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2020-06-01 第201回国会 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和二年六月一日(月曜日)     午後一時三十分開議  出席委員    委員長 津村 啓介君    理事 石川 昭政君 理事 小渕 優子君    理事 大岡 敏孝君 理事 関  芳弘君    理事 簗  和生君 理事 青柳陽一郎君    理事 中島 克仁君 理事 太田 昌孝君       あかま二郎君    井林 辰憲君       今枝宗一郎君    今村 雅弘君       越智 隆雄君    大隈 和英君       岡下 昌平君    神谷  昇君       小泉 龍司君    杉田 水脈君       鈴木 貴子君    武部  新君       谷川 弥一君    出畑  実君       渡海紀三朗君    馳   浩君       藤井比早之君    務台 俊介君       和田 義明君    浅野  哲君       伊藤 俊輔君    川内 博史君       吉良 州司君    篠原  豪君       早稲田夕季君    江田 康幸君       古屋 範子君    畑野 君枝君       串田 誠一君     …………………………………    国務大臣    (情報通信技術IT政策担当)    (知的財産戦略担当)    (科学技術政策担当)    (宇宙政策担当)     竹本 直一君    内閣府副大臣       平  将明君    厚生労働大臣      橋本  岳君    内閣大臣政務官     今井絵理子君    政府参考人    (内閣官房内閣審議官)  二宮 清治君    政府参考人    (内閣大臣官房審議官) 十時 憲司君    政府参考人    (内閣大臣官房審議官) 柿田 恭良君    政府参考人    (内閣大臣官房審議官) 佐藤 文一君    政府参考人    (内閣府政策統括官)   松尾 泰樹君    政府参考人    (金融庁総合政策局審議官)            伊藤  豊君    政府参考人    (法務省大臣官房審議官) 竹内  努君    政府参考人    (文部科学省大臣官房審議官)           梶原  将君    政府参考人    (文部科学省大臣官房審議官)           増子  宏君    政府参考人    (厚生労働省大臣官房審議官)           吉永 和生君    政府参考人    (経済産業省大臣官房商務サービス審議官)    藤木 俊光君    政府参考人    (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     飯田 陽一君    政府参考人    (中小企業庁事業環境部長)            奈須野 太君    衆議院調査局科学技術イノベーション推進特別調査室長           吉田 郁子君     ――――――――――――― 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   中村 裕之君     鈴木 貴子君   大串 博志君     川内 博史君   大島  敦君     浅野  哲君   古屋 範子君     江田 康幸君 同日  辞任         補欠選任   鈴木 貴子君     武部  新君   浅野  哲君     大島  敦君   川内 博史君     大串 博志君   江田 康幸君     古屋 範子君 同日  辞任         補欠選任   武部  新君     務台 俊介君 同日  辞任         補欠選任   務台 俊介君     中村 裕之君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  科学技術基本法等の一部を改正する法律案内閣提出第四七号)      ――――◇―――――
  2. 津村啓介

  3. 津村啓介

    津村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 津村啓介

    津村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申出がありますので、順次これを許します。和田義明さん。
  5. 和田義明

    和田委員 自由民主党の和田義明でございます。  本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。委員長理事委員各位に心から御礼を申し上げます。  また、御多忙の中、竹本大臣、平副大臣を始め政府参考人方々にもお越しいただきまして、まことにありがとうございます。  個人的に大変関心の高い分野でありますけれども、質問時間が十五分と大変限られておりますので、早速質疑に入りたいと思います。  まず一つ目質問でございます。  まず、政府におかれましては、大変いろいろな、予算制約、それから資源制約等々がある中、科学技術関連予算獲得本当に力強く御尽力をいただき、心から敬意を表します。とりわけ、一八年度、一九年度の予算の伸び、これは非常に大きなものでありまして、政府の前向きな姿勢が強くあらわれているものでございます。  その上でですけれども、今後の日本経済を牽引し、国民生活生産性快適性の向上に資する産業技術を絞り込んでいく必要があると思います。具体的な産業技術をしっかりと明示していただきたいと思います。そして、そこに十分な投資を行い、世界トップクラスに入ることへのコミットメントと、それから技術立国日本の再興への力強い意気込みをまずは竹本大臣に申し述べていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  6. 竹本直一

    竹本国務大臣 先生おっしゃるとおり、我が国は、これといった資源がふんだんにあるわけでなく、むしろほとんどないと言っていいぐらいの国でありますから、科学技術を伸ばすことによって国が栄えるという道を選ぶ以外に選ぶ道がないんだと思っております。そういう意味で、科学技術予算は非常に大事なわけでございますが、多様な研究の積み重ね、それから非連続なイノベーションの種となる、そういったものをしっかりと確保していかなきゃいけないんだ。  じゃ、具体的に何かというと、IT、健康・医療、宇宙、海洋について、内閣の中に司令塔をつくりまして、本部をつくって、それで全体を推しはかって遂行しているわけでございます。  政府における取組の中で特に幾つか申し上げますと、昨年六月にAI戦略バイオ戦略を、それからことし一月には量子技術イノベーション戦略革新的環境イノベーション戦略を策定いたしまして、世界イノベーション競争に打ちかつべく、研究開発社会実装に向けた仕組みづくりなどを進めておるところであります。  例えば、量子技術分野においては、基礎研究から技術実証人材育成までを一気通貫で実施する国際的なイノベーション拠点の形成などを戦略に位置づけまして、技術産業化市場獲得を見据えた取組推進しているところであります。  御指摘のように、我が国科学技術の強みを生かし、新産業創出を図り、経済成長を牽引していくことは極めて重要であります。国民の命と健康を守るためには最優先の課題は何かということを常に考えながら、今回、コロナという災害に出会ったわけでございますが、緊張感スピード感を持って進めていきたいと思っております。  よろしくお願いします。
  7. 和田義明

    和田委員 ありがとうございました。  ターゲットセッティングをしっかりとしていただいているというようなことでございますけれども、その上で、やはり今後は、研究開発だけでなく、そこから商業化ビジネスモデル構築、そして社会実装、そういったところまで、包括的な戦略を描いていく必要があると思います。これがまさに日本経済安全保障であり、ここのところの議論を更に強力に進めていく必要があると思います。  続きまして、日本版SBIR中小企業技術革新制度についてでございます。  日本版SBIR平成十一年に設立されまして、アメリカからおくれること十七年でありますけれども、当時の予算は百十億円、これが平成三十一年には四百六十億円と、予算は確実にふえております。そういった中、今回の法改正におきまして日本版SBIR司令塔機能強化するといったことで、大変期待が高まっているところでございます。しかし一方で、日本版SBIR課題をしっかりと整理をして、そしてその課題解決に向けた改革が必要だと思っております。  二問目の質問でございますけれども、アメリカ本家本元SBIR、ここには、防衛省アメリカの国防省ですね、や宇宙航空関係省庁が含まれております。一方で、日本版SBIRには防衛省は含まれておりません。これを含めない理由は何でしょうか。そして、今後の含める予定はどうなっているんでしょうか。御答弁ください。
  8. 十時憲司

    ○十時政府参考人 お答え申し上げます。  日本版SBIR制度は、スタートアップ中小企業向け研究開発予算を有する省庁対象として、現在、総務、文部科学厚生労働農林水産経済産業国土交通環境の七省庁で実施をしております。  技術は多義的でございまして、御指摘のような分野も含めまして、幅広い分野について関係省庁間で情報共有等に取り組んできているところでございまして、今後、同制度科技イノベ活性化法に移ることに伴いまして、スタートアップ中小企業活用可能な研究開発予算措置状況を十分踏まえながら、本制度に参画する省庁拡大についても検討してまいりたいと考えているところでございます。
  9. 和田義明

    和田委員 直接的なお答えではなかったような気がするんですけれども、例えば、アメリカでですと、そもそもは、インターネットとかGPSとかアンドロイド、iPhoneも、あとパワードスーツも、もともとは軍用技術から民間転用ということで、デュアルユースの典型的な例としてなっております。  やはり、国の限られた予算有効活用するには、これは軍用、これはそれ以外ということで線引きをするのではなく、また、一部のアカデミアの意向に従うのではなく、ちゃんとその有効活用効率活用、こういったものをやっていただきたいということで、ぜひとも防衛省は早急に含めていただきたいということをこの場で申し述べさせていただきたいと思います。  三つ目でございますけれども、SBIR外部評価委員の構成はどのようになっているのでしょうか。そして、こうした方々はしっかりとそのスタートアップ企業ハンズオン支援しているのかというところでございます。ここのところについてお答えください。
  10. 十時憲司

    ○十時政府参考人 お答え申し上げます。  現行制度評価体制につきましては、各省、各事業でそれぞれ異なるものの、公平性専門性等観点から、技術面評価については大学等学識経験者国立研究開発法人技術士弁理士事業面評価につきましては税理士や公認会計士民間コンサル等が担っているところでございます。  御指摘のとおり、米国では、プログラムマネジャーと呼ばれる人材を中心として、審査評価のみならず、採択企業ビジネスモデル構築政府調達社会実装に向けた事業化サポートを強力に推進しておりまして、こうした部分が日本SBIR制度ではまだまだかと認識しております。  そのため、新たな制度のもとでは、一定の各省統一ルールを定めて、従前の技術面での評価サポートに加えて、事業化経験、知見を有する専門人材協力を得て、内閣府主導のもと、実効性を担保すべく取組を進めてまいりたいと考えております。
  11. 和田義明

    和田委員 ありがとうございます。(発言する者あり)いえ、ちょっと私の、多分、質問を先に酌んでいただいたんだと思うんですけれども。  アメリカでは、おっしゃるとおり、確かにプロジェクトマネジャーというのが、スタートアップハンズオン経営に深く関与をする、そして支援をするというところをやっています。そしてまた、その選考の際にも、やはりベンチャーキャピタリストとかマーケティングディレクターとか、ある意味民間ビジネスの最先端にいる人たち選考をしていきます。更に言いますと、国の省庁の根幹的なニーズ、これはすなわち、国として、国家的な根幹的なニーズというものから、社会問題を解決するための技術は何かという観点スタートアップ選考を行い、そして支援をするというようなことをやっております。  でも、一方で、今、一部御回答はありましたけれども、日本版SBIR制度というのは、言ってみたら、技術に対して補助金をつける、そして、残念ながらそこで大半が終わってしまっている、なかなか政府調達まで例えば結びついていないというのが現状の大きな課題だと思っております。やはり民間の最前線にいる本当目ききの人をしっかりと選考段階でアポイントすること、また、しっかりと本当に、企業技術を育てられる人がハンズオンでそこの経営に携わること、これが極めて重要でありまして、それなくして商業化はできないわけでありますし、商業化のできないもの、また、国としてちゃんと使えないものにお金を出すということの是非というのはこれからやはり厳しく問われてくるものだと思います。  その上でですけれども、四つ目質問でございます。内閣府の司令塔機能強化というふうなことで法改正でうたっていただいておりますけれども、残り五分ということで、本質的な支援強化、これは政府調達につながるのでしょうか、また、その政府調達金額目標を今後立てていくというおつもりがあるのでしょうかというところを質問申し上げます。
  12. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 答弁いたします。  先生指摘のとおり、現行制度はさまざまな課題がございます。対象分野支援フェーズの偏り、それから初期から事業化までということで、特に政府調達の件も大きな課題でございます。  今回新たなSBIR制度につきましては、イノベーション創出ということも目指しながら、また、各省庁の統一的なルール、これを指定補助金等において定めたいと思っておりまして、この中には政策課題公共調達ニーズを踏まえた具体的な研究開発課題を提示をして、そして研究開発支援をするということ、そしてまた、研究開発が成功した暁には、随意契約特例制度なども活用し、独創的な技術の試験的な導入、政府調達なども促していきたいというふうに考えておりまして、今先生指摘のように、研究開発から社会実装まで一貫した支援をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  13. 竹本直一

    竹本国務大臣 今お答えしたとおりですけれども、日本としては初めての試みですので、内閣府が中枢機能を担って各省間の調整を図り、そしてプロジェクトについては、ファインディングからフォーメーションから、そして最終的には、フィージビリティースタディーをして具体的に仕立て上げる、そこまで面倒を見なきゃいけませんので、制度はつくりましたけれども、どう運用するか、それ次第だと思っております。だから、内閣府の責任は非常に重いと感じております。
  14. 和田義明

    和田委員 ありがとうございます。  ぜひ、内閣IT室とそれからSBIRの連携でどんどんスタートアップ政府調達、これを進めていただきたいと思います。IT室予算要求から執行までの権限を一元的に持っているというようなことでもございますので、このスキームをぜひとも活用いただきたいと思います。  続きまして、スタートアップエコシステムのところで質問でございます。  民間企業が今ベンチャーから離れてしまっているという中、民間のできないこと、これをしっかりと政府系ファンド金融機関が支えていって、やはり日本未来技術産業というものをこういう時期だからこそしっかり守っていく、そして未来の国力を今しっかりと鍛え、蓄えていくといったことが必要だと思っております。  既にJBIC、国際協力銀行は、スタートアップ専門では全くないにもかかわらず、スタートアップへの投資に挑戦をしております。そういった中、本家本元であります日本政策投資銀行、DBJの活躍に期待がかかっております。  政府金融機関スタートアップに対してどういったことができるか、頑張らなければいけないと思うんですけれども、この点の大臣決意をお聞かせいただけたらと思います。よろしくお願いします。
  15. 竹本直一

    竹本国務大臣 スタートアップは、このコロナ不況の中で非常に苦しんでおります。それの支援を、財政支援をまずしなきゃいけないのと、政府系金融機関政投銀等いろいろございますが、国際協力銀行の名前も出ましたけれども、あらゆるところで御協力いただいて育て上げるということをしないと、新しい芽が本当に出てきていない、そこがやはり一番問題であります。  我が国産業として世界に打って出るには、このエコシステムはやがて地域指定等をやりますけれども、そこで育つエンジニアというか、新しいスタートアップベンチャーキャピタル等がいないと何の意味もないわけでございますので、その責任は十分実感しておりますので、どうぞよろしく御指導、御協力をお願いしたいと思います。
  16. 和田義明

    和田委員 ありがとうございました。  続きまして、デジタルガバメントのところに移りたいと思います。  今回のコロナウイルス拡大によりまして、本当デジタル社会推進というもののニーズというのが圧倒的に高まっていると思います。  そういった中、デジタル社会推進においても大きな課題があるというふうに特に専門家の間で言われております。多くの国々は、ウイズコロナそしてアフターコロナ社会においてデジタル社会推進するというふうなことで予測されておりますけれども、日本は、これはフィフティー・フィフティーだといった予測もあります。デジタル社会推進しないネガティブ要素、これはまさに政治、行政、そして金融機関デジタル化を拒んだケースでございます。  こういった非常に非デジタル的な手続が多い業界におきましてまさに改革を進めなければいけませんで、時間もちょっと終了ということですので、手短に質問させていただきたいですけれども、まず法務省さん、会社設立の際に、非常に手続が煩雑であります。本当に、例えば公証人認証定款のチェックのときに必要なのかどうか。また、登記事項証明書、戸籍等々、これからデジタル化するというふうに言っていますけれども、この計画はどうなのか。  また、金融庁さんにおきましては、金融機関手続改革、また民間商取引改革、どうされるおつもりか。  そして最後に、できれば大臣……
  17. 津村啓介

    津村委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、簡潔にお願いしたいと思います。
  18. 和田義明

    和田委員 はい。  あと最後決意をお聞かせいただけたらと思います。よろしくお願いします。
  19. 竹内努

    竹内政府参考人 お答えいたします。  法務省におきましても、現在、法務省デジタル・ガバメント中長期計画に基づきまして、デジタル化取組を進めているところでございます。  委員指摘法人設立手続オンラインワンストップ化に関しましては、テレビ電話等を利用可能とすることによりまして、定款認証オンライン化は既に実現をしております。  今後、商業登記法改正を受けまして、法人設立手続においてこれまで必須とされておりました印鑑届出について任意化をするということなどによって、令和三年二月を目途に、法人設立手続オンラインで完結することができるようにする予定にしております。
  20. 伊藤豊

    伊藤政府参考人 お答えをいたします。  金融庁といたしましても、金融機関における押印や書面提出を求める商慣行の見直しを進めていくことは大変重要であるというふうに考えておりまして、今月の上旬を目途に、金融機関と、それから役所も入りまして、課題の洗い出し、解決策を議論する会議体を設けて検討を進めていく予定にしております。
  21. 和田義明

