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吉田委員 大臣は先ほどちょっと先の問いに対しても答えをいただいたんですが、それは結構なんです。
つまり、まず、
大臣、例えば
日本乳癌学会のホームページなどによると、入院十四日間で乳房の切除術、腋窩リンパ節郭清などの手術をすると総額は大体百万円ぐらいです。実際は三割負担の三十万ですね。抗がん剤治療の代表というと、例えばFEC療法。三週ごとに六回、身長百六十センチ、体重五十キログラムぐらいの場合は約五十三万で、三割負担の場合だと約十六万ぐらい、こういった形です。化学療法は抗がん剤をいろいろ組み合わせることもありますので、実際の費用はもっと上がることもあるわけであります。
がんに罹患してからの治療というのは、手術に加えて抗がん剤治療をする必要があったり、また手術不能で抗がん剤治療だけを続けていくなど、やはり経済的な負担はいろいろ、
大臣、あるわけであります。
乳がんというのは、比較的、今の技術、
委員長も外科医でいらっしゃいますけれども、予後はよくなりましたね。ただ、しかしながら、やはりステージ4だと五年生存率は三七・八%ぐらいですね、五年生存率、ステージ4の場合。やはり、発見がおくれると高い死亡率となるのは間違いない。
また、がんの手術自体も、
大臣、腫瘍というのは増殖性の変化をしていくわけですよ。そうすると、未熟な血管ができてくる。いわゆる癒着を含めて、他の臓器へ進展していくときに、がんというのは未熟な血管をどんどんつくって、そういうものが豊富になると、当然、切除のリスクは高くなるんです、
大臣。外科的手術というのは、出血を制御しないと患者さんは死んでしまいますので、出血を制御することが課題の
一つです、外科手術は全て。つまり、がんになってからの手術というのは、それだけやはりどんどん難しくなっていくわけですよ。それは、がんが進展していけばしていくほどそうである。
それに比べて、予防的切除の場合は、血管の処理とかそういうリスクも当然、比較的低くなります。外科的手法に関しても、不測の事態も起こりにくいということがまずあります。手術時間も短い。当然、本人への負担も軽く済みますね。こういった外科的手術、似たような手術をするにせよ、
安全性が高い手術が提供できる可能性がある。
また、がん治療の場合は、
大臣、大事なことですが、根治術が成功すれば
社会復帰をすることも可能ですよね。しかし、根治が可能で、先ほど乳がんの例でお示ししたとおり、抗がん剤の治療が続くとすると、経済的負担も当然重いんですが、なかなか
社会復帰できないということが起こってくると、
社会的な利益の喪失、家族の負担といったさまざまな不利益をこうむってくる、そういったこともあります。
大臣も調べられたかもしれませんけれども、アメリカのアンジェリーナ・ジョリーという女優さんが、二〇一三年の五月にニューヨーク・タイムズに寄稿しています。乳がん予防のための両乳腺を切除する手術を受けたとおっしゃっています。これは、乳がんになる可能性が八七%と診断された、アンジェリーナ・ジョリーさんのお母上も卵巣がんで五十六歳で亡くなっていたので決断をしたと。
まず、卵巣がんというのは、
大臣、非常に静かに進展していくがんでもありまして、卵巣そのものも、挙児、
子供を産むことを希望しなくなってからは、子宮とともに人体における必要性というのは相対的に低下をしていきます。その反面で、悪性腫瘍が発生した場合は大きなリスクと負担を負う臓器であるとも言うことができ、そういった意味でも、予防切除の必要性は大きいと考えられるわけであります。
さっき申し上げたように、根治できずに抗がん剤の治療を続けると、
社会的コストの問題、家族の負担の問題の重大さに加えてやはりこういった
医療経済的な問題からも、予防的切除というのは考慮していかなければいけないと思います。だから、まさに我が国もそういった時代に来たんだと思います。
もう一度、重なった答弁はなるべく少なくしていただきたいですが、医学や科学技術の進歩は、それまで不可能だった予見、予防を可能にしましたね、
大臣。それに対して、例えば保険給付や国民の哲学、倫理が必ずしも追いついていないかもしれないわけであります。
しかしながら、国民のためには、病気になる前、病気が重くなる前に対応することが、
医療費の低減もさることながら、国民の幸せ、幸福のために必要なのではないかと考えます。そして、それに制度を対応していく、そういったことが政治や行政の役割ではないかと、
大臣、考えるわけであります。
今、ゲノム、ジェノムの時代になりましたね。全ゲノムの時代に突入しました。そういった今こそ、いつか誰かが決断しなくてはならない、そういったことなんだと思います。
まずは、もう一度、
大臣、一部重なる答弁をいただくかもしれませんが、本症候群、HBOCに対する予防切除の保険給付、さらには国民への普及啓発の決断、こういったものを
大臣の御決意として御答弁をいただけませんでしょうか。