○
政府参考人(松浦博司君)
お答え申し上げます。
初めに、
燃料油汚染被害の方でございますけれども、この
条約上、どのような
汚染損害であれば
賠償請求が可能かということについては
条約の上で明確に定義されておりまして、極めて範囲が限定されておるところでございます。それから、同じく、
船舶所有者や
保険者がどのような場合に
責任を免れるかという
免責事由、こちらの方も
条約上明確に規定されているところでございまして、
締約国は、
条約に規定する
免責事由以外を
免責の理由として認めてはいけない、また逆に、これらの事由に該当する場合には必ず
免責しなければいけないということが
条約上の
義務として定められているところでございます。
これらの
条約の規定に従いまして、各
締約国としては、それに則した
国内法を
整備するということになってございます。この
整備が進んでいるということが考えられますために、統一的な
国際ルールが適用される結果、問題のある判決が下されるリスクというのは低いというふうに考えてございます。
さらに、それに加えてでございますが、
燃料油汚染被害に関わる
賠償の債権につきましては、
船舶所有者等の
責任を
一定額まで制限するという制度が国際的に認められているところでございます。この制限を超えるような
賠償が
請求されるということは非常に考えにくいところでございまして、したがいまして、法外な
賠償額が
請求されるというリスクは低いというふうに考えています。
万一、政治的事情とか制度の違いに基づいて
条約とそごのある判断が下されるといった場合があるとすれば、その場合には、その判断を下す、判決を下した国の側が
条約違反を行っているということでございまして、そのような訴訟はこの
条約に基づく
損害賠償請求訴訟には該当しないという整理ができると思いますので、日本は、したがって、そのような判決を承認したり執行したりする
義務を負うものではないというふうに考えてございます。
次に、
難破物の
除去でございますけれども、これは
委員御
指摘のとおりでございまして、ナイロビ
条約上、
締約国の判決を承認するという
義務が課されているものではございません。したがいまして、通常の外国判決と同様に、各国の
国内法に従って個々の
事例ごとに判断するということで、必ず承認されることが確保されるわけではございません。
しかし、このナイロビ
条約も油
汚染の
条約と同様に、
保険者に対して
被害者が直接
請求するという制度がございまして、この規定は
条約上の
義務として置かれているところです。実際に、
国際航海に従事する
船舶の多くは、
条約に則した
対応を
保険約款等にあらかじめ規定している、言わばひな形でございますが、そういうひな形を採用している国際
保険団体に加盟している
保険会社と契約しているというのが趨勢、実態でございまして、そのような現実を踏まえますと、
保険者に直接
請求する道が確保されてございますので、この結果、
費用の
支払が確保されないようなリスクは現実には低いというふうに考えてございます。