○山本太郎君 ただいま議題となっております
原子力損害の
賠償に関する
法律の一部を
改正する
法律案に対し、希望の会(自由・社民)を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。
その
内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
これより、その趣旨について御説明いたします。
平成二十三年に
発生した
福島第一
原発事故によって、広範な地域に甚大な
原子力損害が生じました。
被害者への救済は滞り、原子力
事業を延命させるためだけの法案となってしまっている現状を改善しなくてはなりません。
国民から信頼される
原子力損害賠償制度を構築するため、本修正案を提出するものであります。
修正の要旨は、次のとおりであります。
第一に、
法律の目的から、「原子力
事業の健全な発達」に係る文言を削ることとしております。
福島第一
原発事故という未曽有の被害をもたらしてもなお、収束、
廃炉以外の原子力産業を保護していこうとする合理性はもはやなく、この一文があるために、原子力を保護するために
被害者保護をないがしろにしているという事例が起きています。よって削除します。
第二に、異常に巨大な天災地変により生じた
原子力損害については、
原子力事業者の免責を認めないものとしております。
世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ稼働させるというのであれば、異常に巨大な天災地変の際に
原子力事業者の免責は認めません。津波、地震、火山の噴火にも
対応できるという無敵の原発規制、奇跡を具現化できたのであれば、免責する必要など全くありません。
第三に、
賠償措置額を十兆四千億円に引き上げることとしております。
残念ながら、千二百億円以上の
賠償措置額では受けられないという民間
保険の感覚はまともです。これは、市場原理では成り立たない
事業との宣言と同じ。一方で、民間
保険の上限をそのまま
賠償措置額の上限として定めるのはお門違いです。そのような額では焼け石に水であり、十分な
賠償を
被害者にできるわけもないことは、皆様よくよく御存じの
お話。
史上最悪の核惨事を経験しておきながら、上限を上げれば民間
保険の引受手がないから
賠償措置額は据置きという話は成り立ちません。民間
保険の引受手がないなら、
事業者には供託金を積ませるというのが当たり前です。最低でも、今現在、
東電自身が新々総合特別
事業計画
作成時点で可能な
範囲において合理性を持って確実に見込まれる
賠償見積額として
公表する十兆四千億円は準備させることとします。
第四に、
原子力損害賠償紛争
審査会が定める指針について、少なくとも毎年一回
検討を行い、必要があると認めるときはこれを変更しなければならないこととし、指針の策定及び
検討を行うに当たっては、
被害者及びその
関係者の
意見を聴かなければならないこととしております。
現行の
被害者救済手続において、
東電事故における
被害者に対する
賠償は、
原子力損害賠償紛争
審査会が策定する指針に沿って
東京電力が独自に
賠償基準を作り、それに基づいて行われています。しかし、実際の
損害賠償は、自然的、社会的基盤が失われるふるさと喪失損害や放射性物質汚染による精神的被害等が含まれていないなど被害の実態にそぐわないものになっており、極めて不十分。これらのことから、
損害賠償をめぐって
被害者と
加害者である
東京電力との間で紛争が頻繁に起きており、
東京電力はADRで提示される和解案を再三にわたって拒否、そのようなケースが増加しています。
これらは、ひとえに
賠償指針の策定、
見直しにおいて
被害者の現状が全く考慮されていないということに尽きます。少なくとも毎年一回、被害を被った当事者を交えて指針の
内容について
検討を行い、必要があると認めるときはこれを変更するようにするべきであります。
第五に、
政府は、少なくとも三年ごとに、
福島第一
原発事故により生じた
原子力損害の額を踏まえ、
賠償措置額の更なる引上げについて
検討を行い、その結果に基づいて必要な
措置を講ずるものとしております。
今後、
東電による
福島第一
原発事故による
被害者への
賠償額はまだまだ拡大する余地があります。よって、少なくとも三年に一回、若しくはそれより多い頻度でその時点での
賠償額を考慮し、それ以上の
賠償措置額の再設定を行うものとします。
第六に、
政府は、速やかに、
福島第一
原発事故に係る
原子力損害の
賠償の
実施状況等を踏まえ、第十六条の規定による国の
援助を受ける
原子力事業者の株主その他の利害
関係者の
負担の在り方、その他の
原子力損害賠償制度の在り方について抜本的な
見直しを含め
検討を行い、その結果に基づいて必要な
措置を講ずるものとしております。
福島第一
原発事故において、多くの人々が故郷や家、財産などを失うような被害を被り、今でも苦しみの中にいます。これらの人々には、
政府の借金や電力料金として
国民が
負担することにより、辛うじて
被害者救済が進められている状態です。一
事業者に
責任を負えるレベルの
事故ではなく、最終的には
国民負担となることは避けられないとしても、まずは
事業者が全てを出し切ることはもちろん、
原子力事業者に金を貸し、その利息でさんざんもうけてきた銀行や株主への
責任をどう設定し、どう
賠償に結び付けるかを具体的に示さなければ、
国民負担の理解など得られようもありません。その課題に対して本格的議論を始めることとします。
第七に、
政府は、速やかに、
原子力事故が生じた場合における国の
責任の在り方を明確にする観点から、国の
責任において行う
被害者の救済に係る
制度等について
検討を行い、その結果に基づいて必要な
措置を講ずるものとしております。
原賠法では
お金の
賠償に係ることだけを取り扱っていますが、
発生する
責任や救済すべき事柄は
お金のことだけでなく、生活再建や健康不安、健康被害、
除染など多岐にわたります。こういったことから、別建てで総合的な救済立法が必要と考えます。
また、今後起こり得る
事故を考えれば、
原賠法は
事業者と
被害者の間の
お金の話だけにとどまらせるべきではありません。
さらに、
加害者が一方的に線引きした避難区域や
賠償の基準により、そこには含まれず、流浪の民として生活を強いられる避難者も存在しますが、現在、なきものとして扱われています。このような人々についても国で積極的に救済を目指すことが必要であります。
第八に、
政府は、第六及び第七の
検討を行うに当たっては、
福島第一
原発事故の
被害者及びその
関係者の
意見を反映させるために必要な
措置を講ずるものとしております。
この
法律は
被害者の救済のためのものです。全てにおいて
被害者の声を反映させることは当然であります。
以上が修正案の趣旨であります。
何とぞ
委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。