○
参考人(
稲場雅紀君) ありがとうございます。どうも、貴重な機会を与えていただきましてありがとうございます。(
資料映写)
私の方は、今、こちらのプレゼンの方も使わせていただきつつ、お手元の方に、
SDGs・ソサエティー五・〇時代の
ODAはいかにあるべきか、
NGOからの提言というこちらの紙がございますので、こちらとあの画面の方を御覧いただきながら聞いていただければというふうに思います。
S
DGs市民社会ネットワークに関しまして簡単に御説明をいたしますと、
日本の国際協力の
NGO及び国内のNPO、さらに
企業や協同組合等、合計百五団体が参加をしておりますネットワークということになっておりまして、
SDGsの基本的に啓発、推進、あと
政府に対する政策提言、さらに
国連等の場における
日本の市民
社会の存在の確保というようなところを取り組ませていただいておるところでございます。
まず、簡単にこの
SDGsについて御説明をさせていただきたいと思います。
なぜ
SDGsができたのかということなんですが、これ、残念ながら希望に満ちた話ではないということ。大体、
SDGsというのは、これからの将来どうしていこうかということで、希望に満ちた話ということで語られることが多いわけですけれども、実際にはそういうわけではないというところをまず説明していきたいと思います。
SDGsの
日本語の正式名称というのは、持続可能な
開発目標ということになっております。持続可能というのは、続く、続けられるということなんです。続くことをわざわざ国際
目標にしなければならないというような過酷な状況に現代
世界はあるのだということを、これは逆説的に証明しているということが言えるのではないかと。私たちとしては、例えば今日と同じようなあした、そして今年と同じような来年というようなものが続いていくというのがこれまでの常識だったんじゃないかなというふうに思うんですけれども、わざわざ国際
目標で続くことを
目標にしなきゃいけない、このような状況にあるということなんですね。そういう意味において、希望に満ちた話ではないということを申し上げているわけでございます。
その
理由としましては、
気候変動に象徴されるような
地球の限界。次に、
格差。こちらは、今、写真はちょっと分かりにくいかもしれませんが、左側は豪邸が並んでいて全部プールが付いております。ところが、道路を隔てて、一本の道路を隔てて右側はトタン屋根の家が細かく散らばっている、このような
格差と。これは南
アフリカ共和国の写真なんですけれども、こういった風景が実は
途上国においても
先進国においても普通になってきているということですね、こういった
格差と。なおかつ、この
格差というものが、機会の平等の上で
格差が生じているのであればまだしも、様々な不公正によってこういった
格差が生じている。こういうようなことにおいて、私たちの
世界はこのままいくと続かないと。だから、持続可能な
開発目標というものを作っていかなければならないということになっておるわけでございます。
特に続かない
理由といたしましては、私たち
人類社会は
地球が再生可能な資源量の一・七倍を使って今の
人類社会をやっておるわけでございます。これ、左側のグラフは、WWFが作った、
地球一個分の再生能力はるかに超えた形で今の
人類社会が
消費をしていると、そういったことでこの
社会をやっているということが分かるかと思います。
地球一・七個分使ってやっていたらそのうちなくなると。なくなったらこれは大変なことになるということなんですが、じゃ、いつ大変なことになるのかというのが右側のグラフになるわけですけれども、これを見ますと、これ一九七〇年にもうこういうグラフできているわけなんですね。このグラフを見ますと、実際に大変になるのは二〇三〇年から四〇年の間であるというふうに言われているわけでございます。
実際、一九七〇年にこれができて、そして様々な
努力を積み重ねて、実際どういうふうな形でということを様々な
努力を積み重ねて、この破局というものを回避するためにいろいろな、例えば会議を延々とやったりとかしておったわけですけれども、残念ながら、じゃ、七〇年から二〇〇〇年までの状況を見てみると、実はこのグラフと余り変わらない状況になっているということなんですね。
これ見ていただきますと、やはり
人類社会というのは、このままやっていくと本当に大変なことになるということかなというふうに思っております。だからこそ、持続可能な
開発目標というものをやっていかなきゃいけないということかと思います。
