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参考人(
山本昌弘君)
明治大学の
山本でございます。よろしくお願いいたします。
私の方からは、
中小企業強靱化法案に対する
意見、特に
事業承継についてということで、
事業承継の分野を中心にお話をさせていただければと存じます。
私
自身は、これまで、
事業引継ぎガイド
ライン、
事業承継ガイド
ラインという二本のガイド
ラインをまとめるに当たって座長を務めさせていただきました。
事業引継ぎガイド
ラインというのはMアンドAに関するガイド
ラインでして、
事業承継ガイド
ラインはMアンドAを含んだ全体的な
事業承継に関するガイド
ラインでございます。さらに、現在は、
事業引継ぎ
支援全国本部に置かれておりますアドバイザリーボードの座長も務めさせていただいております。
事業承継でございますが、まず、一枚めくっていただきますと、
事業承継に関する
施策、親族内承継、
従業員承継ということで幾つか挙げさせていただいております。
まず、
事業承継税制及び遺留分の民法特例等における法人
企業と個人
事業主とのシームレスな
対応ということでございます。
事業承継税制につきましては、この間、少しずつ少しずつ改正がされ、今回、個人でも使えるようになったということでございます。私
自身は、税はドラスチックな改革には余り向いていないと考えております。毎年少しずつ微調整をしていくということの方がいいんじゃないかと思っておりますので、この間の流れの中で、
事業承継税制、かなり個人
事業主も含めて使いやすくなったのではないかというふうに思っております。これは非常に
感謝しております。
それから、遺留分の民法特例においても全く同じで、要は、外国税額控除
制度という
制度がございます。これ海外の所得を控除するものなのですが、法人
企業は法人税、個人の場合は所得税法ということになっておりますが、シームレスな形でどのような法人形態であれ適用が受けられると。同じことが
事業承継税制や遺留分の民法特例等においても実現されたのではないかというふうに理解をしております。
二つ目でございますが、
事業承継がなされた後の承継した
経営者が安定して議決権を行使するために、私は公的資本を注入すべきではないかというふうに考えております。
いわゆる
事業承継ファンドというものがございますし、
中小企業投資育成といったものもございます。これは、ファンドといいましても、短期で何か
リスク、リターンで売上げ上げる、そういう話ではありませんで、
中小企業が長く安定的に成長していくためには、ある種、国が資本を入れて、後継する
経営者が使いやすいような形で、あるいは議決権行使しやすい形での資本注入というものが非常に重要だろうというふうに思っています。
似たようなものに、実は
中小企業基盤整備機構が高度化
事業というものをやっておいでです。これは、私は実は元祖MアンドA資金だと思っておるんですが、今から何十年も前によく使われたものでございまして、複数の
会社がこれを使って
一つの
会社になるとか
組合をつくるとかというような形で非常によく使われた資金でございます。
実は、
事業承継に関しましてはかなりの
制度があると思っています。ただ、使いやすいかどうか、あるいは十分な財政、予算の手当てがされているかというところに問題が少しあるのかなと思うことはございますが、うまく微調整をしていけば使える政策というのはかなりたくさん蓄積されているというふうに考えております。
事業承継補助金でございます。これは、
設備あるいはMアンドAで非常に役に立つものだというふうに思っておりますが、これも国家財政の関係だと思うのですが、単年度主義ということになっております。
事業承継、特にこういったものというのはより長期で資本を入れて
事業をやっていくというものだと思いますので、もう少し柔軟に使えるといいのかなというのが個人の感想でございます。
三つ目は、
事業承継ネットワーク、こちらも事情は同じかと思うのですが、実は全国事務局が毎年替わっています。もう少し中長期的に同じ事務局の下でより
継続的に
事業承継ネットワークの展開ができると、もっと有効になるのではないかというふうに思っています。
その際に、
商工会議所あるいは
商工会の方々が非常にどこの
都道府県でも頑張っておられるのは、私も調査等に寄せていただいて目にするところでございます。これに金融機関、地方銀行、信用金庫、信用
組合等も積極的に参加いただいて、
地域で一体となった
事業承継ネットワークの展開ができるといいのかなというのが、まず一枚目の親族内承継の話でございます。
次は、MアンドAでございます。
MアンドAにつきましては、
中小企業庁あるいは
中小企業基盤整備機構が
事業引継ぎ
支援センターというものを展開しておられます。各
都道府県に
一つ、東京は多摩
地区にもありますので二つなのですが。
この
事業引継ぎ
支援センターでございますが、学者の私から見ると、実は原理原則というのは上場
企業における株式の取引あるいはMアンドAと全く同じものだというふうに理論的には見えます。つまり、どこかの取引所で株が売買されていて、その株の過半数を取ればMアンドAが成立する。これと同じことを実は
中小企業について、もちろん規模は違いますが、やろうとしているわけです。つまり、売りたい
会社が自社の
情報をセンターに載せ、買いたい
会社はその株式の過半数を取得すれば買える。これは全く、いわゆる大
企業の資本市場と構造は同じです。
ですが、
中小企業であるがゆえに様々な制約がございます。コストの面の問題、あるいは会計規制やインサイダー規制のように、資本市場では普通になされているような規制も必ずしもまだ十分ではないというふうに見て思っております。とりわけ、
事業引継ぎ
支援センターの中核になるのがいわゆるNNDBと言われているものでございます、ノンネームデータベース。
これは、
事業を売りたいという
事業者さんが
事業引継ぎ
支援センターに登録をし、どこの