    和田委員 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  22. 津村啓介

    津村委員長 次に、江田康幸さん。
  23. 江田康幸

    江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。  本日は、私も科学技術専門とする人間の一人として、科学技術基本法改正案について質問をさせていただきます。  その前に、まず、新型コロナウイルス感染症について、開発が急がれる治療薬ワクチン開発について一問だけお聞きをさせていただきたいと思っております。  ワクチン開発でありますが、感染拡大を防止して感染を終息させる、そのためには、最終的には、有効なワクチン開発されなければなりません。ワクチン開発にはどんなに急いでも二年以上はかかるわけでありまして、失敗してもやり直しはきかない。今から複数のワクチン開発を同時並行して支援していくべきであります。  国内外で開発されているワクチンは百二十にも上りますが、大きく分けて、ウイルスを培養して感染性や毒性をなくした不活化ワクチン、また、遺伝子組み換え技術で作成した組み換えたんぱくワクチン、そしてウイルス遺伝子を組み込んだベクターワクチンメッセンジャーRNAワクチン、またDNAワクチン、こういうものがございます。  国内では、AMEDの研究で、九つの研究が進んでいるわけでありまして、いずれも研究段階でありますが、感染研KMバイオが進める不活化ワクチン、また、感染研UMNファーマ塩野義が進める組み換えたんぱくワクチン、さらには、東大医科研と第一三共が進めるメッセンジャーRNAワクチン、さらに、大阪大学とアンジェスが進めるDNAワクチン、そして、IDファーマが進めるベクターワクチン等々でございます。動物での有効性安全性試験を進めて、早いところでは七月から臨床試験を開始する、そういう予定になっております。  海外でも同様のワクチン開発が進んでおりまして、モデルナが開発中のメッセンジャーRNAワクチンが最も早くて、第一相試験を終了して、ことし秋にも、緊急使用として一部の対象者ワクチンを投与できるとしております。ほかにも、イノビオ社DNAワクチン、またノババックスの組み換えワクチン、これらも進んでおりまして、オックスフォードのウイルスベクターワクチンもかなり進んできているところでございます。  長くなりますが、このような状況の中で、将来、ワクチン国内で十分に供給されるためには、国内産のワクチン開発されなければならないわけであります。しかし、そのためには、これまでの承認されたことのないDNAメッセンジャーRNAワクチン安全性評価や、また、ワクチン感染増強作用がないことの確認や、さらには、免疫応答持続性さらには有効性評価、そして大量生産体制整備と、多くの課題をこれはクリアしていかなければならないわけであります。  そこで、国内ワクチン開発推進について質問をさせていただきます。  国は、ワクチン研究開発企業研究機関に丸投げするのではなくて、米国のNIAIDのようなワクチン開発司令塔研究開発の全体を支援すべきではないですか。いかがですか。  また、個別のワクチン開発支援に加えて、共通の動物モデル評価系や、また臨床試験評価系モデルを確立して臨床試験を強力に推進することが重要と考えますが、いかがでしょうか。  そして最後に、大量生産体制整備におきましては、国内企業が有する既存の新型インフルエンザワクチン製造設備などの活用も含めて幅広く実用化推進すべきと考えますが、いかがでしょうか。  これらについて、政府の考えをお聞きしたい。
  24. 吉永和生

    吉永政府参考人 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、ワクチン開発がやはりコロナの問題を解決する最終兵器になるのではないかというふうに考えてございます。  ワクチン開発には、基礎研究、非臨床試験臨床試験の大きく三つの段階がございますけれども、現在、我が国基礎研究から非臨床試験の段階にございまして、一部につきましては、ワクチン候補が作成が終了いたしまして、委員指摘のとおり、動物試験を開始している状況でございます。委員指摘のとおり、強力な支援体制をつくっていくということが何よりであるというふうに考えてございます。  これまで政府といたしましても、ワクチン研究開発につきましては、二月十三日に、第一弾といたしまして、研究キットを含めた診断法の開発、治療法の開発ワクチン開発などの研究開発の実施に総額二十億円、また、三月十日には、第二弾といたしまして、追加的に、既存薬を活用するための臨床研究や迅速検査機器の開発、実施に十三億円という形で支援を進めてきたところでございますけれども、第一次補正予算におきましては、ワクチン開発支援を強力に行うという観点から百億円を計上いたしまして、AMEDにおきまして、当該開発支援に係る研究開発の公募を行ってきております。そういう中で、今般、支援対象となる研究が決定したところでございます。  さらに、第二次補正予算の中では、ワクチン開発を更に加速すべく、ワクチン開発推進事業として五百億円を計上しております。さらに、実際にワクチンが製造できるような設備につきまして研究段階から支援を行う、既存のワクチン製造設備も活用しながら行うということの体制整備、体制の早期実用化のために千四百五十五億円の予算を計上しているところでございます。  今後とも、有効性安全性が確認されたワクチンの早期活用に向けて、委員指摘のとおり、強力な指導体制でありますとか全体としての研究スキームなども充実しながら取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
  25. 江田康幸

    江田(康)委員 ありがとうございました。  これからも、国内ワクチン開発の実現に向けては、種々、我が党からも提言を続けてまいりたいと思いますので、しっかり頑張っていただきたいと思います。  それでは、本法案の質疑に入らせていただきます。  まず、竹本大臣に根本的なところをお伺いさせていただきたいと思いますが、デジタル化、人工知能やゲノム編集技術など、近年の科学技術イノベーションの急速な展開、進展は、我々の日常生活や社会のあり方に大きく影響を与えております。また、地球温暖化、大規模自然災害、そして先ほどの新型コロナ感染症といった困難な社会課題に最先端の科学技術イノベーションの成果を活用して立ち向かっていくことへの国民期待は、ますます大きくなるわけであります。  一方で、我が国は、研究論文の質、量ともに、最近は国際的な地位が低下傾向にある、また、研究現場を支える若手研究者の研究環境が不十分な状況である、こういうことが指摘されているわけであります。  こうした状況を踏まえて、我が国科学技術イノベーション政策のあり方を見直して、そして抜本的に強化していく必要があると考えますが、今回の法案はそれに応えているものと理解をしているつもりでありますが、今回の法案の狙いと意義について、大臣の方から明確にお答えいただきたいと思います。
  26. 竹本直一

    竹本国務大臣 先生はこの分野に非常にお詳しい方でございますので、緊張感を持って拝聴させていただいておりますが、ともかく、今回のコロナの災害というのは、キットの開発、それから治療薬開発、そして再発防止のためのワクチン開発、この三段階でやって、特に、この薬については、これといった確たる治療薬がないということが、まず初めて我々が経験する大変な災害と言っていいと思うんです。これを防ぐためには、どこの国にも確たる薬を持っていないわけですから、各国が今、競争してやっております。  先ほど厚労省の方から説明がありましたように、今回のコロナ対策としては、一次、二次、三次、四次とずっと予算をふやしまして、八百億ぐらい、七百数十億か、それぐらいの予算研究費を、AMEDを中心として担当させておりますが、今回、第二次補正はまだ予算が通っておりませんけれども、それが通りますと、更に六百億ぐらいふやしまして、相当の規模で研究開発に当たらせるわけであります。  なぜならば、世界各国が競争している中で、この大変な厄介な病気に対する治療薬をもし日本企業が、あるいは日本の公的機関が発明したとなると、これは大変各国から感謝されますし、日本に対する信頼が非常に高くなるだろう。  だから、我が国資源のない国でありますから、科学技術を頼りとして、科学技術によって生き抜くような国でなきゃいけない、このように思っております。  じゃ、そのために、今、十分そういう体制になっているかと、実はそうでもない。ノーベル賞こそ連年出ましたけれども、論文の提出された数は、かつては世界で二位ぐらいにいっていたと思いますけれども、今では四位、五位、六位と、どんどん下がってきております。それから、採用される論文も、一〇%ぐらいのところで、採用されるところも、随分地位が落ちてきております。  なぜか。それは、研究者の研究環境が非常に劣悪であると言っていいと思います。というのは、ポスドク等で大学で研究しておられる方の待遇がそれほどよくない。そして、任期が五年とか十年とか、限られている。だから安定がしない。研究しておっても、雑務が六割ぐらいあるということでございまして、本来の研究に打ち込めない。そういう状況の中で新しい発明、発見をするというのは、非常に苦しいところであります。  したがいまして、そういったことのないように、今回、昨年の暮れの補正予算の中で五百億円ぐらい予算をとりまして、研究者一人、年間七百万、それを十年間、研究予算としてお渡しするというようなこともやりましたし、そのほか、研究者で何かすばらしい発明、発見をした人には表彰制度も設けようと考えております。  もろもろやっておりますけれども、なかなか、社会の科学の成果品に対する評価が非常に低い。例えば、大学のベンチャーで、大学で発明したものに対する産業界の評価を考えますと、特許で比べたんですけれども、アメリカでは、一つの特許に関して千六百万ぐらいの、大学発の特許です、報酬というか評価をしております。ところが、日本の大学で発明したものに対しては、一件当たり七十五万、約二十分の一なんです。これでは、優秀な学者はどんどんアメリカへ行ってしまう。  こういう状態は何としても避けたい、そういう思いで、今回の科学技術イノベーション法、つまり、イノベーションと、そして人文科学も取り入れた総合的な科学の発展を目指して我々はこれから取り組んでいきたいという政府の強い決意と思っていただければありがたいと思っております。
  27. 江田康幸

    江田(康)委員 大臣の丁寧な御説明で、今回の法案の意義というのがよくわかりました。またさらに、人文科学に係る科学技術、またイノベーション創出、こういう概念を加えていくということにおいて、非常に前進であろうかと思っております。  その上で、一つだけ最後質問をさせていただきますが、このイノベーション創出、これは、こういうような新型コロナの、かつてない、今、治療薬もない、ワクチンもない、そういう状況で画期的な新薬やワクチン開発する、そういうものにつながる、すなわちイノベーション創出の導入、このことが大変重要なんですが、今回、法案では、科学技術基本法にイノベーション創出の概念を導入しております。国の競争力の源泉はこのイノベーション力にあるわけでありまして、科学技術基本法に導入することはもう必要不可欠と思っておりました。  このイノベーション創出については、現行の科学技術イノベーション創出の活性化に関する法律において、企業活動を念頭に置いた例示を並べた上で、「新たな価値を生み出し、経済社会の大きな変化を創出すること」と定義がされました。しかし、例えば、SDGsのような概念が提唱され、この概念が普及することによって世界が大きく変わっていけば、これもまたイノベーションと捉えるべきではないかと考えます。  今回の法案において、このイノベーション創出についてはどのように定義がなされたか、そのことを明確に示していただくとともに、今回、イノベーション創出の概念を導入することで、かえってイノベーションに直接的につながりにくい基礎研究が軽視されることはないのか、最後に御確認をさせていただきたいと思います。
  28. 竹本直一

    竹本国務大臣 今回は、人文科学のみに係る科学技術を法の対象に追加いたしますけれども、例えば、人文科学の研究から新たな概念が提唱され、社会のあり方が変わってくるといったようなイノベーション創出も一応考えることができます。  この法案では、イノベーション創出に至る手段として、新商品の開発等の企業活動に加え、科学的な発見又は発明といった創造的活動についても規定し、イノベーション創出が、多様な主体が関与し得る幅広い概念であることを明確化しております。  基礎研究の振興は非常に重要でございます。本法案では、基礎研究推進において国が果たす役割の重要性をもちろん規定しております。また、法案では、科学技術の水準向上とイノベーション創出の促進は並列的な位置づけとし、科学技術が、イノベーション創出のみならず、学術的価値の創出、その他の多様な意義を有することに留意することについても規定しております。今後とも、基礎研究の振興に努めてまいりたいと考えております。  要は、学問的なすばらしい研究と、そして、それを人類社会に役立てる、そういう工夫、両方ともやはり科学技術の発展の大きい務めだと思っておるわけでございます。
  29. 江田康幸

    江田(康)委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、今回の法案は初めての改正でございます。大変大きな改正であり、こういう人文科学の科学技術を明確に加え、またイノベーション創出の概念を追加していく等々、大変重要な法案の改正になっております。一刻も早く法案が成立すること、これをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  30. 津村啓介

    津村委員長 次に、中島克仁さん。
  31. 中島克仁

    ○中島委員 共同会派、立国社の中島克仁です。  時間をいただきましたので質問をいたしますが、まず、今回提出されております科学技術基本法等改正案、本委員会で審議ができることを大変意義深いというふうに思います。御尽力いただいた両筆頭理事に感謝を申し上げながら、質問をさせていただきたいと思います。  事前に申し伝えさせていただいておりますが、細かいところはお聞きしません。大臣のお考え、御見解をお伺いしたいと思いますので、基本的に大臣に御答弁をいただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず一点目は、先週の大臣所信、先ほど江田委員からも御質問ワクチンでありましたが、テーマとして挙げられておりました新型コロナウイルス治療薬に関して、一点、大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。  先週、非常事態が解除をされたわけですが、北九州、また東京、北海道、局地的ではありますが、クラスターが発生したり、やはり第二、第三波への懸念が高まっておる。そういう状況の中で、やはり本質的には、終息に向けて治療薬、またワクチン開発、登場が不可欠という状況だというふうに思います。  そんな中、五月の七日には特例承認をされましたレムデシビル、安倍総理が五月中にも薬事承認をと明言をされていたアビガン、これはもう私も、有効性さえ実証できればというか、国内で確認をされ、また副作用の懸念が払拭できれば、大変有用だというふうに思うわけでありますが、一方では、その有効性に関してはまだ国内で確かなものは示されていないという現実があったり、先ほども言ったように、副作用に関しては払拭し切れていない、こういう状況の中で、これまでの経緯で、この治療薬の選定、承認に関して、正直、私、ちょっと違和感を感じている部分がございます。  報道のあり方にも課題があるのかもしれませんが、日本研究成果がまだ出ていないレムデシビル、これは特例承認ということでありますが、医薬品医療機器法の特例制度でございますけれども、私が承知している限り、これは三例目、過去二回は新型インフルエンザワクチンに関してということで、治療薬に関しては異例中の異例、申請して三日で特例承認されるという状況。  改めて、我が国には優秀な研究者、また研究所もあります。そして、アビガンに関しても、藤田医科大学、愛知医大もそうでございますけれども、他大学もそれぞれの研究所でこの新型コロナに対する治療薬を今評価している段階だというふうに思います。  そんな中、当初、五月中にもと、安倍総理はアビガンに関しては承認するということを具体的に名前を挙げていること、こういう状況は、私は、今、全ての候補薬は同じスタートラインにあるというふうに思うわけでありまして、そういった、まだ国内研究成果、臨床研究の結果も報告されていない段階で個別の薬の名前を突出するということに対しては、私は違和感を感じる。  そのことに対する大臣の見解と、改めて、先ほども申し上げましたように、新型コロナウイルス治療薬はいろいろ候補薬があります。先ほどお話ししたレムデシビル、さらにはアビガン、先週、青柳理事が取り上げていただいたイベルメクチン、フサン、オルベスコ、さまざまな薬が現段階では同じスタートラインにある。政府がやらなければいけないのは、迅速かつ正確な評価がなされるように、幅広く、平等に支援していくことだということ、この二点について、大臣の見解をいただきたいと思います。
  32. 竹本直一

    竹本国務大臣 新型コロナウイルスは、先ほど申し上げましたように、確たる治療薬がないというのが一つの特徴であります。  そこで、日本を含む各国が研究開発にいそしんでいるわけでございますが、その中で、先生おっしゃるとおり、レムデシビルについては、五月七日に開催された薬事・食品衛生審議会の審議を経て特例承認されました。また、アビガンは、観察研究、臨床研究企業治験が進められており、有効性安全性が確認できれば迅速に薬事承認を行う方針と承知しているわけでございますが、いずれの薬におきましても、レムデシビルは重症患者に効くということでございますけれども、非常に扱いが難しいと専門家からは聞いております。また、アビガンについては、もともと、他のインフルエンザの薬として発明されたものであり、その際にも副作用があるということが非常に言われておりまして、適応については非常に慎重でなきゃいけないということの中で、さらなる研究をして安全と認定されれば、それを具体的に使っていく。  既に、アビガンについては、海外からも要請が多くて、先般新聞記事で読みましたけれども、三十九カ国にその提供を約束したというような記事も出ておりました。信頼性は高いんですけれども、相手に渡す以上は絶対に安全なものでなきゃいけないという目で更にしっかりと確認して、治療薬として使っていきたいと思っておりまして、非常に急がされる反面、安全でなきゃいけないという、ある種、二律背反になるかもしれませんけれども、そういう中で、もがきながら努力をしているというところが現状であります。
  33. 中島克仁

