閣議決定を、内閣の決定をいただくものでございます。  しかしながら、懲戒処分を行わない場合には、これは内閣による決定という行為にはなりませんので、内閣による職権の発動がない状態になります。この内閣による職権の発動をしないということについて一次的に検討するのが、検察を所管する法務省であり、法務大臣であるということを大臣が答弁されているものでございます。
  298. 藤野保史

    ○藤野委員 一見、何か論理が通っているように見えますが、私は、逆に法の支配が崩れていくのをこの目で今見ているような気がしますよ。  要するに、処分権、今、冒頭確認しましたけれども、懲戒権者とは処分内容については協議していないというわけですよ。処分権者と協議していないもとで、懲戒にしないという判断をしたと。懲戒しないということだから閣議にかけなくていいんだと。全部、結果から後づけして、勝手に法の解釈を変えている。私は本当に、こういうやり方を与党の皆さんまでが是とするというのは、私は信じがたい。本当に信じがたい。  もともとこの定年延長自体が違法ですけれども、最後の処分のときでさえ、こうした処分の内容を処分権者とも全く協議しないで、任命権者とは別の人が処分をしないと決めて、処分をしないと決めたから閣議にかけなくていいんだと。そして、それを、内閣でもない総理大臣に報告して、異論がない旨を得たと。全くむちゃくちゃですよ。これが法治国家かということを本当に痛感というか、もう本当に許しがたいと思いますね。  内容について協議したのならまだわからなくもないけれども、任命権者と内容について協議していないと大臣は答弁した。そして、自分たちで決めたということでしょう、処分しないということを。こんなことは絶対許されない。後づけで何か理屈づけて、それを正当化しようなどということは絶対に許されません。  結局、最も自然なのは、先ほど、二十二日の指摘もありました、黒岩委員から。私も本当にそう思います。あの時点では、プロセスについて限って言えば、大臣の発言は、私はもっともだという部分が多かったですよ。結局、内閣で判断したと、それをなぜ認めないのか。それを認めて、その中身を議論すればいいと思うんです。今私が言っているのは、プロセスを皆さんがごまかしていらっしゃるから、プロセスをしっかりと認めた上で、中身の、処分の適否についても、これは当然問題になります。しかし、今は、まさに手続の部分であり得ないことが起こっているということであります。  それで、ちょっともう一点聞きたいんですけれども、大臣、要するに、この内閣がやっているというのは、私は、確かに行政権には一定解釈権はあります。しかし、その解釈というのは、ある法律規定について百八十度、これまで一貫して維持されてきた法解釈を百八十度変えるような、そんな解釈権までは内閣にはありません。それは事実上のその規定法改正であって、それは法改正を経るべきなんです。しかし、今行われているのは、まさに、今までずっと検察官には定年延長できないと言ってきた解釈を、できると百八十度変えるんですね。白を黒と言いかえるような話であります。これはもう解釈の範囲を超えていると思うんですね。  大臣、お聞きしますが、憲法上、行政権というのは法律に基づいて行わなければならない。やはり、百八十度異なる結論を出すことは、もはや解釈の範囲を超えていると思うんですね。そういう権限は、憲法上、内閣にはないんじゃないですか、大臣
  299. 森まさこ

    ○森国務大臣 法令の解釈あるいはその変更というものについて、決まった手続や方式があるわけではないものと承知をしております。  その上で、法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮するなどして論理的に確定されるべきものであり、検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと理解しております。
  300. 藤野保史