会社か具体化はされないけれ
ども、こういう規模のこういう
事業の
会社が売りに出ているということが全国の
事業引継ぎ
支援センターで確認することができるということなのですが、実はこれにつきましても、まだ細かい部分の
整備が追い付いていないように私は見ていて思います。もちろん現場の方々は非常に頑張っておいでで、
中小企業庁の方あるいは
中小機構の方も日々頑張っておられるのですが、何せ、それまで何の例もなかったところにいきなり何百社、何千社という案件が出てくるということになると、なかなか追い付いていない感じがいたします。
NNDBというのはデータベースなのですが、下手に実態が分かってしまうと風評
被害に遭うかもしれません。あるいは逆に、全く分からなければそもそも買手が付かないという微妙な問題がございます。したがいまして、これも何らかの形でその資格を制定するなり、何かそういったきちっとしたルール作り、
整備が必要だろうと思っています。
特に、
日本の
中小企業あるいは
中小の
事業者というのは、知的財産権、サプライチェーンですとか特許ですとかといったようなもので、僅か数名の
企業でも物すごくすばらしい技術をお持ちで、でも
経営者がいないからなくなってしまう、こういう危機に直面している
企業はたくさんあります。こういったものを知的財産権を保護しながらいかにきちっと承継をするか、あるいはできるような仕組みをつくるかということが大事なんだろうと思います。
更に言いますと、これは資本市場ですから、制限しないと誰でも買えてしまいます。じゃ、大
企業で、あるいは外資系
企業で自由に買っていいのかというような問題についてもきちっとルールを作るべきだろうと思います。
その次は、実は
事業引継ぎ
支援センターを統括する
中小企業基盤整備機構についてでございます。
今回の法律改正でも機構の仕事が増えたかと思いますが、実は機構につきましては人的にも予算的にも上限が決まっていて、仕事が増えればそれだけ現場の皆さんの仕事が物すごく大変になるという、今こういう
状況でございます。
事業承継は確かに大事なんです。
事業承継が大事なので
事業承継を進めれば進めるほど、限られた予算と
人員の中で現場は物すごく大変な思いをされているということでございます。
これは私の個人的
意見なのですが、国際会計
基準との兼ね合いで、
企業会計審議会の会計
基準設定部門が公益財団法人財務会計
基準機構ということで民営化されています。こういった形で何か独立して、より長期の予算、長期の
人員、長期の
設備でやれるような仕組みをMアンドAについてやるべきではないかというふうに思っています。
その際に、実は、MアンドAといいましても、あるレベルから上のものは民間の
会社がおやりです。したがいまして、国の政策としてやるべきMアンドAというのは、本当にビジネスとしてMアンドAの仲介が成り立たない、でも大事だ、地方の雇用として大事だ、あるいはサプライチェーンとして大事だ、こういったところをいかにうまく引き継がせるかということだろうと思います。
それからもう一点、
事業引継ぎにおきまして、私、学者的に言わせていただきますと、負ののれんが発生することがございます。これは何かといいますと、通常は純資産価格よりも高く買えますので、余分に
支払った分がのれんになるのですが、例えば、
事業を引き継いでくれたら一円で譲ってもいいという
事業者がいらしたとしても、一円で引き継いだ途端に差額が利益として課税されかねないという問題がございます。ですので、
事業承継で安く引き継いだとしても、そこには課税されないような、是非そういう仕組みをつくっていただければというのが三つ目でございます。
めくらせていただきまして、最後は第三者承継の問題でございます。
まず、各
都道府県の
事業引継ぎ
支援センターでは、
後継者人材バンク
事業というのをおやりです。これは、実は個人
事業主あるいは
小規模事業者に現在限定されています。私の考えでは、MアンドAで
事業を引き継ぐのか、あるいは
後継者になる方を呼んできてその方に引き継いでもらうのかはそれほど違いはないだろうということで、もう少し対象を拡大してもいいのではないかというのが私の考えでございます。
それから、第三者承継の二点目の私の考えは、第三者承継で
事業承継をするというのは、実はベンチャーの
会社を起こすということと非常によく似ています。現在、
中小企業関係ではベンチャー
支援の
施策が様々に
整備されています。第三者承継で外から来た人がそれまでの
事業を引き継いでやる場合にも、一定のルールを設けてベンチャー
支援と同じような
支援制度が使えるようにするというふうになれば、より地方で
後継者がいないようなところに、例えばUターンだとかIターンだというような形で地方に行って、専門家の方が
事業を引き継ぐというようなことも、それも促進されるのではないかというふうに思っています。
最後でございますが、実は、
事業承継を見ておりまして一番ネックとなるのは債務なんですね。個人が引き継ごうが、結局かなりの債務がある、場合によっては債務超過になっているというような案件がございます。先ほど震災関係でいろんなお話があったと思いますが、
事業承継と非常によく似ているなと思って私聞いていたのですが、要は、何かそういう形で問題が起こると結局債務だけが膨らんでしまうということがございます。
実は、
中小企業政策では
中小企業再生
支援協議会というものが各
都道府県に置かれているのですが、ここは物すごく再生
支援に限定が掛かっています。何らかの形でその債務整理を、
経営者保証ガイド
ラインを活用するとかいろんな方法はあると思うのですが、債務整理をした上で第三者であってもうまく引き継げるような仕組みを是非つくっていただければというふうに思います。
参考例として、東京都は、実は、金融機関に東京都の資金を出した上で、資金援助とセットで
事業承継をやるというような仕組みもおつくりですので、何かそういった形での仕組みはあるんじゃないかと。
以上、
事業承継に限定させていただきましたが、私の方からは以上でございます。