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2019-05-22 第198回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和元年五月二十二日(水曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 武藤 容治君    理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君    理事 齋藤  健君 理事 野中  厚君    理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君    理事 近藤 和也君 理事 稲津  久君       青山 周平君    池田 道孝君       石崎  徹君    泉田 裕彦君       稲田 朋美君    今枝宗一郎君       上杉謙太郎君    大隈 和英君       加藤 寛治君    金子 俊平君       木原  稔君    木村 次郎君       小寺 裕雄君    坂本 哲志君       繁本  護君    西田 昭二君       福山  守君    藤井比早之君       藤原  崇君    船橋 利実君       古川  康君    宮路 拓馬君       八木 哲也君    山本  拓君       石川 香織君    大串 博志君       金子 恵美君    神谷  裕君       佐々木隆博君    中谷 一馬君       長谷川嘉一君    堀越 啓仁君       関 健一郎君    緑川 貴士君       濱村  進君    田村 貴昭君       森  夏枝君     …………………………………    農林水産大臣       吉川 貴盛君    農林水産大臣      小里 泰弘君    外務大臣政務官      辻  清人君    農林水産大臣政務官    濱村  進君    政府参考人    (外務省大臣官房審議官) 飯島 俊郎君    政府参考人    (厚生労働省大臣官房生活衛生食品安全審議官)  宮嵜 雅則君    政府参考人    (農林水産省消費安全局長)           新井ゆたか君    政府参考人    (農林水産省食料産業局長)            塩川 白良君    政府参考人    (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君    政府参考人    (農林水産省経営局長)  大澤  誠君    政府参考人    (農林水産省農村振興局長)            室本 隆司君    政府参考人    (農林水産省政策統括官) 天羽  隆君    政府参考人    (農林水産技術会議事務局長)           別所 智博君    政府参考人    (水産庁長官)      長谷 成人君    農林水産委員会専門員   梶原  武君     ————————————— 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   斎藤 洋明君     青山 周平君   藤原  崇君     石崎  徹君   宮路 拓馬君     船橋 利実君   佐々木隆博君     中谷 一馬君 同日  辞任         補欠選任   青山 周平君     大隈 和英君   石崎  徹君     藤原  崇君   船橋 利実君     繁本  護君   中谷 一馬君     佐々木隆博君 同日  辞任         補欠選任   大隈 和英君     八木 哲也君   繁本  護君     宮路 拓馬君 同日  辞任         補欠選任   八木 哲也君     斎藤 洋明君     ————————————— 五月二十一日  特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)(参議院送付)  農林水産関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 武藤容治

    武藤委員長 これより会議を開きます。  農林水産関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費安全局長新井ゆたか君、食料産業局長塩川白良君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、農村振興局長室本隆司君、政策統括官天羽隆君、農林水産技術会議事務局長別所智博君、水産庁長官長谷成人君、外務省大臣官房審議官飯島俊郎君及び厚生労働省大臣官房生活衛生食品安全審議官宮嵜雅則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武藤容治

    武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 武藤容治

    武藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。
  5. 稲田朋美

    稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。  質問機会を与えていただいたことに感謝申し上げます。  先日、二階幹事長とともに、私も政治家となりまして初めて中国公式訪問をいたしました。その際、農業団体の長ですとか、あと経済団体、また旅行業界、そして知事若手知事、三人の方々等々も一緒に行って、習近平主席始め中国の要人とも会談をする機会を得ることができました。その際に、幹事長から、中国輸入規制緩和についても要請がございました。また、その訪中団の中には、元農水大臣である西川公也内閣官房参与も同行されていたわけでございます。  大臣も御承知のとおり、二階幹事長の対中外交、そして党間交流、非常に長い年月を積み重ね、また、いいときも悪いときも積み重ねてきて、それが日中外交をある意味下支えをしているわけでございますが、新潟でG20農相会談も、大臣、なさったわけでありますけれども、この懸案の農産物中国輸入規制について、今後どのように進展をしていくのか、その見通しについてお伺いをいたします。
  6. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 四月の二十四日から二十九日まで、二階自民党幹事長総理特使として、今、稲田先生から御指摘をいただきましたように、訪中をされた際に、習近平国家主席会談をいたしたということを承知もいたしております。  また、この会談において、習近平国家主席から、食品輸入規制の話については、科学的根拠に基づき安全第一ということでやっている旨の発言があったということも承知をいたしておりまして、積極的に、稲田先生始め、議員外交でこのような案件をお取り上げいただいておりますことに、心から私からも敬意を表したいと存じます。  今御指摘をいただきました、放射性物質に関する日本食品等に対する輸入規制撤廃緩和でありますけれども、極めて重要な課題でございまして、あらゆる機会を捉えて相手国に働きかけることが重要であると考えております。  先日開催をいたしましたG20新潟農業大臣会合におきましても、閣僚出席をいたしました十八カ国全てと二国間会談実施をさせていただきまして、その際、私から、中国を含む輸入規制が残る全ての国に対して、撤廃緩和要請も行ったところでございます。  引き続き、科学的根拠に基づく輸入規制撤廃緩和が進みますように、関係省庁とも連携をしながら粘り強く働きかけを行ってまいりたいと存じます。
  7. 稲田朋美

    稲田委員 ぜひ、日本の安全でおいしい農産物世界じゅうの方々に食べていただけるように、大臣、頑張っていただきたいと思います。  また、北京でスーパーに行ったんですけれども、そこで日本デコポン北京では不知火というそうですけれども、それがもうたくさん並んでおりまして、現地生産ということでございました。それを試食した方のお話を聞きますと、日本デコポンと同じぐらい、というか、同じようにおいしかったということです。  デコポン日本国内品種登録されておらず、果樹は枝の芽があれば増植できるので、容易に海外に流出してしまったのではないか、そういうことでございました。  農業成長産業化輸出拡大のためには、農業分野知財戦略、これを強化することがとても重要です。種苗のみならず、地理的表示、農法や土づくりノウハウなど、さまざまな知的財産を守らなければなりません。現場における知財リテラシー知財マインドの醸成に向けての啓発も必要だと思いますし、地理的表示地域団体商標などを国が普及そして啓発することも必要です。  せっかく開発された日本の大変おいしい農産物、この知的財産海外に流出しないような規制、これも必要だと思いますけれども、農水省見解をお伺いいたします。
  8. 塩川白良

    塩川政府参考人 お答え申し上げます。  我が国農産物知的財産一つである植物新品種につきましては、日本販売等が開始されてから四年以内、また、果樹等につきましては六年以内に海外品種登録出願を行って保護していくことが必要であります。このため、農林水産省としては、国内品種育成者に対しまして、啓発を行うとともに、海外における出願の費用につきまして支援をしているところでございます。  また、今先生から御指摘がありました、このほかの知的財産であります栽培技術だとか土づくりノウハウ、これにつきましては、生産者知的財産として認識をしてもらいまして管理すること、これが重要であります。このことにつきまして、パンフレットの作成と配布を通じまして周知をしているところでございます。  なお、地理的表示、それから育成者権などの農林水産分野全般における知的財産の保護や活用のあり方を取りまとめました農林水産省知的財産戦略二〇二〇というのがございますが、これが実施期間が今年度末までとなっておりますので、知的財産活用を一層推進する観点から、新たな戦略策定に向けましてしっかり検討してまいりたいというふうに思っております。
  9. 稲田朋美

    稲田委員 法律規制されているもの、また、法律がないものについてはそういった啓発が重要だということでありますけれども、しっかりと知的戦略の強化ということをお願いをしたいと思います。  スマート農業についてお伺いをいたします。  先週末、私も福井に戻りまして、私、毎年のように、行けるときは田植それから稲刈りは必ずするようにしているわけですけれども、今回は農水省スマート農業技術開発実証プロジェクトに取り組んでいる福井田中農園というところに行ってまいりました。そして、実際に自動運転機能のついた田植機であきさかりの田植もしてきたところでございます。  その中で、幾つ現場からの要望がございましたので、それを指摘させていただいて、そういった点について、どういう取扱いになっているかについてお伺いをしたいと思います。  まず、GPSについて。DGPS、すなわち、衛星からGPS電波をとっているものなんですけれども、それだと、大気圏を通ってくる関係上、天候に左右をされたりとか、いろいろなことで五十センチから五メートルぐらいの誤差があるということだそうでございます。なので、基地局公共インフラとして整備することが重要で、これは、自動運転農機具のみならず、乗用また運送用車両普及にも有益でありますので、基地局の設置をぜひ後押しをしていただきたいということが一点でございます。  それから、二点目は、このスマート農業、そしてこういった自動農機具というのは日進月歩の進歩を遂げておりますので、私が運転した田植機は、直進自動なんですけれども、旋回するときは自分運転をしなきゃいけない。もちろん、直進でも自動だと本当に精神的なストレスはもう全然違って、やはりこのスマート農業は進めていかなければならない、高齢者、また女性、そして初心者にとっても非常に有益だということは実感をしたんですけれども、しかしながら、例えば旋回自分でやらなきゃいけない。  しかし、メーカーに聞きますと、来年は旋回自動でできる自動田植機発売をされるようでございます。この実証事業は初年度のもののみ購入が可能ということで、来年のものについてはそれは含まれないということでございますけれども、二年目に開発された新しいものについても導入を可能にすることはできないのでしょうかということが二点目でございます。  そして、地元の若手農業者、そして稲作農業者からすれば、現在は圃場の横で監視をしていなければならないんですけれども、将来的には家や事務所などから複数台ロボット農機を監視しながら操作できるようになれば最高ですとか、また、今、格納庫から圃場まで、その農場も五メートルの公道があるんですけれども、その五メートルの公道道路交通法関係無人では走らせることができない、やはり自動走行格納庫から圃場まで行って、また格納庫まで戻れるようになってほしいというような、そういう意見もございました。  確かに、安全に格納庫から圃場まで自動走行ができるということの技術開発も必要だというふうに思いますし、またさらには、道路交通法規制緩和ということも必要になろうかと思いますが、そういった現場の声について、農水省見解をお伺いいたします。
  10. 別所智博

    別所政府参考人 お答え申し上げます。  農業者減少、また高齢化が進む中、農業成長産業化に向けまして、スマート農業推進をするに当たりましては、委員指摘のとおり、各地農業現場に即した技術導入するための環境整備が重要というふうに認識してございます。  自動走行トラクター等導入する上で不可欠になってまいります高精度測位情報を取得するためには、GPS測位を補正するためのRTK基地局等整備が必要でございます。その整備につきましては、スマート農業実証プロジェクト、また産地パワーアップ事業支援対象としておりますほか、自動走行農機導入利用対応した農地整備という視点からもこの検討を行ってまいりたいというふうに考えてございます。  また、準天頂衛星「みちびき」の活用によりまして、基地局がなくても高精度測位データが得られるような受信機開発にも取り組んでおるところでございます。  また、御指摘ございました自動旋回する田植機につきまして、来年度発売予定メーカーもあると私どもも承知してございます。スマート農業実証プロジェクトにつきましては、原則的に、初年度導入した機械について二年使用することを前提支援をしていくということになってございますが、まずは、全国六十九カ所で取組が始まったところでございますので、各地実証を軌道に乗せるということが重要かと考えておるところでございます。  さらに、委員指摘のとおり、農業機械無人での公道走行については道路交通法により規制されてございます。ただ、現在実用化されております自動走行トラクターでございますが、技術的には、圃場内での無人走行前提としたものでございます。このため、次の段階といたしまして、例えば圃場間移動などを含めました自動走行を行うためには、例えば圃場の出入りを安全に行うための高度な車両制御技術開発など、引き続きの技術開発が必要でございまして、農機メーカー連携いたしまして研究開発を進めているところでございます。  今後とも、現場要望をしっかりとお聞きしながら、研究開発、またスマート農業の実装を進め、農業成長産業化につなげてまいりたいと考えておるところでございます。
  11. 稲田朋美

    稲田委員 ぜひ、そういった開発農研機構そしてメーカー連携をして最優先で技術開発もしていただきたいし、それに伴っての規制改革ということもお願いをしたい、このように思います。  また、農業用ドローンですけれども、農業用ドローンスマート農業の一丁目一番地と言っても過言ではありません。また、農水省が、農業用ドローン普及計画策定をして、ドローン本格的普及のための官民協議会も立ち上げられたということを高く評価をしたいというふうに思います。  しかしながら、農業用ドローンについては、二、三メートルの低空を飛行するものであるにもかかわらず、電波規制は飛行機の電波利用と同じ取扱いが行われていると、ドローン業界からは強い改善要望があるというふうにも伺っております。  私も規制改革担当大臣をしておりましたので、どちらかというと、規制改革会議農業分野、なかなか、食い違うというか、意見が違うところもありましたが、このスマート農業に関しては、私は、一緒に協力ができる数少ない分野ではないかなというふうに思っているんですけれども、その点についてのお伺いをいたしたいと思います。
  12. 枝元真徹

    枝元政府参考人 お答え申し上げます。  担い手の減少高齢化によりまして労働力不足が深刻化する中で、ドローン分野のイノベーションを農業分野に取り込むことは極めて重要でございます。  このため、農林水産省におきましては、農薬散布生育状況のセンシングを始めといたしまして、農林水産分野におけるドローン活用を加速させていくことを目的といたしまして、農業者、ドローンメーカーサービス事業者関係団体、また、総務省国土交通省といった関係省庁等から成ります農業用ドローン普及拡大に向けた官民協議会を本年三月に立ち上げたところでございます。この官民協議会の枠組みの中で、農業用ドローンの飛行に関して現場で支障となっている規制制度への対応も含めて、官民で議論していくこととしてございます。  御指摘電波利用に関する規制につきましても、今後、総務省における技術的な検討会に当省もオブザーバーとして参加するなど、関係省庁連携を密にするとともに、規制改革推進会議における議論にも参加する等、農業分野におきますドローンの本格的な普及拡大に資する環境整備に積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
  13. 稲田朋美

    稲田委員 福井はコシヒカリの発祥の地なんです、皆さん御存じないかもしれませんけれども。そして、いちほまれというおいしいお米も昨年からできまして、私、田植稲刈りも同じ田んぼでやって、自分田植をし、稲刈りをし、自分で食するということも昨年はさせていただきました。  そして、日本主食であるおいしいお米、また、美の象徴である水田、また、文化の原点である稲作をしっかりと守っていかなければならないというふうに思っております。  しかしながら、お米の需要は年々十万トン単位で減っていくという現状を考えますと、主食以外のお米の拡大は死活問題でございます。  そんな中で、米粉は新たな米の需要拡大に期待ができる分野だというふうに考えておりますし、ノングルテン米粉は、アメリカや欧州を中心に世界グルテンフリー市場が順調に拡大していて、来年には日本円で約一兆円に達する見込みというふうに聞いているところでございます。平成二十九年には日本米粉協会が設立されて、福井のJA五連会長である田波氏が会長代理にも就任されたところであります。  国内のみならず海外での需要を創出できる米粉についてしっかりと政策、予算でバックアップすることが水田農業を守ることにもつながると思いますが、大臣見解をお伺いをいたします。
  14. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 主食用米需要が毎年約十万トン減少すると見込まれる中で、水田フル活用を進めているところでありますけれども、パンや麺など多様な商品原料となり得る米粉生産拡大は重要な問題であると私も認識をいたしております。  近年、欧米等におきまして、セリアック病等対応する食品としてグルテンフリー食品需要が高まってきておりまして、その原料として、グルテンを含まない特徴を持つ米粉需要拡大が期待されているところでもございます。  このため、農林水産省といたしましては、水田活用の直接支払交付金により、米粉使用米の作付に対する支援米粉製品製造施設整備への支援や新商品開発等に対する支援を行っております。また、海外需要創出につきましては、輸出事業者団体が行うプロモーション等に対する支援等取組を行っているところでもございます。  さらに、我が国世界最高水準グルテン検出技術活用いたしましたノングルテン米粉と表示する基準ですとか、菓子用パン用麺用等米粉用途別基準策定するなど、制度整備にも取り組んできたところでもございまして、こういった支援を通じて、日本産の米粉生産拡大をしてまいりたいと思いますし、さらに、水田農業経営安定化も図ってまいりたいと存じます。
  15. 稲田朋美

    稲田委員 ありがとうございます。終わります。
  16. 武藤容治

    武藤委員長 次に、稲津久君。
  17. 稲津久

    稲津委員 公明党の稲津久でございます。  通告に従いまして、順次質問させていただきます。  きょうは、まず最初に、農林水産物食品輸出拡大ということでお伺いをさせていただきたいというふうに思います。  また、本委員会、私の質問におきましては、厚生労働省からもお越しをいただいておりまして、後ほど質問、お伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  まず、このことについて、輸出先国食品安全規制への対応についてということをまずは伺っていくわけなんですけれども、その前に、もう一度おさらいで、この輸出状況、また拡大方向性について、私なりにお話し申し上げたいと思うんです。  我が国の人口は、御案内のとおり、八年連続で減少しておりまして、今、一億二千六百万人ぐらいと言われていますけれども、そうなりますと、当然、国内での食品市場というのは、これは縮小する方向で進んでいくわけでございます。  もう一方で、それでは、世界食料品市場はどうなっているかというと、例えば、推計調査によると、二〇一五年の金額規模で約八百九十兆円、これが二〇三〇年には千三百六十兆円ですから一・五倍ですか、大変大きくなる。とりわけアジアは一・九倍ぐらいになるだろうということでございまして、こうしたことを背景に考えていくためには、我が国農林水産業が発展するためにはやはり輸出というものがなくてはならない、その拡大必要性を増している、このようにも言えると思います。  そして、今、政府を挙げて、また農林水産省としても大変な力を入れて、農林水産物食品輸出の一兆円の目標に向けてもう一歩のところまで来ている、このように認識しています。  ただ、輸出拡大のためには当然幾つかの課題があるということで、特に、輸出先国食品安全等規制への対応というのが欠かすことができませんで、これに関してやはり幾つかの課題がある、その迅速な対応を求められているというところだと思います。  また、農林水産の、漁業者方々食品事業者方々におかれては大変頑張っていただいておりますけれども、もう一方では、食品安全の規制についての十分なそうした知識、情報が果たして現場までどの程度普及されているのか、これも一つ課題であるのかなと思っております。  そこで、まずお伺いしますけれども、国内体制整備の諸課題に向けて、農林水産省として、輸出先国食品安全規制への対応について現段階でどのような状況にあるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  18. 塩川白良