    ○藤野委員 至当ならば許されるとおっしゃいましたけれども、百八十度変えるような、白を黒というような解釈は、それはもう解釈ではないんですよ。  しかも、それがどういう説明で行われているかというと、安倍総理は二十二日の厚労委員会で、いわゆる閣議請議により閣議決定されるといった適正なプロセスを経たから、今回、この閣議決定は脱法的なものではないという答弁をされております。  しかし、逆に、閣議請議と閣議決定という行政府の中だけのプロセスで行われているからこそ問題なんですね。事実上の解釈変更というよりは、事実上の法改正に当たるようなことを閣議請議と閣議決定という行政内部のプロセスだけでやってしまった。これを放置しますと、政府が閣議決定で、法律の文言や制定、改正の経緯を全く無視して、それまでの解釈をどんどん変えていく、こういうことが許されかねない、許されてしまう。だから、国会で決めた法律がどのように運用されるかは全て政府次第ということになって、法の支配、法治国家としてのあり方の根幹が揺らぐわけですね、こういうやり方を許すと。  ですから、こういう解釈、そしてその解釈のもとになった閣議決定、これはもう絶対に撤回をしなければならないというふうに思うんですね。大臣、これは撤回が必要じゃないですか。
  301. 森まさこ

    ○森国務大臣 勤務延長についての解釈変更についてでございますが、検察庁法上、検察官について勤務延長を認めない旨の規定はございません。その上で、検察庁法で定められる検察官の定年による退職の特例は定年年齢と退職時期の二点であり、国家公務員が定年により退職するという規範そのものは、検察官であっても一般法たる国家公務員法によっているというべきであること、そして、勤務延長の趣旨は検察官にもひとしく及ぶことなどから、検察官の勤務延長について、一般法である国家公務員法の規定適用されると解釈したわけでございます。  有権解釈として、検察庁法を所管する法務省において適正なプロセスを経て解釈をしたものでございます。
  302. 藤野保史

    ○藤野委員 ですから、今のが、法解釈の範囲を超えた百八十度真逆の結論を導き出すための事実上の法改正だと言っているんです。  しかも、私は、規定がない理由などというのは聞いていないんですね。規定がない、勤務延長を認めるという規定はありませんと言いますけれども、そんなことは聞いておりません。現行法にちゃんと、六十三歳そして六十五歳になったらやめると、年齢だけで規定した規定はあるわけですね。この規定趣旨は答えずに、いや、その規定がない、認めないという規定はないと、またこれも読みかえて、勝手にすりかえて答弁をする。それで、認めない規定がない理由は見当たらないと。二重に、自分たちでつくり出して、認めない理由、規定がない、その理由が見当たらないと。当然ですよ。ですから、こういう解釈を超えたやり方で事実上の立法権の侵害を行う、そして検察官の独立性、ひいては司法権を脅かすということが行われているわけです。  先ほど、一般職の公務員とおっしゃいました、大臣。しかし、裁判官も検察官もいずれも国家公務員ですけれども、もちろん裁判官は特別職ですけれども、しかし、現行法は特別職の裁判官に準じて検察官には厚い身分保障を与えているわけですね。憲法七十六条に基づいて、裁判所法四十八条と検察庁法二十五条によって活動中の身分保障、そしてその出口として定年の部分については、裁判所法は五十条で、検察庁法は二十二条で、いずれについても年齢で。一切の延長や再任用が認められておりません。これが現行法なんです。ですから、検察官の特殊性からいっても、今言った一般職だからという理由は現行法に反するんですね。現行法が既に違う扱いをしているんです、一般職である検察官に。裁判官に準じているんです。  ですから、大臣、そうした解釈を超えた事実上の立法行為でこうした違憲、違法の定年延長を行った。ですから、大臣、これは撤回していただかないといけない。閣議決定と法案の特例部分、これを撤回しなければ、第二、第三の黒川氏が生まれるというふうに思います。  検事長経験者やあるいは特捜部という政治や巨悪と向き合い続けてきた皆さんがなぜ今回の法案そして閣議決定に反対しているかというのは、今申し上げたような重大な問題があるからですね。  ですから、この閣議決定の撤回、大臣、先ほど言った理由以外にこれを撤回しない理由というのはあるんですか。
  303. 森まさこ

