○舩後靖彦君 ありがとうございます。
では、次の
質問に移ります。
これから、私が掲げる政策の重点
課題であります
インクルーシブ教育について
質問いたします。
先ほどお伝えしましたとおり、私は四十一歳でALSを発症いたしました。それ以前は健常者として生き、その後は一般に言われる
障害者となりました。その両方の立場が分かるからこそ、健常者の
皆様に、障害のある人を理解し、障害のある人とない人が分け隔てられなく支え合う社会をつくってほしい、そのような願いから、私が
参議院議員としての
実現すべき政策の筆頭を
インクルーシブ教育としました。
なぜ
インクルーシブ教育が必要なのか、それは私自身の経験から物語ることができます。企業戦士だった私は、
自分がALSになるまで障害のある人と接する
機会がほとんどありませんでした。このため、障害や病気のある人がどんなふうに生活しているかが分からなかったのです。以前の私のように、障害のない多くの方は、
障害者や病とともに生きる
方々と日常的に接する
機会が少なく、
障害者の日常がどういうものか知らずにいるのではないでしょうか。その現実を知らないために、障害や病に否定的な感情が生まれ、それが偏見や差別につながっていくのではないでしょうか。
こうした不幸な連鎖をなくすためには、先入観なしに付き合うことができる幼少時から、保育園、幼稚園、小
学校で共に学び育つことが大切と考えます。
障害者基本法第一条には、「障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を
実現するため、」とあります。安倍総理が所信
表明演説で私の名前を紹介してくださりながら
実現への決意を示された誰も排除しない一億総活躍社会に向けても、ぶつかり合いやいさかいを含めて、共に育ち、互いに学び合うインクルーシブな保育、
教育が障害のない子供にとってこそ必要と考えますが、
大臣のお考えをお聞かせください。
さて、現在の日本の
教育システムにおきましては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、障害のある子供の就学先として、小中
学校における通常の学級、通級による
指導、特別
支援学級、特別
支援学校という様々な場が用意されています。
一方、資料一にありますように、イタリアには原則的に特別
支援学校はなく、北欧、オセアニアなども障害のある子供のほとんどが
地域の
学校で障害のない子供と共に学ぶ
教育が
実現されています。そこでは、
地域の
学校の中で子供の多様なニーズに合ったカリキュラム、
教育内容、合理的
配慮を提供することによって共に学ぶことを保障しています。
障害者権利条約が求めているのは、まさにこの方向性ではないでしょうか。
二〇一六年に国連の
障害者権利
委員会が発表した
インクルーシブ教育を受ける権利に関する一般的
意見第四号によれば、障害のある人は、ほかの者の平等を基礎にして、自己の生活する
地域社会において、インクルーシブで質が高く、無償の初等中等
教育をすることができることとあり、
地域の
学校で学ぶ権利を保障しています。
二〇一九年十月四日に発表された
障害者権利
委員会からの日本
政府に対する事前
質問には、全ての障害のある人のための、隔離された
学校での
教育から
インクルーシブ教育への移行に割り当てられる立法及び政策措置、並びに人的、技術的及び財政的資源に関する情報を提供してくださいという
質問事項が出されています。
障害者権利
委員会は
地域社会の一員として
地域の
学校で学ぶことを求めていますが、
大臣のお考えはいかがでしょうか。
さて、
インクルーシブ教育の方向を目指すためには、就学先
決定の
在り方が重要になってくると考えます。二〇一七年の
学校教育法施行令の改正により、原則は特別
支援学校、例外的に通常学級への就学となっていた
仕組みを改め、障害の状態、本人の
教育的ニーズ、本人、
保護者の
意見、
教育学、医学、心理学等専門的見地からの
意見、
学校、
地域の
状況等を踏まえた総合的観点から就学先を
決定する
仕組みに変更されました。その際、本人、
保護者の
意見を最大限尊重し、本人、
保護者と市町村
教育委員会、
学校等が
合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村
教育委員会が判断するとなっています。
しかし、現実には、本人、
保護者の希望は聞かれるものの、その希望どおりとはいかない実態もあります。ある自治体では、裁判にまで発展している事例もあります。一方、本人、
保護者の意向と
教育委員会の判断が一致せず、
教育委員会の判断とは異なる就学先に進んだ子供も少なくありません。
資料二を御覧ください。これは埼玉県の事例ですが、特別
支援学校に就学することが望ましいと判断された児童の約三割もが
教育委員会の判断とは異なる特別
支援学級又は通常の学級を選んでいます。これは、すなわち、
教育委員会が少なくとも三割の子供に望まない就学先を強要していたとも言えるのです。本人、
保護者の
合意が得られないまま就学相談が長引き、就学通知が入学直前の三月に送付されるなど、本人や家族は長期間不安にさらされてきたという実態もあります。
国際的潮流からしても人権の見地からしても、障害の有無にかかわらず原則的に
地域の
学校に学ぶ方向、すなわち権利条約の求める
インクルーシブ教育の方向に転換すべき時期に来ているのではないでしょうか。
もちろん、特別
支援学校をなくせと言っているのではありません。特別
支援学校を選ぶ
保護者はたくさんいらっしゃいますし、そのことを否定しているわけでも決してありません。しかし、国の
教育行政の方向性として、分け隔てられることなく、共に学び育つ
インクルーシブ教育を目指していただきたいと強く願う次第です。
その
実現のためには
学校教育法施行令五条の改正が必要となりますが、現行の施行令を大きく変えずとも、就学手続の実務を少し変えるだけで本人、
保護者の希望に沿った就学先は
決定可能だと考えます。
資料三の図を御覧ください。現行の就学の
仕組みと新しい
仕組みの提案です。
まず、就学予定前年度の秋に行う就学時健康診断の通知と一緒に全員に校区の
学校への就学通知を出します。その上で、希望する子は校区の
学校に就学します。特別
支援学校を望む障害のある子の場合は、就学相談を受けて、都道府県が
支援学校への就学通知を改めて出す手続をします。こうした手続は、既に東大阪市、所沢市、横浜市、東京都練馬区などで
実施しています。
全員に就学通知を出した上で特別
支援学校を望む子に通知を出し直す手続は煩雑だとの声もありますが、私立、国立
学校に入学する
学校変更手続と全く同じです。私立
学校、国立
学校就学のために
学校変更の手続をしている数字は
平成二十九年度で全体の一・八%であり、特別
支援学校小学部就学者の割合は全体の〇・六%ですので、国全体として
実施することは十分に可能です。この手続を採用できませんでしょうか。
以上のとおり、
障害者権利条約を踏まえ、障害のある子供とない子供が同じ場で共に育ち学ぶことの大切さについてどう考え、
インクルーシブ教育の推進に向けた取組を今後どのように進めていくのでしょうか。全ての子供に
地域の
学校への就学通知を出し、その上で、特別
支援学校を希望する障害のある子には特別
支援学校への就学通知を改めて出す就学手続を取る自治体もあります。こうした方法を国全体として取ることはできませんでしょうか。
以上二点について、
大臣の御
見解をお聞かせ願います。