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参考人(
菅原邦昭君) それでは、本日は、お呼びいただきまして誠にありがとうございます。
私は、東北の
卸売市場の
仲卸業者を代表いたしまして、精いっぱい私たちの
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず初めに、今、
磯村参考人がおっしゃったことに関連して、全く同意しながら一言申し上げますと、いまだに国
会議員の先生の中で、
卸売市場では大量に買うと高くなるというのはおかしいじゃないかと、主に、量販店、今は多国籍で活躍されている量販店資本の
皆さんはそういうふうに言いますが、これは全く初歩的な間違いです。
それでは、
卸売市場の仕組みというのは、社会的な建値を示すことが最大の使命なわけです。そして、不当な価格つり上げとかそういうものを防ぐという
役割を持っております。これは証券
取引所と全く同じなんです。ですから、
質問します。その多国籍資本である量販店の社長さん、おたくの株を証券
取引所で大量に買ったら安くしていただけるんですか。高くなりますよね。当然高くなるんですよ。それは、社会的な価格を形成するところが大量にそれを購入すれば高くなるのが当たり前です。
ところが、今から十年ほど前に、これを
規制緩和で、それはおかしいと言ったら、大量に買ったら安くするのが世の中の常識だなどと、その辺の一般の売買と社会的な
価格形成を使命とするところ、つまり証券
取引所と同じ使命を、片方は抽象物を社会的
価格形成をしている、こちらは現物をやっているんですね。このことを、意図的なのか知らずになのか、混同している
議論が今回の
卸売市場法の
見直しの根底にまだ脈々とあるということをまずいつまで続けるんですかということを私は強調したいと思います。そして、東北の思いを感情も含めましてまとめてきましたので、朗読させていただきます。
どなたも御承知のことと思いますが、国民の圧倒的多数は
地域経済を暮らしのかけがえのないよりどころとして生活しています。国家経済に依拠して生活の基盤を確立している人というのは、国家経済政策に直接あるいは間接に関わり、その恩恵を浴びることがそれなりにできる人々です。しかし、そういう人は国民の中から見ればほんの一握りです。そして、その
地域経済に、そして国家経済に関わる両者間には、この二、三十年の間にとんでもない暮らしぶりの差が生まれてきているというのは、
皆さん、いわゆる格差社会、現代的貧困の問題で、これはこれで
議論されているところです。
今から四十年ほど前になりますが、
規制緩和という言葉が大々的に
政治世界で叫ばれるようになり、その後実際に実行されるに及び、その弊害は顕著になりました。これが一定程度国会でも論争のテーマにされたこともありましたが、ほとんどの場合不発でした。しかし、そこで語られたのは、主に野党の
皆さんが語ったことについては、私は非常にうなずくべきものが幾つもあったというふうに思います。
例えば、
規制緩和とは、結局
ルールのない経済社会につながるという
意見も出ました。
規制緩和を進めれば、弱肉強食の経済社会に行き着くという声も出ました。とどのつまりは、
地域経済こそ
規制緩和の最大のしわ寄せの被害者だという声も出ました。これは、今振り返ってみても、どこにこの
意見の瑕疵があるでしょうか。私は、この
意見は、現在の
状況から振り返ってみれば、正当なものだったと評価した上で全ての
議論を始める必要があるというふうに思っております。東北地区連の感情を含めて話していますので、誤解ないように。
そして、今日、経済のグローバル化が大々的に喧伝され、国際競争に勝ち抜く分野として日常的に日本の
農林水産業は繰り返し取り上げられて、
農協、漁協批判、日本の農漁業、こういう
人たちに任せておいたら世界の競争に負けますよだとか、法人化で
効率化を進めた方がいいよだとか、まあ勢いのいいスローガンめいた言葉がもう本当に飛び交っております。しかし、これらの威勢のよい論調、
議論に共通している決定的な欠陥があります。それは何かというと、数字に基づく、数値に基づく比較とか又はリスクなどについての検証が全くなされていないということはいら立ちを覚えるほどであります。今のちょっとした間はいら立ちの間です。