    ○森国務大臣 まず閣議決定は、黒川前検事長の勤務延長についての閣議決定でございますが、この理由は、東京高等検察庁管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査、公判に対応するためには、同高等検察庁検事長黒川弘務の検察官としての豊富な経験、知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が必要不可欠であり、同人には、当分の間、引き続き同検事長の職務を遂行させる必要があると閣議請議に理由を書いて閣議決定したものであり、検察業務上の必要性に基づき勤務延長したものであり、適正であると考えております。
  304. 藤野保史

    ○藤野委員 どうしても定年延長が必要なら、法改正をすればよかったんです。私が言っているのは、それをせずに閣内だけで決定してしまった、これを許すと、今後、国会がどんな法律をつくっても閣議決定でその解釈が変えられて、百八十度違う結論が導き出されてしまう。どんな法律をつくってもそうなりかねないんです。ですから、今おっしゃったように、黒川さんがどうしても云々というのであれば、法改正をすべきであった。  しかも、この閣議決定に至る過程も、これまでの審議で、もうむちゃくちゃです。我々が、法務省内における解釈変更の検討を行ったことについての裏づけ根拠、裏づけ資料、これを求めましたが、今に至るまでまともなものは出てきておりません。内部メモ程度のものであります。  公文書管理法四条というのは、行政機関の意思決定過程の合理的な検証を可能にする文書の作成を義務づけている。にもかかわらず、これを出してこないんです。毎日新聞が情報開示を求めましたが、議事録などはつくっていないということが明らかになりました。野党側が、当該文書の作成日時だけでも明らかにしてほしいということで、その日時の電子プロパティー、この開示を求めましたけれども、これも拒否し続けております。あげくの果てには、口頭決裁だとおっしゃっている、この解釈変更は、省内で。口頭決裁で議事録なし、これで信用しろという方がよっぽど無理なんです。
  305. 松島みどり

    松島委員長 済みません。質疑時間が終了しましたので、短くお願いします。
  306. 藤野保史

    ○藤野委員 結局、法治国家を壊すようなこの法解釈と、その大もとにある閣議決定、そして法案の特例部分の撤回、これを求めて、質問を終わります。
  307. 松島みどり

    松島委員長 次に、串田誠一さん。
  308. 串田誠一

    ○串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。  きょう午前中行われました参考人質疑で、この法律の四号、五号、六号というものの関係が大変よくわかりました。参考人質疑を設定していただいた松島委員長には感謝をさせていただきたいと思います。  そこで、川原刑事局長にお聞きをしたいんですが、何度か、妨害する目的の中に、積極的に意図するということで限定をするような発言がございましたが、この限定がないままこの法律が運用されるということは問題があるんでしょうか。
  309. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  通行妨害目的というのは、危険運転致死傷罪、現行の四号がつくられたときに入ったものでございまして、先ほど来大臣からも答弁されておられますように、危険運転致死傷罪というのは、悪質な故意の危険な運転行為に着眼して、傷害罪又は傷害致死罪類似の結果的加重犯として重く処罰するものでございます。そういった罪の処罰の範囲を的確に画する、すなわち、処罰範囲をそうやって重い処罰に値する行為に限定するためにその要件を設けまして、そのとき以来、積極的に意図するというものであるということで説明をさせていただいております。  したがって、そういった処罰の範囲を画するという観点からは、積極的に意図するというところが必要であると考えておりまして、今回の法改正で加えます改正後の五号、六号においても同様の考えをとっているところでございます。
  310. 串田誠一

    ○串田委員 その説明は大変よくわかったんですが、この法律には、積極的に意図するという文言が一切書かれていないですよね。何で書かれていなくていいんですか。
  311. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  今回の場合は目的であり、主観的要件でございます。同じように主観的要件として故意がございますが、目的というもので、事実の認識、認容を内容とする故意とは違いますので、目的という観点から、積極的に意図するという意味合いを持つものというふうに理解できるところでございますので、こういった書き方をしているところでございます。
  312. 串田誠一

