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参考人(
田中章治君) 私は、全
日本視覚障害者協議会の代表をしております、
当事者団体ですが、
田中と申します。
私は、盲導犬を約四十年連れております。そういう経験を含めて
お話しさせていただきます。
まず、今回の
法律の一部を改正する
法律案ですが、報道発表を見た範囲内で、つぶさに条文なども見ておりませんので若干的外れなところもあるかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。日頃感じていることを率直に述べさせていただきます。
今回の改正案でございますが、非常にいい面をまず申し上げます。二〇二〇年オリンピックを契機とした共生社会の実現、そして、行きたいを行ける社会にする、そういうための
取組だということでそれを強化する、このキャッチフレーズは大変いいんじゃないかというふうに思っております。
次に、
評価すべき点でございますが、
理念に社会的障壁の除去を設けたこと、それから
事業者の
ハード、
ソフト両面の
計画の策定、特にこれは
取組状況とか報告を公表するなどに触れられているということはすばらしいと思います。それから、
市町村の
マスタープランの制度創設ということも大変いいことだと思います。
逆に問題点をちょっと指摘させていただきますが、
移動が権利として位置付けられていないという点、それから障害の定義が非常に限定的になっているんじゃないかと。身体的機能上の制限を受ける者ということになっておりますので、
知的障害者あるいは精神
障害者、難病者等の
移動の問題はどうなのか、その辺が少し不安になるところです。
それから、駅についてなんですけど、一日の乗降客が三千人以下の駅について
バリアフリー化の具体策が余り示されていないように思います。それから、コンビニあるいは飲食店など日常的に私たちがよく利用する小規模店について、約床面積二千平米以下ということになりますが、ここの
段差の解消などについても触れられていないというふうに思います。
次に、国及び国民の責務ということについて申し上げたいと思います。心の
バリアフリーということについて言っておりますが、この点について一言申し上げたいと思います。
駅などで声掛け等が重要であるということ、これは全く賛成ですが、しかし、駅などでは駅員などのプロによるサポート、それが基本になると思いますので、その点をまず基本に置いていただきたいということで、一般乗降客の善意に頼るということはちょっと問題があるんじゃないかと思います。優先順位の問題ですね。それから、国に関しては予算面の支援を十分行っていただきたいというふうに思います。
それで、実は、つい先日ですけれども、二〇一八年の四月二十五日、読売新聞の朝刊なんですけど、これによりますと、レストランあるいはタクシーなどの入店あるいは乗車拒否というのが、これ盲導犬使用者のことなんですけど、最近十か月ぐらいで六割に達しているということで、多くの方がそういう経験をしております。
障害者差別解消法が二〇一六年に施行されておりますが、それでもこのような状況なので、心の
バリアフリーという観点を言うのであれば、この辺のことを着実にやっていただきたいというふうに思います。
次に、私たちの観点で申しますと、
バリアフリー法の中では人の位置付けがちょっと弱いのではないかとかねてから思っております。例えば九州新幹線における駅ホームの無人化の問題、あるいは首都圏で今進んでおります駅の改札口の無人化の問題、これは駅遠隔操作
システムということで導入されているようですが、私たちの安全、安心という点では問題があります。つまり、駅の改札は私たちにとって、そこでいろんな情報を入手する、直接
案内を利用するという、そういう観点が大事だと思うので、安易なこの無人化というのは反対です。
それで、今日私が一番強調したいのは、
視覚障害者の駅からの転落、死亡の問題です。これは尽きるところ、落ちない駅ホームの実現ということになります。
ホームドアと可動式ホーム柵、これの設置を進めていただきたいと思うんですが、お手元に、これは私たちに加盟している東京
視覚障害者協会の調査なんですけど、この
資料を御覧いただきたいと思うんですが、一九九四年十二月から二〇一七年十二月までの調べによりますと、全国で転落死亡事故というのが二十八件起きております。それから、骨折以上の転落重傷事故が三十三件、ほか六件ということで、計六十七件起きています。国交省の調査によりましても、二〇一六年度の
視覚障害者の駅ホームからの転落事故、報告のあったものは七十二件あったというふうに聞いております。このうちの三名が転落死亡しております。
こういう状況を解消していただきたいんですが、現状は一日の乗降客が十万人以上ということで施策を進めていただいております。これは
平成三十二年度まで、まあオリンピック・パラリンピックを目標にしているかと思うんですが、この十万人という規模は大体八百駅ぐらいかと思うんですが、私たちとしてはもっとこれを増やしていただきたいということです。そして、
計画の前倒し、あるいは、特に気になるのは、
ホームドアあるいは可動柵があるホームが両方向走っている、並行して走っているという