    塩川政府参考人 お答え申し上げます。  農林水産物食品輸出につきましては、一兆円目標の確実な達成とその後のさらなる拡大に向けまして、輸入国食品安全等規制への迅速な対応が最大の課題であるというふうに認識しております。  例えば、欧米向け牛肉輸出に関しましては、食肉処理施設HACCP認定に向けた整備が行われたものの、まだ認定が完了していないという、またEU向けホタテ輸出に関しましては、生産海域を指定する必要がありますが、海域の指定がまだ限定的であるという等の課題があるところでございます。  これら課題に対して方策を検討するために、先月、官房長官議長、それから農林水産大臣厚生労働大臣を副議長とした農林水産物食品輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議が立ち上がったところでございまして、政府を挙げて課題解決に向け取り組むこととしております。  農林水産省としても、吉川農林水産大臣の強いリーダーシップのもとで、個々の課題への対応につきまして工程を定め、スピード感を持って対応を進めていくとともに、継続的に類似の問題に対処するための体制、また事業者支援などにつきまして検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  19. 稲津久

    稲津委員 今、政府を挙げての体制ということについても触れていただきましたけれども、非常に大事な課題でございます。ぜひ進めていただきたい。  そこで、日本農林水産物食品の中でも、特に、例えばEUまたアメリカ等、ここに向けての輸出で一番、やはり先頭に立って広げていけるのは、一つはホタテ、それからもう一つがやはり牛肉であろうというふうに思っています。  これは非常に、そういう意味では期待を持てるところでありますけれども、いずれも、例えばEU向けのHACCPについては、これはしっかり、きっちりやっておりますので、ここをきちんと認定を完了しなければいけないということなんです。ですから、ここは、今御答弁いただいたことを踏まえて考えていくと、EU向けのHACCPの認定、しっかり速やかにやっていかなきゃいけない。  ところが、大変残念なことに、先般、鹿児島県の株式会社ナンチクのEU向け施設の認定について、大変大きな問題がございました。きょうはこの委員会で改めて取り上げさせていただきますけれども、どういうことかというと、簡潔に言うと、国それから鹿児島県の対応が不十分だったということ、また連携が不十分だったということを言わざるを得ない、こういう状況です。この認定のところは、これは厚生労働省認定していきますので、厚生労働省には大変な責任があります。  ちょっと紹介しますと、まず、二〇一七年の六月二十日に、EU対応の牛の繋留所の工事が完了した、この時点で県に速やかに申請を相談しています。ところが、その六カ月後、半年後ですよ、今度は県がアニマルウエルフェアを出してまいりまして、講習講師の内諾、ここまでで半年かかっている。さらに今度は、二〇一八年の四月の九日、対EU施設認定の申請書を提出したわけですけれども、これで十カ月かかっていて、その後なんですよ、問題は、特に。  二〇一八年の九月十日になりますと、厚生労働省から書類審査の指摘事項の通知があった。そして、ヒアリングも行って、十二月に入って厚生労働省の現地調査があった。そして今度は、十二月の二十六日、暮れが押し迫ったころに厚生労働省から現地調査指摘事項の通知があった、本省からです。ここまでで随分かかっているわけですよ。先ほどの十カ月プラス八カ月かかっている。  さらに、その後です。これは、二〇一九年の三月六日に厚生労働省から、床の破損補修が完了していない、これができなければ認定しませんよということで、床の補修工事をするよう要請があって、ここで更にまた八カ月かかっている。だから、最初の時点から二年二カ月かかっているんです。  こういう状況の中で一つ言えるのは、県はこの認定の仕組み等について本当にちゃんとした知見、認識があるのか。ある意味、見方を変えたら、申請を先延ばししているようにも見受けられてしまう。  国の対応です。厚生労働省、書類審査と現地調査の同時審査もしていない、当初すべき指摘事項をことしになって指摘している。これじゃ話にならない。私に言わせれば、ちょっと言葉は過ぎるかもしれないけれども、もってのほかですよ。今、政府を挙げて、EU向けのことも含めて輸出の強化対策をやろうとしているときに、こんな体制対応であったら、とても前に進みませんよ。  きょうは厚生労働省に来ていただいているので、この点について明確にお答えいただいて、対応策も含めて、ぜひ御答弁いただきたいと思います。
  20. 宮嵜雅則

    宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。  委員が御指摘のありましたとおり、株式会社ナンチクの牛処理施設に係る対EU施設認定については、平成三十年の四月に厚生労働省に対して認定申請がございましたが、現時点で認定に至っていないことは事実でございます。  認可申請中の案件であることから、個別具体的なことについてのコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、その後、現地調査を行って、その結果、厚生労働省から改善を通知し、施設において改善に取り組んでいただき、改善報告書が提出され、改善が確認され次第、認定事務を速やかに進めることとしております。  委員指摘の、国や都道府県における輸出施設の認定手続を含む輸入国規制への対応につきましては、現在、先ほど農水省の方からも御答弁ありましたが、農林水産物食品輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議を開催し、検討しているところでございます。  具体的には、特に輸出施設の認定手続につきましては、施設の整備段階から、農林水産省厚生労働省、地方厚生局、地方自治体及び事業者で協議を行い、課題やスケジュールを共有し、効率的に進め、迅速化を図ることを検討しているところでございます。
  21. 稲津久

    稲津委員 繰り返しお聞きしますけれども、書類審査と現地調査は、同時審査をなぜしなかったんですか。
  22. 宮嵜雅則

    宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。  書類審査におきましては、施設の構造、設備の図面や機械の仕様、作業手順に関する資料、HACCPを含む衛生管理の各種マニュアル等がEU規則に適合するものかどうかを確認してございます。そうしながら、あわせて、現地調査で重点的に確認するポイントを決めております。その上で、現地調査では、書類上の記載どおりに現地の施設が整備されているか、作業が行われているかといった点を重点的に調査しております。  御指摘のように書類審査と現地調査を同時に行うと、ポイントを絞って現地調査を行うことができず、また、現地調査で改善を指摘した事項が改善されているかどうかの確認のために何度も現地調査を行わなければならないというようなことが起こると、結果的にかえって非効率になりかねないというふうに考えているところでございます。
  23. 稲津久

    稲津委員 質問の仕方を変えますよ。  じゃ、書類審査と現地調査を同時にすることはできないんですか、できるんですか。答えてください。
  24. 宮嵜雅則

    宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。  ケース・バイ・ケースになろうと思いますが、基本的には別々に行うことが適当ではないかと考えております。  例えば、書類審査でマニュアル等が整備されているかどうかということはもちろん書類上確認できるわけでございますけれども、その後、現地に行って、マニュアルどおりに対応されているかどうかということを確認するというようなケースで、いきなり現地に入って、マニュアルがなかったということであれば、そこで、マニュアルをつくってくださいとか、整備してください、見直してくださいと言った後に、またその後に現地調査というような、現地調査が何度も重なるというようなケースも出てくる可能性があると考えております。  また、書類審査上、ある程度問題がないところと、ちょっとしっかり見なきゃいけないというところを事前に確認して現地調査に入ることによって、効率的な現地調査実施できるというふうに考えているところでございます。
  25. 稲津久

    稲津委員 要するに、現地調査は去年の十二月の十日、十一日にやっているんですよ、厚生労働省が。その後に、三月になって、今度は、破損補修が完了していない、こういう指摘をしているんです。何のための現地調査をしたんですか、これは。おかしいじゃないですか。  私が言っているのは、やはりこういった体制を、今、マニュアルを審議官は何回もお話ししましたけれども、マニュアルの前の話ですよ、これは。ちゃんとやっていないんだもの、だって。これ以上言いませんけれども、本当にちゃんとやっていただかなかったら、これからも繰り返し指摘させていただきますよ。  それで、ホタテのHACCPというのは、私の記憶するところによると、最初はその施設の認定厚生労働省だけだった。遅々として進まない。それで、数年前に、農水省でもホタテのEU・HACCPの施設の認定をできるようにした。これが現実ですよ。あえて農水委員会のこの席で言わせていただきますけれども、もっと緊張感を持って厚生労働省に臨んでいただきたい、そのことを強く指摘をさせていただきます。  次に、韓国による日本産の水産物等の輸入規制についてお伺いします。  これはもう皆さん御存じのとおりなので詳しく申し上げませんけれども、例のWTOの一審パネルと二審の上級委員会の判断が違って、一審のときにはこれはよかったなと思ったんですけれども、二審になってしまったら、結果的にいわゆる一審の判断というのを取り消したわけですね。これも本当にもう納得いかない、恐らくこれは政府関係者全て同じ意見だと思うんですけれども。  それで、四月の二十六日に、このことについては、パネルの報告書及び上級委員会報告書がWTOで採択されて結果が確定されたということなので、今のルールでいったら、これをもう一回どこかに差し戻して何とか審議してくれということにならないのは重々承知しているんですけれども、このことを踏まえて、農水省としては今後どのような対応をしていくのか、まずお伺いします。
  26. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 今回のWTO上級委員会の報告書の結果でありますけれども、韓国への輸出再開を願っておられた八県の水産業者の皆様の気持ちを思いますとまことに遺憾でありまして、今後も希望を持って漁業や水産加工流通業に取り組める環境を整備していくことが重要であると考えているところでございます。  被災地の水産関係者に向けた早急な支援策といたしまして、農林水産省、外務省、復興庁、厚生労働省、経済産業省が連携をいたしまして、輸入規制措置の解除に向けた戦略見直しと輸出拡大、予期せぬ経営環境に窮する被災地水産業者への支援、徹底した風評払拭を柱とする対応方向というものを取りまとめさせていただきました。  私ども農林水産省としましては、まずは、諸外国の輸入規制措置の緩和撤廃に向けた働きかけの強化、ホタテ、ホヤ等のEU、米国等への輸出拡大、展示商談会の開催や、販路回復に苦しむホヤ養殖業者等が希望する魚種への転換支援、風評払拭に向け、訪日外国人等へアピールするほか、大型量販店での福島県水産物の常設販売の取組拡大などについて、関係各省と連携をいたしまして取り組んでまいりたいと存じます。  また、今後とも、現場のニーズを把握をいたしまして、更に必要な対応策についても検討を続けてまいりたいと存じます。
  27. 稲津久

    稲津委員 ありがとうございました。  ぜひ、今大臣が申されたことをしっかり進めていただきたいと思います。  ただ、それにつけても、非常に、やはり今回の上級委員会の判定というか、納得いくものではございません。  実際にはやはり外務省がこの一審と二審のところをずっと対応していただいているので、外務省にもきょうお越しいただきましたのでお聞きしたいと思うんですけれども、はっきり言うと、私は、これは制度的欠陥があると思うんですよ。ですから、これはぜひ、今後、このWTO、さまざまな協議の場で、各国に働きかけることはもちろんですけれども、しっかりこれは言うべきことを言い切って、そして、ぜひ、まあ私は制度的欠陥と言っていますけれども、そこを正すように進めていただきたい。  きょうは政務官に来ていただいているので、御答弁いただきたいと思います。
  28. 辻清人

    ○辻大臣政務官 お答えします。  委員指摘のとおり、今般の韓国による日本水産物の輸入規制措置に関するWTOの上級委員会の判断は、紛争解決に資さないものであって、我が国としては到底受け入れられません。  こうした問題意識のもと、先月に開催されたWTO紛争解決機関の会合において、我が国から、上級委員会の判断が紛争解決に資するものとなっていないことを強く懸念すること、そして、日本食品の安全性に関するパネルの事実認定については争いがなくて、引き続き早期の措置の撤廃を求めていくこと等を発言しましたところ、これに対し、米国、EUなど十を上回る国から、我が国の問題提起について前向きな発言がございました。  WTOの本部があるジュネーブでは本問題に特化した議論が進展しておりまして、日本からも提案を行っています。今後も、具体的な、積極的な議論を行っていく予定でございます。  また、こうした制度の見直しもそうなんですが、こういった取組に加えて、日本食品に対する輸入規制措置自体の撤廃に向けてオール・ジャパンで働きかけをすることが重要でありまして、私も、先週チリで開催されたAPECの貿易大臣会合において、韓国、台湾及びシンガポールに対して直接、輸入規制措置の早期撤廃緩和を働きかけたところでございますので、委員の問題意識に沿って、これからしっかり頑張っていく所存でございます。
  29. 稲津久

    稲津委員 時間が参りましたので終わりますが、今御答弁いただきまして、大変心強く思っています。ぜひ進めていただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  30. 武藤容治

    武藤委員長 次に、石川香織君。
  31. 石川香織

    ○石川(香)委員 石川香織でございます。  早速、質問をさせていただきたいと思います。  きょうは、まず、和牛の受精卵の流出問題についてお伺いをしていきたいと思います。  昨年の七月に発生したこの事件でありますけれども、上海にフェリーで到着した日本人が、金属製の容器で、冷凍した受精卵と精液が入った保管用のストロー四百七十八本を持ち込もうとして、この事件が発覚をいたしました。  受精卵の流出が起きたということは、やはりその管理に甘さがあったのではないかということで、きょうはあらゆる方向から質問していきたいと思いますけれども、まず、この事件の経過を教えていただきたいと思います。
  32. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  昨年の七月の事案につきましては、このような事案を受けまして、大阪府在住の者が家畜伝染病予防法に基づく輸出検査を受けずに牛の受精卵及び精液を中国へ持ち出した旨を確認いたしましたことから、本年一月二十九日に農林水産省が大阪府警察に対しまして刑事告発をいたしました。  その後の経緯につきましては、新聞報道を通じてということではございますけれども、受精卵等を持ち出そうとした者及びその依頼者の合計二名を同法及び関税法違反の容疑で三月九日に逮捕いたしまして、同月二十九日に起訴、それから、受精卵等の流出元とされる農家を同法及び関税法違反の幇助ということで三月二十日に逮捕し、四月八日に起訴されたというふうに承知しているところでございます。
  33. 石川香織

    ○石川(香)委員 この事件でありましたけれども、農水省は和牛を国の財産と位置づけているということで、皆、私たちも同じ思いであると思うんですけれども、今、現段階で受精卵などの輸出を直接禁止する法律はないということで、今、新井局長から御説明いただいたとおり、苦肉の策とでもいうのでしょうか、家畜伝染病予防法というものを適用して、関係者三人を逮捕したということでありました。  この家畜伝染病予防法でありますと、検疫を受ける義務は輸出者しかありませんので、その受精卵などを手に入れようとした中国の牧場関係者などには適用できないということになると思います。輸出規制は、WTOのルールに基づきまして、外国為替及び外国貿易法などで、最小限度にとどめるということで規定をされておりまして、家畜の遺伝資源を守る国際ルールも現状定められていないということです。  一方、植物に関しましては、新品種を保護するための国際条約というものが既にありまして、新種を開発して国に登録すれば、それは知的財産としてみなされて、法律で種の無断輸出も禁止をされているということで、そういった意味で、この和牛の遺伝子の保護には法の抜け穴があったということになると思います。  現状、こういう世界のルールであるわけでありますけれども、実際この事件が起きて、何とか和牛の遺伝子を守っていかなくてはいけないのではないかという議論が、危機感も含めて、日本じゅうで沸き上がったということでありますけれども、受精卵それから精液が知的財産としてみなされていない理由としてどんなものがあるのかということもお伺いをしたいと思います。
  34. 枝元真徹

    枝元政府参考人 お答え申し上げます。  家畜の遺伝資源を知的財産として保護できないかという点につきましては、平成十八年にも、検討会におきまして、植物に関する知的財産権を定めます種苗法を参考に検討がなされてございます。  その際、種苗法に基づく育成者権につきましては、同一世代でその特性が十分均一であるという均一性、また、何代増殖を繰り返しても特性が安定しているという安定性、こういう要件を満たせば新品種として登録することができるということとされてございます。また、新品種育成者権を国際的にも保護するためのUPOV条約も存在しているところでございます。  他方、和牛始め家畜の場合には、仮に親が同一でございましても、精液や受精卵の段階では形質が未確定であり、同じ能力の牛を増殖することは困難であり、また、植物のような国際条約も存在せず、種苗法のような法律による保護は難しいという結論に至ったというふうに承知をしてございます。
  35. 石川香織

    ○石川(香)委員 家畜は、同じ親から生まれても、その肉質とか体型が違うことが多いということで、新しい品種としてみなされないということで今のルールがなされているということでありましたけれども、ただ、勝手に取引をされている、無断でやりとりされているという状況をチェックするためには、まず、国内の精液、受精卵の流通と保管の実態というのをやはり把握していかなくてはならないのではないかと思いますけれども、現時点で、国内の精液、受精卵の保有実態というのは果たしてどれぐらい把握できているものなんでしょうか。
  36. 枝元真徹