一例を挙げれば、漁業権の法人化の問題があります。地元の反対を押し切って強行した宮城の水産復興特区、大震災のときの、漁業権の法人化の問題、これはスタートからもう随分たちました。しかし、今日まで様々な問題が現地では起こって、河北新報を始め地元紙を大いににぎわすどころか、県議会で与野党も問わず、私は、与党の先生たち、県議会で非常にこの問題で憤りを持って奮闘している姿を見ましたし、直接話もしました。これがなぜ国会には伝わらないのかなと。なぜかというと、きちんと
政府や国会で追検証しているのでしょうかと。特区です、これ。どこかで聞いた特区です。全然、でも地元民には特区になっていません、損になっています。不正疑惑を地元紙に追及をされる事態が起きていることに、そして
地域水産業に悪
影響を与えていることに、
制度をつくって適用した
政府は明確な検証をしていない。いないでしょうかと書いたんですが、線を引っ張りました、していません。裏付けを取る、結果や予測値をデータで検証する、こういうことを抜きに、勢いのいい言葉とか号令だけで
地域経済の様々な分野にグローバル化を拡大するやり方というのは、
地域経済を疲弊させ破壊するやり方です。このことに一日も早く気付いて、まだ息のあるうちに何とかすべきだと、私は心から東北を代表して訴えたいと思います。
そして、このようなグローバル化の進め方、これは、日本ばかりでなく世界中でも批判の声が上がっています。その
内容は、これらのグローバル戦略というのは、自国の
地域経済をお互いにみんなが崩壊させているんじゃないかと。トランプさんのアメリカもそうです。トランプさんは、一応取りあえず当面は反対とやっておりますけれども、まあその辺は今後よく見ていく必要があると思いますね。
そして、今申し上げたように、日本発、アメリカ発の多国籍資本の戦略を後押しするものとして私たちのこの
卸売市場法改正案というものが出されている。この流れの中にあるんだということは、
現場の人はみんな気付いているんです。でも、
卸売市場の業者というのは、みんな許可業者なんですよ。許可業者というのは、古い言葉で、もし不適切であれば後でお叱りも受けますが、お上に弱いんです。ところが、腹の中ではみんな反対なんです、困っているんです。このことは、是非私は声を大にして、
農林水産委員会の中で訴えさせていただきたい。場合によっては本
会議で訴えさせていただいてもいいですが、そういう
制度はございませんので残念だと思っております。
今回の
改正案、これ、条文を見ますと、まず驚くのは、
改正と言えるのかなと思うんですが、現行八十三条から成る条文のうち、公正公平な
取引のための
ルールの部分が全部、六十四条、八十三条分の六十四条、これが全文削除されているんですね。
そして、何よりも、
卸売市場の社会的使命の、先ほど
磯村参考人もおっしゃいましたが、最も重要な柱は第三者
販売の
禁止。簡単に言うと、これは、インチキな、何の基準もない売り方は駄目ですよということですよ。この第三者
販売の
禁止という原則までもが撤廃されているんです、事実上は。そして、大手資本などによる価格操作、誘導が可能な仕組みに改変されているわけです。
削除率約八〇%であると同時に、
生鮮食料品等の社会的な建値、つまり、国民の
食料安全保障の立場から、
需要と供給の
関係のみで価格を形成する、あらゆる場面での生鮮
流通の
取引価格の基準値を社会に示す、そのために、誰かの思惑とかは一切排除する、価格操作とか価格誘導などの不正な振る舞いを禁じた条文が今の六十四条なんですよ。ここにこの
改正案の正体見たりという
状況になっていますね。後でその件についてはまた述べたいと思います。穏当な言葉でいきます。
これでは、国民のまだ気付かないところで
政府は国民の
食料安全保障体制を撤廃する気だと言われても、どう抗弁するのでありましょうか。
政府は価格つり上げなども容認するつもりだなと言われて、どう抗弁するのでしょうか。
現在の
卸売市場法の基本骨格となった大正時代成立の
卸売市場法は、一九一八年の米騒動が契機となって作られたものです。
皆さん、今年はそれからちょうど百周年なんです。象徴的な事件が今起こりつつあります、ここで。当時の
法律を
提案した
政府側は、帝国議会において、要旨、次のように当時の
状況を述べています。当時の帝国
政府ですよ。そこは、どういう問題意識をやっているか。百年前だから古いだろうなと思ったら大間違いです。要旨がきちんと
調査した先生方によって残っております。読みます。