さらに、次のところをめくっていただければと思いますが、この持続可能な
開発目標の難しいポイントというのは、
世界の土俵が大きく変わり始めていると。
世界の土俵が大きく変わり始めているところにおいて、更に
SDGsをやらなければならないということなんですね。
すなわち、科学技術革命、そして例えば経団連が推進をしておりますところのソサエティー五・〇と。つまり、科学技術革命によって全く新しい
社会をつくっていくということが言われているわけですね。全く新しい
社会をつくるわけですから、そういう意味でいうと、このデジタル経済の発展の中で
社会の
在り方の基層自体が変わっていく、労働の
在り方、
生産、
消費、サービスの
在り方、お金の
在り方、果ては民主主義の
在り方に関わるまで大きく変わっていくということですね。
また、新興国の経済成長と
世界の地政学的変動ということがございます。これは、これまでの国際協力のアジェンダを大きく変貌させるものでございます。
こういうような二つの非常に大きな
世界の土俵の変化というものがございます。こういう中でも
SDGsを
達成し、そして続く
社会にしていかなきゃいけないという非常に難しい局面に私たちはあるということが言えるかと思います。
さらに、暗い話ばかりで申し訳ないんですが、更に申し上げますと、今のデジタル
経済発展による現代の最大の矛盾というものはここにあるのではないかというふうに私は思います。すなわち、収益構造はグローバルに展開をされている。こちらの絵の方にも付けましたけれども、GAFAと呼ばれる巨大なデジタルのプラットフォームがどおんとあるわけですね。ここがグローバルな形で国境に関係なく収益を上げていくということです。ところが、再分配の方はどうかというと、再分配の方は全部国民国家に丸投げになっているわけですね。収益がどんどんグローバルに蓄積されて、もうかったお金がその国に還元されないという状況の中で、再分配に関しては国民国家に全部集約されているわけですから、税制や
社会保障といったものはどんどん痩せ細っていくということがこれからあり得るわけですね。
ここのところをどういうふうにするのか。まさにこの問題というのは、現代の主要な
生産諸力の拡大と既存の
生産・所有関係の矛盾ということだと思います。巨大な
格差が形成され、これを放置しておくと
地球規模の危機につながるということでございます。
実際に、例えばこのファーウェイの問題という、今あるかと思いますけれども、まさに
中国と
アメリカがいわゆる科学技術イノベーションの文脈の中で経済的な掃討戦を演じているわけですね。これこそが実はソサエティー五・〇のいわゆる幕開けなわけです。
そういった意味で考えたときに、私たちは非常に大きなこの変化というようなものを感じざるを得ない。こういう中でどのように続く
世界、そして続く
日本をつくっていくのかというのがこの
SDGsの大きな私たちが直面している
課題であるというふうに思っておるわけでございます。
SDGsとは何かということなんですが、二〇一五年の九月に
国連サミットで採択されたものなんですが、これ、二言で申し上げることができます。一言では難しいんです、二言で申し上げることができる。
一つは
世界から
貧困をなくすということです。二つ目に続かない
世界を続く
世界に変えるということです。
更に二つ付け足すと何かと申しますと、
日本を含む
先進国も本気で取り組む必要があるということです。これ、先ほど、
世界は、今の
人類社会は
地球の再
生産能力の一・七倍でやっているというふうに申し上げましたが、これ一・七倍でやっているのは誰かと。例えばミャンマーの零細な漁民が一・七倍使っているか、別にそういうわけではありません。サハラ砂漠に生きる遊牧民が一・七倍使っているのか、そうじゃないですね。誰が使っているかといえば、
先進国の
人々が使っておるわけでございます。ですから、そういった意味合いで考えたときに、
日本を含む
先進国も本気で取り組む必要があるということです。
四つ目、ここが大事なんですが、誰も取り残さず、いつも
最後に来る人を最初にという形で、そういう気合でやっていかないといけないというのが四つ目でございます。この四つ目が非常に大事です。
実は、
ミレニアム開発目標、これは
世界の
貧困を半減するという
目標でした。実際に半減されたことになっているわけです。これ、
小沼先生がおっしゃったとおりかと思います。
しかし、この
