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参考人(
二階堂健男君) 私は、
全日本水道労働組合、略称全
水道と申しますけれども、中央執行
委員長を務めます二階堂と申します。
本日は、参議院厚労
委員会におきまして
水道法改正案についての
意見を述べる
機会をいただき、大変ありがとうございます。
私は、今回の
水道法改正において、
基盤強化については異論はございませんけれども、とりわけ二十四条、
運営権の設定については反対をする、そういう
立場で、同時に、私自身、横浜の
水道事業で三十七年間の勤務、そして、今、もう北海道から沖縄まで、中小も含めた多くの
事業体、それら多くの仲間を
代表して、
意見を申し上げたいというふうに思います。
水道事業は、申し上げるまでもなく、市民生活に欠かすことのできない、極めて
公共性が高いインフラ
事業です。
水道というのは常に自然が相手でございまして、水源涵養林の保全から取水、水質
管理、
浄水、
管路の維持など、二十四時間、三百六十五日、昼夜を問わず、私たちの仲間は全国各地で奮闘しています。
水道事業は、市民生活のみならず
企業活動など社会の基盤を根底から支える
事業として、私たちは誇りを持って働いています。同時に、
水道事業は巨大な装置産業ですので、多くの関連
企業の
皆様とともに、官も民もなく、安全な水を安定的にできるだけ安価に
供給することだけを目指して日々の
業務に励んでいます。
今回の
法改正は、
水道事業の
基盤強化として持続可能な
水道事業を目指すものであると理解をしますけれども、冒頭申し上げましたとおり、
官民連携の推進として
公共施設等の
運営権の設定を可能とする、極めて危険な問題を含んだ法案となっていることを指摘いたします。
そもそも、
水道事業の
基盤強化が必要になった
状況については、先般の
審議でも明らかなとおり、人口減少、
給水収益の減少という事態を迎えるということでもございますが、あわせて、
職員定数の削減、新規採用の抑制、過度な
業務の委託化や人事
異動の活発化などで各
事業体の技術的基盤が喪失していることも大きな要因となっています。
人材不足ということは
厚生労働省もお認めになっています。しかし、こうなってしまった原因は行き過ぎた行政改革を推進してきた国の施策にもあり、
水道事業の技術的基盤や人的基盤を喪失させる政策を取っておきながら、それを理由にして
法改正を行い、さらに
運営権方式の導入など、到底理解ができません。それでも、今回の
法改正で特に厳しい地方の
水道事業が守られるのであればやむを得ない面もありますけれども、少なくとも
運営権方式の導入で地方の過疎化に苦しむ
自治体の
水道事業が持続可能になるとは到底考えられません。
各
自治体の
水道事業は、厳しい
経営環境の中、
料金値上げもできるだけ行わないよう
努力を続けています。
水道事業に従事する地方公務員も、この四十年間で七万六千人から四万五千人、約四割減少しました。それでも、予期せぬ事故や
災害を除けば、水質基準を下回るような
水道水を
供給することもなく、断水が長期に及ぶこともほとんどございません。
水道事業は問題がない
状況が当たり前であり、日常的に評価されることはありません。しかし、一たび
災害が発生をすれば一日も早い復旧が求められます。私たちも、当たり前の
水道、安全な水が安定的に使える
状況であれば、評価される必要はないと考えています。私たちの仲間もそれを誇りに持って、社会の基盤を支えていると自負しています。
政府は
コンセッション方式を
選択肢の
一つなどと言ってはばかりませんが、過疎化が進む地域の
水道事業者が
コンセッション方式を導入をしようとした場合でも
選択肢の
一つとなり得るのでしょうか。
一方で、
コンセッション方式を導入するために、広域化、
事業統合を進めて
スケールメリットを出すなどという思考は本末転倒であり、それならば、公営のまま広域化、
事業統合して
事業を継続させる方が重要です。
コンセッション導入に際して
モニタリングや監視機関の設置などの議論がされておりますけれども、そうしたことをしなければ安全、安心が担保をされない、それこそが
コンセッション方式の最大の問題点だと言えます。
現在、
コンセッション方式の導入を考えておられる幾つかの
自治体では、決して
事業基盤が脆弱な
自治体、
事業体ではなく、本当に基盤の
強化、国や都道府県、
自治体の
支援が必要な
