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森国務大臣 法務大臣の
森まさこです。
松島みどり委員長を始め理事、委員の皆様方には、平素から
法務行政の運営について格別の御理解と御尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。
現在、
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、国民の間に大きな不安感が広まっています。政府は、国民の生命と健康を守るために一丸となって
各種取組を進めており、法務省としても、徹底した
水際対策を始めとして、
感染拡大の防止に向けた措置を講じてまいります。
もうすぐ三月十一日です。
東日本大震災及び
原発事故から九年になります。改めて、震災により犠牲となられた方々に謹んで哀悼の意を表します。私は、
閣僚全員が
復興大臣であるとの意識を共有し、被災者の心に寄り添って、被災地の
復旧復興や被災者の
生活支援に全力で取り組む所存です。
私は、
法務行政を通じ、ジャスティス、すなわち正義が保たれる公正な社会の実現に向けて、真摯に取り組んでまいります。このような決意のもと、本年京都で開催される第十四回
国連犯罪防止刑事司法会議、
京都コングレスの標語を、ピース・アンド・ジャスティス・フォー・オール、平和と公正を全ての人へといたしました。これは、国連で採択された持続可能な
開発目標、
SDGsの十六番目のゴールでもあります。法の支配を貫徹することによって全ての人が平和と公正を享受できる社会を実現していくことは、
法務行政に課された責務であると考えています。
また、本月二十六日、
被災地復興の炎として、福島県から
聖火リレーがスタートし、いよいよ
東京オリンピック・
パラリンピック競技大会が開催されます。法務省は、各種の
犯罪対策、的確な
出入国管理、
人権施策の推進など、大会の成功に向けて、そして大会後をも見据えて、安心、安全な社会の実現に力を尽くしてまいります。
性犯罪は、被害者の人格や尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続ける悪質重大な犯罪であり、厳正な対処が必要です。
性犯罪の
無罪判決が相次いだことをきっかけに、
フラワーデモが
全国各地で行われるようになり、それまで声を上げられなかった
性被害当事者の方々が声を上げています。
平成二十九年に成立した性犯罪に関する刑法の一部を改正する法律の附則では、施行後三年を目途として性犯罪に関する総合的な施策のあり方を検討することとされています。法務省では、この検討に資するよう、性犯罪の
実態把握等を進めてきたところであり、現在、その
取りまとめ作業を行っています。今後、その結果を踏まえ、
性被害当事者等の声にも引き続きしっかりと耳を傾けながら、適切に対応してまいります。
児童虐待の根絶のためには、何よりも子供の命を守ることを最優先として、その予防や
早期発見、被害に遭った児童の保護などに総合的に取り組むことが重要です。昨年政府が取りまとめた「
児童虐待防止対策の
抜本的強化について」や、本年二月に策定した
法務省児童虐待防止対策強化プランに基づき、
児童相談所等の
関係機関と緊密に連携しつつ、
法務少年支援センターにおける心理に関する
専門的知見を生かした支援等の取組を着実に推進してまいります。
東日本大震災及び
原発事故に伴う風評に基づく
差別的取扱いや子供への
いじめ等の人権問題が現在も存在しています。被災地や被災者の方々に対する心ない差別、中傷は断じてあってはならないものであり、
人権擁護機関による相談、
調査救済活動等を通じ、毅然として対応してまいります。
女性や子供、高齢者をめぐる人権問題、障害等を理由とする差別、ヘイトスピーチを含む外国人に対する
人権侵害、
部落差別などの同和問題、性的指向、性自認を理由とする偏見や差別、インターネットを悪用した名誉毀損や
プライバシー侵害等のさまざまな人権問題を解消するため、個別法規を駆使しながら、
人権侵害に対する
調査救済活動等に丁寧かつ粘り強く取り組みます。
心のバリアフリーとして、誰もがお互いの人権を大切にし、支え合う
共生社会を実現するための
人権啓発活動を推進し、
ハンセン病患者、元患者やその家族が置かれていた境遇を踏まえた
人権啓発活動にしっかりと取り組んでまいります。
親によって出生の届出がされておらず、無戸籍となっている皆様について、徹底した
実態把握や丁寧な
手続案内をするなどの取組を行うとともに、さらなる方策をも検討し、無
戸籍状態の解消に取り組んでまいります。
民事基本法について、社会の変化に対応するために、必要な見直しを進めてまいります。
子供の貧困の原因の一つである養育費の不払い問題について、
関係省庁と連携しながら、その解消に向けて積極的に取り組み、子供の未来をしっかり守ってまいります。そのほかにも、面会交流の問題等、両親が離婚した後の子供の養育のあり方に関する問題を含め、現在行っている
家族法制等についての検討を引き続き着実に進めてまいります。
また、施行を控えている
成年年齢の引下げや
債権法分野の民法等の改正については、円滑な施行に向けた準備と国民への周知に全力を尽くします。
