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参考人(
脇雅史君) ただいま
お話がございましたが、最近、
自民党からある案が
提案されまして、それを基にして様々な
動きがあるということは、私は新聞やテレビを通じては存じ上げておりますが、折衝の
中身でありますとか細かいことは分かりませんので、そのことについてここでは論評は取りあえず控えさせていただきたいと思っています。
しかし、この
一連の一票の
較差の
是正を図る問題については、本当に長い長い
歴史がある話でございまして、私も非常に気に掛かっている点がございます。それが言いたくて今日はここに参上したような次第でございますが。
何かというと、
皆さん方は
法律を作っていらっしゃる、
国民のための
法律を作るというお
立場にあるわけですね。どういう
法律がいいのかということを一生懸命やっていただいていると思うんですが、どうもこの経緯において、
法律、法というものに対する認識が少し違うんじゃないかな、非常に軽く見ているのではないかという印象を受けています。
自分たちが出した
法律で決めたことを平気で守らない、キャンセルしてしまう、そんなことが許されていいんだろうか。
法律を作る場所で
自分たちが作った
法律を守らない、私はゆゆしきことだと思うんです。しかし、この
一連、この何年か見ていましてもそのことが問題になることはありませんでした。
で、何が問題かというのは、こんなこと言っても、
国民の方、
皆さん方聞いていらっしゃってもさっぱり分からないかもしれませんので、少し
説明をさせていただきたいんですが、そもそもの問題の発端というのは、私は、長い
歴史がありますが前の方は置いておいて、今の
動きの原点は二十四年にあると思うんですね、二十四年の
最高裁判決。これは、二十二年の
参議院選挙に対して二年余りたって
判決が出たんですが、それまでも抜本的に
定数是正の
改革をすべしということは累次にわたって
最高裁から
提案をされておりましたけれども、初めてここで
違憲状態という
判決が出たんです。
しかし、
判決が出たのがたしか十月だったですかね。で、翌年の二十五年に
選挙を控えている。これ、とてもじゃないけど
抜本改革なんかできるわけがないというわけで、取りあえずお茶を濁すといいましょうか、四増四減ということをして、そしてそれだけでは済まないので、次の
選挙までに、二十八年の
選挙までには
抜本改革をしますよという、今の
附則と似たような
附則ですけど、その
附則を付けて二十五年の
選挙に臨んだわけですね。
附則に書き込むというのは、これは
選挙公約なんかよりはるかに重いですね。
法律ですから、
御名御璽ですよね。要するに、
国民全体に対する約束なんです。それを破るということがあってはならない。
しかし、三年前の、その二十八年
選挙を迎えるに当たって、その二十四年の
附則を付けてから三年たつわけですけれども、何か出さなくちゃいけないという三年前の夏に、当時は公明党と
民主党はお互いに
調整をしながら
抜本改革案というのを提出された。それから、
自民党はたしか六増六減とかという案を言っていて、
抜本案を提示されなかったんですね。そういう意味では、あの
時点では、
自民党は明らかに、まあ
法令違反といいましょうか、
法律に書いたことを実行しなかったと。
これは私はゆゆしきことだと思うんですが、誰も言いません。その後の
最高裁の
判決を見ても、
自分で作った
法律を
自分で守らなかったと。あれは
民主党と
自民党の
共同提案なんですね、二十四年のときの
法律は。
自分で出しながら守らなかったんですよ。そのことに対する言及はないし、
メディアも一切報じない。結局、
自民党は
抜本案を
附則に反して作らなかったけれども、
日本国中誰もそのことについて異論を唱える人はいなくて今日まで来て、しかし明らかにおかしかったという実態は残ったんです。しかし、もう過ぎてしまいましたから、誰も何も言わない。
そして、三年前、二十七年に、今度はまた次の
選挙に向けてやらなくちゃいけないというわけで、そのときにさっき言われた
附則七条が付くわけですね。同じ
中身なんですが、そのときに、特にという