    ○串田委員 いや、そうじゃなくて、この文言からは、専らとか、今、藤野議員からもありましたし、今回は積極的に意図するということにしたんだという解釈をされた。例えば、車の通行の妨害を積極的に意図する目的でというふうに文言を入れることもできたわけでしょう。その文言を入れないで、解釈論として限定するんだというふうに言っていらっしゃる。これは大変よくわかるんですよ。  そして、私たちは、この解釈論でこの法律に賛成するんです。文言には書いてないんですよ。文言には書いてないけれども、国会の審議でそういう限定が加えられたということを確認し、議事録に残したからこの法案に賛成するんですよ、森法務大臣。この法文ではわからない。先ほど森法務大臣も、国会の審議を大事にしていきたいとおっしゃった。その審議で、私たち、一生懸命限定しているんですよ。そして、今、川原刑事局長も、限定というものを、議事録として、発言されて残している。だから賛成するんですよ。その限定がなかったら、これは賛成できる法案じゃないですよ。  それを、後になって、国会審議がなされたことを無視して解釈変更をしていくということがあれば、今、国会でこの議論をしているのは何のためになるのかということを私は申し上げたいんですよ。  ここの法文に書いていないのに、積極的に意図すると言うから賛成したけれども、森法務大臣、将来、その積極的に意図するという解釈論を外すことも、森法務大臣はあるんですか。
  313. 森まさこ

    ○森国務大臣 先ほど御答弁したとおりでございますが、この国会審議において議論したことを忠実に守ってまいりたいと思います。
  314. 串田誠一

    ○串田委員 それでしたら、昭和五十六年の国会審議、そういうものも尊重してくださいよ。じゃなかったら、何のために国会審議をしているのかわからないじゃないですか。法律の文言に書いていないんですよ。それを、限定する解釈をして議事録に残しているから、私たちは賛成するんですよ。それを無視されちゃったら、国会は必要ないじゃないですか。私が言わんとしていることを、森法務大臣、もう何度も言っているので、ぜひ理解していただきたいんですよ。そのためにやっているんだから。まあ、これは長くやってもしようがないので。  私が解釈変更に反対をしているのは、国会を大事にしてくださいよ、三権分立で唯一の立法機関なんだから。そして、こうやって一生懸命審議して、限定しているから賛成するんだから、こういう審議を大事にしてくださいよ。  ちょっと、これはまた後にいたしまして、きょうは、きのうちょっと残してしまっている、川原刑事局長と、かけマージャンの件でちょっと確認したいんですが。  点ピンということがレートが低いという話だったんですけれども、いろいろな意見が今飛び交っていて、千点百円、これはマージャンを知らない人はもともとがわからないんですけれども、千点二百円はだめなのか、三百円もだめなのか、百円ならいいのかと。  ところが、私、思うんですけれども、今回は午前一時、二時までやっているわけですよ、非常に長時間。千点百円を長時間やっているかけマージャンの時間というのは全く考慮されていない。例えば、千点二百円を一時間一回こっきり、千点三百円を一回こっきり、動くお金は、もちろんそっちの方が低いと思いますよ。千点百円でも、長時間だらだらだらだらだらだらやっていれば、当然動くお金は大きいわけでしょう。  そういうような態様みたいなものは国民は何にも知らないんですよ。何で、千点百円でレートが低いということで、情状酌量で有利に扱うことができるのか。そして、それはどこに書いてあるんですか。国民も知りたいんですよ。書いてあるところを示してくださいよ、川原刑事局長。
  315. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答えを申し上げます。  まず、私が、二十二日のこの衆議院の法務委員会でそのレートについて御説明をいたしましたが、レートが唯一、黒川検事長の処分を決める際、処分量定の際の要素となるものではございませんで、例えば、私、そのときに申し上げていることでございますが、旧知の間柄でという、やっているメンバー、先ほども別の委員からの御質問のときに、常習性認定としてということで申し上げたところでございますが、そういったものも全て考慮しておりますので、まず一つは、レートだけでないというところを御理解いただきたいと思います。ですから、どのレートならいいのだ、どのレートなら悪いのだということはなかなか言えることではございません。  また、別の観点で申し上げますと、再三にわたって御説明申し上げておりますが、私の答弁は、処分をするという前提で、その処分の程度を考える際の事情の一つとして申し上げておりますので、どのレートなら許される許されないという観点で、このレートだから処分をしないんだというものではないということを御理解賜りたいと思います。  その上で、いわばその態様でございます、賭博の態様をどうして考慮できるのかという御質問だろうかと思いますが、人事院の「懲戒処分の指針について」というところでございまして、ここの第一、基本事項というところがございます。本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである、具体的な処分量定の決定に当たっては、1非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったかということでございまして、その非違行為とされるべきものの態様がどういうものであったかということを考慮するということとされておりまして、その態様として、先ほど申し上げました本件の処分対象となったマージャン行為の態様、状況について御説明をしたものでございます。  あと、重ねて申し上げますと、レートが低くて長時間マージャンとレートが高くて短時間マージャンというような御指摘がございましたが、レートの問題は、マージャン行為の態様という意味では、射幸性の程度というものにかかわるものであろうと考えております。
  316. 串田誠一