悪徳な問屋は、農民が自分が食べるのに必死で農民同士の団結が極めて弱いのをいいことに、前渡金、前貸金ですね、青田刈りをてこに安値で買い取る。逆に、小売側に対しては、意図的に彼らの横のつながりを断ち切り、売惜しみ、在庫隠しなどをしては、極めて巧妙に価格のつり上げをなし、
利益のため込みをし続けてきた。その欲はとどまるところを知らず、今回の騒動の直前には、一週間あるいは二、三か月の間に、米を始めとした生鮮品が三、四割どころか七割の値上げなどという事態を生むまでに至っていると。これ、帝国議会の中で
政府側が
中央卸売市場法案を出すときに語っている言葉なんです。
戦後一時期は聞きましたけれども、もうしばらく、こういうことを
政府側の方がお話しするということ、
皆さん御記憶あるでしょうか。余分な話はやめます。
そのため、人間の飽くなき欲は、これは、行政は放置しておくわけにはいかないということに対して、議会の中では、放置しておいていいんだ、そこまで縛るな、自由に任せろという声があったようですが、
政府は放置しない立場を採用したんです。なぜでしょうか。なぜなら、
政府自身、一道三府三十七県以上に波及した米騒動なんですよ。最低でも、研究者のお二人の方が貴重な本を残されています。五百万人以上が関わったんですよ。この米騒動に対しては、警察動員では足りませんでした。軍隊も出動しました。厳しい激しい弾圧も行われました。そして、やっとやっとの思いで鎮圧した苦い経験で、
政府側はほとほと懲りていたんですね。そういう
状況だったから、善意に任せるとかそんなことでは駄目だという立場を
政府側は取ったということなんですね。
しかし、どうでしょう、
皆さん、当時の放置しておけというのはちょうど今回の
卸売市場法の
改正に流れをつくった、あの有名な
規制改革推進会議が、
卸売市場法など時代遅れで、あんな古いもの今更要らないんだと、社会の良識に任せておけばあんなもの要らないよ、何百年前の話しているんだみたいな話がありましたが、私は、それと通底しているのがあの
規制改革推進会議の文章だと思います。これを証明しろと言われたら、いつでもお呼びください。証明してさしあげたいと思います。
そして、あの
規制改革推進会議が言いたいのは、今は企業がコンプライアンスの時代なんだよと、ここに任せておけば世界に最たるコンプライアンスで原発も安全、だからいいんだという、そういう態度を取っているわけですね。あの文章はそう言っているもの、そのものなんですね。
しかし、このコンプライアンス、本当に頼りになるものなんでしょうかということで、聞き飽きていらっしゃるかもしれませんが、改めて、東北の声としてお聞きください。
国際社会で活動する企業が諸外国を巻き込んで起こしているデータ偽装問題、そのトラブル、これがマスコミや新聞をにぎわしていない日があったでしょうか。ある識者に言わせれば、これは外国の方ですが、これほど日本のコンプライアンスが話題になった時代というのはここ十年ぐらいのことだねということを、外国人の有名な、あの人はジャーナリストですが、語っていますね。企業法人ばかりか学校法人でさえ、コンプライアンスの問題ですよ。様々問題やら疑惑やらで年中世の中が騒然としているのは幻なんでしょうか。
データ偽装、改ざん、資料隠しが蔓延している今こそ、私が言いたいのはここです。国民の
食料安全保障を引き続き守るためのこれまでの
卸売市場法の基本である公正で公平な
価格形成機能とその
ルールは削除するどころか一層磨き上げるべきものです。生鮮
食料品という人間生活に不可欠なもの、欲による不正な価格のつり上げは許さないという姿勢こそ、
政治と行政の健全性を評価する際の重要な指標、リトマス試験紙だと私は訴えたいと思います。
市場の、人の欲を排除した
価格形成の詳細な仕組みと
制度を、時間だということなんで、今ここで詳しくお話しする時間はありませんが、簡単に申し上げます。
マーケティングという言葉で知られるミクロ経済学には、その基本に
需要曲線、供給曲線という話が必ず登場します。その
需要と供給の二つの曲線の交わったところが適正数量であり、適正価格だという教えなんです。それを完全競争原理といいます。
卸売市場では、競りを基幹とした仕組みで行い、そこでは、私たちの仲間、
仲卸業者と買参人が、
消費者目線に立つ目利きとして
品質やその数量を見極めつつ、競い合いながら価格を決定する。簡単に申し上げればそういうことなんです、
市場の仕組みというのは。
この
情報は……