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仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、
民法の一部を改正する
法律案に反対の討論を行います。
大人も子供も、一人の人として基本的人権、自己決定権が尊重されなければなりません。
成年年齢の二十歳から十八歳への
引下げは、
若者の自己決定権を拡大する積極的な
意義を持ち、欧米諸国を始め国際
社会の趨勢にも合致するものです。
二〇一六年に実現した十八歳選挙権は、
若者の政治参加、
国民主権を実現する重要なものでした。しかし、
法律による
年齢区分は、それぞれの立法目的や保護法益によって定められなければなりません。
本法案による
成年年齢の
引下げによって、十八歳、十九歳の
若者に未
成年者取消し権及び親権者の親権と監護義務による保護がなくなることとなりますが、我が国において、今、
成年年齢の
引下げを行うことについては、それに伴う大きな問題が存在し、その
対策は不十分であり、
国民的な合意が
成立しているとは言えません。
十八歳
成年を適当とした二〇〇九年の法制審最終報告書は、現時点で
引下げを行うと
消費者被害の拡大など様々な問題が生じるおそれがあるとして、被害拡大を解決する
施策の実現、その
効果の浸透、
国民の
意識という三つのハードルを課しました。衆参通じて、法制審
委員を含む
参考人の大方が、達成できていない、不十分との
意見を示したとおり、このハードルはクリアできていないのです。とりわけ、未
成年者がその
法律行為によってどんな失敗をしても、二十歳になっていなかったと証明するだけで取り消せる未
成年者取消し権が、悪質業者も二十歳未満の
若者たちには手を出せない鉄壁の防波堤の役割を果たしてきたことが審議を通じて明らかとなりました。これが十八歳に引き下げられることの
影響は重大です。
法務大臣は、十八歳、十九歳の
若者を独立した
大人として扱う、一般に
大人の入口に立ったと言えるだけの成熟度を備えているとする一方、いまだ完全な
大人として成熟した存在にまでは至っておらず、その自己決定権を尊重しつつも
社会全体で支援していくべき存在、不当な
契約から当事者を解放する手段が十分か否かは
政府としても
検討を続けなければならない喫緊の
課題などと述べました。しかし、そのような被害防止策は具体化されていません。
政府は、
消費者教育の
環境整備が整った、相応の
効果が上がっているなどと言いますが、
消費者教育の
効果の検証はこれからの
課題である上、
参考人質疑を通じて、まだ
消費者教育の
体制が整ったとも言えないことが明らかになりました。
また、今国会の
消費者契約法改正で新設された取消し権の対象は、不当な勧誘行為による
契約などに限られています。人の知識、経験、判断力の不足などに付け込んだ
契約の包括的取消し権を速やかに創設すべきです。
さらに、
成年年齢と養育費の終期は別の問題であって、非監護親も
大学進学費用を含め未成熟子に対する生活保持義務を負うことを
政府は明確にすべきです。
婚姻
年齢を男女とも十八歳に統一する改正は、家庭における個人の尊厳と両性の平等を保障する憲法十四条、二十四条に照らし、
成年年齢の
引下げのいかんにかかわらず、統一されるべき当然のものです。今や我が国だけとなった夫婦同姓の強制をやめ、選択的別姓制度を実現すべきです。
今日の
成年年齢の
引下げ法案提出へとつながる契機は、二〇〇七年の第一次安倍政権による改憲手続法の強行でした。本法案の衆議院本
会議採決に当たって、自民党は、
成年年齢引下げに伴う弊害の有無に関する
議論を本法案の審議で
議論することは時期遅れ、
国民投票法
成立の段階までに行うべきこととし、
成年年齢の
引下げは政治決断だから
国民の要望が上がっていないのは当然のことであると討論しましたが、これは、
参考人から、耳を疑う暴論との声が上がったとおり、もってのほかというべきです。
成年年齢の
引下げは
国民的
課題であり、これからの国会の役割は極めて重いことを改めて肝に銘じ、反対討論といたします。