○石井章君
日本維新の会、石井章です。
私は、党を代表いたしまして、
議題となりました
公職選挙法の一部を
改正する
自民党案について、
反対の
立場から
討論いたします。
まず、
討論に先立ちまして、
平成三十年七月の
豪雨で亡くなられました
方々に御
冥福を、また、被災に遭われた
方々にお
見舞いを申し上げます。
そして、
国会の
審議中ではありますけれども、
政府に対して、そして
国会の与野党の垣根を越えて、
被災地に寄り添う、そういうことを思えば、
国会の
審議中ではありますけれども、一旦立ち止まって、
被災地の
皆さんに寄り添う気持ちが必要ではないかということを申し添えて、
討論に入ります。
参議院は、戦後の緑風会に代表されるように、その独自性を追求し、
衆議院の政争とは一線を画した、是々非々による熟議を行う良識の府として存在してきました。しかし、非常に残念ながら、近年の
参議院は、政局の府に成り果てたとやゆされております。そのことは、本
法案の
議論においても、突如に現れてまいりましたこの
法案。
民主主義の根幹を成す
選挙制度の
見直しにおいては、言うまでもなく、主権者である
国民の意思を平等に政治に反映させる権利を損なわないことを第一義として、党派を超えて真摯な
議論の積み上げにより
結論を得ることが肝要であります。
しかしながら、本案における与党
自民党の進め方は全くその逆であり、与野党の
協議を一方的に打ち切り、突如
国会に提出して、強引に
審議入りしました。その中身も、
参議院改革協議会などによるこれまでの
議論は一切反映されておらず、他党は初めて目にするものであります。これは、およそ
民主主義とは相入れない、まさに自己都合の
自民党の
党利党略で数で押し切ろうというものであり、決して許されるものではございません。
人口減少、少子高齢化等が急激に進み、社会構造や経済情勢の変化の中、
地方分権の担い手となる基礎自治体にふさわしい行財政基盤の
確立を目的として、
平成十一年以来、
全国的に
市町村合併が推進されました。その結果、
市町村数は三千二百三十二から千七百七十三にまで減少し、
市町村議会の
議員定数も、
平成十年時点の六万四千七百十二人から
平成二十五年には三万四千四百七十六人と、十五年間で五三・三%にまで減少いたしました。
地方においては、
議員定数のみならず、職員の
定数にも各自治体の地道な
努力により削減が進められております。
年間の出生数が百万人を割り込み、
人口減少の傾向が加速しているにもかかわらず、今回、
自民党によって
提案されている
内容は、時代錯誤と言わざるを得ない、まるで社会構造の変化に逆行したものであります。
我が党は、
国民に負担を求める前に政治家自らが身を切る
改革の姿勢を示すことが必要であるということを主張してきました。身を切る
改革から始まる一連の行政
改革によって
改革に必要な財源を
確保することを最優先の政治課題と考え、大阪を中心とした自治体で実績を積み上げてまいりました。
そうした
地方の血のにじむような
努力を踏みにじるに等しい今回の
提案は、良識の府である
参議院としてあるまじき
内容です。
参議院だけがお手盛りで
定数を六人増やす六増を
提案ということは、見識を疑います。断じて許すわけにはまいりません。
本案では、一票の価値が一番低い埼玉県
選挙区を二議席増やすということになっておりますが、今後また一票の価値が低くなった
選挙区が生じた場合には、更に議席を増やすのでしょうか。今回の六増案の
考え方からすれば、過疎県の
人口減少が進んで一票の価値が高まれば、相対的に価値が低くなった
都道府県選挙区の
定数を増やす必要性が生じます。
人口減少が進む中、
参議院の
議員定数だけが増え続けることになり、
国民を愚弄しているとしか思えません。
また、今回、
特定枠を
提案しておりますが、これは紛れもなく拘束名簿式の復活であります。拘束名簿式は、かつて
参議院で採用されていましたが、現在は使われておりません。それは、二〇〇〇年に、当時の与党、
自由民主党が、拘束名簿式は、有権者に
候補者の顔が見えない、過度の
政党化と
政党の順位付けが不透明な
制度だという批判が多いために、
国民が当選者を決定できる