    枝元政府参考人 お答え申し上げます。  家畜の精液の生産状況につきましては、精液採取の際に供する雄の家畜につきまして義務づけられてございます種畜検査を通じて、全国の種畜の精液の生産状況を定期的に把握してございまして、平成二十九年度においては約百八十六万本が流通しているところでございます。  一方、受精卵は、精液と異なりまして、一頭当たりの生産量が限られて、疾患が伝播するリスクが低いということ等から、受精卵生産の用に供する雌牛につきまして、雄牛の種畜検査のような義務づけがなされておらず、現在はその生産状況を把握できる仕組みはございません。  このような中で、精液、受精卵の適切な取扱いを確保する観点から、その適正な流通を担う基本的な施設でございます家畜人工授精所の管理が非常に重要であるというふうに考えてございまして、各都道府県に対しまして、各家畜人工授精所の稼働状況の把握等について指導いたしますとともに、農林水産省職員によります現地調査等によりまして、保有や取引の状況につきまして聞き取りを行い、実態の把握に努めているところでございます。
  37. 石川香織

    ○石川(香)委員 家畜人工授精所については後ほどもお伺いしたいと思いますけれども、なかなか、精液であったり受精卵は個人の財産でありますから、それを全部教えてくださいというのも難しい面があるのかなというのは理解できる点でありますけれども、ただ、和牛の一大産地の宮崎県では、県産の種雄牛の精液を厳重に管理するシステムがあるということで、国がというよりは、県、また地域がしっかり自分自身で財産を守っていくということがしっかりなされているところもあるということで、現状で、こういうことに徹することが今一番有効な手段なのかもしれません。  とはいえ、法改正の必要性というのはこれから当然議論されていくのではないかと思います。現に、三月二十三日の閣議後会見の中で、吉川大臣はこうおっしゃっております。法改正も視野に入れた検討になっていくということで発言をされております。検討していくべき点というのは法律の中の主にどの部分であるのかということと、議論を深めていくその見通しということについて、大臣にお伺いをいたします。
  38. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 和牛は、関係者が長い年月をかけて改良してきた、我が国固有の貴重な財産であると思っております。この和牛の遺伝資源の海外への流出には大きな危機感を持っているところでございまして、このため、農林水産省といたしましては、我が国における遺伝資源の適正な流通管理の確保に向けて、和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会を設置をいたしました。  現在、有識者に幅広く議論をいただいているところでございまするけれども、これまでの検討会におきましては、譲渡記録を保管するなど精液や受精卵の流通管理を徹底すべきとの御意見、さらには、知的財産の観点から、契約による保護の重要性に関する御意見などもいただいているところでございます。  まだ詳しく内容を御説明できる段階ではございませんけれども、この検討会で出されました意見等も踏まえながら、法改正も視野に入れて、どのような対応ができるのか、今後更に検討を加速化をしていきたい、こう思っております。
  39. 石川香織

    ○石川(香)委員 今検討会が行われているということで、今具体的にどういう点が検討されているのか、議論されているのかという御答弁もありました。私も、こういうところが改正する余地があるのではないかという提言も含めて、以下、質問を続けてまいりたいと思いますけれども、持ち出しを直接禁じる法律必要性の有無というのも当然議論されていくことだと思います。  今回の事件で一番衝撃的だった点というのは、逮捕された日本人の方が畜産農家であったというところではないかなと私は感じています。そして、徐々に捜査状況もわかってきまして、更に衝撃的だと私が感じたのは、和牛の受精卵などを中国に持ち込もうとしたことについて、また、輸出検査が必要であるということについて、この日本人たちが違法だと知らなかったと話している点だと思います。  この男性、Aとしますけれども、液体窒素に入った牛の種を中国に運んでほしいと知り合いの中国人に電話で依頼を受けて、もう一人の男性Bにその運搬を依頼したということです。この男性Aは、電話で頼んできた中国人からは友人の頼みだから報酬を受け取っていないということでありまして、運搬を依頼したBには数万円を支払ったということが証言をされています。  この証言が正しいとすれば、中国人の友人のために、まるで親切心でやっているようなところも少し感じるところでありまして、本当に違法性という認識がなかったのではないかなというのもこの証言から感じ得てしまうと思います。  さらに、運搬を担当したBも、昨年の六月に、受精卵などを中国当局に持込みを認められなかったとき、帰国をするんですけれども、この際にみずから農林水産省の動物検疫所に申告をしているということでありました。中国人から依頼されたAも、家宅捜索をされた際に初めて違法だと知ったと話しているということです。  受精卵などを海外などに持ち込むことに対して、また、輸出の検査が必要だということに関して、いわば家畜のプロが違法性の認識が極めて低かったという現状をまずどう受けとめていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。
  40. 濱村進

    濱村大臣政務官 今、輸出検査の必要性、しっかりと認識をさせていくべきだという委員の御指摘かと思います。  家畜伝染病予防法に基づきます輸出検査は、家畜衛生上安全なものを諸外国に供給し、我が国から輸出するものの信用を保持するということを目的としておりまして、精液及び受精卵につきましては、同法の第四十五条第一項第二号の規定によりまして、いずれの国に輸出する際にも輸出検疫証明書の交付を受けることが必要とされているところでございます。  昨年七月の事案を受けまして、農林水産省といたしまして、同年十月、日本家畜人工授精師協会に対しまして、牛の受精卵や精液は、海外への持ち出し、海外からの持込みのいずれも動物検疫の手続が必要であることや、現在、日本輸出国の間で和牛の受精卵等に関する家畜衛生条件を締結している国はないために、どの国にも輸出することができないということ、これらを同会員に周知徹底するよう依頼したところでございます。  引き続き、輸出検疫の必要性を知らないがゆえに同様の不正持ち出し事案が繰り返されることのないよう、人工授精師を中心とした畜産関係者への周知徹底を行って、再発防止に万全を期してまいります。
  41. 石川香織

    ○石川(香)委員 人工授精師という方々が主になって、家畜農家の方々にいろいろなルールを周知徹底をしていくということがありました。私も後でそのあたりについてもお伺いをしたいと思っておりますけれども、やはり、本当に違法と知らないで、ただ友人のために、流出というんでしょうか、持ち出そうとしたのであれば、本当に私は深刻な問題だと思いますし、また一方で、まさか受精卵とか精液などは流出させることがないだろうといった性善説に基づいた今の現状の法の抜け穴というのもまた深刻な問題だし、これから検討されていかなくてはいけない課題だと思っています。  次の質問ですけれども、今回の事件はフェリーを使って上陸をしようとしたということでありまして、港での輸出検査の対策というものについてお伺いをしたいと思います。
  42. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、受精卵等の輸送には特殊な容器が用いられるということでございまして、このような容器の外観を関係いたします関係機関や船舶会社にまず周知をするということを繰り返しやっているところでございます。  これに加えまして、特に中国からの国際定期フェリーが就航する港におきましては、家畜防疫官によります見回りを強化するということと、それぞれ出国者に対しましてチラシやリーフレットの配布を行っているということでございます。  さらに、中国当局に対しましても、今後、違法な持ち出し、持込みがあった場合の情報提供を我が国にいただくようにということで、国際的にもいろいろな連携をとっていこうということでございます。  引き続き、関係機関と密に連携をとりまして、同様の事例が生じないよう、再発防止に万全を期してまいりたいと考えております。
  43. 石川香織

    ○石川(香)委員 いろいろと、更に対策を強化していただくという点で考えていただいていると思いますけれども、港での輸出ですとか、いろいろな持ち出しの点ですけれども、アフリカ豚コレラの今脅威もある中で、やはりしっかり体制を強化していかなくてはいけないのではないかと思います。一方で、税関とそれから家畜防疫官との連携というのも非常に重要ではないかと思いますので、見回りですとか、見た目も特殊な容器を持っているわけですから、より積極的な体制を強化していくということに現状、尽きるのかなと思いますので、引き続きこの体制を強化していっていただきたいなと思います。  この日本人でありますけれども、牧場とともに、受精卵と精液の採取、販売を許可されました家畜人工授精所を運営をいたしておりました。この問題を受けまして、家畜人工授精所、今全国におよそ千六百八十八あるそうなのでありますけれども、この実態について農林水産省調査をいたしました。すると、全体の三割近くが休業か廃業をしているということが明らかになったそうであります。  この調査をきっかけにしてその事実が初めてわかったということで、この人工授精所の開設の許可は都道府県でありますので、信じがたいことなんですけれども、都道府県がしっかり管理できていないという実態が浮き彫りになってしまったということでありました。  まず、このことへの受けとめをお伺いをしたいと思います。
  44. 枝元真徹

    枝元政府参考人 お答え申し上げます。  農林水産省におきましては、和牛精液や受精卵の不正輸出の防止に向けまして、流通状況、また管理状況の把握等を行うために、全国の家畜人工授精所千六百三十四カ所に対しましてアンケート調査実施いたしました。  このアンケート調査の結果、御指摘ございましたとおり、現時点で稼働している家畜人工授精所の数は千百七十七カ所ということが確認をされまして、結果といたしまして、約三割近くが休業又は廃業しているという状況でございました。  家畜人工授精所は、各地域におきまして家畜遺伝資源の適正な流通を担う基本的な施設でございます。その開設に当たっては都道府県知事の許可が必要とされてございますけれども、その管理状況の把握に課題が残るというふうに感じてございます。  このため、三月二十九日に、この調査結果のフィードバックとあわせまして、各都道府県に対しまして、家畜人工授精所の稼働状況の把握や家畜人工授精所の開設許可権限の適切な運用等につきまして、和牛精液等の適正管理とともに、指導を徹底したところでございます。
  45. 石川香織

    ○石川(香)委員 人工授精所の稼働数、経営実態を今把握できていない都道府県もあったということでありまして、受精卵の生産、精液の採取をできる、管理者であります家畜人工授精師それから獣医師がこの役割をできるわけですけれども、ほかの施設で採取ですとか生産を行う行為は違反でありますけれども、こういった管理体制であればそれも可能になってしまいかねないと思います。  まずは、都道府県の管理の徹底、それから稼働していない人工授精所の許可の取消しも含めて、しっかり国が都道府県に求めていくということも必要になってくるかと思います。  先ほどの御答弁の中にもありましたが、受精卵を持ち出してはいけないですとか、輸出の検査が必要だとか、こういうルールの周知徹底に関して、人工授精師の役割も非常に大きいということでありましたけれども、この人工授精師の方々は、日本家畜人工授精師協会というものがありまして、この組織の中に、必ずしも全員がここに加入をしていないということでありまして、こういうルールを周知徹底するという上で、果たしてどういうやり方をとればしっかり周知徹底することができるのかということで、そのあたりもしっかり議論の中に一つ組み込まなくてはいけない点かもしれません。  この家畜人工授精所でありますけれども、販売時に、血統ですとか売り主、買い主双方の名前などを記しました証明書の交付が義務づけられておりますが、ただ、売り先に制限はないということでありました。この売り先に制限がないということについて、やはり今後の検討が必要なのではないかなと感じています。  先ほど大臣の御答弁の中にもありました検討会の中で具体的に踏み込まれておりますけれども、今回の事件を受けて、やはりはっきり、契約書の中で、第三者への転売を禁じる条項を盛り込むということ、非常に大事だと思いますけれども、このあたりについて、改めてお伺いをしたいと思います。
  46. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会におきましては、知的財産の専門家である委員にも参画をいただいて、現在も幅広く、今御議論をいただいているところでございます。  この検討会におきましては、知的財産の観点から、契約による保護の重要性に関する御意見などもいただいているところでございまして、まだ内容を御説明できる段階ではございませんけれども、契約による、今御指摘をいただきました、第三者への転売の制限も有効な手段の一つとして考えておりまして、この検討会で出された御意見等も踏まえながら、今後どのような対応ができるのかを検討しているところでございます。
  47. 石川香織

    ○石川(香)委員 契約書でもって第三者への転売を規制するということであれば、やはり、それぞれの立場や関係をしっかり尊重しつつ、信頼関係を崩さないようにルールづくりができていくのではないかと私も思いますので、ぜひ、引き続き検討会で前向きに御議論をしていただきたいなと思っております。  今回の事件を受けて、法整備に関しましては、受精卵、精液が知的財産としての保護が可能かどうかというところの議論にもなるかもしれませんけれども、やはり現段階では保護の対象になりにくいという世界のルールの中で、どうやったらこの財産を守っていけるのかというのは、非常に、さまざまな議論をしていかなくてはいけない点だと思っています。  日本世界と戦えるこの和牛ブランドをどうやって守っていくのか、その地位をどう確立していくのかというのは、今のルールでは限界があるということも一つ言えるのではないかと思います。  不法にこの和牛遺伝資源を流出させるというケースは多くないにしても、その後の点検で、今まで全くなかったとは果たして言い切れるのかというところを考えれば、言い切れなかったのではないかなと思うところもあります。  畜産農家でありましたり有資格者などの性善説に頼り過ぎたのではないかという部分も先ほど指摘をさせていただきましたけれども、しっかり守っていかなくてはいけないということで、加えて、今、TPPですとかEPAがありまして関税が下がり続けている中で、更に畜産農家が営農し続けていける、意欲を持って経営していけるということを施策の中でもしっかり示していかなくてはいけないと思いますので、そのことも強く要望させていただきまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。  今、連続テレビ小説「なつぞら」を放送されておりますけれども、この舞台は十勝でありまして、私も、開拓者精神を持って北海道に入植された皆様方の御苦労というのを毎日見ておりまして、非常に胸が熱くなっている一人であります。酪農家がどうやって結託をしていったのか、また、乳量をふやすためにどんな苦労を積み重ねてきたのかということも非常にこのドラマで詳細に描かれておりまして、大変勉強になるんです。  そこで、今回お伺いをしたいのは、改正された畜安法であります。この改正された畜安法が施行されて一年余りたったということで、二年目に入りましたけれども、この新しい畜安法になりまして、需要と供給のバランス、それから、新たに補給金をもらう事業者の存在感なども含めて、御所感をまずお伺いをしたいと思います。
  48. 小里泰弘

    ○小里副大臣 昨年四月に施行されました改正畜産経営安定法によりまして、加工原料生産者補給金制度に参加する交付対象事業者拡大をしたところであります。  そういった中で、例えば、みずから生産した生乳をブランド化をして加工、販売する取組を行っている事業者は、制度への参加を契機として設備更新を検討するなどといった動き、そしてまた、生産者団体等は、生産者の選択に応えられるように、生乳の販売方針や乳価交渉の状況等の情報発信をわかりやすく行うなど、前向きな取組が進んでいると認識をしているところであります。  また、新制度におきましては、需要に応じた供給が図られるように、毎年度、生乳の生産事情、牛乳・乳製品の需給事情等を考慮して、補給金の対象となる総交付対象数量を決定をいたしまして、事業者ごとの年間販売計画を精査した上で、それぞれの交付対象数量を適切に配分をすることで、生産者サイドへ需要に即した生産を促しているところであります。  引き続き、需要に応じた安定的な生乳取引が行われるよう、制度の適正な運用に努め、酪農家の経営の安定を図ってまいります。
  49. 石川香織

    ○石川(香)委員 新しい制度になりまして、選択肢がふえたということは確かだと思います。  農家と事業者との間での年間契約というものはやはり崩れてはいけないということもよくわかるわけですけれども、ただ一方で、生乳委託の途中解約というのも出ていると一部報道で出ておりまして、信義則に逆らっている事例というのが報告されているのかどうなのかということについてお伺いをしたいと思います。
  50. 枝元真徹

    枝元政府参考人 お答え申し上げます。  生産現場からの問合せ等によりまして、生乳取引契約の途中解約の事例も生じているということは承知をしてございます。  生乳は毎日生産されるものでございまして、安定的に牛乳・乳製品を消費者に供給するためには、年間を通じた契約に基づいて取引することが重要であるというふうに考えてございまして、改正畜産経営安定法の施行に当たりまして、法令の運用を示した生産局長通知におきましても、生乳取引の契約は年間契約を基本とすることと示しているところでございます。  そのため、農林水産省といたしましては、引き続き、契約遵守の重要性や、年度途中での一方的な契約破棄は、指定事業者による、生乳取引の申出を拒むことができるということにつきまして、生産現場への周知を図っていきますとともに、問合せ窓口を通じた相談、また、事案に応じましたQアンドAの整理等を通じまして、制度の円滑な運用に努めてまいりたいと存じます。
  51. 石川香織

