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寺町参考人 おはようございます。
本日、
参考人としてお招きいただきました
弁護士の
寺町東子と申します。
私は、長年、
保育施設での死亡事故や
保育施設での重大事故の予防活動、あるいは虐待されている
子供の親権停止など、
子供の権利の実現に取り組んできた
立場から
意見を述べさせていただきます。
こちらの
資料を使いながら御説明させていただきます。
私が最も申し上げたいことは、認可外
保育施設のうち指導監督基準を満たさない施設、これについては
無償化の対象から外すべきであるということです。
今回の
法案では、三歳から五歳及び住民税非課税世帯のゼロ歳から二歳児について、認可外
保育施設の利用も
無償化の対象として、かつ、附則の第四条において、認可外
保育施設の指導監督基準を満たさない施設も含めて五年間
無償化の対象としています。
しかし、ゼロ歳から二歳の低
所得層、この方
たち、認可施設に既に入れている世帯というのは、応能
負担ですので、既に
無償化されています。実際には、ゼロ歳から二歳の低
所得者のうち認可施設にまだ入れていない世帯こそが、非正規雇用であったりあるいは求職中であったりということで、認可施設への入所指数が低くなりがちということで、認可外
保育施設に預けざるを得ないんですね。
この認可外
保育施設のうち指導監督基準を満たさない施設というのが、非常に質の低い施設が含まれておりまして、ここで死亡事故が起こりがちであるということが言えます。この基準を満たさない認可外について、
無償化の対象から外してほしいということです。
二枚目のスライドをごらんください。
保育の質についての指標はさまざまございますが、最もシンプルに集約するとこの図になります。三角形の頂点がプロセスの質。
保育の質の中心となる
保育者と
子供が直接かかわる部分、
保育そのものですね、ここのプロセスの質。ここは、
保育者と
子供との対話的、応答的なかかわりや
保育者の
子供への受容的な態度というのが含まれています。これを支えているのが、配置基準などの構造の質と、それから
保育者の賃金などの労働環境の質ということになります。この
保育士の配置基準というのは、
保育の質を支える指標として非常に重要になってまいります。
三枚目のスライドをごらんください。
現在
日本に存在しているさまざまな
保育施設と
保育事業、配置基準の関係を示した図であります。
左上のオレンジの枠、認可
保育所、幼保連携型認定こども園、学校
教育法上の幼稚園がここに含まれます。最も通う
子供の数も多く、
日本の
幼児教育の中核になります。職員は全員が
保育士や幼稚園教諭などの有
資格者です。
保育所、認定こども園は、ゼロ歳児三対一、一、二歳児六対一、三歳児二十対一、四、五歳児三十対一。私立幼稚園は、満三歳から五歳児まで三十五対一です。この基準を御記憶いただきたいんです。
この
保育者の配置基準について、四つの赤い実線ラインを引きました。上から、一が認可基準です。二は、事故が発生したときに施設側の過失の有無にかかわらず
保護者に対する給付金が出るスポーツ振興センターの災害共済給付金の枠組み、これを公的な無過失保険と呼んでおりますが、これに認可外
保育施設が加入するための基準です。一の認可基準の六〇%が有
資格者であればよいとされています。三は企業主導型の基準。一の認可基準の五〇%が有
資格者で足りるとされています。四が認可外
保育施設指導監督基準です。これは、一の認可基準の三分の一が有
資格者で足りるというふうにされています。
これらのたくさん、四つある基準のうち、一から三というのは、これをクリアすれば補助金が出ますよ、あるいは給付が出ますよというプラスの基準であります。それに対して四、認可外
保育施設指導監督基準は、これよりも下の施設については、行政による改善勧告や公表、事業停止命令、閉鎖命令など、排除していくための、行政処分をかける、そういう基準です。
意味づけが全く異なります。
一番右のブルーの枠が認可外
保育施設ですが、中には指導監督基準すら満たしていない質の低い施設が存在しています。死亡事故の実態からすれば、これらの指導監督基準を満たしていない施設は、排除しなければならない、この黄色い排除ゾーンと書いた部分になります。
従来であれば、
子供の命を守れないということで、事業停止命令や閉鎖命令の対象としてきたラインより下の排除ゾーンのところに、今回五として破線を付しましたけれども、今回の改正案の附則第四条二項で、市町村の条例で定める新たな基準をつくって、これを満たす施設は
無償化するということになっております。
指導監督基準を満たさない、排除しなければならないゾーンにある施設まで
無償化の対象とすることはどういうことなんでしょうか。これでは
子供の命を守れないのではないかというふうに思います。
四枚目のスライドをごらんください。
保育施設での死亡事故を、認可施設と認可外
保育施設で比較したものです。認可外では、認可の二十六倍もの
確率で死亡事故が起こっています。そして、内訳を見ますと、亡くなっているのはゼロ歳から二歳児が八七%を占めています。まさに、今回、低
所得ということで