    ○中島委員 これは、私、厚生労働委員会でも本会議でも同様の質問をさせていただいて、今大臣も御答弁いただきましたが、それぞれ有効性安全性が確認できればということ、同時スタートというふうにお答えいただくんですけれども、先ほども言ったように、個別の薬を言うことによって、やはり国民期待いたしますし、結果的に、アビガンは、五月中の承認を目指していたとはいえ、ちょっと承認には至らなかった。  そういうことも含め、あともう一点は、先ほど私るる候補薬を挙げた薬のバックボーンがそれぞれ違うんですね。これも青柳理事と一緒に北里研究所にも行ってまいりましたが、例えばイベルメクチンに関して言えば、特許も切れていて、そして製薬会社、製薬業界のバックボーンがない中で、独自の北里研究所での治験、それから関係病院での観察研究という、やはりそういう資金源でもそれぞれ事情が違うということから、そういう部分を国としてある意味平等に成果が発揮できるようにしていくということが幅広く求められるんだということを、ぜひ大臣には、前回の質疑でも安倍総理に伝えるということはおっしゃっておりましたので、ぜひ大臣からもそのように申し伝えていただきたいと強く申し上げたいと思います。  今、イベルメクチンの話になりましたが、前回、青柳さんからも御紹介していただきました大村博士は、私の高校の大先輩で、そして公私にわたって日ごろからお世話になっております。  今回の新型コロナウイルス感染症に関しても、当初から電話でいろいろ御意見を聞いていて、これは日経新聞の記事にも出たんですが、大村博士は、今回の新型コロナウイルスに関して、やはり予防医療が大事だ、薬が必要になる前に、病気の芽を摘めるようにするための科学がやはり重要であって、感染症の基本に立ち返り一人一人が先回りしてみずから備えをしておく、予防医療の重要性というものを強調していたり、一方で、これ自体は特別難しいことではない、身近なところでは、生活リズムを改める、きちんと食事をして栄養をとり、体力をつける、体調が悪いのに無理に仕事に出かけるようなことはしない、そんな当たり前のことが大切にされる社会が必要なんだ、そういったことを私にも意見として、また日経新聞にも投稿されております。  先ほども申し上げて、繰り返しですけれども、治療薬の選定は、優秀な我が国研究者が評価をして、最終的にはPMDAが評価するわけでありますが、政治が決めるわけではない、行政が決めるわけではありませんので、政治がなすべきことはそんな当たり前の社会をつくるために努力をするんだということを、大村先生からのお話としても大臣に御意見をさせていただきたい、そのように思います。  続いて、法案の中身について御質問をさせていただきたいと思います。  今回、科学技術基本法に、人文科学のみに係る科学技術イノベーション創出の概念を加えることが大きな改定の目的と理解をしております。  イノベーション創出について、大臣に基本的なことをお尋ねいたしますが、このイノベーションの概念、第三期の基本計画の中では、科学的発見や技術発明を洞察力と融合し発展させ、新たな社会的価値や経済的価値を生み出す革新と定義をされています。  翌年に発表されたイノベーション25では、技術革新にとどまらず、これまでとは全く違った新たな考え方、仕組みを取り入れて、新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことと定義をしています。  そして、第四期の基本計画では、新たな知識をもとにした知的、文化的価値の創造と、それらを発展させて経済的、社会的、公共的価値の創造に結びつける革新と、最終的に経済的価値に結びつけているような印象も受けるわけでありますが、さまざま、何々価値、最終的には公共的価値というものまで定義に入ってきているということで、大臣に基本的なことをちょっと確認したいんです。  このイノベーションの定義について、概念について、政府内閣内で統一した使い方ができていると大臣は考えておられるのか。加えて、今回の改正イノベーションという概念に一応の結論を出すという理解でよろしいのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  34. 竹本直一

    竹本国務大臣 まず、その前に、大村先生のお話の中でイベルメクチンの話が出てまいりましたけれども、国の方にも研究費の申請をたしかしていただいております。国としては、責任を持ってしっかりとお支えをし、そして、いい成果を生んでもらいたいなという強い期待を持っております。  さて、科学技術イノベーション活性化法でございますけれども、企業活動を中心に例示したイノベーション創出の定義を、この科学技術基本計画では、科学的な発明、発見なども例示した科学技術イノベーションの定義を定めております。要は、本法案では、基本計画の定義に含まれていた科学的な発明、発見を例示に加えて、両方の定義の要素を加味して、人文科学の研究者等も含め、多様な主体が関与し得るより広範な概念としたところでございます。  ちょっと繰り返しになりますが、申し上げますと、イノベーションの定義として、「「イノベーション創出」とは、科学的な発見又は発明、新商品又は新役務の開発その他の創造的活動を通じて新たな価値を生み出し、これを普及することにより、経済社会の大きな変化を創出することをいう。」つまり、一つの科学技術の発明が結果として社会に大きく役立つ、そういう事態を想定してこの基本法を定めておるわけでございます。
  35. 中島克仁

    ○中島委員 定義も、さまざまイノベーションという言葉を使われて、その解釈、ある意味、都合よく使われているようなところがあると思うんですね。  それで、今回の改正、非常に重要な改正だということで、やはり政府内閣内で一定の概念の共有というものをしていく必要があると思いますし、もう一点お聞きしたいのは、これは、今回の法案の審議に基づいてさまざまな方から御意見をいただきました。  前回の大臣所信のときにも大臣お答えになっておられましたが、今回イノベーションを明記するということについて、基礎研究の比重が軽んじられるのではないか、開発や応用研究重視に偏る懸念ということが、私のところにも何人かの方からそういう懸念が、問合せがございました。その懸念に関して、大臣、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  36. 竹本直一

    竹本国務大臣 基礎研究が軽んじられるのではないかという御疑念ですが、それは全くありません。横へ並列して対応いたします。
  37. 中島克仁

    ○中島委員 そういう懸念もあるということは、ぜひ大臣にも受けとめていただいて、今後そういう払拭をする努力をしていただければというふうに思います。  言うまでもなく、基礎研究、応用、開発研究、それぞれがバランスよく調和することが大前提、大重要ということであるというふうに思います。  もう一点、大臣にお尋ねをしたいと思いますが、先ほど言った第四期科学技術基本計画では、知的、文化的価値の創造と、それらを発展させて経済的、社会的、公共的価値の創造に結びつける革新と定義づけられております。  これはもう、日本我が国もですが、世界において長い期間培ってきた伝統とか文化、そして研ぎ澄まされた技術などがあって、これを大事に継承していくことは非常に重要というふうに思います。  ここで、大臣に確認をしたいんですが、今回加えられたイノベーション創出と、伝統文化、またすぐれた技術を継承していくということは両立できることと考えておられるのか、逆に、相反することと考えているのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。
  38. 竹本直一

    竹本国務大臣 両立させなければいけないと思っております。  これまでも、伝統文化や技術は、新たなイノベーション創出される中でも受け継がれてまいりました。例えば、電子メールが普及していく中で、手書きの手紙は、引き続き送り手の思いを伝える特別な手段として共存しております。このように、伝統文化や技術は、イノベーション創出と両立していくことが可能であると考えております。  デジタル化、効率化という意味においては相反する場面がありますが、そこでは、可能な限り文化を継承というか、文化と併存しつつ、合理化、デジタル化を図っていくのが現代社会における対応の仕方だろうと思っております。
  39. 中島克仁

    ○中島委員 両立させなければならないということで、私もそのように考えておりますので、大臣とは共有できるんじゃないかというふうに思います。  その件について、ちょっと一点だけ大臣に確認したいんですが、新型コロナウイルス感染拡大で、政府が自粛要請、また企業にテレワークを推進するよう求めていた四月下旬、私も報道で見たんですが、大臣が会長を務めている日本の印章制度・文化を守る議員連盟、通称判こ議連をやめてもいいという見出しで報道されました。  これは自民党内の議連ということで、私に言われれば余計なお世話と思われるかもしれませんが、この記事の中で、背景には、新型コロナウイルス感染対策でテレワークを推進、紙や印鑑を前提とした業務のあり方を見直す方針を示していたこと、また、そもそもIT担当大臣が判こ議連の会長を務めていることに以前より疑問の声が上がっていたと報道の中に書いてありました。  大臣に確認をしたいんですが、この通称判こ議連の会長、また判こ議連はおやめになったんでしょうか。
  40. 竹本直一

    竹本国務大臣 昨年九月のIT担当大臣就任以来、私が判こ議連会長を務めていることに対していろいろ批判がされてまいりました。  私としては、我が国の文化とITの便利さとがどのようによい関係で融合できるかを考えていきたい、こういう趣旨で共存共栄という表現を使ったと思いますが、この基本的な考え方は今でも変わっておりません。  しかし、今回のコロナ対策のため、外出自粛等を国民の皆様にお願いする中で、押印などの制度、慣行がテレワークの取組の障害となっているとの指摘をいただいております。  四月下旬に開催されたIT戦略本部、そして経済財政諮問会議において、総理から、押印等の制度、慣行の見直しについて御指示がありました。私としては、こうした御指示に従って、IT担当大臣として、規制改革推進会議とも連携しつつ、ITを駆使した、しなやかで危機に強いデジタル強靱化社会構築すべく、全力で取り組んでいるところでございます。  しかしながら、私が判こ議連会長の職にあることで、政府のこうした取組に対していろいろな疑念を持たれ、批判があることも承知しております。こうした疑念や批判は、閣僚の一員として、私の本意では全くありません。  今回の新型コロナウイルス感染拡大は、我が国のこれまでの経済活動、社会活動にさまざまな問題を浮き彫りにしましたが、これは、逆に言えば、ピンチをチャンスに変えるべきときと考えております。将来の同様の事態にも対応可能な強靱な社会をつくるため、経済社会活動を可能な限りデジタル化していくことに、IT科学技術政策を担当する大臣として全力を挙げていきたいと思っております。こうした考え方から、判こ議連会長を辞すことにしたわけでございます。  要は、私は、判こという一つの文化と効率化という一つの技術が十分調和し得るものだと思っています。もし判こというものが効率化、デジタル化に邪魔であれば、その部分はちょっと遠慮していただかなければいけないけれども、そういうことで、社会の要請に十分応えつつ、日本の固有の文化を守っていく、こういうことが十分可能だと思っております。
  41. 中島克仁

    ○中島委員 おやめになったということで、正直、大変残念に思います。  先ほど言ったように、与党内の議連ですから、おまえに言われる筋合いはないと言われるかもしれませんが、新聞の記事には、判こ業界は山梨県に多い、議連には山梨の議員が多く加盟しているが私は大阪なので余り関係ないと。  これは本当におっしゃったのかどうかも含めてなんですが、今、くしくも大臣、強いお気持ちで、共存ということを成り立たせなければならないと。もちろん、新型コロナの影響でテレワークを推進していく中で、報道でもされました、認め印を押すがためだけに出社しなきゃいけない、これからの時代、そういったものは改めていかなきゃいけない。  ただ、私も山梨の人間でございますので、もちろん、地元で技術を持って文化を守っている方々からすると、決して時代の流れに反するということでは、思っていないんです。むしろ、天皇陛下も、国璽、御璽というもの、また、戦国時代から花押という、大事なときにそのあかしとしてする印章制度というものを時代の変化とともに更に進化していかなきゃいけないという本質的な願いがあるわけです。  そして、今回コロナも重なりましたが、IT大臣で、そして通称判こ議連ですか、最もいい立ち位置なんじゃないか、大臣のその強い決意を改めてそういった場面で多くの方々に知らしめるということが必要なんじゃないかと。  ちなみに、大臣、この後復帰はされないんですか。そういう強い思いを持っておられるなら、あえて、そういう議連の中で新たな共存というものを求めていくということをやられたらどうですか。
  42. 竹本直一

    竹本国務大臣 ここは自民党でないので、余り議連会長云々の話はしない方がいいと思いますが。  私たちは、判こがデジタルとか効率化に反するところは少しは遠慮してもらわなきゃいけないけれども、調和のできるところもあるのではないか。しかしながら、そこまで考えてくれない人が、判こ議連だから全然、反デジタル化だとかというようなことを平気でおっしゃる方もかつてあったものですから、一々そういったことに答弁しているのは大変ですから、実は、同じ議員連盟の仲間から、余り御迷惑をかけるから、大臣でおられる間は私がかわりますからと別の人がかわってくれるわけでございますので、そういうことで御理解いただきたいと思います。
  43. 中島克仁

    ○中島委員 この話はもうやめますけれども、日本の印鑑登録制度IT社会と共存していく、そんな社会のために大臣もぜひ更に努力をしていただきたいと思いますし、私も山梨の人間なので、ぜひその辺は御理解をしていただきたいと思います。  時間も限られておりますので、今回の法改正で人文科学に係る科学技術が法の対象になった件について、御質問をさせていただきたいと思います。  人文科学は、人間を研究対象とし、また、人間の本性を研究する学問であるというふうに言えるというふうに思います。  今回、法改正によって、研究開発法人に、人文科学分野の三法人、特に、私、横須賀にある国立特別支援教育総合研究所、いわゆる特総研と呼ばれる研究所が加えられたことを大変意義深いというふうに思っています。  資料の一枚目なんですが、これは一年半前の朝日新聞、地元の山梨版の記事でありますが、山梨県立盲学校での盲聾児教育、デジタル化という見出しのものであります。  そして、資料の二枚目は、大変手前みそで申しわけないというか恐縮なんですが、写真は私の母です。  大臣も皆さんも御承知だと思いますが、社会福祉活動家のヘレン・ケラー女史、多くの皆さんが御存じだと思いますけれども、ヘレン・ケラー女史は二歳のときに高熱を伴う髄膜炎に罹患をし、聴力、視力、言葉を失いました。映画「奇跡の人」で有名になっておると思います。サリバン先生の教育支援、両親の経済支援を受けて、ヘレン・ケラー女史はその能力を発揮し、社会に影響を与える活動家となりました。  ヘレン・ケラーと同じ全盲聾児に対する教育体制を整えて、昭和二十年代後半、日本で初めて盲聾教育を実践したのが山梨県立盲学校。その当時、二人の盲聾児の生活、教育支援に携わったのが私の母であります。約八年にわたり、私の母は寝食をともにして、気の遠くなるような地道なお互いの努力から信頼を生み出して、指文字を通して意思疎通が可能となった。資料の一枚目は、その当時の貴重な資料をデジタル化して保存する意義について記されたものであって、二枚目は、私の母がその当時のことを語っている内容の記事であります。  この当時の貴重な資料、世界的にも大変重要というふうに評価されておりまして、言語獲得メカニズムの解明、重要な資料と。ヘレン・ケラー女史、よく伝記にもなっておられますけれども、成長記録は自伝や手紙に限られているのに対して、山梨県立盲学校での記録は、寄宿舎日誌、指導記録に書きとめられ、二十四時間の変化がわかるもので、学習効果がその日どうあらわれたかもよくわかるものであります。  これも少し前に、きょう四回目ですが、青柳理事と山梨県立盲学校にも直接お伺いして、当時の資料、使用された道具など、また、その当時の話も聞かせていただきました。  現在、その盲聾教育に取り組む、研究しているのが、先ほども申し上げた、今回の法改正で加えられた横須賀にある特総研であります。盲聾教育に携わる方々、皆さん、私の母も含めてでありますが、盲聾教育はまさに人間開発だと、人文科学そのものということを私にも話してくれます。  大臣に改めて御質問いたしますが、人文科学分野における研究に具体的に支援を行う必要性について、その内容を具体的にどう考えておられるのか。人文科学における世界的にも貴重なこの山梨県立盲学校の記録、劣化をしていて、そのデジタル化保存のために、早稲田大学、筑波大学を始め研究者の皆さんがお金を持ち寄りその保存に奔走しておるという状況の中で、この人文科学に対する支援、具体的にどのように考えておられるのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。
  44. 竹本直一

    竹本国務大臣 すばらしいお母様のお話、非常に感じ入りました。  人間の五体全部働く人と、一部働かない人がおられるわけでございますが、それを助けるためにデジタルを含むいろいろな科学技術活用して、理想的なというか健康体的な、何でもできる状態に持っていくことも、これから科学技術の進歩次第では不可能ではないと私は考えております。  デジタル化やAIなど近年の科学技術イノベーションの急速な発展により、科学技術イノベーションの進展と人間や社会のあり方が密接不可分なものになっております。複雑化する現代の諸課題に対峙するため、人間や社会のあり方を研究対象とする人文科学の重要性は高まっております。  人文科学につきましては、従来から、文科省において科研費により支援してきましたが、今後は、次期基本計画の検討に合わせて、社会課題解決観点も含め、人文科学の戦略的かつ総合的な振興について検討してまいりたいと思っております。  時代が変わり、いよいよ自動運転の時代になってまいります。これは科学技術だけではいかない、人間行動の基本でありますから、これは人文科学の知識もかりなきゃいけない。そのように、いろいろな場面で人文科学を必要とする場面が出てまいります。それを取り入れて、科学技術として一体の改善をしていくことが科学に従事する者の務めだろうというふうに思っております。
  45. 中島克仁

    ○中島委員 時間ですので終わりますが、母は、昭和三十年、ヘレン・ケラー女史が最後に来日されたときに、日比谷公会堂でその二人の盲聾児を連れてお会いしに行きました。そのときにヘレン・ケラー女史が日本語でありがとうと言ったことに大変感銘を受けたと。そして、その二人の盲聾児も、今寮に入っていて、支援は受けていながらも、軽作業に携わっておると。  まさに当時の、ヘレン・ケラー女史もそうですが、しかるべきときにしかるべき支援がなされることで、そのこと、事実は国益に資する、人文科学と自然科学も含めて一体的に取り組んでいくことが大変重要ということを教えてくれるエピソードとしてお話をさせていただきました。  ありがとうございました。
  46. 津村啓介

    津村委員長 次に、浅野哲さん。
  47. 浅野哲

    浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。  本日はよろしくお願いいたします。  ただいまの中島委員最後質疑内容、障害をお持ちの方々もこれからの時代は活躍ができる、社会参画ができる、そんな大きな社会転換に備えたよい議論を聞かせていただきました。  私も、冒頭、この部分について質問させていただきたいと思っております。最初に平副大臣の方にお伺いをしたいと思います。  障害をお持ちの方々がこれから社会参画をしていく、支えられる立場から社会を支える立場に変わっていく、そんな大きな転換を今ロボティクス技術が実現をしようとしています。  副大臣は、昨年の二月ころからでしょうか、御自身の事務所内でもいわゆる分身ロボットの試験的な導入を進めていらっしゃるというふうに伺っております。  私も同じように、いろいろな場面で、現物を見に行ったり、あるいは自分で使って、見れるかどうか確認をしてまいりましたが、私自身、我々のような、私は幸いにして障害が今ないですけれども、そういう立場の人間がどうやって使おうか、なかなか頭を悩ませました。  副大臣の御経験から、まずは、この分身ロボットの利用経験を踏まえて、この社会実装に向けた課題認識がありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  48. 平将明

