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鬼木分科員 宮家というものがそもそも法的な制度として位置づけられていないということがわかりました。
附帯決議では、安定的な
皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、本法施行後速やかに、
皇族方の御事情を踏まえ、全体として整合性がとれるよう検討を行い、その結果を速やかに
国会に報告することとされています。
辞書、広辞苑によれば、宮家とは、宮家、
皇族で宮号を賜った家、終戦前は十四家があったが、現在は三笠、常陸、秋篠、桂、高円の五宮家とあります。
皇室典範では、女性
皇族は結婚と同時に皇籍を離脱するので、宮家の当主として残ること自体があり得ません。したがって、女性宮家という言葉は自家撞着であり、論理的に成り立ちません。
宮家は歴史上常に男性によって継承されました。そして、
天皇直系の家に跡継ぎの男子がいなくなった場合、男系をさかのぼり、一番直系に近い血筋の
皇族によって皇位が継承されました。その血筋を男系でさかのぼることのできる血族が宮家だったわけです。宮家とは、
天皇家の男系の血筋を絶えさせないための知恵、仕組みだったのです。
女性宮家を主張する方は、女性
皇族が結婚しても
皇族身分を維持して宮家を引き継ぐということを想定しているかもしれませんが、そうなると、その女性が産んだ子供は女系であります。父方が
天皇家の血を引いていないということになります。女系だと、お父さんの血をさかのぼっていったときに、神武
天皇まで行き着かないのです。もし仮に女系の方が
天皇になったとすれば、父方の血筋をたどっていけばルーツが明らかになっていた皇統が、父方に行ったり母方に行ったりしないとルーツがわからないようになってしまうことになります。
また、女系を容認するヨーロッパの国では、家系が女系に移ると王朝名が変わります。王朝の交代という、日本がかつて経験のしたことのない激変が起こることになります。そういうことが起こらないように男系継承を明確にすべく、女性
皇族は結婚と同時に皇籍を離脱なさるのです。したがって、日本の歴史上、女系
天皇というものは一人も存在しておりません。
また、海外の歴史を見れば、男系継承と女系継承を両方認めたがために、王位継承を争う戦争が起こっております。英仏百年戦争、イギリスのバラ戦争などです。こうした争いを防ぐためにも、
皇位継承のルールをきちんとつくり、守り続けてきたのが日本の先人の知恵であり、偉大さと言えるのではないでしょうか。
明治における井上毅の例を挙げたいと思います。
明治維新後、我が国は近代国家としての制度を整えていきました。それまで不文の伝統に基づいてきた
皇位継承の方法についても明文化する必要が出てまいりました。その際考慮されたのは、当時我が国が模範として学ぶべき対象と考えていた西欧諸国が、女系による王位継承を認めていたことでした。
明治十九年ごろ、宮内省は、西欧の王位継承法を取り入れようとした女系の
皇位継承を認める案を立案しましたが、井上毅は、一官僚として謹具意見と題する反論の意見書を伊藤博文に提出いたしました。
井上毅の反対論を現代的に表現すると、以下の三点となります。
一つ、西欧の王位継承は、土地相続法の考えから来ているため、女系による王位継承を名目に国家間の争いを招き、他国の王位を奪うことさえもある、我が国の導入はできないということであります。他国の王位を奪うことさえもあるというのは、裏を返すと、自国の王位を他国に奪われることすらあるということであります。
そして、第二点。女系制度を導入するオーストリアやイギリスは、女王に夫を迎えたとき、王朝名をその男性の家名に変える伝統があるため、異姓の子孫が王位を継ぐことになり、イギリスは二百年間に四度も王朝交代した、女系導入は皇統の断絶を招くおそれがあるというのが反対論の二です。
そして、三番目。西欧において、女王の子が王位を継いで新しい王朝名になるのは、血統さえつながれば、前王朝名を継承することにはこだわらないという伝統から来ている、我が国の
皇位継承のあり方は、既に祖先から受け継いできたものがあるので、西欧をまねてはならないというのが第三の反論であります。
その結果、井上毅は、古来より伝えられてきた不文の法を三つの原則にまとめて、
皇室典範において示しました。
一つ、皇祚を踏むは、皇胤に限る。つまり、皇位を継ぐことができるのは、神武
天皇の血筋を引く御子孫に限るということ。そして、一つ、皇祚を踏むは、男系に限る。皇位を継ぐことができるのは、男系に限るということ。そして、一つ、皇祚は一系にして分裂すべからず。
天皇の御位は、第一代神武
天皇にさかのぼることができる一つの家系で継承されなければならず、皇統は分裂してはならない。この三原則を
皇室典範に示し、日本の伝統を守ったわけでございます。
公務御負担問題と皇位の安定継承問題の解決に当たっては、これまでるる述べてきた男系継承の歴史の重さを踏まえた上で答えを出すべきだと改めて訴えさせていただきたいと思います。
また、それではどう解決するのかということにつきましては、公務の御負担問題については、結婚して皇籍離脱した女性
皇族がその一代に限り引き続き公務を御負担いただくということなら可能なのではないかと提案したいと思います。
皇族という身分は離れた上で、特別公務員などといった形で公務についていただくという案でございます。
また、皇位の安定継承問題については、
皇位継承の対象となる
皇族、
皇族となれば男系男子ということになりますが、その数をふやすことが必要かと思われます。戦後、GHQによって臣籍降下を余儀なくされた旧
皇族もおられます。先ほど述べたように、
皇位継承のルールというものは大変よく考えられてつくられたものでありますから、できるだけ
皇室典範に手を加えることなく
皇族の数をふやしていく手だてを考えていきたいと思います。また、それがさきの
皇室典範特例法の附帯決議に応える道であると確信いたしております。
しかし、附帯決議によると、まずその検討を行うのは
政府であります。
政府におかれましては、日本の
皇室が紡いできた歴史の価値を損なうことなく未来に引き継いでいくことができますように、御理解をいただきたいとお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
本日はありがとうございました。