事業体ではありません。
自治体が本当に市民に
責任を果たし、市民の命をどう守っていくのか、そうした考えに立てば、
コンセッション方式の導入などという方策を選択しなくとも、おのずと活路は見出されます。
私が何を申し上げたいかといえば、こうした本当に
事業経営が厳しい
自治体、
事業体は、
コンセッションなどという
方式は仮に導入したくてもしようがない状態なのです。私たちは、市民の水、
水道をいかに守り、全ての人々が分け隔てなく安心して
水道を使っていただける社会を持続させたい、ただその思いだけです。その限りで申し上げれば、本当に厳しいながらも
努力を続ける
自治体、
水道事業体への
支援策をもっと具体的に議論をしていただきたいと思います。
次に、
災害時のことについて若干申し上げます。
今年は自然
災害が大変頻発をしています。過去にも、阪神・淡路、東
日本大震災などの大きな震災がございました。発災直後に一刻の猶予も許されない
状況の中、全国の
水道事業者やそこに働く者は、被災地に応急
給水支援のために駆け付けています。東
日本大震災から七年が経過した今も、
宮城県や福島県など、
水道施設の復興に、大都市
事業体を中心に、長期的に
職員を派遣して
支援が続けられています。
一方で、こうした
災害対策や
支援において、
水道事業体は多くの経験を積み重ねる中で知識や技術を蓄積し、その技術力は、
日本の
水道事業における
浄水技術、
管路維持、
給水装置など、
水道事業の技術や機材の発展にも大きく寄与しています。
日本の
水道技術は、
世界的にも誇れる技術力を有しています。私自身も、二〇一一年、東
日本大震災で福島県いわき市に駆け付けました。
給水所には長い市民の行列がありました。その姿を見て、改めて
水道事業に携わる労働者として、
水道事業の社会的責務や役割、このことを再認識をしたところでございます。
また、今月に入って、七月の西
日本豪雨
災害の被災地を訪問してきました。広島県尾道市、三原市、呉市、四国に渡って宇和島市を訪問してきました。西
日本豪雨
災害では、土砂
災害や河川の氾濫などにより
水道施設も甚大な被害を受けました。被災した
自治体、
事業体では、全国からの応援もあって、仮復旧の
事業体も含めて、
水道水の
供給は一旦支障はない
状況となっています。
しかし、発災した
災害では、他の
自治体からの応援や
支援だけでなく、被災した
自治体が今後主体的に仮復旧を本復旧に戻すなど、最終的な復旧まで
責任を持って
事業を
運営していかなければなりません。先日の法案
審議でも
災害対応についての
質疑が行われておりましたけれども、政府側の答弁では、仮に
コンセッションが導入された場合においても、その
責任についての明確な説明がなされていません。
災害支援は公務員だからできたなどとおこがましいことを申し上げるつもりもございません。同じ
状況で作業に当たれば、公務員であろうと
企業の労働者であろうと、
一つの目的のために奮闘することは間違いありません。私たちは、関連する
民間企業も含めた、
水道事業に従事する全ての働く者が誇りを持って安心して働ける環境を保持していかなければならないと強く感じています。そうした点からも
コンセッション方式の導入には問題があると考えます。
私たちは、
官民連携が必要であることについては異論がなく、
水道事業の多くは
民間企業の労働者がいて成り立っているのも事実でございます。しかし、
コンセッション方式の導入により、そこに働く
民間労働者も、コスト削減あるいは重層的な雇用、そして低賃金、雇用環境の悪化など、懸念されることも多くございます。
効率化全てを否定するものではございませんが、効率性のみが追求されかねないような時代にあって、そのことが安全性や信頼を揺るがしかねない事態を招きかねない、そのことを強く危惧しています。命の水を守る、市民の暮らしを支えること、ある特定の地域の
水道だけが経済的思考を軸にして特定の
企業の金もうけにくみするということを混同しては、この国の基盤そのものが失われてしまうのではないでしょうか。
最後に、
委員の
皆様におかれましては、いかにして市民の水を守るのか、そのために何が必要なのか、そのことをしっかりと御議論いただきたいと存じます。そして、人的基盤の喪失が著しい
自治体、財政基盤が極めて厳しい
自治体、そうした
自治体に対して、国、都道府県の強い
支援策をお願い申し上げ、
参考人としての
意見とさせていただきます。
ありがとうございました。