    ○平副大臣 質問ありがとうございます。  私は、OriHime、分身ロボットを昨年から使っておりまして、まさに分身ロボットが持つ社会的な可能性に注目をし、今、副大臣としても使用をしております。セキュリティーや機密保持を十分確認した上で、例えば役所からブリーフィングを受けるときに分身ロボットを使ったり、あと遠隔地でのシンポジウムに分身ロボットで出席をしたり、さらに、メディアの取材なども、このコロナ禍にあって分身ロボットで受けたりしております。  課題でありますが、一応、私、科学技術とかITの担当なので、その担当の分野からお話をさせていただくと、今ある、私が使っている分身ロボットは、安定的な通信環境のもとではほぼほぼ違和感なく使えますが、例えば新幹線の中とか通信環境の悪いところで課題があるかなと思っております。ですから、こういったものを十分使うには通信インフラの整備が必要。  さらに、組織として使う場合は、サイバーセキュリティーの方のセキュリティーポリシーみたいなものをちゃんとつくらないと、どこでも使ってもいいということにはなりませんので、組織として運用基準やセキュリティーポリシーの整備が必要ではないかと思います。  それと、ちょっと私の所管ではないんですが、重度の障害をお持ちの方がこういう分身ロボットを使って就労する際に、それが就労なのか福祉なのかということでちょうどはざまに落ちてしまって、逆に、雇う側が、一般の方を雇うよりも、保障費を払わなければいけないというディスインセンティブみたいなものが働きますので、今これは厚労省が補助金で対応していただいているというふうに聞いておりますけれども、そういう課題はこの分身ロボット導入においてあるのかなというふうに思っております。
  49. 浅野哲

    浅野委員 ありがとうございます。  今、さまざま課題を挙げていただきました。今、通信環境ですとかセキュリティーポリシーといった課題を挙げていただきましたが、私もこの一、二年研究を続けてまいりまして、いわゆる会議をする際などに同じ資料をどうやれば見れるのかですとか、あるいは、組織風土といいましょうか、やはり世代間の認識のギャップみたいなものもあると思います。ぜひ、そういったところを含めて、これから利用できる環境をいかに整備していけるのかというところが大きなテーマになっていくのではないかと思います。  今一部答弁の中にも含まれていたかもしれませんが、改めて、やはりこれから、障害をお持ちの方、そして今回のコロナショックを経て、接触型から非接触型へと社会活動が徐々に転換していくことも予想されております。そういった環境の中でロボティクス技術というのが大きな価値を発揮するのではないかと思っておりますが、この社会実装に向けた普及、そしてイノベーションの促進に向けた、改めて課題認識をお伺いしたいと思います。
  50. 平将明

    ○平副大臣 後ほどテクノロジーについては御答弁申し上げますが、その前段階として、実装で何がボトルネックになっているかといえば、やはり慣習であったり、あとは権威的な運用であったりと思います。  ですから、例えばOriHimeロボット、フォルムがすごいかわいいフォルムなものですから、すごい緊迫した会議に私だけそのOriHimeロボットで行って周りの空気がどうなるのかとか、そういうことが当然出てきますので、私、内閣府の副大臣としてできる限りOriHimeロボットを使って、みんなが、ああ、こういう場面で使っていいんだというふうに思っていただけるというのは大事だと思います。  二つ目は、テクノロジーがあるんだけれどもレギュレーションでできないということがたくさんありますので、テクノロジーの進歩とあわせて、レギュレーションをしっかりデザインし直していくというところも大きな課題となると思います。  技術面の話でありますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、社会活動を持続可能かつ強靱なものとする観点から、ロボットの活用を始め、あらゆる分野においてデジタル化推進していくことは重要でございます。  第五期科学技術基本計画においてはデジタル化と軌を一にするソサエティー五・〇を世界に先駆けて打ち出したところでありますが、一部先進的な国に比べてデジタル化がおくれているという私も認識をしておりますので、しっかり反省をして進めていきたいと思います。  政府でいえば、ムーンショット型研究開発において、二〇五〇年までに、多数のアバターロボットによって大規模で複雑なタスクを実行するための技術、さらには、人と同等以上の身体能力等を持つAIロボットの開発を目標として研究開発を進めております。  テクノロジーの方も、こういったツールを使ってしっかり前に進めてまいりたいと思っております。
  51. 浅野哲

    浅野委員 ありがとうございます。  今おっしゃられたような環境整備、そして技術開発、これに私がもう一つつけ加えたいのは、やはり、今を生きる我々、これから生まれてくる子供たちにとっていかに身近な存在にできるかというのが非常に重要だと思っています。  最近ではGIGAスクール構想を文科省が主導して進めておりますが、これから全国の小中学校にはいわゆる一人一台のコンピューターが身近な存在になっていくと思いますけれども、やはりロボットについても、必要になってから学び始めるのではなくて、できれば子供のころから何かしらの接点を持つような、やはりそういうリテラシー教育といいましょうか、そういった環境、身近な環境に置いておく、そういったことも重要かと思いますので、ぜひ今後引き続きの御検討をお願いしたいというふうに思います。  それでは、科学技術基本法の中身に触れていきたいと思いますけれども、その前に、きょう、実はとてもこのタイミングで質疑に立つのが幸運だったなと思うことがありました。皆さんも御存じのように、昨日、アメリカのスペースX社が民間企業として初めての有人宇宙飛行に成功して、国際宇宙ステーションに今二名の宇宙飛行士が滞在中というニュースが流れてきました。  この事例は、この後少しお話しさせていただきますが、この科学技術基本法の改正が目指すところに非常に近い成果を上げているのではないかなというふうに思いましたので、ちょっとこのクルードラゴンの件をお話しさせていただきます。  そもそも、アメリカは、二〇一一年までスペースシャトルを運用しておりました。ただ、一回当たり五百億という高額なコストがネックとなって退役。その後は、ロシアのソユーズという宇宙船に、宇宙飛行士、一回当たり一人九十三億円くらいのコストを支払って、宇宙に連れていってもらっていたという状況が続いていた。  そこで、NASAが民間に新たな宇宙船の開発を依頼しまして、そこに対してNASAが二千八百億円を出資しているんですね。そういった出資金を元手に、スペースXは、無人宇宙船を開発し、今回、初めての有人宇宙飛行に成功したということであります。  何が言いたいかと申し上げますと、やはり、前提となる何かしらの課題があって、それをクリアするために、今回はNASAが、アメリカという国が非常に強いリーダーシップを発揮した。そして、二千八百億円にも上る出資をして、民間の裁量のもとで創造性とスピード感のある技術開発を主導した。これは、非常に我々も学ぶ部分、学べる部分が多いのではないかというふうに思っております。  そういった観点から、国の機関の強いリーダーシップを発揮すること、これが科学技術基本法の改正においても非常に重要なポイントになると思っておりますので、そこに関連した質問をまずさせていただきます。  通告の順番と多少変わりますけれども、今回、成果を活用する事業者等に出資できる研発法人が追加されます。追加されることになりますが、基本的に、出資や共同研究ができるレベルの研究テーマというのは、基礎研究がおおむね完了し、実用化のめどが立ちつつあるフェーズにあるものではないかというふうに想定されます。  ただ、だから出資が簡単にできるかというと、そうではなくて、研発法人は、当然ながら、毎年、国が決める予算で動いております。ですから、この予算の範囲の中で基礎研究も進め、応用研究も進め、さらには今回、出資や共同研究も進めていくということで、やることがふえるのはいいことなんですが、それに対してしかるべき予算措置もとるべきだというふうに考えております。  ただ、聞き及んでおりますと、今回、出資や共同研究をやるための予算追加というのは特に考えていないということを事前に伺いましたので、その部分についての御説明と、やはり私としては、何らかの、直接的ではなくても、間接的にそういう出資や共同研究に資するような項目で予算の配慮というのが必要ではないかと思うんですが、政府の答弁を求めたいと思います。
  52. 柿田恭良

    柿田政府参考人 お答えいたします。  今委員から御指摘ありましたように、基礎研究の重要性ということでございますけれども、本法案におきましては、基礎研究推進において国が果たす役割の重要性に配慮しなければならないという規定を引き続き設けておりまして、まず、基本的な考え方として、基礎研究推進、これにはしっかりと努めていくという考え方であります。  それで、お尋ねの研究開発法人からの出資に当たりましての財源についてでございますけれども、今回、研究開発法人から出資をして、成果活用支援法人への出資、そこで研究開発ができるようにということで、その促進を明確化するということでございますけれども、研究開発法人から成果活用支援法人への出資財源につきましては、原則として、特許料収入でありますとか寄附金収入といった自己収入を想定をいたしております。  また、共同研究を促進していく、そのための予算的な支援についての御指摘もいただいておりますけれども、例えば、研究開発法人が成果活用支援法人を出資によりまして設立をいたしますけれども、この設立された成果活用支援法人は、出資されてできますので、民間会社ということになります。  したがいまして、研究開発法人の持つすぐれた研究成果をもとにして、民間企業ニーズに応じた、実用化に向けた企業からの委託による研究開発などを、企業企業民間同士の契約で実施するということが可能になりますので、そこから利益を得ていくということを想定しております。  このようにして得られた利益をもとにしまして、さらなる共同研究などの活動を成果活用支援法人として自立的に、また活発に実施していくということが期待されますし、そして、そこで生まれた利益が研究開発法人本体に還元するということによりまして、知識、資金の好循環を生み出し、研究開発法人、そしてそこが出資してつくった成果活用支援法人、これら全体の研究開発活動の活性化を図ってまいりたいということでございます。  それで、直接的な予算ということは今はございませんけれども、まずは、親元であります研究開発法人における知財マネジメントの推進などを通して自己収入を獲得するとか、さまざま環境整備を進めてまいりたいと思います。
  53. 浅野哲

    浅野委員 その出資に充てる部分は知財収入ですとか寄附金で賄うということで今答弁いただきましたけれども、事前に、今回新たに出資ができるようになる五つの法人がどれくらいの寄附金収入を得ているのか、そして知財収入を得ているのか、一覧表をいただきました。  今回、五つ追加される法人のうち、四つが文科省所管、そして一つは環境省が所管している研発法人になります。  文部科学省が所管している法人の中で一番寄附金収入を得ているのは、海洋研究開発機構、一億八千二百万円。ただ、これはかなり飛び抜けた数字でして、防災科学技術研究所というのは四百万円、また、JAXAは千二百万円、日本原子力研究開発機構は八千五百万円といったような寄附金収入の状況になっています。  そして、知財収入の方ですが、これはJAXAが比較的多くて三億九千六百万円、ほかの文科省所管の法人、新たに追加される法人については六百万円から一千八百万円という知財収入だそうであります。  これが多いか少ないかと言われれば、やはり出資の元手としては大変心もとないのではないかというふうに感じるわけであります。  そして、知財マネジメントをしっかりやって知財収入をふやしていく、あるいは寄附をもっとたくさんもらっていくような努力は確かに必要かもしれませんが、寄附をもらえばしがらみが発生する、あるいは毎年同じ額をもらえるかという保証がない。そして、特許料収入の方も、例えばJAXAや原子力部門なんかは、安全保障の関係から、特許化されると公開されますから、そういった観点でなかなか特許化しにくいという意見も現場にはあります。  ですから、確かに論理としては答弁いただいた内容は成り立つかもしれないんですが、現場を見たときに、しっかりとそこで出資できる元手を確保できるのかどうか、その点についてはまだまだ課題があるんではないかと思うんですね。  きょうは文科省の方に来ていただいておりますので、改めて、やはりこの資金の確保、そして共同研究推進、どうやって進めていくのか、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。
  54. 梶原将

    梶原政府参考人 お答え申し上げます。  文部科学省所管の国立研究開発法人については、国のミッションに基づく最先端の研究開発や大型プロジェクト推進等に加えて、オープンイノベーション推進を通じて研究成果の実用化に向けた橋渡しを行うなど、研究成果の最大化に向けて取り組んでおり、令和二年度の予算においては四千七百七十一億円を計上したところです。  また、国立研究開発法人を含めた産学官連携を推進するため、これまでも産学官の共同研究開発等の支援を行ってまいりましたが、今年度より、重要な政策分野や大学、研究機関の強みを生かした領域に基づくオープンイノベーション拠点を形成する、共創の場形成支援プログラムを新たに開始するところです。関係府省や産業界と緊密に連携しながら、産学官共同研究を促進し、研究開発成果の実用化社会還元の加速に取り組んでまいります。  今後とも、必要な予算が確保されますよう、しっかりと取り組んでまいる所存です。
  55. 浅野哲

    浅野委員 ありがとうございます。  時間が限られていますので、ぜひ、今確保した予算、そして共創の場の制度活用といった部分においては、やはりこういった研発法人、大学といったものは基本的に資金が潤沢にあるわけではありませんので、いかに資金を獲得できるのか、その中で中長期的な研究開発推進できるのか、そのあたりに配慮した環境整備をお願いしたいと思います。  次、今答弁の中でも触れておりましたが、産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインというのが先般発表されております。これを読ませていただきましたが、私も、どれも必要なのではないかと思うんですが、特に今必要だと感じているのは、連携が進む人事評価制度改革というものであります。  今回、新たに研発法人や大学等に努力義務として新設される項目がありますけれども、その中では、人材育成研究開発、成果の普及に努力を重ねなければいけない、推進しなければいけない、そんな努力義務が課せられています。  ただ、例えば、研発法人なんかは、先ほど申し上げたように国の予算で動いておりますので、人事評価と処遇というのがある程度決められております。  今回、新たに努力義務が設定されたことによって、やはり、民間との連携を促進するための、それにふさわしい処遇のあり方というのも模索していくべきではないかというふうに思っておるんですけれども、そういった観点から、各種研発法人の裁量で、研究開発の内容、難易度、あるいは成果に応じた職員の処遇が柔軟にできるんだということを改めてここで確認したいと思います。御答弁いただけますでしょうか。
  56. 十時憲司

    ○十時政府参考人 お答え申し上げます。  研究開発法人の職員の給与等の支給の基準に関しましては、国家公務員の給与等のほか、職員の職務の特性及び雇用形態などを考慮して、各法人において定めることとされております。  職員の職務の特性については、例えば研究者であれば研究開発の特性を踏まえることなどが考えられまして、現状も御指摘のような取扱いは可能となっているところでございます。  今般の法改正で、研究開発法人の責務として、人材育成研究開発及びその成果の普及に努めるということ、そして、研究者等の適切な処遇の確保の整備に努めるということ等の規定が追加されたわけでございますので、各法人においては、こうした趣旨も踏まえながら、これまで同様に、研究開発の特性等も踏まえた処遇の設定を行うといった形で適切に対応されていくことを期待しているところでございます。
  57. 浅野哲

    浅野委員 ありがとうございました。  このガイドラインにも、やはりこれから人材の好循環を実現するために、クロスアポイントメント制度を促進するというような項目も含まれてございます。やはりそのためには、民間企業は、いろいろな評価基準を設けて、ジョブディスクリプションですとかいろいろ設けて、ちゃんとどういうことができる人なのかというのがかなりしっかりと評価される環境が整いつつありますが、国の機関の方は、やはりある種のカテゴリーに入ってしまうとみんな一様に見えてしまうような部分がまだまだありますので、しっかりこれから、官民の連携を促進するためにも、より柔軟な、そしてより適切な評価制度のあり方というのをぜひ検討いただきたいというふうに思います。  次の質問ですけれども、ちょっと先ほどの質問に戻ってしまいますが、出資の部分になります。  今回、大学や研発法人が出資ができるようになりますけれども、やはり、どうしても、新規事業化あるいはベンチャーを立ち上げるなど、投機的な側面のある出資になる可能性は十分にあるのではないかと思います。ただ、これまでそういったことの経験が少ない人たちは、出資に対するリスク評価を行える体制が整っていないのではないかというふうに想定されます。  技術的な判断はできても投資リスクの判断は難しい、そういう状況に置かれております方々に対して、何らかの支援策、指針といったものの整備の必要性があるのではないかと思いますが、その点について答弁を求めたいと思います。
  58. 柿田恭良

    柿田政府参考人 お答えいたします。  御指摘のとおり、出資に当たってはリスク管理の観点が大変重要であると考えております。  業務、財務の健全性を維持しつつ、出資等の業務を適切に実施する観点から、先ほど委員も言及いただきましたけれども、内閣府と文部科学省共同で平成三十一年にガイドラインを策定いたしております。本ガイドラインにおきまして、出資先の選定等に当たって、ベンチャー等への出資に係る十分な経験専門性を有する外部有識者を含む委員会による審議体制、これをしっかりと構築するということをガイドライン上求めております。  したがいまして、今後とも、このガイドラインに基づき適切に対応してまいりたいと考えております。
  59. 浅野哲

    浅野委員 外部有識者の活用ということで、客観的な、より専門的な知見を活用しながらこういった出資にも対応していくということで、ただ、言うはやすし、行うはかたしといいますけれども、実際、これまで全く経験のない方々が、いきなり、そういう外部有識者を呼んでの委員会ですか、やれと言われても、その手続や、注意しなければいけないリスクの、潜在的なリスクがある部分でしょうか、さまざまあると思います。  ぜひ、現場に対する十分なサポート体制も政府の方でも整えていただきたいというふうにお願いを申し上げたいと思います。  では、続いての質問になりますが、やはり研究開発推進というのは、ある程度の中長期的な視点に立って進めていく必要があると思います。ただ、政治の世界というのは非常に流動的な側面もあって、トップがかわると突然方針が変わるといったようなことも間々起きる世界でございます。  今回、科学技術イノベーション推進事務局というものが内閣府の中に新設をされますけれども、この事務局の役割というのは非常に重要なのではないかと思います、研究全体を管理しますので。ですから、この新設する事務局においては、時の政権に大きく左右されてしまわないように、ある種の一貫性、独立性を持たせた組織体とすべきではないかと思うんですけれども、そういった視点から政府側の答弁をいただきたいと思います。
  60. 佐藤文一