    ○石川(香)委員 生産者事業者、またメーカーも含めて、しっかりバランスを保ちながら、今こうして安定的に需要と供給のバランスが保てているわけでありますので、この信頼関係が崩れるようなことはあってはならないということであります。  この改正畜安法については、これまで国会でさまざま議論がなされてきた中で、懸念も多く指摘をされてきたと思います。  共販体制でありますけれども、これは酪農家の収入増を目指してつくられた仕組みであります。乳業メーカーとしっかり対応をしていくためには、生産者が結託をして指定団体が集乳するという仕組みが非常に大事でありますが、これは、参加する酪農家が少なくなると成り立たなくなる制度でもあります。  現に、中央酪農会議は、ことしの事業計画の中で、生乳共販を強化するということも掲げております。  新しく補給金をもらう事業者が登場したことで、先ほどの小里副大臣の御答弁の中にもありましたが、一種の生乳流通ルートが広がって、そして地域のブランド牛というものも誕生するということ、新しい挑戦をする雰囲気もつくられたというのはいい側面だと思いますけれども、一方で、生産者が複数の事業者に出荷することができる、いわゆる二股出荷も可能になったことで、やはり需給の安定ですとか信頼関係、収入がふえたか減ったかということも含めて、影響が出るのかどうかは長期的に見ていかなくてはいけない点だと思います。  また、九月に北海道胆振東部地震もありましたので、それぞれの立場でいろいろな課題が見つかったと思います。これから夏場にかけて需給が逼迫することの懸念、それから、都府県の産地が牛乳を供給し続けていけるのか、また、離農という問題も大きな課題一つであります。そして、自由化に伴ってどんどん乳製品の輸入が拡大していく中で、国内の需給動向というものもしっかり見きわめる必要があると思いますので、引き続き、このあたりについて、また今後議論をさせていただければと思います。  それから、先月から、五年に一度の酪農・肉用牛近代化方針の策定に向けた議論が始まりました。本格的な議論は大臣による諮問後の秋以降になる見通しだということでありますけれども、今回は先行して農家から意見聴取をするということから始めたということでありますが、過去の流れから見ても異例の対応だということで聞いておりますが、その意図をお伺いをしたいと思います。
  52. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 御指摘のありました酪肉近は、来年春に五年目を迎えることになります。その見直しに当たりましては、これまでも食料・農業・農村基本計画と並行して検討を行ってきたところでございます。  これまでの酪肉近の検討におきましては、委員と役所間での議論が中心でありましたことから、畜産農家等の方々への浸透に不十分な面があったと考えております。このため、酪肉近についても、基本計画と同様に、現場の声に耳を傾ける観点から、まずは畜産農家等からヒアリングを行い、食料・農業・農村審議会畜産部会においてヒアリング対象者と委員との間で活発な議論をいただきながら、その内容を整理をした上で、本年秋ごろをめどに諮問を行うとしたところでございます。このような進め方をすることによりまして、現場課題を踏まえたより深い議論が行われることとなり、酪肉近の見直しに向けた審議が充実するものと考えているところでございます。  このような進め方につきましては、本年四月の食料・農業・農村審議会畜産部会においても了承をされたところでございます。
  53. 石川香織

    ○石川(香)委員 現場の方の声に耳を傾けるというのは、本当にとても大切なことだと思います。  私も、毎年ゴールデンウイークは研修期間と称しまして、ことしは更別で酪農研修をさせていただきましたけれども、やはり、思った以上に酪農、搾乳というのは本当に大変だなということが初めてわかるわけでありまして、引き続きその姿勢を貫いていただきたいと思いますけれども、では、実際に農家からどのような声が上がったのかということについても教えていただきたいと思います。
  54. 枝元真徹

    枝元政府参考人 お答え申し上げます。  四月の二十二日に開催いたしました本年度第一回の畜産部会におきましては、肉用牛の生産がテーマでございましたけれども、三代にわたりまして経営を継承するとともに協業経営も行っていらっしゃる農家、肥育牛の一部をみずから販売している家族経営の農家、キャトルステーション、キャトル・ブリーディング・ステーションを運営し地域の担い手育成に取り組む農協からヒアリングを実施いたしました。  そのヒアリングにおきましては、和牛の消費を拡大し枝肉価格を維持するためのさらなる輸出拡大に取り組むべきである、地域の生産基盤を維持していくためには若い担い手をいかに育成していくかが課題、牛ふん堆肥を活用する方が少なくなっており堆肥の利用を考える必要がある、畜産に携わる女性が活躍する機会をふやすことが必要等々、さまざまな視点から御意見をいただいたところでございます。  次回以降、酪農の生産現場、また畜産物流通の関係者から御意見をいただきたいというふうに考えてございまして、このような進め方をすることによりまして、現場課題をよく踏まえて、酪肉近の見直しに向けた議論を行ってまいりたいと存じます。
  55. 石川香織

    ○石川(香)委員 どの御意見も本当に重要なことでありまして、私も、改めて勉強しなくてはいけないなと思っております。また、よりこれからも農家の方を守る、家族経営を守るということで、しっかりとした議論を続けていければと思います。  質問を終わります。ありがとうございました。
  56. 武藤容治

    武藤委員長 次に、堀越啓仁君
  57. 堀越啓仁

    ○堀越委員 立憲民主党・無所属フォーラムの自称自然系国会議員の堀越啓仁でございます。きょうもよろしくお願い申し上げます。  早速質問に入らせていただきたいと思いますが、まず最初に、私のライフワークとも言えるアニマルウエルフェアについて伺いたいと思っております。  ことしの二月一日に、日本とEUでEPAが発効いたしました。これがアニマルウエルフェアにとって非常に重要な点になるということをお話しさせていただきたいと思います。  まず、日本の約九四%、EUの約九九%の品目で関税を撤廃し、そして電子商取引などの経済ルールを整える、世界国内生産の二七・八%、また世界貿易の三六・九%を占める巨大な自由貿易圏がこのEPAによって誕生したわけでありますが、この協定の中にアニマルウエルフェアについて記されております。  協定本体の第十八章「規制に関する良い慣行及び規制に関する協力」の第B節に「動物の福祉」があります。その条文、十七条第一項には、「両締約国は、それぞれの法令に関する相互理解の向上を目的として、飼養された動物に焦点を当てた動物の福祉に関する事項につき、相互の利益のために協力する。」となっております。  このことを担保するために該当する法令は、やはり環境省所管、そして、議員立法であり、今まさに議論されている動物愛護管理法以外にないと考えておりますが、現在、残念ながら、このアニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針は、国のものではなく、公益社団法人畜産技術協会のものでありまして、実施させるための強制力を持っておらず、実効性はないというのも認識をしております。  そこで、念のための確認になりますけれども、EPA協定の中で規定されている国内の動物の福祉に関する法令というのは一体我が国で何を示しているのか、外務省の見解伺いたいと思います。
  58. 飯島俊郎

    飯島政府参考人 お答えいたします。  委員指摘の条文におきましては、日・EU双方が、動物福祉に関する日・EU双方の法令への理解を深めることを目的とし、そのために、双方同意のもとで協力の対象となる動物の範囲等を定める作業計画を策定し、また、動物福祉の分野における情報交換等や協力促進の可能性の探求のため、動物福祉に関する技術作業部会を設置することができる旨を規定しております。  対象となります法令等を含め、日・EU間の具体的な協力の詳細に関しましては、今後EU側と協議をしてまいることになりますので、その中で決められることになるというふうに承知しております。
  59. 堀越啓仁

    ○堀越委員 ありがとうございます。  そうなんですよね。国内で設置しなければいけないこの技術作業部会、設置することができる。これは進めていかなければいけない喫緊の課題だというふうに思っております。  先ほど御答弁いただいた、この設置準備が進んでいるのか伺いたいと思いますが、これはやはり、世界のアニマルウエルフェアの変革の速さを考えると、一刻も早く設置して、日本も、世界で通用する専門知識及び経験、これを吸収した方がよいと考えております。この準備が進んでいるのかということについて一点伺いたいのと、また、いつごろをめどに設置される予定か、そして、第二項の進捗状況、見通しについて、外務省の見解を引き続き伺いたいと思います。
  60. 飯島俊郎

    飯島政府参考人 お答えいたします。  現時点におきましては、動物福祉に関する技術作業部会はまだ設置されておりません。  今後、この条文の趣旨に鑑みまして、EU側と協議を行い、動物福祉に関し、日・EU双方の利益にかなう形で協力を促進していく可能性を探求してまいりたいと考えております。  この技術作業部会につきましては、日・EU双方の事務レベルの調整を経て、年一回開催されます合同委員会の方で決定されることになりますので、今後、この合同委員会における議論を念頭に準備を考えてまいりたいと考えております。
  61. 堀越啓仁

    ○堀越委員 年一回の合同委員会議では、いろいろ議論されているのは、これは私は評価しておりますが、やはりアニマルウエルフェアにとって実効性があるかどうかと言われると、現場はそうではない状況にありますので、これは、二月の段階でEPAが発効され、そして、この条文を目にした段階で、現在もなおまだこの技術作業部会が設置されていないというのは私は本当に遅いと思いますので、ぜひ加速して進めていっていただきたいと思います。  私は、やはり日本の畜産業を守りたいと思っているわけです。守るためには、やはりこのアニマルウエルフェアへの取組が必須であるということを訴え続けてまいりましたし、これからも訴え続けてまいります。  まさにEPAを通じてこのことが明らかになったんだと私は思っています。EPAに対して私たちは反対の立場をとらせていただきました。しかし、こうして締約国となったからには、日本の産業、農業、畜産業を守るためにも、世界のアニマルウエルフェアの加速度合いにまず追いついていくこと、そして、追いついていった先に、日本の畜産業を外に売り出していくためには、それを飛び越えないといけないという非常にハードルが高い課題がたくさん残されていると思いますので、ぜひこの辺、更に加速して進めていっていただければというふうに思っております。よろしくお願いいたします。  それから、また動物福祉関連のことにつながりますが、今問題となっています豚コレラの対応についてでございます。  先週も愛知県で発生してしまいまして、いまだに終息の気配がない豚コレラでございますけれども、昨年の九月から発生して、そして、殺処分の数というのは約八万九千頭と非常に大きい数に及んでおります。発生農家の皆さんやあるいは周辺の都道府県の関係各位の皆さん方の御尽力は多大なるものであると思いますし、大変な御苦労をなさっているということは当然推察いたします。  また、殺処分の現場でかかわっておられる皆さんは、ふだんから殺処分の現場で働いておられる方々だけではありませんので、自衛隊の皆さんやあるいは関係行政の皆さんにとっては、本当に大変な心的ストレス、精神的ストレスであるというふうに思います。  この殺処分が、やはりその拡大を未然に防いでいくという対策の観点から非常に重要なことであるというふうに思いますが、この殺処分について、アニマルウエルフェアの観点から、やはり、殺処分の工程、作業の中で、動物への負担や苦痛、ストレスの軽減について考慮されているのかを確認したいと思います。  環境省告示の動物の殺処分方法に関する指針には次のように書かれているんですね。「殺処分動物の殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。」というふうに書いてあります。  環境委員会に私も属しておりますので、私が申し上げるのはまことに残念でございますけれども、この指針は大変曖昧でございます。いわゆる、化学的又は物理的方法を使って苦痛を与えないで殺しなさい、そして、殺す際には意識を喪失させてから殺しなさいということが書かれている。そしてさらに、社会的に容認される通常の方法を用いる。非常に曖昧模糊としているわけです。  しかし、我が国がかかわってきて、さらに、策定されている国際獣疫事務局、OIEによる具体的で詳細かつ専門性の高い規約というのがあります。その規約、これが疾病管理を目的とする動物の殺処分という項目になりますが、これは、まさに今回の豚コレラのような疾病発生時に適用されるものであると考えられます。  OIEの動物福祉規約には、これもやはり強制力はありませんが、遵守することを目的として日本も批准し、策定にかかわっていると思いますので、これは大変参考になる規約でありますから、これを現在の豚コレラに係る殺処分に適用しない理由はありません。  また、畜産物というのは国際的に流通するものである性格を持っておりますので、豚コレラなどの疾病が国際的な観点から防がなくてはならず、また、世界じゅうで日本の豚コレラ事情もニュースになる事象があることを考えると、やはり、動物の殺処分方法に関する指針に書かれている社会的に容認される通常の方法というのは、国際基準でもあるこのOIE規約で規定されている方法と捉えるべきではないかと私は考えております。  そこで、農水省伺いたいんですが、今回の豚コレラに係る殺処分の方法に関して、現在、各都道府県にOIE規約の周知徹底及び規約遵守の指導などはなされているのかをまず伺いたいと思います。
  62. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  まず、OIE基準の周知徹底でございます。  防疫の主体となりますのは都道府県でございます。私どもといたしましては、このOIE基準、批准したときに、各都道府県に対しまして、殺処分のみならず、実際の飼養衛生管理、それから実際の家畜を飼うときに関しましてもOIE基準の精神にのっとってやるようにということで周知を徹底しているところでございます。  それから、特に防疫に係ります殺処分につきましては、OIE規約も参照しながら、実際に防疫作業に現場で携わる方々、まさに都道府県あるいは国の職員、それから自衛隊等に御協力をいただいているということでございますので、具体的な作業手順も含めました標準的な防疫マニュアルというのをつくっておりまして、それを都道府県と共有し、現時点ではそれを運用しているところでございます。
  63. 堀越啓仁

    ○堀越委員 続けて伺いたいんですが、OIEの規約では、新生子豚、つまり離乳前の豚を除く飼育豚を炭酸ガスで処分することは容認されておりませんが、その点に関して農水省見解伺いたいと思います。
  64. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  炭酸ガスによります処分につきましては、新生豚については炭酸ガスが適した方法というふうにされております。他方、二酸化炭素への暴露が意識の即時の喪失をもたらすことはなく、アニマルウエルフェアにとって重要な注意事項であるというふうにこの指針に書かれておりますけれども、実際に禁止をされているわけではないというふうに認識をしております。  また、先ほど言及がございました疾病管理を目的とする動物の殺処分におきましては、アニマルウエルフェアに加えまして、当該方法の費用、作業者の安全、バイオセキュリティー及び環境面に焦点を当てるものとするというふうに書かれております。  実際、標準的な防疫マニュアルにおきましては、今お話がありました炭酸ガスも含めまして、複数の殺処分の方法を提示をしておりまして、現場におきまして、いろいろな状況を捉えながら、それらを組み合わせて活用しているというふうに承知をしているところでございます。
  65. 堀越啓仁

    ○堀越委員 先ほど御答弁いただいたとおりだと思います。  このOIE規約に関しては、炭酸ガスで飼育豚を処分することは禁止はされていない。しかし、OIE規約の一番の目的は、やはり動物に対する苦痛を減らすということ、身体的苦痛、精神的苦痛を減らすということですので、その観点から鑑みれば、やはり炭酸ガスでの殺処分は非常に苦しい殺処分の方法だと言わざるを得ない状況であると私は認識しております。  その上で、OIEがなぜ離乳前の豚は炭酸ガスで殺すことを容認しているのかというと、ほかの殺処分方法が効果的ではないからでありますので、この辺についてはぜひお酌み取りをいただいて、先ほど各都道府県にOIEの規約の周知徹底を取り組まれているという御答弁をいただきましたが、まだまだ実効性がないやに思えますので、このあたりをしっかり厳しくチェックもしていただいて、取組をしていただきたいと思います。  この後に、私、述べさせていただきますけれども、それは、現場で働いておられる、殺処分をされておられる方々の精神的ケアにもつながる大事な観点だと思いますので、引き続きよろしくお願いします。  そしてさらに、この大変な状況の中で、殺処分における死亡の確認、どのように行われているのか、気になるところであります。  国内ではパコマ等の逆性石けん製剤、これは消毒薬に使われるものですが、この消毒薬を心臓に注射する方式がとられていることがありますが、子豚であれば、心臓部に注入した場合で数秒から三十秒ぐらいかけて死亡します。しかし、心臓部から外れてしまえば、十分程度苦しみ続けて死ぬことが報告されています。  パコマというのは血液を凝固させる作用を持っていますので、心臓にダイレクトに注射することによって効果を発揮する。しかし、そこから外れてしまえば、やはり苦痛の時間が長くなってしまうという性質を持っています。当然、日々行っている養豚農家さんでも失敗することがたびたびあるというものですから、大量の豚を前に数名の獣医師が打ち続ける中であれば、失敗は必ず発生してしまいます。また、その周辺に詰めている人も、先ほどお話がありましたけれども、自衛隊員であるなど、当然、ふだんからそこに従事されておられない方々であると思いますし、適切な移動方法などがとられているかどうか判断するための知識を持っていないというところだと思います。  先ほど御答弁いただいたように、OIEの規約の周知徹底を図っていくんだということでお話しいただきましたが、やはりスキルとしてしっかり身につけるためには膨大な時間が必要になりますし、高度な専門知識が必要になりますから、そうした観点からも、やはり現状、難しいというふうに言わざるを得ない状況だと思っています。  そして、それをやはり裏づけるのが、二月八日、産経新聞に掲載されておりましたが、「愛らしい子豚を正視できない隊員や、豚舎に悲鳴が響き渡るのに悩まされる隊員もいた。」と書かれていますが、やはりそれではだめなんです。打ち損じた場合の早急な苦痛の軽減はどのように行われているのか、また、動物の状態を確実に死に至るまで確認できているかどうか、そういう細かい点まできちんと指導していくことがアニマルウエルフェアの向上につながるわけです。  人も動物も、精神的負担、身体的負担とともに、最も大きいのがこの殺処分にかかわる作業であるということは間違いありません。アニマルウエルフェアの徹底は、現場の人の精神的負担を含めたストレスを軽減します。  そこで、伺いたいんですが、詳細な殺処分に係るマニュアルの作成及びアニマルウエルフェアの徹底できる体制を構築することが改めて有益であると考えておりますが、農水省としての方針をお答えいただければと思います。
  66. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  現場での防疫措置、すなわち殺処分におきましては、関係する皆様方、大変な御苦労の中で実施されていることは承知しているところでございます。動物のみならず、作業に携わる方々も非常に心身面あるいは医療面でストレスを感じているということもございます。  そういうこともございますので、防疫指針の中でも、所有者それから防疫措置の従事者の心情にも十分配慮するということで、両県におきましては、医療面、心理面での相談窓口を設置して、心理的なケアあるいはその後の医療的な措置というのを実施しているところでございます。  委員指摘がありましたとおり、実際の殺処分は、非常に限られた時間の中で確実にやる、ウイルスの蔓延を防止するという非常に限られた時間軸の中で行っているということでございますけれども、それぞれ作業される方の意思疎通、それから、それぞれ県あるいは自衛隊との連携を密にしていくという中で、動物福祉の観点から、鎮静剤の使用や可能な限り豚に苦痛を与えない方法というのを実施していくということで、今後も改善を進めてまいりたいというふうに考えております。
  67. 堀越啓仁