言葉が付いてきたんですね。私、ちょっと、脇さん、今度、特に付けておきましたからと言うから、安心してくださいと言うから
唖然としたんです。
法律で決めたら、あっ、特にじゃない、必ずですね、失礼、必ずという
言葉を付けた。必ずなんて付けなくたって、
法律に書いたら必ずやるんですよ。必ずと書いたから強くやるんだなんということは
法律にはないと私は思うんです。
法律に必ずなんという
言葉を出すこと自体、
法律に対する冒涜ではないかとすら私は思って、思わず笑うしかなかったんですが、とにもかくにもそういう
附則を付けて、そして今日に至るわけですね。今、
国会議員の
皆様方は、その
附則七条の
責務を、
国民に対する
責務を有していらっしゃるんです、次の
選挙までに
抜本改革をするんだと。
そこで、今出ている案、いろんな案が出ていらっしゃるようですが、
自民党案は本当に
抜本改革なのかというと、私はとてもそれは信じられません。当時、二十七年の
時点で
附則を付けた途端に、
現行の二つの合区の十増十
減案というのは、これは
抜本改革ではないと宣言したに等しいんですね。だからこそ、次の
選挙までにちゃんとやりますよということを言ったわけですよ。だから、今度は、今度こそ出てくるだろうと。今ここで議論すべきは、まさに
抜本改革をこそ議論すべきなんです。
ところが、
一つ事情が違っていまして、去年の
最高裁判決は
合憲だと言ったんですね。今までの二回は、二十五年
選挙、二十八年
選挙を迎えるに当たって
違憲状態だったから、
国会が
違憲状態のままの
法律で
選挙に向かうということはあり得ないから、何らかの手当てはしよう、これは絶対に急ぐ話なんですよということは非常に納得できるんです。今は、次の
選挙までに
抜本改革を作るんだということは
法律上の約束事ではありますが、急ぐ必要はないんです、
合憲なんですから。堂々と胸を張って、今ある
合憲の
法律でもう一回
選挙やればいいんです。
参議院選挙というのは二回で一回ですから、私は、だからそれは全然構わない。そんなことよりも、むしろ
抜本改革をこそ出すべきだ。
自民党は、これが
抜本改革ですよというのを胸張って出せば、過半数をお持ちなんですからそれは通るんです。しかし、それは無理やり通してはいけない。
皆さん方の
調整の中できちんと通すべきだ。その
抜本改革というのが出てこない。
あろうことか、過日の
党首討論で
安倍総理は
臨時的措置とおっしゃった。
臨時的措置が
抜本改革であるはずがないですよね、
党首がそう言っているんだから。私は、法の
支配ということをあちこちで言われている
安倍総理が、今、法的な
責務、
責任を
国会議員は全て負っているわけですよ。俺はあの
法案反対だったから知らないとは言わせない。
法律である以上は全ての
国会議員にはその
責務がある。それで、法の
支配と日頃言っている人が足下の法の
支配は一体どうなっているんだと私は
唖然としましたが。
しかし、
野党も
野党ですね。そういう
答弁を聞きながら、じゃ、今我々に課せられた
責務との関係はどうなっているんだという問いかけさえしないと。与
野党とも課せられた
責務を
責務と思っていないじゃないかと実は私は疑っていましてね、そのことは
法律を作るという
立場において極めて私は大事だと思うんです。しかし、
メディアも報じなければ、誰も言わない。
国民は知りません。
しかし、私はそれではいけないと思う。私だけが違うのかもしれないけど、
法律というものはもっと真剣に向き合ってほしい。
法律で書いたことは必ずやる、やらなかったら誰かが
責任を取る。今、
日本中に蔓延している
無責任状態というのは、そういうことがきちんとなされていないんじゃないか。
国権の
最高機関たる
国会がそんな無
責任であっていいわけがない。
よく
メディアが権力の
監視なんて言っていますが、
国権の
最高機関であるそういう
監視は一体どうなっているのか、
メディアもそこが抜けているんじゃないかと、そのように思っていまして、余り悪口ばっかり言っちゃいけませんが、誠に心配しておりまして、どうか
皆さん、胸を張ってこれが
抜本改革だと言えるものを、法的な
責任を果たしていただきたい。お願いしたいと思います。