○
初鹿委員 立憲民主党・市民クラブを代表して、ただいま議題となりました
水道法の一部を改正する
法律案について、反対の立場で討論いたします。
今回の改正案は、
通常国会において審議が始まり、衆議院で採決が行われ、そして参議院に送られたものの採決に至らず、継続審議となっておりました。本日午前中に参議院本
会議で賛成多数で可決され、再び衆議院に戻ってきた
ところでありますが、
通常国会において衆議院で採決をされてから参議院での採決が行われるまでの間に、大きな
状況の変化がありました。
まず、十月十二日、新潟県議会で、住民の福祉とかけ離れた政策である、国民の生命と生活に欠かせない水
事業は民営化になじまないという、
水道法改正案の廃案を求める意見書が可決されました。
十一月四日の産経新聞では、海外での水道料金の高騰、水質悪化、暴動といったアメリカのアトランタやボリビアの事例を
紹介し、十五年間で三十カ国以上が再公営化している事実を
指摘するとともに、先ほどの意見書について、野党系が発案したものだが、
最大会派の自民党が賛成するという異例の決断だと報じております。
この記事以外でも、参議院での採決が近づくにつれ、この
水道法の改正案、とりわけコンセッション方式の導入に批判的な報道が多くなり、国民の間でもやっと水道
事業のコンセッション方式導入の問題点が認識され始めた
ところです。
また、参議院の審議で明らかになった事実もあり、今ここで拙速に採決することなく、衆議院の
厚生労働委員会でも、再度十分な時間をとって審議を行うべきであります。
先ほどの質疑の中でも明らかになりましたが、公共サービス改革を担当していた福田隆之
大臣補佐官が、昨年の六月にフランス等欧州を出張した際に、今回の法改正が行われれば利潤を得る可能性のある水メジャー
企業のヴェオリア社の副社長と会食を行っていた事実、また、出張先での移動を、同じく水メジャー
企業のスエズ社の車を使用していたという事実が判明しました。また、ワイナリーに行っていたのではないかという疑惑については、後ほど確認をして報告をするということでありますが、まだこの報告は受けておりません。
現時点で利害
関係がないとしても、法改正の内容によっては利益を受けるかもしれない
企業に便宜供与を図ってもらうことは不適切であり、政策決定に一定の影響が及んではいないかという疑念は拭えません。
さらに、参議院の社民党福島みずほ
議員の
質問で、ヴェオリア社日本
法人の社員が、出向して
内閣府の政策
調査員として働いていたという事実も明らかになりました。
今回の法改正で利潤を
最大に受ける可能性のある
企業の
関係者が、業務を
調査のみで行っているとはいえ、政策立案にかかわるような部署にいるということは、李下に冠を正さずでありますが、このような人事交流は疑念を生じさせることにつながり、非常に不適切であります。
衆議院の審議の過程でも、海外ではコンセッション方式などにより民営化された水道が再公営化されていることが
指摘され、再公営化した世界の事例に学ぶべきであるとの意見が多数出ておりました。
根本匠
大臣は、参議院の審議で、失敗した事例をしっかり分析し、
水道法を改正して公の関与を強化する今回の仕組みにしていると
答弁をしておりますが、失敗事例の
調査が行われたのはたった三例のみであったことも明らかになりました。
世界の民営化水道の実態を
調査している公共サービスリサーチ連合によると、世界三十七カ国、二百三十五水道
事業が再公営化されております。これだけ多くの事例があるにもかかわらず、わずか三例だけの
調査で問題点、
課題を全て調べ切れているとはとても思えません。
例えば、再公営化しようとしたけれども、
自治体の専門性が失われてしまい再公営化が困難であった事例や、再公営化しようとした
ところ訴訟を提起された事例、こういったものが全く把握されていないのです。
このような新たな事実が明らかになり、疑問が解消されていない
状況で採決を行うなど、あり得ません。衆議院においても、いま一度審議時間をしっかりと設けて議論をする機会をつくる必要があり、この時点で採決を行うことに強く抗議をするものであります。
我々立憲民主党・市民クラブは、さきの
通常国会で、国民民主党と共同で、水道
施設運営権の設定の許可に関する規定である第二十四条を削除する修正案を提出したとおり、今回の法改正全てに反対しているわけではありません。今回の法改正が、
人口減少に伴う水需要の減少、水道
施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する
課題に対応し、水道の基盤の強化を図るためのものであり、この点においては必要性があると我々も理解をしております。
しかしながら、水の安定供給、水質の
確保が十分に図られるのか、料金の高騰やサービス低下が引き起こされるのではないかという疑念のあるコンセッション方式の導入は、絶対に認めるわけにはまいりません。
海外では、水道
事業の民営化による弊害が明らかになり、再公営化の流れが強くなっています。一周おくれで我が国が導入する理由は全くありません。
コンセッション方式の導入を断じて許さないという強い意思を表明して、
水道法改正案に対して断固反対の討論とさせていただきます。(拍手)