    佐藤政府参考人 御質問ありがとうございます。  今回の改正案では、科学技術イノベーション政策の司令塔強化いたしまして、科学技術イノベーション政策に関係の深い各司令塔会議事務局を横断的に調整する機能を強化するとともに、科学技術イノベーション政策について、各省に対する総合調整を含め、政策を強力かつ一体的に推進するために、科学技術イノベーション事務局を新設するものでございます。  御指摘科学技術イノベーションの基本政策に関してでございますけれども、これについては、重要政策に関する会議として内閣府に設置された、関係閣僚と産学官の第一線の有識者によって構成される総合科学技術イノベーション会議によって調査、審査が行われておりまして、これを踏まえて、五年間の国家戦略として基本計画を策定し、中長期的に一貫性を持って取組推進することになってございます。先ほどの科学技術イノベーション推進事務局は、その事務を担当するものでございます。  このような横断的、一体的な推進体制のもとで、個別の行政分野における予算配分等の政策推進については、これは各省庁がしっかりと取り組むということになってございます。  こういった形で、今後も、内閣府と関係省庁が緊密に連携いたしまして、科学技術イノベーション創出の総合的な振興に取り組んでまいりたいと思ってございます。  ありがとうございます。
  61. 浅野哲

    浅野委員 ぜひよろしくお願いいたします。  それでは、最後質問になりますが、最後大臣にお伺いをしたいと思います。  本日の質疑の中でも、ロボットの活用ですとか、新しい民間宇宙船の実験が成功した話ですとか、さまざまな変化が今まさに起こっております。ちょうど今から一年前のこの科学技術イノベーション特別委員会では、私は、当時、四月十日でしたでしょうか、M87星雲の方角で初めてブラックホールの可視光観測に成功したというニュースを取り上げさせていただきました。これまでまさかできるはずがないと思っていたことがどんどん可能になっていくような、今、時代に入ってきております。  そんな中で、やはり日本が進めていくソサエティー五・〇、これは日本にとって非常に重要なテーマになると私は思っています。このソサエティー五・〇というのは、サイバーとフィジカルという二つの要素を制御技術で融合させて実現していく、そんな概念だと思っておりますけれども、その中で、人工知能やビッグデータ、量子コンピューティングという新たな技術を更に活用することによって、近未来を推定する技術ですとか、さまざまな商材のパーソナライゼーションというのが可能になりまして、自然災害ですとか病気ですとか、いろいろなリスクを回避しつつ、一人一人が安全で快適な生活を営める、そんな世の中になっていくのではないかなと私は考えております。  ただ、まだまだ、国民の理解そして民間協力、そういったところは大きな課題があります。そういった理解、協力を得ていくためには、ソサエティー五・〇が実現した際の社会像をより具体的に国民に示していく必要があると思うんですけれども、大臣として具体的な社会像をどう国民に示すのか、その点に関してお考えを最後に伺いたいと思います。
  62. 竹本直一

    竹本国務大臣 ソサエティー五・〇の社会というのは必ず来るわけで、現実にもう来ております。ただ、企業によっては、これに熱心なところとそうでもないところもありまして、まだまだ、それはどういうものかという十分な国民的認識ができていないのも事実だと思います。  ただ、更にその上の六・〇もあるわけですから、こういった速い変化にきっちりと我々もついていかなきゃいけないと思っております。  ソサエティー五・〇の実現について、各研究機関企業等、ひいては国民一人一人の理解を得ていくことがそういう意味で極めて重要であります。内閣府では、ソサエティー五・〇を先行的に実現する施策の一つとして、スマートシティー事業関係省庁と連携して進めております。この事業では、二〇一七年度から一九年度までの最近三カ年間で、全国で延べ百を超えるモデル事業を実施してまいりました。  私も、ことしの二月でしたか、和歌山の白浜町を訪問し、顔認証技術を用いたホテルのチェックインやキャッシュレスでの買物などの実証実験を視察し、便利と実感した一方で、これを全国的なものに広めるためには、私たちが技術にもっとなれ親しむ必要があると本当に感じました。  実は、こういう実証実験を内閣府と企業との共同で、しかも地方と一緒にやっておる実験場に行ったわけでございますが、私の実感としては、相当なれなきゃいけないなというふうに思いました。空港をおりてカードを登録すると、以後一切、一円のお金も要らない、全部カードで処理できる。それは非常に便利なんですけれども、そうでない人たちとの間で、何が起こっているんだろうかとみんな黒山の人だかりになりまして、なかなか、なれることが非常に大事だなというふうに思った次第であります。  しかし、いずれにしても、宇宙アメリカが久しぶりに衛星を打ち上げ、そして、そういったアメリカ宇宙技術日本がアルテミスで協力するという時代でございますから、こういうソサエティー五・〇という技術は早急に我々が身につけなきゃいけない世界であると思っております。
  63. 浅野哲

    浅野委員 時間が来たので終わりますが、ぜひ国には力強いリーダーシップの発揮をお願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  64. 津村啓介

    津村委員長 次に、川内博史さん。
  65. 川内博史

    川内委員 大臣、よろしくお願いいたします。  厚労省からは橋本副大臣にもお運びをいただきまして、本当にありがとうございます、お忙しい中に。  まず、科学技術基本法という法律の改正ということでございますけれども、私、実は、科学技術のこのイノベーション委員会の初代委員長でございまして……(発言する者あり)ありがとうございます。こうして質問させていただけるということで大変感慨深いものがございますけれども、今回の新型コロナウイルス感染症問題というのは、私たちにいろいろなことを考えさせてくれる、本当に大事な、大変な、大きな問題なのではないかというふうに思うんです。  大臣、果たして日本は、科学技術創造立国を目指すんだ、大国になるんだという政府方針はあるわけですけれども、現段階において、例えばIT技術などについても、本当に、韓国や台湾など近隣の国々と比べて大変おくれてしまっているのではないかと物すごく心配になるんですけれども、現在の日本科学技術の水準を竹本大臣はどう捉えていらっしゃるのかということについて、まず教えていただきたいと思います。
  66. 竹本直一

    竹本国務大臣 注目度の高い論文の数において日本の順位が非常に低下している、これは非常に危惧されているところでありますが、IT技術でおくれているか、進んでいるかということについてお答えするわけですけれども、博士課程への進学率が減少して、研究ポストの不安定な状況など、研究者の魅力が非常に低下しているのも事実であります。  我が国が今後もノーベル賞につながるような基礎研究力を確保していくためには、若手を中心とする研究者がじっくり腰を据えて研究に打ち込める環境をつくることが必要。この辺、いろいろ我々も努力をしているんですが、それが十分でないところもありますので、おっしゃったような国との比較において、ある部分においてはもちろん日本が進んでいるけれども、ある部分においてはそうでもないという部分もあるんだろうと思います。  このため、研究力の強化、若手研究支援総合パッケージを策定しまして、若手研究者を中心に自由な発想による挑発的研究支援する仕組み、これを創発的研究支援と言っておりますが、一人当たり七百万円で、七百人ぐらい、十年間、研究費を出そうということでございます。また、優秀な研究者のポストも確保します。それから、博士後期課程学生の処遇の改善等の取組をまとめたところであります。  各省と連携しながら、しっかりと取り組むとともに、今後の基本計画の検討に反映することによって、我が国研究力のV字回復、したがって、結果としてIT分野においても日本がしっかりと上回っているという状態をぜひともつくりたいと思っております。
  67. 川内博史

    川内委員 まだまだ不十分だから、その原因として、博士課程に進む若い人たちが減っているよ、論文もちょっと少なくなっているね、だから、研究者にお金を出して、頑張りましょうねという御答弁だったわけです。  今回の改正案で、科学技術イノベーション基本計画の策定事項の中に、研究者等や新たな事業創出を行う人材等の確保、養成等についての施策を追加するんだということなわけですけれども、日本科学技術イノベーション推進するために、何か役に立つ人材には金を出すよという御趣旨だろうというふうに思うんですけれども、私は、研究開発というか、もう勉強が好きで好きでしようがない、研究が好きで好きでしようがない、もう一日じゅうパソコンの前で何かいろいろなことをしていたいんだというような、マニアをたくさん育成しないと、世の中がどんどんマニアックになっていくわけですから、分野ごとに。その分野のめちゃめちゃなマニアを育てないと、本当意味科学技術の振興というものは図れないのではないか。  その証拠として、日本は、毎年、IT投資政府として一千億を超えてしているわけですよ。だけれども、マイナンバー一つ、全く今回のコロナで役に立ちませんでしたという実態が明らかになっているわけですよね、めちゃめちゃ政府として力を入れたのに。文書申請に変えてください、郵送でしか受け付けられませんわということになっちゃったわけですよね。  そういうことを、本当意味で便利な世の中に変えていくためには、私は、すごいマニアを育てていかなければならない。そのためには、大学の修士課程を出て、博士課程に入って、博士課程で一生懸命いろいろなことを勉強して、更に博士課程を終わって、大学の先生になろうと思って大学の教授にくっつくんだけれども、やはり、大学というのも、ある意味、徒弟制度みたいなところがあって、なかなか人間関係でうまくいかなかったりするわけじゃないですか。そういう研究者あるいは開発者になろうとする人々、学生さん、若い人たちをどう育てるのかということについて、まず、彼らがどんな生活を送っているのかということの実態調査をすべきではないかというふうに思うんですよ。  バイトを幾つやっているとか、それで、一生懸命大学で研究しているんだけれども、なかなかその大学の先生と人間関係がうまくいっていないとか、そういういわゆる若手研究者の生活実態というものをまず把握して、その人たちが何を望んでいるのかということを政府として把握することがめちゃめちゃ大事なんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、お考えを聞かせていただけますか。
  68. 竹本直一

    竹本国務大臣 川内先生、非常にいいことを聞いていただきました。  実は、私、このポストに来たとき、やはりとがった人材が必要だな、逆に、とがった人材が余りいないなと。そのことが科学技術イノベーションをおくらせていると私は考えまして、去年の暮れでしたか、十名ぐらい、ポスドクの学生を中心として全国から学生さんに集まっていただきまして、随分長い間、どんなことが一番不満ですか、どんなことで困っていますかという話をじっくり聞きました。さまざまです。財政的に生活が苦しいということ、それから、思い込んだ研究テーマがきちっと見つからないとか、いろいろありました。  こういった人たちをぐっと抱き込んで、自由にとがった人材を育てる、そういう教育というか研究環境をやはりつくることが日本として必要かなというような感じがいたします。それぞれ優秀な方なんですが、それを伸ばし切るところがないというふうに思うわけであります。  ところが、最近、いろいろな方が私のところに結構来られるんですけれども、特定の分野でやりたいので大学は行かないと自分で起業している人、もう十七、八から起業しているんですよね。そんな人が結構いるんです。そういう時代になってきたのかなと。そして、その人たちが、二十四、五歳で、東大や京大を出た人を二十人ぐらい使って仕事をやっている人もいます。  このように、この人はとがった人材です、とがった人材がこの世の中でも生きていけるような時代には、ぼつぼつなりつつあるんです。だけれども、それを更に応援をするような工夫が、科学技術推進ということをやる立場にある我々としては、応援しなきゃいけない。  大学の研究生になっている方には、先ほど申し上げました若手研究支援総合パッケージで、七百万円ぐらい毎年出して、十年間続けさせますけれども、そこに乗らない人も当然いるわけであります。ですから、そういった人たちも、十分努力して、才能があれば花開くような社会にしていく必要がある。夢のある社会にしないと科学技術は育たないと思っております。
  69. 川内博史

    川内委員 大臣大臣のところに来る十人なんというのは、割とエリートなんですよ。  そうじゃなくて、市井の場でもがき苦しんでいる若手研究者、ポスドクの人たちのアンケート調査みたいなものをまずやられたらどうか。そういう調査は、今まで多分やられたことがないと思うんですよ、生活実態について。彼らが何を望んでいるのか、どういうことを要望しているのか。それを広く知ることは、日本科学技術の裾野を広げる、発展させていく上で、まず、私は、現状どうなっているのかということを知ることがめちゃめちゃ大事だというふうに思うので、その調査をやられたらいかがですかということを申し上げているのでございますけれども、いかがですか。
  70. 竹本直一

    竹本国務大臣 幾つか具体的に調査をしておるんですけれども、先生期待されるようなところまでいっているかどうかは、ちょっとそこは自信はないんですけれども、例えば、キャリアパスの調査として、若手研究者の活躍を妨げているのは、プロジェクトの雇用、要するに、任期つきの雇用、五年の雇用しかないという、これが非常に不安だというような、キャリアパスに関する調査もやっております。  処遇改善の調査もやっております。これは言うまでもなく、博士号の取得が十分評価されていない。博士まで、ドクターまで取っても、企業が余り雇ってくれない、だから修士のままで企業に行こう、こうなっています。評価が十分でない。  さらに、研究環境として、専門性を持った若手研究者が、高額機器購入を含む研究費を申請してもなかなか採択されない、最新鋭の機器が手に入らないからしたい研究ができない。  このように、キャリアパスに関するもの、処遇改善に関するもの、研究環境に関するもの、個々のところでいろいろやっておりますが、もう少し全体を総合して、こんな状態ですよと、我々はそれなりにわかっているつもりでございますが、先生の御期待されるようなものに、更にきちっと総合的に仕上げていきたいなとは思っております。
  71. 川内博史

    川内委員 だから、例えばポスドクの平均年収とか、多分、政府はわかっていないと思いますよ。  やはり、生きていく上ではお金が一番必要なんですから、そういうポスドクの人たち研究を続けられる、生活できる、では、そのためには何をすればいいのかということを調査すべきではないかというのが趣旨でございまして、賢明なる竹本大臣ですから、私の提言を受けて、なるほどと思っていただいて、また事務方に御指示をいただけるものというふうに信じて、次の問題に……(竹本国務大臣「ちょっと」と呼ぶ)本当、いいこと言うのか。
  72. 竹本直一

    竹本国務大臣 財務金融で長いおつき合いですから申し上げますが、やはり、日本で特許をとりましても、アカデミアがとりましても、何度も言いますが、一人当たり七十五万円しか収入がないんです。ほぼ同じものをアメリカでやりますと、千六百万円の報酬があるわけです。この差なんです。ですから、産業界もアカデミアの業績に対して高い評価を与える社会にしないと、絶対研究者が育たない。  研究者である立場というのが非常に夢のある立場だというような状態が、絶対必要だと思っております。そのために、処遇の改善に努力をしているところでございます。
  73. 川内博史

    川内委員 処遇改善するためには、処遇の実態をまず知ることが前提であるということを申し上げておきたいと思います。  今、新型コロナウイルスの問題で、PCR検査のことが大変話題に、毎日なるわけですけれども、ニュースでは、無症状の濃厚接触者は、これまでは検査しなかった、今後は検査するよというふうに厚生労働省としては方針を変えたということですね。  感染拡大を防止することと経済活動を維持するというのは二律背反するテーゼで、この二つをどうやって両立させていくのかということについては、とにかく感染実態を把握する、すなわち、検査をし、早期に感染者を把握するというのが科学的な考え方であるというふうに私は思います。なぜなら、無症状の感染者も感染拡大をさせるからということになるわけですね。  四月二十日付の国立感染症研究所の積極的疫学調査実施要領には、無症状の濃厚接触者は検査対象とはならないというふうに明記されております。  十八人の道県知事は、積極的感染防止戦略への転換を提言し、無症状の濃厚接触者もPCR検査を行い、積極的に検査、隔離、追跡を行えば、過度の自粛などせずに、感染防止と経済活動を両立させることが可能になるというふうにおっしゃっていらっしゃいます。  だから、厚労省は方針を転換したというニュースがありますけれども、ということは、四月二十日付の国立感染症研究所の積極的疫学調査実施要領を見直す、すなわち無症状の濃厚接触者も検査するという要領に変えるということでよろしいかということを副大臣にお願いしたいと思います。
  74. 橋本岳

    ○橋本副大臣 お答えをいたします。  無症状の濃厚接触者に対するPCR検査につきましてですけれども、今委員お触れをいただきましたように、先週の金曜日の専門家会議での御議論を踏まえまして、速やかに陽性者を発見するという観点から、PCR検査の対象とすることとする方針を決定したところでございます。  この方針を受けまして、今御指摘のあった国立感染症研究所における積極的疫学調査実施要領というものが改正をされたということでございまして、それを踏まえ、濃厚接触者は、無症状であってもPCR検査の対象となることについて、本当に先週末の夜ということになりましたけれども、事務連絡を発出し、都道府県等に周知をしたということでございます。  なお、検査結果が陰性であった場合でも、これまでどおり、健康観察期間である十四日間は自宅待機をしていただき、期間中に何らかの症状を発症した場合には、再度検査を直ちに実施をしていただく、こういうことになります。  次なる波に備えて、検査体制のさらなる強化に努めてまいります。
  75. 川内博史

    川内委員 済みません、事務連絡を発出したというのは、厚生労働省の結核感染症課長の名前の事務連絡を発出したということですか。それとも、国立感染症研究所の実施要領を改定したということですか。
  76. 橋本岳