近年、所有者不明土地問題がさまざまな場面で問題となっており、その対策は、政府全体として取り組むべき重要な課題と認識しております。その解決に向け、
相続登記の促進のための取組や
表題部所有者不明土地の
解消作業などの諸対策を着実に実施してまいります。
さらに、所有者不明土地問題の抜本的な解決に向けて、現在、
法制審議会において、民法及び
不動産登記法の改正についての
調査審議をいただいているところであり、引き続き、
関係省庁とも連携して、法改正に向けた具体的な検討を行ってまいります。
相次ぐ大
規模災害に対する
復旧復興支援に全力で取り組みます。
登記嘱託事件等の適切かつ迅速な対応、倒壊するなどした建物の登記官の職権による
滅失登記、登記所備付け地図の整備、
法テラスによる
無料法律相談など、被災地の御要望、需要をしっかりと把握しながら取り組んでまいります。
国民の
権利利益の保護を図るためには、国として、多様な訟務機能の
充実強化が重要です。国の利害に関係する訴訟に対する指揮権限を適切かつ効果的に行使することはもとより、国内外の
法的紛争の
発生そのものを未然に防止するための
予防司法機能の強化を図ります。また、
関係省庁と緊密に連携して、
国際訴訟等への対応も強化いたします。
法曹養成制度については、国民の期待に応えられる法曹を養成するための取組を進めることはもとより、先般の法改正に基づき、
文部科学省等としっかり連携して、より多くの有為な人材が法曹を志望するための取組をも積極的に進めてまいります。
令和四年の民法の
成年年齢引下げをも見据え、
関係機関とも連携しながら、対象世代や現場のニーズに応じ、多くの国民が法教育に触れる機会を持てるよう、積極的に取り組みます。
法テラスでは、
福祉機関等と連携して
高齢者等の総合的な
問題解決を図る取組や、我が国の
法制度等の情報を多言語で提供するサービスを充実させるなど、多様化する社会の要請に応えるための支援に取り組んでいます。今後も、
法テラスの取組の周知、広報に努めるとともに、国民の司法へのアクセスを支援するための業務の円滑な実施と体制の充実を図ってまいります。
司法の中核をなす裁判所の体制の
充実強化等を図るため、判事の増員などを内容とする
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしました。十分に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
急速に進展するAIや
ICT等の技術革新への対応は、業務を効率化し、司法や
法務行政の質の向上を図るとともに、
ビジネス環境を整備し、日本の
国際競争力を高める上でも急務となっています。
民事裁判のIT化を始めとした司法、
法務行政の分野における新たな技術の活用及びその実現に向けた
基盤整備を強力に推進してまいります。
再犯防止推進計画及び昨年十二月に
犯罪対策閣僚会議で決定された
再犯防止推進計画加速化プランに基づき、
関係省庁や
地方公共団体との連携を一層推進します。就労、住居の確保、高齢者や障害のある者、薬物依存を有する者、
満期釈放者を始めとした
刑事手続を終了した者への支援など、犯罪や非行をした者の立ち直りに必要な指導、支援を適切に実施するとともに、
地方公共団体が行う
再犯防止の
実施体制の構築に向けた支援や、保護司、
更生保護施設、
協力雇用主等の民間の皆様の活動への支援を、より一層
充実強化してまいります。
犯罪被害者の御負担に関するさまざまな御指摘等を踏まえ、
犯罪被害者等基本法の理念にのっとり、
犯罪被害者等の
権利利益の保護を図るための
各種制度を適切に運用し、きめ細やかな対応に努めてまいります。
いわゆる
あおり運転による死傷事犯の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするため、
通行妨害目的で走行中の車の前方で停止する行為等を
危険運転致死傷罪の対象に加えることについて、
法制審議会に諮問をし、その答申を得ました。これを踏まえ、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案を今国会に提出いたします。
近時、懲役等の刑が確定した者や保釈中の
被告人等の逃亡事案が相次いで発生していること等に鑑み、これらの者の逃亡を確実に防止し、公判期日への出頭や刑の執行を確保するための刑事法の整備について、先般、
法制審議会に諮問をいたしました。今後、審議結果を踏まえて、必要な法整備を進めてまいります。
国民の皆様が安全に安心して暮らせる社会を実現するため、
関係機関とも連携し、
組織犯罪等への対応を含め、
治安確保のための万全の対策を講じてまいります。
また、国内外における
テロ関連動向の把握に努め、
関係機関との連携を緊密にしつつ、
情報収集・
分析機能の強化に努めてまいります。
現在、アレフ、山田らの集団及びひかりの輪を中心に活動するオウム真理教については、引き続き、
団体規制法に基づく観察処分を適正かつ厳格に実施し、
地域住民の不安感を解消、緩和するとともに、公共の安全の確保に努めてまいります。
北朝鮮に対しては、今後も
人的往来の
規制強化措置等を適切に実施していくとともに、核・
ミサイル関連の動向、日本人拉致問題を含む