    ○堀越委員 前向きな御答弁をいただきましたので、それが実効性があるものにぜひ進めていただきたいと思います。  二月八日の産経新聞に掲載されていたこのコメントは、私は本当にそのとおりだと思います。私も想像するだけでもかなり胸が苦しくなってしまう、そういう現場がまさに広がっているというふうに思います。  私は、実は天台宗の僧侶でありまして、僧侶としてこの三十九年間生きてきたわけですけれども、日本の仏教、僧侶は、大乗仏教という仏教の流れをくんでおりますので、肉や魚を食べるわけですね。そうは言っても、修行の際には、精進料理で辛みの少ない、ニンニクやあるいはにおいの強いものは一切とらないという精進料理でやってきましたが、やはり今は私も肉を食します。  肉を食す際、肉だけではない、食べ物全般を食べるときに、皆さん、食卓に手を合わせて、いただきますというふうに言うと思います。このいただきますというのは、つくってくれた方々に対するいただきますではなくて、与えていただいている命に対する感謝をしっかり持つということが基盤にあると思います。なので、私も、肉を食べるときにはこの感謝の念を忘れたことはありません。  しかし、このように殺処分が行われている命に対してどのような感謝の念を向けたらいいのかということを考えれば、やはり、感染を拡大しないために命を賭してもらえた、そのことに対する感謝の念を持たなければいけない。そして、その命に対して、命への尊厳を持たなければいけない。それがやはりアニマルウエルフェアだというふうに思っております。  そして、そうしたアニマルウエルフェアを殺処分の現場にもしっかりと浸透させることによって、作業をされる方々の精神的苦痛、身体的苦痛は確実に軽減されるはずですので、ここはますます、しっかりと実効性のあるものに変えていっていただきたいというふうに思いますので、あわせて、重ねてお願いを申し上げます。  次に、SDGsと我が国食品ロス削減や食品リサイクルの取組についてお尋ねします。  これも、私がライフワークとして日ごろから取り組んでいることに直結する、非常に関心の高いことでありますので、御答弁いただければと思います。  御存じのとおり、SDGsは、十七の目標と、そして百六十九のターゲットがあるわけですが、この目標のうち、農林水産行政に非常に深く関係している目標は多くあります。  このSDGs、目標十二の持続可能な生産消費形態の確保では、三番目のターゲットとして、二〇三〇年までに小売、消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産、サプライチェーンにおける食料の損失を減少させることが挙げられているほか、五番目のターゲットとしては、二〇三〇年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減することが挙げられており、食品ロスの発生抑制や再生利用は持続可能な生産消費形態を確保するためにも重要であることが国際的な共通認識であります。我が国政府も、これらを踏まえて施策を推進していると承知をしております。  今国会で私が所属をしております消費者問題特別委員会で、先週、委員長提案で、超党派で、食品ロスの削減の推進に関する法律案が全会一致で起草され、本会議で可決、参院へ送付され、本日、まさに同時刻で開会しております消費者特で可決される見通しでございます。  この議員立法の法案は、国民運動として食品ロスを推進するために必要な措置を定めたもので、手前みそではありますが、私もこの決議文を作成、そして各党を回って取りまとめをさせていただきましたので、本法案が今国会で成立するのを私も心待ちにしております。私も、もともとフードバンク活動も行っていた観点からも心待ちにしているところでございます。  そこで、食品ロス削減推進法が成立間近な中で、改めて、このSDGs等、挙げられた目標を踏まえて、食品ロスの削減、食品リサイクルの推進に農水省として今後どのように取り組もうとしているのか、基本的な考え方を吉川大臣にお伺いしたいと思います。
  68. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 食品ロスは今や世界的な問題となっておりまして、今、堀越委員指摘のように、国連のSDGsにおいて、二〇三〇年までに小売、消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品ロスを半減させるなどの目標が設定をされているところでもございます。  先般のG20新潟農業大臣会合におきましても、G20がフードチェーン全体にわたる食品ロス削減に主導的役割を担うべく努力していくことが宣言をされたところでもございます。  我が国におきましては、食品ロスが平成二十八年度において約六百四十三万トン、このうち、食品関連事業者からは三百五十二万トン発生をいたしているところでございます。これらの食品ロスの削減に向けまして、いわゆる三分の一ルールの見直しなどの事業者の商慣習の見直し、生産、流通などの過程で発生する未利用食品を必要としている人や施設等に提供するフードバンク活動、AIや気象情報活用した需給予測の精緻化などの取組を、農林水産省といたしましては、関係省庁とも連携しながら強力に推進をしてまいりたいと思います。
  69. 堀越啓仁

    ○堀越委員 ありがとうございます。  吉川大臣から力強い御答弁をいただきました。  私も、このことについては、本当に、ぜひ国が主導を切って、官民ともに取り組んでいかなければいけない大きな問題だと思いますので、農林水産の役割というのは非常に大きいと思います。どれも本当に、食品ロス、リサイクルの概念から重要な御答弁だったというふうに思います。  その食品リサイクルの件に関して、非常によい取組をされておられる方々もたくさん私も承知をしておりまして、群馬県でありますと、豆腐で有名な相模屋さんから出るおから、これを環境システムズさんが、いわゆる乳酸菌を添加をして発酵させて、それをもとに豚の餌をつくって、そして、その餌をもとに豚を飼育して、そこから肉をとり、さらに、地元の小麦とあわせて、十文字うどんというのをつくったりしているんですね。  こういう一次産業からの六次産業化というか、地域で循環する経済圏をつくっていくためにも、この食品リサイクル、食品ロスの削減というのは非常に重要だというふうに思っておりますので、引き続き、この点についてもお願いしたいと思います。  あと、この辺は所感になるんですが、SDGsに対する農水省取組でいえば、この食品ロス、リサイクルだけではありません。  やはり、ゴールの中の十四、十五、いわゆる海の、海洋の豊かさを守るであるとか、あるいは陸の、森の、山の豊かさを守る、こういったところにも農水省が取り組んでいかなければいけない大きな課題が私はあると思っています。持続可能なわけですから、持続可能な農業をつくっていく、そのためには、当然、自然資本としての十四、十五のゴールを達成するために農水省も取り組まなければいけない。  その一つが、今、世界各国でも注目がされておりますし、この日本においても注目されてきているのが、やはり農薬の問題でありまして、ネオニコチノイド系の、一九九〇年代から使われている農薬ではやはり昆虫が多く減少していってしまうというデータがありまして、EUではこれは禁止されている。そして、アメリカや韓国や中国でも規制が進んでいる。我が国日本では、残念ながら、規制どころか拡大してしまっている、こういう状況もあります。  私は環境委員会なので本当によくわかるんですが、昆虫が激減しているというデータ、これは本当にまさにありまして、二〇一九年の二月には、オーストラリアの研究チームで、これまで発表された七十三件の調査報告がまとめられて、世界の全昆虫類の四〇%がここ数十年の間に地球上から姿を消すおそれのあることが公表されています。昆虫の絶滅のスピードというのは、哺乳類あるいは鳥類よりも八倍速いと指摘されているんですね。  昆虫がいなくなると、当然ですが、持続可能な農業というのはできません。今、一部では授粉をする小さいロボットなんかも開発されているようですが、そこに頼るのではなくて、本当に持続可能な農業ということを考えていくには、昆虫が生きられる、そういう持続可能な自然資本の上に農業が存在しているんだということをやはり私たちはもう一度しっかり議論しなければいけない、そういう新しい時代に入ってきているんだというふうに思っておりますので、この点につきましても、ぜひまたこの委員会の中で議論をさせていただければというふうに思います。  次に、野生鳥獣害による農産物の被害の防止対策について伺いたいと思います。  私の生まれ故郷はネギとコンニャクで有名な下仁田町でございまして、やはり鳥獣被害が深刻化している中でございます。  少し前になりますけれども、平成二十二年の段階で、同町、下仁田町における猿の被害対策などの取組がすぐれた鳥獣被害対策であるとして、農林水産省実施する鳥獣被害対策優良活動表彰で農林水産大臣賞を受賞するなど、地域一体となった総合的な取組を展開しております。  そのような効果もあって、群馬県の野生鳥獣による農作物被害金額というのは、平成二十六年度では約四億二千四百万でしたが、それ以降は毎年減少しておりまして、平成二十九年度は約三億九百万と平成二十六年度の約七三%となったわけですが、しかし一方で、いまだに県内広域で被害報告はありまして、中山間地域から平たん地域へ被害の拡大傾向が続くなど、引き続き対策が求められます。  私も、国有林野に関する質疑のときにお話しさせていただきましたが、植林のイベントで昨年植えた杉が、本当に新芽の部分だけしっかりと食べられておりまして、非常に悲しい思いもしましたが、こういった被害はまだまだ続いております。  昨年十月の農水省の報道発表によりますと、鳥獣による平成二十九年度の農作物の被害は、被害金額約百六十九億円で、前年に比べ約八億円減少するなど、これは平成二十四年度の約二百六十億円から五年連続で減少しているということで、近年、被害は減少しているというふうに承知をしております。  一方で、野生鳥獣による農作物被害は、確かに数字の上では減少しておりますけれども、農業者の経済損失のみならず、当然、植えても食べられちゃうだけだったらば、やはり意欲の減退にもつながる大きな問題ですので、継続的な対策が必要であるというふうに考えております。  例えば、政府が平成二十五年十二月に挙げた、鹿、イノシシの生息頭数を十年後までに半減との目標の達成状況、これらがどういう状況であるのかというのを伺いたいと思います。また、それとあわせて、野生鳥獣の生息域拡大と、狩猟者の高齢化、そして、鳥獣被害対策におけるICTの活用状況。  さらに、近年、とったものをジビエとして活用する動きが広がっていることなど、鳥獣害対策を取り巻く課題は少なくないと思います。これについて、地域の実情を含めた状況等はどうなっているのか。また、野生鳥獣による農作物被害の防止対策やジビエの利活用について今後どのような施策を進められていくおつもりなのか、農水省伺いたいと思います。
  70. 小里泰弘

    ○小里副大臣 野生鳥獣による農作物被害は、御指摘のとおり、営農意欲の減退など、被害額として数字にあらわれる以上に深刻な影響を及ぼしているものと認識をしております。  鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、地域ぐるみで行う侵入防止柵の設置や捕獲活動等への支援を行うほか、被害が増加傾向にある市町村に対して、農林水産省の職員が直接訪問をいたしまして、被害対策のポイントに係る情報提供や地域における課題について聞き取りを行うなどの鳥獣被害防止キャラバン等を実施をしているところであります。  また、捕獲鳥獣につきましては、そのほとんどが埋設や焼却により処分されているところでありますけれども、ここにおけるジビエ利用を推進をしまして農村地域の所得につなげることが、地域活性化の観点からも重要であると認識をしているところであります。  鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、処理加工施設の整備やジビエカー、いわゆる移動解体処理車の導入等に対し支援を行っているところであります。  農水省としましては、地域の実情に応じた対策を推進することが極めて重要と考えておりまして、引き続き、効果的なさまざまな取組を推進することによりまして、鳥獣被害の低減に努めてまいります。
  71. 堀越啓仁

    ○堀越委員 さまざま御答弁いただきました。  直接出向いて被害のポイント等々を御指示をいただくですとか、侵入防止柵なども取組の中にあると思います。  しかし、先ほどジビエの件に関してありましたように、やはり、とっても、ジビエで活用するのは限界があるんですね。  そこで、私がぜひ取り上げていただきたいのは、ワイルド・ミート・ズーという活動がありまして、我が党の部会の中でもヒアリングさせていただいたんですが、これは動物福祉の概念ともすごくマッチングするんですけれども、動物園の肉食系の動物に、低温処理をされた動物を頭の部分を除いてそのまま与えるというものです。  野生動物は、本来は食べることに対してすごく時間をかけるわけです。とることに対してもそうですが。しかし、動物園の動物はそうではありません。そうすることによって何が生じるかというと、非常に大きいストレスを感じるんですね。ストレスの結果、動物園のおりの中でぐるぐるぐるぐる、行ったり来たりしている行動を見られた方がいらっしゃると思います。あれはストレスが極度に達したときにあらわれる常同行動というものでして、この常同行動を減らすことにもつながるという非常にすばらしい取組だと思います。  この点についても、新しい取組として、もちろんこれだけでは限界だと思いますが、新しいことも含めながら議論をさせていただければというふうに思います。  質問時間が終了いたしました。これで質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
  72. 伊東良孝

    ○伊東委員長代理 次に、緑川貴士君。
  73. 緑川貴士

    ○緑川委員 皆様、午後の審議も大変お疲れさまでございます。国民民主党・無所属クラブの緑川貴士です。  農水省がこのほどまとめた、農産物規格・検査に関する懇談会、その中における中間論点の整理というものが、ことしの三月二十九日に、その日付で発表されております。  お手元に資料を今お配りしておりますけれども、これは、一九五一年に生まれた農産物検査法、戦後の食糧難の時代に国民に米を配給する必要性があって制定されました。農産物の見かけ、外観、そして、米の場合には、精米にした場合の歩留りなどを重視した規格に基づく検査制度ですけれども、これは時代に合わせて見直しが今必要になっているところでございます。  一枚目の資料1をまずごらんいただきたいんですが、今回、その中で、主な論点、あるいは中間論点整理というふうになっていますが、まずお尋ねをしたいのが、この議論の進め方であります。  懇談会というふうには言っていますが、消費者の利益や流通全体の秩序を守るための農産物の規格や検査、その見直しを進める重要な会議です。  参加された方々は、まず、どういう基準に基づいて選ばれたのかはっきりしていません。この人がいい、悪いと言っているのではないんです。お招きした基準をまず教えていただきたいと思います。
  74. 天羽隆

    天羽政府参考人 お答え申し上げます。  農産物規格・検査に関する懇談会でございます。これは、農業競争力強化支援法などにおきまして、「農産物流通等に係る規格について、農産物流通等の現状及び消費者の需要に即応して、農産物の公正かつ円滑な取引に資するため、国が定めた当該規格の見直しを行う」と規定されていることを踏まえまして、農産物規格、検査につきましては、農産物流通の変化や技術の進展等を考慮しつつ、流通の合理化等の観点から課題を整理し、見直しの方向性検討を行うため、農林水産省政策統括官主宰のもとということで、私の主宰で農産物規格・検査に関する懇談会を開催したところでございます。  この委員の構成でございますけれども、中食事業者農業法人の関係者、消費者団体の方、卸売業者の方、生協の方、農協系統の方、弁護士の方といった構成で検討をしていただきました。
  75. 緑川貴士

    ○緑川委員 関連の企業、団体、こうしたものの議論の中で、議事録が残っておりますけれども、私もこれを拝見させていただきましたが、まず重要なのは、この参加者それぞれの御発言です。  外食関係者はこのように言っています。「外食の代表ということでご出席させていただいておりますが、外食といえども千差万別、どこまでお米に力を入れているかと、その企業の姿勢が出ておりますので、本日は当社の内容について発言させていただきたい」。生協の関係者はこういうふうに言っています。「生協全体で議論をしたという経過もなく、また、各会員生協のところでもそれぞれ意見があるので、今日、私のところでは、生協の立場ではありますけれども、生協の米に携わる者として、実務に携わる者として発言をしたい」。NPO法人の関係者。「消費者の意見というものも決して一致しているわけではなくて、いろいろなやはりご意見を消費者は持っているということを考えながら、私自身も発言しないといけないのではないか」というふうに、これは、一つの企業、一団体、あるいは一個人としての御発言、こういう、冒頭、御本人が断って発言をされています。  本来なら、各委員の発言は、やはり数多い意見一つとして扱われるべきではないだろうか。そういう発言を、一部、こういうふうに、ごらんのようにまとめながら、はい、主な論点ですというふうにしているのは、これは恣意的ではないですか。
  76. 天羽隆

    天羽政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘の資料の1、農産物規格・検査に関する懇談会における中間論点整理の左側、主な論点等というのがございます。これは、例えばということで申し上げますと、この(3)にあります着色粒の基準のところでございますが、一つ目の丸にございますとおり、生産者及び集荷業者、大型乾燥調製施設の約五割が着色粒の基準は現状のままでよいとの意見である一方、生産者の約三割、集荷業者、大型乾燥調製施設の約四割が緩和すべきとの意見、地方自治体からも着色粒の規格の廃止や見直しを求める意見がある等々ございますが、一つ目の丸につきましては、私どもが実施をさせていただきましたアンケートの結果の概要から引っ張ってきたものでございますし、二つ目の丸につきましては、一定の期間でありますけれども、地方自治法に基づきまして私どもが受け取った意見書を要約しておるものでございます。
  77. 緑川貴士

