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花島参考人 私は、仙台で
弁護士をやっております。少年
事件の付添人、
児童相談所長の代理人、それから
子供を抱えてDV被害から避難してきた方の離婚
事件の代理人、さまざまな
事件の
経験の中で、多くの
子供たちにかかわる
機会がございます。実感をするのは、少年非行の背景には
児童虐待がある、
児童虐待の背景には
家庭内の
暴力、DVがあるということです。
子供を
暴力から守るのは
社会の
責任だと私は
考えております。
本日は、貴重な
機会をいただきましたので、改正
法案のうち、お手元の
資料、A4一枚物ですけれども、そちらに沿って三点、私個人としての
意見を申し上げます。
まず、
児相への
弁護士配置の規定のあり方ですけれども、改正案を拝見しますと、常時
弁護士による助言と指導のもとでという実質的な文言を追加するとしながら、準ずる措置は引き続き認めるというものです。これは、
全国各地の実情を踏まえて柔軟な
対応を認めるという点で、私は大変適切な
考え方じゃないかなというふうに思っております。
次に、二点目ですが、
児童への体罰を禁止する規定を
児童虐待防止法などに書き込むということは、体罰も
虐待だから許されないんだよということを明らかにする意味で大変重要なことだと
思います。ただ、
虐待防止法十四条の改正案を拝見しますと、体罰禁止を求める名宛て人が
児童の親権を行う者に限られているという点には不十分さがあると思っております。
これは、もともと
虐待防止法十四条が親権の行使に関する配慮の規定であること、それから、より根本的には、親権を行う者に対して懲戒権を認めている民法八百二十二条の存在から来る限界だと
思います。この点は、見出しを「体罰の禁止等」というふうに
野党案は書きかえていらっしゃいますけれども、見出しを書きかえても同じことが当てはまるんじゃないかと思っております。
結論としては、やはり懲戒権の規定の削除を急いでいただきたいというふうに
思います。
しつけとか指導というものに名をかりた体罰という
虐待は、親権者ではない内縁の夫、それから教育機関とか
児童福祉施設の
職員などによっても起きています。
この点、
虐待防止法三条をごらんいただくと、名宛て人を特に限定せずに、「何人も、
児童に対し、
虐待をしてはならない。」というふうに規定しております。
虐待防止法に体罰の禁止規定を設けるのであれば、私は、国連子どもの権利
委員会の勧告を
参考にして、
虐待防止法三条の「
虐待」の後ろに括弧書きで、体罰その他の残虐な又は品位を傷つける形態の罰を含むというふうにつけ加える改正がよいと
考えます。
三点目として、
子供の
意見表明権に関する
意見を申し上げます。
子供の
意見表明権を保障するということは、私たち大人の側で
意見を聞くという
責任を制度化して、これを引き受けるということだと思っています。
この観点から改正案を拝見しましたが、
意見を聞く大人としては、
児童福祉審議会を活用することが前提になっております。
意見を述べる
子供が置かれている
状況に配慮しなければならないというのを
児童福祉法八条に書き加えるという
内容ですよね。他方で、
意見表明権を保障する仕組みの構築などの配慮の具体的な
内容については、附則における検討事項にとどまっているというふうに拝見します。
児童福祉審議会というのは、児福法の平成二十八年改正以降は、
児童からの苦情を受け付けるなどして
子供の
意見を聞くことができる機関とされてきました。でも、実際に
子供の
意見が児福審に届いた件数は、ごくわずかのようです。
児福審には、もともと、
子供を
施設入所させるべきかどうかを
審議するような役割、それから、
児童虐待によって
死亡事例が出た場合にそれを検証する役割、さらには、いわゆる
施設内の
虐待に関する
通告の受理機関としての役割、さまざまな役割が担わされていますが、受理機関といっても、私も部会の
メンバーを長くやっていましたけれども、外部
委員ですので、
調査活動も含めて事務局頼みの
体制にならざるを得ません。部会としては、機動的、主体的に活動することはなかなか困難でした。
こうした
経験を踏まえますと、今後、
施設入所中の
子供などの
意見表明について児福審を本格的に活用するというのであれば、ほかの部会とは独立した、機動性を持った専門部会を設置する必要があります。
私は、宮城県仙台市の委託事業で、
社会的養護のもとで暮らす
児童の自立に向けたリービングケア、それから自立した後のアフターケアに
弁護士の有志としてかかわっています。十八歳の誕生日の一カ月前に、