    ○串田委員 長々と説明していただきましたけれども、百八十五条の賭博罪には一切そんなことは書いてないわけですよ。その情状の有利さというのを知っているのは、川原刑事局長も検事だし、起訴する側ですよ。起訴される国民は何も知らないんですよ。少しでもやっちゃいけないと思っている国民だっていっぱいいるのに、そういう態様、旧知ならいいんだとか、時間はこのぐらいでも千点百円ならいいんだとか、検察官のマージャン仲間の人たちがやっているのなら、それはよくわかっているのはいいですよ。国民は知らないんだもの。それを、自分たちの身内のやった行為に対して自分たち判断基準で説明をするというのは、国民は納得しないと思いますよ。  余りこれをやっていると大事な法案の審議ができないんですけれども、きょうの参考人質疑のときに非常にまだまだ時間が足りなかったというところがありまして、よってという因果関係のところなんですが、先ほど川原刑事局長も、本件は結果的加重犯という話をされていました。そこで、非常に昔からある議論なんですが、行為と結果に対する関係、これが議論されています。条件説とか、いろいろありますよね、相当因果関係説とか。これはどういう説で適用されていくというふうに考えたらよろしいですか。
  317. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  加害者妨害運転と人の死傷結果との間の因果関係がどのような場合に認められるかということにつきましてでございます。  これは、具体的なものについては、個々の事案における具体的な事実関係によるものでありまして、一概にお答えすることは困難であるということは御理解を賜りたいと思います。  その上で、一般論として申し上げますが、因果関係の考え方には今委員御指摘のようなさまざまなものがございますが、あくまでも一つの裁判例として申し上げますが、危険運転致死傷罪危険運転行為死傷の結果との間の因果関係については、同条、この危険運転致死傷罪を指しますが、同条が過失運転死傷罪に該当し得る運転行為のうち特に危険な類型について重罰を科している趣旨を踏まえても、刑法上の因果関係と別異に解すべき理由はなく、行為後の介在事情がある場合についても、実行行為死傷の結果を引き起こす危険が内在し、それが具体的に現実化したものと評価できる限り、本罪の成立を否定すべき理由はないと判示したものなどがあるものと承知しております。
  318. 串田誠一

    ○串田委員 きょうの午前中の久保参考人も、危険の現実化というのを話していました。因果関係の、この結果的加重犯で有名な昭和四十二年十月二十四日の事案ですと、一見、最高裁が相当因果関係説になったのかなという議論がなされているんですが、現在は、今言われたような危険の現実化説という部分なんでしょうけれども、折衷的相当因果関係説とか、一般人と当事者というようなメルクマールがあるんですが、危険の現実化説というのは、久保参考人も、これが広く解釈されるのではないかというおそれを主張されていたんですよ。  この危険の現実化というのは、何かはっきりとしたメルクマールというのはあるんでしょうか。
  319. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  因果関係について危険の現実化論という場合でございますが、それは、結局は、実行行為に内在している危険というのは個々の事案によりまして異なるものでありますので、個々の事案の事実関係のもとで、それが実行行為に内在する危険が現実化したかどうかという判断をすることになります。
  320. 串田誠一