対外動向や
国内状況等について、
関連情報の収集、分析等を進めます。また、
尖閣諸島関係についても、
関係機関と連携し、遺漏のない対応をいたします。
東京オリンピック・
パラリンピック競技大会の開催を控え、我が国の安全、安心を脅かす危険な行為に及ぶおそれがある者らに対する毅然とした
入国管理を行う必要があります。その上で、
観光立国推進に向けた円滑な
入国審査と、厳格な
入国管理を高度な次元で両立させるため、
顔認証ゲートなどの
世界最高水準の技術を活用し、
入国審査のさらなる高度化を進めてまいります。
また、不正な
出国防止のため、
関係機関と連携し、出国時の手続のより一層の厳格化に努めてまいります。
あわせて、
新型コロナウイルス感染症の
感染拡大の防止に向け、
関係機関との連携を一層強化し、
水際対策に万全を期す所存です。
特定技能制度については、
外国人材の皆様に我が国で十分に力を発揮していただけるよう、制度の適正な運用に努め、
技能実習生や留学生についても、適正な受入れを図るため、運用上の改善に取り組んでまいります。
外国人との
共生社会の実現については、昨年末に改定した
外国人材の受入れ・共生のための
総合的対応策などを踏まえ、
出入国在留管理庁による
総合調整機能を果たしつつ、関係府省庁と十分に連携して、
一元的相談窓口に係る
地方公共団体への支援の拡大、
在留支援のためのセンターの設置、易しい日本語の活用に関するガイドラインの作成などに取り組んでまいります。
また、外国人による
医療保険の利用について、
厚生労働省と協力して、
健康保険法の改正を踏まえた適正な運用の確保に努めてまいります。
難民認定制度については、引き続き、真に庇護を必要とする申請者には、早期に安定した
在留許可をするなどの配慮を行い、濫用、誤用的な申請者には、事案の内容に応じて在留を許可しないなどの厳格な対応を行うことにより、制度の適正な運用に努め、難民の迅速な保護を図ってまいります。
退去強制令書が発付されたにもかかわらず、さまざまな理由で送還を忌避している者に対しては、
適正手続にも十分配慮しつつ、迅速な送還の実現及び
長期収容状態の着実な解消に努めてまいります。
もとより、被収容者の人権に配慮した、適正な処遇につきましても、改めて徹底してまいります。
京都コングレスでは、法の支配や
基本的人権の尊重といった普遍的、
基本的価値や
国際協力の重要性を
国際社会に強く打ち出すべく、指導力を発揮してまいります。また、この機会に、我が国の
刑事司法制度に対する正しい理解を得るため、積極的に
国際発信を行うとともに、各国の
司法関係閣僚と対話を行います。
京都コングレスに先立って、
ユースフォーラムを開催し、未来を担う世界の若者に、安全、安心な社会の実現への関心を高めてもらうとともに、
グローバル人材の育成に貢献いたします。
我が国における
国際仲裁の活性化に向け、虎ノ門の
仲裁専用施設も十分に活用しつつ、
関係省庁、
関係機関と連携しながら、
仲裁人等の専門的な
人材育成、国内外における広報、
意識啓発等の
基盤整備を進めてまいります。
また、
法律事務の
国際化等により的確に対応するとともに、
国際仲裁のさらなる活性化に向けた
基盤整備を推進する等のため、
外国弁護士による
法律事務の取扱いに関する
特別措置法の一部を改正する法律案を第二百回国会に提出いたしました。十分に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
これまで長年にわたり、
開発途上国等に対し、
基本法令の起草、
司法制度の整備や運用、
国際研修の実施、
司法関係者の
人材育成などの
法制度整備支援を行ってまいりました。これらの
国際協力は、国連で採択された
SDGsの実現にも資する取組であり、積極的に推進してまいります。
経済社会の国際化が急激に加速する中、重要な
日本法令を翻訳して発信することは、国際化に対応した国家の
基盤整備として、大変重要な取組です。昨年十二月に立ち上げた
日本法令の
国際発信の推進に向けた
官民戦略会議での議論を踏まえ、
関係省庁と連携して、
日本法令の
国際発信に向けて、より一層取り組んでまいります。
法務省におけるアット・ホウムプランに基づき、女性の
職業生活における活躍や、一〇〇%育休取得をスローガンとする
男性職員の育児休業の取得の推進を始めとして、さまざまな事情を抱える職員が生き生きと活躍できる
職場環境の整備とワーク・ライフ・バランスの推進に努めます。
障害者雇用については、一昨年定められた政府の
基本方針に基づき、着実に取組を進めてまいります。
昨今の
自然災害の発生に鑑み、
刑務所等の
矯正施設及びその
職員宿舎を始めとする
法務省施設の耐震化及び
老朽化対策を着実に進めるとともに、災害時に避難所としての役割を期待される
矯正施設について、
近隣住民の受入れに必要な機能の確保に向けた整備をあわせて推進してまいります。
今後とも、さまざまな課題に対し、
義家弘介副大臣、
宮崎政久大臣政務官、そして
法務行政を担う全ての職員と一丸となって全力で取り組んでまいりますので、
松島みどり委員長を始め、理事、委員の皆様方には、より一層の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)