    ○橋本副大臣 お答えをいたします。  済みません、先ほども答弁をいたしましたが、感染症研究所の積極的疫学調査実施要領を改正しました。改正をしましたという事務連絡をその二十九日に、これは、厚生労働新型コロナウイルス感染症対策推進本部という名前において都道府県等に対してお知らせをした、こういうことでございます。
  77. 川内博史

    川内委員 済みません、私が答弁の聞き方が悪くて、二度手間になって、大変恐縮でございます。ありがとうございます。  それでは、引き続いて、今回の改正法案、科学技術基本法の改正法案では、中小企業技術革新制度日本版SBIR制度の見直しというのも提案されております。  科学技術イノベーション推進のためには、中小企業も重要な役割を果たすというか、中小企業こそが重要な役割を果たすわけでありますけれども、その中小企業、個人事業主が新型コロナウイルスによって苦境に立たされております。  その中小企業、個人事業主の事業の継続を支援する持続化給付金について、ちょっと教えていただきたいと思います。  この持続化給付金の事務体制、審査は何人で行っているのか、審査はどのような能力を持った人が行っているのか、審査を行っている人の時給は幾らかということを教えてください。
  78. 奈須野太

    奈須野政府参考人 お答え申し上げます。  持続化給付金の審査でございます。  当初、事業の開始段階では、最大約千六百人の人員で、一部休日も含めて対応するということを想定してまいりました。  その後、事業が開始して、想定以上に申請数が増加したということや、申請された方の不備の割合、不備率が高どまりしたことを踏まえまして、この一カ月間、増員をしておりまして、約二千九百人の人員による交代制で、夜間、休日を含めて対応する体制に増強しております。  このため、現時点で要している人件費や人件費の単価について、ちょっとお答えすることは困難なんですけれども、いずれにせよ、事業が終了した後、どのぐらいの単価でどのぐらいの人数を雇ったか、それは適正なものかどうかということは、しっかり精査して、精算してまいりたいというふうに思っております。  なお、審査の要員でございますけれども、特に資格ということは求めておりません。ただし、業務につく前に、今回の申請要領と審査の仕方ということをもとにしっかり研修を行っているというふうに考えております。
  79. 川内博史

    川内委員 そうすると、コールセンターは何人で行っているのか、これはもう人数だけ教えてください。
  80. 奈須野太

    奈須野政府参考人 コールセンターでございますけれども、現在また問合せがふえておりますので、順次増強をしております。現在、三百五十席の体制で一日約五千件ほどのお問合せに対応しているところでございます。
  81. 川内博史

    川内委員 まさしく今ございましたけれども、当初の公募の仕様書では、一日五千件の相談に応じられる体制をつくってくださいねということが仕様書に書いてあります。そういう意味では、仕様書どおりのコールセンターの体制になっているというふうに思われるわけですが、他方で、今、経済産業省さんが一生懸命、全国五百カ所の申請サポート会場でサポートする体制をつくっているんだということも御説明をいただいているわけでございます。  仕様書上は、あるいは契約書上は、申請サポートをする、五百カ所に設けるというようなことは仕様書にも契約書にも出ていないわけでございますけれども、この費用は誰が持つんでしょうか。
  82. 奈須野太

    奈須野政府参考人 お答え申し上げます。  申請サポートセンター、最大五百カ所、今はもう五百カ所より多くつくっているわけでございますけれども、これも委託費の中で対応するということを考えております。
  83. 川内博史

    川内委員 考えておりますとおっしゃっていらっしゃるわけですが、契約書にも仕様書にも出ていない、当初、事業者と経済産業省あるいは政府との間で想定をされていない事柄について、委託費の中でそれを見なさいということは、私は契約書上無理なのではないかと思いますが、事業者はそれを承諾したということでよろしいんでしょうか。
  84. 奈須野太

    奈須野政府参考人 本事業はまさに執行途中でございまして、当初、五百カ所ぐらいあれば足りるかなと思っていたものが、やはり対面でのアドバイスを受けたいということで、もっとたくさん設置してほしいという声が多く寄せられております。そういう中で、予算の範囲内で追加の人員増強が必要になるというふうに考えておりまして、今後これらの数値は変動すると考えております。  ただ、いずれにせよ、国費による支出でございますので、ちょっと繰り返しになって申しわけないんですけれども、実際に要した費用が幾らかかったか、それが本当に適正な水準のものであったのかということは、これは事業の確定検査によって私どもが認めたものに限って支払われるということでございます。
  85. 川内博史

    川内委員 ですから、申請サポート会場を設けるというのは仕様書にも契約書にも出ていない事柄なので、そのことを事業者に押しつける、この申請サポート会場まで全部委託費の中でやってくださいよということを、私は契約書上も仕様書上も言えないのではないかということを申し上げているわけで、そのことについてどうお考えになられるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  86. 奈須野太

    奈須野政府参考人 私どもの発注というか契約の考え方として、申請サポートの体制を整えるということを要求しております。具体的に、では、申請サポートの体制とは何ぞやということで、今議論になっているような申請サポート窓口というのがあるわけでございます。
  87. 川内博史

    川内委員 大変苦しい御答弁だったのではないかというふうに思いますが、この持続化給付金の事務を請け負っているサービスデザイン推進協議会についてはさまざま疑問がありますので、今後もまた、引き続きいろいろ御教示をいただければと申し上げて、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  88. 津村啓介

    津村委員長 次に、畑野君枝さん。
  89. 畑野君枝

    ○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。  科学技術基本法等の一部改正案について伺います。  今回の科学技術基本法改正案に対し、研究者の皆さんから多くの懸念の声が寄せられています。それは、これまでの科学技術の振興に加え、イノベーション創出を並列させているからです。  「大学の危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム」運営委員会は、実用化と不可分なイノベーション創出科学技術の振興と並んで位置づけることは、結果として科学技術をますます技術に引きつけて理解し、科学の独自性を軽視することにつながるという懸念が否定できないと指摘されています。  そこで、竹本直一大臣に伺います。  科学技術基本法改正案第二条第二項では、「科学技術の振興」と「研究開発の成果の実用化によるイノベーション創出の振興」が並んで位置づけられています。結果として科学の独自性が軽視されることになるのではないかと思いますが、いかがですか。
  90. 竹本直一

    竹本国務大臣 科学技術イノベーション創出のみならず学術的価値の創出その他の多様な意義を有することへは、十分留意をいたしております。学術研究と学術研究以外の研究の均衡のとれた推進が必要と考えております。  研究者の自主性の尊重その他の大学等における研究の特性への配慮について規定しているわけでございます。また、基礎研究推進において国が果たす役割の重要性についても規定しているところであります。  今後とも、科学技術の水準の向上についてしっかりと取り組んでまいる所存であります。  したがって、イノベーション創出を並べて掲げたからといって、科学技術そのものの研究が衰えるわけではもちろんありません。
  91. 畑野君枝

    ○畑野委員 大臣、そうおっしゃられますけれども、そういう御答弁を伺っても、研究者の皆さんというのは、本当に信用できるのかということなんです。  それは、二十五年です、科学技術基本法が制定されてから。その間、政府科学技術振興策はどうだったのか、多くの不信が積み重なっていると私は思います。  基本法の制定時に提案者がどう説明をしていたのか、その説明が今きちんと果たされていたのかどうかを、私、少し資料を示して検証したいと思います。  お手元の資料にございます。  現行基本法の第五条は、基礎研究の重要性について触れています。基本法の中心的提案者だった尾身幸次氏は、著書「科学技術立国論」の四十七ページで第五条の解説を次のように書いています。  資料をごらんください。  第五条において、特に基礎研究に触れ、その特性から見て、国及び地方公共団体という公共部門が、基礎研究の振興に果たす役割が大きいことを配慮すべきだとしている。基礎研究、応用研究開発研究のバランスのとれた発展を目指す我が国にとって、まず第一の課題基礎研究をこれまでにない大きな規模、高いレベルに引き上げることである、こう述べています。  尾身氏の第五条の解説で、まず第一の課題基礎研究だと述べているんです。確認ですけれども、そのことで間違いないですね。
  92. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 お答えいたします。  今委員指摘のとおり、尾身幸次元議員の著書にそのように書かれてございます。御指摘のとおり、四十七ページに基礎研究の項目があり、今先生指摘のとおりのことが記載されているということでございます。
  93. 畑野君枝

    ○畑野委員 尾身氏はこの著書の二十八ページでは、今我々にとって、基礎研究を重点として科学技術全体のレベルアップを図っていくことが急務であるとも述べています。基礎研究を重点に振興し、それをもって新産業創出に寄与する科学技術立国をつくると説明されていました。  こういう説明を受けたわけですから、当時の研究者の皆さんは期待もされたし、我々も、対案を出し否決はされましたが、賛成をしてまいりました。  では、この基礎研究を重点として科学技術全体のレベルを図っていくという約束は守られたんでしょうか。まず、基礎研究は高いレベルに引き上がったのかということです。  資料の二枚目をごらんください。基礎研究のレベルをはかる指標は幾つかあるわけですが、引用度の高い論文数ではかるのが一般的だと伺っておりますので、分数カウント法による国・地域別のトップ一〇%補正論文数を引用させていただきました。  確認ですけれども、一九九五年から一九九七年の平均の日本の論文数と順位、そして、二〇一五年から二〇一七年の平均の日本の論文数と順位が載っております。ここに書かれていた数字でよろしいのか、確認ですが、よろしいですか。
  94. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 この数字のとおりでございます。(畑野委員「読み上げてくれますか」と呼ぶ)トップ一〇%論文でよろしゅうございますか。(畑野委員「はい」と呼ぶ)  九五年から九七年でございますけれども、論文数全体におきまして、日本におきましては、三千九百三十九論文、シェアが五・九、そして順位が四位でございます。これは上位二十五カ国・地域でございます。  二〇一五年から二〇一七年におきましては、トップ一〇%補正論文につきましては、我が国は、中途で二〇〇五年―二〇〇七年も言いますと、これはふえておりまして、四千五百六報、シェアが四・八、五位でございます。  二〇一五年から二〇一七年、これは、三千九百二十七報、二・七%の九位ということでございます。  上下はあろうかと思います。
  95. 畑野君枝

    ○畑野委員 つまり、振り返ってみると、基礎研究のレベル、順位は上がっていないんですね。むしろ、国際的な日本の地位は下がっています。基本法制定時は、第一の課題基礎研究をこれまでにない大きな規模、高いレベルに引き上げると言っていたわけですが、その約束は果たされておりません。  竹本大臣、確認です。この間も伺いましたけれども、この基礎研究のレベルを上げるという約束、果たされたんでしょうか。いまだ果たされていないと私は思いますが、いかがですか。御認識を伺います。
  96. 竹本直一

    竹本国務大臣 トップ一〇%の数字は今御説明をしたとおりでございますが、考えてみますと、ノーベル賞を今世紀になってからとった人の数でいいますと、日本は十九名で、アメリカに次いで世界で第二位であります。ほとんどが基礎研究ですので、必ずしも基礎研究が極端に衰えたとは思っておりません。  ただ、論文数が非常に少なくなってきているのも実は事実なんです。だから、そこを我々は非常に危惧しておりまして、絶対、これをもっとたくさん、昔のような、四位でしたか、二十年前に、そういう状態には少なくとも持っていかなきゃいけないなとは自覚はいたしております。
  97. 畑野君枝

    ○畑野委員 ノーベル賞受賞者の皆さんは、今から何十年も前の若いころの研究だ、これはもう今後続かないんじゃないかと心配しているのは、大臣も直接お話を伺っているとおりだと思います。  この論文数というのは海外との共著のものですから、これは国際的に通用する中身だというふうに伺っております。  先ほど御答弁があったように、重大なのは、途中、二〇〇五年から二〇〇七年に論文数はふえているんですけれども、そのままいくかと思ったらまた下がっちゃったということなんですよね。つまり、基礎研究の低下という事態が実は起こっている、この認識を共有しなくちゃいけないと思います。  では、なぜこういう質の高い論文数の低下が起きているのか。尾身氏は先ほどの著書の四十七ページでこうおっしゃっています。「基礎研究分野の飛躍的発展を図るためには、大学、国立試験研究所等政府及び地方公共団体による研究開発が強力に進められなければならない。基本法第五条は、こうした公的部門による基礎研究推進の重要性を明確にしたものである。」と解説されています。  では、大学と公的研究機関による研究開発がこの二十五年間に強力に進められたのかということです。  資料三枚目、つけさせていただきました。  伺います。総務省の科学技術研究調査報告は、日本の公的機関の研究開発の推移についてまとめています。科学技術基本法が成立した一九九五年と二〇一七年を比較した場合、公的機関の研究開発費はどのように推移していますか。
  98. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 委員から配付いただいた資料にもございますとおり、総務省の科学技術研究調査報告によりますと、対象機関の一部に変動がございますので時系列を見るには注意が必要でございますけれども、この資料でいいますと、大学等を除く公的機関の研究開発費になってございますが、これの支出額につきましては、一九九五年度には約一兆三千九百億、二〇一七年度には約一兆三千七百億となってございます。これは大学等を除く公的機関ということでございます。  また、その間の変遷を見ますと、二〇〇〇年ころ、二〇〇九年ごろ、二〇一三年ころと支出額が上昇してございますけれども、これは政府研究開発投資の増減の時期の傾向ともおおむね一致するというものでございます。  なお、二〇一七年以降につきましては、政府科学技術関係予算、大幅な増額に努めてきているところでありまして、この第五期期間中、しっかりと対応していきたいというふうに思ってございます。
  99. 畑野君枝

    ○畑野委員 今、最後におっしゃったのは、計算の違いですから。計算の仕方が違ったということですから、私は二〇一七年との比較をお聞きいたしました。  お話にありましたように、一九九五年度で約一兆三千九百億円だったのが、二〇一七年では一兆三千六百八十三億円、約二百十七億円減少しているということです。つまり、強力に推進するどころか、減っているんです。弱められているんです。これでは論文数は伸びるはずはありません。基礎研究のレベルも上がるはずがありません。  そこで、その次の資料をつけさせていただきました。これは確認です。政府科学技術関係予算はどうなっているかという資料です。一九九六年、第一期科学技術基本計画が始まった年と、第五期科学技術基本計画が始まった中での一番最新の資料、二〇一七年の当初予算と、そのうちの競争的資金の割合を伺いたいと思います。競争的資金は一番右のところに載っております。お願いします。
  100. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 先生の資料のとおりであろうかと思いますけれども、第一期におきましては九六年から二〇〇〇年までということでございます。おおむね七、八%ということでございます。  また、二期、三期、四期、五期でございますが、五期は……(畑野委員「全部、いいんです。ごめんなさい、もう一回。ちょっと聞き方が悪かった」と呼ぶ)
  101. 畑野君枝

    ○畑野委員 済みません。もう一回、聞き直させていただきます。  一九九六年と二〇一七年の当初予算と、それから、一番右に載っている競争的資金の割合を教えてください。
  102. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 読み上げさせていただきます。  一九九六年、当初予算二兆八千百五億、そして、パーセントは六%でございます。二〇一七年は、三兆四千八百六十八億、一二・三%ということでございます。
  103. 畑野君枝

    ○畑野委員 競争的資金のパーセント、言っていただいたのですが、金額もそれぞれ言っていただけますか。
  104. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 金額は、一九九六年度、一千六百九十九億、二〇一七年度、四千二百七十九億というふうになってございます。
  105. 畑野君枝

    ○畑野委員 御説明いただきました。  つまり、最初の科学技術基本計画が策定された一九九六年当時は、全体二兆八千百五億円のうち、競争的資金は千六百九十九億円の六・〇%という状況だったんです。二〇一七年度は、科学技術関係経費は三兆四千八百六十八億円になっているんですが、競争的資金は四千二百七十九億円で、一二・三%になっている。つまり、競争的資金の割合が倍増しているということです。科学技術関係予算は六千七百六十三億円ふえているんです。  私は、この間、繰り返し、国立大学などの基盤的経費、運営費交付金が、法人化後、千四百億円以上削減されたということを問題にして、もとに戻すことを求めてきたんです。そのときに政府は何と言ったかといったら、予算が限られていますと言いわけしてきたんです。でも、科学技術関係予算はふやしているんですね。予算がないんじゃない、予算の配分は間違ってきたということだと思いますよ。  基盤的経費を減らして競争的資金を倍増する、こういうのを選択と集中というんです。こういうことを強めるから基礎研究のレベルが下がっているのではありませんか。  幾つか数字を大臣に知っていただきたいということで、資料を含めて政府から御答弁をいただきました。  大学フォーラムは、慎重審議を求めるお願いで次のように述べられています。ぜひ、私たちは聞く必要があると思います。   日本におけるいわゆる「研究力」の低下、とりわけ基礎研究の置かれている困難は、当事者である研究者のみならず、幅広い社会的な関心を集め、そのゆくえについての危機感を生んでいる。その原因についても、大方の認識は一致している。1安定的な研究環境を保障すべき基盤的経費(国立大学においては運営費交付金)を削減して競争的研究資金に比重を移す政策がとられてきたこと、2その結果として、競争的研究資金に依存した不安定な任期つき雇用がとくに若手研究者のあいだで広がり、競争的研究資金の獲得を意識した研究生活を強いられていること、3その結果として、「出口」を想定しない基礎研究、長期的視野をもった研究にじっくり取り組むことが困難になっていること、などである。 私は、これは本当に大事な指摘だと読ませていただいて思いました。  そこで、竹本大臣に伺いたいんですが、最初の私の質問への御答弁の中で、科学技術の振興、これはやっていくんだとおっしゃっておられましたが、であるならば、二十五年間振り返りました、先ほど数字も持って。選択と集中政策によって国立大学や公的機関の運営費交付金を減らしてきたことを深く反省していただきたいと思うんです。今度は抜本的に増額するとおっしゃるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  106. 竹本直一

