○緑川
委員 国民民主党・無所属クラブの緑川貴士です。
ただいま議題となっている
漁業法等の一部を
改正する
法律案について、反対の立場から討論をいたします。
漁場の有効活用を通じた
漁業生産力の拡大、そして持続可能な浜の暮らし、目指す将来性、
方向性は共有をいたしますが、そうした漁場の
管理や浜の活性化がなぜこの
法案で実現できるのか、現場
漁業者の理解が進まず、その声を反映した内容とも言えず、質疑を通じても納得ができません。
まず、区画
漁業権と定置
漁業権の免許の法定優先順位の廃止については、余りに拙速であります。
一定の区画における養殖を行える区画
漁業権には既に法人が全体の半数近く、四五%が参入をし、定置
漁業権についても全体の三六%、法人が既に免許を取得できております。これらの法人の多くは、優先順位の要件である地元漁民七割以上、また地元漁民七人以上の、つまり地域の雇用を守っている法人であり、本
改正案の目的であれば、優先順位を保ちながら地元雇用を確実に守れる法人をむしろ基軸にした法
改正であるべきです。
これに対して、政府は、地元
漁業会社の
漁業権の行使が満了し、その切りかえのときに、高齢化など、地元漁民の雇用人数が七人から例えば六人になり、その会社の優先順位が下がり、優先順位を廃止しなければこの会社に免許を与えられなくなる場合があることを
説明しますが、そうであれば、
漁業経営をめぐる切実な声については、その
実情を把握できる地元
漁業者の熟議、合意、利害調整の上で果たされるべき
部分であります。
しかし、本
改正案では、漁場の利用
制度の見直しの中で、有効かつ適切に漁場を活用している場合といった、極めて曖昧な、
漁業権の付与を免許される者の定義があります。そして、免許を付与する
知事の裁量権が拡大している中で、地元の意見を聞くというのは努力規定であり、その意見に従うということとは別であり、その漁場において個別
漁業権、
団体漁業権を定めるかなど、参入させたい
企業の条件に合わせることも可能であります。海区漁場計画の策定プロセスの時点で恣意的に決められるおそれが強い点で、
改正案は大きな瑕疵があります。
さらに、海区
漁業調整
委員会においても、
漁業者代表を中心とする行政
委員会という形を
維持するとしながら、公選制が廃止されます。そうなれば、
知事の意向に従うような、その提案に賛成することが見込めるような人だけを選ぶ
委員会で、
漁協や地元
漁業者にとって海区
漁業調整
委員会が公平な組織であるという法的な担保はどこにもありません。
また、地元
漁業者から
水産物を引き受け、産地市場で買参人と販売交渉するなどして地域経済そして地元漁村の活性化に努めてきた
漁協は、極めて重要であります。しかし、本
法案の
改正後は、漁場に新たに参入する
企業によって水揚げされた
水産物は、産地市場を介さない自主流通に委ねることになり、この規制がない以上は、
漁協の重要な経営基盤である、総事業利益の半数近くを占める販売事業の弱体化は避けられません。浜の存続を強調しながら、産地市場の流通への配慮に欠け、
漁協それぞれの創意工夫に期待したいというだけの政府の姿勢は、余りに無責任です。
また、統一的な漁場
管理を担い、地域経済を潤す
漁協、地元
漁業者の経営弱体化につながることで、産卵場、藻場の育成、赤潮対策など、持続可能な
海洋環境に配慮できる漁場の担い手が減る
懸念も拭えません。
新たな
資源管理システムとして
導入される
漁獲可能量、
TAC管理で、個別の
漁獲割当て、
IQによる
管理についても、
漁獲数の大きい
沖合漁業であればコストが低く抑えられることで合理的と言えますが、一方、数百の多様な
魚種が存在する
沿岸漁業において個別に割り当てるやり方は非効率であり、また、
最大持続生産量、
MSYをとる方式についても、
親子関係が確実に認められる
魚種に限られるべきであります。
沿岸漁業の
対象魚種の全てを
TAC管理にすることは、およそ現実的であるとは言えません。
陸と違い、所有権が存在しない海において、ここに住んでいる人たちが専ら利用する、専用の
漁業権の地域であるとして明治に定められた先祖伝来の地先専用
漁業権が今の共同
漁業権であり、これに複層的かつ複雑な
沿岸漁業権が存在している今、そのきめ細かい利害調整を、浜に根づく地元漁民が担ってきました。その伝統のなりわいを、浜の暮らしを存続させる主体を、余りに本
改正案は軽視していると言わざるを得ません。
将来に大きな禍根を残すことを強く申し上げて、反対の討論といたします。(拍手)