    ○緑川委員 御答弁いただきましたので、細かいんですけれども、生産者及び集荷業者、大型乾燥調製施設の五割が現状のままでいいという意見がある一方で、生産者の三割、集荷業者、大型乾燥調製施設の四割が緩和するべきという意見。  これに対して、同じ農水省のアンケートでも、これは別の問いで、着色粒の緩和をするべき、強化するべきという、複数回答、いろいろな要素の中での着色粒というふうに規定がありましたけれども、これを緩和するか強化するべきかというのについては、緩和するべきが百五十八件です。それに対して、強化するべきというのが四、五件でした。つまり、この別の問いの中においては、着色粒を緩和すべきという意見が九八%にも上っている。こういう別の問いでもあるんです。一部の問いだけを切り取って、このように主な論点というふうにしているのは、やはり違う。  時間がかかってしまいますので、ちょっと進めたいと思うんですが、着色粒の基準の項目、載せている中で、着色粒、そもそも、カメムシが飛来してきた、その田んぼの稲についている米の栄養を吸ってしまうことで米が黒くなったり斑点のお米ができてしまう、こういったものは着色粒です。  資料の中のこの主な論点を見ても、丸の上から三つ目、基準緩和すると農薬を使わなくなって混入割合が大きくなるという意見もありますが、岩手県の農業研究センターでは、薬剤防除の面積と斑点米の混入割合の相関関係は小さい、つまり、稲につくカメムシを退治するネオニコ系農薬による防除を行っても、それを行わなくても、着色粒の発生割合への影響は小さいという分析が出ています。  また、秋田県の農業試験場のデータでは、農薬による防除を十年以上行わなかった場合でも、その田んぼでの着色粒の混入割合は平均で〇・三八五%です。一等米の着色粒の厳しい混入限度が〇・一%。防除しなくても平均でこの数字なんですね。混入割合が極端に大きくなるわけではないんです。  等級制度を、着色粒混入限度を少し緩めれば、防除によるミツバチ被害を始めとする生態系への影響あるいは環境への影響を与えるような防除薬剤をまく必要がなくなります。つまり、この意見というのは、農薬散布ありきで基準を守るべきという意見でしかないんです。  さらに、丸の下から二つ目をごらんいただきたいんですが、現行の規格より厳格に運用しているが、それでも消費者からクレームが来るというふうに書かれています。果たして、それがどれくらいの頻度なんでしょうか。消費者から上がってくる三大クレームと言われるのは、生協によれば、一つ目が虫が入っている、二つ目がおいしくない、三つ目が米が白っぽくなっている、つまり粉っぽい米、死米とも呼ばれていますが、この三つです。ですから、着色粒、斑点米については、生協によれば、大きなクレームとして上がってこない。  主な論点としているこの意見に対して、あれれと思うことが、これだけでもさまざまあるわけです。反証できることは幾つもあるわけで、こういう論点整理、取りまとめの仕方では、やはり言った者勝ちの世界になってしまう。そういう、一部かもしれないという意見が大勢のように映ってしまうようなこの論点整理、懇談会のあり方、そもそものあり方、違和感を感じてしまうところですが、大臣、御所見いかがでしょうか。  大臣。これは通告は大臣にしています。
  78. 伊東良孝

    ○伊東委員長代理 まず、政策統括官。
  79. 天羽隆

    天羽政府参考人 この懇談会でございますけれども、先ほど申し上げたとおり、農産物の規格、検査につきまして、農産物流通の変化、技術の進展なども考慮をしつつ、流通の合理化等の観点から課題を整理して、見直しの方向性検討を行うということをやろうということで、私の主宰のもと開催したところでございます。  この後、例えば、農産物検査の規格を設定、変更、又は廃止しようとする場合には、農産物検査法に基づきまして、農産物検査法の第十一条第三項に基づきということですが、学識経験者、関係者の意見を聞くということが法律で定まっております。
  80. 緑川貴士

    ○緑川委員 大臣お願いします。通告していますので。
  81. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 今、天羽政策統括官からお答えをいたしたとおりだと思っておりますが、農産物規格、検査の見直しにつきましては、さまざまな立場の方々からの御意見を踏まえて検討を進める必要があると考えております。  本懇談会におきましても、米などの生産、流通、消費にかかわるさまざまな立場の委員方々から幅広い御意見を丁寧に聞きつつ検討を進めてきたところでございまして、ただ、いただいた御意見に関しましては、それぞれしっかりと受けとめて、これからも検討もしていかなければならないと思っております。  中間の論点整理におきましても、着色粒の基準の主な論点について、地方自治体からも着色粒の規格の廃止ですとか見直しを求める意見があるといった形で記載もしているところでもございますので、さまざまな立場の方々からの御意見を丁寧に聞き、今後も検討もしっかりと進めていかなければならないと存じます。
  82. 緑川貴士

    ○緑川委員 さまざまな現場意見を聞いている。私からは、一部の意見を切り取っている。これ以上は堂々めぐりの議論になりますので、先に進めたいと思います。  本当にこういう多様な意見があるんです。整理しなければならないとはいっても、この右にあるような中間論点整理、本当にさっくりまとめましたね。  看過できない表現というのが、下線を引いたところです。「相当なコスト」という言葉。何で、「相当な」というふうに、急に出てくる。余りに唐突であって、まとめ方が粗過ぎると思います。  この着色粒を除去するのに相当なコストがかかるということが、着色粒基準が維持され、等級検査が維持されている根拠になっておりました。つまり、着色粒の混入割合が多い二等米を買った業者は、それを色彩選別機、色選機にかけて着色粒を除去する際にはコストがかかる、だから一等米よりも安く販売をする。すなわち、一等米と二等米のコスト差がこれまでは肯定されていました。  しかし、二枚目の資料2をごらんください。少し前ですが、二〇〇九年の六月、日本消費経済新聞の記事によれば、現場からこのコスト差は妥当ではないという声があって、それを受けて農水省が、「コストが違わないのであれば」「調べてみるしかない」と、言葉、そのままですが、当時の奥原食糧部長が再調査を約束されています。  奥原食糧部長は、その後再調査されたんでしょうか。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 天羽隆

    天羽政府参考人 お答え申し上げます。  約十年前のいわゆる業界紙の報道に関するお尋ねでございますが、当省における担当部長、奥原でございますけれども、色彩選別機による着色粒の除去に要するコストの調査に関しまして、当時、どのような認識のもと、具体的にどのような発言を行ったのかなど、その事実関係について確認することはできておりません。
  84. 緑川貴士

    ○緑川委員 驚きましたね。食糧部長の御発言、記録に残っていないんですか。  残っていないんですか。もう一回聞きます。
  85. 天羽隆

    天羽政府参考人 お答え申し上げます。  きのうの夜、この新聞の切り抜きをいただきまして、調べ始めましたけれども、確認できておりません。
  86. 緑川貴士

    ○緑川委員 あるのかないのかもわからない。  調べて出していただけますか。
  87. 天羽隆

    天羽政府参考人 平成二十一年ということでありますので、おのずと限界はあろうかと思いますけれども、お調べをさせていただきます。
  88. 緑川貴士

    ○緑川委員 再調査したのか、していないかの前に、この奥原部長が、奥原さんがこういった発言をされたのか、されていないのかというのもわからない。  ですが、私が聞いているところの限りでお尋ねをいたしますけれども、奥原さんが再調査を約束されたというふうに言う方がいらっしゃいます。この求める会という方々がそうですけれども、その会によれば、当時の仁井補佐という方から米の検査規格の見直しを求める会に対して連絡があって、奥原部長が再調査を約束したけれども、省内で検討した結果、再調査しないことになったというお答えがこの仁井さんからあったということですけれども、このことについてはいかがですか。
  89. 天羽隆

    天羽政府参考人 お答え申し上げます。  この件につきましても、昨日の夜、お話を伺ったわけでありますけれども、この約十年前の当省担当者の発言でございますが、当時どのような発言を行ったのか、その事実関係について確認ができておりません。
  90. 緑川貴士

    ○緑川委員 この奥原食糧部長の御発言の記録、それが残っているかわからない以上、進めることができません。  まず、探していただいて、その関係資料の提出を、委員長、求めたいと思います。
  91. 武藤容治

    武藤委員長 理事会にて協議いたします。  緑川君、進めてください。
  92. 緑川貴士

    ○緑川委員 いずれにしても、うそをついていないはずですから、こうした現場から上がってきた声に対して、入り口で門前払いというようなことがあってはならないというふうに思います。再調査したのか、しなかったにせよ、この調査に移らなくても、少なくとも何らかの行動が示されたはずです。  少なくとも、このコスト差をいまだに主張されているということは、このコスト差を相当こだわっているというふうにも思えますけれども、時間がないですが、着色粒を除去する際にかかるコスト、少し説明をしたいと思うんですが、資料の三枚目の3をごらんください。  一等米と二等米のコスト差が肯定されていたのはなぜかといえば、3は、二〇〇七年に農水省が出した昔の資料、これに求める会が加筆をした資料です。  四角の中を見ますと、玄米を白米にする搗精の手間が違うことから発生する搗精賃や、また、その右にある歩留りロスというのは、色彩選別機にかけた際に、着色粒だけでなくて、一定程度の普通のお米の粒、整粒も同時に除去してしまうことがあります。着色粒が全くない、混入割合が〇%の一等米と着色粒の混入割合が〇・三%以内で規定される二等米のコスト差は、さまざまな費用に基づけば、一俵六十キロ当たり最大で四百八十六円。ですから、これを理由として、農水省は五百円というコスト差を主張しています。  一方、下の資料4では、一等米で着色粒が最大割合、〇・一%含まれていた場合と二等米の比較では、コスト差はおよそ三百五十六円。  さらに、この三百五十六円でも妥当なコスト差ということにはなりません。というのも、そもそも、搗精賃となっている数字の中には、着色粒の除去とは直接関係ない固定経費が含まれているからです。例えば減価償却費や地代、固定資産税、金利などが含まれています。一等米だって、着色粒が最大で〇・一%含まれていますから、同じように搗精するわけですから、この経費に等級は関係ありません。  こうした過剰な数字を基礎にして、着色粒〇・一%につき一一・一%を掛けるような計算で、コスト差を更に拡大をさせています。実際と余りにかけ離れた机上計算で導かれたコスト差は、やはりこれは不適切なんですね。  搗精の時間については、やはり色選機の年代や機種によっても違うけれども、着色粒の混入割合が〇・三%から〇・五%までなら色選機の能率を落とさずに処理できるというふうに、これは選別機メーカーのサタケの広報担当も十年以上前からこのように言っているんです。  精米業者の精米の委託料金についても、そもそも五百円から千二百円も違ってくるのであれば、二等米とか三等米を精米するときにそれだけの割増し料金が請求されてきたはずです。それが請求されていないということは、それだけのコスト差じゃないということですね。  ですから、搗精賃がもともとそんなに経費がかかっていない。そして、除去歩留りロスは、これは相当低い水準にまで色選機の進化で進められています。相当なコストがかかるということにならないと思いますが、最後にお答えください。
  93. 天羽隆

    天羽政府参考人 お答え申し上げます。  先生指摘の資料の3、「米のとう精における着色粒の除去コスト(試算)」という資料でございます。これも、当時農水省が出したということなのでありますが、どういう考え方に基づいて試算をしたのかというところもいま一つ、今日の目で見て定かでないところがございますが。  等級間の格差についてでありますけれども、先生もおっしゃっておられるとおり、昔は政府米の買入れ価格として差がございました。  今日、その等級、一等、二等のお米一俵について幾らの差をつけるのかというのは民間の商売の中で決められておりまして、民間流通の実態ということでは、多くは一俵六百円。一等と二等ということでございますけれども、産地銘柄によっては二百円といった水準のものもございますし、例えば元年産、ことしのお米につきましては、全農は、先日、等級間格差を三百円にするというふうに発表しておるところでございます。
  94. 緑川貴士

    ○緑川委員 お尋ねは終わりにいたしますけれども、三百円でもどうかという話を今しております。搗精時間が長いとか歩留りロスというところも、ずっとこれは昔の話というふうに言いますけれども、これは去年もそういうお答えを言いましたから、コスト差を理由としていることの理由はそこでしたから、だからお尋ねをしているんです。  改めてまた、ちょっと時間が来てしまいましたので、議論をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  95. 武藤容治

    武藤委員長 次に、関健一郎君。
  96. 関健一郎

    ○関(健)委員 国民民主党、関健一郎です。  委員長並びに理事の皆様におかれましては、質問機会をいただきまして、ありがとうございます。  早速、質問させていただきます。  豚コレラについて質問をさせていただきます。  私の地元、渥美半島のところで、また豚コレラが発生をしてしまいました。生産者の皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、一刻も早い封じ込めを全力でお願いしたいと思います。  そして、生産者支援とワクチンの接種について質問をさせていただきますが、質問ではなく、大臣お願いです。  私、NHK記者時代に、リーマン・ショック直後、経済産業省を担当して取材をしていました。そのときに、二階先生が経済産業大臣だったんですけれども、私は、役人の方を取材して、どういう政策が出てくるかが取材する主な役割でしたので、その当時取材をしていたんですけれども、正直、ここまでやるかと。役人の皆さんが、驚いて、どうしようかなと困ってしまうような、中小企業の皆さんの支援策を次々と打ち出されました。これが政治なのかなと、僕は取材をしながら思っていました。  今回、豚コレラ、発生している皆さんにしてみれば、自分のなりわいがもう二度と続けられないかもしれないという危機感の中、養豚をやっておられる方もいますし、既に殺処分に応じた方々もいらっしゃいます。  きのうも視察に、現場に党の皆さんで行ってきたんですけれども、どういう心境でいるかというと、あしたうちだと言われたらどうしよう、あしたうちだったらどうしよう、そういう気持ちで毎日を過ごしておられます。  そして、生産者の皆さんからお話を聞くという機会をつくろうと思ったんですけれども、今生産者の皆さんはどういう気持ちかというと、もしかしてウイルスがついた可能性のあるかもしれないほかの同業者の皆さんと一緒の場にはいたくない、さらには、そういう人が出入りしたかもしれない役所とか若しくは農協とかそういうところにも、行ってもし広げちゃったらどうしよう、自分が被害者になったり、自分が被疑者になったらどうしようという恐怖感の中で毎日を過ごしておられます。  ですから、こういう方々が一刻も早く正常ななりわいを取り戻すためにも、これはまさに、農林水産省の力強い、再開支援に向けたリーダーシップが必要なんだと確信をしています。  そこで、お尋ねをいたします。  冒頭、殺処分に伴う養豚農家への国の手当金や経営支援互助金などについては課税対象とならないよう、平成二十二年の口蹄疫対策、あの牛の口蹄疫と同じように、免税等の特段の措置を講じることということが自治体からお願いに上がっていると思います。  つまり、餌のお金、若しくは出荷がおくれたことによる、かかる経費、これに関しては支援を受けられるけれども、この支援金は課税対象だと。そもそもビジネスというのは、経費をかけて、そこに売上げをやって、利益をやって、それで自分の生活を成り立たせるわけです。かかる経費については支援します、それは課税しますと言われても、なかなか生産者は苦しいわけです。  免税等の特段の措置を講ずることについて、認識伺います。
  97. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、平成二十二年の宮崎県での口蹄疫の際には、手当金の仕組みが現在と違っておりまして、その交付によりまして所得が発生したということでございます。それに加えまして、家畜防疫史上最大の被害が発生し、地域の基幹産業が打撃を受けたということで、その早期再建のために、所得税等の免税などが議員立法により特別に措置されたということでございます。  現在の手当金は、殺処分されました家畜の評価額を交付するという仕組みとなっておりまして、原則として課税所得は生じないということでございます。したがいまして、これまで累次発生をいたしております鳥インフルエンザ等につきましても、免税の措置は講じていないところでございます。  今般の豚コレラにつきましても、豚の評価額の算定については指針で適正に定めておりまして、免税措置の実施は必要ないというふうに考えているところでございます。
  98. 関健一郎

    ○関(健)委員 地域の基幹産業というお言葉がありましたけれども、渥美半島の養豚もまさに基幹産業です。市町村別農業産出額全国一位の愛知県田原市ですから。そして、愛知県全体の、養豚が盛んな愛知県の大体十分の一の売上げをたたき出しているのが愛知県田原市です。  そして、繰り返しになりますが、餌までこだわって、狭い地域で飼っていたら豚の肉の質も落ちちゃうだろうということで、わざわざ広いところで運動させて、手塩にかけて、高い付加価値をつけてブランド豚として押し出している人たちがたくさんいる渥美半島です。  おっしゃっている理屈はもちろんわかるんです。もちろんわかります。ただ、先ほど、わざわざ自民党の、リーマン・ショックのときの経済産業省の対応を例に出させていただいたのは、御高説ごもっともなんですけれども、今、生産者の皆さんがどういう気持ちで待っておられるかということを考えて、通常、常識的にはこうなんだよねというところを、一歩進んで御対応いただきたいと思っているわけです。  これは二十六年ぶりに発生をして、平時じゃないことはよくわかっています。だからこそ、今後、これからも終息に至らない、更にこういうふうな拡大が続くようであれば、免税などの特段の措置についてもぜひ御検討いただきたいと思います。  次の質問に移ります。  経営の再建から安定までには結構お金がかかります。今、既に殺処分をした皆さんというのは、話を聞くと、大体十三カ月から十五カ月、新たにもう一回、自分が手塩にかけて育てた豚さんを売って、じゃ、はい、お金になりますと利益が出るまでに、十三カ月から十五カ月で出ます。これは結構な時間です。さらに、これでまたようやく解除かなと思って、また解除じゃない、これが続くと、またそれがその分先に延びるわけです。  この状況の中、それでも、いろいろな生産者の人たちに話を聞くと、やはり、心が折れない、そのことさえできれば、私たちは幾らでもまた再開することができると信じていると自分たちのことを言っておられました。やはり、心折れるというところは、どれだけやっても資金的なめどが立たないというのは、これはやはり大きいんです。  そこで、お伺いします。  経営の再建から安定までには相当の期間と資金を要し、手当金や経営支援互助金だけでは不足が生じる場合は、農家の負債がふえないよう、融資とは違う新たな支援制度などを検討する必要があると思いますが、認識伺います。
  99. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  経営者の方々が再建までに時間がかかるということでございまして、その間の経営再建までの支援をしっかりしていきたいという気持ちで、今いろいろな対策を組んでいるところでございます。  まず、発生農家に対しましては、今お話がありました、殺処分されました家畜の評価額の全額を手当金として支給する、それから、移動制限がかけられた農家に対しましては、出荷制限による減収分を補填するということをしているところでございます。  それから、経営再開に向けまして、畜産経営の再開、継続に必要となる家畜の導入でありますとか餌の導入につきまして、家畜疾病経営維持資金、それから農林漁業セーフティネットの資金の活用が可能でございます。  この家畜疾病経営維持資金、これは融資制度でございますけれども、国と県がそれぞれ助成をすることによりまして、農家の方の金利を無利子にするという制度をとっているところでございます。したがいまして、融資ということではございますが、農家の方々には無利子で借りていただけるということで、両県も含めまして手当てをしているところでございます。  これに加えまして、再開までのつなぎ資金というのも県の御協力をいただきまして整備をしているというところでございます。  それに加えまして、家畜防疫互助基金に加入の方々については、経営再開までに家畜支援の互助基金というのが交付されるということでございます。  それから、今回新たに、発生農家等を対象にいたしまして、豚マルキンの生産者負担金の納付を免除するという新たな支援策を講じているところでございます。  これから、農家の方々のそれぞれ御希望あるいは経営の意欲をそがないようにということで、国、県、それらが協力しながら、さまざまな施策を講じていきたいというふうに考えているところでございます。
  100. 関健一郎

