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田名部匡代君 去る二月二十二日、二十三日の二日間、
福島県において、
東日本大震災の
被災地における
復旧・
復興状況等の実情を
調査してまいりました。
参加者は、
江島潔委員長、愛知治郎
理事、平野達男
理事、
渡辺美知太郎理事、杉尾秀哉
理事、
三浦信祐委員、岩渕友
委員、石井苗子
委員、
山本太郎
委員、行田邦子
委員及び私、田名部の十一名であります。
以下、
調査の概要について御報告いたします。
初日は、
福島駅から沿岸の
被災地に向かうバスの車中にて、
福島県における
復興の現状と
課題について
復興庁福島復興局から
説明を聴取した後、まず、相馬市に赴き、松川浦漁港を視察しました。
同漁港については、
原発事故の影響により、一時操業自粛を余儀なくされておりましたが、
平成二十四年六月より試験操業を開始し、本年二月からは、アオノリの出荷も再開されております。
その後、
福島県漁業協同組合連合会の野崎代表
理事会長、相馬双葉漁業協同組合の立谷組合長、菊地
理事兼松川浦地区代表から、
水産業の現状と
課題、相双地区における試験操業や最近再開したノリ養殖の状況等について
説明を聴取しました。
漁業の本格操業の再開に向けて、
震災前の約一三%にとどまる漁獲量の拡大、仲買人など流通体制の再構築、
風評被害
対策の強化等が
課題となるとともに、
震災による地盤沈下でノリの養殖場の水深が深くなり、円滑な
作業に支障があるとのことであります。
また、立谷相馬市長から、同市の
復旧・
復興状況について
説明を聴取しました。
立谷市長によれば、漁業と、漁業によりもたらされる海の幸を資源とする観光業が
地域経済を支えてきたことから、漁業の
再生が
地域の
再生に大きな役割を果たすとし、地方創生の観点も含めて
復興を
推進し、
震災の前以上に活力のある相馬市をつくっていくことが目標であるとのことでした。
派遣委員との間では、
被災した漁船の
再建、維持に関する
取組、本格操業の開始時期の見通し、海外輸出や国内
販路の拡大等について
意見が交わされました。
次に、浪江町に移動し、本間浪江町副町長より、浪江町の
復興拠点について
説明を受けるとともに、その主要施設の
一つである仮設
商店街「まち・なみ・まるしぇ」を視察しました。
同
商店街は、町民が安心して
帰還できる
生活環境整備の一環として、
平成二十八年十月に開業しました。地元住民の
交流の場となるなど、大きな役割を果たしている一方、魚など生鮮食品が販売できていないということ、夜間の営業店舗が少ないことなどの
課題を有しているとのことでありました。
続いて、南相馬市に移動し、門馬南相馬市長等から
説明を受けつつ、南相馬市立総合病院を視察しました。
同病院は、診療科二十一科、病床数二百三十床から成り、脳卒中センターを設けるなど、相双地区の中核基幹病院として機能しております。
被災直後から、ホール・ボディー・カウンターを活用した
地域住民等の内部被曝の状況把握に取り組んでおり、
派遣委員もその検査を実地体験いたしました。及川院長によれば、今後も定期的な検診により、追加の内部被曝がないことを継続して把握していくことが重要であるとのことでありました。
次いで、県立小高総合技術高等学校を視察しました。
同校は、小高商業高等学校及び小高工業高等学校の二校を合併して昨年四月に開校し、
福島県で初のスーパー・プロフェッショナル・ハイスクールの
指定を受け、
福島の
復興再生や
地域活性化に寄与する
人材の育成に多大な貢献を果たしつつあります。
鈴木校長によれば、地元
企業などから同校出身の優秀な
人材を求める声が多い一方で、生徒数がいまだ
震災前まで戻っておらず定員割れが起きており、ニーズに応え切れていないことも
課題となるとのことでありました。
その後、
福島市に移動し、土湯温泉の大型旅館である山水荘の渡邉常務取締役などから、
風評被害の
払拭や
観光客の誘致に向けた
取組等について
説明を聴取し、懇談を行いました。
各旅館の若手経営者たちを
中心に、県内の他の温泉地や若手農業経営者とも連携しつつ、
福島の
風評被害の
払拭に向けた様々な情報発信に取り組み、また、温泉熱を活用したバイナリー発電や、発電所の見学を通じて、地熱エネルギーの可能性について発信する
取組も行っているとのことでした。
二日目は、
福島市内において、まず
福島県営あづま球場を視察しました。
同球場は、二〇二〇年
東京オリンピック・パラリンピックにおいて野球及びソフトボールの競技会場としての利用が予定されており、
復興五輪のシンボルともなる場所であります。木幡
福島市長、
福島県当局等の
説明によれば、同球場では、グラウンドの人工芝化等の機能性向上、車椅子用の昇降設備や多目的トイレの設置等のバリアフリー化などを進めるほか、仮設の観客席や表示装置等の設置に取り組んでいくとのことでありました。
派遣委員との間では、改修財源の在り方、同球場への交通アクセス等について
意見が交わされました。
次に、農業生産法人である株式会社カトウファームに赴き、木幡市長、同社の加藤代表取締役等と懇談を行いました。
加藤代表取締役によれば、高齢化した農業経営者等の廃業に伴い農地を引き受けることで、米などの経営規模の拡大を図るとともに、
風評被害を
払拭し食品安全の信頼等を確保するため、生産工程管理に関しグッド・アグリカルチュラル・プラクティス、GAPを取得する
取組等を行っているとのことでした。
派遣委員との間では、GAPの取得に際しての苦心、高品質・高付加価値米の生産、販売に向けた
取組等について
意見が交わされました。加藤さんが、農業を楽しみながら土地を守りたいと笑顔で話しておられたのが印象的でした。
次に、松川工業団地第一仮設住宅に移動し、仮設住宅にお
住まいの
方々と懇談を行いました。
同仮設住宅には、飯舘村から
避難された
方々が入居しており、
平成三十一年三月末までの退去が予定されています。
被災者の方からは、帰村後の通院、買物等に際しての公共交通機関の利便性への懸念、農業、林業等に係る
なりわいの
再生、帰村の見通しの立たない住民に対する行政のサポート、子供や若年層が安心して
帰還できる
生活環境の
整備の必要性などについて認識が示されました。
派遣委員との間では、
帰還先での
生活環境の
整備状況、仮設住宅入居者の帰村見通し、
なりわいの
再生に向けた高齢者と若者の
交流の必要性等について
意見が交わされました。
以上が
調査の概要であります。
震災から七年が経過しておりますが、国道沿いの
除染廃棄物仮置場には無数のフレコンバックが積まれていました。また、
福島の
水産業、農業、観光業がいまだに根強い
風評被害を受けていることについて、認識を新たにいたしました。生産、流通、加工を通じた
水産業の
再生などを
加速化するとともに、
風評被害の
払拭に向けて、
福島の新しい今を国内外に発信しようとする各般の
取組に対する
支援に一層の重きを置く必要があります。
加えて、視察先で言及がなされた
被災地における若手
人材の不足は、
復興の大きな制約要因となるおそれがあります。医療、教育や
生活の利便性など、若年層も安心して
帰還、活躍できる環境の
整備を進めるとともに、
産業、
なりわいの
再生に向けて、国として引き続き、より適切な対応を図る必要があることを改めて強く認識した次第であります。
最後に、私どもの
調査に御
協力をいただいた
皆様に対し、厚く御礼を申し上げますとともに、
被災地の一日も早い
復興が果たされますようお祈り申し上げまして、派遣報告を終わります。