無償化の対象とされている層ということになってきます。加えて、死亡事故が起こっている認可外施設は、立入調査でも、
保育士不足などの基準違反が繰り返し指摘されている施設ということになります。
五枚目のスライドをごらんください。
今回の
法案の附則の四条が認可外
保育施設を
無償化の対象とした理由は、利用者の公平性の確保及び質の向上を促進する観点というふうにされています。しかし、待機児になってしまった方と
保育園に入れた方との公平性は、基準を満たす施設、事業をふやすことで、
希望する人が全員入れるようにすることで図るべきだと思います。
生後三カ月半の赤ちゃんを、何度も基準違反が指摘されていた施設で亡くしたお父さんがおっしゃった
言葉を
紹介します。基準を満たさない
保育施設が営業できていると思っていなかった、大人が利用する飲食店ですら、保健所の検査で基準違反があれば事業停止命令が出るのに、か弱い赤ちゃんを預かる
保育園が基準違反でも営業できるというのはどういうことなんでしょうか。
保育園に入りたいというニーズは非常に切実なものではありますが、
保護者は
子供の命を危険にさらすような施設にまで入りたいというふうに思っているわけではありません。安全で安心できる、
子供の発達にもプラスになる質の高い
保育を求めています。
質の向上を促すという観点でも、この附則第四条は足かせになります。基準を満たさない認可外を五年間の経過措置で給付対象にしたら、基準を満たさなくても
無償化になるわけですね。そうすると、質を高めていこうというインセンティブがなくなります。行政は、事実上、五年間は事業停止命令や閉鎖命令をかけられなくなります。その間、
子供の命が危険にさらされ続けます。あくまでも、基準を満たす施設、事業をふやすことにお金を使っていただきたいということです。
六枚目のスライドをごらんください。
現在、
保育士不足により入所定員がふやせない
状況になっています。
保育士不足というふうに言われるんですが、
保育士の資格を持つ人が足りないのではありません。資格を持っているけれども
保育士として働いていない、そういう方が
政府の推計でも六十五万人以上いらっしゃいます。
保育士のやりがいはあっても、その仕事の負荷と責任に対して、見合わない待遇で働いてくれる人がいないということです。
保育士解消の手段としては、負荷を軽減する方向と給与をふやす方向、この両方でアンバランスを解消する必要があります。
スライドの七枚目をごらんください。
保育士の負荷を軽減するために、
無償化の前にやっていただきたいこととしては、
保育士の配置基準を改善すること、これが切り札だと考えております。
スライドの八枚目。
まず、一歳の配置基準に関してですが、一、二歳児では、突然の予期せぬ死亡の発生率が、
日本全体の全国平均よりも、
保育施設での発生率の方が高いという報告があります。しかも、一歳児が死亡した施設の八三・八%で六対一という国の基準を満たしていたというんです。ということは、配置基準を守っていても死亡事故が起こっているということで、国の配置基準が
子供の命を守る最低基準に達していないんじゃないかということが推測されます。
次のスライドに行きます。
三歳から五歳の配置基準に関してですが、
内閣府が公表している
教育・
保育施設における事故情報データベースによると、一カ月以上の治療を要したけがの七五%が骨折です。そして、二十人以上の
子供たちを一人で
保育しているときに発生している傾向が報告されています。三歳から五歳のこの二十対一、三十対一、三十五対一という基準は、OECDでも断トツの最低基準、最低ラインです。安全の面からも不十分であるということが推測されます。
十枚目のスライドに移ります。
内閣府から重大事故防止のためのガイドラインが出されています。例えば、プールで死亡事故が相次いでいることから、プール活動を行う場合には監視係を置くこと、監視が置けないときはプール活動の中止も選択肢であるとされています。しかし、現実に、四、五歳児、三十対一、三十五対一の基準でどうやって監視に専念する係を配置できるというんでしょうか。
子供の安全を守り、
子供に寄り添い、応答的かかわりを
意識的に取り組んでいるよい
保育園や幼稚園では、委託費の積算根拠となっている国の最低基準を超えて職員を配置しています。例えば四、五歳児でも、三十人に先生一人という園はほとんどなく、十五対一ぐらいの配置で行っているのが実情です。この分にかかる
費用が園の持ち出しになっているため、国から来る委託費を基準よりも多い
保育士で分配することになり、一人
当たりの
保育士の給料が低くなっているということです。この配置基準を引き上げることで、仕事の負荷を減らし、給与を積算根拠に近づける必要があります。
認可外
保育施設指導監督基準を満たさない施設を
無償化の対象とすることをやめていただきたいということ、待機児童になった方との公平性は、配置基準を上げて、潜在
保育士の方に
保育現場に戻ってきてもらって、そして供給量をふやすことで公平性を図っていただきたいというふうに考えます。
以上です。ありがとうございました。(
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