    ○関(健)委員 今言及をいただいたので、ちょっと質問の順番を変えますね。  一頭当たりの評価額について伺います。  殺処分をした生産者に対して、一頭当たりの評価額というのがあると思いますけれども、生産者と地域によって返答がまばらで、これは私が聞いた全体が全てと言っているわけではないですけれども、幾らなのかわからないなんか不安だと言う方が結構おられるんです。  これについて、これは私が聞いた中だけですから、全体のことを言っているんじゃないんですよ、ですから、生産者、特に岐阜と愛知では、そういう殺処分をされた方々が一頭当たり幾らもらえるかというのは既にわかっていることなのか、ただその方々がまだわかっていなかっただけなのか、要は、生産者方々にわかるということが一番大事ですから、それについて教えてください。
  101. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  家畜の評価につきましては、その基準と算出方法等につきまして国において定めまして、都道府県知事にお示しをしているところでございます。  この中で、仮に一律ということであれば、農家の方にも、何頭飼っているからこういう形というふうに算定できるというメリットはあると思いますけれども、ここはやはり農家の方々の実情に踏まえた算定をしたいというふうに考えておりますので、その中で、肥育豚であれば発生農家が通常利用する市場での市場価格、それから、繁殖豚でございますと血統による価値とか導入時の価格というのを考慮することになっております。したがいまして、一律ではないということでございます。  具体的には、それぞれ、家畜防疫員、畜産の事務に従事する者、それから畜産業の経験者の三名が評価をするということで、客観性を担保する手法をとるということになっております。その点から、農家の方々が即時に手当金がわからないという状況が生じるのかと思いますけれども、現在、両県におきまして、それぞれの農家の方々の評価額の算定を順次進めているところでございます。
  102. 関健一郎

    ○関(健)委員 わかりました。要は、ポイントは、生産者の皆さんが、一頭当たりこうなのねということが早くわかるということが大事なことだと思いますので、それはぜひ周知に努めていただければと思います。  更に言うと、早期出荷とか予防的というものに関しても、生産者の皆さんから不安の声が上がっています。ちょっと言葉をやわらかくしてしまうと、幾らなのかわからないのにそういうのに協力しろと言われてもつらいものがあるぞというのが多くの声ですので、やはり経済活動ですから、そういうのがわからないままいろいろなリスクはとれないというのは、これは当たり前の話ですから、生産者の人にきめ細かい、わかりやすい発信と周知をお願いします。  ちょっとかわって、水際というか、拡大の防止について質問します。一つは、海外からの水際です。もう一個は、イノシシによる拡大の防止策についてです。  水際の話なんですけれども、視察に私も参加させていただきました。検疫探知犬の活躍も見ましたけれども、やはり、これはもうオール・オア・ナッシングで徹底的にやらないと、あれは、入っちゃうリスクはどこまでいってもゼロにできないわけですよね。あのワンちゃんがどんなに大活躍をしても、本当に悪意を持って持ち込みたいのであれば、あの犬がくんくんくんと嗅いでいる間にその後ろを抜けられるわけです。  更に言えば、留学中の青年なんかは、お母さんの味が懐かしいといって、船便で送ってくるわけですよ。こうなるともう何ともならない。そこまで徹底してやらないと、やるなら徹底的にやらないとウイルスの侵入というのは防げないわけです。  ですから、本当にやるなら、いや、そこまで言ったって無理だよと言うんだったら、これはやらないのと一緒ですから、やるんだったら徹底的にやらなきゃいけないというのを、そこは更に更に網を細かくすべきですが、御認識伺います。
  103. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  水際対策につきましては、人の往来が非常に増加している中、さらなる豚コレラの、特にアフリカ豚コレラの侵入を防止するということで、国際空港や港における水際での検疫を強化しているところでございます。  これにつきましては、関係各所が連携をするということを申し合わせておりまして、特に国交省、それから税関と随時連携をとっているところでございます。  まず、一番目といたしましては、まず日本に持ってこないということが重要でございますので、違法な持込みを防止するために、在外公館や現地の旅行会社を通じて直接旅行客に情報発信をするということ、空港で、肉製品をここで捨てていくようにということを徹底をしているところでございます。  それから、四月二十二日からは、畜産物の違法な持込み事例に対しまして、輸入禁止物を持ち込まないことを誓約させる警告書を発行するなど、対応を厳格化しているところでございます。  それから、空港や国際郵便等に配置をしております検疫探知犬を十一頭ふやしまして、四十頭体制で措置を講じているということでございます。  これからもこのような緊張状態をしっかりと持続していきたいというふうに考えております。
  104. 関健一郎

    ○関(健)委員 ありがとうございます。  申し上げたとおり、やるのなら徹底的にやらないと、そこまでやるかというところまでやらなければ、ほぼ、やらないのと一緒ですので、今おっしゃったところで、更にきめ細かい水際の対策をお願いしたいと思います。  イノシシの話なんですけれども、私、ちょっとイノシシについては詳しく取材した経験がございまして、イノシシというのは非常に頭のいい動物でして、絶対に、通せんぼしても、どこが網が弱いのかなとか、これはつんつん鼻先でやって、弱いところからくっと顔を入れて入っちゃうんですね。  電気をやって、最初にびっとやって、びっくりしても、ずっと電気を流しているわけにはいかないから、流していないタイミングをわかったりとか、あとはすさまじいジャンプをしたりとか。  更に言うと、おいしい食べ物は、そのグループのリーダーが食べる傾向があるんですね。そうすると、経口ワクチンなんかもリーダーばかり食べちゃうんじゃないかと僕は聞いた瞬間思ったんですけれども。とにかく、さっきの水際と一緒で、やるなら徹底的にやらないと、その包囲網は簡単に飛ばされちゃう。  イノシシ包囲網は何度も、鳥獣被害のときでも人間は彼らに突破されているんですけれども、経口ワクチンの話も、定期的に調査しているけれども、しっかり封じ込めができているかどうかというのは、どうやって調査されるんでしょうか。
  105. 新井ゆたか

    ○新井政府参考人 お答え申し上げます。  野生イノシシに対します経口ワクチンにつきましては、ことしの三月から岐阜県及び愛知県において配付をしているところでございます。これは六回に分けまして一年間継続をするということでございまして、今、第一期目の一回目が終わったところでございます。その後、野生イノシシを捕獲をいたしまして、サーベイランス調査というのをしております。  経口ワクチンを食べて抗体を持っていれば、それは経口ワクチンを食べたことによって豚コレラにかかっているということがございまして、今、その率につきまして、それぞれの各県で捕獲後、調査をしていく。これが、経口ワクチンを更に投与することによってどのようになっていくかというのを調べていくということでございます。  今回、経口ワクチンにつきましても、今二回目の散布が終わったところでございますけれども、それぞれ愛知県、岐阜県におきまして、対象面積を一・五倍にふやしまして経口ワクチンを散布しているところでございます。  それから、経口ワクチンに加えまして、両県におきまして捕獲対策を充実をするということも考えているところでございまして、環境省とも連携をしながら、具体的にどう進めていくか検討しているところでございます。
  106. 関健一郎

    ○関(健)委員 渥美半島で、あるブロックで連続でぽんぽんぽんと豚コレラが発生したときは、その辺は明らかにイノシシはいないんですね。でも、恐らく野鳥なりネズミなり、何なのかなというのがまだ確定されていないですけれども、とにかく、水際であれイノシシであれ、封じ込めは徹底してやらなければ、やらないのと同じですから、ぜひ、ここまでかというぐらいきめ細かい封じ込めをお願いいたします。さらに、見るたびに改善、改善を重ねていっていただきたいと思います。  最後に、ワクチン接種の必要性について、大臣にお尋ねをいたします。  これは賛否両論あるのはよく存じ上げておりますし、ワクチンの接種はすべきでないという専門家の皆さん、また先生方の議論もよく聞かせていただいた上で、私は、ワクチン接種の必要性について意見を述べさせていただきます。  これは、やはり殺処分を、限定的に行うことによるメリットは大きいんだと思います。やはり経済動物である以上、どこまでいっても、これ以上豚コレラが発生、そのたびに搬出制限、そしてまた解除して、忘れたころにまた発症というふうになって、結局すさまじい量の殺処分をしなければならなくなっているのが現状です。  であれば、確かにワクチン接種のデメリットがあることも承知をしていますが、その上で、やはり限定的なワクチン接種というのは、その地域の生産者にとっては今何より求められていることと言えます。  そこで、大臣にお尋ねします。  限定的なワクチン接種について、現段階での認識伺います。
  107. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 ワクチンの接種につきましては、これはもう関委員は十分御承知のとおりだと存じますけれども、申し上げさせていただきますが、豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針におきましては、埋却を含む防疫措置の進捗状況、感染の広がり、周辺農場数、山や川といった地理的状況を考慮して、発生農場における迅速な屠殺及び周辺農場の移動制限のみによっては感染拡大の防止が困難と考えられる場合には、蔓延防止のための緊急ワクチンの接種を決定するといたしているところでございます。  これまでの発生事例につきましては、飼養衛生管理基準の、残念ながら、遵守がなされていたとは言えない部分もあると、拡大豚コレラ疫学調査チームが指摘をいたしております。まずはこの飼養衛生管理基準を強化することが同病の発生予防及び蔓延防止の大前提であると考えているところでございます。  これらにより感染拡大防止が困難だと判断した場合にはワクチン接種も考えられると思いますが、今のところ、ワクチン接種を直ちに行う状況にはないと考えているところでもございます。  飼養豚へのワクチン接種につきましては、消費者がワクチン接種豚の購入を控えることなど、風評被害が生ずる可能性があり、消費への影響が懸念をされることもあります。農家の飼養衛生管理基準を向上しようとする意欲がそがれて、アフリカ豚コレラ等の農場への侵入リスクが高まる可能性があること、野外感染豚とワクチン接種豚との区別ができないことから、接種豚のトレーサビリティーや移動制限等が必要になること、非清浄国となれば、他の非清浄国からの豚肉輸入解禁の圧力が強まる可能性があることなどのデメリットも考えられます。ワクチン接種を行う場合には、これらの影響を受ける可能性のある全国の関係者間の合意形成が前提となると考えております。  しかしながら、この豚コレラ対策につきましては、今、御地元の愛知県にも申し上げておりますことは、まずこの飼養衛生管理基準を徹底してやりましょうと。愛知県もそういうように考えております。さらに、その後の対策としては、早期出荷ですとか、そういったことも今考えているところでございます。  最終的に、今申し上げましたような、前段に申し上げましたようなことでワクチン接種ということになるのでありまするけれども、この場合でも、県がイエスと言っていただかなければ接種ができない、そういった法律のたてつけになっていることもあえてつけ加えさせての答弁にさせていただきました。
  108. 関健一郎

    ○関(健)委員 ありがとうございました。  吉川大臣始め農林水産省におかれましては、豚コレラの被害に遭われた生産者に、そこまでやるかというところまで、ぜひ経営再開に向けたきめ細やかな支援お願い申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  109. 武藤容治

    武藤委員長 次に、田村貴昭君。
  110. 田村貴昭

    ○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。  きょうは、漁業と漁業政策について質問をします。  先日、青森県の大間で全国クロマグロ漁師サミットが開催されました。全国から四百人を超えるマグロ漁師さん、それから関係者が集結したところです。  そこで口々に語られたのは、クロマグロの資源管理について不満、要求がたくさん出されたということであります。  漁師さんたちが要求しているのは、資源枠の単なる拡大ではなくて、配分の見直しについてであります。紹介するので、大臣も水産庁も聞いていただきたいと思います。  青森から。通年通して漁に出られるほど枠がないために、夏場は漁を控えてきたけれども、旬にはマグロは来遊せずにとれなかった、とても生活ができない。  千葉県。わずかな枠を分け合って操業してきたけれども、ある日はマグロがかかり過ぎて、苦渋の決断で針を切って放流している。  岩手。定置に何百匹もかかり、枠をオーバーするので二時間かけて全部捨てているが、ほとんどは死んでしまう、何のために資源管理しているのかわからない、港には大規模漁船が入ってきて百トンも水揚げされ、安いものはキロ六百円、六百五十円という超安値だった、やりきれない思いである。  そういう状況が報告されました。  大臣、水産庁、こうしたマグロ漁師さんたちの切なる思いをどういうふうに受けとめておられるでしょうか。第五管理期間の配分は、枠の融通こそはできるようになったものの、混乱をもたらしたあの第四管理期間と基本的には同じであります。これでは、沿岸マグロ漁師さんたちの不満は続いてまいります。  沿岸の漁師さんたち、大規模漁業の枠を根本的に見直すべきではありませんか。いかがですか。
  111. 長谷成人

    長谷政府参考人 お答えいたします。  クロマグロの漁獲枠の配分につきましては、昨年九月に、水産政策審議会資源管理分科会のもとに、専門家や漁業者団体の代表を委員とするくろまぐろ部会を設置いたしまして、沿岸漁業者十名を含む関係者からの意見を聞くなど、五回にわたる審議を重ね、配分の考え方を取りまとめたところでございます。  この考え方に従いまして、特に大型魚の配分に当たりましては、WCPFCの基準年である二〇〇二年から二〇〇四年の平均漁獲実績を基本としながら、大規模漁業である大中型まき網漁業は実績に基づく配分から一割削減してその分を国の留保とするとともに、沿岸漁業に対しましては、都道府県の直近三カ年の最大漁獲実績を考慮いたしまして、留保している数量から当初に上乗せ配分を行うとともに、配分量が少ない都道府県は混獲が発生したとき管理が難しいので、一定の数量を当初に上乗せ配分しておりまして、沿岸漁業に対しまして最大限配慮した配分を行っているところでございます。
  112. 田村貴昭

    ○田村(貴)委員 最大限配慮するといっても、長谷長官、その説明が、沿岸漁業者、クロマグロ漁師さんたちを説得するものにはなっていない。もう何年も続いているわけですよね。現状が変わらず、それどころかどんどん悪くなる状況に対して、マグロ漁師が生計を維持できるように、将来に展望が持てるように、早急に漁業枠の配分を見直すように、強く要求するものであります。  マグロもとれない、その餌となるイカがとれない。イカがとれないのは、全国的な大きな問題になっています。私自身、予算委員会の地方公聴会の際に函館に行ったときに、水産関係者から、これはもう本当に深刻な状況であるという話も伺いました。そして、ホッケ、スケトウダラ、サバ、これもとれない。今、このホッケ、スケトウダラ、サバについては、資源管理を強化するとの検討が始まったと聞いています。  どの魚種も、漁獲枠を設けるなら、漁獲圧の強い漁業から規制すべきであり、水産庁が決めてしまって漁業者の了解を得る方向では、クロマグロとまた同じ問題が生じてしまうと漁師たちは言っているわけであります。  そこで、通告しております、大臣にお伺いします。  沿岸の漁業者が資源管理の方法の決定に参加できるように、漁獲枠を設けるならば、その漁業者自身が枠を決定する制度が必要である、仕組みが必要であるというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
  113. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 資源管理につきましては、昨年十二月に漁業法を改正をし、持続的に採捕可能な最大の漁獲量を達成できる水準に資源を維持、回復させることを目標に取り組むことといたしております。  このため、四月二十四日に開催をされました水産政策審議会におきまして、ホッケ、スケトウダラ、マサバ、ゴマサバについて、優先的に検討を開始していく考えを説明したところでございます。  これらの魚種でありますけれども、ホッケやスケトウダラのように、資源水準が極めて悪く、資源回復に早期に着手すべきものや、サバのように、最大の漁獲量を達成する水準にまで資源が回復しつつあるものでありまして、これらの資源管理について、優先して取り組む考え方でもございます。  また、法律の成立に際しまして、衆議院の附帯決議におきましては、漁獲可能量及び漁獲割当て割合の設定等に当たりましては、漁業者及び漁業団体意見を十分かつ丁寧に聞き、現場の実態を十分に反映するものとすることとされておりますので、新たな資源管理措置の導入に当たりましては、沿岸漁業者を含めた関係者の意見をしっかり聞きつつ、この検討も進めてまいりたいと思います。
  114. 田村貴昭

    ○田村(貴)委員 しっかり意見を聞いていただきたい、そして、漁業者が参加する制度にしていただきたいと思います。  やはり、家族的操業をしている沿岸漁業者は、本当に日本の水産を守っておられます。頑張っておられます。大事にしていただきたい。  一方で、聞き捨てならない話を長崎の漁師さんから聞きました。まき網の船団が、イカ釣り漁船を使って操業しているということであります。  資料一、お配りしています。対馬市の上対馬町漁協の漁業違反シートに添付された写真の一部をお借りしてまいりました。  廃業したイカ釣り船を買い取ったり契約したりして、この船を使って、その周りに大中のまき網などの漁船団が操業しているわけであります。このイカ釣り船には、水中灯を使っている、それから集魚灯をいっぱいつけているんですけれども、肝心なイカ釣り機、巻き上げ機はついていないわけなんですよね。これ、違法操業ですよね。こうした状況がレーダーによってわかり、そして確認をされたところであります。  こうしたところが、説明にもありますように、十カ統、あるいはそれ以上、大胆にも操業しているということでありますけれども、これは法律上どうなりますか。どうやって取り締まっておられますか。お伺いしたいと思います。
  115. 長谷成人