選挙に変えるということを主な
提案理由として、突如、
参議院選挙制度改革に関する
協議会における全
会派一致での約束をほごにして提出した公選法の一部を
改正する案として廃止されたからであります。
その
審議では、
発議者の自民、公明、保守以外の全野党
会派からは当初から猛反発が出ておりまして、最終の本
会議においては、
議長不信任案を提出し、
採決ではほぼ全
議員が退席、棄権するという、
民主主義の根幹を成す
選挙制度の
改正の
審議としては異常な事態の中で、与党の多数で押し切ったまま成立させたものであります。
ちなみに、その
提案理由は、多くの
国民が
定数削減を求めており、その声に鑑みて
定数を削減するという、今回の本案とは明らかに相反することが更に明言されていたことも申し添えておきます。
一度、
民意に反すると排除された拘束名簿式と同様の
制度を復活させるような先祖返りは、
民主主義制度の強化充実という観点から考えれば、完全に逆行しております。
また、拘束名簿式と非拘束名簿式が混在するような
制度は、有権者にとっても立
候補者にとっても分かりづらく、混乱をもたらすだけでなく、
選挙運動が認められていない
特定枠の
候補者を、
選挙区で真面目に
選挙運動をする非拘束名簿の
候補者よりも優先して上位に置くというのは、公正性を欠いた不公正な
制度であるとしか言いようがありません。
選挙運動を行って有権者によって非拘束名簿の上位として選ばれた
候補者よりも元々拘束名簿で上位にある
候補者が優先されることは、理不尽以外の何物でもありません。
さらに、
委員会の
審議を通じて明らかになった
自民党のもくろみは、鳥取・島根、徳島・高知の合区で公認に漏れた
候補者をこの
比例代表特定枠で救済するということであります。
民主主義の根幹を成す
選挙制度をこのような
自民党の議席維持のために利用しようとする、
党利党略、私利私欲にまみれた本案は、憲政史上類を見ない、言語道断、悪法としか言いようがありません。
民意に反する
選挙制度を
提案していることは、
民主主義に反しています。このような
制度を
提案するということについて、政治家としての矜持はないのでしょうか。恥ずかしくはないのでしょうか。
政治倫理・
選挙制度特別委員会の
質疑において、
法案提出者は、理想のみを追い求めることはかえって無責任のそしりを受けると答弁しました。
民主主義体制を強化することは、民主国家日本の
国会議員が目指す共通の目標であるはずであります。試行錯誤しながら
民意を反映させる仕組みを丹念に構築していくことが、政治家に課せられた使命であるはずです。それを、理想のみを追うべきではないとして、一度取り入れて
民意を反映しないとされた拘束名簿式を、
特定枠という、名称を言い換えて改めて導入しようとすることは、意図を持って
民主主義を後退させるということと同じではないでしょうか。
考えてみてください。
提案者である
自民党の拘束名簿の上位に名前が載ればどうなるのか。
選挙運動が認められていないので、
選挙運動費がまず掛からない。ほぼ確実に供託金の没収がありません。そして、当選すれば、解散もなく、六年間
参議院議員になることができる。そして、
自民党の名簿順位を決定できる人がですよ、そのような地位を提供することができる。それが何を意味するのかをよくお考えいただきたいと思います。
ここまでの過程には、民主的な手続が一切ありません。
法案提出者は、理想のみを追い求めるべきではないとしながら、民主的な手続を一切経ない
国会議員をつくり出す
法案を
提案しています。こういう
考え方こそが一番の問題点ではないでしょうか。
国会で過
半数を握っている限り、そういうことを考える、この
自民党の
考え方には承服できません。
民主主義に反し、時代錯誤である
定数増だけでなく、不透明で民主手続を経ない名簿方式を採用するような
提案は、
国民の一人として断じて許すことができない、そのことを強く申し上げて、
反対討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(
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