    ○串田委員 そういう個々の判断にしてしまうとメルクマールにならないから、それをみんな一生懸命、どんな場合にでも普遍的に適用するために基準はつくって、いろいろ学説が議論されているわけですよ。個々に判断したんだったらこれは罪刑法定主義にもならなくなってしまうので、そこら辺は明確にしなきゃいけないという参考人の懸念というのは非常によくわかると思うので、これはやはり明確にしていく必要があるのかなと私は思うんですけれども。  もう一つ、結果的加重犯というのは、結果に対しては過失犯ですよね。  ところで、今回のその死傷に対する、結果というのがどういう場面で発生するんだろうかと思ったときに、非常にちょっとわかりづらい部分があるんですね。  例えば、急に前方に入ってとまるといった場合、どういう状況死傷が起きるのかというイメージというのが湧きにくいんですが、一番、ほかの委員からも想定された例として、追突事故というのがあると思うんですよ。死傷という結果というのは、今、私がイメージとして追突というのが一番大きいのかなと。例えば、それを避けるために横にぶつかっていくというのもあるのかもしれないけれども、直前に入って、そこに衝突をして亡くなるというのが、まあ、東名高速道路の場合、第三者が入るので後でちょっと質問したいんですが、そうじゃなく、追突というイメージもこれで考えているという理解でよろしいですか。
  321. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  今委員、追突というのは、要するに停止した加害者車両被害者車両衝突するということでございますが、今回のように、停止その他著しく接近することとなる方法でという形で実行行為が行われた場合に、被害者車両がそれを避けるためにとっさにハンドルを切って横に出て、当該加害者車両以外のものに衝突するなどして事故が起きることもありますので、そういったことも念頭に置いております。
  322. 串田誠一

    ○串田委員 そういったこともということなんですけれども、衝突も十分あるわけでしょう。
  323. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  今の御趣旨は、被害者車両加害者車両に追突する衝突、当然、それも念頭に置いております。
  324. 串田誠一

    ○串田委員 その場合、それが非常に私は多いのかなと。動画を見ても、目の前に急にぱっととまって、ぶつかるんじゃないかというすごい心配があるんですけれども。  業界で有名な赤い本というのが、過失相殺の例があって、追突事故の場合には原則二〇%、八〇%で、追突側が八〇%なんですよ。そして、前方の車が著しい過失が、重大な過失がある場合には二〇%加算されるんですね。  要するに、前方に入ってきた車は、本来、追突をされたとき二〇%なんだけれども、著しい重大な過失、この結果的加重犯、過失犯なんでしょう。ですから、ぶつかるとは思っていないわけですよ。それはいいですよね。ぶつかるとわかっていたら過失犯にならないから、結果的加重犯じゃないですよね。過失犯なんですよ。ぶつかると思っていないでとまるんだから。そこに衝突をされた場合に二〇%になる。衝突する側は六〇%なんですよ。  要するに、こういう場合に衝突をした場合でも、衝突した方が過失が多くて、過失運転死傷、要するに、過失、ぶつけてしまった、今回の危険運転をした加害者の方がけがをした場合には、ぶつけてしまった方が過失運転死傷罪に該当するということがあり得るということですか。
  325. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  今委員の御指摘の事例は、いわゆる危険運転致死傷罪ではない追突事故の例をお考えになっておられるんですが、危険運転致死傷罪というのは、危険な運転行為については故意行為でございます。ですから、今回のお願いしている五号、六号で申し上げますと、通行妨害目的を持って、停止するなど著しく接近することとなる方法での運転行為としていますので、ここが故意ですので、故意にとまった車、通行妨害目的を持ってとまった車があって、そこにぶつかる事例ですから、過失過失と、両者の過失前提とした過失犯の話、過失相殺の話にはならないというふうに考えております。
  326. 串田誠一