    長谷政府参考人 お答えいたします。  本件は、長崎県が定めております漁業調整規則によりまして、県知事が許可しております中型ですとか小型のまき網漁船等について、集魚灯を用いて魚を集める灯船の隻数等の規制が行われているという件でございます。  まき網船ですので、魚をとる網船のほかに、集魚灯で魚を集める灯船というようなもので船団を構成されますけれども、その灯船の隻数の規制が行われているんですけれども、長崎県庁に聞きましたところ、まき網漁船が、この県規則で定める灯船以外に、イカ釣り漁船などの集魚灯も利用して操業しているのではないかという情報があって、県として、規則等の遵守のために漁場で調査、監視活動を行っているというふうに報告を受けました。
  116. 田村貴昭

    ○田村(貴)委員 水産庁はどうしますか。水産庁はどうするんですか。
  117. 長谷成人

    長谷政府参考人 一義的には、既に長崎県の取締り当局が、部局が県の規則違反についての取締りを進めているということでありますので、その状況を見守っていきたいというふうに思っております。
  118. 田村貴昭

    ○田村(貴)委員 漁業法に基づく、指定漁業の許可及び取締り省令三十三条に違反する、そうですよね。ですから、届出をしていないということは、違法操業になるわけなんですよ。これは、ちゃんと取り締まらないといけませんよ。  そして、何度も言いますように、資源管理を徹底して行って、そして、釣り漁法であるとか、それからはえ縄であるとか、資源管理にしっかり従って頑張っておられる沿岸漁業者がある一方で、こうした大規模な船団がこういう違法操業を行っているという事実があるとするならば、これはやはり公平さに欠けますよ。これはだめですよ。正義が通っていませんよね。そうしたところはちゃんとやっていただきたい。答弁はもういいです、時間がありませんので。しっかりやっていただきたいと思います。  次に、災害によって生じた漁業被害への対策について質問したいと思います。  昨年九月、台風二十一号によって漁業被害を受けた大阪府堺市で、私、堺市漁業協同組合連合会、そして堺市浜寺漁業協同組合から事情を聞きました。強風や高潮による浸水によって漁具倉庫が損壊する、倉庫内の漁網や電気工具、発電機、冷蔵庫、そうしたものが被害を受けて、数十万円から数百万円の個人負担となっているわけであります。  こうした被害に対する国の支援制度というのは基本的にない、あって共済制度、そして、激甚災害になった場合は、養殖等の施設に対して復旧事業があるというふうに伺っています。ほとんど個人的に負担しなければいけないということであります。  一体どのぐらい負担が生じているかといいますと、まとまったものがないというので、私の方の事務所でつくってみました。ここ五年間ぐらいの自然災害による水産関係被害の状況を取りまとめました。  長官、これはかなり苦労してまとめました。ぜひ御参考にしていただきたいと思います。合計の数字はほとんど合っているんじゃないかなというふうに思います。漁具で約九十五億円。養殖施設で四十二億円。漁具倉庫約十一億円。これらは、個人所有であれば支援が基本的に受けられないということであります。  一方で、農業では、被災農業者向け経営体育成支援事業というのがあります。  台風二十一号の農業被害に当たって、農水省はこういうふうに言っていました。「甚大な農業被害により、農産物生産・加工に必要な施設・機械が損壊し、農業経営安定化に支障をきたす事態となっていることから、当該施設・機械の再建等の支援を緊急的に実施する必要がある。」こういう通達も出して、救済に当たってきたところであります。  農業も、そして漁業も、同じく第一次産業であります。この第一次産業を保護するために、個人所有の施設、機械にもやはり支援を行うべきではないかと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  119. 長谷成人

    長谷政府参考人 先生から御紹介いただきました被害金額でございますけれども、これは、都道府県からの報告に基づきまして、その際に、個人の所有する施設ですとか、会社あるいは会社以外の法人がみずからの利用のために所有しているもの、共同利用でないものという意味ですけれども、その非共同利用施設としての被害額を整理、集計したものということになると思います。  台風などの被害が頻発しておりますが、漁業者の個人の漁具や施設等が被害を受けた場合には、その原状復旧や、新たに取得、整備などに活用可能な資金として、農林漁業施設資金等の低利の制度資金がございますし、また、災害による休漁時の減収ですとか、定置網などの漁具につきましては、その損害を補填する漁業共済制度があるということでございます。
  120. 田村貴昭

    ○田村(貴)委員 農業の経営体育成支援事業とは違うんですよね。融資とか、そういう貸付けじゃないわけなんですね。  これは不可抗力だったんですよ。ちゃんと漁具とかは倉庫になおしていた。その戸とかシャッターが高波で損壊してしまって、海に流されてしまった。強風によって吹き飛ばされてしまった。こういう不可抗力に対して、やはり支援を講ずるべきだというふうに思っております。  大雨の報道もあって、現にもう災害が起こっています。ことし、どういう災害が起こるかわかりません。こうした災害が多発する状況の中で、漁業者に対しても、やはり将来、災害によって操業できない、廃業する人が出ないように一層の支援を強めていただきたい、そのことを要求して、きょうの質問を終わります。
  121. 武藤容治

    武藤委員長 次に、森夏枝君。
  122. 森夏枝

    ○森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。  本日も質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。  昨日、国有林野管理経営改正法が衆議院で可決をされました。  私は、委員会で審議をしていく中で、また、伐採現場や木材加工現場に視察に行かせていただいてから、私自身、日本の森林資源、木材に対する意識が変わりました。以前よりも木を意識するようになりました。  二十日の月曜日に、科学技術・イノベーション推進特別委員会の視察で京都迎賓館へ行きました。正面玄関の扉が福井県産の樹齢七百年の一枚板のケヤキが使用されていて、感動しました。やはり木はすばらしい。日本の森林資源をしっかりと管理をして、植栽も徹底して低コスト化をし、生産量をふやしていただきたいと思いました。  林業には、高齢化、担い手の不足、災害対策等さまざまな課題はありますが、今後の日本の林業の成長産業化の実現に期待をし、質問に入らせていただきます。  本日は、まず有機農業について質問をいたします。  平成十八年十二月に制定された有機農業の推進に関する法律に基づいて、平成十九年、二十六年と有機農業の推進に関する基本的な方針が策定され、我が国の耕作面積に占める有機農業取組面積の割合を倍増させるという目標が示されました。  有機農業者や地方公共団体連携して施策を推進されてきたと思いますが、実際に有機農業拡大しているのでしょうか。有機農業の現状認識について教えてください。
  123. 枝元真徹

    枝元政府参考人 お答え申し上げます。  我が国の有機農業取組面積でございますけれども、平成二十一年に約一万六千ヘクタールであったものが、平成二十九年に約二万三千ヘクタールへと四三%拡大、有機食品市場規模も、平成二十一年に、推計でございますけれども、約千三百億円だったものが、平成二十九年には約千八百五十億円と四二%拡大してございます。  しかしながら、平成二十一年から平成二十九年の八年間で、世界全体の有機農業取組面積は九二%、市場規模は七七%拡大してございますので、我が国の有機農業取組は依然限定的なものだというふうに考えてございます。
  124. 森夏枝

    ○森(夏)委員 ありがとうございます。  有機農業土づくりが非常に重要で、この土づくりに時間がかかるとお聞きをしました。  現状では、有機農業がまだまだ拡大しているとは言えないと思いますけれども、新規就農者の多くが有機農業に挑戦をされていたり、有機農業が地域振興につながっているというようなお話もお聞きをしました。有機農業を推進していく方針であれば、新たに有機農業に挑戦する農家の方々に研修や販路拡大支援等もこれから必要になってくるかと思います。  ヨーロッパなどでは、日本の有機農産物、特にお茶が人気があるとお聞きもしました。日本産の品質のよいものは値段が高くても売れます。安心、安全な高付加価値な物づくりができる環境を整えて、国内だけでなく海外とも勝負できる攻めの農業への支援お願いしたいと思っております。  今後、農林水産省として、有機農業拡大に向けどのように取り組んでいくのでしょうか。
  125. 小里泰弘

    ○小里副大臣 有機農業は、消費者の農産物需要が高度化し、多様化をする中にありまして、農業生産に伴う環境負荷を低減をすることで農産物の付加価値を高めて、有利販売につなげることができる取組と考えております。  また、欧米諸国では、お話をいただきましたとおり、近年、有機食品市場が急拡大をしておりまして、有機茶を始めとして我が国生産された有機農産物やその加工品の輸出が期待できると考えているところであります。  このため、農林水産省では、有機農業を含む環境保全効果の高い農業生産活動を支援する環境保全型農業直接支払いや、有機農産物の安定供給体制の構築、販路拡大取組への支援、また、有機農産物や加工品の輸出拡大に向けた有機JAS認証の取得や商談への支援等によりまして、有機農業の推進を支援しているところであります。  さらに、有機農業の推進に向けましては、昨年十二月から、食料・農業・農村政策審議会果樹・有機部会で議論をいただいているところでありまして、その御意見も踏まえながら、今後の推進の枠組みを検討してまいりたいと思います。
  126. 森夏枝

    ○森(夏)委員 ありがとうございます。  農水省としても、有機農業拡大についてしっかり取り組んでいただけるとのことですので、期待をしております。環境の問題から考えましても大変よいことだと思うので、拡大に向け、お願いしたいと思います。  今後、スマート農業も進んでいくと思います。担い手不足の解消、また農家の方々の負担軽減、所得向上のためにも、スマート農業には私も賛成です。  しかし、有機農業現場の声として、ドローンを使った農薬散布は、自分たちが有機農業をやっていても、隣の畑、近くの畑から農薬が飛んでくる、そうすると、また土づくりから始めないといけないというような問題もお聞きをしました。  有機農業はまだまだ日本では進んでいるとは言えませんけれども、来年、オリンピック、パラリンピックがございます。二〇二五年の大阪万博などもありますので、海外から多くの方が来られることは、日本農業にとって大きなチャンスだと思います。  有機農業だけに限りませんが、国内外の消費者のニーズに合わせた、売れるものをしっかりつくっていただき、ぜひ農家の方々には攻めの農業に挑戦をしていただきたいと思いますので、支援の方をしっかりお願いしたいと思います。  次に、ミツマタ生産者に対する支援について伺います。  二〇二四年度に予定をされている新紙幣発行に向け、原料となるミツマタ増産の動きがあるとお聞きをしました。ミツマタ生産者高齢化をし、年々生産量は減少しているとお聞きをしました。  現在、国立印刷局の納入量は外国産のミツマタが九割を占めている。価格の問題もあると思いますけれども、せっかくの新紙幣ですので、日本産のミツマタの使用量をふやしていただきたいと思いますけれども、一方で、今後キャッシュレス化も進んでいきます。  今後、ミツマタの需要がふえるのかどうか、難しいところだと思いますけれども、農林水産省として、日本紙幣の国産のミツマタ利用につながる、ミツマタ生産者支援する考えがあるのかどうか、教えてください。
  127. 枝元真徹

    枝元政府参考人 お答え申し上げます。  和紙の原料となりますミツマタでございますけれども、今、徳島県を中心といたしまして、全国で約四十二ヘクタール栽培されてございます。  ただ、ミツマタは、和紙の原料となる皮の製造に手間がかかること、また、高級和紙の需要減少を背景として、生産者高齢化や後継者不足が進展して、生産量は減少傾向にございます。  しかしながら、ミツマタは、強度があり、印刷適性にすぐれておりますので、紙幣の原料としても使用されてございます。  農林水産省といたしましても、地域に適した栽培体系を確立させるための実証圃の設置、また、省力化のための農業機械の改良等について支援が可能でございまして、現場の御意見もお聞きをしながら、その増産に努めてまいりたいと存じます。
  128. 森夏枝

    ○森(夏)委員 ありがとうございます。  国産のミツマタが新紙幣に少しでも多く使われることを願っております。  次の質問に移ります。  食品ロス削減の取組について伺います。  私は、WFP議連に所属をしておりまして、食品ロスに対しては大変関心を持っております。昨年には、国連世界食糧計画、WFPの活動を学ぶために、高野光二郎団長のもと、WFP議連の視察でロヒンギャ難民キャンプへ行き、食料供給の現場、そして食料を必要としている人たちに会ってきました。  二〇一六年の農林水産省のデータですけれども、日本食品ロスは年間六百四十三万トン。WFPが援助した食料が三百五十万トンですので、世界で食料を必要としている人たちに対して援助した食料の約二倍の量の食品ロスを日本は出しております。  今後、国連では、二〇三〇年までに世界全体で食品ロスを半減させることを目標に掲げております。  世界には救える命があります。  今国会で、消費者問題特別委員会食品ロス削減推進法案が審議され、先週通過をいたしました。  今後、国として、食品ロスに更に力を入れていかれるかと思います。農林水産省として、食品ロス削減について、今後特に力を入れようと考えている取組があれば教えてください。
  129. 塩川白良

    塩川政府参考人 お答え申し上げます。  我が国では、食べられるのに捨てられている食品ロスでございますが、平成二十八年度におきましては、今委員が御指摘いただきましたように六百四十三万トンに及んでおりまして、このうち食品関連事業者からは三百五十二万トン発生しているところでございます。  農林水産省としては、これらの食品ロスの削減に向けまして、いわゆる三分の一ルールの見直しなどの事業者の商習慣の見直し、それから、生産、流通などの過程で発生いたします未利用食品を必要としている人や施設などに提供するフードバンク活動、それから、AIや気象情報活用した需要予測の精緻化などの取組関係省庁とも連携しながら強力に推進してまいりたいと考えております。
  130. 森夏枝

    ○森(夏)委員 ありがとうございます。  フードバンクなども周知をしていただいて、どんどん取組を進めていただきたいと思っております。  この食品ロスの削減については、国民一人一人の意識改革が必要だと思います。私自身も食品ロスに努めてまいります。そして、皆さんにも広報していきたいと思っております。  次に、ジビエ認証審査員の育成について伺います。  以前にもジビエの利用については質問をさせていただいておりますが、鳥獣害対策、食品ロス削減、そして、栄養価の高いジビエですので、健康の観点からもぜひジビエの消費拡大を進めていただきたいと思います。  豚コレラによる風評払拭にも取り組まなければならないと思いますが、ハンター不足やジビエの加工処理施設の不足の問題等もあります。ジビエの消費拡大のため国が保証する認証制度がありますが、この認証審査員の資格を持つ獣医師が全国に十四人しかいないという記事を見ました。  農林水産省として、認証審査員の育成に対してどのように認識をしているのでしょうか。また、今後支援を考えているのでしょうか。
  131. 室本隆司

    ○室本政府参考人 農林水産省では、安全、安心なジビエの提供を図るため、昨年五月に国産ジビエ認証制度を創設したところでございまして、現在、食肉処理施設の認証を行う認証機関でございますが、これは二つ認証されている。認証された食肉処理施設が三施設というような状況でございます。  この認証機関になるに当たりましては、それぞれの認証機関において獣医師や食品衛生監視員の資格を有する審査員を確保することが要件となってございますが、審査員の数については特に定めはなく、認証業務を適切に行われる体制が整っていることを条件に、それぞれの認証機関ごとに国産ジビエ認証委員会で審査をし、決定されているということでございます。  農林水産省といたしましては、今後、認証機関をふやしていくためには、認証と並行して、順次審査員を確保していくことが必要でありまして、本年度から、国産ジビエ認証委員会が主催する獣医師資格等を有する者を対象にしました研修会に対しまして、支援をしていくこととしているところでございます。
  132. 森夏枝

    ○森(夏)委員 ありがとうございます。  私自身も、ジビエを食べる機会があれば積極的に食べるようにしておりますし、人にも勧めております。  豚コレラにより不安の声もありますので、ぜひ、国の安全性のお墨つき、この認証制度が使えるように、審査員の育成にも力を入れていただきたいと思います。そして、あわせてハンターの育成等も支援お願いしたいと思っております。  もう時間がなくなってまいりましたので、最後の質問は、韓国による福島などの農水産物の輸入禁止措置の対応について質問させていただこうと思っておりましたけれども、他の委員からも質問が既にありましたので、今後、政府としてしっかり取り組んでいただきたいと思います。  ありがとうございました。      ————◇—————
  133. 武藤容治

    武藤委員長 次に、内閣提出参議院送付特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣吉川貴盛君。     —————————————  特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  134. 吉川貴盛

    吉川国務大臣 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。  本法は、農産加工品等の輸入に係る事情の著しい変化に対処して、金融及び税制上の支援措置を講ずることにより、特定農産加工業者の経営の改善を促進するため、平成元年に、その有効期限を限った臨時措置法として制定されたものであります。  これまで、本法の活用により、特定農産加工業者の経営改善に一定の成果を上げてきたところでありますが、農産加工品の輸入が増加していること、国産農産物の重要な販路である農産加工業の持続的な発展が地域農業の健全な発展のためにも必要であること等を踏まえると、引き続き特定農産加工業者の経営改善に取り組んでいく必要があります。  このため、本法の有効期限を五年間延長し、平成三十六年六月三十日とすることとした次第であります。  以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  135. 武藤容治

    武藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会