MDGsはどのように半減をするのかということについてはきちんと決めなかったんですね。結果として何が起こったか。どんなふうに半減してもいいからとにかく半減してくださいという話になれば、当然のことながら、皆さん、やりやすいところ、やりたいところから始めるわけですね。やりやすいところ、やりたいところからどんどん始めて、半減しました。残りはどういうところかというと、やりにくいところ、そしてやりたくないこと、そういったことばかりがあとの半分残るということになってしまうわけですね。
これを繰り返すと、結局のところ、同じことがずっと蓄積されて、最終的に一番厳しいところだけが残るということになります。そのような形ではいつまでたっても
世界から
貧困をなくすことはできないんですね。ですので、誰も取り残さない、いつも
最後に来る人を最初にという話になったわけですね。そういう気合でやるんだということになったのが
SDGsでございます。
ですので、この誰も取り残さないというのは、単に口で言っているわけではなくて、そうしないと本当に
世界から
貧困がなくならないからこういう形でやるのだという、そういう
MDGsの反省からきたそういったやり方ということになるわけでございます。
こういったところを踏まえまして、
我が国の
ODAがどのようにあるべきかということを申し上げますと、時代の変化に応じて
ODAも変わらなければならないということなんですが、これからの
ODAの最大の優先順位は、
一つは
SDGsの
達成、すなわち
貧困のない、そして続く
世界の実現というのが最大の優先順位、一丁目一番地かと思います。
一丁目二番地は何かと申しますと、先ほど申し上げた科学技術イノベーションによって生じる法的、倫理的、
社会的
課題の克服と。これ、私たちだけが克服すればいいのではなくて、
途上国もこの問題に直面しているわけですね。
途上国の方が急激ないわゆるデジタルイノベーションに直面して、様々な形で
社会を整えていかなければならない、そういったニーズがあるわけです。ですので、そういった意味で、
ODAに関しましてもこの問題に注目する必要があるというのが私の考えでございます。
そういった意味合いで、
ODAの最大の優先順位は、これからはこの二つをしっかりやっていくことが大事かなというふうに思います。
そこで、私の考えるアイデアといたしましては、
SDGs時代の
ODAの変革に関しては四つの軸を立てて再編すべきだというふうに考えております。
一つは誰一人取り残さない
世界をつくる
ODA、二つ目が
紛争、災害から
人々の安全を守る
ODA、
三つ目が
貧困、
格差をなくす、能力の高い
政府機関を育てる
ODA、四つ目が持続可能な強い経済をつくる
ODAと。この四つの軸を立てて今の
ODAを再編する必要があるというふうに私は考えているところでございます。
少し詳しく見ていただきますと、誰一人取り残さない
世界をつくる
ODAというところなんですけれども、これ、まさに
我が国が
人間の安全保障ということで言ってきたこと、それをすなわちしっかりやるということが大事かなというふうに思っております。そして、この領域に関しましては、大胆に
NGOに開放することが大事かなというふうに思っているところです。
現状では
NGO連携無償というものがありますけれども、これは大体六十億円ぐらいなんですね。
日本の
ODAの年間
予算というのは、大体
外務省予算で五千億円というのが通常でございます。その中でそれほど大きな
割合ではないということになるわけですね。ですので、この
NGO連携無償を再編し、そして二百億円規模の誰も取り残さない官民基金というものを設置して、そして
日本と
途上国の
NGOがしっかり事業を実施していくと。そういう中で、誰一人取り残さない
世界をつくる
ODAというものを、
NGOだけではないです、もちろん
JICAも含めて様々なセクターがしっかりタッグを組んで、誰一人取り残さない
世界をつくる
ODAを
我が国からということをお願いしたいというふうに思っております。
二つ目が、
紛争、災害から
人々の安全を守る
ODAということなんですが、これは非常に大事な
課題でございます。
現状、戦後最大の難民というものが存在している。そしてさらに、
気候変動の問題でいえば、これ今後ますます災害が
多発すると、まさに災害がニューノーマルになるというふうに言われておるところでございます。そういった意味合いにおいて、
紛争、災害から
人々の安全を守るというのは
ODAの最大の眼目になるかと思います。
三つ目が……