    竹本国務大臣 科学技術イノベーションをめぐって各国が覇権争いを繰り広げている中、例えば注目度の高い論文における日本の順位の低下など、日本研究力が相対的に低下しているとの御指摘は十分承知をしております。  他方、まず事実関係として、国立大学及び国立研究開発法人の運営費交付金は、厳しい財政事情の中でも近年減額をしていない。国立大学については、法人化以降、減少傾向にしばらくありましたが、平成二十七年度以降は対前年度同額程度、国立研究開発法人については、平成二十八年度以降は対前年度増額を確保しております。  政府としては、第五期科学技術基本計画等に基づき、科学技術イノベーションの基礎的な力の強化に向けて、大学等における研究活動を安定的、継続的に支える運営費交付金等の基盤的経費と、すぐれた研究や目的を特定した研究等を支援する公募型資金の最適な配分を考慮し、研究資金全体の効果的、効率的な運用を図ることが重要であると考えております。今後とも、基盤的経費と公募型研究資金のバランスを配慮しながら、研究力のV字回復を図ってまいりたいと思っております。  基礎的研究を決して軽視しているものではさらさらありませんが、途中の、先ほどの冒頭の御説明にありましたいろいろ数字の変化は、当時の経済社会情勢も大きく影響しているところもあるとは思います。
  107. 畑野君枝

    ○畑野委員 経済的、社会的変化はすさまじいんですよ。大臣おっしゃったように、国際的な競争が高まって。そういうときに、もっとやろうというときにやられていないということが問題だということは、大臣も御認識いただけると思うんですね。  それで、国立大学の法人化に基づく千四百億円の減については、私も国会で議論しましたよ。大論争でしたよ。そして、ずっと下がってきたのが、今、とりあえず、みんなの力でこれ以上下げるのをとめているだけなんですよ。だから、もとに戻しなさいということを言っている。当たり前のことじゃありませんか。  そこの御認識はもう一回文科省にも聞いていただいて、必要であればまた議論したいと思いますが、そういう到達点だということを私は申し上げておきたいと思います。  それで、バランスというのでは信用ならないんですよ。これだけ基礎研究が追いやられてきたんだから、全然ふえていないんだから、減っているんだから。  それで、二〇一六年十一月十七日に、文科省の科学技術・学術審議会学術分科会が会長声明を発表しています。これも本当に大事な話なんですね。大隅良典博士がノーベル生理学・医学賞を受賞したことを祝して出されたんですが、この声明の中で、日本の学術研究の危機的状況について、次のように述べられています。  個々の研究者に目を向けると、さまざまな制約のもと、研究時間が減少する中で、短期的な成果を上げることを急いだり、すぐに役立つかどうかに過度にとらわれたりする反面、長期的な展望を持ち、未踏の領域への大胆な挑戦が少なくなってきていることが危惧されます。基礎科学力を強化するため、応用科学、開発研究に偏ることなく、個人の多様で独創的な研究を支えている科研費や、未来を担っていく博士課程の学生やポスドクなど若手研究者への支援大学等研究機関を支える運営費交付金、私学助成等の基盤的経費など、学術研究基礎研究の振興策への重点投資が必須だと考えます。  先ほど御紹介されていた基本法制定時の、第一の課題基礎研究をこれまでにない大きな規模、高いレベルに引き上げるという約束が果たされていたら、私はこういう説明を出す必要はなかったと思います。  選択と集中政策について、私も言いましたけれども、そこへの反省のお言葉はなかったと思います。幾ら科学技術の振興が軽視されるようなことはないと御答弁されても、この二十五年間の実態を振り返るならば、本当に信用できるのか、できないということになると思うんですね。  基本法を改正して、振興策の柱にイノベーション創出を据えるならば、イノベーション創出につながらない基礎研究への振興が更に弱められるのではないか、その疑念は、私は拭うことはできません。基本法制定時の原点にぜひ戻っていただいて、大学、公的研究機関の運営費交付金を抜本的にふやす、私学助成をふやす、そのことを重ねて強調しておきたいと思います。  次に、伺います。  改正案が振興策に沿って活動する責務を大学などに課すとしていることは、大学などの自主性、自律性を損なう危険があるのではないかという懸念が強まっています。法案第六条は、研究開発法人と大学に責務を課し、振興方針にのっとり、科学技術の進展及び社会の要請に的確に対応することが求められています。  安倍政権は、二〇二五年までに大学、国立研究開発法人に対する企業投資をOECD諸国平均の水準を超える二〇一四年度の三倍にすることを目標に掲げています。  そこで、大臣に伺いますけれども、例えば、こういう目標を振興策に盛り込んで、基本法として法的にその目標を達成する責務を課すとなれば、大学などの自主性や自律性を損なうことになるのではありませんか。大臣、いかがですか。
  108. 竹本直一

    竹本国務大臣 御指摘のとおり、科学技術の進展それから社会の要請への対応についてはこの法案では言及しておりますけれども、あくまでも大学等の自主的かつ計画的な取組を努力義務として定めたものであり、大学の自主性に配慮した規定でございます。  また、現行の科学技術基本法では、研究者等の自主性の尊重その他の大学等における研究の特性への配慮についても規定いたしております。改正法案でも、引き続き、もちろん規定しております。  したがいまして、政府目標といいますか、そういう大きい、三倍ですか、そういう目標を掲げたからといって、研究テーマに大きく影響を与えるものではないと私は考えております。
  109. 畑野君枝

    ○畑野委員 今回の基本法改正の具体的な検討が行われた総合科学技術イノベーション会議基本計画専門調査会制度課題ワーキンググループでは、二〇二五年までに大学、国立研究開発法人に対する企業投資を二〇一四年度の三倍にする目標について検討し、「現在の伸び率のままでは目標達成も難しい状況であり、更なる活性化を促す方策が必要である。」ここまで書かれているんですね。  しかし、ワーキンググループの議事録を読むと、目標達成の目玉政策として大学、国研の外部化が打ち出されて、当時はベルギーのIMECのような大規模研究拠点を外部化することを構想していた、検討会に大学や国立研究機関の方を招いて話を聞いたが、かみ合わなかったというんです。そのことを、座長の上山隆大氏は、第五回制度課題ワーキンググループで次のようにお話しになっています。「それこそIMECのようなものを具体的に動くような法人みたいなことも考えていたんですが、これはむしろ現場のニーズが具体的に今すぐあるのかというと、このワーキングでやったヒアリングでは、」「なかなか出てこなかったと。」  つまり、大学、国研の外部化というのは、大学や国研が要求しているものではないんです。経団連、「Society5.0の実現に向けた「戦略」と「創発」への転換」で、出島組織の設置という表現で打ち出したものです。大学の現状を無視して、科学的な根拠もない目標を思いつきのような手段で達成させようと法改正で押しつけるようなことは、大学の自主性、自律性を損なうやり方であって、やめるべきだと重ねて私は申し上げておきます。  次に、改正案がこれまで振興対象から除いていた人文・社会科学を対象とすることにも懸念があります。  人文・社会科学がイノベーション創出の手段とされるなら、現在の人間と社会のあり方を相対化し批判的に省察するという人文・社会科学の独自の役割は損なわれるのではないかと思いますが、どのようにお考えですか。
  110. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 恐縮でございます。答弁させていただきます。  今回、人文科学のみに係る科学技術を追加させていただきますけれども、これにつきましては、社会の情勢の変化、それから、深くやはり人間を知るということがこれから非常に重要になってくるということで追加をさせていただきます。社会に合わせるということでございます。  一方で、人文が加わることによりまして、その分野の特性を踏まえてということもきちっと明確に記載をしておりますし、さまざまな注意を払っているということでございます。  また、人文科学の推進方策でございますけれども、人文科学につきましては、従来から、文科省において、例えば科研費等を用いて研究者の自由な発想に基づく研究活動を中心に振興してきているところであり、これらに加えまして、次期基本計画の検討にあわせて、社会課題解決観点も含めて、戦略的かつ総合的な振興を検討してまいりたいというふうに思ってございます。
  111. 畑野君枝

    ○畑野委員 予算がつかないと振興になりません。  人文・社会科学自体の持続的振興が必要ということはどういうことかということなんですが、人文・社会科学の研究者は私立大学に勤務している方が多いんです。人文科学の本務教員数は二万二千九百八十一人ですが、そのうち私立大学に勤務しているのは一万六千百八十六人、七〇%です。社会科学の本務教員は二万三千八百五十二人で、私立大学に勤務しているのは一万七千百二十人で、七二%です。  兼務教員も同じように、人文科学が八五%、社会科学も八三%が私立大学に勤務しています。兼務教員、つまり、非常勤講師が多いということなんです。  ですから、首都圏大学非常勤講師組合の調査によりますと、年収二百万円以下の非常勤講師は六九%だということです。ここにメスを入れて待遇を抜本的に改善しなければ、人文・社会科学自体の持続的な発展はあり得ないということで、私は、私立大学の私学の助成の増額、とりわけ非常勤講師の単価引上げが必要だということも、重ねて、答弁は求めませんが、申し上げておきたいと思います。  次に、司令塔の問題です。  法案は、科学技術イノベーションに関する司令塔機能強化として、内閣府設置法を改正し、科学技術イノベーション推進事務局を設置します。  伺いますけれども、これは、総合科学技術イノベーション会議、CSTIの事務局、それから統合イノベーション戦略推進会議の事務局とどのような関係になるんですか。
  112. 佐藤文一

    佐藤政府参考人 お答えいたします。  現行法におきましては、総合科学技術イノベーション会議、CSTIでございますけれども、の事務局は、内閣府に置かれた政策統括官が担ってございます。また、統合イノベーション戦略推進会議の事務局は、内閣官房に置かれたイノベーション推進室が担ってございます。  今般の改正法案では、内閣府に新たに科学技術イノベーション推進事務局を設置することとしておりますけれども、新たな事務局が設置された場合には、同事務局が、総合科学技術イノベーション会議、CSTI及び統合イノベーション戦略推進会議、両方の事務局を担うこととしてございます。
  113. 畑野君枝

    ○畑野委員 重大な御答弁をいただきました。これは法案を読んでもわからないんですよね。  それでは、重ねて聞きますけれども、科学技術基本計画の策定に関する事務が文部科学省から内閣府に移されたのはいつですか。
  114. 佐藤文一

    佐藤政府参考人 お答えいたします。  平成二十六年の通常国会で成立した内閣府設置法の一部を改正する法案が同年五月に施行されておりまして、科学技術基本計画の策定及び推進に関する事務が、文部科学省からこの時点で内閣府に移管されてございます。
  115. 畑野君枝

    ○畑野委員 CSTIが関与した第五期科学技術基本計画が、我が国世界で最もイノベーションに適した国にすることを掲げて、翌年の科学技術イノベーション総合戦略二〇一七では、基本計画の策定に関して、科学技術イノベーション官民投資イニシアチブの着実な実行を重点事項として掲げました。イノベーション政策と科学技術基本計画を同じところがつくるんだから、科学技術の振興が成長戦略に従属される、こういうことは明らかだと思います。  二〇一八年に内閣総理大臣決裁で誕生した統合イノベーション戦略推進会議は、イノベーション関連の司令塔機能強化するために、イノベーションに関連の強いCSTI、IT本部、知財本部、健康・医療本部、宇宙本部、海洋本部を束ねる全大臣で構成する会議ということになっております。ですから、先ほど言ったような、兼ねるというふうになれば、学術研究の真っ当な発展を願う声はどうなるんですか。ますます届かなくなる。これまでにも増して、科学技術イノベーション政策の道具にされるということになるんじゃありませんか。  私は、日本学術会議の「第六期科学技術基本計画に向けての提言」はとても大事だと思って読ませていただいたので、紹介したいと思います。  日本研究力低下の問題の本質は何かと問いかけ、運営費交付金の削減など公的研究投資の少なさが基礎研究に取り組む環境を急速に劣化させていること、その一方で、選択と集中、戦略的、トップダウン型の競争的資金の拡充で短期的で直接的な成果を求められ、長期的な予算の裏づけが伴わない競争的研究資金では若手研究者の安定雇用も困難だと指摘しています。  先ほどからもういろいろな方が、大臣もお認めになりましたけれども、みんな言っているんです。法改正によって科学技術イノベーションに関する司令塔の機能が強化されたら、こういった声がますます届かなくなるんじゃないか、そういう懸念の声が出るのは当然だと思います。  私、最後大臣に、これは御所見で結構です。ぜひ、こういう、先ほどアカデミアの問題について私と全く逆の質問をされた方がいますけれども、私は、科学技術の発展のために、アカデミアの皆さんの声を本当に総結集することが大事だというふうに思っております。  日本科学者会議の皆さんは、日米同盟下での軍事研究への総動員の仕組みとなる懸念があるといって、この法案の三条に懸念の声を上げておられますが、同時に、基本計画の策定に当たってはアカデミアの意見を尊重するべきだ、総合科学技術イノベーション会議の議を経るのみならず、日本学術会議など科学アカデミアの意見の聴取や尊重を規定する必要があるというふうに述べられております。日本学術会議自身が、聞いてほしいと。この間、繰り返し言ってきたとおりです。  また、大学院生有志団体チェンジ・アカデミアも、若手研究者、大学院生の声を今度の法案の作成過程で、あるいは基本計画で聞いてほしいと言っております。先ほど大学院生の話がありましたけれども、全国大学院生協議会は、もう豊富な資料を集めています。  こういう声をしっかりと聞くべきじゃありませんか。
  116. 竹本直一

    竹本国務大臣 先生おっしゃる、アカデミアの声を聞くべきだ、まさにそのとおりで、大賛成でございます。十分聞けていないと言ってもいいのではないかと私は思っております。  結局、現実を見ますと、大学で研究をいたしておりますと、学生であると同時に研究者ですよね、ポスドクなんか。そうすると、特定の先生についていると月一万円ぐらいの人もいるんです。それでは生活できないですよね。だから、外部資金を取り入れて、月十万から二十万ぐらい、手当というか入ってくる人もいるんですけれども、そういう工夫も一つはできるし、またやるべきだと思いますが、それよりも大事なのは、アカデミアに対する産業界の評価及び態度を変えていかないといけないと思っております。  まず、評価を変えなきゃいけないというのは、アカデミアで発明した産品といいますか成果に対して、日本産業界というか、多分、医薬品業界ですけれども、非常に低い評価しか与えていない、特許で見ましても二十分の一ぐらいしか与えていない、これが一つの問題であります。  そして、なぜ修士だけで企業に就職する人が多いかというと、企業がドクターを、ポスドクを採らないからなんです。そこも産業界も反省していかなきゃいけない。産業界とアカデミアは共存共栄じゃなきゃいけない、そういうふうに思っております。
  117. 畑野君枝

    ○畑野委員 最後に、アカデミアのやはり自由な、独創的な研究そのものが社会全体の前進になる、新型コロナウイルス感染症で苦しむ若手の研究者、院生を含めても支援をしていただくことが必要だということを強く申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  118. 津村啓介

    津村委員長 次に、串田誠一さん。
  119. 串田誠一

    ○串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。  きょうは最初に判この話をしようと思っていたんですけれども、先ほど敬愛する中島先生から、山梨の文化、大事にしてくれということでありまして、大変申し上げにくいわけでございますけれども、科学技術の応用によってテレワークということがどんどんふえていって、それに障害となるようなことであるなら、何らかの苦心をしていけばいいのかなと思っております。  個人的には私は判こは大好きでございまして、朱の判を押すことによる身が引き締まる思いで、実印などの大事な判こは、あえて上下の印を判につけないで、押すときに上下を確認して、本当にこの契約をしていいのかどうかということを改めてもう一度考え直すために上下の印をつけていないんだというようなことも聞いて、そういう意味で、判を押すということの重要性というのは判こによって教えていただいたなという気はするんです。  ただ、私が申し上げようと思っていたのは、判こというのは象牙が使われることが多くて、今アフリカゾウが大変絶滅の危機になっているときに、日本のその判こによる象牙というのが世界一位というようなことも言われていて、そのために殺されている象がいるということを、少しちょっと判この材質だけは考えていただきたいなと思っています。  山梨県は、御岳昇仙峡のところで千年前に水晶が発見されて、江戸時代、水晶を細工する技術が判この文化につながったということでありますので、水晶とか石とかツゲとか、象牙でないもので発展を、判この文化を残していただきたいというふうに思っています。  ちょっと質問の順番を変えたいと思うんですけれども、前回の質問でも、がん探知犬ということを申し上げましたが、現在、世界的にがんの探知というのを犬によって行うということがあります。  嗅覚が人間の一万倍とか十万倍とか百万倍とか言われている中で、恐らく、聴覚とか視覚というのはレーザーとかいろいろなことで補えるんでしょうけれども、嗅覚というのはなかなか科学技術でまだまだ追えない部分があって、そういったようなところを科学技術と融合させながら発見するということも大事だと思うんですが、現在の国としての取組、このがん探知犬についてはどうでしょうか。
  120. 吉永和生