    ○串田委員 ただ、衝突をするということは認識していないわけでしょう。そこの部分は過失になるわけでしょう。いいんですか、それで。それは、議論がされた今、回答ですか。
  327. 川原隆司

    ○川原政府参考人 お答え申し上げます。  繰り返し申し上げますが、結果的加重犯の場合は、結果の発生については認識がないというものの、故意犯の基本行為を基礎として重い処罰をするものでございまして、今回も同じでございますから、先ほど申し上げましたように、通行妨害目的を持って故意に構成要件該当行為を行っているという関係でございますから、もうその段階で通常の過失犯ではございません。全体として、故意行為を基本行為とする結果的加重犯が成立しておりまして、その行為はもはや過失犯としては捉えられませんので、過失相殺の関係には立たないものと考えます。
  328. 串田誠一

    ○串田委員 また後で皆さんと議論をしたいと思うんですけれども。  ちょっと質問をかえたいんですが、国民が一番心配しているのは、あおり運転をされているときに怖いなと。あおり運転で、結果でけがをしたとかなんとか、助けてくれという法律はわかるんですけれども、一番心配なのは、やはり、あおり運転をされている最中、助けてくれ、怖い人間が今前に蛇行運転してきているぞというところだと思うんですけれども、この場合どうしたらいいかという通告をさせていただいているんですが。  今、スマホを運転中にいじるといけないというのはあります。ただ、高速道路の場合に、とまるということができない。とにかく目の前にいて怖い、何とかしてほしいと。とまれば、この前の動画のように、おりてきてぶん殴ったりとかするわけですから、とにかく今この状態で警察に連絡をしたいというようなことが私はあるのかなと思うので、ちょっとここを、国民も心配というかわからない部分もあるので明確にしておきたいんですが、この危険運転をされている状況のときにはスマホ等で一一〇番通報するというようなことは許されるのか許されないのか、お聞きしたいと思います。
  329. 高田陽介

    ○高田政府参考人 お答え申し上げます。  運転中に携帯電話を使用するということは道交法上禁じられておりますので、今この場で、それが適法であるということはちょっと申し上げられないんですけれども、いずれにいたしましても、警察においては、今、あおり運転を受けた場合につきましては、相手を先に行かせるですとか、あるいは安全な場所、例えば高速道路ですとパーキングエリアですとか、そういったところに避難をして、車外に出ることなく一一〇番通報することなどについて広報啓発を行っているというところでございます。
  330. 串田誠一

    ○串田委員 ドライブレコーダーが、四〇%でしたか、ただ、一〇〇%持っているわけではない状況の中で、危険運転をされたときに証拠として残さなきゃいけないという思いが私はあるのかなと思います。今ちょっと回答も難しいとは思うんですが、相手方が違法行為を行ったときには緊急避難的な違法性阻却事由もあるのかなというふうに思うんですが、そういう検討も可能であるかどうか。きょう、ちょっと細かいところはわからないと思うんですが、全くだめだと言い切ることは今回できないという説明でよろしいですか。どうでしょう、その点。
  331. 高田陽介

    ○高田政府参考人 お答え申し上げます。  そういった緊急の場合に、違法性が阻却されるという場合もあり得るのではないか、全て否定されるということではないのかなというふうに考えております。
  332. 串田誠一

    ○串田委員 その点も含めまして周知徹底をこれからしていくということをお願いしたいと思います。  時間になりました。ありがとうございました。
  333. 松島みどり

    松島委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  334. 松島みどり

    松島委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出自動車運転により人を死傷させる行為等処罰に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  335. 松島みどり

    松島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  336. 松島みどり

    松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  337. 松島みどり

    松島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会