意見も聞いてもらえずに、突然
里親の委託を解除されて実家に帰されたという男の子がいました。結果的に、その男の子は、実父による
虐待の被害を訴えて、そのときはもう十八歳を越えていたわけですけれども、私たちに
保護を求めてきたというケースがございます。
児童相談所による措置とか解除の判断に対する
子供の不服についてもこれから
児童福祉審議会が担当するわけですから、
行政組織からの独立性、第三者性、中立性の高い
体制を整えないと
子供たちの信頼を得ることができないというふうに
思います。
この点、つい最近公表された厚労省の研究事業の報告書が
参考になります。お手元の配付
資料の裏面、
資料の二、これはその報告書に掲載されている
意見表明モデルの図の一部でございます。
児福審の中に子ども権利
擁護部会を設置して
審議する、
審議の前提になる
調査活動は、部会から
調査権限を与えられた
調査員が機動性を持って行うというアイデアです。
さらに、
子供に直接会って、話を聞いて
意見表明を助ける役割、これも、
行政組織からの独立性を保障された
意見表明
支援員が担うというアイデアです。報告書では、この
支援員のことを、イギリスやカナダの制度を
参考に、
子供アドボケートというふうに呼んでおります。
独立性のある
意見表明が行われるには、児福審の部会員と
調査員、
支援員を分ける必要があります。そして、この
調査員、
支援員は外部委託によるべきとされているのも特徴です。まずは、公費で予算をつけて、
子供の権利
擁護に関する専門性を持った
人材を
確保する制度を築く必要があります。
この点で、各地の
弁護士会との
連携も不可欠になると
思います。市民アドボケートの養成講座の動きもあって、これも重要だと
思います。今年度、厚労省のモデル事業も行われるようですので、まずは制度化をして
内容を充実させていくとよいと
思います。
子供から見た
支援員へのアクセスの問題があります。
子どもの権利ノートと呼ばれる冊子の活用ですとか、
相談を受け付ける電話窓口の運営、それから、プライバシーを
保護するシールとセットになったはがきを配付する、こういった細かい工夫も欠かせません。
何よりも、
子供に寄り添う
支援員の存在というのを
子供に知ってもらうためには、
支援員がみずから
施設や一時
保護所を定期的に巡回訪問して制度のPRをする手間をかける必要があります。
里親に委託されているお子さんのことを
考えると、アウトリーチの問題についてはアクセスの大きな壁がある、これも問題ですので、指摘させていただきます。
こう
考えますと、
子供の
意見表明権を保障する役割を児福審が現実に担うには、一定の
調査権限が与えられて、機動性、独立性、第三者性、専門性を兼ね備えた人員の配置が
課題となります。これは簡単なことではありません。
この点、私は、地元宮城県の
児童自立
支援施設で、
社会福祉法に基づく苦情解決の第三者
委員を十五年以上やっております。そこでの取組を振り返りますと、まず、
施設の中で解決されない悩みを聞く大人が
施設と利害
関係のない第三者だということ、それから、
相談用紙に書いて寮の中のポストに入れるだけで、
職員から
委員に連絡が来て、すぐに話を聞きに飛んできてくれること、そして、
内容によっては、第三者
委員から
施設側に
子供の
意見を伝えて改善を求めてくれる仕組みになっていること、これが大事だと思っています。
子供たちは常に入所、退所の入れかわりがありますので、
委員の顔を覚えてもらうために、定期的に
施設の訪問も行っております。
子供から見て、制度がふえるばかりでは、複雑になるだけで意味がありません。ですから、第三者
委員の制度が機能している
施設においては、第三者
委員が
子供のかわりに児福審への申出を行うとか、
意見表明
支援員の役割を兼任する特例を認めてもよいと
思います。
以上を前提に附則の検討事項案を拝見しますと、
意見表明
支援員、それから
子供アドボケートを想定した制度、
子供の権利救済機関の設置に踏み込んだ具体的な制度設計を政府に義務づける
内容を持つ
野党案の実現を強く希望するものであります。
また、
児童の一時
保護や措置の際に
児童相談所で
子供の
意見を聞くということは現状でも行われているわけですが、これを
野党案のように
意見表明権の保障の観点から制度化するのであれば、やはり
子供の
意見表明を
支援するアドボカシー制度とセットで
整備する必要があると
思います。
以上です。ありがとうございます。(
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