    吉永政府参考人 お答え申し上げます。  国内、国外におきまして、犬の嗅覚を活用しましたがんの早期発見に関する研究の報告あるいは報道があることにつきましては承知してございますけれども、現時点におきまして、これらの手法につきまして科学的な知見というものは十分得られていない状況かと考えてございます。  引き続き、こういったものについてもさまざまな知見について収集を努めていきたいというふうに考えております。
  121. 串田誠一

    ○串田委員 今、犬の嗅覚によって、麻薬探知犬というのがございます。あとは、検閲探知犬というのもありますし、自衛隊の救護。麻薬探知犬の場合は税関なので財務省なんですね。検閲探知犬というのは農水省なんですよ。自衛隊の救護犬というのもありますし、警察犬というのも、各省庁がみんな縦割りで動物に頼っているというところがあります。  これはここの省庁質問することではないんですが、引退後というのが非常に危ぶまれておりまして、普通の民間の盲導犬のような場合には、引退した後、温かい家庭に引き取られるんですけれども、国の所有物ということもあって、なかなかこれが、引退後が本当に十分に恩返しできているんだろうかというようなところが非常に心配になっております。  そこら辺はちょっと別の省庁でもう少し突き詰めていきたいと思うんですが、何が申し上げたいかと申しますと、犬の嗅覚を利用するわけですよ、全て。麻薬だとか、あるいは銃器探知犬というのももう既に税関にあります。あと、爆発物探知犬というのも今諸外国でどんどん育成されているわけですけれども、こういったような、嗅覚を利用するという意味では同じなんですね。  ですから、育成とかも一カ所で集まって育成し、そして、引退した場合には、引退後もしっかりと温かい家庭に引き取られていくという整備ができていれば私はいいと思うんですが、こういうものが全部縦割りになっているものですから、活用はしているけれども、じゃ、何歳で引退し、引退後は一生懸命人間のために尽くした動物たちが本当に温かく余生を送っているのかどうかというのがはっきりしないところがあります。  例えば、競馬などは農水省が管轄していますが、馬の場合には寿命は二十歳から二十五歳まで生きるんですけれども、競馬の競走馬は、引退は大体五歳から六歳、この九割以上の競走馬が引退直後に殺処分されているんですね。こういったようなことを余り知られていない。諸外国では、かわいそうじゃないか、そういう活動があるんですけれども、国会でこういった議論というのはなかなかなされていない。  そういったような部分で、技術革新というのも大事なんですが、技術というのは、ほかの委員でもありましたように、環境を大切にしなきゃいけないというのと同じように、やはり技術革新は生物をも大切にしなきゃいけないという両輪でなければ私はならないと思うので、少し我が国はそういったところの観点が欠けているのかなという、ちょっと足りないのかなというふうにちょっと思っております。  そこで、ちょっと話はかわりますけれども、きょうは法案について質問をさせていただきたいと思うんですが、この法案に関して、基本法を充実させるわけですから手放しで喜んでよさそうなものですが、反対というか懸念している意見も実はあるわけで、これは政府として、どのようなことをこの法案として懸念事項として指摘されているのか、その把握状況をまずはお聞きしたいと思います。
  122. 松尾泰樹

    松尾政府参考人 お答えいたします。  一部の研究者の団体の方から、本法案に対しまして、総括しますと四点くらいだと思いますけれども、イノベーション創出の概念を導入することにより基礎研究が軽視されるのではないか、そしてまた、大学等の責務規定が入ることにより大学の自主性が損なわれるのではないか、そしてまた、第三条第六項に、社会課題、「社会の諸課題への的確な対応」ということで、具体的な課題の例示はこれは不適切ではないかということ、そしてまた、科学技術基本法とは別にイノベーション基本法を作成すべきじゃないか、おおむねこういった点であろうかと思います。  一方で、本法案作成に当たりましては、有識者会議を設けて作成したわけでございますけれども、これには日本学術会議からもオブザーバーで来ていただき、そしてまた、本年一月に出されました日本学術会議の幹事会の声明といったものも踏まえて立法化してございます。  先生指摘の対応でございますけれども、簡単に申し上げます。  まず、基礎研究の懸念につきましては、この委員会でもるる御説明してございますが、科学技術の水準向上とイノベーション創出の促進、これは並列的に位置づけるということ、そして、国が果たすべき役割の重要性に配慮すべきもの、これを入れてございます。  責務規定でございますが、人材の育成、研究開発そしてその成果の普及、自主的かつ計画的に努めるということで、努力義務としてございますが、これにつきましては、大学等の自主性に配慮した規定になってございます。  また、社会課題の例示につきましては、これは社会課題への的確な対応ということで、高齢化、人口減少、食料問題、地球温暖化といった普遍的な課題を提示し、五年ごとに作成する基本計画、そして毎年の統合イノベーション戦略、そういったことで柔軟に対応していくということでございます。  また、別法にすべきということでございますが、科学技術の振興とイノベーション創出の振興、これは重なり部分が多うございます。また、別々でございますけれども、有機的に、双方一体的に振興していくことが必要ということで、双方を一つの法律にさせていただいているところでございます。
  123. 串田誠一

    ○串田委員 これまで、いろいろな委員からの質問の中で、基礎科学がおろそかになっているという理由として、応用科学が事業化しやすいという部分がどうしてもあるのかなと私はちょっと懸念しておりまして、前回も、iPS細胞のストック事業に関する問題も、当初、百四十種類のストックを目指していたのが、なかなかその収集が困難であるということから、数を少なくして、それで、万人に汎用的に応用できるような、そういう研究に変更になったというような話があったわけですけれども、これも、一つは、事業化に対するある程度の、圧力と言ってしまうと言い過ぎかもしれませんが、事業化を想定した中で、政府として関与し過ぎているのではないかというちょっと疑問を感じているんです。  今説明をしていただいた中で、法案について条文でちょっと確認をしたいと思うんですが、三条の改正点がありますが、前回と異なる規制の中の書き込みがあるんですけれども、「研究者等及び研究開発の成果を活用した新たな事業創出を行う人材の創造性」というのが加わっているわけですね。  ここがちょっと気になるんですけれども、「新たな事業創出を行う人材」と。そうすると、この研究というのは、新たな事業創出を行う、事業創出という、先ほど言いましたように、事業というものを前面に出してきて、事業に伴わない人材ではだめなんだろうかと。  要するに、基礎研究はすぐ事業には結びつかないんですが、事業創出ということになると、要するに経済性というものを生み出す事業でないと、これは人材として採用されていかなくなるのではないかという懸念がこの文言から非常に感じるんですが、この点についての御説明をいただきたいと思います。
  124. 柿田恭良

    柿田政府参考人 お答えいたします。  今回の科学技術基本法の改正におきましては、従来の人材の部分につきまして、かなり幅広くイノベーション創出という概念を入れておりますので、その関係で幅広く人材についての規定を入れております。  一つには、研究者でございます。その中には、研究者、技術者、あるいはリサーチアドミニストレーターのような人材、それから研究開発に係る支援を行う人材、これは大学等で知的財産や企業との共同研究の契約等にかかわる方。  それから、今御指摘ありました「研究開発の成果を活用した新たな事業創出を行う人材」ということでございまして、これにつきましては、起業家でありますとか、企業に在籍して新事業創出を行う方ということで、そういった方も含めて幅広く科学技術イノベーション創出のための施策を講じるということで、今回、このような規定をさせていただきました。
  125. 串田誠一

    ○串田委員 イノベーションというものの定義がいろいろと問題として指摘されたこともあって、それが事業に直結するようなイメージであってはならないのかなというふうに思っているんですね。そこが非常に懸念されていく中で、こういう文言が、事業という言葉が出てきてしまうと、事業ありきなのかなというふうな懸念というのも出てくるのかなと思うんです。  次に、第六条の第一項に、先ほどちょっと答弁の中に触れられておりますが、「振興方針にのっとり、科学技術の進展及び社会の要請に的確に対応しつつ、」というのがあります。  この「社会の要請に的確に対応しつつ、」ということなんですが、まさに基礎科学というのは、もともと、何の研究なのか、後世になって初めて、こういうことで活用できたんだな、いやあ、びっくりしたというのが基礎科学なんだと思うんですよ。なかなか、社会の要請に的確に対応するというのは応用科学の分野であって、基礎科学というのは、こういうことの推論が果たして成り立つんだろうかと。しかし、それが社会にとってどう活用できるのかということの、そういう事業者的な学者ばかりではなくて、本当に純粋に学問的な部分、それが将来活用されるということが多分にある。ノーベル賞なんか、まさにそういう部分が評価されているのかなと思うんです。  この「社会の要請に的確に対応しつつ、」というものが余りに強調されてしまうと、やはりそれは基礎科学ではなくて、応用的な、経済性というものを要請されているように読めるんですが、あえてこのような表現をしたことの説明をいただきたいと思います。
  126. 柿田恭良

    柿田政府参考人 お答えいたします。  今委員指摘の条項でございますけれども、「振興方針にのっとり、科学技術の進展及び社会の要請に的確に対応しつつ、人材の育成並びに研究開発」等々に努めるということでございまして、まず、科学技術の進展といったことです。やはり、さまざまな最先端の研究が進んでいるという世界状況をしっかりと踏まえるということ。  それから、やはり社会で、今回のコロナもそうですけれども、さまざまな難しい問題、それにこれからも更に対峙していかなければならないと思いますので、当然、科学技術イノベーションでそういった課題への対応ということを図っていく必要がございます。そういったことで、社会の要請といったものにも対応できるようにするということでございます。  ちなみに、この社会の要請という事柄につきましては、現行の科学技術イノベーション創出の活性化に関する法律の中でも研究開発法人及び大学等の責務として既に規定されておりまして、この条項も参考にしながら今回の基本法の中に規定させていただきました。
  127. 串田誠一

    ○串田委員 次に、十八条なんですが、「国は、研究開発の円滑な推進を図るため、研究開発の展開に応じて研究開発に係る資金を効果的かつ効率的に使用できるようにする等その活用に必要な施策を講ずるものとする。」と。「効果的かつ効率的に」というのをあえて入れたわけでございます、十八条ですね。  この、効率的に資金というものを使うんだ。効果的というのはわかるんですが、効率的というのは、まさに事業、そして社会の要請、そしてそれが効率的、まさに基礎研究ではあり得ないような言葉になってしまっていると私は思うんですよ。  効率的というのは、基礎科学にはなかなか適用しない。応用科学ならわかりますよ。研究によって投資し、それがリターンに、戻ってくる、まさに効率的ですよ、投下したものが戻るわけですから。  でも、基礎研究というのは、本来、その時代において、ある程度の年月はかなり形としては戻らないこともあるのかな、しかし、それを大事にしていかないと日本基礎研究というものの発展はないのかなと思うんですが、あえてここに効率的と文言を入れた理由を説明いただきたいと思います。
  128. 柿田恭良

    柿田政府参考人 お答えいたします。  委員指摘の「効果的かつ効率的」というところでございますけれども、現行の科学技術基本法におきましては、条項によりまして、効率的なと言ってみたり効果的なということで、若干統一性がないという部分もございまして、ここは法技術的に、効果的かつ効率的なというように直したという点が一点ございます。  それから、資金の効率的な使用ということはどういうことかという御指摘かと思いますけれども、例えば、これは国が行うことでございますけれども、やはり研究現場で研究資金が効率的に使われるようにするということは、これは当然のことでございまして、例えば年度間の繰越しなどが容易にできるように、あるいはそれが必要ないように、研究資金の基金化をするといったようなことも含めて効率的に使えるようにする、そういうことを念頭に改正をさせていただくというものでございます。
  129. 串田誠一

    ○串田委員 基本法、イノベーションということで、日本は、かつてすごい創造性が高くて、商品も世界的にも競争は勝っていたんですが、最近、少しそういう点で若干厳しい大勢になっているのかなと思っているんですが、最後に、大臣日本がこれから技術革新をしていく上で、少し弱くなっていた部分というものをどういうところを補強しながらこの日本の発展というものを目指していかれるのかどうかお伺いして、終わりにしたいと思います。
  130. 竹本直一

    竹本国務大臣 要は、創造性ということが科学技術の前提でなきゃいけませんが、その創造性を働かせるところが、機会が少ないのか、要するに、人々の交流の中で、あっというようなことが浮かび上がる、それがイノベーションにつながるわけですが、創造の基盤を育てることによって、多彩な人材を育てることが科学技術の発展に一番役立つのではないかというふうに思いますのと、先ほどの別の先生への答弁で申し上げましたように、とがった人材を育成する、そういう努力も国としては必要なのかなというふうに思っております。  そうすることによって、日本技術世界から非常に高く評価されている部分が多分にありますけれども、今申し上げました分野がちょっとおくれているのかなという感じもしますので、例えば、韓国とか中国は、ノーベル賞を全然もらっていないのに、中国は一人もらっていますが、結構、インターネットの世界とか、いろいろなところで日本を凌駕しているものがあります。そういうことを考えますと、とがった人材を使うことによって、創造性の分野でもっと大きく発展することが必要なのではないかと思っております。
  131. 串田誠一

    ○串田委員 時間になりました。この法案が日本の将来に資するように願いながら、終わりにしたいと思います。  ありがとうございました。
  132. 津村啓介

    津村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  133. 津村啓介

    津村委員長 これより討論に入ります。  討論の申出がありますので、これを許します。畑野君枝さん。
  134. 畑野君枝

    ○畑野委員 私は、日本共産党を代表して、科学技術基本法等の一部改正案に反対の討論を行います。  本法案は、現行法の科学技術の振興と並べてイノベーション創出の振興を目的に書き込み、科学技術政策の柱に据えています。これは、基本法の性格をより産業に直結した成果を追求するものに根本的に変えようというものです。  現行基本法は、第十条で、「多様な研究開発の均衡のとれた推進に必要な施策を講ずる」としています。  ところが、政府は、この二十五年間、目先の経済的利益につながる研究に集中投資するための選択と集中政策で競争的資金の割合をふやす一方、公的研究機関研究開発費を減らしてきました。その結果、研究力の低下と言われる深刻な事態を招いているのです。  二〇〇一年に科学技術政策を内閣府が所管するようになり、第四期科学技術基本計画科学技術イノベーション政策の一体的展開が打ち出されてきました。  今回の改正によって、科学技術政府経済政策の道具として活用しようという傾向はますます強まっていくことは明らかです。  法案が、大学等に振興方針に沿って活動する責務を課すことも問題です。安倍政権は、大学などに、企業からの投資を二〇二五年までに三倍増にする目標を押しつけています。こうした目標の達成が責務とされれば、大学は、企業からの投資をふやすため、企業が望む研究課題を優先せざるを得ず、すぐに成果の出ない基礎研究は後景に押しやられかねません。ましてや、軍事研究への動員などあってはなりません。  法案は、振興の対象に人文・社会科学を加えますが、イノベーション創出の振興が重視されるもとでは、現在の人間と社会のあり方を相対化し批判的に省察するという人文・社会科学の独自の役割が軽視されかねません。  内閣府に設置される科学技術イノベーション推進事務局は、CSTIと統合イノベーション戦略推進会議の事務局を兼ねることになります。事務局を一体化することで、これまで以上に、安倍政権の成長戦略イノベーション政策に合わせ、トップダウンで科学技術政策を進めようとするものにほかなりません。  研究力の低下が叫ばれる今、必要なことは、大学や公的研究機関の基盤的経費を抜本的に増額し、学術全体への振興を強めることです。それなしには、新たな知識を生かした文化的、経済的、社会的、公共的な価値の創出を望むことはできないということを強調し、討論を終わります。(拍手)
  135. 津村啓介

    津村委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  136. 津村啓介

    津村委員長 これより採決に入ります。  内閣提出科学技術基本法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の皆さんの起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  137. 津村啓介

    津村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  138. 津村啓介

    津村委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、関芳弘さん外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、公明党、日本維新の会・無所属の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。青柳陽一郎さん。
  139. 青柳陽一郎

    ○青柳委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     科学技術基本法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 科学技術イノベーション基本法の目的に「科学技術の水準の向上」に加え、「イノベーション創出の促進」が追加されることにより、今後の科学技術政策がイノベーション創出に偏重することのないよう、科学技術基本法の本来の目的である科学技術の振興とイノベーション創出のバランスに十分留意すること。  二 第二期科学技術基本計画計画期間以降、政府研究開発投資目標が達成されていない現状に鑑み、本法により「人文科学のみに係る科学技術」が科学技術イノベーション基本法の対象に追加され、振興対象とする研究の幅が広がることも踏まえ、科学技術関係予算の拡充に努めること。  三 本法において、新たに研究開発法人及び大学等並びに民間事業者についても責務規定を設けたことを踏まえ、これらの者がイノベーション創出人材育成人材活用などに積極的に努めることができるよう、適切な措置を講ずること。  四 本法により、科学技術イノベーション基本計画の策定事項に人材等の確保・養成・資質の向上、適切な処遇の確保に関する施策等が追加されることに鑑み、我が国における科学技術の水準の長期的な向上を図るため、研究者等の雇用の安定を確保するとともに、若手研究者に自立と活躍の機会を与える環境整備するよう努めること。 以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  140. 津村啓介

    津村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の皆さんの起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  141. 津村啓介

    津村委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。竹本国務大臣
  142. 竹本直一

    竹本国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  143. 津村啓介

    津村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 津村啓介

    津村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  145. 津村啓介

    津村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会