二つの路線がある場合ですけど、この場合、片側にのみ
ホームドアがあるという駅がまだかなりあるんですね。こういうものは非常に私たち錯覚をしてホームから転落する危険性が大きいので、その辺を是非考慮していただきたいと。
これに関連して、今もっと安価な形でできないかという研究がなされております。それは大変いいことです。上からバーやロープが下りてくる方式、これにつきましては私たちにとってはちょっと問題があると思います。と申しますのは、途中の鉄柱にぶつかる危険、それからドアが探しにくい、乗り降りするドアが探しにくいという問題、それから、上から下りてくるということで頭に対する危険というのがちょっとあります。
ですから、私たちとしては横にスライドする形式のものがいいんじゃないか。今開発されております、スマート
ホームドアというふうに聞いておりますが、これは大変私たちにとっては
評価は高いものです。横浜線の町田駅に
部分的に設置されております。私の住んでいる近くの埼玉県の蕨駅でもこれを導入するということで、このスマート
ホームドアについて是非皆さんの記憶にとどめていただきたいというふうに思います。
それから、
エレベーターとエスカレーターについて申し上げたいと思います。
エレベーターというのは、よく私たち駅を歩いておりますと
エレベーターに
案内されることが多いんですけど、私たちにとっては
エレベーターは案外使いにくいものです。というのは、そこへ行く動線が分からない、それから駅のホームの端っこにあったりするということで、
あとおまけに、乗り込んだ際に
ボタンの操作位置、
ボタンが
エレベーターによって異なる、それから降りる方向も降りる向きも
まちまちであるというような問題があります。ですから、私たちはエスカレーターが便利で安全なものです。
このエスカレーターについて、この度、点字ブロックによる誘導が認められるような方向が打ち出されておりますので、これは画期的なことで、私たち二〇〇〇年前後からこの要求をずっと出していましたけど、これがようやく実現するということで、大変喜んでおります。
それから、点字ブロックの敷設についてなんですけど、基本的にはやはり、点字ブロックは私たちにとって道です。
連続性が大切です。ところが、時々、
鉄道駅とその隣接する商業
施設の
管理者が異なるために、その間が、特に商業
施設で点字ブロックが敷けないというような状況がありますので、連続して敷くということは基本じゃないかなというふうに思います。
それから、音の出る信号機の問題について。これは、まだまだ現状は足りません。それからもう
一つ、横断歩道ということで考えてみますと、点字ブロックと、それから横断歩道を安全に向こう側へ渡るエスコートゾーンというのがありますが、これは足の触覚で安全に向こう側へ真っすぐ渡れるものなんですけど、このエスコートゾーンを是非増やしていただきたいと。
一言、信号の関係で申しますと、ラウンドアバウト、環状交差点と言っておりますが、これが少しずつ増えてきているんですが、これは信号がないということで、私たちは戸惑っております。是非、ここが音声
案内でラウンドアバウトだという、そういう
案内が欲しいですね。それから、歩道の点字ブロックとエスコートゾーンを是非このラウンドアバウトには付けていただきたいというふうに思います。
それから、要求の吸い上げ方法については、是非、パブリックコメントというのは我々
視覚障害者はなかなか
対応しにくいんですね。ですから、例えば
当事者団体に出向いて説明してくださるというようなこと。以前、駅ホームの安全性
向上に関する検討会、これは中間報告が出ておりましたけれども、これについて私たち直接伺っております。そういう国交省の
対応を期待したいと思います。
最後にまとめをしたいと思いますが、何といいましても、
障害者権利条約第九条に、
施設及びサービスの利用可能性における障害及び障壁を特定し、及び撤廃することというのがあります。同じく第二十条では、
障害者ができる限り自立して
移動できる、そういう方向での措置をとることという文言があります。是非この辺を念頭に置いて施策を進めていただきたいと。
結論から言いますと、今回の改正案は一歩前進ではあると思いますが、
都市と地方の格差の問題であるとか、
障害者の完全
参加と平等を実現していくということでは若干
課題が残っていると思います。是非、
取組をよろしくお願いします。それから、障害
当事者の
参加を含めて、利用する
人たちの
意見を丁寧に聞き取る
評価システムの義務化が盛り込まれるべきだと思っております。
最後に一言だけ。
利用者ニーズの高度化に
対応した
鉄道の
バリアフリー化に係る費用負担の在り方についてという中間取りまとめが出ましたが、これは、趣旨は分かりますが、基本的にはやはり
事業者と
行政の負担でやっていただきたいと。運賃に上乗せするという
考え方は、どうも私たちは納得できません。特に、この高度なニーズに
対応するということはよろしいんですけど、特に
視覚障害者の駅ホームからの転落の問題、これはやはり高度なニーズではなくて基本的な命の問題だということで、その辺を是非指摘して、これは少なくとも
行政と
事業者の責任でやっていただきたいというふうに思います。
どうも御清聴ありがとうございました。終わります。