○川合孝典君 私は、ただいま可決されました
児童虐待防止対策の
強化を図るための
児童福祉法等の一部を
改正する
法律案に対し、自由民主党・
国民の声、
立憲民主党・
民友会・希望の会、
国民民主党・新緑風会、公明党、日本維新の会・希望の党及び無所属クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
児童虐待防止対策の
強化を図るための
児童福祉法等の一部を
改正する
法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一、深刻な
児童虐待事件が後を絶たない事態に鑑み、
児童虐待の根絶に向けて、本法及び
関係閣僚
会議等において定めた
対応策を着実に実施するとともに、子どもの命を守ることを何よりも第一に据え、国・地方自治体・
関係機関が一体となって
児童虐待防止対策の更なる
強化を図るため、必要な取組を率先して進めること。
二、体罰によらない子育てを推進するに当たり、子どもの権利条約を参考に具体例を示したガイドライン等を早期に作成するとともに、体罰が子どもに与える影響について広く
国民が
理解できるよう啓発に努めること。その際、子どもに体罰をしてしまった保護者を追い込むのではなく、その行為の非を自ら認知し、再発の防止が確保されるよう、可能な限り早期に適切な子育ての方法や相談窓口について周知し、
支援すること。また、本法施行後二年を目途として検討される民法の懲戒権の在り方については、子どもの権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、規定の削除を含め、早急に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
三、虐待リスクの高い子どもを早期に発見し、
支援につなげられるよう、乳幼児健診及び就学時健診未受診者、未就園、不就学等の子どもに関する安全
確認を実施すること。あわせて、乳幼児健診、就学時健診、学校健診及び保育園健診の充実を検討するとともに、乳幼児・子どもの健診等の機会を活用して保護者、とりわけ母親に対する相談・
支援の
拡充について検討し、必要な施策を講ずること。さらに、虐待の未然防止を図るため、
支援を必要とする保護者、特に妊産婦への産前・産後の
支援を
強化すること。
四、医師、歯科医師その他の
医療従事者から
児童虐待に関する通告又は
児童相談所の
対応に対して意見等があった場合には、その医学的知見に基づく意見等が十分に勘案されるようにすること。また、地域の医師会等と協力して研修等を実施するなど、医師等の
児童虐待
対応の向上に努めること。さらに、
児童虐待の発見のため必要な知識・技術を十分に有する医師、歯科医師、保健師、助産師及び看護師の確保、養成に努めること。
五、子どもの適切な保護の実施及び一時保護等の解除の判定に当たっては、
医療とのより密接な連携の
強化が必要であることから、協同面接と医学的判断とを連携させたアセスメントの取組を参考とするなど、具体的な方策を検討し、必要な措置を講ずること。
六、子ども自身が教職員等に適切に相談することができるよう、学校教育の場において
児童虐待に対する正しい知識を
提供できる取組を推進すること。また、学校、教育
委員会の教職員等に対し、子どもの権利条約の周知も含めて必要な研修を実施するなど、教育
現場における
児童虐待
対応の向上に努めること。
七、
児童虐待防止対策体制総合
強化プランに基づく
児童福祉司等の増員を確実に進めるとともに、その資質の向上が図られるよう、中長期的な研修の実施を含め、人材確保のため必要な措置を講ずること。また、
児童福祉司一人当たりの相談
対応件数が
平均で四十件を超えないよう、更なる増員に向けた人材・財源確保に努めるとともに、非常勤職員の常勤化を含め、
児童虐待に係る相談に応ずるための職員の処遇改善に努めること。
八、
児童福祉司を始め、
児童福祉を担う人材の専門性の向上に当たっては、地方自治体の職員が十分な経験を積み上げることが必要不可欠であることから、当該職員の人事
異動等に際し、地方自治体に対し配慮を求めるなど、必要な措置を講ずること。また、
児童相談所における介入機能と
支援機能の分化に当たっては、一体的な
対応が必要なケースもあることを踏まえつつ、各
児童相談所の実情等に応じた柔軟な取組が行えるようにすること。
九、保護者を孤立させず、妊娠期からの切れ目のない
支援を実施するため、市町村における相談
支援体制の
強化に向け、全市町村における子ども
家庭総合
支援拠点及び子育て世代包括
支援センターの設置・運営や人材育成のため必要な
支援の
拡充を図るとともに、そのための財源の確保に努めること。
十、一時保護を必要とする子どもが一時保護中においても従前の学校に通学できるようにするなど、子どもの
生活環境に配慮した一時保護所の環境改善に努めるとともに、一時保護の受皿の整備を早急に進めること。また、一時保護所が安心・安全な場となるよう、個別的な
対応ができる職員体制の
強化のため必要な
支援の
拡充を図るため、職員の配置基準の改善と地方交付税の単位費用算定基礎や措置費の充実について改善に向けた検討を進めること。
十一、要保護
児童対策地域協議会の実効性を向上させ、
関係機関が有機的に連携しながら活動できるよう、調整
担当者の研修
内容の充実や参画することが望ましい構成機関、効果的な運営方法に関するガイドラインの作成などにより必要な
支援を講ずること。
十二、中核市及び特別区における
児童相談所の設置を目指し、設置に係る必要かつ十分な
支援を講ずるとともに、中核市及び特別区の
理解が得られるよう努めること。また、不交付団体に対する
支援について検討すること。
十三、学校の教職員、
児童福祉施設の職員等子どもの福祉に職務上
関係のある者の守秘義務については、職務に関して知り得た秘密の漏えいが深刻な事態を招きかねないことに鑑み、十分に徹底するとともに、
関係機関間において必要な情報
提供等を妨げることのないようにすること。
十四、
児童虐待の
対応に当たり、
家庭が転居する際には、リスクが増加するため十分な注意を払いつつ、地方自治体間及び
児童相談所間の引継ぎを徹底するとともに、
児童相談所及び市区町村相互間の情報共有を効率的かつ効果的に行うことができるよう、全国統一
ルールの作成を検討するほか、全都道府県において情報共有システムの構築を推進すること。あわせて、同一都道府県内だけでなく全国の都道府県間の情報共有システムの構築についても速やかに検討すること。
十五、
児童相談所における援助方針
会議の
会議録には、事後に
検証ができるよう、組織としての判断とその判断の理由を明確に記録するよう
支援を行うこと。
十六、
警察と
児童相談所の合同研修の実施や、
警察における虐待
対応の専門部署の設置等を通じ、
警察及び
児童相談所双方の
対応力の
強化を図ること。また、
児童相談所や
警察等の
関係機関間で要保護
児童の情報を共有できる共通
データベースシステムの整備について、必要な検討を進めること。
十七、虐待
対応とDV
対応の連携の実効性を確保するため、婦人相談員の配置促進や専門性確保、待遇改善など、必要となる体制整備等の措置を講ずること。そのために、また婦人相談所と一時保護所の環境改善に向け、職員の配置基準の改善と地方交付税の単位費用算定基礎や措置費の充実について改善に向けた検討を進めること。
十八、
児童虐待の再発を防止するため、加害者、特に虐待を行ってしまった保護者への
支援プログラムについて、既に
支援を実施している民間団体等との協力・連携を進め、必要な専門人材の養成などの
支援体制を充実させ、保護者の抱える複合的な問題に寄り添った継続的な
支援を実施することを念頭に、個々の事情や
ニーズに応じた
支援プログラムの開発及び実施を推進すること。
十九、一時保護等から
家庭復帰した後の虐待の再発により、子どもが被害を受けることも少なくないことから、
家庭復帰後の一定期間においては
児童相談所による
家庭訪問の実施等を通じて子どもから意見を聴取するなど、養育
状況等を
把握するとともに、切れ目なく保護者
支援が実施されるよう、必要な措置を講ずること。
二十、
児童虐待が再発した
状況等に関する調査、分析等を行い、必要な
対策を講ずること。
二十一、新しい社会的養育ビジョンを踏まえ、里親の開拓、研修及び養成のほか、フォスタリング機関の整備等の
支援体制を
拡充すること。
二十二、心理的困難や苦しみを抱えているなど、里親委託が難しい子どももいることから、心理的治療や相談援助を行う
児童心理治療施設の整備が図られるよう、必要な
支援を講ずること。
二十三、
児童養護施設等の施設内における暴力、性暴力について、実態調査の結果等を踏まえ、子ども間に限らず、問題の発生を防止するための効果的な
対策について早急に検討を行い、必要な措置を講ずること。また、被害に遭った子どもが、継続的に心身のケアを受けることができるために必要な措置を早急に講ずること。
二十四、子どもの死因に関する情報の収集、管理、活用等に関し、府省間での情報共有を含む体制整備の在り方について速やかに検討し、虐待の再発防止に資するよう必要な措置を講ずること。
二十五、子どもが意見を述べることを
支援するための
制度を構築し、子どもの最善の利益を確保するため、いわゆるアドボケイト
制度の導入に向けた検討を早急に行うこと。
二十六、若い世代を始め、子育てに悩みを抱える者等が相談・
支援につながりやすい仕組みづくりを進めるため、
児童相談所全国共通ダイヤル一八九(いちはやく)について早急に無料化を実現するとともに、
運用改善による通告者及び相談者等の利便性の向上に努めること。加えて、SNS等を活用した相談窓口の開設を進めるとともに、専門性を有する応対者の育成・確保に努めること。
二十七、日本で暮らした経験が限られるために、日本語や日本の社会通念等について意思疎通が難しい子ども・家族が一定程度存在していることから、そのような子ども・家族に
対応する
児童相談所等における
対応の実態を調査し、適切な
支援を行うこと。
二十八、過去の虐待により心の傷を負ったことで、社会
生活を送る上での困難を抱えている成人に対する
支援を充実させるよう、必要な検討を進めること。
二十九、
児童虐待相談
対応件数の急増に伴って
児童相談所の業務量も大きく増加している中で、
児童相談所の確実な業務遂行体制が確保されなくなる懸念が生じていることから、保健所、子ども
家庭総合
支援拠点、子育て世代包括
支援センター等への将来の業務移管を含め、
児童相談所の業務
内容を必要に応じて
検証すること。
三十、
児童相談所の設置目的について、子どもの命を第一に掲げるという理念を宣言する
内容に
改正することの検討を行うこと。また、職員一人一人に
児童相談所の設置目的とその理念が浸透するよう、必要な研修等を行うこと。
三十一、オレンジリボン運動を
国民運動として強力に推進するため、企業・団体・個人のサポーター会員の募集やポスターコンクールとその配布の活性化など、
政府として積極的に関わること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ
委員各位の御賛同をお願い申し上げます。